JP2010111974A - 模様付与加工方法及びその製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 構造発色を特徴とした多層積層フィルム素材に、後加工を行うことにより簡便かつ低コストで異なる色の構造発色による模様付与を行うことを課題とする。
【解決手段】 多層積層フィルムまたは多層積層フィルムを原料としたスリット糸を使用した布帛に水溶性高分子糊を所定の部分に印捺し、その後乾熱加圧処理を行なった後、水洗で水溶性高分子糊を洗い落とすことにより、水溶性高分子糊の印捺部分と非印捺部分が異なる色に構造発色し、模様を付与することができた。
【選択図】 なし
【解決手段】 多層積層フィルムまたは多層積層フィルムを原料としたスリット糸を使用した布帛に水溶性高分子糊を所定の部分に印捺し、その後乾熱加圧処理を行なった後、水洗で水溶性高分子糊を洗い落とすことにより、水溶性高分子糊の印捺部分と非印捺部分が異なる色に構造発色し、模様を付与することができた。
【選択図】 なし
Description
本発明は、多層積層フィルムによる構造発色を特徴とするシートまたは当該フィルムによるスリット糸を原料とした布帛の所定部分に異なる色に構造発色する模様を付与する加工方法に関する。
構造発色をする素材として、膜の多層化による光干渉によるものや、ホログラム、及び多層積層フィルム構造によるものが良く知られている。
膜の多層化によるものは、発色斑が目立つことが欠点としてあげられ近年では、他の方法による構造発色素材に取って代わられている。(例えば、参考文献1参照)
ホログラムは、素材表面の微細な凹凸構造により、光の回折・干渉が生じることにより、構造色として発色する。また、ホログラムは凹凸構造を制御することにより模様を生じさせることができる。しかし、その加工にはレーザー加工機などの特殊な装置が必要となる。(例えば、参考文献2参照)
多層積層フィルムは、屈折率の異なるポリマーによる交互多層構造の形態をもたせることにより、光の反射、干渉あるいは回析、散乱などにより発色するものである。このフィルムは、見る角度や背景色により見える色が異なり、また色斑も少ないことが特徴である。この積層フィルムは、ファッション性の要求される衣料素材やインテリア素材、包装素材等として用いられている。(例えば、参考文献3参照)
特開平7−252773号公報
特開平9−248686号公報
特開平11−1828号公報
本発明は、多層積層フィルム素材のように構造発色する素材に、レーザー加工機のような特殊な装置を使用せずに、または、単に顔料や染料の色付けによる方法でなく、自由な柄を異なる色の構造発色により模様として付与する方法を提供することにある。
本研究者は、多層積層フィルム構造を持つ構造発色素材に、熱転写プリントを行っているときに、偶然、加熱加圧部分において、構造発色が消失または劣化せずに、しかも未処理部とは異なる色の構造発色することを発見した。この色の違いを模様付与加工に適用するため、各種水溶性高分子糊を所定の位置に印捺した後、乾熱処理及び乾熱加圧複合処理を各種条件で試験したところ、多層積層フィルムによる構造発色素材が異なる色の構造発色を生じ模様が付与できることを見いだした。本発明はこのような知見に基づくものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、構造発色を特徴とする多層積層フィルムは、尾池テック株式会社製の特殊積層フィルム「スペクトロス」(商品名)の通常品とアルミニウム蒸着グレード品とを用いた。しかし、多層積層による構造発色を特徴とする製品であれば、前記「スペクトロス」に限定しない。また、形態はシート状のフィルムであっても、スリット糸にしたものを原料とした織物や編物であってもよい。また、織物や編物は全て多層積層フィルムスリット糸で作製しても良いし、他の繊維である、ポリエステル・ナイロン・アクリル・ポリウレタン・ポリエチレン・ポリプロピレン・アセテート・レーヨン・ポリノジック・キュプラ・絹・綿・麻・羊毛等と交撚・交織・交編したものでも良い。織物にあって、当該スリット糸がタテ全面またはヨコ全面、またはタテ・ヨコ全面に使用されていることが特に望ましい。縞柄・格子柄・ジャカード柄などの交織織物にあっては、当該スリット糸が少なくとも幅が1cm以上となるよう、また、他繊維と交互に用いられ場合にあっては、全体の30%以上の使用比率となるよう織物設計が望ましい。当該スリット糸の使用がまばらの場合は、模様付与の効果が十分活かされない場合がある。編物にあっても同様に、当該スリット糸が全面に使用されることが望ましく、少なくとも幅が1cm以上となるよう編物設計が望ましい。本発明では、織物及び編物の総称として布帛という名称を用いる。
本発明で用いられる水溶性高分子糊は、所定の柄を印捺でき、乾熱処理後水洗等により糊落としできるものであれば特に限定されない。例えば、小麦デンプンや米粉などのデンプン系糊、ローカストビーンなどの天然ゴム糊、アルギン酸ナトリウム糊、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの繊維素誘導体糊、カルボキシメチルデンプンや焙焼デンプンなどの加工デンプン糊、各種天然ゴム糊を変性させた加工天然ゴム糊、ポリビニルアルコールのようなビニル誘導体糊などがあげられる。特に望ましくは、加工デンプン糊、加工天然ゴム糊などである。
上記糊剤を水に溶解混合し印捺糊とし、所定の柄に当該布帛に印捺する。印捺方式は、ローラー捺染、フラットスクリーン捺染、円筒スクリーン捺染など特に限定されない。
印捺後、乾熱処理だけを行う場合は、送風乾燥機等で乾燥させる。この時乾燥温度は120℃以上200℃以下、望ましくは170℃以上195℃以下である。処理時間は1分間以上が望ましく、特に望ましくは2分間以上5分間以下である。乾熱加圧(プレス)複合処理を行う場合も、温度は乾熱処理の場合と同様であり、加圧力は特に限定しないが、望ましくは200g/平方cm以上500g/平方cm以下である。また、乾熱加圧処理時間としては、5秒以上5分以下、望ましくは10秒以上2分以下である。乾熱加圧装置として代表的なものとしては、転写捺染に使用する転写捺染機等があげられる。
乾熱処理あるいは乾熱加圧処理したのち、水洗等により水溶性高分子糊を洗い落とすことにより、印捺部分と非印捺部分とが異なる色の構造発色することにより、当該布帛に模様を付与することができる。
本発明により、構造発色を特徴とする多層積層フィルム構造素材を用いた布帛に、簡便かつ低コストで、異なる色の構造発色する部分を模様として付与する方法が提供された。本発明は、ファッショ性の高い衣料品やインテリアなどの繊維素材を供給する際に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜10〕
本発明の各種水溶性高分子糊を使用した場合と、乾熱処理条件及び乾熱加圧処理条件を変化させた場合の、構造発色の色変化による模様付与効果を評価するために、以下の各種条件による模様付与加工を行った。
本発明の各種水溶性高分子糊を使用した場合と、乾熱処理条件及び乾熱加圧処理条件を変化させた場合の、構造発色の色変化による模様付与効果を評価するために、以下の各種条件による模様付与加工を行った。
表1は、各種水溶性高分子糊の模様付与効果を示すものである。水溶性高分子糊として、(実施例1)では、「インダルカAC140(Cesalpinia社製)」(加工天然ゴム系)5%糊を、(実施例2)では、「メイプロガムNP(Meyhall社製)」(加工天然ゴム系)5%糊を、(実施例3)では、「ニッカガムC−60(日華化学社製)」(加工デンプン系)5%糊を、(実施例4)では、「ファインガムHEL−3(第一工業製薬社製)」(CMC系)10%糊を、(実施例5)では、「アルギテックスC−LL(キミカ社製)」(アルギン酸ナトリウム)10%糊を、それぞれ使用し、一辺5cmの市松柄のシルクスクリーン型を用いて、タテ糸に多層積層フィルムスリット糸を使用した平織物(織物の詳細については実施例11に記載)に、手捺染法にて印捺した。室温で乾燥後、転写捺染機により、185℃で1分間乾熱加圧処理した。このときの加圧力は約300g/平方cmだった。その後、水洗、乾燥し、模様付与効果について目視観察により評価した。評価基準は、印捺部と非印捺部の発色変化が認められないもの(×)、印捺部と非印捺部の変化が少し認められるもの(△)、印捺部と非印捺部の変化がはっきりと認められるもの(○)の3段階である。
表2は、乾熱処理における温度と時間及び乾熱加圧処理における温度と時間の模様付与効果を示すものである。水溶性高分子糊として、「インダルカAC140(Cesalpinia社製)」(加工天然ゴム系)5%糊を使用し、一辺5cmの市松柄のシルクスクリーン型を用いて、タテ糸に多層積層フィルムスリット糸を使用した平織物に、手捺染法にて印捺した。室温で乾燥後、乾熱単独処理においては送風乾燥機を、乾熱加圧処理においては転写捺染機を使用した。(実施例6)では、乾熱処理120℃で5分間処理し、(実施例7)では、乾熱処理で170℃で5分間処理し、(実施例8)では、乾熱加圧処理で120℃で5分間処理し、(実施例9)では、乾熱加圧処理で170℃で1分間処理し、(実施例10)では、190℃で10秒間処理した。また、(比較例1)として乾熱処理で100℃で5分間処理し、(比較例2)として、乾熱加圧処理で100℃で2分間処理した。乾熱加圧処理での加圧力は約300g/平方cmだった。その後、水洗、乾燥し、模様付与効果について目視観察により評価した。評価基準は、実施例1から5の場合と同様である。
〔実施例11〕
模様付与加工用原布として、積層特殊フィルム「スペクトロス Cタイプ」のハーフ蒸着スリット糸織物を用いた。ハーフ蒸着とは、通常のアルミ蒸着銀糸と比較して少ない量のアルミ蒸着量のスリット糸でハーフミラーのように明るいところにかざすと透けて見える程度の蒸着を施したものである。この織物は、光の入射方向と見る観察者の位置により、蒸着アルミの銀色が主として見えたり、ピンク色が主に見えたりに、緑色に見えたりする特徴がある。当該織物は、タテ糸にスリット糸(80切り)を用い、ヨコ糸にナイロン糸(33dtex)を用い、織り密度はタテ糸が25.5本/cm、ヨコ糸が34本/cmの平織物である。プリント柄としては、1辺5cmの市松柄のシルクスクリーン型を用いて、加工天然ゴム系糊である「インダルカAC140(Cesalpinia社製)」5%糊を使用し手捺染法により印捺した。印捺後室温にて乾燥し、バッチ式の転写捺染機で、185℃で1分間乾熱加圧処理を行った。さらに、印捺した水溶性高分子糊を洗い落とすため、50℃の温浴中で水洗処理を十分行った。吊り干し乾燥の後、中温のアイロンで軽く仕上げ処理を行った。その結果斜め方向から見たときに、印捺部分と非印捺部分がそれぞれピンク色と緑色に、別の斜め方向からから見たときにそれぞれの色が反転し、それぞれ緑色とピンク色に見える、多層積層フィルムスリット糸織物に模様付与加工ができた。
模様付与加工用原布として、積層特殊フィルム「スペクトロス Cタイプ」のハーフ蒸着スリット糸織物を用いた。ハーフ蒸着とは、通常のアルミ蒸着銀糸と比較して少ない量のアルミ蒸着量のスリット糸でハーフミラーのように明るいところにかざすと透けて見える程度の蒸着を施したものである。この織物は、光の入射方向と見る観察者の位置により、蒸着アルミの銀色が主として見えたり、ピンク色が主に見えたりに、緑色に見えたりする特徴がある。当該織物は、タテ糸にスリット糸(80切り)を用い、ヨコ糸にナイロン糸(33dtex)を用い、織り密度はタテ糸が25.5本/cm、ヨコ糸が34本/cmの平織物である。プリント柄としては、1辺5cmの市松柄のシルクスクリーン型を用いて、加工天然ゴム系糊である「インダルカAC140(Cesalpinia社製)」5%糊を使用し手捺染法により印捺した。印捺後室温にて乾燥し、バッチ式の転写捺染機で、185℃で1分間乾熱加圧処理を行った。さらに、印捺した水溶性高分子糊を洗い落とすため、50℃の温浴中で水洗処理を十分行った。吊り干し乾燥の後、中温のアイロンで軽く仕上げ処理を行った。その結果斜め方向から見たときに、印捺部分と非印捺部分がそれぞれピンク色と緑色に、別の斜め方向からから見たときにそれぞれの色が反転し、それぞれ緑色とピンク色に見える、多層積層フィルムスリット糸織物に模様付与加工ができた。
〔実施例12〕
模様付与加工用フィルムシートとして、積層特殊フィルム「スペクトロス」の通常品(アルミ蒸着を行わないもの)Aタイプ、Cタイプ、Eタイプ3種類を用いた。「スペクトロスAタイプ」は、白地の上に置いたときに透過光が主に観察され青色が見え、黒地の上に置いたとき反射光が主に観察され赤色が見える。「スペクトロスCタイプ」は、透過光のピンク色と、反射光の緑色が見える。「スペクトロスEタイプ」は、透過光の黄色と、反射光の青色が見える。それぞれの「スペクトロス」は見る方向により上記に示した色以外の色も発色するし、またほぼ透明に見えるときもある。プリント柄として1辺5cmの市松柄を使用し、捺染糊も実施例11と同じ「インダルカAC140」5%糊を使用し、手捺染法により印捺した。印捺後室温にて乾燥し、バッチ式の真空転写捺染機で、185℃で1分間乾熱加圧処理を行った。さらに、印捺した水溶性高分子糊を洗い落とすため、水道流水中で水洗処理を十分行い、平干しにより乾燥した。その結果、ある方向から観察したとき印捺部分と非印捺部分とが異なる色に構造発色し、また別の方向から観察したときに、前記とは反転した色に構造発色する、多層積層フィルムシートの模様付与加工ができた。
模様付与加工用フィルムシートとして、積層特殊フィルム「スペクトロス」の通常品(アルミ蒸着を行わないもの)Aタイプ、Cタイプ、Eタイプ3種類を用いた。「スペクトロスAタイプ」は、白地の上に置いたときに透過光が主に観察され青色が見え、黒地の上に置いたとき反射光が主に観察され赤色が見える。「スペクトロスCタイプ」は、透過光のピンク色と、反射光の緑色が見える。「スペクトロスEタイプ」は、透過光の黄色と、反射光の青色が見える。それぞれの「スペクトロス」は見る方向により上記に示した色以外の色も発色するし、またほぼ透明に見えるときもある。プリント柄として1辺5cmの市松柄を使用し、捺染糊も実施例11と同じ「インダルカAC140」5%糊を使用し、手捺染法により印捺した。印捺後室温にて乾燥し、バッチ式の真空転写捺染機で、185℃で1分間乾熱加圧処理を行った。さらに、印捺した水溶性高分子糊を洗い落とすため、水道流水中で水洗処理を十分行い、平干しにより乾燥した。その結果、ある方向から観察したとき印捺部分と非印捺部分とが異なる色に構造発色し、また別の方向から観察したときに、前記とは反転した色に構造発色する、多層積層フィルムシートの模様付与加工ができた。
Claims (3)
- 構造発色を特徴とする多層積層フィルムシートまたは、当該フィルムを原料としたスリット糸を全部または一部用いた布帛において、水溶性高分子糊を所定部分に印捺した後、少なくとも当該印捺部分を含むシートまたは布帛に乾熱処理を行うことにより、シートまたは布帛に異なる色の構造色を発色させ模様付与を行う加工方法。
- 請求項1の乾熱処理を行うときに、同時に押圧し、乾熱加圧処理を行う加工方法。
- 請求項1から2の記載の方法によって得られるフィルムシートまたは布帛、及びこれらを使用した製品
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