JP2010111585A - 機能性を持つ飼料、食品、医薬品組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 食経験の豊富な食品に含まれていて安全性の面で安心であり、副作用がほとんどなく、しかも安価で入手の容易な化合物からなり、経口摂取により骨格筋および脂肪組織の脂肪代謝が促進され、糖取込みが正常化されることにより高血糖が改善されメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病を予防・改善できる。骨格筋および脂肪組織における脂肪代謝促進によりエネルギー代謝効率を上昇ならびにメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の予防・改善のための飼料、食品、医薬品組成物を提供するとともに、筋肉弱体化防止効果を持つ飼料、食品、医薬品組成物をも提供する。更に動脈硬化予防効果をも持つ飼料、食品、医薬品組成物を提供する。
【解決手段】 酢酸及び酢酸塩から選択される少なくとも1種の化合物からなる飼料、食品、医薬品組成物を経口摂取することによる。
【選択図】 図1a
【解決手段】 酢酸及び酢酸塩から選択される少なくとも1種の化合物からなる飼料、食品、医薬品組成物を経口摂取することによる。
【選択図】 図1a
Description
本発明は、骨格筋および脂肪組織における脂肪代謝促進機能、筋力弱体防止機能を持つ飼料、食品、医薬品組成物に関する。特に、酢酸及び酢酸塩から選択される少なくとも1種の化合物を含有する食品、医薬品組成物の開発技術に関するものである。
近年、生活習慣病が大きな社会問題として取り上げられている。体脂肪の過剰な蓄積は筋肉における脂肪の異常沈着および脂肪代謝の低下を招きメタボリックシンドロームの合併、またインスリン抵抗性や高血糖を招き、2型糖尿病発症へと繋がる。したがって、これら病態の発症予防のためには、筋肉における脂肪代謝を亢進させることと内蔵脂肪蓄積を抑制することの両者が重要である。山下らは、特開2005−336143号公報(特許文献1)において、肝臓に於ける脂肪合成酵素系に関する発明を申請している。更に研究を進めた結果、今回新規な特許を発明するに至った。筋肉における脂肪代謝亢進の最良の方法は運動であるとされているが、現代人の生活環境においては運動を継続して行なうことは困難であり、一定の効果が得られにくく、本発明の持つ意義は大きく新規性がある。
特開2002−193797号公報(特許文献2)には、長期摂取によってインスリン抵抗性を改善する組成物であって、酢酸、酢酸イオン及び酢酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするインスリン抵抗性改善用食品又は医薬品組成物が記載されているが、骨格筋における脂肪代促進効果、筋力減退防止効果については記載されていない。
特開2004−57178号公報(特許文献)には、酢酸カルシウム1パーセントないし30パーセントを醸造酢に溶解した機能性調味料が記載されている。当該調味料は、酢酸カルシウムとしての機能を有しながら食味が改善された調味料であることが記載されており、本発明との関連は無い。
本発明は、食経験の豊富な食品に含まれていて安全性の面で安心であり、副作用がほとんどなく、しかも安価で入手の容易な化合物からなり、経口摂取により骨格筋や脂肪組織における脂肪代謝促進によりメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病を予防・改善し、筋力減退防止効果を発揮、あわせて動脈硬化予防を改善することを目的とし、この目的を達成するための食品及び医薬品組成物を提供するものである。
上記課題は、酢酸及び酢酸塩から選択される少なくとも1種の化合物からなり、
経口摂取による飼料、食品、医薬品組成物を提供することで解決される。発明者は、この課題を解決するために、以下の内容の動物試験を実施した。
経口摂取による飼料、食品、医薬品組成物を提供することで解決される。発明者は、この課題を解決するために、以下の内容の動物試験を実施した。
OLETF(Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty)ラットは24−30週齢で肥満及び2型糖尿病を発症するモデル動物である。一方、LETO(Long-Evans Tokushima Ostuka)ラットはOLETFラットの対照群として用いられ、OLETFラットと遺伝的には近縁であるが、糖尿病を発症しない動物である。4週齢のOLETF雄ラットを無作為に水群及び酢酸群に分け、水群には蒸留水を1日当たり5ミリリッター/キログラム体重、酢酸群には1体積%の酢酸水溶液を1日当たり5ミリリッター/キログラム体重、それぞれ週に5日間、5週齢から30週齢までの約半年間投与した。またLETO群は水および酢酸の投与を行わずに飼育した。その結果水群と比較して酢酸群の体重増加は小さく、水投与群ではインスリン抵抗性、高レプチン血漿などが起こっているが、酢酸投与群ではそれは著しく改善されていた。20週齢における水群および酢酸群のエネルギー代謝を測定した(図1)。酢酸群は水群に比較して有意に酸素の吸収量が高く、さらにエネルギー消費量が高いことが明らかになった。
さらに、30週飼育後のOLETFラットの腹筋における脂肪分解系酵素および糖取込みに関与するタンパク質の遺伝子発現を調べた。その結果、酢酸投与群は水群に比較して脂肪分解の律速酵素である長鎖アシル-CoA脱水素酵素の発現量が高い傾向がみられた。またこの発現量はLETOラットより有意に高かった(図2)。さらに脂肪分解に必要な酸素の運搬機能を有するミオグロビンの発現レベルは、酢酸群は水群およびLETOラットより有意に高かった(図3)。これより、酢酸には、筋肉における脂肪酸分解を促進する効果がある。それに対してOLETFラットの水投与群では脂肪代謝活性が低下しており、結果として筋肉において正常な糖取込みが阻害されていると考えられる。そこで糖尿病の発症要因として最も重要な糖取込みの機能を有するグルコーストランスポーター4の発現レベルを調べた(図4)。その結果、水投与群ではグルコーストランスポーター4の発現レベルが低下しているのに対して、酢酸投与群ではLETOラットと同レベルを保持していた。これより糖尿病病態で低下している筋肉における糖取込みを、酢酸摂取により維持・改善できると考えられる。同様の傾向は前足三頭筋においても見られたが、肝臓など筋肉組織以外の組織では見られなかった(図5)。また腹腔内脂肪組織における脂肪分解酵素の発現レベルを調べたところ、酢酸摂取群で発現が有意に上昇していた(図6)。酢酸を摂取すると脂肪組織においても脂肪代謝を活性化する効果があると考えられる。このことは酢酸が、内蔵脂肪蓄積が引き金となり起こるメタボリックシンドロームの予防・改善をもたらすと示唆するものである。また、白色脂肪細胞の脂肪滴肥大化を抑制することを動物実験で確認した(図7)。
このとき、酢酸根(CH3COO)の含有量が10ミリグラムから5000ミリグラムであることが好適であり、50ミリグラムから500ミリグラムであることがより好適である。また、酢酸塩、特に酢酸カリウムを含有することが好ましい。塩を形成していない酢酸根と、塩を形成している酢酸根の割合は、いずれでも良いが、より好ましくは、5対1以下であることがより好ましいことが判明した。
本発明の食品・医薬品組成物は、食経験の豊富な食品に含まれていて安全性の面で安心であり、副作用がほとんどなく、しかも安価で入手の容易な化合物からなるものである。これを経口摂取することにより、骨格筋および脂肪組織における脂肪代謝を促進すること或いは、筋肉弱体防止効果をあげることができる。
本発明の飼料、食品、医薬品組成物は、酢酸及び酢酸塩から選択される少なくとも1種の化合物からなり、その形態は、液状、固体状、粉状の何れでもよく、必要量の酢酸及び酢酸塩を含むものである。
先に説明したように、酢酸を長期間にわたって経口摂取したラットは、対照のラットに比べて、活動時の代謝量が増大していた。この時の骨格筋における脂肪代謝系酵素の遺伝子発現レベルを調べてみると、実際に対照ラットに比較して酢酸摂取群では脂肪酸酸化の律速酵素である脂肪酸脱水素酵素の発現が増加していた。これより、酢酸摂取群では骨格筋の脂肪酸代謝が亢進されていると示唆される。さらに、運動能力が向上した骨格筋において増加するミオグロビンの遺伝子発現量を調べると酢酸摂取した場合に有意に増加していた。骨格筋における糖取込みの機能を有するGLUT4の発現量も酢酸摂取群で増加していた。さらに白色脂肪細胞の増加が観察され、アディポネクチンの増加も認められた。酢酸が骨格筋における脂肪代謝を促進させエネルギー効率を上昇させること、またメタボリックシンドロームや2型糖尿病を予防・改善することが明らかにされたものであり、筋肉弱体化防止効果をも明らかになった。また脂肪組織における酢酸の影響を調べたところ、酢酸摂取群では脂肪分解系の酵素遺伝子の発現量が増加していた。酢酸摂取により脂肪組織においても脂肪代謝を増加させることを示すものである。
ここで、酢酸又は酢酸塩は、その一部又は全部が酢酸イオンとして解離していても構わない。すなわち、本発明の脂肪代謝促進剤においては、その有効成分が、解離していない酢酸、酢酸塩の結晶、酢酸イオンのいずれの状態で含まれていても良い。酢酸水溶液をラットに経口摂取させて確認された効果は、酢酸塩であっても発現された。
酢酸又は酢酸塩の種類及び状態は特に限定されない。化学的に合成された酢酸を使用しても構わないし、醸造酢など発酵由来の酢酸を使用しても構わない。また、醸造酢由来の酢酸を精製して使用しても良い。
酢酸塩の種類は特に限定されず、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのアルカリ金属塩、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などの金属塩が例示される。アルカリ性が強すぎず、摂取される金属イオンによる副作用が少ないという点からは、アルカリ土類金属塩が好ましい。なかでも、安全性に優れている酢酸カリウムが最適である。ナトリウムイオンの排出を促すなど、健康に資することが可能である。したがって、酢酸塩を適当に配合した脂肪代謝促進剤とすることも好適である。例えば、酢酸カルシウムと酢酸カリウムを含有するものなどが好適なものとして例示される。
食品としては、調味料や飲料(ドリンク)が好適な実施態様として例示される。この場合、一定以上の量を摂取しやすくするためには、酢酸の少なくとも一部が酢酸塩を形成していることが好適である。例えば、醸造酢の一部を中和して酢酸塩にした調味料は、本発明の好適な実施態様の一つである。また、酢酸塩を含有する飲料も本発明の好適な実施態様の一つである。その他、各種の食品に酢酸又は酢酸塩を加えたものを摂取することができる。また、酢酸の酸味をクエン酸や乳酸などの酸味がマスクし酢酸の酸味を軽減化する作用を持つため、0.1〜1%の酸味料を加えた飲料とするものも実施態様の一つである。以上のような食品は、脂肪代謝促進という特殊な機能を備えた機能性食品ということができる。
以下、実施例を使用して本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1
食酢100mlに炭酸カルシウム1.1gを加え、pH4.0の酸性調味液を調製した。この酸性調味液を使用し、すし飯を作った。通常2合のすし飯を作る場合に使用する食酢の量は約40mlであるが、固めに炊飯し、本調味液を用いてすし飯を調製すれば、当該調味液として100ml(酢酸根換算値で約4.5g:そのうち約29%がカルシウム塩)使用することが可能となり、上記食酢40ml使用のときと比べて酸味は、官能的に大差ないものであった。
食酢100mlに炭酸カルシウム1.1gを加え、pH4.0の酸性調味液を調製した。この酸性調味液を使用し、すし飯を作った。通常2合のすし飯を作る場合に使用する食酢の量は約40mlであるが、固めに炊飯し、本調味液を用いてすし飯を調製すれば、当該調味液として100ml(酢酸根換算値で約4.5g:そのうち約29%がカルシウム塩)使用することが可能となり、上記食酢40ml使用のときと比べて酸味は、官能的に大差ないものであった。
実施例2
食酢50ミリリッターにみかんジュース200ミリリッター、ハチミツ7グラムを加えて飲料とした。
食酢50ミリリッターにみかんジュース200ミリリッター、ハチミツ7グラムを加えて飲料とした。
実施例3
食酢50ミリリッターに炭酸カリウム100ミリグラムを加えた水溶液にりんごジュース200ミリリッター、ハチミツ10グラムを加えて飲料とした。
食酢50ミリリッターに炭酸カリウム100ミリグラムを加えた水溶液にりんごジュース200ミリリッター、ハチミツ10グラムを加えて飲料とした。
実施例4
250ミリグラムの酢酸カリウムに乳糖400ミリグラム、ステアリン酸マグネシウム50ミリグラムを混合した後、打錠して錠果を作製した。
250ミリグラムの酢酸カリウムに乳糖400ミリグラム、ステアリン酸マグネシウム50ミリグラムを混合した後、打錠して錠果を作製した。
Claims (5)
- 酢酸及び酢酸塩から選択される少なくとも1種の化合物からなり、経口摂取により骨格筋および脂肪組織における脂肪代謝を促進し、メタボリックシンドロームおよび2型糖尿病を予防・改善することを特徴とする食品、医薬品組成物
- 筋肉中のミオグロビン及びグルコーストランスポーター4が増加し、エコノミー症候群や宇宙旅行による筋肉弱体化防止にも効果が認められることを特徴とする飼料、食品、医薬品組成物
- 白色脂肪細胞の脂肪滴肥大化を抑制し、動脈硬化防止効果を特徴とする飼料、食品、医薬品組成物
- 酢酸根を10ミリグラムから5000ミリグラムを含み、好ましくは、50ミリグラムから500ミリグラムを含む食品、医薬品組成物
- 塩を形成していない酢酸根と、塩を形成している酢酸根の割合は、任意であって差し支えないが、好ましくは5に対して1以下であることを特徴とする固体、液体、粉体、カプセル等の飼料、食品、医薬品組成物
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008252216A JP2010111585A (ja) | 2008-09-30 | 2008-09-30 | 機能性を持つ飼料、食品、医薬品組成物 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011063554A (ja) * | 2009-09-18 | 2011-03-31 | Tokyo Univ Of Marine Science & Technology | アディポネクチン分泌調節剤 |
JP2018522556A (ja) * | 2015-07-23 | 2018-08-16 | コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジーKorea Research Institute Of Chemical Technology | 脂肪細胞とマクロファージの三次元共培養方法 |
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2008
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US10760056B2 (en) | 2015-07-23 | 2020-09-01 | Korea Research Institute Of Chemical Technology | Three-dimensional co-culture method for adipocytes and macrophages |
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