JP2010110723A - 傾斜膜材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板上に形成された膜の組成が膜の厚さ方向に3層構造をなしていることによって材料の厚さ方向の両側で組成が同一か又は近い組成を有している傾斜膜材料の製造方法を提供する。
【解決手段】有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布し、その後溶媒を揮発して傾斜膜材料を製造する方法において、前記混合物の塗布層を前記溶媒の飽和蒸気中に放置する工程を設けることを特徴とする傾斜膜材料の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布し、その後溶媒を揮発して傾斜膜材料を製造する方法において、前記混合物の塗布層を前記溶媒の飽和蒸気中に放置する工程を設けることを特徴とする傾斜膜材料の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、傾斜膜材料の製造方法に関し、さらに詳しくは有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布し、溶媒を揮発して傾斜膜材料を製造する際に特定の工程を設けることによって、基板上に形成された膜の組成が膜の厚さ方向に3層構造をなしている傾斜膜材料の製造方法に関する。
金属の防食を目的に、めっき、塗装などのコーティングが用いられているが、強酸性雰囲気での防食ではめっきは酸化・溶出などの問題があり適用が困難であり、有機ポリマーからなる塗装は膜中を酸素、水分、腐食因子が透過し、塗膜劣化や剥離が生じ、耐久性の確保が困難である。
そこで、ゾル−ゲル法などによるセラミック膜が検討されているが、セラミック膜は硬くて脆い特性があり、内部応力による割れ、基材との熱膨張率の差による割れが発生しやすいという問題が指摘されている。
また、セラミック膜は、2μm以下の薄膜で適用されるため、また通常の機械加工面などの粗い面に適用した場合特に膜欠陥が発生しやすく、遮断性の信頼性が乏しい。
そこで、ゾル−ゲル法などによるセラミック膜が検討されているが、セラミック膜は硬くて脆い特性があり、内部応力による割れ、基材との熱膨張率の差による割れが発生しやすいという問題が指摘されている。
また、セラミック膜は、2μm以下の薄膜で適用されるため、また通常の機械加工面などの粗い面に適用した場合特に膜欠陥が発生しやすく、遮断性の信頼性が乏しい。
一方、セラミック材料として一般的なシリカ成分は耐腐食性、耐酸化性、耐溶剤性などに優れているが、機械的な衝撃で割れが生じやすい欠点がある。有機ポリマーは機械的衝撃を吸収する特性を有し厚膜化も可能であるが、酸素、水分などの遮断性に乏しく、傷つきにも弱い。
両者の欠点を補うために、多層膜などが用いられているが、一般にコーティングの数だけ塗装→焼き付(乾燥)の工程が必要であり、工程的に長いものとなり、コスト的にも不利である。また、層と層との境界部は、欠陥の発生や応力の集中が生じやすく、剥離などの破壊が生じやすい。
両者の欠点を補うために、多層膜などが用いられているが、一般にコーティングの数だけ塗装→焼き付(乾燥)の工程が必要であり、工程的に長いものとなり、コスト的にも不利である。また、層と層との境界部は、欠陥の発生や応力の集中が生じやすく、剥離などの破壊が生じやすい。
このため、近年、厚さ方向に材料の特性が段階的に変化する傾斜膜材料への関心が高くなっている。傾斜膜材料とは、材料を構成する要素(金属、セラミックス、プラスチックスなど)の組成を連続的にかつ使用環境に合わせて傾斜化し、熱膨張、熱伝導、機械的、化学的等の特性を制御することによって得られる機能が連続的に変化する傾斜機能材料(Functionally Graded Material)の代表例である。
そして、前記膜欠陥の少ない膜材料を目的として、種々の傾斜膜材料や多層構造のシートが開発されている。
そして、前記膜欠陥の少ない膜材料を目的として、種々の傾斜膜材料や多層構造のシートが開発されている。
例えば、特開平8−283425号公報には、有機高分子と金属酸化物との厚さ方向の組成傾斜複合体と、前記両成分と共通溶媒溶液を基材上に塗布したものを水及び/又は金属アルコキシドの重合触媒を含む雰囲気に保持した後、乾燥、熱処理する組成傾斜複合体の製造法が記載されている。そして、前記公報に記載の組成傾斜複合体は、図面によれば所謂2層の傾斜複合体であり、3層の傾斜複合体については記載されていない。
特開2000−248065号公報には、有機重合体と金属酸化物とが共有結合していて有機重合体と金属酸化物との2成分の含有率が連続的に変化した成分比傾斜構造を有する有機−無機成分傾斜複合材料の製造方法が記載されている。
特開2001−261864号公報には、イソシアナトシラン化合物と有機ケイ素化合物の加水分解、縮合した縮合物とを組み合わせて塗工、加熱処理して得られるシリカ成分の含有量が厚さ方向に傾斜した有機−無機ハイブリッド傾斜材料が記載されている。そして、前記公報に具体例として示されている傾斜材料の膜厚は0.4〜0.8μmである。
特開2001−261864号公報には、イソシアナトシラン化合物と有機ケイ素化合物の加水分解、縮合した縮合物とを組み合わせて塗工、加熱処理して得られるシリカ成分の含有量が厚さ方向に傾斜した有機−無機ハイブリッド傾斜材料が記載されている。そして、前記公報に具体例として示されている傾斜材料の膜厚は0.4〜0.8μmである。
特開2001−301080号公報には、膜中の金属系化合物の含有率が膜表面から深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有する有機−無機ハイブリッド膜が記載されている。そして、前記公報に具体例として示されている傾斜ハイブリッド膜の膜厚は90nm(0.09μm)である。
さらに、特開2005−335094号公報には、ガスバリア層と平坦化層とが複数回繰り返し積層された構造の高バイリア性シートが記載されている。しかし、前記公報には傾斜材料については記載されていない。
さらに、特開2005−335094号公報には、ガスバリア層と平坦化層とが複数回繰り返し積層された構造の高バイリア性シートが記載されている。しかし、前記公報には傾斜材料については記載されていない。
しかし、これらの従来技術によれば、傾斜材料の場合には2層構造であって基材と接する側の組成とその反対側(表面側)の組成とが全く異なるため傾斜材料の適用範囲に制限があり、また多層材料の場合は製造工程が複雑である。
従って、本発明の目的は、基板上に形成された膜の組成が膜の厚さ方向に3層構造をなしていることによって材料の厚さ方向の両側で組成が同一か又は近い組成を有している傾斜膜材料の製造方法を提供することである。
従って、本発明の目的は、基板上に形成された膜の組成が膜の厚さ方向に3層構造をなしていることによって材料の厚さ方向の両側で組成が同一か又は近い組成を有している傾斜膜材料の製造方法を提供することである。
本発明は、有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布し、その後溶媒を揮発して傾斜膜材料を製造する方法において、前記混合物の塗布層を前記溶媒の飽和蒸気中に放置する工程を設けることを特徴とする傾斜膜材料の製造方法に関する。
本発明における傾斜膜材料の組成の測定は、後述の実施例の欄に詳細に記載されるSEMとEDSとによって観測して求められる。
本発明における傾斜膜材料の組成の測定は、後述の実施例の欄に詳細に記載されるSEMとEDSとによって観測して求められる。
本発明によれば、基板上に形成された膜の組成が膜の厚さ方向に3層構造をなしていることによって材料の厚さ方向の両側で組成が同一か又は近い組成を有している傾斜膜材料を簡単な操作で容易に得ることができる。
本発明について、図1〜図2、図3Aおよび図3Bを用いて説明する。
図1は、本発明の1つの実施態様の製造方法によって得られる傾斜膜材料の断面模式図である。
図2は、本発明の他の実施態様の製造方法によって得られる傾斜膜材料の断面模式図である。
図3Aは、本発明の実施態様の製造方法における基材にキャスト法で塗布し、得られた塗布層を溶媒の飽和蒸気中に放置する工程の1つの例を示す模式図である。
図3Bは、本発明の実施態様の製造方法における基材にディッピング法で塗布し、得られた塗布層をキャスト法と同様の溶媒の飽和蒸気中に放置する工程の1つの例を示す模式図である。
図1は、本発明の1つの実施態様の製造方法によって得られる傾斜膜材料の断面模式図である。
図2は、本発明の他の実施態様の製造方法によって得られる傾斜膜材料の断面模式図である。
図3Aは、本発明の実施態様の製造方法における基材にキャスト法で塗布し、得られた塗布層を溶媒の飽和蒸気中に放置する工程の1つの例を示す模式図である。
図3Bは、本発明の実施態様の製造方法における基材にディッピング法で塗布し、得られた塗布層をキャスト法と同様の溶媒の飽和蒸気中に放置する工程の1つの例を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の1つの実施態様の製造方法によって得られる傾斜膜材料は、基板(例えば、アルミ基材などの金属基材)上に形成された膜の組成が膜の厚さ方向に例えば平均的にシリカ含有率が高い、例えば70質量%程度のシリカリッチ層/平均的に有機ポリマー含有率が高い、例えば50質量%以上の有機ポリマーリッチ層/平均的にシリカ含有率が高い、例えば70質量%程度のシリカリッチ層の、材料の厚さ方向の両側で組成が同一か又は近い組成を有する3層構造をなしていて、全体として組成が傾斜状に変化している。
また、図2に示すように、本発明の他の実施態様の製造方法によって得られる傾斜膜材料は、基板(例えば、アルミ基材などの金属基材)上に形成された膜の組成が膜の厚さ方向に例えば平均的に有機ポリマー含有率が高い、例えば70質量%程度の有機ポリマーリッチ層/平均的にシリカ含有率が高い、例えば50質量%以上のシリカリッチ層/平均的に有機ポリマー含有率が高い、例えば70質量%程度の有機ポリマーカリッチ層の、材料の厚さ方向の両側で組成が同一か又は近い組成を有する3層構造をなしていて、全体として組成が傾斜状に変化している。
本発明においては、基材に塗布する塗布工程として、例えば図3Aおよび図3Bに示す2つの方法を採用し、その塗布層を溶媒の飽和蒸気中に放置する工程である放置工程を採用することによりなし得る。
図3Aに示すように、有機ポリマーの溶媒溶液とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布する方法がキャスト法である場合、前記の放置工程は、基材と塗布層をカバーで覆うことによって、溶媒の飽和蒸気中に例えば40℃で2日間静置する工程であり得る。このキャスト法は特に厚膜の形成に有利である。このキャスト法によって得られるキャスト膜は基材とともに用いることも可能であるが、キャスト膜を基材から引き剥がして使用することも可能であり、引き剥がして使用する用途において、例えば中央部の有機ポリマー成分リッチ層により耐屈曲性に富みシリカ成分リッチ層を両外側に有することで、耐化学性、傷付き性に優れた傾斜膜を得ることができる。
図3Aに示すように、有機ポリマーの溶媒溶液とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布する方法がキャスト法である場合、前記の放置工程は、基材と塗布層をカバーで覆うことによって、溶媒の飽和蒸気中に例えば40℃で2日間静置する工程であり得る。このキャスト法は特に厚膜の形成に有利である。このキャスト法によって得られるキャスト膜は基材とともに用いることも可能であるが、キャスト膜を基材から引き剥がして使用することも可能であり、引き剥がして使用する用途において、例えば中央部の有機ポリマー成分リッチ層により耐屈曲性に富みシリカ成分リッチ層を両外側に有することで、耐化学性、傷付き性に優れた傾斜膜を得ることができる。
また、図3Bに示すように、有機ポリマーの溶媒溶液とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布する方法がディッピン法である場合、前記の放置工程は、キャスト法と同様カバーで覆うことで、溶媒の飽和蒸気中に例えば室温(10〜25℃)下に例えば3時間放置する工程であり得る。このディッピン法は特にコーティング薄膜の形成に有利である。このディッピン法によって得られるコーティング薄膜は基材としての金属部材のコーティング材として、基材をシリカ成分リッチ層により強固な密着性を、表面のシリカ成分リッチ層により強固な保護作用(化学劣化、腐食、傷)を得ることができる。一方、有機ポリマー成分リッチ層により、耐振動性に優れ割れにくい膜を得ることができ、一方、必要な場合には厚肉化を計ることも出来る。
本発明においては、有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布し、その後溶媒を揮発する傾斜膜材料を製造する方法において、前記混合物の塗布層を前記溶媒の飽和蒸気中に放置する工程を設けることが必要であり、この工程を設けることによって従来の2層構造を有する傾斜膜材料又は多層材料とは構造が異なる前記の3層傾斜膜材料を得ることができるのである。
本発明の製造方法によって前記の3層構造であって全体として組成が傾斜状に変化している傾斜膜材料を得ることができる理論的な解明はなされていないが、混合溶液中の溶質成分であるシリカゲルとポリマーとの混合物中の基材との親和力が強い方が基材に接する側に層を形成すると考えられ、例えば基材がアルミニウム基材の場合は通常はポリマーとシリカゲルとではシリカゲルの方が基材に対して親和力が強く、アルミニウム基材に接する側にシリカリッチ層が形成されると考えられる。
上記の基材との親和力の他に、表面張力、溶媒との溶解性も傾斜3層構造を決定する因子として考慮し得る。
そして、溶媒の飽和蒸気圧雰囲気中に放置する工程を設けることにより層状相分離にあたって、成分同士が互いに所定の向きに移動するための移動の時間を確保することが可能となり、傾斜をより強くし3層構造化することが可能になると考えられる。
上記の基材との親和力の他に、表面張力、溶媒との溶解性も傾斜3層構造を決定する因子として考慮し得る。
そして、溶媒の飽和蒸気圧雰囲気中に放置する工程を設けることにより層状相分離にあたって、成分同士が互いに所定の向きに移動するための移動の時間を確保することが可能となり、傾斜をより強くし3層構造化することが可能になると考えられる。
さらに、傾斜化のドライビングフォースとしては基材と溶質成分である有機ポリマーとシリカゲルとの混合物との相互作用の大小、有機ポリマーとシリカゲルとの比重差の効果、表面における溶質濃度差発生の効果、有機ポリマーの分子量等が作用し、これら各因子の作用の大きさの総和が傾斜構造の形と向きを定めると考えられ、これら複数因子の中で作用速度に大小があって、且つ作用の向きが異なる場合に、3層構造が入れ替わった膜の形成が可能であると考えられる。
前記の基材としては、任意の種類の基材が挙げられ、例えば金属基材、例えばアルミニウム基材(アルミ基材と略記することもある。)、Feめっき層あるいはZnめっき層のようなめっき層を有するアルミニウム基材、鉄基材、ガラス基板やプラスチック基材などを挙げることができる。基材としてアルミ基材のように基材表面が酸化物となっていてもよい。
また、本発明の方法によって得られる傾斜膜材料の使用目的によっても使用する基材を選択することが有り得る。傾斜膜材料を基材から引き剥がして用いる場合は、基材の表面は平坦であることが好ましく、傾斜膜材料を基材の保護膜として用いる場合は基材の表面は平坦である必要はない。
また、本発明の方法によって得られる傾斜膜材料の使用目的によっても使用する基材を選択することが有り得る。傾斜膜材料を基材から引き剥がして用いる場合は、基材の表面は平坦であることが好ましく、傾斜膜材料を基材の保護膜として用いる場合は基材の表面は平坦である必要はない。
本発明における有機ポリマーとしては、水および/又は有機溶媒に可溶な有機ポリマーであれば特に制限はないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン):[−(CH2C−(N−C4H6O)H)n−]、PVAc(ポリビニルアセテート):[−(C2H3OCOCH3)n−]、セルロース誘導体(ヒドロキシメチル−又はカルボキシメチル−セルロース)のような多糖、PVA(ポリビニルアルコール):[−(CH2CH(OH))n−]、ポリアルキレングリコール、PUr(ポリウレタン、特に水性ウレタン):[−(OCN−R−NHCOO−R’)n−]、これらの2種以上からなる共重合体やこれらの混合物、特にPVP、PVAc、PVA、PUrやこれらの混合物を挙げることができる。
有機ポリマーの選択に当たっては、目的とする用途において耐衝撃性や耐振動性を望むときには特に水性ポリウレタンやポリビニルアセテートなどのガラス転移点が低温域にあるものを選ぶことが望ましい。また、ポリビニルピロリドンのようにガラス転移温度が高温域にある有機ポリマーであってもガラス転移点が低温域にある有機ポリマー、例えばポリウレタンなどの他の有機ポリマーと組み合わせることによって有機ポリマー選択の自由度を増すことが可能である。
有機ポリマーの選択に当たっては、目的とする用途において耐衝撃性や耐振動性を望むときには特に水性ポリウレタンやポリビニルアセテートなどのガラス転移点が低温域にあるものを選ぶことが望ましい。また、ポリビニルピロリドンのようにガラス転移温度が高温域にある有機ポリマーであってもガラス転移点が低温域にある有機ポリマー、例えばポリウレタンなどの他の有機ポリマーと組み合わせることによって有機ポリマー選択の自由度を増すことが可能である。
さらに、本発明の方法においては、ポリマーブレンド、例えば有機ポリマーとしてホモポリマー同士のブレンド、共重合体とホモポリマーとのブレンドなどのポリマーブレンドを用いることによって、傾斜層の構造、傾斜層の順番を変化させ得る。例えば、2種類のポリマーのブレンド物とシリカゲルとの合計3成分のハイブリッドでは、ポリマーブレンド対シリカゲルという擬似2成分の層状化構造を形成し得る。これは、ブレンドしたポリマー成分が対シリカゲル成分に対して一つのグループとして作用することによると考えられる。
そして、基材、例えばアルミニウム基材とシリカおよびポリマーブレンドとの組合せの場合、シリカとポリマーブレンドとで、アルミニウム基材との親和力が強い方が基材に接する側に層を形成すると考えられるので、例えば、PVPとPVAとの質量比1:1のポリマーブレンドとシリカとでは前記ポリマーブレンドの方がアルミニウム基材に対して親和力が強くなり得て、このような場合にはアルミニウム基材に接する側に有機ポリマーリッチ層が形成されると考えられる。
また、本発明における前記のシリカゲルとしては、加水分解して縮重合が可能な反応性ケイ素化合物、例えば、加水分解可能な置換基がケイ素1原子当たり2個であるケイ素化合物、加水分解可能な置換基がケイ素1原子当たり3個であるケイ素化合物、又は加水分解可能な置換基がケイ素1原子当たり4個であるケイ素化合物からなるゾルを加水分解・重縮合反応させることによって得られる流動性を失ったシリカゲルが用いられる。前記の加水分解・縮重合反応は、必要に応じて水・触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進することができる。
前記の加水分解可能な置換基がケイ素1原子当たり2個であるケイ素化合物としては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン等が挙げられる。
前記の加水分解可能な置換基がケイ素1原子当たり3個であるケイ素化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン等が挙げられる。
前記の加水分解可能な置換基がケイ素1原子当たり4個であるケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン等が挙げられる。
これらの加水分解可能な置換基を有するケイ素化合物の中でも、テトラエトキシシラン(通常、TEOSと略記される。)が好適である。
これらの加水分解可能な置換基を有するケイ素化合物の中でも、テトラエトキシシラン(通常、TEOSと略記される。)が好適である。
前記の加水分解可能な置換基を有するケイ素化合物は、必要に応じて水・触媒を加えて加水分解を起こさせて縮重合反応を促進することができる。
前記の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。
本発明におけるシリカゲルは、例えば加水分解可能な置換基がケイ素を含むケイ素化合物、水分および前記触媒を含む有機溶媒中で、好適には室温下に攪拌することによって前記ケイ素化合物を加水分解・縮重合させることによって得ることができる。
前記の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。
本発明におけるシリカゲルは、例えば加水分解可能な置換基がケイ素を含むケイ素化合物、水分および前記触媒を含む有機溶媒中で、好適には室温下に攪拌することによって前記ケイ素化合物を加水分解・縮重合させることによって得ることができる。
本発明における前記溶媒としては、親水性の有機溶媒であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、メトキシメチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなど、アセトニトリル、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸メチルなどの酢酸エステルなどが挙げられる。
本発明における基材に塗布する有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとを含む混合物としては、例えば、前記の加水分解可能な置換基を有するケイ素化合物と水と前記酸触媒とを含むケイ素化合物含有水溶液を室温下に攪拌して加水分解と縮重合を行わせ、これに有機ポリマー、有機溶媒、例えばエタノールとを混合して、シリカゲルと有機ポリマーとの混合物、好適には混合溶液を用いることができる。
本発明における基材に塗布する有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとを含む混合物としては、例えば、前記の加水分解可能な置換基を有するケイ素化合物と水と前記酸触媒とを含むケイ素化合物含有水溶液を室温下に攪拌して加水分解と縮重合を行わせ、これに有機ポリマー、有機溶媒、例えばエタノールとを混合して、シリカゲルと有機ポリマーとの混合物、好適には混合溶液を用いることができる。
本発明において、前記のケイ素化合物含有水溶液は、酸触媒を含むpHが1〜6程度であるものが好適である。
また、本発明において、有機ポリマーとシリカゲルとの割合については特に制限はないが、好適には2:1〜1:10、特に1:1〜1:5の範囲内であることが好ましい。
また、本発明において、有機ポリマーとシリカゲルとの合計量の混合物中の割合については制限はないが、5〜50質量%、特に10〜30質量%であることが好ましい。
また、本発明において、有機ポリマーとシリカゲルとの割合については特に制限はないが、好適には2:1〜1:10、特に1:1〜1:5の範囲内であることが好ましい。
また、本発明において、有機ポリマーとシリカゲルとの合計量の混合物中の割合については制限はないが、5〜50質量%、特に10〜30質量%であることが好ましい。
本発明の製造方法の好適な実施態様として、加水分解可能な置換基を有するケイ素化合物、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)をシリカ原料として用いて、ゾル−ゲル法によって得たシリカゲルの溶液に、このゾル−ゲル反応の前もしくは後に有機ポリマーおよび溶媒を混合して混合溶液とし、この混合溶液を基材上、例えば基板上に、例えば、乾燥塗膜の厚さが2μm以上100μ以下の範囲となるように、任意の塗布工程、例えば、ディップコート、スピンコート、スプレーコート、バーコート、ナイフコート、ロールコート、ブレードコート、ダイコート、又はグラビアコートのいずれかの塗布法を用いる塗布工程の後に、溶媒の飽和蒸気中に、例えば10〜40℃で30分間以上放置する工程を設けて、次いで必要であれば追加の乾燥工程を加えて、50〜150℃の温度で10分〜5時間程度の条件で熱処理する焼き付け工程によって溶媒を揮発させて傾斜膜材料を得る方法が挙げられる。
本発明の方法によって得られる前記の傾斜膜材料の厚さとしては、用途によって異なるが、防食用の薄膜を目的とする場合には傾斜膜材料の厚さはセラミック薄膜の厚さより大きく且つ過度に大きくない厚さ、例えば2μmより大きく20μm以下、特に5〜10μm程度であることが好ましい。また、傾斜膜材料を基材から引き剥がして用いる場合には、傾斜膜材料の厚さは、例えば10〜100μm程度であることが好ましい。
本発明の方法によれば、1回の処理(一工程)によって、溶質成分(有機ポリマーとシリカゲル)の自己組織化により、組成が連続的に変化する(傾斜)サンドイッチ状の三層構造膜を形成することが可能であり、これによって、製造装置の単純化、省工程化が可能でありコスト的に有利である。さらに、基材から膜の表面に向けて組成が層状に変化する傾斜構造であることにより、シリカ、有機ポリマーの双方の優れた点を活かしつつ各々の欠点を補うことができ、また有機ポリマーによる厚膜化が可能である。そして、有機ポリマー成分による厚膜化が可能であることにより、基材から引き剥がして使うキャスト膜としての適用も可能である。
本明細書では、実施態様として特定の有機ポリマーおよびシリカゲルと基材との組合せに基づいて具体的に説明したが、本発明は前記特定の有機ポリマーおよびシリカゲルと基材との組合せに限定されず、本発明における特徴を満足するものであれば任意の有機ポリマーおよびシリカゲルと基材との組合せに対して適用することが可能である。
以下、この発明の実施例を示す。
以下の実施例において、得られた傾斜膜材料の組成は以下に示す方法によって求めた。
1.各層の測定
主としてSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)およびEDS(Energy Dispersive Spectroscopy、エネルギー分散型X線分析装置)によって観測。SEMで表面および割断面の像を観察し、EDSでSEM観察場所の元素分布を測定。
観察試料は、液体窒素中で試料を基板から剥がして基板ホルダーにセットし、EDS測定を割断面内では膜表面に近いところ、中央部、および基板面に近いところの3箇所で測定。加えて、膜表面〜中央部の中間点、および中央部〜基板面の中間点の2箇所をEDSにて測定し、組成変化(傾斜性)の連続性の確認を行った。
以下の実施例において、得られた傾斜膜材料の組成は以下に示す方法によって求めた。
1.各層の測定
主としてSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)およびEDS(Energy Dispersive Spectroscopy、エネルギー分散型X線分析装置)によって観測。SEMで表面および割断面の像を観察し、EDSでSEM観察場所の元素分布を測定。
観察試料は、液体窒素中で試料を基板から剥がして基板ホルダーにセットし、EDS測定を割断面内では膜表面に近いところ、中央部、および基板面に近いところの3箇所で測定。加えて、膜表面〜中央部の中間点、および中央部〜基板面の中間点の2箇所をEDSにて測定し、組成変化(傾斜性)の連続性の確認を行った。
2.傾斜膜材料の標準的作製手順
2−1)混合溶液の調製
TEOS25gに水12gとHCl(1/10N)を加えてpH約2とし、室温(20℃)下で長時間攪拌(1.5時間攪拌後、24時間放置)し、TEOSの加水分解と縮重合を行わせ、これに有機ポリマーを含む水溶液とエタノールとを1時間攪拌して混合して、シリカゲルと有機ポリマーと溶媒との混合溶液を得る(溶媒:水+エタノール)。
2−2)膜作製
シリカのゾル−ゲル溶液の濃度を一定とし、触媒のHClはpH2に調整して用い、シリカと有機ポリマーとの混合比(質量比)を1:3とし、乾燥条件は自然乾燥(20℃×10分)又は飽和エタノール蒸気中乾燥(20℃×3時間)の二通りを用い、乾燥膜の膜厚は5〜10μmとする。
2−1)混合溶液の調製
TEOS25gに水12gとHCl(1/10N)を加えてpH約2とし、室温(20℃)下で長時間攪拌(1.5時間攪拌後、24時間放置)し、TEOSの加水分解と縮重合を行わせ、これに有機ポリマーを含む水溶液とエタノールとを1時間攪拌して混合して、シリカゲルと有機ポリマーと溶媒との混合溶液を得る(溶媒:水+エタノール)。
2−2)膜作製
シリカのゾル−ゲル溶液の濃度を一定とし、触媒のHClはpH2に調整して用い、シリカと有機ポリマーとの混合比(質量比)を1:3とし、乾燥条件は自然乾燥(20℃×10分)又は飽和エタノール蒸気中乾燥(20℃×3時間)の二通りを用い、乾燥膜の膜厚は5〜10μmとする。
比較例1〜2
TEOSの加水分解と縮重合を行わせた水溶液に、有機ポリマーとしてPVAc(重合度:1700、クラレ社製)とPVA(重合度:1700、クラレ社製)を同量含む水溶液とエタノールとを1時間攪拌して混合し、シリカゲルと有機ポリマーとの混合溶液(溶質濃度:18質量%)を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これを室温(20℃)下、開放状態で自然乾燥し、次いで100℃で1時間熱処理して、膜材料(試料1−1)(比較例1)を形成した。
前記の混合溶液(溶質濃度:18質量%)をエタノールで2倍に希釈し、同様の方法でアルミ基板にディッピングした。この操作を繰り返してディッピング膜を2枚得た。そして、1枚は前記と同様にして自然乾燥し、同じ条件で熱処理して、膜材料(試料1−2)(比較例2)を形成した。
これらの膜試料について評価した結果、試料1−1および試料1−2は、わずかにシリカ/有機ポリマー/シリカの順の組成傾斜を有するものの、シリカ組成は厚さ方向にほぼ一様の分布であった。
TEOSの加水分解と縮重合を行わせた水溶液に、有機ポリマーとしてPVAc(重合度:1700、クラレ社製)とPVA(重合度:1700、クラレ社製)を同量含む水溶液とエタノールとを1時間攪拌して混合し、シリカゲルと有機ポリマーとの混合溶液(溶質濃度:18質量%)を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これを室温(20℃)下、開放状態で自然乾燥し、次いで100℃で1時間熱処理して、膜材料(試料1−1)(比較例1)を形成した。
前記の混合溶液(溶質濃度:18質量%)をエタノールで2倍に希釈し、同様の方法でアルミ基板にディッピングした。この操作を繰り返してディッピング膜を2枚得た。そして、1枚は前記と同様にして自然乾燥し、同じ条件で熱処理して、膜材料(試料1−2)(比較例2)を形成した。
これらの膜試料について評価した結果、試料1−1および試料1−2は、わずかにシリカ/有機ポリマー/シリカの順の組成傾斜を有するものの、シリカ組成は厚さ方向にほぼ一様の分布であった。
実施例1
比較例2において、混合溶液(溶質濃度:18質量%)をエタノールで2倍に希釈してアルミ基板にディッピングして得た2枚の膜のうちの他の1枚を、エタノールの飽和蒸気中で室温(20℃)下の乾燥工程を施し、同じ条件で熱処理して、膜材料(試料1−3)を形成した。
この膜材料について評価した結果、試料1−3は、膜の表面と底面でシリカが80%以上、中央部で40%の傾斜3層構造コーティング膜であった。
比較例2において、混合溶液(溶質濃度:18質量%)をエタノールで2倍に希釈してアルミ基板にディッピングして得た2枚の膜のうちの他の1枚を、エタノールの飽和蒸気中で室温(20℃)下の乾燥工程を施し、同じ条件で熱処理して、膜材料(試料1−3)を形成した。
この膜材料について評価した結果、試料1−3は、膜の表面と底面でシリカが80%以上、中央部で40%の傾斜3層構造コーティング膜であった。
実施例2
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:500、クラレ社製)のみを用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を1:1、溶質濃度が30質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気下での乾燥工程を施し、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料2−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料2−1は、表面と基板面でシリカが90%、中央部で45%の傾斜3層構造コーティング膜であった。
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:500、クラレ社製)のみを用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を1:1、溶質濃度が30質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気下での乾燥工程を施し、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料2−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料2−1は、表面と基板面でシリカが90%、中央部で45%の傾斜3層構造コーティング膜であった。
比較例3
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:8000、クラレ社製)、溶媒として酢酸エチルを用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を1:3、溶質濃度が17質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中をアルミ基板にキャストしてコーティング膜を得た。これを室温(20℃)下、開放状態で自然乾燥し、次いで70℃で30分間熱処理して、膜材料(試料3−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料3−1は、膜断面中央から表面に向ってシリカ成分が80質量%のシリカリッチ層、基板側では逆にシリカ成分が20質量%の有機ポリマーリッチ層となる2層型傾斜構造膜であった。
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:8000、クラレ社製)、溶媒として酢酸エチルを用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を1:3、溶質濃度が17質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中をアルミ基板にキャストしてコーティング膜を得た。これを室温(20℃)下、開放状態で自然乾燥し、次いで70℃で30分間熱処理して、膜材料(試料3−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料3−1は、膜断面中央から表面に向ってシリカ成分が80質量%のシリカリッチ層、基板側では逆にシリカ成分が20質量%の有機ポリマーリッチ層となる2層型傾斜構造膜であった。
実施例3
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:3500、クラレ社製)、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を1:3、溶質濃度が20質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気雰囲気下、室温で乾燥工程を施し、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料4−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料4−1は、表面と基板面で各々シリカが84%および81%で、膜断面の厚さ方向の中央部でシリカ成分が29〜28%と深い溝形のシリカ組成を持つ傾斜3層構造コーティング膜であった。
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:3500、クラレ社製)、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を1:3、溶質濃度が20質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気雰囲気下、室温で乾燥工程を施し、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料4−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料4−1は、表面と基板面で各々シリカが84%および81%で、膜断面の厚さ方向の中央部でシリカ成分が29〜28%と深い溝形のシリカ組成を持つ傾斜3層構造コーティング膜であった。
比較例4
実施例3と同様に、混合溶液中にアルミ基板をディッピングして得たコーティング膜を開放空気中で自然乾燥し、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料4−2)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料4−2は、シリカ成分が表面で66質量%、中央部で77質量%、基板側で58質量%となって、明確な傾斜構造をとらないものであった。
実施例3と同様に、混合溶液中にアルミ基板をディッピングして得たコーティング膜を開放空気中で自然乾燥し、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料4−2)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料4−2は、シリカ成分が表面で66質量%、中央部で77質量%、基板側で58質量%となって、明確な傾斜構造をとらないものであった。
実施例4
有機ポリマーとしてPVP(重合度:5000、キシダ化学社製)とPVA(重合度:1700、クラレ社製)とを1:1の質量比でブレンドして用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を2:3、溶質濃度が26質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気雰囲気下、40℃で30分間乾燥させ、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料5−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料5−1は、表面と基板面で各々シリカが30質量%で、厚さ方向の中央部でシリカ成分が70質量%とシリカリッチの傾斜3層構造コーティング膜であった。
有機ポリマーとしてPVP(重合度:5000、キシダ化学社製)とPVA(重合度:1700、クラレ社製)とを1:1の質量比でブレンドして用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を2:3、溶質濃度が26質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気雰囲気下、40℃で30分間乾燥させ、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料5−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料5−1は、表面と基板面で各々シリカが30質量%で、厚さ方向の中央部でシリカ成分が70質量%とシリカリッチの傾斜3層構造コーティング膜であった。
実施例5
有機ポリマーとしてPVP(重合度:5000、キシダ化学社製)とPUr(水性ポリウレタン、日新化成社製)とを1:1の質量比でブレンドして用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を2:3、溶質濃度が26質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気雰囲気下、40℃で50分間乾燥させ、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料5−2)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料5−2は、表面と基板面で各々シリカが70質量%で、厚さ方向の中央部でシリカ成分が30質量%と少ないポリマーリッチの傾斜3層構造コーティング膜であった。
有機ポリマーとしてPVP(重合度:5000、キシダ化学社製)とPUr(水性ポリウレタン、日新化成社製)とを1:1の質量比でブレンドして用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を2:3、溶質濃度が26質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にアルミ基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気雰囲気下、40℃で50分間乾燥させ、150℃で30分間熱処理して、膜材料(試料5−2)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料5−2は、表面と基板面で各々シリカが70質量%で、厚さ方向の中央部でシリカ成分が30質量%と少ないポリマーリッチの傾斜3層構造コーティング膜であった。
実施例6
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:500、クラレ社製)を用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を2:3、溶質濃度が30質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にスライドガラス基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気中で室温(20℃)下の乾燥工程を施し、100℃で1時間熱処理して、膜材料(試料6−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料6−1は、表面と基板面で各々シリカが70質量%で、厚さ方向の中央部でシリカ成分が30質量%のポリマーリッチの傾斜3層構造コーティング膜であった。
有機ポリマーとしてPVAc(重合度:500、クラレ社製)を用い、溶媒として水とエタノールとの混合水溶液を用い、シリカと有機ポリマーとの混合比を2:3、溶質濃度が30質量%の混合溶液を得た。
この混合溶液中にスライドガラス基板をディッピングしてコーティング膜を得た。これをエタノールの飽和蒸気中で室温(20℃)下の乾燥工程を施し、100℃で1時間熱処理して、膜材料(試料6−1)を形成した。
この膜試料について評価した結果、試料6−1は、表面と基板面で各々シリカが70質量%で、厚さ方向の中央部でシリカ成分が30質量%のポリマーリッチの傾斜3層構造コーティング膜であった。
Claims (5)
- 有機ポリマーと溶媒とシリカゲルとの混合物を基板上に塗布し、その後溶媒を揮発して傾斜膜材料を製造する方法において、前記混合物の塗布層を前記溶媒の飽和蒸気中に放置する工程を設けることを特徴とする傾斜膜材料の製造方法。
- 前記有機ポリマーがPVP、PVAc、PUr又はPVAであり、シリカゲルがTEOSの加水分解生成物である請求項1に記載の製造方法。
- 溶媒が、水又は有機溶媒である請求項1又は2に記載の製造方法。
- 傾斜膜材料が、シリカリッチ層/有機ポリマーリッチ層/シリカリッチ層の3層構造を有する請求項1に記載の製造方法。
- 傾斜膜材料が、有機ポリマーリッチ層/シリカリッチ層/有機ポリマーリッチ層の3層構造を有する請求項1に記載の製造方法。
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JP2008287038A JP2010110723A (ja) | 2008-11-07 | 2008-11-07 | 傾斜膜材料の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2019216061A1 (ja) * | 2018-05-11 | 2019-11-14 | 富士フイルム株式会社 | コート剤、防曇膜、防曇膜の製造方法、及び積層体 |
CN111607320A (zh) * | 2020-06-05 | 2020-09-01 | 中国科学院兰州化学物理研究所 | 一种水性聚氨酯-硅溶胶复合防雾剂及其制备方法和应用 |
-
2008
- 2008-11-07 JP JP2008287038A patent/JP2010110723A/ja active Pending
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JPWO2019216061A1 (ja) * | 2018-05-11 | 2021-05-27 | 富士フイルム株式会社 | コート剤、防曇膜、防曇膜の製造方法、及び積層体 |
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CN111607320A (zh) * | 2020-06-05 | 2020-09-01 | 中国科学院兰州化学物理研究所 | 一种水性聚氨酯-硅溶胶复合防雾剂及其制备方法和应用 |
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