JP2010110254A - 共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子ノックアウトブタ - Google Patents

共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子ノックアウトブタ Download PDF

Info

Publication number
JP2010110254A
JP2010110254A JP2008284892A JP2008284892A JP2010110254A JP 2010110254 A JP2010110254 A JP 2010110254A JP 2008284892 A JP2008284892 A JP 2008284892A JP 2008284892 A JP2008284892 A JP 2008284892A JP 2010110254 A JP2010110254 A JP 2010110254A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
common
pig
knockout
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008284892A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5366074B2 (ja
Inventor
Masaki Iwamoto
正樹 岩元
Michiko Hashimoto
径子 橋本
Akira Onishi
彰 大西
Shunichi Suzuki
俊一 鈴木
Fumihiko Ishikawa
文彦 石川
Yoriko Saito
頼子 齊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
PRIMETECH KK
National Institute of Agrobiological Sciences
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
PRIMETECH KK
National Institute of Agrobiological Sciences
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by PRIMETECH KK, National Institute of Agrobiological Sciences, RIKEN Institute of Physical and Chemical Research filed Critical PRIMETECH KK
Priority to JP2008284892A priority Critical patent/JP5366074B2/ja
Publication of JP2010110254A publication Critical patent/JP2010110254A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5366074B2 publication Critical patent/JP5366074B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】抗体医薬もしくは再生医療を目的としたトランスレーショナル医療研究において、ヒト細胞移植のレシピエントとして有利に使用することができ、ヒトに解剖学的、サイズ的に類似しているヒト動物モデルとして有用なcommonγ遺伝子ノックアウトブタを提供すること。
【解決手段】commonγ遺伝子のノックアウトを目的としたターゲッティングベクターをブタ体細胞に導入し、マーカー遺伝子の発現を指標として相同組換えが生じていると判定される体細胞を選択して、この体細胞の細胞核をブタの除核された卵子に注入した核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製し、妊娠ブタから採取した胎児の体細胞核のcommonγ遺伝子がノックアウトされている胎児の体細胞を用いて再核移植を行い、commonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタを得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、ブタ共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)ノックアウトブタやその作製方法に関する。
共通サイトカイン受容体ガンマ鎖(commonγ)は、当初、IL−2受容体の3番目の構成要素として特定され(例えば、非特許文献1参照)、その後、IL−4、IL−7、IL−9、IL−15、及びIL−21の受容体の共通する構成要素であることが明らかとなった(例えば、非特許文献2〜7参照)。そのため共通サイトカイン受容体ガンマ鎖(γc)と呼ばれている。ガンマ鎖は、リンパ球のおおよそすべての細胞系列で検出され(例えば、非特許文献8参照)、細胞質内領域でガンマ鎖と結合したJanus familyチロシンキナーゼ3(Jak3)が活性化することによってリンパ細胞系列の発達において必須な役割を担うことが明らかとなっている(例えば、非特許文献9〜11参照)。commonγ鎖遺伝子は調べられているすべての哺乳動物種においてX染色体に位置することが確認されている。ヒトでは、この遺伝子が変異した結果、T細胞及びNK細胞は欠如もしくは、顕著な減少を示し、B細胞は正常もしくは増加するが、T細胞による誘導の欠如や不足と内因性のB細胞の欠陥(例えば、非特許文献12〜14参照)のために機能不全となるX連鎖重症複合免疫不全症(XSCID)が発症する。さらに、commonγ遺伝子発現欠損マウスは、作製されており、B細胞が大幅に減少することを除いて、ヒトにおけるX連鎖重症複合免疫不全症と同様の表現型を持つことが示されている(例えば、非特許文献15、16参照)。
ブタの様な大型動物でのXSCIDモデルは、マウスに比べて寿命が長く、ヒトに解剖学的、サイズ的に類似しているため、ヒトXSCIDモデルとしてより妥当かつ有用なものに成り得るため、作製されることが期待されている。SCID動物の、より興味深い応用は、生体内におけるヒト細胞学の研究が可能となることが予想されるヒト細胞移植のレシピエントとして使用することが挙げられる。抗体医薬もしくは再生医療を目的としたトランスレーショナル医療研究では、ヒトの胚性幹細胞及び骨髄や臍帯から得られた造血幹細胞(Hematopoietic Stem cells:HSCs)を含む体性幹細胞を移植し、生体内での分化能や腫瘍原性を解析するモデル動物として免疫不全マウスが多く用いられている。
様々な免疫不全マウスの品種が開発されたが、commonγ遺伝子を欠損させたことは、ヒト細胞移植片の生着の障害となるNK細胞活性の抑制に繋がり、大きな進展となった。実際に、NOD/SCID/γc-nullマウスの進展を利用して、ヒト免疫機能の再構築とヒト型抗体類の生産は、ヒトHSCsの移植片により実現している(例えば、非特許文献17〜21参照)。そのような免疫不全マウスの利用は、試験的な細胞移植のための有用モデルではあるが、再生医療の前臨床判定には、サイズ、寿命、及び解剖学な特徴を考慮した場合、大型動物モデルが、ヒトに対する幹細胞移植治療を目的とした場合、不可欠である。同様に、SCID動物生体内で分化させたヒト型抗体もしくはヒト細胞の臨床応用にも必要不可欠である。
上記のように、大型動物モデルは、齧歯動物モデルから得られた実験データとヒトへの臨床応用の間の橋渡し役として非常に貴重であることが挙げられるが、ウマでXSCIDについての報告(例えば、非特許文献22参照)があるものの、取り扱いが簡便な大型動物での報告はない。マウスでは、胚性幹(ES)細胞の樹立により、遺伝子標的組換え(ジーンターゲッティング)が可能となっているが、ブタでは、マウスのようなES細胞が樹立されておらず、ジーンターゲッティングが困難となって来ていた。このように大型動物モデルの利用は遺伝子操作、特にジーンターゲッティングが困難なため制限されてきたが、この10年間で体細胞核移植によるクローン動物作製により、ブタの様な大型動物でもジーンターゲッティングを含むより正確で複雑な遺伝子操作が可能になってきている(例えば、特許文献1参照)。実際、遺伝子ノックアウトされたブタのいくつかの系統が核移植により作出されている(例えば、特許文献2〜4参照)。したがってブタは解剖学的、生理学的にヒトに類似しているため、ヒトの医学研究のためのモデルとして使用されることが予想される(例えば、非特許文献23,24参照)。
その他、常染色体に位置し、免疫グロブリンとT細胞レセプターの遺伝子再構成にかかわるエンドヌクレアーゼ活性を持つRAG(Recombination Activating Gene)には、RAG1とRAG2があり、どちらかが、変異した場合、リンパ幹細胞でのT、B細胞抗原受容体の共通するV(D)J組換え機構の異常が生じて、両細胞の分化が阻害され、T細胞、B細胞ともに著減あるいは欠損することが知られている(例えば、非特許文献25参照)。
特開2008−220222号公報 特開2002−045085号公報 特開2002−125516号公報 特開2002−125669号公報 Takeshita, T. et al. Cloning of the gamma chain of the human IL-2 receptor. Science (New York, N.Y 257, 379-382 (1992) Giri, J.G. et al. Utilization of the beta and gamma chains of the IL-2 receptor by the novel cytokine IL-15. The EMBO journal 13, 2822-2830 (1994) Kimura, Y. et al. Sharing of the IL-2 receptor gamma chain with the functional IL-9 receptor complex. International immunology 7, 115-120 (1995) Kondo, M. et al. Sharing of the interleukin-2 (IL-2) receptor gamma chain between receptors for IL-2 and IL-4. Science (New York, N.Y 262, 1874-1877 (1993) Noguchi, M. et al. Interleukin-2 receptor gamma chain: a functional component of the interleukin-7 receptor. Science (New York, N.Y 262, 1877-1880 (1993) Russell, S.M. et al. Interleukin-2 receptor gamma chain: a functional component of the interleukin-4 receptor. Science (New York, N.Y 262, 1880-1883 (1993) Asao, H. et al. Cutting edge: the common gamma-chain is an indispensable subunit of the IL-21 receptor complex. J Immunol 167, 1-5 (2001) Ishii, N. et al. Expression of the IL-2 receptor gamma chain on various populations in human peripheral blood. International immunology 6, 1273-1277 (1994) Nakamura, Y. et al. Heterodimerization of the IL-2 receptor beta- and gamma-chain cytoplasmic domains is required for signalling. Nature369, 330-333 (1994) Nelson, B.H., Lord, J.D. & Greenberg, P.D. Cytoplasmic domains of the interleukin-2 receptor beta and gamma chains mediate the signal for T-cell proliferation. Nature 369, 333-336 (1994) Nelson, B.H., McIntosh, B.C., Rosencrans, L.L. & Greenberg, P.D. Requirement for an initial signal from the membrane-proximal region of the interleukin 2 receptor gamma(c) chain for Janus kinase activation leading to T cell proliferation. Proceedings of the NationalAcademy of Sciences of the United States of America94, 1878-1883 (1997) Fischer, A. et al. Naturally occurring primary deficiencies of the immune system. Annual review of immunology 15, 93-124 (1997) Leonard, W.J. The molecular basis of X-linked severe combined immunodeficiency: defective cytokine receptor signaling. Annual review of medicine 47, 229-239 (1996) Noguchi, M. et al. Interleukin-2 receptor gamma chain mutation results in X-linked severe combined immunodeficiency in humans. Cell 73, 147-157 (1993) Cao, X. et al. Defective lymphoid development in mice lacking expression of the common cytokine receptor gamma chain. Immunity 2, 223-238 (1995) K. Ohbo et al., Blood 87, 956 (1996) Ito, M. et al. NOD/SCID/gamma(c)(null) mouse: an excellent recipient mouse model for engraftment of human cells. Blood100, 3175-3182 (2002) Shultz, L.D. et al. Human lymphoid and myeloid cell development in NOD/LtSz-scidIL2R gamma null mice engrafted with mobilized human hemopoieticstem cells. J Immunol174, 6477-6489 (2005) Ishikawa, F. et al. Development of functional human blood and immune systems in NOD/SCID/IL2 receptor {gamma} chain(null) mice. Blood106, 1565-1573 (2005) E. Traggiai et al., Science 304, 104 (2004) Yahata, T. et al. Functional human T lymphocyte development from cord blood CD34+ cells in nonobese diabetic/Shi-scid, IL-2 receptor gamma null mice. J Immunol 169, 204-209 (2002) T. Yilma, L. E. Perryman, T. C. McGuire, J. Immunol. 129, 931 (1982) J. M. Puck, R. L. Nussbaum, M. E. Conley, J. Clin. Invest. 79, 1395 (1987) Felsburg, P.J. et al. Canine X-linked severe combined immunodeficiency. Veterinary immunology and immunopathology 69, 127-135 (1999) Shinkai, Y. et al. RAG-2-deficient mice lack mature lymphocytes owing to inability to initiate V(D)J rearrangement. Cell 68, 855-867 (1992)
本発明の課題は、抗体医薬もしくは再生医療を目的としたトランスレーショナル医療研究において、ヒト細胞移植のレシピエントとして有利に使用することができ、ヒトに解剖学的、サイズ的に類似しているヒト医用モデル動物として有用なcommonγ遺伝子ノックアウトブタを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、まず、ブタ品種間におけるcommonγ遺伝子における一塩基多型解析を行い、ベクターに使用するゲノムの品種と同じ品種の体細胞を揃えることが組換え効率向上の点で好ましいことを見い出して、新たにターゲッティングベクターpCTV05−Iを構築し、線状化してエレクトロポレーションによりブタ胎児線維芽細胞に導入し、薬剤耐性マーカー遺伝子の発現を指標として597個のコロニーを選択した。かかる選択した相同組換えが生じていると判定される体細胞、例えば、標的フラグメントを保持していることがPCR解析で確認された3個のPCR陽性コロニーであっても、非相同組換え体細胞が様々な割合で含まれている可能性があり、ただでさえ確率が低く困難な体細胞核移植技術を用いたクローンブタの作出効率を考慮すると、効率的な相同組換え動物の作出の妨げとなる要因はあらかじめすべて排除するという必要性に迫られた。陽性コロニーをドナー細胞として核移植に供したところ、核移植後、1365個が生存し、2日間の体外培養後、761個(55.8%)が分割した。その分割胚761個を3頭の仮腹へ分けて移植した結果、2頭が妊娠した。妊娠した仮腹2頭は、妊娠40〜50日目で、屠殺し胎児を9頭回収した。その9頭をPCR解析した結果、正常にターゲッティングされている6頭が確認された。この相同組み換え個体であることが確認された6頭の胎児から線維芽細胞を分離し、ドナー細胞として再核移植に供したところ、核移植後、5255個が生存し、2日間の体外培養後、2482個(47.2%)が分割した。その分割胚2482個を12頭の仮腹へ分けて移植した結果、6頭が妊娠した。妊娠した6頭から31頭が分娩され、4頭のcommonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタの生存を実際に確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、[1]以下の(a)〜(f)の工程を備えた共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタの作製方法に関する。
(a)ブタ共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)上における少なくとも一部の配列をマーカー遺伝子と置換するcommonγ遺伝子のノックアウトを目的としたターゲッティングベクターを構築する工程;
(b)工程(a)で構築されたターゲッティングベクターを、エレクトロポレーション等により雌ブタ体細胞(胎児線維芽細胞)に導入し、マーカー遺伝子の発現を指標として相同組換えが生じていると判定される体細胞を選択する工程;
(c)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(b)で選択された体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
(d)工程(c)で得られた妊娠ブタから胎児を採取し、その胎児の体細胞核のcommonγ遺伝子がノックアウトされている胎児を選択する工程;
(e)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(d)で選択された胎児の体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
(f)工程(e)で得られた妊娠ブタの産仔を育成する工程;
また本発明は、[2]以下の(a’)〜(f’)の工程を備えたことを特徴とする共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子のノックアウト雄ブタの作製方法に関する。
(a’)ブタ共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)上における少なくとも一部の配列をマーカー遺伝子と置換するcommonγ遺伝子のノックアウトを目的としたターゲッティングベクターを構築する工程;
(b’)工程(a’)で構築されたターゲッティングベクターを、エレクトロポレーション等により雄ブタ体細胞(胎児線維芽細胞)に導入し、マーカー遺伝子の発現を指標として相同組換えが生じていると判定される体細胞を選択する工程;
(c’)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(b’)で選択された体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
(d’)工程(c’)で得られた妊娠ブタから胎児を採取し、その胎児の体細胞核のcommonγ遺伝子がノックアウトされている胎児を選択する工程;
(e’)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(d’)で選択された胎児の体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
(f’)工程(e’)で得られた妊娠ブタの産仔を育成する工程;
本発明はまた、[3]上記[1]記載の作製方法により得られた共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタと、上記[2]記載の作製方法により得られたcommonγ遺伝子のノックアウト雄ブタとを掛け合わせて、その産仔からホモ接合体ノックアウト雌ブタを選択することを特徴とするcommonγ遺伝子のホモ接合体ノックアウト雌ブタの作製方法や、[4]ブタcommonγ遺伝子が、ブタランドレース種のIL2RGゲノム領域を含むBACライブラリーより分離したcommonγ遺伝子であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の作製方法や、[5]マーカー遺伝子が、薬剤耐性遺伝子であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか記載の作製方法や、[6]ターゲッティングベクターが、pCTV05−Iであるであることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか記載の作製方法に関する。
さらに本発明は、[7]共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)の発現量が野生型に比べて消失もしくは低下していることを特徴とするブタや、[8]相同染色体上の少なくとも1つのcommonγ遺伝子座においてcommonγ遺伝子が破壊されている上記[7]記載のブタや、[9]commonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタである上記[8]記載のブタや、[10]commonγ遺伝子のノックアウト雄ブタである上記[8]記載のブタや、[11]commonγ遺伝子のホモ接合体ノックアウト雌ブタである上記[8]記載のブタや、[12]上記[7]〜[11]のいずれか記載のブタの細胞や、[13]上記[7]〜[11]のいずれか記載のブタの組織・臓器や、[14]上記[7]〜[11]のいずれか記載のブタを幹細胞移植用のレシピエントとして使用する方法に関する。
本発明のcommonγ鎖遺伝子ノックアウトブタは、造血幹細胞、ES細胞、iPS細胞等のヒト幹細胞移植のためのレシピエントとして用いることができ、齧歯類モデルの限界を克服し、ヒト型抗体及び幹細胞移植の臨床応用に有益である。
本発明のcommonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタの作製方法としては、上記の(a)〜(f)の工程を備えた方法であれば特に制限されず、また、本発明のcommonγ遺伝子のノックアウト雄ブタの作製方法としては、上記の(a’)〜(f’)の工程を備えた方法であれば特に制限されないが、commonγ遺伝子はX染色体に存在することから、性染色体がXY型の雄ブタはX染色体を1本しか有さず、上記のcommonγ遺伝子のノックアウト雄ブタはホモ接合体と考えることができる。
上記工程(a)や(a’)は、ブタcommonγ遺伝子上における少なくとも一部の配列をマーカー遺伝子と置換するcommonγ遺伝子のノックアウトを目的としたターゲッティングベクターを構築する工程であり、ターゲッティングベクターの構築には、ブタのIL−2受容体,IL−4受容体,IL−7受容体等のγ鎖のゲノム領域が用いられる。γ鎖のゲノム領域のDNAフラグメントは、ブタゲノムライブラリーから、クローニング、さらに必要に応じてサブクローニングすることによって得られるが、γ鎖のコード領域を含むBAC(bacterial artificial chromosome)クローンを有利に用いることができる。例えば、ランドレース種由来BACライブラリーから得られたコード領域を含むDNAフラグメントの一部の配列をマーカー遺伝子と置換することで、commonγ遺伝子を不活性化するフラグメント(標的フラグメント)を得ることができ、この標的フラグメントを任意のベクターに導入するとターゲッティングベクターを得ることができる。ターゲッティングベクターとして、マーカー遺伝子としてPGK−neoを有するpCTV05−Iを好適に例示することができる。
上記マーカー遺伝子としては、例えば、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、β−グルクロニダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素をコードするDNAや、抗体のFc領域をコードするDNAや、GFP(グリーン蛍光タンパク質)等の蛍光発光タンパク質をコードするDNAや、ネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ジフテリアトキシン耐性遺伝子、β−galとneoRの融合遺伝子(β−geo)等の選択マーカー遺伝子などを具体的に挙げることができるが、これらの中でもPGK−neo:ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター/ネオマイシン抵抗遺伝子をコードするDNAが好ましい。
上記工程(b)や(b’)は、工程(a)や(a’)で構築されたターゲッティングベクターを、ブタ胎児線維芽細胞等の体細胞に導入し、マーカー遺伝子の発現を指標として相同組換えが生じていると判定される体細胞を選択する工程であり、工程(b)では雌ブタ体細胞が、工程(b’)では雌ブタ体細胞が用いられる。ターゲッティングベクターは、導入前に線状化されることが好ましい。ターゲッティングベクターを体細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、形質導入、スクレープローディング (scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、感染等により行うことができるが、エレクトロポレーションやリポフェクションが好ましく、中でもエレクトロポレーションが好ましい。
ベクターを導入するブタ体細胞の種類は特に制限されないが、ベクターに使用するゲノムの品種と同じ品種の細胞を揃えることが組換え効率向上の点で好ましい。例えば、マーカー遺伝子としてPGK−neoが用いられているときには、G418薬剤選択により相同組換えが生じていると判定されるG418耐性細胞コロニーを選択することができる。選択したG418耐性細胞コロニーが前記標的フラグメントを保持していることをPCR解析により確認しておくことが好ましい。また、体細胞として線維芽細胞を用いる場合、トリプシン処理で細胞を分散させたものが好ましく、また、培養細胞が線維芽細胞であることを、サイトケラチンとSSEA−1との陰性反応、ビメンチンでの陽性反応、線維芽細胞の特異的プライマーによるPCR分析等により確認することが好ましい。
上記工程(c)や(c’)は、採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子(レシピエント卵子)に、工程(b)や(b’)で選択された体細胞の細胞核(組換え体細胞核)を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程であり、上記レシピエント卵子としては、ブタの成熟卵子であれば特に制限されるものではなく、プロスタグランジンF2α、クロプロステノール、絨毛ゴナドトロピン等のホルモン投与による過排卵処理により得られる体内成熟卵子の他、屠場由来の卵巣から採取した卵子を体外成熟させたものも使用できるが、着床率の点からして体内成熟卵子、特に性成熟(6ヶ月齢以上)した雌ブタから採取した体内成熟卵子が好ましい。かかる体内成熟卵子は、過排卵処理により得られる雌ブタの子宮及び卵巣をPBS溶液等を用いて卵管灌流を行うことにより採取することができるが、卵丘細胞が付着している卵子はヒアルロニダーゼ処理を行って、卵丘細胞を除去することが好ましい。
上記ブタのレシピエント卵子からの除核は、細胞骨格形成阻害剤であるサイトカラシンB処理を施したブタの卵子から除核することが好ましく、より具体的にはサイトカラシンBを含有するNCSU23等の培地で体外成熟卵子等のレシピエント卵子を処理した後、除核操作用シャーレのサイトカラシン入りドロップに移してホールディングピペットで保定し、透明帯を迅速・的確に貫通することができる除核用ピペット(外径15〜30μm)を用いて、M(metaphase)II期の染色体を含む第一極体の付近を極体ごと吸引することにより行われる。なお、吸引した極体を調べることにより除核できていることを確認することが好ましく、また除核卵子からはサイトカラシンBを除去することが好ましい。
核移植に用いる工程(b)や(b’)で選択されたドナー細胞の細胞周期は特に制限されるものではないが、細胞周期G1/G0期に同調させた体細胞が好ましい。組換え体細胞核のレシピエント卵子への注入は直接注入(インジェクション)する体細胞核直接注入法を採用することが好ましい。上記体細胞核の除核されたレシピエント卵母細胞への直接導入は、体細胞核注入時に卵子の活性化を誘発せず、体細胞核が未受精卵子の細胞質内に存在する卵成熟促進因子(MPF;Maturation Promoting Factor)の影響を受け、体細胞クローン作出に重要と報告される染色体凝縮(PCC;Premature Chromosome Condensation)を起こすことになる。さらに、体細胞の細胞膜を崩壊させて実質的に体細胞核からなる画分を注入することがドナー細胞質の影響を排除して核移植胚の発生を良好にする点で好ましい。これに対して融合法による核の導入は、核の導入と同時に卵子に活性化を受け易く、PCCの過程を経ず胚発生が開始される恐れがあると同時に、体細胞の細胞質を伴って導入することになるので、細胞質による汚染に対して敏感であるブタのクローン作出においては好ましくない。また、体細胞核のインジェクションピペットとしては、透明帯の貫通が迅速・精確かつ簡単にでき、細胞質膜へのダメージを最小にすることができるものが好ましく、かかるインジェクションピペットとしてはピエゾマイクロマニピュレーター(プライムテック株式会社製)に取り付けた体細胞注入用ピペット(外径7〜25μm)を具体的に例示することができる。
このようにして得られた体細胞核が注入された卵子には、活性化処理を施すことが好ましい。かかる活性化処理としては、従来公知の核移植胚の活性化処理方法であれば特に制限されるものではないが、クローンブタの作出においては電気パルス活性化処理を好適に例示することができる。電気パルス活性化処理としては、電荷の大きい1回の電気パルス、例えば1.5kV/cm、100μsec、1回を印加する方がそれより小さい電荷の電気パルスを2回印加するよりも胚活性の点で好ましく、また、電気パルス活性化処理後のサイトカラシンB処理における培地としてはPZM3(Biol. Reprod., 66, 112-119, 2002)を用いることが高い胚盤胞形成率の点で好ましい。また、電気パルスによる活性化処理の場合、体内成熟卵子の方が体外成熟卵子に比べて胚盤胞の発生能の点で好ましい。さらに、レシピエント細胞として体内成熟卵子を用いる場合には、過排卵処理のために使用した最初のhCG投与後、50〜60時間後、好ましくは54〜55時間後に活性化処理をすることが望ましい。体外成熟卵子を用いた場合は、成熟培養開始後44〜60時間後、好ましくは48〜54時間後に活性化処理することが望ましい。
卵細胞からの除核時及び該除核細胞への組換え体細胞核の直接注入時の2回にわたって損傷を受けた核移植胚の胚盤胞への発生率を高め、クローンブタを効率よく作出するために、活性化処理後の核移植胚は、卵管又は子宮への移植前に、包埋剤により包埋処理を施こすことができる。かかる包埋剤による包埋処理は、複数回の包埋処理を行い、複数被膜で包埋した核移植胚とすることが好ましく、特に3重包埋処理を行い、3重被膜核移植胚とすることが好ましい。また、かかる複数回の包埋処理を行うに際しては、包埋剤の濃度を順次高めていく包埋処理、すなわち外層膜ほど高濃度の包埋剤を用いて包埋し、その物理的強度を内層から外層へと順次高めていくことが好ましい。このような包埋処理の詳細については前記特許文献3や4を参照することができる。
核移植胚、例えば活性化処理後に包埋剤による包埋処理をした核移植胚を卵管又は子宮に移植する雌ブタとしては特に制限されるものではないが、人工授精させた後の妊娠21〜40日目にプロスタグランジンF2α等を用いて人工流産させ、同期化を行った雌ブタを用いることが好ましい。また、核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植するに際し、複数個の受精卵もしくは単為発生胚を核移植胚に混合して雌ブタの卵管又は子宮に移植する追い移植法を用いることが好ましい。
上記工程(d)や(d’)は、工程(c)や(c’)で得られた妊娠ブタから胎児を採取し、その胎児の体細胞核のcommonγ遺伝子がノックアウトされている胎児を選択する工程であり、上記胎児に代えて産仔を用いることもできるが胎児の方が早期に得られることから産仔よりも好ましく、上記胎児には便宜上産仔も含まれる。上記工程(b)や(b’)において、マーカー遺伝子の発現を指標として選択した、相同組換えが生じていると判定される体細胞、例えば、標的フラグメントを保持していることがPCR解析で確認されたPCR陽性コロニーであっても、非相同組換え体細胞が様々な割合で含まれている可能性があり、ただでさえ確率が低く困難な体細胞核移植技術を用いたクローンブタの作出効率を考慮すると、効率的な相同組換え動物の作出の妨げとなる要因はあらかじめすべて排除しておくことが本発明の特徴の一つであり、そこで、単一な相同組換え細胞のみの集団を得るため、妊娠した雌ブタの胎児を採取し、採取した胎児から線維芽細胞等の体細胞を分離すると同時にゲノムDNAを採取し、相同組み換え個体であり、前記標的フラグメントを保持していることをPCR解析により確認することにより、胎児の体細胞核のcommonγ遺伝子がノックアウトされている胎児を選択することができる。PCR解析にて陽性であった胎児細胞を以下の工程(e)や(e’)に用いて再核移植を実施し、胚移植によりcommonγノックアウトクローン個体の作出に供することができる。
上記工程(e)や(e’)は、採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(d)や(d’)で選択された胎児の体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程であり、この工程(e)や(e’)は、相同組み換え個体と確認された体細胞核を用いることを除き、上記工程(c)や(c’)と同様に実施することができる。
上記工程(f)や(f’)は、工程(e)や(e’)で得られた妊娠ブタの産仔を育成する工程であり、工程(f)によりcommonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタが得られ、工程(f’)によりcommonγ遺伝子のノックアウト雄ブタが得られる。得られた産仔がcommonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタや、commonγ遺伝子のノックアウト雄ブタであることを確認することが好ましい。例えば、得られた産子より採取した細胞又は組織(耳)からゲノムDNAを抽出し、標的フラグメントが含まれていることをサザンブロット解析により確認することが好ましい。また、得られた産子より採取した細胞又は組織(耳)から全RNAを抽出し、RT−PCRやリアルタイムPCRを行って、commonγのmRNAの発現量に基づいて確認することが好ましい。
次に本発明のcommonγ遺伝子のホモ接合体ノックアウト雌ブタの作製方法としては、上記の本発明のcommonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタと、上記の本発明のcommonγ遺伝子のノックアウト雄ブタとを掛け合わせて、その産仔からホモ接合体ノックアウト雌ブタを選択する方法であれば特に制限されないが、かかるcommonγ遺伝子のホモ接合体ノックアウト雌ブタはメンデルの法則に従って生まれてくる産仔からゲノムDNAを抽出し、標的フラグメントが含まれていることをサザンブロット解析により確認することにより、また、得られた産子より採取した細胞又は組織(耳)から全RNAを抽出し、RT−PCRやリアルタイムPCRを行って、commonγのmRNAが発現していないことを確認することにより選択することができる。
本発明のcommonγ遺伝子の発現量が野生型に比べて消失もしくは低下しているブタとしては、相同染色体上の少なくとも1つのcommonγ遺伝子座においてcommonγ遺伝子が破壊されているブタを挙げることができ、具体的には、commonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタや、commonγ遺伝子のノックアウト雄ブタや、commonγ遺伝子のホモ接合体ノックアウト雌ブタを挙げることができ、これら本発明のcommonγ遺伝子ノックアウトブタと総称されるブタには、その後代(子孫)も含まれる。そして、本発明のcommonγ遺伝子ノックアウトブタは、さらなる改良ブタ、例えば、本発明のcommonγ遺伝子ノックアウトブタの体細胞核を相同組換えすることにより得られる他の免疫関連遺伝子(例えばRAG2遺伝子ノックアウト等)とのダブルノックアウト改変ブタの作製や、他の免疫関連遺伝子(例えばRAG2遺伝子ノックアウト等)改変ブタとの交配によるダブルノックアウト改変ブタの作製に用いることができる。
例えば、ブタRAG2遺伝子上における少なくとも一部の配列をマーカー遺伝子と置換するRAG2遺伝子のノックアウトを目的としたターゲッティングベクターの構築には、ブタのRAG2のゲノム領域が用いられる。ゲノム領域のDNAフラグメントは、ブタゲノムライブラリーから、クローニング、さらに必要に応じてサブクローニングすることによって得られるが、RAG2のコード領域を含むBACクローンを有利に用いることができる。例えば、ランドレース種由来BACライブラリーから得られたコード領域を含むDNAフラグメントの一部の配列をマーカー遺伝子と置換することで、RAG2遺伝子を不活性化するフラグメント(標的フラグメント)を得ることができ、この標的フラグメントを任意のベクターに導入するとターゲッティングベクターを得ることができる。ターゲッティングベクターとして、マーカー遺伝子としてPGK−puropAを有するRag2TV06−IIを好適に例示することができる。このようなターゲッティングベクターを用いて、本発明のcommonγ遺伝子ノックアウトブタの作製方法に準じることにより、RAG2遺伝子の発現量が野生型に比べて消失もしくは低下しているブタや、相同染色体上の少なくとも1つのRAG2遺伝子座においてRAG2遺伝子が破壊されているブタや、RAG2遺伝子のヘテロ接合体ノックアウトブタや、RAG2遺伝子のホモ接合体ノックアウトブタや、commonγ遺伝子・RAG2遺伝子ダブルノックアウトブタや、それらノックアウトブタ由来の細胞や組織・臓器を得ることができる。
また、本発明のcommonγ遺伝子ノックアウトブタの細胞や組織・臓器も本発明の対象であり、かかる細胞や組織・臓器は上記のダブルノックアウト改変ブタの作製における供試体細胞源として有用であり、さらに、本発明のcommonγ遺伝子ノックアウトブタは、造血幹細胞,ES細胞,iPS細胞等のヒトを含めた各種幹細胞の移植用のレシピエントとして使用することができ、再生医療等におけるトランスレーショナルリサーチ用のレシピエントとして利用すると、ヒト等の抗体や細胞、組織などを得ることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[commonγKOクローンブタの作出]
1)旧ターゲッティングベクターの構造(ベクター名:pγcTVneo)
pγcTVneoベクターの作製のためのIL2RG(ACCESSION No. AB092652)ゲノム領域(66C3)を含むBACクローンは、ブタLWD(ランドレース×大ヨークシャー×デュロック)三元交雑種のBACライブラリーより分離した(Suzuki, K. et al. Construction and evaluation of a porcine bacterial artificial chromosome library. Animal genetics 31, 8-12 (2000))。pγcTVneoベクターは、図1に示したように、5’側相同領域は、5’側エクソン1隣接領域7.9Kb、3’側相同領域はエクソン4及び5にかかる1.5kbで作製した。
2)新ターゲッティングベクターの構造(ベクター名:pCTV05-I)
IL2RG(ACCESSION No. AB092652)ゲノム領域(L274G22)を含むBACクローンは、ブタランドレース種のBACライブラリーより分離した(Animal genetics 31, 8-12 (2000))。pBluescriptIIのEcoRIサイトにBACクローンからIL2RG遺伝子のエクソン7、イントロン7、エクソン8とその3’側隣接領域を含む10kbのEcoRI断片をサブクローニングした。この断片の3’側末端領域の約400bpの塩基配列を調べ、サザンブロット解析のための3’プローブを設計した。このサブクローンの3’側末端の1kbを、AatII及びSalIによる切断の後に平滑末端化及びセルフライゲーションすることによって除去し、3’側相同領域となる9kbが組み込まれたプラスミドを作製した。イントロン4、エクソン5及びイントロン5を含む5’側相同領域の約1kbは、5’側にSalI もしくは XhoIサイトが含まれるプライマー(Gcint4F1XhoI : 5’- ACA TCT CGA GGA TTC CCA GCT CCT ATT CTC - 3’及びGcint5R1SalI : 5’- TAG AGT CGA CTG CCC TTA CTG TAT GCC AGC- 3 ’) [配列番号1及び2]を用いてBACのDNAからPCR増幅により作製した。SalIとXhoIにより増幅したDNA断片を消化し、pKJ2(Boer, P.H. et al. Polymorphisms in the coding and noncodingregions of murine Pgk-1 alleles. Biochemical genetics 28, 299-308 (1990))から得られたPGK-neo-p(A)カセットを含むpBluescriptのXhoIサイトに挿入した。その後、HindIIIサイトをSalIサイトに転換したpMC1-Dtp-(A)(Taniguchi, M. et al. Disruption of semaphorinIII/D gene causes severe abnormality in peripheral nerve projection. Neuron 19, 519-530 (1997))から切り出した MC1-DTA-p(A)カセットのXhoI/SalI断片を、5’側相同領域とPGK-neo-p(A)カセットを含むプラスミドのXhoIサイトに導入した。得られたプラスミドは、EcoRIとNotIにより3つの断片に消化し、pBluescriptを除く2つの断片を上で作製した3’相同領域と適切に順番に1つずつ連結し、その後、3’相同領域に5’末端に存在するEcoRIサイトを破壊した。最終的なターゲッティング構造は、PGK-neo-p(A)カセットの両側に位置するゲノムIL2RG塩基配列の9Kb3’相同領域、1Kb5’相同領域及び図1に示したように5’相同領域の外側にある、MC1-DTA-p(A)カセットが含まれている。このターゲッティングベクター(ベクター名:pCTV05-I)はエレクトロポレーションによる遺伝子導入の前にNotI制限酵素消化で直線化した。
3)胎児線維芽細胞の採取
ランドレース(雌)×大ヨークシャー(雄)で交配後、妊娠62日目の胎児を採取した。採取した胎児は、ハサミで筋肉組織を採取し、細切した。細切した胎児組織1g当たり10mlの0.25%トリプシン−0.04%EDTA−2Na液に懸濁し、一晩冷蔵した(4℃)。遠心処理(1500rpm,5min)により上清を除去した後、37℃に保温したウォーターバスにて20〜30分間処理した。保温処理後、胎児組織1g当たり10mlのDMEM+10%FCSを加えてピペッティングし、セルストイレーナーにて濾過した。濾過液を遠心後、上清を除去し、沈殿物に10mlのDMEM+10%FCSを添加して再懸濁した。細胞数を計測し、適当量になるようDMEM+10%FCSにて調整した後、75cm細胞培養用フラスコに播いた。その播いた細胞は、37℃で5%COでコンフルエントになるまで培養し、以下のエレクトロポレーションによる遺伝子導入に用いた。
4)遺伝子導入とG418薬剤選択(commonγKO細胞の作出)
分離及び増殖した胎児線維芽細胞は、0.25%トリプシン−0.04%EDTA−2Na液で剥離させ、DMEM+10%FCSにて懸濁した。細胞懸濁液を遠心処理(1500rpm,5min)した後、上清を除去し、冷HBSに再懸濁した。再懸濁液は、再度遠心処理を行って上清を除去した。細胞数が2.5×10cells/mlになるようにHBSにて調整した。キュベットに細胞溶液0.4ml(1.0×10cells/ml)と100μlの調整済みDNA液(5nMの直線化したターゲッティングベクターを添加,図1)を加えた後、良く混和した。遺伝子導入には、電気穿孔法装置を300V,950μF,抵抗∞の条件のパルスにて行った。パルス付加後、10分間室温にて静置した。静置した細胞は、DMEM+10%FCSに懸濁後、3枚の10cmシャーレに分けて培養した。パルス後48時間目に800μg/mlのネオマイシン(G418)を培養液に添加し、G418耐性細胞株を選別した。7〜12日間薬剤選択後、G418耐性細胞コロニーを濾紙ディスクにより分離させ、24穴細胞培養用ディッシュに移した。移した細胞がコンフルエントに達した後、トリプシン処理により剥離させた。剥離させた細胞の半分をPCR分析に用い、残りはそのまま残して培養した。
5)PCR解析によるターゲッティングの検出
細胞は、200g/mlのプロテナーゼKが含む50μlの超純水に再懸濁し、55℃で3時間保温した後、95℃10分間加熱してプロテナーゼを失活させた。PCR分析は、20μl量の反応液中に消化した50μlのサンプルから鋳型として1μlを採取してAmpliTaqGoldを用いて実施した。PCRサイクルのパラメーターは、最初に94℃を10分間後、94℃、30秒、58℃を25秒、72℃を1分15秒の1サイクルを35サイクルで行い、最後に72℃、7分間処理した。プライマーはFP1(5’- GCC TGC TCT TTA CTG AAG GC -3’) [配列番号3]及びGcint4F(5’- CAA TCA GTC CAG TAG GAA GG -3’) [配列番号4]を用いた。このプライマーは、1.1kbの変異アレル特異的な産物を設定した。精製したDNAに対するPCRは、鋳型として100ngの精製DNAを使用した点を除いて同様に実施した。
6)ホルモン処理による採卵方法
ランドレース(L)及びランドレース、大ヨークシャー(W)、デュロック(D)の三元交雑種(LWD)の生後160〜194日齢の春機発動前の雌ブタを用いた。供試ブタにeCG(ピーメックス、三共)を1500IU投与し、その72時間後にhCG(プペローゲン、三共)を500IU投与した。hCG投与48時間後に屠殺し、卵巣、卵管、子宮の結合組織を摘出した。また、性成熟に達した雌ブタからの採卵は、予め発情時に雄希釈精液を用いて人工授精を行い、妊娠21〜50日後に流産処置し行った。核移植予定5日前にPGF2α類縁体クロプロステロール約0.2mg(プラネート、武田:2ml量)を臀部筋肉内に投与した。その24時間後に、同様にPGF2α類縁体クロプロステロールを注射し、同時にeCG(ピーメックス、三共)を臀部筋肉内に1500IU投与した。PGF2α+eCG投与72時間後にhCG(プペローゲン、三共)を500IU投与した。hCG投与46時間後に屠殺し、卵巣、卵管、子宮の結合組織を摘出した。
7)体内成熟卵子の準備
摘出した卵巣、卵管、子宮の結合組織を直ちに実験室に持ち帰り、灌流液(PBS:Ca2+、Mg2+不含、TAKARA +0.1%ウシ血清アルブミン:BSA, Sigma, Cat. No. A-4503 +100ml辺り1ml添加抗生物質: Antibiotic, ntimycotic, Sigma, A-7292)で卵管を灌流し、卵子を採取した。得られた卵子は0.1%ヒアルロニダーゼを含む、灌流液を用いて卵丘細胞を裸化し、卵細胞質の均一な卵子を選抜した後、ヒアルロニダーゼを含まない灌流液中で洗浄した。その後、PZM−3液(Yoshioka, K., Suzuki, C., Tanaka, A., Anas, I.M. & Iwamura, S. Birth of piglets derived from porcine zygotes cultured in a chemically defined medium. Biology of reproduction 66, 112-119 (2002))を用いてインキュベーター(38.5℃、5%CO、5%O、90%N)内で供試するまで体外培養を行った。
8)屠場卵巣由来卵胞卵子の採卵方法
屠場にて食肉用として屠殺された春機発動前の未経産雌ブタより卵巣を採取し、PBS(−)液にて35℃保温下で研究室に持ち帰った。持ち帰った卵巣は直ちに、37℃に保温したPBS(−)にて洗浄し、卵巣結合組織を除去した後、採卵作業を行った。直径3〜6mmの卵胞を選び、16G注射針付き10mlシリンジで吸引した。吸引した卵胞液は、50mlディスポチューブに回収し、5分以上室温放置後、上清を除去した。卵子が含まれる沈殿物に対し、TALP−Hepes液を加えて懸濁後、沈殿物がチューブの底に溜まったのを確認し、沈殿物を吸引しないよう、パスツールピペットにて上清を除去した。この洗浄操作を2〜3回繰り返した。卵丘細胞が3層以上密に付着した卵丘細胞卵子複合体(COC)とCOCに壁側顆粒層細胞が付着した壁側顆粒層細胞−卵丘細胞卵子複合体(GCOC)を選別・採卵をした。
9)体外成熟培養
採取したCOC及びGCOCは、約15〜20個/穴で改変NCSU37を100μl分注し、100μl流動パラフィンオイルカバーした6穴ディッシュを用いて成熟培養した。改変NCSU−37は、10%ブタ卵胞液、0.6mMシステイン、50μM βメルカプトエタノール、1mMジブチリルcAMP、10IU/ml PMSG(ピーメックス;1000IU三共製薬)、10IU/ml hCG(プペローゲン;1500IU,三共製薬)を添加して作製した。20〜22時間まで培養後、ホルモン及びジブチリルcAMP無添加改変NCSU37に移して供試時まで培養した。成熟培養は39℃、気相条件は、CO5%,O5%,N90%の条件で実施した。成熟培養時間は、42〜44時間で行い、成熟卵子(第一極体放出卵子)のみを試験に使用した。
10)卵子核の除去操作(除核操作)
除核操作前に、屠殺採卵した未受精卵子を、サイトカラシンB(Sigma: Cat. No. C-6762)が5μg/ml濃度含むPZM3液に移し、15分間以上処理した。除核操作も同濃度のサイトカラシンBが含まれるPZM3液で作製したドロップ内(10cmプラスチックシャーレの中心付近に50μlでドロップを作製し、ミネラルオイル20mlで被った)で行った。卵子は、第一極体が、12時から3時方向の位置になるようにホールディングピペットで保定した。ピエゾマイクロマニピュレーター(プライムテック社製)に取り付けた除核用ピペット(外径25〜30μm、先端を30〜45度の角度で研磨)により、第一極体ごと細胞質を1/4〜1/3量程吸引した(Onishi, A. et al. Pig cloning by microinjection of fetal fibroblast nuclei. Science (New York, N.Y 289, 1188-1190 (2000))。除核用ピペットの操作性が悪くなった場合は、20%PVP液(Sigma: Cat. No. PVP-360)ドロップにて、吸引・排出を繰り返し、洗浄を行った。除核操作終了後、直ちにサイトカラシンBが含まれないPZM3液に移し、洗浄を行う。洗浄には、PZM3液が3ml入った35mmディッシュ(Falcon 1008)で2回以上、丁寧に洗浄し、サイトカラシンBを除去した。その後、注入操作まで、PZM3液ドロップ(35mmディッシュ:Falcon 3001 に100μlのドロップを作製し、4mlミネラルオイルで被った)に移し、インキュベーター内で培養した。
11)ドナー組換え体細胞の準備
PCR解析によりcommonγ遺伝子がノックアウトされていると判定した雌胎児の線維芽細胞を核移植ドナー細胞として用いた。培養液にはDMEM+10% FCSを用い、植え継ぎ回数は0〜5回の細胞を用いた。核移植予定日に合わせて、植え継ぎを行った後、コンフルエント状態から培養液の交換を行わず、3〜14日間放置し、細胞周期をG1/G0期に同調した。核移植に用いる約1時間前にドナー体細胞の準備を行った。細胞処理は、培養容器の培養液を除去した後に、PBS(−)にて3回以上洗浄を行い、0.25%トリプシン+0.04%EDTA−2Na液にて細胞剥離処理を行った。剥離した細胞に10%FCS添加DMEMを加え、懸濁した後、遠心処理(1,500rpm,5min,室温)を行った。遠心処理後、上清を除去し、PZM3液を適量加えて懸濁し、核移植に用いるまで室温で放置した。体細胞核注入操作時に、適当な細胞数を注入操作用チャンバーのドロップに添加して使用した。
12)体細胞核の注入操作
注入用チャンバー(10cmシャーレにPZM3液50μlでドロップを作製し、ミネラルオイル20mlで被った)のドロップに適量のドナー細胞を添加し、除核済み卵子50〜100個を入れて操作した。注入操作には、ピエゾマイクロマニピュレーターに体細胞核注入用ピペット(外径7−10μm,鈍端)を用いた。注入用ピペットをピエゾマイクロマニピュレーターに取り付ける前に、ピペット後端より5〜20mmの位置にフロリナートを3〜10mm幅になるように、充填して使用した。そのピペットをピエゾに取り付けて使用する時は、先端より培養液、フロリナート、空気、ミネラルオイルの順で満たされている状態にして操作した。注入操作を行う前に、必ず20%PVP液ドロップ内で注入用ピペットを洗浄(ピペッティングやPVPドロップへのピペット先端の出し入れ)した。浮遊している体細胞を吸引し、数回ピペッティングを行い、細胞膜を壊し、ホールディングピペットにて保定した除核済み卵子細胞質内へ注入した(Science (New York, N.Y 289, 1188-1190 (2000)、Wakayama, T., Perry, A.C., Zuccotti, M., Johnson, K.R. & Yanagimachi, R. Full-term development of mice from enucleated oocytes injected with cumulus cell nuclei. Nature 394, 369-374 (1998))。体細胞核を注入した卵子は、活性化処理時間までインキュベーターで培養を行った(1〜3時間)。
13)卵子の活性化処理
体細胞核を注入した卵子の活性化処理は直流パルス刺激(SSH-2, 島津製作所)を、1.5kV/cm 100μsec. ×1回の条件にて行った。チャンバーには2mm幅のステンレスワイヤー電極を用い、電気刺激用の電解質溶液には0.05mM CaCl、0.1mM MgSOならびに0.01%BSAを含む0.28Mマンニトール溶液を用いた。
14)活性化卵子の第2極体放出抑制処理
活性化処理卵子は5μg/mlサイトカラシンB (Sigma: Cat. No. C-6762)を含むPZM3液で2時間培養し、第2極体の放出を抑制させる処理を行った。
15)活性化卵子の体外培養
活性化後2倍体処理をした卵子は、PZM3液にて体外培養を行い、活性化処理後2日目に分割胚のみ胚移植に用いた。
16)ホルモン処理による仮腹の同期化と胚移植方法
仮腹の同期化は妊娠ブタを人工流産処置することで行った。また、仮腹の発情は、採卵ブタのものより、1日遅れるように発情同期化処置を行った。供試予定の雌ブタは、発情時に、雄ブタ希釈精液を用いて人工授精を行い妊娠させた。妊娠後21〜50日目の妊娠ブタを用いた。核移植予定6日前にPGF2α類縁体クロプロステロール約0.2mg(プラネート、武田:2ml量)を臀部に注射した。その24時間後に、同様にPGF2α類縁体クロプロステロールを注射し、同時にeCG(ピーメックス、三共)を1000IU投与した。PGF2α+eCG投与72時間後にhCG(プペローゲン、三共)を500IU投与した。hCG投与、約68時間目に仮腹へケタラール投与後、ハロセン麻酔下で外科的に胚移植手術を行った。胚移植はPPカテーテル(フジヒラ)を卵管へ挿入して行った。
17)組み換えクローン胎児の採取及び細胞分離作業
同定したPCR陽性コロニーは、非相同組換え細胞が、様々な割合で含まれている可能性があり、体細胞核移植技術を用いた効率的な相同組換え動物の作出の妨げとなりうることが予想された。そこで、単一な相同組換え細胞のみの集団を得るため、妊娠した雌ブタの32日目もしくは39日目に胎児を採取した。採取した胎児は、3)と同様に細胞を分離すると同時にゲノムDNAを採取し、相同組み換え個体であるか5)と同様の条件でPCR解析した。PCR解析にて陽性であった胎児細胞を用いて再核移植を実施し、胚移植によりcommonγノックアウトクローン個体の作出に供した。
18)サザンブロット解析
ゲノムDNAは、クローン胎児もしくはクローン産子より採取した細胞または組織(耳)から抽出した。その細胞及び細切した組織断片は、lysis buffer (50mM Tris,pH8.0,100mM EDTA,100mM NaCl,1%SDS,0.5mg/ml proteinase K)で55℃にて一晩処理し、溶解した。DNAは、フェノールとフェノール/クロロホルムにより処理した後、エタノール沈殿により抽出した。サザンブロッティング用に、子ブタ及び胎児細胞より抽出したゲノムDNA10ugを、EcoRIにて切断した後、0.8%アガロースゲルにて電気泳動後、Hybond N+メンブレンにブロッティングした。3’相同領域の外側にある3’隣接領域に相当する3’プローブとエクソン2の一部、イントロン2、エクソン3、イントロン3及びエクソン4の一部にわたる5’プローブは、PCRプライマー(3’プローブ:5’- TCA ACA CTC CCA GCA CTT TG -3’及び 5’- TCT TAG TGC GAA AGA TCC GC-3’[配列番号5及び6]、5’プローブ: 5’-CTG AGC TCC AGC CTA CCA ACC TAA C - 3’及び5’-AGT CCA GCT GCG GTC CCG GTC ACT C -3’[配列番号7及び8])によって作成した。プローブは、HighPrime (Roche)を用いたランダムプライミング法により、[α32-P]dCTPを用いて標識した。そのメンブレンは、32P標識したプローブを用いてハイブリダイズし、Imaging Plate (富士フィルム, 東京, 日本)上で一晩感光させ、FLA-3000G image analyzer (富士フィルム)を用いて解析した。
19)RNA抽出及びRT−PCR
全RNAは、分離したPBMCよりSepazol (東洋紡, 大阪, 日本)を用いて抽出した。1ugの全RNAをランダムヘキサマープライマーを用いてRevertraAce (東洋紡)によりcDNAに逆転写した。次のPCR増幅は、KOD plus ver.2 (東洋紡)を用いて、最初の変性が94℃、2分間、各サイクルが98℃、10秒間、アニーリング/増幅が68℃、45秒間で実施した。2組のプライマーセットをコモンガンマ遺伝子の増幅に用いた。最初のセットは、Gcex2F (5’-ATTGCACTTGGAACAGCAGC-3’)[配列番号9]とGcex4R (5’- CTCCAGTTGAGTTCTAGCTG-3’) [配列番号10]、二つ目のセットはGcex4F (5’-CAGCTA GAACTCAACTGGAG-3’) [配列番号11] と Gcex6R (5’-CGACAATCAGTCCCATGGAG -3’) [配列番号12]である。最適なサイクル数は、線型増幅領域内で決定した。GAPDHを内在コントロールとして供した。そのPCR産物は、1.5%アガロースゲル上で分離させ、エチディウムブロマイドを用いて可視化した。
20)リアルタイムPCR
1μgの全RNAの一定量を用いてランダムヘキサマープライマーによるRevertraAce (東洋紡)によりcDNAに逆転写した。mRNAの定量は、既報に準じて行った(Shoji, S. et al. EMBO J. 25, 834(2006),Amanai, M. et al. Biol. Reprod. 75, 891(2006))。
21)誕生したクローンブタのPCR判定
誕生したクローンブタから採取可能な組織(耳、臍帯組織)や血液等からDNAを抽出し、5)に準じてPCR解析を行った。
22)誕生したクローンブタのFACS解析
誕生したクローンブタから末梢血単核細胞もしくは脾臓単核細胞を分離し、抗ブタCD4抗体及び抗ブタCD8抗体(BD Bioscience Pharmingen、サンディエゴ、カナダ)を用いて、4℃、30分間反応させた。抗体反応後、細胞は0.5%FCSが含まれるPBS(−)液に懸濁し、FACS(ベクトンディッキンソン)による抗原発現を定量解析した。
[ブタにおけるcommonγ鎖遺伝子の一塩基多型解析]
1)材料及び計画
家畜において,
commonγ鎖遺伝子の多型が免疫特性や抗病性等に及ぼす影響について報告が少ない。ブタにおけるcommonγ鎖遺伝子の多型を調べるため、報告されている塩基配列(ACCESSION No. AB092652)からイントロン2、エクソン3及びイントロン3にかかる断片を増幅させるための、PCRプライマーを設計し、6品種のブタのPCR−RFLP及び塩基配列解析を実施した。
2)PCRプライマー
Forward: 5’-CTGAGCTCCAGCCTACCAACCTAAC-3’(exon2) [配列番号13]
Reverse: 5’-AGTCCAGCTGCGGTCCCGGTCACTC-3’(exon4) [配列番号14]
3)PCR/RFLPの条件
PCR反応は、PCR Gold Buffer (Applied Biosystems, Foster, CA, USA)に、100ngのゲノムDNA,20pmolずつのプライマー,200μMのdNTP,2.5UのAmpliTaq Gold DNA ポリメラーゼを添加し総液量20μlで作製した。PCR反応は、最初の熱変性95℃、9分間後、各サイクル95℃、30秒,58℃、30秒,72℃、30秒を35サイクル反応させた後、72℃、10分間で実施した。増幅させたPCR産物は、制限酵素EcoRVで消化し、2%アガロースゲルにて電気泳動した。その消化した断片は、795bpもしくは531と264bpで検出した。
4)塩基配列
予測された多型サイトの塩基配列は、直接PCR産物を用いてBigDyeターミネーター(Applied Biosystems, Foster, CA, USA)で解析した。
[pγcTVneoターゲッティングベクター由来クローンブタの作出試験結果]
1)三元交雑種由来BACライブラリーより作製したpγcTVneoターゲッティングベクターを用いてエレクトロポレーションによる遺伝子導入を16回行い、G418により選択した結果、1543個のG418耐性コロニーをピックアップした。1543個のコロニーをPCR解析した結果、3個(0.19%)の陽性コロニーが得られた(表1)。
Figure 2010110254
2)上記1)で得られた陽性コロニーをドナー細胞として核移植に供した。核移植後、2023個が生存し、2日間の体外培養後、971個(47.9%)が分割した(表2)。その分割胚971個を6頭の仮腹へ分けて移植した結果、2頭が妊娠した。妊娠した仮腹2頭は、妊娠40〜50日目で、屠殺し胎児を3頭回収した(表2)。その3頭をPCR解析した結果、正常にターゲッティングされていないことが確認された。
Figure 2010110254
[ブタにおけるcommonγ鎖遺伝子の一塩基多型解析結果]
1)ブタcommonγ鎖遺伝子の多型について報告が少ないため、commonγ鎖遺伝子の多型を調査するため報告されている情報(ACCESSION No. AB092652)からイントロン2、エクソン3及びイントロン3にかかる断片を増幅させるためのPCRプライマーを設計し、6品種のブタのPCR−RFLP及び塩基配列解析を実施した。その結果、制限酵素EcoRV消化により検出されたイントロン2に存在するGAATTC配列にAとTが置換されていた。
2)対立遺伝子頻度は、西洋種4種(ランドレース、バークシャー、大ヨークシャー、デュロック)と中国種2種(梅山ブタ、金華ブタ)の74頭のブタ(50頭雌、24頭雄)を用いて判別した。ブタcommonγ鎖遺伝子は、X染色体に位置するため、総数124本(雄24本、雌50×2本=100本)のX染色体のSNP型を調べた結果、西洋種はA塩基だけを検出し、中国種はT塩基のみを検出した。品種内に関しては多型は検出されなかった(表3)。
Figure 2010110254
3)梅山ブタとランドレース種間の交雑試験では、メンデルの法則に従った共優性及びX染色体連鎖型であることが確認された(図3)。
[pCTV05-Iターゲッティングベクター由来クローンブタ作出試験結果]
1)実施例3及び4の結果から、commonγ鎖遺伝子には中国種と西洋種間で多型が確認されたため、西洋種間では多型が確認されなかったが、ベクターに使用するゲノムの品種と遺伝子導入に使用する細胞の品種を揃えることが、組換え効率に影響するものと推察された。そこで、新たなベクターの構築を目指した。ランドレース種由来BACライブラリーから作製したpCTV05-Iターゲッティングベクターは、エクソン4の一部からイントロン5の一部に相当する1kbの5’相同領域とエクソン7の一部から3’隣接領域に相当する3’相同領域を含む通常のポジティブ・ネガティブセレクションが可能なものを設計した(図2)。ターゲッティングが成功した場合、PGK−neo発現カセットによってイントロン5の一部,エクソン6,イントロン6及びエクソン7の一部が置換されることが想定され、レセプター機能に必須な膜貫通ドメインをコードする遺伝子配列がエクソン6に位置するため、結果的に遺伝子機能の不活化が起こる。メス胎児から得られた線維芽細胞に対し、直線状にしたベクターを遺伝子導入し、G418により選択した。G418耐性コロニーをピックアップし、プライマーFP1(PGK-neo発現カセットの3’末端からの遺伝子配列)とGcint4F4(5’側短腕のすぐ外側のイントロン4に位置する配列)を用いたPCR分析によるスクリーニングを行った。2回の遺伝子導入操作からG418耐性コロニーを597個ピックアップし、3個(0.51%)のコロニーが正常にターゲッティングされた特異的なPCR産物1.1kbpを産生した(表1)。
2)PCR陽性コロニーは、核移植に使用するために増殖させた。5個のPCR陽性コロニーのうち1個を核移植に使用した。総数2325個の核移植胚のうち1703個が生存し、その内、64.3%(1046個)が正常な2−8細胞期胚まで体外で発生した。総数1046個の分割胚を、4頭の雌ブタの卵管へ移植した(表2)。
3)同定したPCR陽性コロニーは、非相同組換え細胞が、様々な割合で含まれている可能性があり、体細胞核移植技術を用いた効率的な相同組換え動物の作出の妨げとなりうることが予想された。従って、単一な相同組換え細胞のみの集団を得るため、妊娠した雌ブタの32日目もしくは39日目に胎児を採取し、PCR及びサザンブロット解析によりそれぞれの胎児から分離した体細胞を選別した。妊娠した3頭の雌ブタの内、2頭から総数9頭の胎児が採取でき(表2)、そのうち6頭がPCR陽性だった(データは示していない)。
4)さらなる確認のために、6頭の胎児から胎児体細胞を分離し、サザンブロット解析用の充分なゲノムDNAを得るために増殖させた。EcoRIを用いて消化したゲノミックDNAは、3’相同領域の外側の3’隣接領域に相当する3’プローブとエクソン2の一部、イントロン2、エクソン3、イントロン3及びエクソン4の一部にまたがる5’プローブによりハイブリダイズさせた。ヘテロ接合性の相同組換え雌細胞のため、それぞれのプローブが変異アレルと野生型アレルに相同する2つのバンドでハイブリダイズする:3’プローブは、変異型アレルの12.5−kbのバンドと野生型アレルの10−kbのバンド、5’プローブは、変異型アレルの12.5−kbのバンドと野生型アレルの2.5−kbのバンドが検出され、一方無処置の細胞は野生型アレルの1つのバンドのみがハイブリダイズされる(図1に図表)。6つ細胞群すべてのハイブリダイゼーションにおいて予想された2つのバンドが検出され、調べた6頭の胎児がすべてへテロ接合型ノックアウトであることが確認できた(図4)。我々は正確に相同組換えが起こっていることが確認されたそれら6つの細胞群の1つを用いてその後の核移植に用いた。
5)総数6102個の核移植胚にうち4984個が生存し、その内、49.8%(2482個)が正常な2〜8細胞期胚まで体外で発生した。2482個の分割胚を11頭の仮腹である雌ブタの卵管へ移植し、6頭が妊娠し分娩まで至り、死産14頭を含む31頭の子ブタが誕生した(表3、図5)。17頭の生存産子の内3頭が、原因不明の生後間もなく死亡した。しかしながら、これらの短命だった子ブタの生時体重(0.6±0.2kg)は、残った14頭(1.0±0.3kg)よりも有意に小さかった。さらに、他の10頭は、肺炎や重度の関節炎により衰弱し、生後6〜70日の間に死亡した(5頭の安楽死も含む)。最終的に、見かけ上は健康である4頭が、現在まで生存している(表2)。
6)PCR解析により、誕生した31頭の子ブタすべてが、ヘテロ接合体のcommonγ鎖遺伝子のノックアウトであることを確認され(図6A)、生存している4頭が、サザンブロット解析により相同組換えが生じていることが確認された(図6B)。commonγ鎖遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタは、マウスとヒトの場合(非特許文献15,23参照)のように正常なブタから識別不可能であることが予想された。しかしながら、下痢症、肺炎、重度の関節炎の頻発から、感染症に対する感受性が高くなっていることが示唆された。これらの現象の根底にある理由を調査するため、死産や生後死のブタの脾臓及び胸腺のような免疫系組織を調べた。死産及び生後直死産子の脾臓は正常もしくは若干小さい程度であったが、リンパ系の凝集(白脾髄)の低形成が度々観察された(図8)。死産14頭のうち12頭、生後死13頭のうち12頭では、胸腺の欠損か著しい低形成が認められた(表4、図7A)。この特徴はマウス及びヒトとは異なるものであった。
Figure 2010110254
7)次に、7週時点で生存していた7頭のヘテロ接合体ノックアウトブタ(3頭はすでに衰弱し、その後に安楽死させ、残り4頭は見かけ上は健康で生存している)から末梢血を採取し、フローサイトメトリー解析によりリンパ系の集団(CD4陽性及びCD8陽性のT細胞)の構成を調査した。4頭の現在も生存する子ブタは、CD4陽性及びCD8陽性のT細胞が正常ブタと同等レベルであったが、衰弱した3頭は、循環血液中もしくは脾臓内に存在するT細胞が少なかった(図9A,B)。
8)さらにPBMCから全RNAを抽出し、commonγ遺伝子に対する2セットのプライマーを用いてRT−PCR解析を行った。最初のセットは、エクソン2から4にかかる断片を増幅させるために設計し、もう一方のセットはエクソン4から6までを増幅させるために設計した。ターゲッティングされたアレルでは、エクソン6は、欠失されるため、後者のセットに対する断片は野生型アレルからのみ増幅される。野生型のコントロールであるブタと生存しているブタ4頭は、両方のプライマーセットで強い増幅が検出された(図7B)。一方、衰弱したブタ3頭の内、2頭は、前半のプライマーセットだけ弱い増幅を示し、残りの1頭は、両方のプライマーセットで弱い増幅が検出された(図7B)。また、リアルタイムPCR解析の結果、野生型のコントロールに比べて胸腺欠損ヘテロ接合体ノックアウトブタが、Il2rg、CD4及びCD8の転写レベルが大きく枯渇していることが確認された(図9C)。これらの結果から、衰弱したブタ及び死亡した子ブタの大部分は、野生型アレルからのcommonγ遺伝子の転写が減少もしくは消滅したことによりSCID様の表現形を示したのではないかということを示唆した。この異常発現は、細胞培養を含む体細胞クローニングの工程の間に生じた何らかのエピジェネティックもしくはジェネティックな欠陥に起因するであろう。特に最初のプライマーセットだけ増幅が増加した2頭の衰弱したブタにおいては、commonγ遺伝子の転写がターゲットアレルからのみ検出されていることから、選択的なX染色体の不活化が関与していることを仮説として考えることができる(M. F. Lyon, Nature 190, 372 (1961))。実際に、X染色体の不活化の状態が、体細胞クローニングの過程及び核移植に使用する体細胞の維持による正確に初期化されていないことが報告されている(L. Jiang et al., Mol. Reprod. Dev. 75, 265 (2008)、L. D. Nolen et al., Dev. Biol. 279, 525 (2005)、S. Senda et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 321, 38 (2004)、F. Xueet al., Nat. Genet. 31, 216 (2002))。F1及びF2産子の詳細な解析が、これらの現象の根底にある正確な機構の評価に求められる。
[RAG2KOクローンブタの作出]
1)ターゲッティングベクターの構造(ベクター名:rag2TV06-I)
RAG2(ACCESSION No. AB091391)ゲノム領域(L376O22)を含むBACクローンは、ブタランドレース種のBACライブラリーより分離した(Suzuki, K. et al. Construction and evaluation of a porcine bacterial artificial chromosome library. Animal genetics 31, 8-12 (2000))。rag2TV06- Iベクターは、図10に示したように、5’側相同領域は、5’側エクソン1A隣接領域約8Kb、3’側相同領域はエクソン2を含む約1kbで作製した。
2)ターゲッティングベクターの構造(ベクター名:rag2TV06-II)
RAG2(ACCESSION No. AB091391)ゲノム領域(L376O22)を含むBACクローンは、ブタランドレース種のBACライブラリーより分離した(Suzuki, K. et al. Construction and evaluation of a porcine bacterial artificial chromosome library. Animal genetics31, 8-12 (2000))。rag2TV06-IIベクターは、図10に示したように、5’側相同領域は、5’側エクソン2の一部からイントロン1にかかる領域約1Kb、3’側相同領域はエクソン2を含む3’側エクソン2隣接領域約8.5Kbで作製した。
3)PCR解析によるターゲッティングの検出
遺伝子導入および薬剤選択(ピューロマイシン)後、増殖した細胞は、200g/mlのプロテナーゼKが含む50μlの超純水に再懸濁し、55℃で3時間保温した後、95℃10分間加熱してプロテナーゼを失活させた。PCR分析は、20μl量の反応液(表5)中に消化した50μlのサンプルから鋳型として1μlを採取してLAtaqHSを用いて実施した。PCRサイクルのパラメーターは、最初に94℃を5分間後、94℃、30秒、68℃を1分30秒、の1サイクルを35サイクルで行い、最後に72℃、7分間処理した。プライマーはrag2TV06-Iを解析する場合、FP1(5’- GCC TGC TCT TTA CTG AAG GC -3’)[配列番号15]および rag2TV Icont4(5’-CTT GCT ATC TCC ACA TGC TC -3’) [配列番号16]を用い、rag2TV06-IIを解析する場合、rag2TV5‘UTRF4(5’- GGG CAG GAA AGA GAG ATC TG -3’) [配列番号17]および FP1(5’- GCC TGC TCT TTA CTG AAG GC -3’) [配列番号18]を用いた。また、サザンブロッティングの結果を図11及び12に示す。
Figure 2010110254
本研究は、独立行政法人農業生物資源研究所、独立行政法人理化学研究所、プライムテック株式会社、3者間の共同研究契約(平成20年10月1日締結「免疫欠損ブタを用いたヒト化ブタの開発」に関する研究)に基づいて実施されたもので、免疫欠損ブタの生産のため、雌ヘテロ接合体であるcommonγ遺伝子ノックアウトブタを作製した。これらの免疫欠損ブタは、造血幹細胞、ES細胞及びiPS細胞(K. Takahashi et al., Cell 131, 861 (2007))のようなヒト幹細胞移植のためのレシピエントとして貴重である。X染色体に相同組み換えを実施した雌産子を用いて、ここで作製したノックアウトブタが実用化使用に有効であることを判定するためには、ヒト幹細胞の生着率を調べることができる。さらに、免疫に必要とされる重要な役割を担うRAG2遺伝子の破損のような追加の遺伝子操作が(Shinkai, Y. et al. RAG-2-deficient mice lack mature lymphocytes owing to inability to initiate V(D)J rearrangement. Cell 68, 855-867 (1992))、ヒト幹細胞生着率の改善に効果的である可能性がある。
pγcTVneoベクターの設計図である。ターゲッティングベクターの5’及び3’−相同領域のために使用した野生型IL2RG(γ鎖)遺伝子座(エクソン、ソリッドボックス、イントロン及び隣接領域、太線)と相同組換え後のターゲット遺伝子座を示している。標的組換え特異的なPCR増幅のために使用したプライマーの位置は、短い矢印で示した。PγcTVneoベクターは、5’側相同領域は、5’側エクソン1隣接領域7.9Kb、3’側相同領域はエクソン4及び5にかかる1.5kbで作製した。 pCTV05−Iターゲッティングベクターの構築及び標的組換えの検出ためのPCRとサザンブロットのデザイン図である。図は、ターゲッティングベクターの5’及び3’−相同領域のために使用した野生型IL2RG(γ鎖)遺伝子座(エクソン、ソリッドボックス、イントロン及び隣接領域、太線)と相同組換え後のターゲット遺伝子座を示している。標的組換え特異的なPCR増幅のために使用したプライマーの位置は、短い矢印で示した。 サザンブロットのために使用したプローブの位置は、ショートバーで示し、EcoRI消化によるサザンブロットのバンドの予想されるサイズを野生型及びターゲット遺伝子座の両方について示した。 1塩基多型(SNP)のメンデル遺伝解析結果を示す図である。F=父ブタ,M=母ブタ,□=雄、○=雌、01−013=後代産子番号 1−13 クローン胎児のサザンブロット解析結果を示す図である。6頭の胎児及び通常ブタからのDNAをEcoRI消化し、5’−と3’プローブを用いてハイブリダイズさせた。14−kbの標的組換えされたバンドと2.5−kbの野生型バンドが、5’プローブによって検出され、14−kb標的組換えされたバンドと10−kbの野生型バンドは、3’プローブにより検出された。 本発明のヘテロ接合体のcommonγ鎖遺伝子のノックアウトクローン産子を示す図である。 commonγ遺伝子ヘテロノックアウト雌ブタに対するPCR及びサザンブロット解析結果を示す図である。(A)31頭のクローンブタのPCR解析プライマーFP1及び Gcint4Fによるおよそ1.1kbのPCR産物は、γ鎖が標的組換えされた遺伝子座からのみ増幅された。ブランクのレーンで区別されたそれぞれのグループは、それぞれのメスから誕生した子より構成されている。P,W,Nのレーンはポジティブコントロール(P)、野生型(W)と鋳型なし(N)をそれぞれ表す。(B)4頭の生存産子のサザンブロット解析(レーン#5,#9,#15及び#20)4頭のcommonγノックアウトメスブタと通常ブタ(レーンWT)由来のEcoRI消化したDNAは5’−及び3’−プローブによりハイブリダイズさせた。14−kbの標的組換えされたバンドと2.5kbの野生型バンドが、5’プローブによって検出され、14kb標的組換えされたバンドと10kbの野生型バンドは、3’プローブにより検出された。 本発明のヘテロcommonγ遺伝子ノックアウト雌仔ブタの特性を示す図である。(A)ノックアウト子ブタにおいて胸腺異常形成が観察された。ほとんどのノックアウト子ブタが(a)検出不可能(#25,day0)もしくは(b)胸腺過小形成(#13,day0矢印先)であった。(c)day0正常コントロールブタの胸腺(矢印)。(B)commonγ遺伝子のRT−PCR解析 7週齢まで生存した7頭の組み換えブタ(#5,#9,#15及び#20:現在も生存; #8,#18及び#19:その後死亡)とコントロールとして2頭の正常ブタのPBMCから全RNAを抽出し、RT−PCRに供した。2つの明確な領域は、それぞれのプライマーセットにより増幅させた。エクソン2から4に相当するひとつは(γc ex2-4)、標的及びもう一方の非組み換えアレルより得られたcDNAから増幅し、エクソン4から6に相当するもうひとつは(γc ex4-6)、非組み換えアレルから得られたcDNAのみ増幅した。RT(−)と表記したレーンは、RT反応なしのPCR産物である。右側の数字は、PCRサイクル数を示す。GAPDH遺伝子転写物は、内部標準として使用した。 コントロール(Wt)と本発明の胸腺低形成ヘテロcommonγ遺伝子ノックアウトブタ#13の脾臓を示す図である。白色矢印は、胚中心を示し、黒色矢印は、脾臓の白脾髄を示す。 本発明のヘテロcommonγ遺伝子ノックアウトブタ由来循環リンパ球のT細胞マーカー発現解析の結果を示す図である。(A)コントロールブタ(Wt)及びヘテロcommonγ遺伝子ノックアウトブタの末梢血単核球(CD4−PB及びCD8−PB)及び脾臓(CD4−Spl及びCD8−Spl)におけるCD4陽性及びCD8陽性T細胞のフローサイトメトリー解析結果。(B)コントロールブタ(Wt)及びヘテロcommonγ遺伝子ノックアウトブタの生存産子もしくは屠殺した胸腺欠損産子から採取した末梢血単核球の代表的なフローサイトメトリー解析結果。(C)末梢血単核球のmRNAにおけるCD4、2種類のCD8アイソフォーム及びIl2rgのエクソン2から3及び6から7の領域をリアルタイムPCRにより検出した結果。RQ値は、GAPDHのmRNAとの相対値。バーは、3通りの範囲で表示した。値は、それぞれの分析時にコントロール(Wt)の一番高い結果を1.00として標準化した。 RAG2遺伝子ターゲッティングベクターの設計図を示す図である。 RAG2遺伝子ターゲッティングベクターのサザンブロッティングの結果を示す図である。 RAG2遺伝子ターゲッティングベクターのサザンブロッティングの結果を示す図である。

Claims (14)

  1. 以下の(a)〜(f)の工程を備えたことを特徴とする共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタの作製方法。
    (a)ブタ共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)上における少なくとも一部の配列をマーカー遺伝子と置換するcommonγ遺伝子のノックアウトを目的としたターゲッティングベクターを構築する工程;
    (b)工程(a)で構築されたターゲッティングベクターを、雌ブタ体細胞に導入し、マーカー遺伝子の発現を指標として相同組換えが生じていると判定される体細胞を選択する工程;
    (c)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(b)で選択された体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
    (d)工程(c)で得られた妊娠ブタから胎児を採取し、その胎児の体細胞核のcommonγ遺伝子がノックアウトされている胎児を選択する工程;
    (e)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(d)で選択された胎児の体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
    (f)工程(e)で得られた妊娠ブタの産仔を育成する工程;
  2. 以下の(a’)〜(f’)の工程を備えたことを特徴とする共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子のノックアウト雄ブタの作製方法。
    (a’)ブタ共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)上における少なくとも一部の配列をマーカー遺伝子と置換するcommonγ遺伝子のノックアウトを目的としたターゲッティングベクターを構築する工程;
    (b’)工程(a’)で構築されたターゲッティングベクターを、雄ブタ体細胞に導入し、マーカー遺伝子の発現を指標として相同組換えが生じていると判定される体細胞を選択する工程;
    (c’)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(b’)で選択された体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
    (d’)工程(c’)で得られた妊娠ブタから胎児を採取し、その胎児の体細胞核のcommonγ遺伝子がノックアウトされている胎児を選択する工程;
    (e’)採取したブタの卵子から除核し、該除核された卵子に、工程(d’)で選択された胎児の体細胞の細胞核を注入し、該細胞核が注入された核移植胚を雌ブタの卵管又は子宮に移植して妊娠ブタを作製する工程;
    (f’)工程(e’)で得られた妊娠ブタの産仔を育成する工程;
  3. 請求項1記載の作製方法により得られた共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタと、請求項2記載の作製方法により得られたcommonγ遺伝子のノックアウト雄ブタとを掛け合わせて、その産仔からホモ接合体ノックアウト雌ブタを選択することを特徴とするcommonγ遺伝子のホモ接合体ノックアウト雌ブタの作製方法。
  4. ブタcommonγ遺伝子が、ブタランドレース種のIL2RGゲノム領域を含むBACライブラリーより分離したcommonγ遺伝子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の作製方法。
  5. マーカー遺伝子が、薬剤耐性遺伝子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の作製方法。
  6. ターゲッティングベクターが、pCTV05−Iであるであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の作製方法。
  7. 共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子(commonγ遺伝子)の発現量が野生型に比べて消失もしくは低下していることを特徴とするブタ。
  8. 相同染色体上の少なくとも1つのcommonγ遺伝子座においてcommonγ遺伝子が破壊されている請求項7記載のブタ。
  9. commonγ遺伝子のヘテロ接合体ノックアウト雌ブタである請求項8記載のブタ。
  10. commonγ遺伝子のノックアウト雄ブタである請求項8記載のブタ。
  11. commonγ遺伝子のホモ接合体ノックアウト雌ブタである請求項8記載のブタ。
  12. 請求項7〜11のいずれか記載のブタの細胞。
  13. 請求項7〜11のいずれか記載のブタの組織・臓器。
  14. 請求項7〜11のいずれか記載のブタを幹細胞移植用のレシピエントとして使用する方法。
JP2008284892A 2008-11-05 2008-11-05 共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子ノックアウトブタ Active JP5366074B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008284892A JP5366074B2 (ja) 2008-11-05 2008-11-05 共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子ノックアウトブタ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008284892A JP5366074B2 (ja) 2008-11-05 2008-11-05 共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子ノックアウトブタ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010110254A true JP2010110254A (ja) 2010-05-20
JP5366074B2 JP5366074B2 (ja) 2013-12-11

Family

ID=42299332

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008284892A Active JP5366074B2 (ja) 2008-11-05 2008-11-05 共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子ノックアウトブタ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5366074B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013537515A (ja) * 2010-06-18 2013-10-03 ホワイトヘッド・インスティチュート・フォア・バイオメディカル・リサーチ 抗ウイルス化合物のためのターゲットとしてのpla2g16
CN104182655A (zh) * 2014-09-01 2014-12-03 上海美吉生物医药科技有限公司 一种判断胎儿基因型的方法
JP2015002719A (ja) * 2013-06-21 2015-01-08 全国農業協同組合連合会 免疫不全ブタ
WO2015155904A1 (ja) * 2014-04-07 2015-10-15 学校法人自治医科大学 遺伝子ノックアウトブタ
WO2016140353A1 (ja) * 2015-03-04 2016-09-09 株式会社 医療実験用大動物供給事業準備会社 安定した表現型を示す疾患モデルブタおよびその作製方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002043477A1 (en) * 2000-12-01 2002-06-06 Central Institute For Experimental Animals Method of constructing mouse suitable for the take, differentiation and proliferation of heterogenous cells, mouse constructed by this method and use of the mouse

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002043477A1 (en) * 2000-12-01 2002-06-06 Central Institute For Experimental Animals Method of constructing mouse suitable for the take, differentiation and proliferation of heterogenous cells, mouse constructed by this method and use of the mouse

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013029703; 大西彰: アニテックス 20(6), 2008, pp.23-28 *

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013537515A (ja) * 2010-06-18 2013-10-03 ホワイトヘッド・インスティチュート・フォア・バイオメディカル・リサーチ 抗ウイルス化合物のためのターゲットとしてのpla2g16
JP2015002719A (ja) * 2013-06-21 2015-01-08 全国農業協同組合連合会 免疫不全ブタ
WO2015155904A1 (ja) * 2014-04-07 2015-10-15 学校法人自治医科大学 遺伝子ノックアウトブタ
JPWO2015155904A1 (ja) * 2014-04-07 2017-04-13 学校法人自治医科大学 遺伝子ノックアウトブタ
CN104182655A (zh) * 2014-09-01 2014-12-03 上海美吉生物医药科技有限公司 一种判断胎儿基因型的方法
WO2016140353A1 (ja) * 2015-03-04 2016-09-09 株式会社 医療実験用大動物供給事業準備会社 安定した表現型を示す疾患モデルブタおよびその作製方法
US11246299B2 (en) 2015-03-04 2022-02-15 Pormedtec Co., Ltd. Disease model pig exhibiting stable phenotype, and production method thereof

Also Published As

Publication number Publication date
JP5366074B2 (ja) 2013-12-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Brink et al. Developing efficient strategies for the generation of transgenic cattle which produce biopharmaceuticals in milk
Kang et al. Generation of cloned adult muscular pigs with myostatin gene mutation by genetic engineering
CN111647627A (zh) 多重基因编辑
JP2000508161A (ja) キメラ有蹄類及びトランスジェニック有蹄類の生産のための胚幹細胞
US20030177512A1 (en) Method of genetically altering and producing allergy free cats
JP5366074B2 (ja) 共通サイトカイン受容体γ鎖遺伝子ノックアウトブタ
JP5817955B2 (ja) 血友病aモデルブタの作出
KR20210005661A (ko) 변형된 아미노펩티다제 n(anpep) 유전자를 갖는 병원체-내성 동물
US8119785B2 (en) Nucleic acid sequences and homologous recombination vectors for distruption of a Fel D I gene
Kasai et al. Comparison of the growth performances of offspring produced by a pair of cloned cattle and their nuclear donor animals
Bevacqua et al. Assessing Tn5 and Sleeping Beauty for transpositional transgenesis by cytoplasmic injection into bovine and ovine zygotes
US20210037797A1 (en) Inducible disease models methods of making them and use in tissue complementation
JP6172699B2 (ja) 高脂血症モデルブタ
US10626417B2 (en) Method of genetically altering and producing allergy free cats
US6498285B1 (en) Methods for producing transgenic pigs by microinjecting a blastomere
Sasaki Creating genetically modified marmosets
JP4845073B2 (ja) 再構築受精卵の作製方法及びそれを用いたトランスジェニック胚の作製方法
Huang et al. Selection of in vitro produced, transgenic embryos by nested PCR for efficient production of transgenic goats
JP5374389B2 (ja) 霊長類動物の初期胚への外来遺伝子導入法及び該導入法を含むトランスジェニック霊長類動物を作出する方法
JP5771240B2 (ja) 免疫不全ブタ
KR101832485B1 (ko) 목적유전자를 조건적으로 발현하는 복제된 개과동물의 생산방법
JP2966016B2 (ja) トランスジェニックラット及びその作製方法
Pinkert Genetic engineering of farm mammals
KR20230130639A (ko) 마이오스타틴 유전자가 변형된 형질전환 동물
US20190183100A1 (en) Animal models for polycystic kidney disease

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20111104

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130620

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130802

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130822

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130903

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5366074

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250