以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。先ず、実施の形態の説明に入る前に、本発明に係るプリント基板の実装構造の概略について説明する。
図13に本発明に係るプリント基板の実装構造の概略を示す。本発明に係るプリント基板の実装構造では、断面「L」字状に形成した1枚の金属製のシールド板207を設け、このシールド板207の基台面207aの上面に電源ボード201を装着し、基台面207aの端部から一体的に断面「L」字状に立ち上げられた立上面207bの電源ボード201が装着される面と反対側の面にメインボード202を装着する。なお、図13において、図16と同一符号は図16を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
このプリント基板の実装構造において、電源ボード201の取付面(基台面207a)の面積は、ほぼ電源ボード201の面積程度で済む。また、電源ボード201に搭載された電子部品を収容するために必要な高さHを利用してメインボード202が立上面207bに装着されている。すなわち、このプリント基板の実装構造において、電源ボード201の取付面に対して垂直な方向(充填装置用電磁流量計の幅方向)は、電源ボード201に搭載された電子部品を収容するために必要な高さがあれば十分である。これにより、充填装置用電磁流量計の幅Wを薄くして、目標とする70mm程度の中に収めることができる。
なお、図13においては、シールド板207の立上面207bを基台面207aの端部から断面「L」字状に立ち上げた形状としたが、図14に示すように立上面207bを基台面207aの外側に傾斜させるようにしてもよい。メインボード202の面積が大きい場合には、このように立上面207bを傾斜させることによって、電源ボード201の取付面に対して垂直な方向への寸法を犠牲にすることなく、取付面積を確保することができる。
また、図13においては、電源ボード201およびメインボード202をスペーサ204を介してシールド板207に取り付けているが、シールド板207に一体的にエンボスを設けるなどして、スペーサ204を介さずにシールド板207に直接取り付けるようにしてもよい。
また、図13においては、シールド板207の基台面207aの左側の端部に立上面207bを設けるようにしたが、右側の端部にも同様にして立上面を設け、この立上面の電源ボード201が装着される面とは反対側の面にメインボード202を分割して設けるなどしてもよい。
また、図13においては、電源ボード201およびメインボード202を装着する基板取付板を金属製のシールド板207としたが、シールドする必要がない場合には基板取付板として非金属製の板を使用するようにしてもよい。
図1は本発明に係るプリント基板の実装構造が採用された充填装置の全体構成の一例を示す図である。この充填装置には多数の注入管2−1〜2−nが並設されている。各注入管2−1〜2−nは、多数の容器1−1〜1−nのそれぞれに、飲料または医薬品等の導電性を有する流体を注入するものである。各注入管2−1〜2−nにはそれぞれバルブ3−1〜3−nが設けられている。各バルブ3−1〜3−nは後述する開閉信号に基づきそれぞれ注入管2−1〜2−nを開閉して、各容器1−1〜1−nへの流体の注入を制御する。
また、各注入管2−1〜2−nにはそれぞれ電磁流量計6−1〜6−nが設けられている。各注入管2−1〜2−nの電磁流量計6−1〜6−nは、それぞれ検出部4−1〜4−nと変換部5−1〜5−nとから構成される。この実施の形態において、電磁流量計6−1〜6−nは、検出部と変換部とを一体化した一体形充填装置用電磁流量計としている。
図1に示した構成において、各注入管2−1〜2−n同士は互いに近接しているので、各注入管2−1〜2−nに取り付けられた検出部4−1〜4−n同士も互いに近接している。各変換部5−1〜5−nは同期信号線7により直列に接続されている。
検出部4−1〜4−nは、それぞれ注入管2−1〜2−n内の流体に交番磁界を印加して、これにより生ずる起電力に基づく交流電圧信号を変換部5−1〜5−nに出力する。また、変換部5−1〜5−nは、それぞれ検出部4−1〜4−nから出力された交流電圧信号を演算処理して、注入管2−1〜2−nを流れる流体の流量を算出する。変換部5−1〜5−nで算出された流量を示す流量信号は、それぞれ制御部8−1〜8−nに出力される。
各制御部8−1〜8−nは、各注入管2−1〜2−nに設けられたバルブ3−1〜3−nのそれぞれに開閉信号を出力する。各制御部8−1〜8−nは、開信号を出力して各バルブ3−1〜3−nを開いた後、各電磁流量計6−1〜6−nの変換部5−1〜5−nから出力された流量信号を基に各容器1−1〜1−nに注入された流体の注入量をそれぞれ算出して、この注入量が設定値に達した時点で閉信号を出力して各バルブ3−1〜3−nをそれぞれ閉じる。各制御部8−1〜8−nが閉信号を出力する基準となる上記設定値は、温度および湿度等が変化してもすべての容器1−1〜1−nに一定量の流体が充填されるように、充填装置の運転前に各制御部8−1〜8−nで個別に調整される。
次に、図1に示した充填装置で用いられる電磁流量計(充填装置用電磁流量計)について、さらに説明する。図1において、電磁流量計6−1〜6−nは全て同構成とされている。図2は、検出部4(4−1〜4−n)と変換部5(5−1〜5−n)とから構成される電磁流量計6(6−1〜6−n)内の要部を示すブロック図である。
電磁流量計6において、検出部4は、励磁コイル4aと、電極4b,4cとから構成される。励磁コイル4aは、変換部5からの励磁電流IRにより励磁されて交番磁界を発生するコイルであり、発生する磁界の方向が注入管2内の流れ方向と直交するように注入管2の外周に配設されている。電極4b,4cは、その先端部が注入管2の内壁に面しており、注入管2内に分布する磁界と直交する方向に取り付けられている。
変換部5は、電源回路50と、クロック信号発生部51と、同期信号発生部52と、励磁回路53と、サンプリング制御部54と、交流増幅回路55と、サンプルホールド回路56と、A/D変換部57と、演算処理部58と、ゼロ点調整部59と、パルス出力回路60と、同期信号受信監視部61と、ゼロ点調整指示スイッチ62と、メモリ63と、切替スイッチSW1〜SW4と、電源端子P1,P2と、外部からの信号の入力端子P3(以下、同期信号受信端P3と呼ぶ)と、外部への信号の出力端子P4(以下、同期信号送信端P4と呼ぶ)と、パルス出力回路60からのパルスの出力端子P5,P6と、ハンディターミナルなどの外部装置との間で情報の送受信を可能とする通信ポート64と、動作確認用のランプとして設けられたLED65,66とから構成される。
この変換部5において、電源回路50,クロック信号発生部51,同期信号発生部52,励磁回路53,サンプリング制御部54,同期信号受信監視部61,切替スイッチSW1〜SW3は電源ボードPB1に設けられ、交流増幅回路55,サンプルホールド回路56,A/D変換部57,演算処理部58,ゼロ点調整部59,パルス出力回路60,メモリ63メインボードPB2に設けられている。
なお、電源ボードPB1には、第1のCPUとして電源ボードCPU67が搭載されており、サンプリング制御部54は電源ボードCPU67の処理機能として実現される。また、メインボードPB2には、第2のCPUとしてメインボードCPU68が搭載されており、演算処理部58およびゼロ点調整部59はメインボードCPU68の処理機能として実現される。
変換部5において、電源部50は、電源端子P1,P2を介する直流電圧(DC24V)を入力とし、クロック信号発生部51,同期信号発生部52,励磁回路53,電源ボードCPU53,同期信号受信監視部61,交流増幅回路55,サンプルホールド回路56,A/D変換部57,メインボードCPU68およびパルス出力回路60への電源の供給を行う。
クロック信号発生部51は、変換部5の動作の基準となるクロック信号Pcを出力する。同期信号発生部52は、クロック信号発生部51から出力されたクロック信号Pcを分周して、所定の周波数の同期信号Psを生成する。
励磁回路53は、矩形波からなる所定周波数を励磁電圧VRとして検出部4の励磁コイル4aに印加して、励磁コイル4aに励磁電流IRを供給する。この励磁回路53は、切替スイッチSW2を介して供給される同期信号に同期して、励磁電圧VRの極性(励磁タイミング)を切り替える。切替スイッチSW2を介して供給される同期信号については後述する。
サンプリング制御部54は、切替スイッチSW1を介して供給される同期信号を基に、サンプルホールド回路56の切替スイッチ56a,56bをそれぞれONするサンプリング信号SP1,SP2を生成する。サンプリング信号SP1,SP2の周波数は共に同期信号Psの周波数の1/2であり、サンプリング信号SP1,SP2の位相は互いに半周期ずれている。切替スイッチSW1を介して供給される同期信号については後述する。
交流増幅回路55は、検出部4の電極4b,4cからの交流電圧信号をそれぞれ交流増幅する増幅器55a,55bと、各増幅器55a,55bで増幅された交流電圧信号を合成して交流流速信号S1として出力する増幅器55cとから構成される。
サンプルホールド回路56は、切替スイッチ56aと抵抗56cとキャパシタ56eとからなる第1のサンプルホールド回路と、切替スイッチ56bと抵抗56dとキャパシタ56fとからなる第2のサンプルホールド回路と、差動増幅器56gとから構成される。このような構成のサンプルホールド回路56は、サンプリング制御部54から出力されるサンプリング信号SP1,SP2にしたがって交流流速信号S1をサンプリングして、直流流速信号S2として出力する。
A/D変換部57は、サンプルホールド回路56から出力された直流流速信号S2をディジタル信号に変換する。演算処理部58は、A/D変換部57から出力されたディジタル信号に対して演算処理を行うことにより、注入管2内を流れる流体の平均流量を算出し、この算出した平均流量(計測流量値)を流量信号に変換してパルス出力回路60へ出力する。
ゼロ点調整部59は、ゼロ点調整指示スイッチ62の操作に応じ、その時の流量信号をゼロ点補正値として取得し、この取得したゼロ点補正値をメモリ63に保存する。メモリ63に保存されたゼロ点補正値は演算処理部58での計測流量値の算出に際して用いられる。パルス出力回路60は、演算処理部59から出力された流量信号をパルスに変換し、制御部8(図1)に出力する。
同期信号受信監視部61は、同期信号受信端P3から切替スイッチSW4を介して直接あるいは間接的に送られてくるマスタ電磁流量計からのマスタ同期信号を監視し、このマスタ同期信号の受信の有無に基づいて切替スイッチSW1〜SW3の接続モードを制御する。切替スイッチSW4を介するマスタ同期信号については後述する。なお、同期信号受信監視部61は、入力端61aを通して受信したマスタ電磁流量計からのマスタ同期信号を通過させ、出力端61bより出力する。
切替スイッチSW1〜SW4は、接続モードとしてモードMとモードSとを有し、モードMではコモン端子Cがマスタ側の端子M(以下、マスタ側端子と呼ぶ)に接続され、モードSではコモン端子Cがスレーブ側の端子S(以下、スレーブ側端子と呼ぶ)に接続される。
切替スイッチSW1は、コモン端子Cがサンプリング制御部54への同期信号の入力端54aに接続され、マスタ側端子Mが同期信号発生部52からの同期信号の出力端52aに接続され、スレーブ側端子Sが切替スイッチSW3のスレーブ側端子Sに接続されている。
切替スイッチSW2は、コモン端子Cが励磁回路53への同期信号の入力端53aに接続され、マスタ側端子Mが同期信号発生部52からの同期信号の出力端52aに接続され、スレーブ側端子Sが同期信号受信監視部61からのマスタ同期信号の出力端61bに接続されている。
切替スイッチSW3は、コモン端子Cが同期信号送信端P4に接続され、マスタ側端子Mが同期信号発生部52からの同期信号の出力端52aに接続され、スレーブ側端子Sが切替スイッチSW1,SW2のスレーブ側端子Sに接続されている。
切替スイッチSW4は、コモン端子Cが同期信号受信端P3に接続され、スレーブ側端子Sが同期信号受信監視部61へのマスタ同期信号の入力端61aに接続されている。切替スイッチSW4のマスタ側端子Mは開放されている。この切替スイッチS4が本発明でいうモード切替指示スイッチに対応する。以下、切替スイッチS4をモード切替指示スイッチとも呼ぶ。
図3に電磁流量計6間の同期信号線7による接続例を示す。なお、この例では、説明を容易とするために、電磁流量計6を電磁流量計6−1,6−2,6−3の3つとし、電磁流量計6−1をマスタ電磁流量計、電磁流量計6−2,6−3をスレーブ電磁流量計として用いる場合について説明する。また、図3では、電磁流量計6−1,6−2,6−3の構成中、説明に必要な部分のみを抜粋して示している。
この例において、マスタ電磁流量計6−1は、その切替スイッチSW4をモードMとし、スレーブ電磁流量計6−2,6−3は、その切替スイッチSW4をモードSとする。また、マスタ電磁流量計6−1の同期信号送信端P4とスレーブ電磁流量計6−2の同期信号受信端P3との間を同期信号線7−1で接続し、スレーブ電磁流量計6−2の同期信号送信端P4とスレーブ電磁流量計6−3の同期信号受信端P3との間を同期信号線7−2で接続する。
この場合、マスタ電磁流量計6−1の同期信号受信監視部61は、切替スイッチSW4がモードMとされているので、マスタ同期信号を受信せず、切替スイッチSW1〜SW3の接続モードをモードMとする。これにより、切替スイッチ(モード切替指示スイッチ)SW4介するオペレータからの指示を受けて、電磁流量計6−1の動作モードがマスタモードとして設定され、電磁流量計6−1がマスタ電磁流量計として機能する。
これに対して、スレーブ電磁流量計6−2,6−3の同期信号受信監視部61は、切替スイッチSW4がモードSとされているので、マスタ同期信号を受信し、切替スイッチSW1〜SW3の接続モードをモードSとする、これにより、切替スイッチ(モード切替指示スイッチ)SW4を介するオペレータからの指示を受けて、電磁流量計6−2,6−3の動作モードがスレーブモードとして設定され、電磁流量計6−2,6−3がスレーブ電磁流量計として機能する。
なお、この例では、切替スイッチSW4をモード切替指示スイッチとしたが、各電磁流量計6にマスタ/スレーブの機能選択スイッチをモード切替指示スイッチとして別に設けるようにしてもよい。この場合、電磁流量計6−1をマスタ電磁流量計としたい場合には、電磁流量計6−1に設けられているマスタ/スレーブの機能選択スイッチを手動で操作して、電磁流量計6−1内の切替スイッチSW1〜SW4を一括してモードMとする。電磁流量計6−2,6−3をスレーブ電磁流量計としたい場合には、電磁流量計6−2,6−3に設けられているマスタ/スレーブの機能選択スイッチを手動で操作して、電磁流量計6−1,6−2内の切替スイッチSW1〜SW4を一括してモードSとする。
〔正常時〕
図4は、マスタ電磁流量計6−1の各部の信号を示すタイミングチャートであり、図4(a)はクロック信号発生部51から出力されるクロック信号Pc、図4(b)は同期信号発生部52から出力される同期信号Ps、図4(c)は励磁回路53から出力される励磁電圧VR、図4(d)は交流増幅回路55から出力される交流流速信号S1、図4(e),(f)はそれぞれサンプリング制御部54から出力されるサンプリング信号SP1,SP2、図4(g)はサンプルホールド回路56から出力される直流流速信号S2である。
図5は、マスタ電磁流量計6−1およびスレーブ電磁流量計6−2,6−3におけるそれぞれの励磁電圧VRの位相関係を示すタイミングチャートであり、図5(a)はマスタ電磁流量計6−1における励磁電圧VR、図5(b)はスレーブ電磁流量計6−2における励磁電圧VR、図5(c)はスレーブ電磁流量計6−3における励磁電圧VRである。
マスタ電磁流量計6−1では、その同期信号発生部52において、図4(a)に示すような例えば8MHzのクロック信号Pcが分周されて、図4(b)に示すような例えば170Hzの同期信号Psが生成される。この同期信号発生部52で生成された同期信号Psは、モードMとされている切替スイッチSW2を介して励磁回路53に与えられる。また、モードMとされている切替スイッチSW1を介してサンプリング制御部54に与えられる。
励磁回路53からは、例えば図4(c)に示すような振幅20Vの矩形波からなる励磁電圧VRが出力される。この励磁電圧VRの極性は同期信号Psに同期して切り替えられるので、励磁電圧VRの周波数は85Hzとなる。したがって、励磁コイル4a(図2)からは85Hzの交番磁界が発生する。
注入管2内の流体に磁界が印加されると、電磁誘導により、磁界の方向および流体の流れ方向の両方に直交する方向に、平均流速に比例した振幅を有する起電力が発生する。この起電力に基づく交流電圧信号は、一対の電極4b,4cにより取り出されて、交流増幅回路55で交流増幅された後、交流流速信号S1としてサンプルホールド回路56に出力される。
一方、マスタ電磁流量計6−1の同期信号発生部52で生成された同期信号Psは、モードMとされている切替スイッチSW3を介して同期信号送信端P4へ送られ、マスタ同期信号MPsとして出力される。このマスタ電磁流量計6−1から出力されたマスタ同期信号MPsは、同期信号線7−1を介してスレーブ電磁流量計6−2の同期信号受信端P3に送られ、モードSとされている切替スイッチSW4を介してスレーブ電磁流量計6−2の同期信号受信監視部60で受信される。
スレーブ電磁流量計6−2の同期信号受信監視部60は、受信したマスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsを通過させ、切替スイッチSW1,SW2,SW3のスレーブ側端子Sへ送る。切替スイッチSW1のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPsはサンプリング制御部54に与えられる。切替スイッチSW2のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPsは励磁回路53に与えられる。
一方、スレーブ電磁流量計6−2の切替スイッチSW3のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPsは、同期信号送信端P4より出力される。このスレーブ電磁流量計6−2から出力されたマスタ同期信号MPsは、同期信号線7−2を介してスレーブ電磁流量計6−3の同期信号受信端P3に送られ、切替スイッチSW4を介してスレーブ電磁流量計6−3の同期信号受信監視部60で受信される。
スレーブ電磁流量計6−3の同期信号受信監視部60は、受信したスレーブ電磁流量計6−2からのマスタ同期信号MPsを通過させ、すなわちスレーブ電磁流量計6−2を経由して送られてくるマスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsを通過させ、切替スイッチSW1,SW2,SW3のスレーブ側端子Sへ送る。切替スイッチSW1のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPsはサンプリング制御部54に与えられる。切替スイッチSW2のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPsは励磁回路53に与えられる。
なお、切替スイッチSW3のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPsは、同期信号送信端P4に送られるが、同期信号送信端P4には同期信号線7が接続されていないので、ここを最後の到達点とする。これにより、マスタ電磁流量計6−1がマスタ、スレーブ電磁流量計6−2が中間スレーブ、スレーブ電磁流量計6−3が末端スレーブとなり、マスタ電磁流量計6−1からの一方向へのマスタ同期信号MPsの伝送が終結する。
このようにして、この実施の形態では、マスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsがスレーブ電磁流量計6−2,6−3へ送られ、電磁流量計6−1,6−2,6−3の励磁回路53がマスタ同期信号MPsに同期して動作する。このため、電磁流量計6−1,6−2,6−3の励磁回路53によりそれぞれ出力される励磁電圧VRの位相は、すなわち電磁流量計6−1,6−2,6−3での励磁タイミングは、図5(a),(b)および(c)に示すように完全に一致する。
微分ノイズは励磁電圧VRの極性が切り替わるときに発生する。したがって、この実施の形態において、電磁流量計6−1,6−2,6−3での励磁電圧VRに起因する微分ノイズは同時に発生することになる。このため、例えば、電磁流量計6−1において、近接する電磁流量計6−2,6−3からの微分ノイズが起電力に基づく交流電圧信号に重畳されたとしても、交流流速信号S1にスパイクが現れるのは、図4(d)に示すように各パルスの冒頭部のみとなる。したがって、交流流速信号S1のサンプリング期間を、図4(e)および(f)に示すように各パルスの終焉部に設けることにより、電磁流量計6−1においてスパイクがサンプリングされることを防止することができる。これと同様にして、電磁流量計6−2,6−3においても、スパイクがサンプリングされることが防止される。
〔異常時〕
この実施の形態において、例えば、マスタ電磁流量計6−1とスレーブ電磁流量計6−2との間の同期信号線7−1にノイズが重畳するなどの通信異常が発生したとする(図6参照)。この場合、マスタ電磁流量計6−1からのスレーブ電磁流量計6−2へのマスタ同期信号MPsの伝送が途絶える。
スレーブ電磁流量計6−2において、同期信号受信監視部60は、マスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsを監視しており、マスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsが受信されなくなると、切替スイッチSW1〜SW3の接続モードをモードSからモードMへ切り替える。
これにより、スレーブ電磁流量計6−2において、自己の同期信号発生部52で生成された同期信号PsがモードMとされた切替スイッチSW1を介してサンプリング制御部54へ与えられるようになる。また、自己の同期信号発生部52で生成された同期信号PsがモードMとされた切替スイッチSW2を介して励磁回路53へ与えられるようになる。また、スレーブ電磁流量計6−2の同期信号発生部52で生成された同期信号PsがモードMとされた切替スイッチSW3を介して同期信号送信端P4へ送られ、マスタ同期信号MPs’として出力される。
これにより、スレーブ電磁流量計6−2が自己の同期信号発生部52で生成した同期信号Psを使用して流量計測を行うと共に、自己の同期信号発生部52で生成された同期信号Psをマスタ電磁流量計からのマスタ同期信号MPs’として出力し、次段のスレーブ電磁流量計6−3に対してマスタ電磁流量計の役割を果たす。すなわち、電磁流量計6−2がそれまでの中間スレーブからマスタに切り替わり、第2のマスタ電磁流量計となる。
スレーブ電磁流量計6−2から出力されたマスタ同期信号MPs’は、同期信号線7−2を介してスレーブ電磁流量計6−3の同期信号受信端P3に送られ、モードSとされている切替スイッチSW4を介してスレーブ電磁流量計6−3の同期信号受信監視部60で受信される。
スレーブ電磁流量計6−3の同期信号受信監視部60は、受信したスレーブ電磁流量計6−2からのマスタ同期信号MPs’を通過させ、すなわち第2のマスタ電磁流量計6−2からのマスタ同期信号MPs’を通過させ、切替スイッチSW1,SW2,SW3のスレーブ側端子Sへ送る。
切替スイッチSW1のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPs’はサンプリング制御部54に与えられる。切替スイッチSW2のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPs’は励磁回路53に与えられる。切替スイッチSW3のスレーブ側端子Sに送られたマスタ同期信号MPs’は同期信号送信端P4に到達する。
このようにして、マスタ電磁流量計6−1とスレーブ電磁流量計6−2との間の同期信号線7−1に異常通信が発生した場合、スレーブ電磁流量計6−2は自己の同期信号発生部53で生成される同期信号Psを使用して流量計測を続行する。また、自己の同期信号発生部53で生成される同期信号Psをマスタ電磁流量計からのマスタ同期信号MPs’として次段のスレーブ電磁流量計6−3に送り、スレーブ電磁流量計6−3での流量計測を続行させる。
〔自動復旧〕
図6において、マスタ電磁流量計6−1とスレーブ電磁流量計6−2との間の同期信号線7−1における異常通信が復旧すると、マスタ電磁流量計6−1からのスレーブ電磁流量計6−2へのマスタ同期信号MPsの伝送が再開される。
スレーブ電磁流量計6−2において、同期信号受信監視部60は、マスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsを監視しており、マスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsの受信が再開されると、切替スイッチSW1〜SW3の接続モードをモードMからモードSへ切り替える(図7参照)。
これにより、スレーブ電磁流量計6−2において、励磁回路53への同期信号がマスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsに切り替えられる。また、サンプリング制御部54への同期信号がマスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsに切り替えられる。また、同期信号送信端P4から出力される同期信号がマスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsに切り替えられる。
このようにして、マスタ電磁流量計6−1とスレーブ電磁流量計6−2との間の同期信号線7−1における異常通信が復旧すると、スレーブ電磁流量計6−2が自動的に元の中間スレーブに戻り、マスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsを使用した流量計測を再開する。また、マスタ電磁流量計6−1からのマスタ同期信号MPsのスレーブ電磁流量計6−3への出力を再開する。
なお、この例では、マスタ電磁流量計6−1とスレーブ電磁流量計6−2との間の同期信号線7−1に異常通信が発生した場合について説明したが、マスタ電磁流量計6−1が故障したり、マスタ電磁流量計6−1とスレーブ電磁流量計6−2との間の同期信号線7−1が断線したり、スレーブ電磁流量計6−1の同期信号の受信回路(同期信号受信監視部60の前段の回路)が故障したりしたような場合にも、上述と同様の動作が行われ、スレーブ電磁流量計6−2,6−3での流量計測が継続される。
本実施の形態では、上述したように、切替スイッチSW4がモード切替指示スイッチとして設けられ、切替スイッチSW4をモードMに切り替えるとその電磁流量計6がマスタ電磁流量計として機能し、切替スイッチSW4をモードSに切り替えるとその電磁流量計6がスレーブ電磁流量計として機能する。これにより、電磁流量計6を充填装置に組み付けた状態で、すなわち現場に電磁流量計6を設置した状態で、各電磁流量計6をマスタ/スレーブ電磁流量計に手動設定することが可能となり、誤設定されることを排除することができる。また、マスタ電磁流量計として設定された電磁流量計が故障したとしても、スレーブ電磁流量計の中の1台をマスタ電磁流量計に現場で手動設定変更すれば、簡単に充填作業を復旧させることができる。
また、本実施の形態では、ゼロ点調整指示スイッチ62を操作すると、ゼロ点調整を実行する旨の指示がゼロ点調整部59へ与えられる。これにより、ゼロ点調整部59は、その時の流量信号をゼロ点補正値として取得し、この取得したゼロ点補正値をメモリ62に保存する。すなわち、本実施の形態では、オペレータがゼロ点調整指示スイッチ62を操作したときだけ、ゼロ点調整動作が行われる。これにより、必要もないのにゼロ点調整が行われたり、電力や時間を浪費したりすることがなくなり、本番の流量計測への影響も排除することができる。
なお、メインボードCPU68は、ゼロ点調整指示スイッチ62が操作された場合、ゼロ点調整の動作が行われている間、LED65を点滅させる。このLED65はゼロ点調整指示スイッチ62の近傍に設けられている。これにより、オペレータは、ゼロ点調整指示スイッチ62を操作すると、LED65の点滅によって、ゼロ点調整の動作が正常に実行されているか否かを容易に確認することができる。
図8に上述した電磁流量計6を回転式の充填装置に用いた例を示す。回転式の充填装置では注入管2がリング状に連なって回転する。この回転式の充填装置において、流体が充填された容器1は次々に排出され、新しい容器1と入れ替えられる。この回転式の充填装置では、その中央部の空間(内部空間)ARにオペレータが入ることが可能である。
充填装置の内部空間ARには制御部8−1〜8−nが収容された制御ボックス9が設けられている。この制御ボックス9も注入管2とともに回転する。また、充填装置の内部空間AR側には、各注入管2に対して電磁流量計6が設けられている。この電磁流量計6も注入管2とともに回転する。図8に示す軸線J1は充填装置の回転中心である。
図9に電磁流量計6の外観斜視図を示す。この電磁流量計6において、検出部4と変換部5とは一体とされ、変換部5はカバー10で覆われている。これにより、変換部5に対して、防水および防塵が図られる。図10にカバー10を取り外した状態を示す。図10は、充填装置の内部空間AR側から電磁流量計6を見た図であり、近接して配置された5つの電磁流量計6のカバー10を取り外した状態を抜き出して示している。
各電磁流量計6において、カバー10は、充填装置の回転中心J1に対向する面を覆うようにして、ボルト11によって着脱可能に設けられている。この場合、オペレータが充填装置の内部空間ARに入ると、オペレータの周囲に各電磁流量計6のカバー10が対向位置するものとなる。これにより、各電磁流量計6へのカバー10の着脱を正面から行うことができ、作業性がよくなる。
また、各電磁流量計6において、カバー10を取り外した状態において、ゼロ点調整指示スイッチ62やモード切替指示スイッチSW4は充填装置の回転中心J1に対向する面に位置する。この場合、オペレータが充填装置の内部空間ARに入り、カバー10を取り外すと、各電磁流量計6のゼロ点調整指示スイッチ62やモード切替指示スイッチSW4がオペレータの周囲に対向位置するものとなる。これにより、ゼロ点調整指示スイッチ62やモード切替指示スイッチSW4の操作を正面から行うことができ、操作性がよくなる。
また、図11に電源ボードPB1およびメインボードPB2の取付状況を示すように、各電磁流量計6において、端子P1〜P6は端子接続部12にまとめて設けられている。カバー10を取り外した状態において、端子P1〜P6が設けられた端子接続部12も充填装置の回転中心J1に対向する面に位置する。この場合、オペレータが充填装置の内部空間ARに入り、カバー10を取り外すと、各電磁流量計6の端子接続部12がオペレータの周囲に対向位置するものとなる。これにより、端子接続部12へのケーブルの接続を正面から行うことができ、作業性がよくなる。
なお、各電磁流量計6には、端子接続部12へ接続したケーブルを導出するための配線導出口13が設けられている。また、電源ボードPB1およびメインボードPB2は、断面「L」字状のシールド板14に装着されている。この場合、大容量の電子部品が搭載された電源ボードPB1はシールド板14の基台面14a(図12参照)の上面にスペーサ15を介して装着され、小容量の電子部品が搭載されたメインボードPB2は基台面14aの端部からL字状に立ち上げられた立上面14bの電源ボードPB1が装着された面とは反対側の面にスペーサ15を介して装着される。これにより、電源ボードPB1に搭載された電子回路とメインボードPB2に搭載された電子回路との電気的な遮蔽が行われると共に、電源ボードPB1およびメインボードPB2を含めた電子部品の搭載スペースがコンパクトとなり、電磁流量計6の幅方向や厚さ方向の薄型化が図られる。特に、電磁流量計6の幅の薄型化が図れ、目標とする70mm程度の中に収めることができる。
また、各電磁流量計6において、カバー10を取り外した状態において、LED65や66も充填装置の回転中心J1に対向する面に位置する。メインボードCPU68は、メインボードPB2に構築された回路の正常/異常を監視し、その結果をLED65の点灯/点滅で知らせる。また、電源ボードCPU67は、電源ボードPB1に構築された回路の正常/異常を監視し、その結果をLED66の点灯/点滅で知らせる。なお、メインボードPB2に構築された回路の正常/異常を報知するLED65は、ゼロ点調整動作の確認用としても用いられる。ゼロ点調整動作の確認用と兼用せずに専用のLEDを設けるようにしてもよい。
また、各電磁流量計6において、カバー10を取り外した状態において、通信ポート64も充填装置の回転中心J1に対向する面に位置する。これにより、通信ポート64へのハンディターミナルなどの外部装置を正面から接続することができ、作業性がよくなる。
一体形の充填装置用電磁流量計は、設計上非常に接近して配置されることが多く、計器の中で設置後の設定・配線などで客先がアクセスできる部位が非常に限られてくる。従来の一体形の充填装置用電磁流量計では、必要な端子だけ取り出して、専用コネクタで接続させたり(方法1)、機器の底面の蓋を開けてカストマ端子で接続したり(方法2)している。しかしながら、上述した方法1では、入出力の数が多くなってくるとコネクタが大きくなり、また、数も増える。充填装置では周囲温度が高くなることが多く、これらのことは機器の信頼性を損なうことになる。上述した方法2では、設置状況によっては、非常に作業がしづらくなる。また、蓋を開けるためには機器の底面に向かって工具を使わなければならず、煩雑な作業となる。
これに対して、本実施の形態の電磁流量計6では、オペレータからのアクセスを全て正面から行える構造としている。すなわち、配線作業、ゼロ点の調整、設定のための通信ケーブルの接続、動作確認等、全てのアクセスを充填装置の回転中心に対向する面側から行える構造としている。また、カバー10を開ける際も正面からアクセスする構造とし、作業性を重視した構造としている。充填装置では、10台〜100台程度のバルブと電磁流量計とのセットが設置されるため、各バルブ・電磁流量計の間隙は非常に狭くなる。このため、構造上、作業・操作のし易さが求められ、本実施の形態の電磁流量計6はこのような要望に応えることができる。
なお、上述した実施の形態では、充填装置を回転式の充填装置としたが、ライン式の充填装置への適用も可能である。
また、上述した実施の形態では、電磁流量計6に手動操作スイッチとしてゼロ点調整指示スイッチ62とモード切替指示スイッチSW4の2つを設けるようにしたが、ゼロ点調整指示スイッチ62のみを設けてもよく、モード切替指示スイッチSW4のみを設けるようにしてもよい。
例えば、ゼロ点調整は特許文献1と同様に自動で毎回行うものとし、モード切替指示スイッチSW4のみでマスタモードとスレーブモードとの切り替えを行うものとしてもよい。また、マスタモードとスレーブモードとの設定は工場出荷時に行うものとし、ゼロ点調整指示スイッチ62のみで必要に応じてゼロ点調整を行わせるようにしてもよい。
1(1−1〜1−n)…容器、2(2−1〜2−n)…注入管、3(3−1〜3−n)…バルブ、4(4−1〜4−n)…検出器、4a…励磁コイル、4b,4c…電極、5(5−1〜5−n)…変換器、6(6−1〜6−n)…電磁流量計、7(7−1〜7−6)…同期信号線、8(8−1〜8−n)…制御部、9…制御ボックス、10…カバー、11…ボルト、12…端子接続部、13…配線導出口、14…シールド板、14a…基台面、14b…立上面、15…スペーサ、50…電源回路、51…クロック信号発生部、52…同期信号発生部、53…励磁回路、54…サンプリング制御部、55…交流増幅回路、56…サンプルホールド回路、57…A/D変換部、58…演算処理部、59…ゼロ点調整部、60…パルス出力回路、61…同期信号受信監視部、62…ゼロ点調整指示スイッチ、63…メモリ、64…通信ポート、65,66…LED、67…電源ボードCPU、68…メインボードCPU、SW1〜SW3…切替スイッチ、SW4…切替スイッチ(モード切替指示スイッチ)、P1,P2…電源端子、P3…同期信号受信端、P4…同期信号送信端、P5,P6…出力端子、AR…内部空間、J1…軸線(回転中心)、PB1…電源ボード、PB2…メインボード、201…電源ボード、202…メインボード、204…スペーサ、205…ケース、206…カバー、207…シールド板、207a…基台面、207b…立上面。