JP2010106798A - 動力発生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エネルギー効率が高く、クリーンな動力発生装置を提供する。
【解決手段】動力発生装置1は、電力供給装置12と、所定量の水を保持する貯水装置13と、貯水装置13から供給される水を加熱して水蒸気にする加熱装置14と、加熱装置14で発生した水蒸気を電気分解して水素と酸素を生成する水蒸気電解装置5と、水蒸気電解装置5で生成された水素を貯留する水素タンク16と、水蒸気電解装置5で生成された酸素を貯留する酸素タンク17と、水素タンク16から供給される水素と酸素タンク17から供給される酸素とを反応させて動力を発生させる水素−酸素エンジン8と、水素−酸素エンジン8で生成された水蒸気を水蒸気電解装置5に排出する排出マニホールドP6と、排出マニホールドP6に配置され、水蒸気から排熱を回収して動力を発生させる排熱回収装置2と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素と酸素の反応を利用した動力発生装置に関する。
近年、地球温暖化の問題から二酸化炭素の排出量の削減が求められており、化石燃料に替えて水素を燃料とする水素自動車や燃料電池自動車の開発が行われている。また、これに伴い、燃料となる水素を効率よく製造する技術の開発が望まれている。
例えば、特許文献1には、水蒸気を分解して水素イオンと酸素イオンを生成する水素極と、酸素イオンを伝動する電解質と、電解質を通過した酸素イオンを酸素ガスとして排出する酸素極と、水素極及び酸素極に給電する電源と、水素極側に水蒸気を供給する水素極マニホールドと、酸素極側に発生した酸素ガスを排出する酸素極マニホールドと、生成された水素から還元媒体を介して水素化合物を生成する水素化合物生成手段と、を有する水蒸気電解装置が開示されている。かかる水蒸気電解装置では、水素を貯蔵や輸送に適した化合物に変換する反応と水素生成反応とが行われている。
また、特許文献2には、特許文献1の水蒸気電解装置と略同様の構造であって、水素極側に水蒸気を供給するとともに、酸素極側に炭化水素含有ガスを供給する水蒸気電解装置が開示されている。かかる水蒸気電解装置は、酸素極側から排出される排ガスを酸素極側に供給する炭化水素含有ガスに還流させることで、電解電圧を下げつつ、炭素が電極に付着するのを防止している。
特開2007−077464号公報 特開2005−232526号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の水蒸気電解装置は、水蒸気電解装置だけの提案に留まり、これを利用した総合的な動力発生装置の提案には至っていない。
本発明は、エネルギー効率が高く、クリーンな動力発生装置を提供することを課題とする。
本発明に係る動力発生装置は、電力供給装置と、所定量の水を保持する貯水装置と、前記電力供給装置から供給される電力により、前記貯水装置から供給される水を加熱して水蒸気にする加熱装置と、前記加熱装置で発生した水蒸気を電気分解して水素と酸素を生成する水蒸気電解装置と、前記水蒸気電解装置で生成された水素を貯留する水素タンクと、前記水蒸気電解装置で生成された酸素を貯留する酸素タンクと、前記水素タンクから供給される水素と前記酸素タンクから供給される酸素とを反応させて動力を発生させる水素−酸素エンジンと、前記水素−酸素エンジンで生成された水蒸気を前記水蒸気電解装置に排出する水蒸気排出通路と、前記水蒸気排出通路に配置され、前記水蒸気から排熱を回収して動力を発生させる排熱回収装置と、を有することを特徴とする。
かかる構成によれば、水蒸気を水素と酸素に分解する水蒸気電解装置と、水素と酸素を燃料とする水素−酸素エンジンとを搭載しているので、特殊な燃料や燃料電池のような複雑な装置を必要とせず、二酸化炭素や窒素酸化物が排出されないクリーンでより安定した作動が可能な動力発生装置を提供できる。また、本発明に係る動力発生装置は、排熱回収装置を備えているので、水素−酸素エンジンで発生した高温の水蒸気からさらに動力を回収することができ、一層高効率な動力発生装置を提供することができる。
また、前記水素−酸素エンジンは、前記水素タンク及び前記酸素タンクの少なくともいずれか一方から供給される水素及び酸素の少なくともいずれか一方を前記水素−酸素エンジンの燃焼室に供給する水素・酸素供給通路と、前記水蒸気排気通路と前記水素・酸素供給通路とに連通し、水蒸気からなる排気の一部を前記水素・酸素供給通路に供給するEGR通路と、を備えるように構成するのが好ましい。
水素は理論空気当たりの発熱量がガソリンよりも大きいが、かかる構成によれば、水蒸気からなる排気の一部を吸気側に還流させることによって、燃焼温度を低下させることができる。そのため、水素−酸素エンジンや周辺装置への熱害を防止するとともに、水素−酸素エンジンを一層安定して作動させることができる。
また、前記水素−酸素エンジンは、前記水蒸気排出通路の燃焼室側の開口部を開閉する複数の排気バルブと、前記複数の排気バルブの開閉タイミングを制御するタイミング制御装置と、を備える構成とするのが好ましい。
かかる構成によれば、複数の排気バルブが開閉するタイミングを可変制御することができるので、例えば、エンジン始動時のように排気ガス(水蒸気)の温度が低い場合には、排気ガスの温度が上がるように排気バルブの開閉タイミングを変更することができる。そのため、加熱装置の負担を低減し、より高効率の動力発生装置を提供することが可能となる。
また、前記排熱回収装置は、前記水蒸気排気通路上に配置された熱交換部と、空気取入口と空気排出口とを有し、前記熱交換部を内部に収容するハウジングと、前記ハウジング内であって前記熱交換部よりも前記空気取入口側に配置されたコンプレッサと、前記ハウジング内であって前記熱交換部よりも前記空気排出口側に配置されたタービンと、前記コンプレッサと前記タービンとを一体回転可能に連結する連結部材と、前記連結部材に接続され、前記連結部材を回転させる電動装置として機能するとともに、前記連結部材の回転によって発電する出力装置として機能する電動発電装置と、を備えるように構成するのが好ましい。
かかる構成によれば、コンプレッサによって圧縮された流体が熱交換部で加熱されてタービンに吹きつけられることにより、タービンに一体回転可能に連結された連結部材が回転することとなる。これにより、電動発電装置が出力装置として機能して発電が行われることとなる。そのため、より一層高効率な動力発生装置を提供することが可能となる。
また、本発明に係る動力発生装置は、前記水素タンクに設けられ、前記水素タンクに蓄えられた水素量を検出する水素量検出装置と、前記水素量検出装置が所定の水素量を検出した場合に、前記水蒸気電解装置にて生成される水素を別途保存する水素保存装置と、を有し、前記加熱装置により水蒸気が発生するまでの間、前記水素保存装置に保存していた水素を前記水素タンク又は前記水素−酸素エンジンに供給するように構成するのが好ましい。
かかる構成によれば、水素タンクが所定要領を超えた場合に、別途水素を保存する水素保存装置を備えているので、例えば、エンジン始動時や寒冷時のように、水蒸気の生成あるいは水素の生成に時間が掛かる場合に、水素保存装置から水素タンクあるいは水素−酸素エンジンに水素を供給することにより、水素−酸素エンジンを駆動することができる。そのため、水蒸気電解装置に早期に水蒸気を供給することができる。
また、本発明は、前記排熱回収装置から前記水蒸気電解装置に送られる排気流量を検出する排気流量検出手段と、前記加熱装置から排出される水蒸気量の初期値と前記排気流量検出手段で検出した排気流量との差分に応じて前記貯水装置から前記加熱装置に供給する水量を調節する水量制御手段と、を備える構成とするのが好ましい。
かかる構成によれば、加熱装置から排出される水蒸気量の初期値と排気流量検出手段で検出した排気流量との差分に応じて貯水装置から加熱装置に供給する水量を調節するので、例えば、運転開始直後のように、排気流量が少ない場合は貯水装置から加熱装置に供給する水量を多くし、運転開始からある程度時間が経過して排気流量が多くなってきた場合は貯水装置から加熱装置に供給する水量を少なくすることにより、貯水装置に貯水された水の使用量を低減するとともに、加熱装置の負担を軽減することができる。
なお、「加熱装置から排出される水蒸気量の初期値」とは、水素−酸素エンジンから排出される水蒸気が水蒸気電解装置5に還流されていない段階で、加熱装置から排出される水蒸気量であり、主に、加熱装置に供給する水量の初期設定値によって定まる値である。
また、本発明は、前記水素−酸素エンジンで発生した動力で作動する作動装置の作動状態を検出する作動状態検出手段と、前記作動状態検出手段で検出した作動装置の作動状態に基づいて前記水素−酸素エンジンによる動力の必要発生量を算出し、算出した動力の必要発生量に基づいて前記水素−酸素エンジンに供給する水素量及び酸素量を調節するエンジン制御手段と、をさらに備え、前記水量制御手段は、前記水素−酸素エンジンに供給される水素量及び酸素量に基づいて前記水素−酸素エンジンで生成される水蒸気量を計算するとともに、計算した水蒸気量と前記排気流量検出手段で検出した排気流量との差分に基づいて、前記貯水装置から前記加熱装置に供給する水量を調節する構成とするのが好ましい。
かかる構成によれば、作動装置の作動状態に応じて、水素−酸素エンジンに供給する水素量及び酸素量を調節するとともに、水素−酸素エンジンに供給した水素量及び酸素量から求まる計算上の水蒸気量と排気流量検出手段で検出した排気流量との差分から水蒸気のロス量を計算し、このロスを補うように、貯水装置から加熱装置に供給する水量を調節するので、排気される水蒸気の再利用を図ると共に、水素及び酸素の使用量を適切に保ちながら、動力発生装置を効率よく安定的に運転することができる。
本発明によれば、エネルギー効率が高く、クリーンな動力発生装置を提供することができる。
本発明を実施するための最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、第1実施形態に係る動力発生装置の概要を示すブロック図である。
動力発生装置1は、図1に示すように、水蒸気電解装置5で生成した水素と酸素を用いて水素−酸素エンジン8を駆動することにより、動力を得る装置である。
動力発生装置1は、図1に示すように、電力供給装置12と、所定量の水を保持する貯水装置13と、電力供給装置12から供給される電力により、貯水装置13から供給される水を加熱して水蒸気にする加熱装置14と、加熱装置14で発生した水蒸気を電気分解して水素と酸素を生成する水蒸気電解装置5と、水蒸気電解装置5で生成された水素を貯留する水素タンク16と、水蒸気電解装置5で生成された酸素を貯留する酸素タンク17と、水素タンク16から供給される水素と酸素タンク17から供給される酸素とを反応させて動力を発生させる水素−酸素エンジン8と、水素−酸素エンジン8で生成された水蒸気を水蒸気電解装置5に排出する排気マニホールドP6と、排気マニホールドP6上に配置され、水蒸気から排熱を回収して動力を発生させる排熱回収装置2と、を主に備えている。以下、各構成について詳細に説明する。
電力供給装置12は、主に加熱装置14や水蒸気電解装置5に電力を供給する装置であり、例えば、発電機やバッテリーなどで構成されている。
貯水装置13は、水蒸気の元となる水を蓄えるものであり、例えば、樹脂製の容器などで構成されている。
貯水装置13は、図1に示すように、配管P1を介して加熱装置14に接続されている。貯水装置13に貯留された水は、図示しないポンプによって汲み上げられ、配管P1を通って加熱装置14に供給される。
加熱装置14は、貯水装置13から供給された水を加熱して水蒸気にする装置であり、例えば、誘導加熱式のヒーターなどで構成されている。
加熱装置14は、図1に示すように、配管P2を介して水蒸気電解装置5に接続されている。加熱装置14で生成された水蒸気は、配管P2を通って水蒸気電解装置5に供給される。なお、このときの水蒸気の温度は、600℃〜700℃程度である。
図2は、水蒸気電解装置の断面図である。
水蒸気電解装置5は、水蒸気から水素と酸素を生成する装置である。
水蒸気電解装置5は、図2に示すように、矩形状の格納容器51と、格納容器51に格納された電解セル52と、を主に備えている。
電解セル52は、水蒸気を水素イオンと酸素イオンに分解する水素極53と、酸素イオンを伝動する電解質54と、電解質54から供給された酸素イオンを酸素ガスとして放出する酸素極55と、をこの順番に積層して構成されている。電解セル52は、格納容器51の略中央に配置されており、格納容器51を二分割している。水素極53及び酸素極55の表面(電解質54と反対側の面)には電極56,56がそれぞれ配置されており、電力供給装置12から電力が供給されている。
2分割された格納容器51のうち、水素極53側の空間は、水素極53に水蒸気を供給するとともに、水素極53に発生した水素ガスを排出する水素極マニホールド57となっている。また、2分割された格納容器51のうち、酸素極55側の空間は、酸素極55に発生した酸素ガスを排出する酸素極マニホールド58となっている。
水素極マニホールド57の一端側には、配管P2が接続されており、加熱装置14から水蒸気が供給されるようになっている。また、水素極マニホールド57の他端側には、水素ガスを排出するための配管P3の一端が接続されている。
酸素極マニホールド58には、酸素ガスを排出するための配管P4の一端が接続されている。
なお、水蒸気電解装置5から排出される水素ガス及び酸素ガスの温度は600〜1000℃程度である。
水素タンク16は、図1に示すように、水蒸気電解装置5で生成された水素ガスを貯留する高圧タンクである。水素タンク16には、水蒸気電解装置5から延びる配管P3の他端側が接続されている。配管P3の途中には、図示しない冷却装置とコンプレッサが配置されており、水蒸気電解装置5から排出された高温の水素ガスは、冷却装置で冷却され、コンプレッサで圧縮されて、水素タンク16に高圧状態で貯留されることとなる。
水素タンク16は、例えばタンク内の水素の圧力に基づいて貯留されている水素量を検出する水素量検出装置16aを備えている。
水素タンク16は、吸気マニホールドP5を介して後記する水素−酸素エンジン8の吸気ポート87(図3参照)に接続されている。水素タンク16は、吸気マニホールドP5に所定量の水素ガスを噴射する噴射装置を備えている。
なお、水蒸気電解装置5と水素タンク16とを接続する配管P3の途中には、分岐バルブVLが設けられており、この分岐バルブVLに接続された配管P7を介して、水素保存装置15に水素を長期間保存可能になっている。水素保存装置15には、水素タンク16に水素を供給するための配管P9が接続されている。
水素保存装置15は、図示しない制御部を備えており、水素量検出装置16aが所定の水素量を検出した場合に、分岐バルブVLを切り替えて、水蒸気電解装置5で発生した水素を保存するように構成されている。
また、水素保存装置15は、例えば動力発生装置1の始動直後に、加熱装置14により水蒸気が発生するまでの間、配管P9を介して水素タンク16に水素を供給するように構成されている。
なお、水素保存装置15に保存された水素の用途は、水素タンク16の補充に限定されるものではなく、燃料電池などの図示しない外部装置に供給するようにしてもよい。
酸素タンク17は、図1に示すように、水蒸気電解装置5で生成された酸素ガスを貯留する高圧タンクである。酸素タンク17には、水蒸気電解装置5から延びる配管P4の他端側が接続されている。配管P4の途中には、図示しない冷却装置とコンプレッサが配置されており、水蒸気電解装置5から排出された高温の酸素ガスは、冷却装置で冷却され、コンプレッサで圧縮されて、酸素タンク17に高圧状態で貯留されることとなる。
酸素タンク17は、例えばタンク内の酸素の圧力に基づいて貯留されている酸素量を検出する酸素量検出装置17aを備えている。
酸素タンク17は、吸気マニホールドP5を介して後記する水素−酸素エンジン8の吸気ポート87(図3参照)に接続されている。酸素タンク17は、吸気マニホールドP5に所定量の酸素ガスを噴射する噴射装置を備えている。
図3は、水素−酸素エンジンの断面図である。
水素−酸素エンジン8は、水素ガスと酸素ガスとを反応させて動力を発生させる装置である。水素−酸素エンジン8は、図1に示すように、水素・酸素供給通路を構成する吸気マニホールドP5を介して水素タンク16及び酸素タンク17に接続されている。
水素−酸素エンジン8は、図3に示すように、複数のシリンダ81aが一体形成されたシリンダブロック81と、シリンダブロック81の上部に結合されるシリンダヘッド82と、シリンダヘッド82の上部に結合されるヘッドカバー83と、を備えている。
シリンダ81aのシリンダボア81bにはピストン84が往復動可能に嵌合し、ピストン84は、シリンダブロック81に回転可能に支持されるクランクシャフトにコンロッド(ともに図示省略)を介して連結されている。クランクシャフトは、発電装置18(図1参照)に連結されている。
シリンダヘッド82には、各シリンダ81aに対応して、吸気ポート87と、排気ポート88とが形成されている。各排気ポート88の燃焼室86側は二股に分岐しており(図4(b)参照)、燃焼室86に対して第1排気口88a及び第2排気口88bが開口している。同様に、各吸気ポート87の燃焼室86側は二股に分岐しており、燃焼室86に対して第1吸気口87a及び第2吸気口87bが開口している。また、シリンダヘッド82には、燃焼室86に臨む点火プラグ86aが設置されている。
シリンダヘッド82には、第1吸気口87a及び第2吸気口87bを開閉するための第1吸気弁811a及び第2吸気弁811bが、弁ばね811cにより閉弁方向に常時付勢されて往復動可能に設置されている。同様に、シリンダヘッド82には、第1排気口88a及び第2排気口88bを開閉するための第1排気弁812a及び第2排気弁812bが、弁ばね812cにより閉弁方向に常時付勢されて往復動可能に設置されている。第1吸気弁811a及び第2吸気弁811b、並びに、第1排気弁812a及び第2排気弁812bは、ヘッドカバー83内に設けられた動弁装置Vによって駆動され、第1吸気口87a及び第2吸気口87b、並びに、第1排気口88a及び第2排気口88bをそれぞれ開閉する。
吸気ポート87には、吸気マニホールドP5(図1参照)が接続されており、水素ガスと酸素ガスが所定の割合で混合された混合ガスが供給される。混合ガスは、吸気工程において、吸気ポート87及び開弁した第1吸気弁811a,第2吸気弁811bを経て燃焼室86に吸入され、圧縮工程において圧縮される。混合ガスは、圧縮工程の終期に点火プラグ86aによって点火されて燃焼し、膨張する。膨張行程において、混合ガスがピストン84を押し下げることにより、クランク軸が回転する。排気工程において、ピストン84が上昇するとともに、第1排気弁812a及び第2排気弁812bが開弁することにより、排気ガスである高温の水蒸気が、排気ポート88に排出されることとなる。
図4は、水素−酸素エンジンの要部断面図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。図5は、図4(b)のII−II線断面図である。
図4(a)(b)及び図5に示すように、水蒸気排出通路の一部を構成する排気ポート88の内周面には、周方向に延びる環状の溝881が互いに平行にかつ長手方向に等間隔で複数形成されている。
また、排気ポート88の内周面には、溝881と交差して長手方向に延びるリブ882が周方向に等間隔で形成されている。リブ882は、排気ポート88の内周面と面一に形成されている。
図6は、図4(b)のIII−III線断面図であり、(a)は開弁時、(b)は閉弁時の状態を示している。
図6(a)に示すように、排気ポート88では、水蒸気たる排気流Fの一部が溝881に流れ込んで渦Sを生じるが、その流速は、排気ポート88内の排気流Fよりも小さくなる。そのため、溝881内に生じる境界層Lの厚さは、排気ポート88内に生じる境界層Lの厚さに比べて大きく、渦Sの熱がシリンダヘッド82に伝わり難くなる。つまり、溝881内の渦Sが断熱層となり、排気流Fの温度低下が防止されることとなる。
なお、第1排気弁812a及び第2排気弁812bが閉弁すると、排気ポート88内の圧力が減少し、図6(b)に示すように、溝881内の渦Sが排気ポート88に引き出され、次回の排気工程でも同様のことが繰り返される。
図4(a)に示すように、排気ポート88の燃焼室86と反対側の開口部には、水蒸気排出通路の一部を構成する排気マニホールドP6の一端側が接続されている。排気マニホールドP6の内周面には、排気ポート88と同様に、溝881及びリブ882が設けられている。
つづいて、動弁装置Vについて図3、図7、図8を参照して説明する。
図3に示すように、動弁装置Vは、シリンダヘッド82とヘッドカバー83とで構成される動弁室C内に配置されている。動弁装置Vは、第1吸気弁811a及び第2吸気弁811bを開閉する吸気側動弁装置V1と、第1排気弁812a及び第2排気弁812bを開閉する排気側動弁装置V2とで構成されている。排気側動弁装置V2は、第1排気弁812aと第2排気弁812bのバルブタイミングを、運転状態に応じて変更可能に構成されている。
図3に示すように、吸気側動弁装置V1は、一つの燃焼室86毎に一対の吸気カム92を有する吸気カム軸91と、各吸気カム92に対応する複数のロッカアーム93と、から構成されている。吸気カム軸91は、動弁室C内の両端部に設置された軸受部Caに軸支されている。吸気カム92は、第1吸気弁811a及び第2吸気弁811bを閉弁状態にする閉弁部92aと、第1吸気弁811a及び第2吸気弁811bを開弁状態にする開弁部92bとを有している。開弁部92bの表面から吸気カム軸91の中心までの距離は、閉弁部92aの表面から吸気カム軸91の中心までの距離よりも大きい。ロッカアーム93の一端側は、ロッカアーム軸93aに揺動可能に軸支されている。ロッカアーム93の他端側は、第1吸気弁811a及び第2吸気弁811bの頂部に当接している。ロッカアーム93の中間部には、吸気カム92が当接している。これにより、ロッカアーム93に吸気カム92の開弁部92bが当接すると、第1吸気弁811a及び第2吸気弁811bが弁ばね811cに抗して押し下げられて吸気口87a,87bが開口し、ロッカアーム93に吸気カム92の閉弁部92aが当接すると、第1吸気弁811a及び第2吸気弁811bが弁ばね811cによって押し上げられて吸気口87a,87bが閉塞される。
図3に示すように、排気側動弁装置V2は、一つの燃焼室86毎に一対の排気カム95を有する排気カム軸94と、各排気カム95に対応する複数のロッカアーム96と、から構成されている。
排気カム軸94は、インナカム軸97と、インナカム軸97に外嵌するアウタカム軸98とから構成されている。インナカム軸97及びアウタカム軸98は、相互に独立して同軸に回動可能に構成されている。
図7は、排気側動弁装置の構造図であり、(a)は水平断面図、(b)は(a)のIV−IV線断面図である。
図7(a)(b)に示すように、アウタカム軸98は、有底筒状の部材であり、小径部981aと小径部981aよりも径の大きい大径部981bとから構成される軸本体981と、軸本体981に一体形成された第1排気カム951と、第2排気カム952を支持するカム支持部983と、を備えている。軸本体981は、動弁室C内の両端部に設置された軸受部Caにその両端部付近を軸支されている。軸受部Caから突出する軸本体981の一端側981cは、第1位相制御機構F1に結合されている。軸本体981の他端側981dは、第2位相制御機構F2に結合されている。
また、アウタカム軸98は、インナカム軸97を挿入するための中空部986を有している。中空部986の第1位相制御機構F1側は、軸方向に開口している。
第1排気カム951は、第1排気弁812aを開閉するカムである。第1排気カム951は、閉弁部951aと開弁部951bとを備えている。
第2排気カム952は、第2排気弁812bを開閉するカムである。第2排気カム952は、カム支持部983に回動可能に外嵌されている。第2排気カム952は、閉弁部952aと開弁部952bとを備えている。
第1排気カム951及び第2排気カム952が、ロッカアーム96に当接することにより、ロッカアーム96が上下して、第1排気弁812a及び第2排気弁812bが開閉する。
インナカム軸97は、棒状の部材であり、アウタカム軸98の一端側981cから中空部986に挿入されている。インナカム軸97は、アウタカム軸98に対して回動可能になっている。
インナカム軸97は、小径部97aと、小径部97aよりも大径の大径部97bとを有している。インナカム軸97の大径部97bは、アウタカム軸98の中空部986から突出しており、第1位相制御機構F1の回動部材F1bに結合されている。インナカム軸97の小径部97aは、ピン97cを介して、第2排気カム952と結合されている。ピン97cは、アウタカム軸98のカム支持部983に形成された長孔983aに挿通されている。長孔983aは、周方向の寸法がピン97cの直径よりも大きく形成されている。
第1位相制御機構F1は、アウタカム軸98の一端側981cと一体に結合された有底筒状の本体F1aと、本体F1aの内部に回動可能に設置された回動部材F1bと、を有している。回動部材F1bは、油圧を作用させることにより、本体F1aに対して回転するようになっている。
回動部材F1bは、本体F1aと係合して相対回転を不能とするロック部F1cを有している。ロック部F1cは、油圧を作用させることにより、本体F1aに形成された係合穴F1dに進入し、油圧を低下させると、ばねの付勢力によって係合穴F1dから抜け出るようになっている。
また、第1位相制御機構F1は、進角油路F1eと、遅角油路F1fと、を有している。第1位相制御機構F1は、進角油路F1eに油圧を作用させると、回動部材F1b、インナカム軸97及び第2排気カム952が一体に回動し、第2排気カム952が第1排気カム951に対して進角方向に回動するようになっている。同様に、第1位相制御機構F1は、遅角油路F1fに油圧を作用させると、第2排気カム952が第1排気カム951に対して遅角方向に回動するようになっている。
第2位相制御機構F2は、有底筒状の本体F2aと、本体F2aの内部に回動可能に設置され、アウタカム軸98の他端側981dが結合された回動部材F2bと、を有している。回動部材F2bは、油圧を作用させることにより、本体F2aに対して回転するようになっている。本体F2aの外周にはタイミングチェーン(図示省略)が掛け回されるスプロケットF2eが形成されている。
回動部材F2bは、本体F2aと係合して相対回転を不能とするロック部F2cを有している。ロック部F2cは、油圧を作用させることにより、本体F2aに形成された係合穴F2dに進入し、油圧を低下させると、ばねの付勢力によって係合穴F2dから抜け出るようになっている。
また、第2位相制御機構F2は、進角油路F2fと、遅角油路F2gと、を有している。第2位相制御機構F2は、進角油路F2fに油圧を作用させると、回動部材F2b、アウタカム軸98及び第1排気カム951が一体に回動し、第1排気カム951が第2排気カム952に対して進角方向に回動するようになっている。同様に、第2位相制御機構F2は、遅角油路F2gに油圧を作用させると、第1排気カム951が第2排気カム952に対して遅角方向に回動するようになっている。
タイミング制御装置100は、第1位相制御機構F1及び第2位相制御機構F2を介して、第1排気弁812a及び第2排気弁812bの開閉タイミングを制御する装置である。
タイミング制御装置100は、油圧ポンプ101と、油圧ポンプ101と第1位相制御機構F1及び第2位相制御機構F2とを接続する配管102,103と、配管102,103の途中にそれぞれ設けられた制御弁104,105と、制御弁104,105の開閉を制御する制御装置本体106と、から構成されている。
図8は、第1排気弁及び第2排気弁の動作説明図であり、(a)は基本動作時、(b)は排気温度上昇動作時、(c)は排気温度低下動作時、のリフト量とクランク角の関係を示している。
基本動作時において、タイミング制御装置100は、第1位相制御機構F1の進角油路F1eと遅角油路F1fに油圧を均等に作用させている。このとき、第2排気カム952によって開閉される第2排気弁812bは、図8(a)に示すように、下死点BDCよりも角度θだけ早く開き始めるように設定されている。
一方、制御装置本体106の指令により、制御弁104を開き、油圧ポンプ101によって第1位相制御機構F1の進角油路F1eに高圧の作動油を送るとともに、遅角油路F1fの作動油を排出すると、回動部材F1b及びインナカム軸97を介して、第2排気カム952が第1排気カム951に対して進角方向に回転する。そうすると、第2排気弁812bが、図8(b)に示すように、基本動作時に比べて角度θだけ早く開き始める。排気ガス(水蒸気)は、圧縮状態となっている燃焼開始直後ほど温度が高く、ピストン84が下死点BDCに近づくほど低くなる。そのため、第2排気カム952を進角させることで、ピストン84が下死点BDCに到達する前に、高温の排気ガス(水蒸気)を多く排出できるので、排気ガスの温度が上昇する。
また、制御装置本体106の指令により、制御弁104を開き、油圧ポンプ101によって第1位相制御機構F1の遅角油路F1fに高圧の作動油を送るとともに、進角油路F1eの作動油を排出すると、回動部材F1b及びインナカム軸97を介して、第2排気カム952が第1排気カム951に対して遅角方向に回転する。そうすると、第2排気弁812bが、図8(c)に示すように、基本動作時に比べて角度θだけ遅く開き始める。ちなみに、第1実施形態では、下死点BDCで開き始めている。そのため、排気ガスの温度が低下する。
なお、タイミング制御装置100は、制御弁105の開度を調節することにより、第2位相制御機構F2に作用する油圧を調節して、第1排気弁812aが開き始めるタイミングを調節することができるが、第1位相制御機構F1の制御と同様であるので、その説明は割愛する。
図1に示すように、水素−酸素エンジン8から排出された水蒸気は、排気マニホールドP6によって、水蒸気電解装置5の上流側(より詳しくは、加熱装置14と水蒸気電解装置5とを接続する配管P2)に還流される。つまり、水素−酸素エンジン8から排出される水蒸気を水蒸気電解装置5に供給することができるので、加熱装置14の負担を軽減することができる。なお、水素−酸素エンジン8から排出された直後の水蒸気の温度は、例えば900℃程度である。排気マニホールドP6の途中には、排熱回収装置2が配置されている。
図9(a)(b)に示すように、排熱回収装置2は、水素−酸素エンジン8から排気マニホールドP6を通じて排出された水蒸気が有する熱を回収して電動発電装置28により発電を行う装置である。
排熱回収装置2は、排気マニホールドP6上に設けられた後記する熱交換部P61を取り囲むハウジング20を有している。ハウジング20は、円筒状に形成され、排気マニホールドP6は、ハウジング20を横断するように貫通している。ハウジング20には、空気を取り込む入口開口部20aと、取り込んだ空気を排出する出口開口部20bとが形成されている。
ハウジング20の軸中心には、連結部材である連結軸21が配置されている。連結軸21は、前側軸受25と、後側軸受26とにより回転可能に支持されている。なお、前側軸受25は、ハウジング20内の前方で連結軸21へ向けて伸びた軸受フレーム25aに支持され、後側軸受26は、ハウジング20内の後方で連結軸21へ向けて伸びた軸受フレーム26aに支持されている。
連結軸21の前方における入口開口部20a付近には、軸流型のコンプレッサ22が配置され、連結軸21の後方における出口開口部20b付近には軸流型のタービン23が配置されている。コンプレッサ22とタービン23は、連結軸21により一体に連結されており、連結軸21の軸線周りに回転可能となっている。
連結軸21の後端には、ベベルギヤ21aが設けられており、電動発電装置28の入力軸28aの先端に設けられたベベルギヤ28bと噛合している。電動発電装置28は、ハウジング20の側方に配置されている。入力軸28aは、ハウジング20の側部に形成された孔20cから内部へ挿通されて、連結軸21と直交している。なお、電動発電装置28の入力軸28aは、ハウジング20の側部に固定された軸受箱29内の軸受29a,29bにより回転可能に支持されている。
電動発電装置28は、排熱回収装置2の始動時には電動機として機能し、その駆動力により連結軸21を回転させて、コンプレッサ22とタービン23を始動させる。また、電動発電装置28は、排熱回収装置2の始動後は発電機として機能し、連結軸21の回転により駆動して電力を発生する。
熱交換部P61は、図9(a)(b)に示すように、排気マニホールドP6から分岐した複数の分岐管P6a,P6b,P6c,P6dと、この分岐管P6a,P6b,P6c,P6dの外周面に立設されたフィン24aと、この分岐管P6a,P6b,P6c,P6dの内部に立設されたフィン24bと、から構成されている。
分岐管P6a,P6b,P6c,P6dは、ハウジング20に入る前に複数、例えば4つに並列に分岐しており、ハウジング20を横切って出た後に再び集合して一つの排気マニホールドP6となっている。
分岐管P6a,P6b,P6c,P6dは、それぞれ薄い板状の流路を形成しており、ハウジング20内で連結軸21を取り巻くように配置されている。換言すると、分岐管P6a,P6b,P6c,P6dは、ハウジング20の内周に沿って湾曲している。
そして、分岐管P6a,P6b,P6c,P6dの外側には、ハウジング20内の空気流に沿う方向、すなわち前後方向に沿って複数のフィン24aが設けられている。また、各分岐管P6a,P6b,P6c,P6dの内部には、排気の流れに沿って、すなわち左右方向に沿って複数のフィン24bが設けられている。
なお、排気マニホールドP6が分岐しているのは、ハウジング20内での熱交換の効率を良くするためであり、排気マニホールドP6の分岐の仕方は、適用される装置に応じて適宜な変更をすることができ、例えば、板状でなく、円管状に分岐してもよいし、ハウジング20内に入った後で分岐してもよい。
図1に示すように、排気マニホールドP6の排熱回収装置2よりも下流側には、分岐バルブVLが設けられている。この分岐バルブVLには、EGR通路を形成する配管P8の一端側が接続されている。配管P8の他端側は、吸気マニホールドP5に接続されており、排熱回収装置2で排熱を回収された水蒸気の一部を、吸気マニホールドP5に還流できるようになっている。このようにすれば、水素と酸素の混合ガスに、さらに水蒸気が混入されることになり、水素−酸素エンジン8での燃焼温度を低下させることができる。
発電装置18は、図1に示すように、水素−酸素エンジン8によって駆動されて発電する装置である。発電装置18で発電された電力は、加熱装置14及び水蒸気電解装置5に供給されている。なお、電動発電装置28で発電された電力も、加熱装置14及び水蒸気電解装置5に供給されている。
つづいて、動力発生装置1の動作とそれに伴う作用について、図1〜図9を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、動力発生装置1は、貯水装置13に貯水した水を加熱装置14で加熱し、水蒸気を生成する。水蒸気電解装置5は、水蒸気を電気分解して水素ガスと酸素ガスを生成する。水素ガス及び酸素ガスは、それぞれ、水素タンク16及び酸素タンク17に高圧状態で貯留される。水素タンク16及び酸素タンク17は、所定量の水素ガス及び酸素ガスを吸気マニホールドP5に噴射し、水素ガスと酸素ガスが所定の割合で混合された混合ガスを生成する。
水素−酸素エンジン8は、混合ガスを爆発・燃焼させることでクランク軸を回転させ、駆動力を発生する。第1実施形態では、水素−酸素エンジン8の駆動力で発電装置18を運転し、その電力を加熱装置14及び水蒸気電解装置5に供給している。そのため、電力供給装置12の負担を軽減することができ、動力発生装置1の駆動効率が向上する。
水素−酸素エンジン8において、水素と酸素の燃焼により生成された水蒸気は、排気ポート88を介して排気マニホールドP6に排出される。排気ポート88及び排気マニホールドP6の内周面には溝881(図4参照)が形成されているため、排気温度の低下が抑制される。これにより、排熱回収装置2における排熱の回収効率が向上する。
また、さらに排気温度を上昇させる場合、水素−酸素エンジン8は、排気側動弁装置V2(図3参照)を制御して、図8(b)に示すように、第2排気弁812bを、基本動作時に比べて早いタイミングで開き始めるようにする。このようにすると、ピストン84が下死点BDCに到達する前の高温の水蒸気が第2排気弁812bから排出されるため、排気温度が上昇する。これにより、排熱回収装置2における排熱の回収効率が向上する。
なお、水素−酸素エンジン8は、水素と酸素の混合ガスを燃焼させているので、水素と空気を燃焼させた場合のように、排気ガスに窒素酸化物などが混ざることがない。そのため、窒素酸化物を除去するための浄化装置などを設ける必要がなく、コストを低減することができる。
排熱回収装置2は、水素−酸素エンジン8から排出された水蒸気から排熱を回収して動力を発生する。
具体的には、高温の水蒸気が排気マニホールドP6の分岐管P6a,P6b,P6c,P6dを流れると、フィン24b,24aを介してハウジング20内を流れる空気流と熱交換が行われる。一方、熱交換により加熱されたハウジング20内の空気は熱膨張して体積が増え、ハウジング20内の圧力を高める。高圧になった空気は、タービン23を回転させ、出口開口部20bから放出される。
タービン23が回転すると、連結軸21により一体になったコンプレッサ22も回転し、入口開口部20aから新たな空気(加熱前の空気)をハウジング20内へ導入する。そして、この空気がフィン24aにより加熱されることで、再びタービン23が回転し、連結軸21の回転が継続する。連結軸21の回転は、後端のベベルギヤ21a,28bを介して電動発電装置28へ伝達され、電動発電装置28で電力が発生する。電動発電装置28は、加熱装置14及び水蒸気電解装置5に電力を供給している。そのため、電力供給装置12の負担を軽減することができ、動力発生装置1の駆動効率が向上する。
排熱回収装置2で冷却された水蒸気は、排気マニホールドP6を通って、水蒸気電解装置5の上流側に還流される。そのため、加熱装置14で生成する水蒸気の量を低減でき、ひいては、電力供給装置12の負担を軽減することができる。
また、排熱回収装置2で冷却された水蒸気の一部は、EGR通路を構成する配管P8を通って、吸気マニホールドP5に還流される。そのため、水素−酸素エンジン8における水素と酸素の反応熱が、水蒸気の温度を上昇させることに消費されるので、水素−酸素エンジン8や周辺システムが高温になり過ぎることによる熱害を防止できる。
水素保存装置15は、水素タンク16に貯留されている水素量が所定量に達した場合に、余分な水素を保存し、エンジン始動時や寒冷時のように、水蒸気の生成あるいは水素の生成に時間が掛かる場合に、水素タンク16に水素を供給している。そのため、水素−酸素エンジン8を早期に駆動させることができる。
また、動力発生装置1は、外部からの水素の供給を必要としないので、装置としての取り扱いが極めて平易となる。また、排気が完全にクリーンで、かつ再循環が可能な上、燃焼による排気熱を回収する排熱回収装置2を備えるので、極めて高効率な動力発生装置1とすることができる。
つづいて、本発明の第2実施形態について、図10乃至図12を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図10は、第2実施形態に係る動力発生装置の概要を示すブロック図である。図11は、加熱装置から排出される水蒸気量の初期値と排気流量検出装置で検出した排気流量との差分と、貯水装置から加熱装置に供給する水量との関係を定めるマップである。図12は、還流される水蒸気のロス量と、これを補うために必要な水量とを関連付けたマップである。
第2実施形態に係る動力発生装置1Aは、図10に示すように、発電装置18及び電動発電装置28で発生した電力を外部に設置された作動装置Eに供給している点、及び、水量制御装置30とエンジン制御装置40とを備える点が、第1実施形態と主に異なっている。
作動装置Eは、動力発生装置1Aの外部に設置され、電力によって作動する装置である。作動装置Eは、発電装置18及び電動発電装置28に電気的に接続されている。作動装置Eとしては、例えば、車両を駆動するモータ、エアコンのコンプレッサ、電気自動車に搭載されるシステムや部品、などが挙げられる。
水量制御装置30は、加熱装置14から排出される水蒸気量の初期値Vと、後記する排気流量検出装置30aで検出した排気流量Vとの差分ΔV(=V−V)に基づいて、貯水装置13から加熱装置14に供給する水量Qを調節する装置である。水量制御装置30は、例えば、CPUなどの演算装置と、RAMやROMなどの記憶部31と、制御プログラムとを備えている。
排気流量検出装置30aは、排熱回収装置2から水蒸気電解装置5に送られる単位時間当たりの排気流量Vを検出して水量制御装置30に送信する装置である。排気流量検出装置30aは、水蒸気排出通路を構成する配管P6のうち排熱回収装置2よりも下流側(さらに詳しくは、EGR用の配管P8の分岐バルブVLよりも下流側)に設置されている。排気流量検出装置30aは、例えば公知の水蒸気検出センサで構成されている。
水量制御装置30の記憶部31には、動力発生装置1Aの始動時に貯水装置13から加熱装置14に供給する水量の初期値Qや、この水量Qが加熱装置14から水蒸気として排出されるときの水蒸気量の初期値Vなどが記憶されている。
また、記憶部31には、図11に示すように、加熱装置14から排出される水蒸気量の初期値Vと排気流量検出装置30aで検出した排気流量Vとの差分△Vと、貯水装置13から加熱装置14に供給する水量Qとの関係を定めるマップM1が記憶されている。
水量制御装置30は、記憶部31に記憶してある水蒸気量の初期値Vと、排気流量検出装置30aから受信した排熱回収装置2から水蒸気電解装置5に送られる単位時間当たりの排気流量Vとの差分ΔVを計算するようになっている。
そして、水量制御装置30は、この差分ΔVに基づいて、記憶部31に記憶されたマップM1を参照して、加熱装置14に供給する水量Qに応じた水供給信号を貯水装置13に送信するようになっている。
例えば、動力発生装置1Aの始動直後は、排気流量検出装置30aで検出される排気流量Vは"0"であるから、差分ΔVは、水蒸気量の初期値Vに等しくなる。そうすると、水量制御装置30は、図11に示すように、マップM1を参照して、差分ΔV=Vに対応する水量Qを加熱装置14に供給するように、貯水装置13に水供給信号を送信する。
そして、動力発生装置1Aの始動からある程度の時間が経過し、排気流量検出装置30aで検出される排気流量Vが増えてきた場合、差分ΔVが小さく(例えばΔV=V(V<V))なる。そうすると、水量制御装置30は、図11に示すように、マップM1を参照して、差分ΔV=Vに対応する水量Q(Q<Q)を加熱装置14に供給するように、貯水装置13に水供給信号を送信する。
このようにすれば、水素−酸素エンジン8から水蒸気電解装置5に還流される水蒸気の量に応じて、貯水装置13から供給する水量Qを低減できるので、水の使用量を節約することができる。また、加熱装置14で生成する水蒸気の量を低減することができるので、加熱装置14の消費電力も節約することができる。
ところで、水素−酸素エンジン8から排出された水蒸気は、排熱回収装置2で排熱を回収されて温度が低下したときや、配管P6内を通流している間に温度が低下したときに、液体となってロスする場合がある。
第2実施形態に係る動力発生装置1Aは、水蒸気のロス分を適切に補う機能も備えている。以下、この機能について説明する。
エンジン制御装置40は、後記する作動状態検出装置40aで検出した作動装置Eの作動状態に基づいて水素−酸素エンジン8による動力の必要発生量を算出し、算出した動力の必要発生量に基づいて水素−酸素エンジン8に供給する水素量及び酸素量を調節する装置である。エンジン制御装置40は、例えば、CPUなどの演算装置と、RAMやROMなどの記憶部と、制御プログラムとを備えている。
作動状態検出装置40aは、作動装置Eの作動状態を検出して、エンジン制御装置40に送信する装置である。作動状態検出装置40aは、例えば公知の出力計や電圧計などで構成されている。
エンジン制御装置40の記憶部には、図示は省略するが、作動状態検出装置40aで検出した作動装置の作動状態と水素−酸素エンジン8による動力の必要発生量とを関連付けたマップが予め記憶されている。また、エンジン制御装置40の記憶部には、水素−酸素エンジン8による動力の必要発生量と水素−酸素エンジン8に供給する水素量及び酸素量とを関連付けたマップが予め記憶されている。これらのマップは、例えば事前実験に基づいて作成される。
エンジン制御装置40は、作動状態検出装置40aから送信された検出値に基づいて、記憶部に記憶された2つのマップを参照して、水素−酸素エンジン8に供給する水素量及び酸素量を決定し、水素タンク16及び酸素タンク17に噴射量に応じた噴射命令信号を送信するようになっている。これにより、水素−酸素エンジン8に、作動装置Eの作動状態に応じた水素量及び酸素量が供給されることとなる。
また、エンジン制御装置40は、水素−酸素エンジン8に供給される単位時間当たりの水素量及び酸素量を水量制御装置30に送信するようになっている。
水量制御装置30は、前記した機能の他に、還流される水蒸気のロス量を計算し、このロス量を補うように、貯水装置13から加熱装置14に供給する水量Qを調節する機能を有している。
具体的には、水量制御装置30は、エンジン制御装置40から送信された水素−酸素エンジン8に供給される単位時間当たりの水素量及び酸素量に基づいて、水素−酸素エンジン8で生成される水蒸気量を計算する。
また、水量制御装置30は、計算した水蒸気量から、排気流量検出装置30aで検出した実際の水蒸気量を差し引くことにより、還流される水蒸気のロス量ΔSを計算する。
水量制御装置30の記憶部31には、図12に示すように、還流される水蒸気のロス量ΔSと、これを補うために必要な水量Δqとを関連付けたマップM2が記憶されている。マップM2は、例えば事前実験に基づいて作成される。
水量制御装置30は、計算した水蒸気のロス量ΔSに基づいて、マップM2を参照して、ロス量ΔSを補うために必要な水量Δqを決定する。
そして、水量制御装置30は、前記した差分ΔVに基づいて決定した水量Qに、ロス量ΔSを補うために必要な水量Δqを加えた水量Q+Δqを加熱装置14に供給するように、貯水装置13に水供給信号を送信する。
このようにすれば、水蒸気のロス量ΔSを補うように、貯水装置13から加熱装置14に供給する水量Qが調節されるので、排気される水蒸気の再利用を図ると共に、水素及び酸素の使用量を適切に保ちながら、動力発生装置1Aを効率よく安定的に運転することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について一例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
例えば、水蒸気電解装置5と水素タンク16の間、及び、水蒸気電解装置5と酸素タンク17の間、に排熱回収装置2と同様の装置を設置すれば、水蒸気電解装置5から排出される高温の水素ガス及び酸素ガスからの排熱を回収して動力を発生させることができる。そして、その動力で発電した電力を加熱装置14及び水蒸気電解装置5に供給すれば、動力発生装置1の効率を一層向上させることができる。
また、第1実施形態の排熱回収装置2は、ハウジング20の入口開口部20a及び出口開口部20bを大気に開放する構成としたが、出口開口部20bと入口開口部20aとを、管状の部材で連通接続してエア流路を構成し、出口開口部20bから排出された空気を入口開口部20aに還流させるようにしてもよい。このようにすれば、ハウジング20内への異物の侵入を阻止することができるため、ハウジング20内に詰まりが発生せず、ひいては、排熱回収装置2自体の作動が安定するとともに耐用性(耐用年数)を向上させることができる。また、熱膨張した空気は、出口開口部20bからエア流路内に排出されるため、排出音による騒音を低減することができる。
なお、ハウジング20とエア流路(図示せず)とで閉回路を構成する場合は、エア流路上に、内部の空気の温度を低下させる冷却装置を設けるのが好ましい。
また、第1実施形態では、排気ポート88及び排気マニホールドP6の内周面に、溝881及びリブ882を形成したが、吸気ポート87及び吸気マニホールドP5の内周面に、溝881及びリブ882と同様の構造を設けてもよい。このようにすれば、水素−酸素エンジン8の躯体の熱によって、吸気ポート87内の混合ガスの温度が上昇することを抑制できる。そのため、吸気温度が低下し、圧縮率の向上及びノッキングの抑制を図ることができる。
また、第1実施形態では、吸気マニホールドP5に、酸素ガスと水素ガスとを噴射することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、吸気マニホールドP5に酸素ガスを噴射し、水素ガスは燃焼室86内に直接噴射するようにしてもよい。
また、第1実施形態では、水素−酸素エンジン8の動力によって発電装置18を駆動し、排熱回収装置2の動力によって電動発電装置28を駆動して、電力を取り出すこととしたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、動力発生装置1を自動車に搭載し、水素−酸素エンジン8の動力と排熱回収装置2の動力で、車輪を駆動するようにしてもよい。
また、第2実施形態では、発電装置18及び電動発電装置28で発生した電力を外部に設置した作動装置Eに供給することとしたが、作動装置Eで使用されない余剰な電力を、加熱装置14や水蒸気電解装置5に供給してもよい。
第1実施形態に係る動力発生装置の概要を示すブロック図である。 水蒸気電解装置の断面図である。 水素−酸素エンジンの断面図である。 水素−酸素エンジンの要部断面図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。 図4(b)のII−II線断面図である。 図4(b)のIII−III線断面図であり、(a)は開弁時、(b)は閉弁時の状態を示している。 排気側動弁装置の構造図であり、(a)は水平断面図、(b)は(a)のIV−IV線断面図である。 第1排気弁及び第2排気弁のリフト量とクランク角の関係を示す動作説明図であり、(a)は基本動作時、(b)は排気温度上昇動作時、(c)は排気温度低下動作時、である。 排熱回収装置の構造図であり、(a)は縦断面図、(b)は(a)のV−V線断面図、である。 第2実施形態に係る動力発生装置の概要を示すブロック図である。 加熱装置から排出される水蒸気量の初期値と排気流量検出装置で検出した排気流量との差分と、貯水装置から加熱装置に供給する水量との関係を定めるマップである。 還流される水蒸気のロス量と、これを補うために必要な水量とを関連付けたマップである。
符号の説明
1 動力発生装置
2 排熱回収装置
5 水蒸気電解装置
8 水素−酸素エンジン
12 電力供給装置
13 貯水装置
14 加熱装置
15 水素保存装置
16 水素タンク
16a 水素量検出装置
17 酸素タンク
18 発電装置
28 電動発電装置

Claims (7)

  1. 電力供給装置と、
    所定量の水を保持する貯水装置と、
    前記貯水装置から供給される水を加熱して水蒸気にする加熱装置と、
    前記電力供給装置から供給される電力により、前記加熱装置で発生した水蒸気を電気分解して水素と酸素を生成する水蒸気電解装置と、
    前記水蒸気電解装置で生成された水素を貯留する水素タンクと、
    前記水蒸気電解装置で生成された酸素を貯留する酸素タンクと、
    前記水素タンクから供給される水素と前記酸素タンクから供給される酸素とを反応させて動力を発生させる水素−酸素エンジンと、
    前記水素−酸素エンジンで生成された水蒸気を前記水蒸気電解装置に排出する水蒸気排出通路と、
    前記水蒸気排出通路に配置され、前記水蒸気から排熱を回収して動力を発生させる排熱回収装置と、を有することを特徴とする動力発生装置。
  2. 前記水素−酸素エンジンは、
    前記水素タンク及び前記酸素タンクの少なくともいずれか一方から供給される水素及び酸素の少なくともいずれか一方を前記水素−酸素エンジンの燃焼室に供給する水素・酸素供給通路と、
    前記水蒸気排気通路と前記水素・酸素供給通路とに連通し、水蒸気からなる排気の一部を前記水素・酸素供給通路に供給するEGR通路と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の動力発生装置。
  3. 前記水素−酸素エンジンは、
    前記水蒸気排出通路の燃焼室側の開口部を開閉する複数の排気バルブと、
    前記複数の排気バルブの開閉タイミングを制御するタイミング制御装置と、を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動力発生装置。
  4. 前記排熱回収装置は、
    前記水蒸気排気通路上に配置された熱交換部と、
    空気取入口と空気排出口とを有し、前記熱交換部を内部に収容するハウジングと、
    前記ハウジング内であって前記熱交換部よりも前記空気取入口側に配置されたコンプレッサと、
    前記ハウジング内であって前記熱交換部よりも前記空気排出口側に配置されたタービンと、
    前記コンプレッサと前記タービンとを一体回転可能に連結する連結部材と、
    前記連結部材に接続され、前記連結部材を回転させる電動装置として機能するとともに、前記連結部材の回転によって発電する出力装置として機能する電動発電装置と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動力発生装置。
  5. 前記水素タンクに設けられ、前記水素タンクに蓄えられた水素量を検出する水素量検出装置と、
    前記水素量検出装置が所定の水素量を検出した場合に、前記水蒸気電解装置にて生成される水素を別途保存する水素保存装置と、を有し、
    前記加熱装置により水蒸気が発生するまでの間、前記水素保存装置に保存していた水素を前記水素タンク又は前記水素−酸素エンジンに供給することを特徴する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力発生装置。
  6. 前記排熱回収装置から前記水蒸気電解装置に送られる排気流量を検出する排気流量検出手段と、
    前記加熱装置から排出される水蒸気量の初期値と前記排気流量検出手段で検出した排気流量との差分に応じて前記貯水装置から前記加熱装置に供給する水量を調節する水量制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の動力発生装置。
  7. 前記水素−酸素エンジンで発生した動力で作動する作動装置の作動状態を検出する作動状態検出手段と、
    前記作動状態検出手段で検出した作動装置の作動状態に基づいて前記水素−酸素エンジンによる動力の必要発生量を算出し、算出した動力の必要発生量に基づいて前記水素−酸素エンジンに供給する水素量及び酸素量を調節するエンジン制御手段と、をさらに備え、
    前記水量制御手段は、
    前記水素−酸素エンジンに供給される水素量及び酸素量に基づいて前記水素−酸素エンジンで生成される水蒸気量を計算するとともに、計算した水蒸気量と前記排気流量検出手段で検出した排気流量との差分に基づいて、前記貯水装置から前記加熱装置に供給する水量を調節することを特徴とする請求項6に記載の動力発生装置。
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