JP2010106292A - フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の赤錆防止方法 - Google Patents

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謙一 大久保
Taketo Hara
丈人 原
Kazumi Matsubara
和美 松原
Koji Mori
浩治 森
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Abstract

【課題】簡便かつ確実なフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部の赤錆防止方法を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂含有塗膜を有するフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部に、シリコーンオイルを塗布する。前記塗膜は、耐熱性樹脂と乳化重合法で製造した平均粒径0.05〜1μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体を主成分とするフッ素樹脂との混合物から形成される塗膜であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明はフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の赤錆防止方法に関する。
フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板は、その優れた非粘着性、耐食性から、オーブンレンジ等の庫内材料に用いられている(特許文献1)。この際、フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板は、天井部等の他の部材とかしめ接合によってオーブン電子レンジの庫内を形成するため、曲げ加工等により所望の形状に加工される。このかしめ接合による曲げ加工部において、鋼板は、内側半径がゼロとなる180度曲げ、すなわち「密着曲げ」に近い厳しい条件で加工される場合がある。このようにAl系めっき鋼板が加工されると、めっき層に亀裂が入り一部で鋼素地が露出し、耐食性が低下する場合があった。
特に、フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板を、スチームを使用するオーブンレンジに使用すると、上記のように厳しく曲げ加工された部分に赤錆が発生することがあり、問題となっていた。
特許第3293084号公報
鋼素地の露出による耐食性の低下を抑えるため、かしめ部分の曲げ加工条件が変更できない場合、加工部の耐食性を向上させるためには、曲げ加工部に補修塗料が塗装される。しかし、フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板は、非粘着性があるため、ほとんどの補修塗料がはじかれてしまい、所望の効果を発現できない。また、仮にはじかれない補修塗料を選択したとしても塗装後には焼付工程等を必要とするため、効率が悪い等の問題があった。
すなわち、簡便かつ確実なフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部の赤錆防止方法が望まれていたが、未だこれらの性能を満足するものは存在しなかった。かかる事情に鑑み、本発明は、簡便かつ確実なフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部の赤錆防止方法を提供することを目的とする。
発明者は鋭意検討した結果、特定のシリコーンオイルを塗布することにより上記課題が解決できることを見出した。すなわち上記課題は以下の本発明により解決される。
[1]フッ素樹脂含有塗膜を有するフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部に、シリコーンオイルを塗布する工程を含む、フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の赤錆防止方法。
[2]前記塗膜は、耐熱性樹脂と乳化重合法で製造した平均粒径0.05〜1μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体を主成分とするフッ素樹脂との混合物から形成される塗膜である、[1]記載の赤錆防止方法。
[3]前記塗膜の対水接触角は、80〜110度である、[1]または[2]記載の赤錆防止方法。
[4]前記シリコーンオイルは、前記塗膜に対する接触角が50度以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の赤錆防止方法。
[5]前記シリコーンオイルは、25℃、JIS Z8803によるウベローデ粘度計を用いて測定した動粘度が、300〜2000mm/sである、[1]〜[4]のいずれかに記載の赤錆防止方法。
本発明により、簡便かつ確実なフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部の赤錆防止方法が提供できる。
1.フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板
フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板とは、Al系めっき鋼板の表面に、フッ素樹脂を含む塗膜が形成された鋼板をいう。
(1)Al系めっき鋼板
Al系めっき鋼板とは、Alを主成分とするめっき層を有する鋼板である。本発明においては、下地鋼として、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、または合金鋼等が使用できる。 めっき層は電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法のいずれで形成されていてもよい。Al系めっき鋼板の具体例には、めっき層全体でのSi含有量が5〜13質重%、表層のSi含有量が7〜80質重%のAl−Si合金めっき層が形成されたAl−Si合金めっき鋼板、Zn−50〜60%Al合金めっき鋼板、およびこれらのめっき鋼板を加熱して合金化した鋼板が含まれる。Al系めっき鋼板は、以下単に「鋼板」とも呼ばれる。本発明において記号「〜」はその両端の数値を含む。
(2)塗膜
本発明の塗膜はフッ素樹脂を含む。本発明の塗膜はさらに耐熱性樹脂を含むことが好ましい。フッ素樹脂、耐熱性樹脂は公知のものを用いてよい。中でも、本発明の塗膜は、特許文献1に開示されているような、耐熱性樹脂と、乳化重合法で製造した平均粒径0.05〜1μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体を主成分とするフッ素樹脂との混合物(以下「フッ素−耐熱樹脂混合物」ともいう)から形成された塗膜が好ましい。耐熱性樹脂は、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂が好ましい。本発明の塗膜は、優れた耐熱性と非粘着を有するため、耐熱非粘着塗膜とも呼ばれる。
耐熱性樹脂とフッ素樹脂との配合比は、質量比にして40:60〜80:20が好ましく、50:50〜70:30がより好ましい。耐熱非粘着塗膜の厚みは、乾燥膜厚にして2〜20μmが好ましい。
本発明の塗膜の対水接触角は、80〜110度が好ましく、90〜105度がより好ましい。また、本発明の塗膜は、フッ素樹脂含有塗膜が表層にあれば、その下に他の塗膜を有していてもよい。接触角は、公知の方法で測定できる。本発明においては静的接触角を液滴法で測定することが好ましい。
(3)塗装鋼板の製造方法
フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板は公知の方法で得てよい。例えば、Al系めっき鋼板を準備して、その表面に前記のフッ素−耐熱樹脂混合物を含む塗料を塗布し、乾燥させて得られる。フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板は以下、本発明の塗装鋼板とも呼ばれる。
2.シリコーンオイル
シリコーンオイルとは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであって、室温で液状のものをいう。本発明のシリコーンオイルは、分子量が10000〜35000であることが好ましい。分子量(M)は、JIS Z8803(液体の粘度−測定方法)に準じ、ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した動粘度ηを用いて、次式により算出できる。
Logη=1.00+0.0123M0.5
(1)塗膜に対する接触角
本発明のシリコーンオイルは、塗膜に対する接触角が50度以下であることが好ましい。塗膜の接触角が50度以下であると、本発明の塗膜に対する塗れ性が良好となり、塗膜にはじかれることなく塗膜の開裂部に浸透しやすくなるからである。接触角は、前述のとおり静的接触角を液適法により測定することが好ましい。
接触角が前記範囲にあるシリコーンオイルは、表面張力が20×10−3N/m(20dyn/cm)であり、前記塗膜の表面張力32〜33−3N/m(32〜33dyn/cm)よりも小さいので、塗膜に対する塗れ性が良好である。
(2)粘度
本発明のシリコーンオイルは、25℃、IS Z8803(液体の粘度−測定方法)によるウベローデ粘度計を用いて測定された動粘度が、300〜2000mm/sであることが好ましい。粘度がこの範囲にあるシリコーンオイルは、本発明の塗装鋼板の曲げ加工部に形成された塗膜の開裂部および鋼素地露出部へ浸透しやすい。
また、本発明のシリコーンオイルは、動粘度が温度により変化しにくいことが好ましい。シリコーンオイルは、オーブン等の庫内材料に用いられることがあるため、温度変化により粘性が大きく変化すると、染み出し等の問題が生じるからである。具体的に、本発明のシリコーンオイルは、次式で定義される動粘度保持率が、15%以上が好ましく、40%以上であることがより好ましい。
動粘度保持率(%)= η100/η40×100
η40:40℃での動粘度(m/s)
η100:100℃での動粘度(m/s)
上記の特性から、本発明においては、ジメチルシリコーン(接触角38度、動粘度保持率41%)またはメチルフェニルシリコーン(接触角50度、動粘度保持率19%)が好ましく、ジメチルシリコーンがより好ましい。
3.赤錆防止方法
本発明の赤錆防止方法は、フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部に、シリコーンオイルを塗布する。フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部は、定法で曲げ加工された部位であればよい。180度に曲げた際の内側半径については任意であるが、内側半径がゼロとなる密着曲げに近いと本発明の効果が最大に発揮されるので好ましい。内側半径がゼロとなる密着曲げ加工部は、塗膜およびめっき層が割れて鋼素地が露出する場合が多いが、このような場合でも、本発明は赤錆の発生を防止できるからである。
シリコーンオイルの塗布量は、0.05〜2mg/cmが好ましい。塗布量が前記下限値未満であると、赤錆防止効果が十分でない場合がある。塗布量が前記上限値を超えると、塗布部がベタつくことがあり、外観や取り扱い性が低下することがある。
シリコーンオイルの粘度、塗膜に対する接触角、および塗布量が前記範囲にあると、シリコーンオイルが、本発明の塗装鋼板の曲げ加工部に形成された塗膜の開裂部および鋼素地露出部浸透しやすいので塗布後に乾燥しなくても、ベタつくことがないという利点がある。
塗布方法は特に限定されない。例えば、刷毛で塗布してもよいし、スポイト等で滴下して塗布してもよい。
本方法は、スチームオーブンの庫内材料の、特にかしめ合わせ部のような箇所に有効である。かしめ合わせ部は、板厚の異なる部材同士をかしめ合わせることで、内側半径がゼロとなる密着曲げに近い曲げ加工が施されることが多く、鋼素地が露出し易い。さらに、スチームオーブン庫内は高温水蒸気下にさらされるので、かしめ合わせ部には、図1に示すとおり、水滴がたまりやすいからである。
図1は、かしめ部の一例を示す断面図である。図中、1は鋼板、2は水滴である。図1に示されるとおり、紙面下方に位置する鋼板の厚みより、紙面上方に位置する鋼板の厚みが薄いと、紙面下方に位置する鋼板の曲げ加工部の内側半径は小さくなり、密着曲げに近い状態となる。
シリコーンオイルは、分子間の凝集エネルギー密度が小さいので水や動植物油には溶解しない。また、シリコーンオイルは揮発しにくいので、塗布後、再度しなくても赤錆防止効果が持続できる。さらに、シリコーンオイルは生理的に不活性であるので、本発明で使用する程度の量であれば人体への影響もない。
[実施例1]
片面当たりめっき付着量:40g/mの溶融Al−9%Siのめっき層が形成された板厚0.5mmのAl系めっき鋼板を準備した。ポリエーテルスルホン樹脂をベースとし、平均粒径0.2μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体をベース樹脂に対し、100質量%配合してなるフッ素−耐熱樹脂混合物を含む塗料を調整した。この塗料を用いて、前記鋼板の片面に、膜厚10μmの耐熱非粘着塗膜を定法により形成し、塗装鋼板を得た。この塗装鋼板の端部を、塗膜表面が外側になるようにして180度の曲げ角度で、内側半径がほぼ0となるように曲げ加工した。このように加工された塗装鋼板を2枚準備し、図2に示すようなサンプルを準備した。このサンプルは、図2に示すとおり、曲げ加工部に水滴がたまりやすい。図中、3は塗装鋼板である。
このサンプルの曲げ加工部にシリコーンオイルとして、ジメチルシリコーン(商品名:信越シリコーン製、KF−96)を、刷毛を用いて塗布量が0.8mg/cmになるように塗布した。このサンプルは高温高湿槽に装入され、70℃、相対湿度98%以上の環境に120時間保持された。次いでサンプルを高温高湿槽から取出し、赤錆の発生状態を目視で観察し、以下の基準で判断した。
基準は、図2の試験サンプル幅(長手方向の長さ)に対する赤錆発生部の幅の割合(「幅の割合」ともいう)により、以下のように分類された。
幅の割合が5%以下の場合:◎
幅の割合が5%を超えて10%以下場合:○
幅の割合が10%を超えて15%以下の場合:△
幅の割合が15%を超える場合:×
これらの結果を、ジメチルシリコーンの接触角、動粘度保持率とともに表1に示した。ジメチルシリコーンの接触角(静的接触角)は、液滴法により測定された。動粘度はウベローデ粘度計により測定された。
[実施例2]
ジメチルシリコーンの代わりにメチルフェニルシリコーン(信越シリコーン製、KF−54)を用いた以外は、実施例1と同様にして、赤錆抑制効果を評価した。結果を表1に示した。
[比較例1〜3]
ジメチルシリコーンの代わりに表1に示す物質を用いた以外は、実施例1と同様にして、赤錆抑制効果を評価した。結果を表1に示した。
Figure 2010106292
実施例と比較例から、本発明は、簡便であり、かつ赤錆防止効果に優れることが明らかである。
本発明は、簡便であって赤錆防止効果に優れるため、オーブン等の庫内材料の赤錆防止方法として有用である。
かしめ部の一例を示す断面図 赤錆抑制試験用サンプルの斜視図
符号の説明
1 鋼板
2 水滴
3 塗装鋼板

Claims (5)

  1. フッ素樹脂含有塗膜を有するフッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の曲げ加工部に、シリコーンオイルを塗布する工程を含む、フッ素樹脂塗装Al系めっき鋼板の赤錆防止方法。
  2. 前記塗膜は、耐熱性樹脂と乳化重合法で製造した平均粒径0.05〜1μmのパーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体を主成分とするフッ素樹脂との混合物から形成される塗膜である、請求項1記載の赤錆防止方法。
  3. 前記塗膜の対水接触角は、80〜110度である、請求項1記載の赤錆防止方法。
  4. 前記シリコーンオイルは、前記塗膜に対する接触角が50度以下である、請求項1記載の赤錆防止方法。
  5. 前記シリコーンオイルは、25℃、JIS Z8803によるウベローデ粘度計を用いて測定した動粘度が、300〜2000mm/sである、請求項1記載の赤錆防止方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019119071A (ja) * 2017-12-28 2019-07-22 三菱電機株式会社 防食コーティング及び物品
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