JP2010100540A - 脂溶性カテキンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カテキンまたはプロアントシアニジンと、式(I)
(式中、R1は、炭化水素基を示し;R2は、水素または炭化水素基を示し;R3は、水素または炭化水素基を示し;R4は、水酸基を示し、あるいはR3およびR4は、一緒になってケト基を示す)で表される化合物とを反応させることを特徴とする、脂溶性カテキンまたは脂溶性プロアントシアニジンの製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明者らはこれらの知見に基づいてさらに鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]カテキンまたはプロアントシアニジンと、式(I)
R1は、炭化水素基を示し;
R2は、水素または炭化水素基を示し;
R3は、水素または炭化水素基を示し;
R4は、水酸基を示し、あるいは
R3およびR4は、一緒になってケト基を示す)
で表される化合物(以下、化合物(I)と記載する)とを反応させることを特徴とする、脂溶性カテキンまたは脂溶性プロアントシアニジンの製造方法;
[2]混合後、さらに80℃〜120℃で加熱することを特徴とする、[1]に記載の方法;
[3]さらに酸を加えることを特徴とする、[1]または[2]に記載の方法;
[4]酸が、クエン酸である、[3]に記載の方法;
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の方法で製造される、脂溶性カテキンまたは脂溶性プロアントシアニジン;
[6][1]〜[4]のいずれか一項に記載の方法で製造され、疎水性基が炭素−炭素結合により結合していることを特徴とする、脂溶性カテキンまたは脂溶性プロアントシアニジン;
などに関する。
本発明は、カテキンまたはプロアントシアニジンと、化合物(I)とを反応させることを特徴とする、脂溶性カテキンまたは脂溶性プロアントシアニジン(以下、これらをまとめて「脂溶性カテキン誘導体」と記載する場合がある)の製造方法を提供する。
特に茶の渋み成分である茶カテキンとしては、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどが挙げられる。また酸化的二量体化されたカテキンとしては、紅茶のテアシネンシン類やテアフラビン類が挙げられる。
特に食品に含まれるプロアントシアニジンとしては、プロシアニジンB−1、プロシアニジンB−2、プロシアニジンB−3、プロシアニジンB−4、プロシアニジンC−1、プロデルフィニジンB−1、プロデルフィニジンB−2などが挙げられる。
さらに当該基は、天然に存在する二重結合を有する鎖状不飽和炭化水素(例、ヘミテルペン、モノテルペン、ジテルペン、テスタテルペン、トリテルペン等)の任意の水素原子を除去して誘導される基であってもよい。
当該酸としては、当業者であれば適切な酸を適宜選択することができるが、このような酸としては、例えば、酢酸、酪酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、塩酸、リン酸、硫酸などが挙げられるが、なかでもクエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、コハク酸が好ましく、クエン酸が最も好ましい。
また本発明における「脂溶性プロアントシアニジン」とは、自体公知のプロアントシアニジンの活性(たとえば、抗酸化作用、コレステロール低下作用、抗菌作用など)を有しつつ、本発明の方法により脂溶性が向上した上記カテキンの全てを意味する。
8−〔6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,4,6,7−テトラヒドロ−4−プロピル−7,9−ジヒドロキシ−2H,8H−ピラ〔2,3−h〕〔1〕ベンゾピラン−2−イル〕−(+)−カテキン、
8,7−O−〔(1S,3S,4R)−8−ヒドロキシメンタン−1(7−O),3(8)−ジイル〕−(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート、
8,7−O−〔(1R,3R,4S)−8−ヒドロキシメンタン−1(7−O),3(8)−ジイル〕−(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート、
6,5−O−〔8−ヒドロキシメンタン−1(5−O),3(6)−ジイル〕−(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート、
8−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−8,9−ジヒドロ−2−メチル−2−(4−メチル−3−ペンテニル)−9−(3,4,5−トリヒドロキシベンゾイル)−2H,10H−ピラ〔2,3−h〕〔1〕ベンゾピラン、
6,5−O−8,7−O−ビスメンタン−3(6,8),8(5−O,7−O)−ジイル−(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート、
8−ゲラニル−(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート、
(−)−エピガロカテキン−3−O−(2−ゲラニル−3,4,5−トリヒドロキシ)ベンゾエート
などが挙げられる。
そのうちTLC上でほぼ単一のスポットが観察されたFr.3(636mg)を、50%メタノールで置換したクロマトレックスODSカラム(内径3cm,高さ30cm)に付し、50%、55%、60%、65%、80%メタノールで順次溶出して、黄褐色の粉末として化合物1を115mg単離した。化合物1の物理恒数は以下の通りであった。
IR(dry film)νmaxcm−1:3389,1692,1616,1449,
UV(MeOH)λmaxnm(ε):280(7280),
MALDI−TOF−MS m/z:683[M+Na]+,699[M+K]+.
Anal.Calcd for C36H36O12・9/4H2O:C,61.67;H,5.82.Found:C,61.73;H,5.76.
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:0.42(3H,t,J=7.3,Ha−6”),0.69(3H,t,J=7.3,Hb−6”),0.98(1H,m,Ha−5”),1.06(1H,m,Ha−5”),1.16(1H,m,Hb−5”),1.18(1H,m,Ha−4”),1.29(1H,m,Hb−5”),1.31(1H,m,Hb−4”),1.55(1H,m,Ha−4”),1.72(1H,m,Hb−4”),1.93(2H,m,H−2”),2.56(2H,m,Ha−4,Hb−4),2.78(1H,m,Hb−3”),2.80(1H,m,Ha−3”),2.94(2H,m,Ha−4’,Hb−4’),3.92(2H,m,Ha−3,Hb−3),4.00(2H,m,Ha−3’,Hb−3’),4.55(1H,d,J=8.24,H−2),4.55(1H,d,J=8.24,H−2),4.59(1H,d,J=7.8,H−2),4.63(1H,d,J=7.8,H−2),5.50(1H,dd,J=2.52,11.7,H−1”),5.53(1H,dd,J=2.52,11.7,H−1”),6.03(2H,s,H−6,H−6’),6.76(4H,m,B−ring H−5,5’,6,6’),6.90(2H,m,B−ring H−2,2’),7.64(1H,s,OH−7),7.72(1H,s,OH−7),7.89(4H,m,B−ring OH−3,3’4,4’),8.33(1H,s,OH−5’),8.34(1H,s,OH−5’),8.40(1H,s,OH−5),8.40(1H,s,OH−5).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:13.95(Ca−6”),14,24(Cb−6”),20.88(Ca−5”),21.20(Cb−5”),28.80(Ca−4,Cb−4),28.91(Ca−4’,Cb−4’),30.04(Cb−3”),30.20(Ca−3”),31.11(Ca−2”),31.47(Cb−2”),37.57(Ca−4”),38.02(Cb−4”),67.84,67.91(Ca−3’,Cb−3’),68.32,68.55(Ca−3,Cb−3),70.55,71.46(Ca−1”,Cb−1”),82.31,83.00(C−2,C−2’),95.89,96.06,96.92,97.02(Ca−6,Cb−6,Ca−6’,Cb−6’),101.00,101.01,102.27,102.70(Ca−4,Ca−4’,Cb−4,Cb−4),105.12,105.48(C−8,C−8),107.39,107.67(C−8a,C−8a’),114.89,115.170,115.24(B−ring C−2,2’),115.24,115.51,115.59,115.61(B−ring C−5,5’),119.62,119.66,119.86,119.89(B−ring C−6,6’),131.64,131.75,131.99,132.12(B−ring C−1,1’),145.68,145.52,145.54,145.55,145.58,145.65(galloyl C−3,3’,4,4’),153.06,153.16(Ca−8a’,Cb−8a’),153.30(C−8a),153.91,153.92(Ca−5’,Cb−5’),155.86,156.04(C−7,C−7’),156.35(C−5).
Fr.2は実施例1と同様にクロマトレックスODSカラム(内径3cm,高さ30cm)で分離して、化合物2(52.2mg)を得た。
Fr.3も同様にクロマトレックスODSカラム(内径3cm,高さ30cm)で分離して、化合物3(70.5mg),化合物4(68.4mg),化合物5(30.6mg)をそれぞれ得た。化合物2〜5の物理恒数は下記の通りであった。
[α]D 29 −248.31°(c=0.1,MeOH).
IR(dry film)νmaxcm−1:3390,1694,1615,1537,1448.
UV(MeOH)λmaxnm(ε):276(10050).
MALDI−TOF−MS m/z:633[M+Na]+,649[M+K]+.
Anal.Calcd for C32H34O12・2H2O:C,59.44;H,5.92.Found:C,59.58;H,6.12.
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:0.85(3H,s,H−9’),0.95(3H,s,H−8’),1.29(1H,m,H−5b’),1.29(3H,s,H−10’),1.52(1H,brd,J=14.9,H−5a’),1.58(1H,dd,J=4.8,12.3,H−4b’),1.65(1H,brd,J=12.6,H−6’),1.73(1H,dt,J=3.0,12.8,H−2b’),1.90(2H,brd,J=12.8,H−2a’,H−4a’),2.95(1H,dd,J=2.2,17.3,H−4b),3.09(1H,m,H−4a,overlapped),3.43(1H,brs,OH−7’),3.64(1H,brd,J=2.3,H−1’),5.15(1H,brs,H−2),5.485(1H,brs,H−3),6.01(1H,s,H−6),6.67(2H,s,B−ringH−2,6),7.02(2H,s,galloyl H−2,6),8.36(1H,brs,OH−5).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:22.32(C−5’),25.73(C−9’),26.53(C−4),27.38(C−1’),28.97(C−8’,10’),39.41(C−2’),40.92(C−4’),54.69(C−6’),69.38(C−3),72.10(C−7’),75.00(C−3’),78.50(C−2),96.27(C−6),98.67(C−4a),104.24(C−8),106.68(B−ring C−2,6),110.00(galloyl C−2,6),121.66(galloyl C−1),129.92(B−ring C−1),133.34(B−ring C−4),138.72(galloyl C−4),145.82(galloyl C−3,5),146.29(B−ring C−3,5),152.32(C−8a),155.62(C−5),156.90(C−7),165.96(ester carbonyl).
[α]D29 −135.69°(c=0.1,MeOH).
IR(dry film)νmaxcm−1:3405,1693,1618,1537,1449.
UV(MeOH)λmaxnm(ε):276(9450).
MALDI−TOF−MS m/z:633[M+Na]+,649[M+K]+.
Anal.Calcd for C32H34O12・2H2O:C,58.62;H,6.00.Found:C,58.63;H,6.19.
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:1.05(3H,s,H−8’),1.21(3H,s,H−9’),1.27(3H,s,H−10’),1.53(2H,d,J=12.8,H−4’),1.60(1H,d,J=2.52,H−2’),1.60(1H,t,J=3.0,H−5’),1.71(1H,dd,J=3.0,15.1,H−6’),1.86(1H,dd,J=3.0,15.1,H−5’),1.91(1H,m,H−2’),2.95(1H,brd,J=18,H−4),3.10(1H,dd,J=5.3,18.0,H−4),3.51(1H,d,J=2.5,H−1’),4.99(1H,brs,H−2),5.51(1H,d,J=5.3,H−3),6.05(1H,s,H−6),6.71(2H,s,B−ring H−2,6),7.15(2H,s,galloyl H−2,6).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:22.464(C−4’),25.93(C−8’),27.30(C−1’),27.74(C−4),28.88(C−10’),29.89(C−9’ overlapped acetone),39.31(C−2’),40.75(C−5’),54.12(C−6’),69.24(C−3),73.42(C−7’),74.96(C−3’),80.41(C−2),96.60(C−6),99.54(C−4a),104.70(C−8),107.55(B−ring C−2,6),110.21(galloyl C−2,6),121.59(galloyl C−1),129.26(B−ring C−1),133.80(B−ring C−4),138.85(galloyl C−4),145.84(galloyl C−3,5),146.26(B−ring C−3,5),153.03(C−8a),155.69(C−5),156.89(C−7),166.42(ester carbonyl).
[α]D29 −79.18°(c=0.1,MeOH).
IR(dry film)νmaxcm−1:3409,1692,1618,1536,1448.
UV(MeOH)λmaxnm(ε):276(9880).
MALDI−TOF−MS m/z:633[M+Na]+,649[M+K]+.
Anal.Calcd for C32H34O12・3/2H2O:C,60.28;H,5.85.Found:C,60.20;H,5.94.
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:1.00(3H,s,H−8’),1.28(3H,s,H−10’),1.394(2H,m,H−4’),1.44(3H,s,H−9’),1.87(2H,d,J=1.6,13.0,H−2’),2.00(1H,m,H−6’),2.09(2H,m,H−5’),2.77(1H,t,J=1.6,H−1’),2.98(2H,d,J=3.4,H−4),5.03(1H,brs,H−2),5.51(1H,dd,J=1.4,3.4,H−3),6.07(1H,s,H−8),6.63(2H,s,B−ring H−3,5),6.98(2H,s,galloyl H−3,5).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:23.96(C−9’),26.21(C−4),28.91(C−1’),29.15(C−10’,overlapped acetone),29.89(C−8’,overlapped acetone),30.55(C−5’),35.71(C−1’),38.01(C−4’),47.23(C−6),69.05(C−3),74.48(C−3’),78.17(C−2),84.09(C−7’),98.70(C−8),101.11(C−4a),106.63(B−ring C−2,6),109.82(galloyl C−2,6),110.00(C−6),121.91(galloyl C−1),130.69(B−ring C−1),133.04(B−ring C−4),138.63(galloyl C−4),145.83(galloyl C−3,5),146.17(B−ring C−3,5),155.09(C−8a),155.82(C−5),155.96(C−7),166.11(ester carbonyl).
[α]D29 +52.17°(c=0.1,MeOH).
IR(dry film)
νmaxcm−1:3389,1692,1614,1536,1446.
UV(MeOH)λmaxnm(ε):281(13170).
MALDI−TOF−MS m/z:615[M+Na]+.
Anal.Calcd for C32H32O11・5/2H2O:C,60.28;H,5.85.Found:C,60.25;H,5.96.
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:1.30(3H,s,H−4’),1.57(3H,d,J=0.7,H−9’),1.63(3H,d,J=0.7,H−10’),1.67(2H,t,J=8.2,H−5’),2.1(2H,t,J=8.2,H−6’),2.87(1H,dd,J=2.2,17.4,H−4),3.02(1H,dd,J=4.8,17.4,H−4),5.05(1H,s,H−2),5.11(1H,m,H−7’),5.41(1H,d,J=10,H−2’),5.54(1H,m,H−3’),6.07(1H,s,H−8),6.59(1H,s,B−ring H−2,6),6.63(1H,d,J=10,H−1’),7.01(2H,s,galloyl H−2,6).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:17.59(C−9’),23.35(C−6’),25.76(C−10’),26.31(C−4),26.45(C−4’),41.65(C−5’),69.01(C−3),78.18(C−2),79.05(C−3’),96.03(C−8’),99.77(C−4a),103.86(C−6),106.63(B−ring C−2,6),109.87(galloyl C−2,6),118.25(C−1’),121.65(galloyl C−5),124.85(C−2’),125.08(C−7’),130.38(B−ring C−1),131.80(C−8’),133.10(B−ring C−4),138.73(galloyl C−4),145.82(galloyl C−3,5),146.17(B−ring C−3,5),152.82(C−7),153.17(C−5),156.40(C−8a),165.95(ester carbonyl).
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:0.62(1H,ddd,J=11.5,11.5,11.5,H−2’),0.90(3H,d,J=6.6,H−10’),1.01(3H,s,H−9’),1.08(1H,m,H−4’),1.11(1H,m,H−5’),1.28(3H,s,H−8’),1.34(1H,m,H−6’),1.57(1H,m,H−3’),1.81(1H,m,H−4’),1.82(1H,m,H−5’),2.37(1H,dt,J=2.75,11.5,H−1’),3.19(1H,br d,J=11.5,H−2’),5.76(1H,d,J=2.5,H−5),5.92(1H,d,J=2.5,H−3),7.94(1H,s,4−OH),8.17(1H,s,2−OH).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:19.20(C−9’),22.96(C−10’),28.03(C−8’),28.65(C−5’),33.42(C−3’),36.15(C−1’),36.33(C−4’),40.04(C−2’),50.25(C−6’),77.00(C−7’),96.35(C−5),96.56(C−3),105.19(C−1),156.43(C−6),157.44(C−4),158.08(C−2)
このことから化合物6の構造を結論づけた。化合物6はA環に結合したモノテルペンユニット中に複数存在するメチン炭素の配置が異なる異性体の混合物である。
各種アルデヒドとして用いた化合物及び混合物は、ペリルアルデヒド、シトロネラール、trans−2−ヘキセナール、シトラール、シンナムアルデヒド、2−ノネナール、3−ノネン−2−オン、アクロレイン(対照)、クマリン(対照)およびロガニン(対照)である。
エピガロカテキン−3−O−ガレート 2mgをサンプル管にとり、5μlの各種アルデヒドをそれぞれ加えて、アセトンで溶かし混合した。クマリンとロガニンについては、固体であるため4mgを量りとって用いた。その後各サンプルについて、窒素気流中でアセトンを留去してからサンプル管を密閉し、3日間室温で静置した後、反応の進行の有無(カテキン誘導体合成の有無)をTLC及びHPLCで確認した。
その後、サンプル管を80℃のオイルバスで5時間加熱した。各サンプルに対して再度TLC及びHPLCを実施し、反応が進行しているかをTLC及びHPLCで改めて確認した。その結果、アクロレイン、クマリン、ロガニンを除くすべてのアルデヒド類を用いた場合、室温で静置しただけでEGCgとの反応生成物が検出され、また加熱により当該反応生成物が増加することが観察された。室温反応後の順相TLCを図1に示す。図1中、レーンEはEGCgを示す。また図1中のレーン1〜10はEGCgと各種アルデヒドとの反応生成物をそれぞれ示すが、用いた各種アルデヒドとしては、レーン1はペリルアルデヒドであり、レーン2はシトロネラールであり、レーン3はtrans−2−ヘキセナールであり、レーン4はシトラールであり、レーン5はシンナムアルデヒドであり、レーン6は2−ノネナールであり、レーン7は3−ノネン−2−オンであり、レーン8はアクロレインであり、レーン9はクマリンであり、レーン10はロガニンである。
図1で示されるように、EGCgより上に極性の低い誘導体が生成していることが確認できた。
反応生成物の水−オクタノール分配について検討した。2mlのエッペンドルフチューブにエピガロカテキン−3−O−ガレート(EGCg)1mgと各種アルデヒド類(ペリルアルデヒド、シトロネラール、trans−2−ヘキセナール、シトラール、シンナムアルデヒド、2−ノネナール、3−ノネン−2−オンおよびレモングラスオイル)をそれぞれ5μl加え、アセトンで溶解した。窒素気流下で溶媒を除去後、それぞれを湯浴で80℃5時間加熱した。反応混合物に20mMリン酸緩衝液(pH=7.5)とn−オクタノールを750μlずつ加えて25℃で激しく攪拌し、遠心分離し分配した後、水層100μlを取り出し、水で1mlに希釈して紫外可視吸収スペクトルを測定した。オクタノール層は、100μlをEtOHで希釈し1mlにして同様に測定した。測定波長はエピガロカテキン−3−O−ガレートの吸収極大波長である280nmとした。3回測定した平均値をもとにしてオクタノールの吸光度/水層の吸光度を求めた。結果を表1に示す。
各種アルデヒド類との反応によって、エピガロカテキンガレートの脂溶性が向上したことが示された。
2mlエッペンドルフチューブにアセトンで溶かしたエピガロカテキン−3−O−ガレート1mgと、各種アルデヒド類(シトラール、シトロネラール、3−ノネン−2−オン、またはゲラニオール)をそれぞれ15μl加えた。これらをそれぞれ2組用意し、一組にはクエン酸1mgを加えてから軽く振り混ぜ、溶媒を除去したのちに100℃で5時間加熱した。残りの一組はクエン酸を加えずに同様に処理した。エピガロカテキン−3−O−ガレート1mgとクエン酸1mgとの混合物も同様に処理してコントロールとした。
反応混合物をメタノールに溶解し、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム−メタノール−水、80:20:1、v/v、発色:塩化鉄(III)試薬)で分析した結果を図2に示す。図2中、レーン1〜4はクエン酸を加えずに反応させたものを示し、1がシトラール、2がシトロネラール、3が3−ノネン−2−オン、4がゲラニオールとの反応を示す。一方レーン1c〜4cはクエン酸を加えたもので、1cがシトラール、2cがシトロネラール、3cが3−ノネン−2−オン、4cがゲラニオールとの反応である。エピガロカテキン−3−O−ガレートとクエン酸を混合して加熱したものもTLCの中央にEcとして示している。
いずれの化合物との反応でもクエン酸を加えることで反応が速く進行することが分かった。エピガロカテキン−3−O−ガレートとゲラニオールでは室温ではクエン酸が共存しない場合ほとんど反応が進行しないが、クエン酸共存下で加熱すると極性の低い化合物の生成が確認された。
MALDI−TOF−MS m/z:617[M+Na]+
Anal.Calcd for C32H34O11・2H2O:C,60.95;H,6.07.Found:C,60.95;H,6.09.
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:1.52(3H,brd,J=0.92,H−9’),1.58(3H,brd,J=1.2,H−10’),1.68(3H,brd,J=1.2,H−4’),1.86(2H,t,J=7.2,H−5’),1.99(2H,m,H−6’),2.89(1H,dd,J=2.5,17.6,H−4),3.03(1H,dd,J=4.8,17.6,H−4),3.56(1H,dd,J=6.0,14.0,H−1’),3.64(1H,dd,J=7.6,14.0,H−1’),5.05(1H,m,H−2,overlapped),5.05(1H,m,H−7’,overlapped),5.12(1H,dt,J=1.2,6.0,H−2’),5.55(1H,m,H−3),5.98(1H,d,J=2.3,H−8),6.04(1H,d,J=2.3,H−6),6.60(2H,brs,B−ring H−2,6),6.93(1H,brs,galloyl H−6).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ: 16.32(C−4’),17.65(C−9’),29.49(C−1’),23.62(C−1’),25.52(C−10’),26.50(C−4),27.42(C−6’),40.49(C−5’),68.98(C−3),77.89(C−2),95.73(C−8),96.34(C−6),99.08(C−4a),106.65(B−ring C−2,6),110.41(galloyl C−6),121.11(galloyl C−1),124.06(galloyl C−2),124.89(C−2’),125.29(C−7’),130.58(B−ring C−1),131.81(C−8’),133.05(B−ring C−4),134.26(C−3’),137.38(galloyl C−4),142.79(galloyl C−5),144.75(galloyl C−3),146.12(B−ring C−3,5),156.94(C−8a),157.36(C−5),157.6(C−7),167.02(galloyl carbonyl).
MALDI−TOF−MS m/z:617[M+Na]+.
Anal.Calcd for C32H34O11・2H2O:C,60.95;H,6.07.Found:C,61.03;H,6.10.
1H−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:1.53(3H,brd,J=0.9,H−9’),1.59(3H,brd,J=1.1,H−10’),1.70(3H,brd,J=1.1,H−4’),1.94(2H,m,H−5’),2.00(2H,m,H−6’),2.90(1H,dd,J=2.1,15.0,H−4a),3.02(1H,m,H−4b),3.32(1H,dd,J=6.5,14.0,H−1a’),3.42(1H,dd,J=7.6,14.0,H−1b’),5.07(1H,m,H−2,overlapped),5.07(1H,m,H−7’,overlapped),5.34(1H,m,H−2’),5.54(1H,m,H−3),6.10(1H,s,H−6),6.66(2H,brs,B−ring H−2,6),7.01(1H,brs,galloyl H−2,6).
13C−NMR(500MHz,acetone−d6)δ:16.28(C−4’),17.66(C−9’),22.54(C−1’),25.77(C−10’),26.70(C−4),27.46(C−6’),40.48(C−5’),69.20(C−3),77.87(C−2),96.16(C−6),98.89(C−4a),106.54(B−ring C−2,6),107.76(C−8),109.95(galloyl C−6),121.81(galloyl C−1),124.91(C−2’),125.33(C−7’),130.92(B−ring C−1),131.33(C−8’),132.92(B−ring C−4),134.13(C−3’),138.67(galloyl C−4),145.81(galloyl C−3,5),146.19(B−ring C−3,5),154.37(C−8a),154.54(C−5),154.77(C−7),166.10(galloyl carbonyl).
(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレートと各種アルデヒド類との反応生成物について、水とトリグリセライド分配後のオクタノール層のジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性を比較した。トリグリセライドとしては構成脂肪酸の85%をオレイン酸が占めるツバキ油を用いた。
(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレート2mgを2mlエッペンドルフチューブにとり、5μlの各種アルデヒド及び関連化合物を加え、さらにアセトン0.1mlに溶かして均一にした後、アセトンを窒素気流下で除去した。各反応は、室温で3日間静置するか、または80℃の水浴上で5時間加熱する2つの条件下でそれぞれ行った。反応後、各チューブに20mMリン酸緩衝液(pH7.5)0.75mlとツバキ油0.75mlとを加えてよく攪拌し、次いで遠心分離した。得られた油層20μlに、980μlのn−オクタノールを加えて希釈し、そのうち100μlを用いてDPPHラジカル消去活性試験を行った。
DPPH溶液としては、DPPHを1.5mg正確に量りとり、その試料に19mlのエタノールを加えて溶解させ、完全に溶けた状態のものを使用した。活性試験には96穴マイクロプレートを用いた。なおn−オクタノール980μlとツバキ油20μlの混合物にエタノール50μlを加えたものをブランクとした。さらに、ブランクのエタノールの代わりにDPPH溶液50μlを加えたものをコントロールとした。被験試料溶液を、それぞれ25、50、75または100μlずつマイクロプレートに入れ、そこにDPPH溶液を50μl加え、次いで25℃で30分攪拌してからマイクロプレートリーダーを用いて490nmにおける吸光度を測定した。コントロールの吸光度と比べて測定溶液の吸光度が何%下がったかによって試料のDPPH消去能を算出した。なおすべての測定は3回重複で行い、それらの平均値を消去活性とした。表2に油層100μlを用いた場合の消去活性を示す。
また表2で示されるように、これらの反応生成物はDPPH消去活性を示すことが分かった。特に室温での反応生成物、加熱して得られる反応生成物共に活性が強かったのはシトラールとレモングラスオイルを用いた場合であり、レモングラスの精油成分のほとんどがシトラールであることから、シトラールとエピガロカテキン−3−O−ガレートとが反応して生成した化合物は、エピガロカテキン−3−O−ガレートよりも油に溶けやすい性質を持っていることが分かった。エピガロカテキン−3−O−ガレート自体は、加熱した場合であっても油層において著しいDPPH活性を示さなかったことから、改めて油層には溶けにくいことが分かった。
(−)−エピガロカテキン−3−O−ガレートと、実施例2および3で得られた化合物2〜6とをそれぞれ2mgずつエッペンドルフチューブに取り、いったんアセトンに溶解した後、窒素気流下で溶媒留去した。それぞれのチューブにpH7.5の20mMリン酸緩衝液0.75mlとツバキ油0.75mlを加えてよく攪拌した後、遠心分離した。油層は実施例5と同様の操作でDPPH消去活性を比較した。結果を表3に示す。
Claims (5)
- カテキンまたはプロアントシアニジンと、式(I)
(式中、
R1は、炭化水素基を示し;
R2は、水素または炭化水素基を示し;
R3は、水素または炭化水素基を示し;
R4は、水酸基を示し、あるいは
R3およびR4は、一緒になってケト基を示す)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする、脂溶性カテキンまたは脂溶性プロアントシアニジンの製造方法。 - 混合後、さらに80℃〜120℃で加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- さらに酸を加えることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 酸が、クエン酸である、請求項3に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法で製造される、脂溶性カテキンまたは脂溶性プロアントシアニジン。
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