JP2006265250A - ルテオリン6−c−グルコシドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
ササ及び/又はタケの葉を原料にして優れた抗酸化活性を有する組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】
ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、クロロフィルを除去した後、ジエチルエーテル等で液・液分配を行わせ、水層の液を取り出し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液を採取し、上記ジエチルエーテル等で液・液分配後の水層又は上記酢酸エチル層からルテオリン6−C−グルコシドを得る。低級脂肪族アルコール抽出液又は分画液を加水分解することで収率を上げることができる。
【選択図】図1
ササ及び/又はタケの葉を原料にして優れた抗酸化活性を有する組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】
ササ及び/又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、クロロフィルを除去した後、ジエチルエーテル等で液・液分配を行わせ、水層の液を取り出し、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液を採取し、上記ジエチルエーテル等で液・液分配後の水層又は上記酢酸エチル層からルテオリン6−C−グルコシドを得る。低級脂肪族アルコール抽出液又は分画液を加水分解することで収率を上げることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、ササの葉を原料として、優れた抗酸化活性を有するルテオリン6−C−グルコシドを製造する方法に関するものである。
植物由来のルテオリン6−C−グルコシド(イソオリエンチン)が肝細胞増殖因子や神経成長因子等の成長因子産生増強効果があることは、例えば、国際特許公開WO01/076614号公報(特許文献1)に記載されており、同公報には、タケの葉粉末に対し抽出溶媒(たとえば、水)を加えて抽出し、抽出物の凍結乾燥物を調製し、アルコール含有飲料を調製するに当り、当該乾燥物を0.1μg/mlとなるように添加することにより、イソオリエンチンを100μg/ml含むアルコール含有飲料を調製できる旨記載されている。しかしながら、イソオリエンチンを単離することについては記載がない。
また、ルテオリン6−C−グルコシド(イソオリエンチン)等のC−グリコシルフラボン類がソバの芽生えから採取し得ることが、「日本食品科学工学会誌」第50巻第1号(2003年1月)32−34頁(非特許文献1)に記載されている。しかし、この方法では4種のC−グリコシルフラボン類の混合物が取得されるに過ぎない。また、ソバの芽生えという特殊な原料を使用するためコストがかさむという問題がある。
本発明は、ササ又はタケの葉を原料にして、卓越した抗酸化活性を有する化合物であるルテオリン6−C−グルコシドを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ルテオリン6−C−グルコシドを製造するための植物としてササ又はタケ類に注目した。ササの仲間は、オカメザサ属、ササ属、アズマザサ属等から成り、タケの仲間は、マダケ属、ナリヒラダケ属、トウチク属から成っている。中でもササ類は、温帯や亜寒帯に広く分布する植物で、ササ属は日本を分布の中心とし、全国に種類、量ともに広く分布する。
本発明によれば、ササ又はタケの葉からルテオリン6−C−グルコシドを製造する方法として、
(1)ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数3以下のアルコールをいう、以下同じ)、アセトン、アセトニトリル、熱水又は希酸溶液による抽出液から、当該溶液を蒸発するとともに水に置換又は加水して濾過するか又は石油エーテルで液・液分配を行わせて水層の液を取り出すことでクロロフィルを除去した後、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液ならびに水層、ジエチルエーテル層を採取しササ葉由来のルテオリン6−C−グルコシドを得ることを特徴とする製造方法、
(2)ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、水層の液を採取し、該層からルテオリン6−C−グルコシドを得ることを特徴とするルテオリン6−C−グルコシドの製造方法
(3)ササ葉及び/又はタケ葉を低級脂肪族アルコールで抽出し、前記抽出液を濃縮し、水に置換又は加水して濾過することによりクロロフィルを濾去し、濾去後の水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層からルテオリン6−C−グルコシドを採取することを特徴とするルテオリン6−C−グルコシドの製造方法、並びに、
(4)ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液を加水分解した液、又は分画した液を加水分解してルテオリン6−C−グルコシドの含量を増大させた液からルテオリン6−C−グルコシドを採取する上記(1)〜(3)のルテオリン6−C−グルコシドの製造方法、
が提供される。
(1)ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数3以下のアルコールをいう、以下同じ)、アセトン、アセトニトリル、熱水又は希酸溶液による抽出液から、当該溶液を蒸発するとともに水に置換又は加水して濾過するか又は石油エーテルで液・液分配を行わせて水層の液を取り出すことでクロロフィルを除去した後、該水層の液に酢酸エチルを添加して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液ならびに水層、ジエチルエーテル層を採取しササ葉由来のルテオリン6−C−グルコシドを得ることを特徴とする製造方法、
(2)ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、水層の液を採取し、該層からルテオリン6−C−グルコシドを得ることを特徴とするルテオリン6−C−グルコシドの製造方法
(3)ササ葉及び/又はタケ葉を低級脂肪族アルコールで抽出し、前記抽出液を濃縮し、水に置換又は加水して濾過することによりクロロフィルを濾去し、濾去後の水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層からルテオリン6−C−グルコシドを採取することを特徴とするルテオリン6−C−グルコシドの製造方法、並びに、
(4)ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液を加水分解した液、又は分画した液を加水分解してルテオリン6−C−グルコシドの含量を増大させた液からルテオリン6−C−グルコシドを採取する上記(1)〜(3)のルテオリン6−C−グルコシドの製造方法、
が提供される。
本発明の製造方法における目的化合物は、ルテオリン6−C−グルコシド(イソオリエンチンとも称される)である。ルテオリン6−C−グルコシド自体は、下記の化学式で表される既知の化合物ではあるが、後述する実施例に示すとおり、ササ又はタケの葉から製造することは知られていない。また、ササ又はタケの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドは、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加え、脂質過酸化物抑制活性にも優れているだけでなく、驚くべきことに、極めて優れた褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害活性を有する。しかも、その活性は、一般に知られているPPO阻害剤、他のフラボノイド類とは比較にならないほどに優れたものである。ササ又はタケの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドがこのような優れた特性を有することは、従来全く知見がなく、誰もが予想し得ないところであった。
上記化合物の1H−NMRの値は、δ=3.41(m,1H,5’’−H),3.44−3.49(m,2H,3’’,4’’−H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H,6’’−CHH),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H,6’’−CHH),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H,2’’−H),4.90(m,1H,1’’−H),6.49(s,1H,8−H),6.56(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H)である。
以下、本発明の製造方法に関し、原料及び各工程、並びに得られるルテオリン6−C−グルコシドについて、以下に順次詳述する。
(原料)
本発明方法において好適な原料となるササは、クマイザサ、チマキザサ、クマザサ、チシマザサ、ミヤコザサ、ヤクシマダケ、スズタケ等その種類は問わない。これらのササの葉の部分を、水洗した後、必要に応じて適当な大きさに細断し乾燥(水分除去)して使用する。ササ葉は、粉末にしてもよく、枯れさせてもよい。本発明方法ではササのほかタケの葉も同様に使用可能であるが、以下はササ葉を使用する場合について説明する。
本発明方法において好適な原料となるササは、クマイザサ、チマキザサ、クマザサ、チシマザサ、ミヤコザサ、ヤクシマダケ、スズタケ等その種類は問わない。これらのササの葉の部分を、水洗した後、必要に応じて適当な大きさに細断し乾燥(水分除去)して使用する。ササ葉は、粉末にしてもよく、枯れさせてもよい。本発明方法ではササのほかタケの葉も同様に使用可能であるが、以下はササ葉を使用する場合について説明する。
本発明方法では、上記の原料を用いて、図1に例示するようなフローで抽出及び液・液分配を行う。各工程の具体例は、以下のとおりである。
(第1工程:アルコール抽出・蒸発乾固・粗抽出液の調製)
ササ葉1gに対して10倍容の低級脂肪族アルコールで抽出する。抽出は暗所で24時間放置し、24時間後濾過する。この操作を4回繰り返し、得られた濾液をあわせ、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、試料重量の2倍容の純水に溶解する。このようにして得られた溶液を粗抽出液とする。
(第1工程:アルコール抽出・蒸発乾固・粗抽出液の調製)
ササ葉1gに対して10倍容の低級脂肪族アルコールで抽出する。抽出は暗所で24時間放置し、24時間後濾過する。この操作を4回繰り返し、得られた濾液をあわせ、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、試料重量の2倍容の純水に溶解する。このようにして得られた溶液を粗抽出液とする。
(第2工程:石油エーテルによる液・液分配)
上記の粗抽出液に対して同量の石油エーテルを加え、分液ロートにて水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層と水層とを得る。石油エーテル層にはクロロフィルが含まれるので廃棄する。
上記の粗抽出液に対して同量の石油エーテルを加え、分液ロートにて水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層と水層とを得る。石油エーテル層にはクロロフィルが含まれるので廃棄する。
(第3工程:ジエチルエーテルによる液・液分配)
次に、得られた水層に該水層と同量のジエチルエーテルを添加し、分液ロートにて水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層、水層を得る。そして、ジエチルエーテル層をロータリーエバポレーターで乾固する。
次に、得られた水層に該水層と同量のジエチルエーテルを添加し、分液ロートにて水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層、水層を得る。そして、ジエチルエーテル層をロータリーエバポレーターで乾固する。
(第4工程:酢酸エチルによる液・液分配)
第3工程で得られた水層に、該水層と同量の酢酸エチルを加え、分液ロートにて、水・酢酸エチル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層、水層を得る。各層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、メタノールに置換する。
第3工程で得られた水層に、該水層と同量の酢酸エチルを加え、分液ロートにて、水・酢酸エチル溶媒の液・液分配を行う。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層、水層を得る。各層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、メタノールに置換する。
(組成物に含まれる有効成分)
上述のようにして得たジエチルエーテル層には、主にトリシンが含まれ、酢酸エチル層には、主にルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド及びトリシンが含まれる。一方、水層には、主にルテオリン6−C−グルコシドが含まれる。
上述のようにして得たジエチルエーテル層には、主にトリシンが含まれ、酢酸エチル層には、主にルテオリン6−C−アラビノシド、ルテオリン6−C−グルコシド及びトリシンが含まれる。一方、水層には、主にルテオリン6−C−グルコシドが含まれる。
(ルテオリン6−C−グルコシドの単離・精製方法)
したがって、水層から目的のルテオリン6−C−グルコシドを得るには以下に述べる方法が採用される。また、酢酸エチル層からルテオリン6−C−グルコシドを得るには水層と同様に以下の方法が採用される。ここで、各層に含まれるルテオリン6−C−グルコシド単離・精製及び同定について詳細に説明する。
したがって、水層から目的のルテオリン6−C−グルコシドを得るには以下に述べる方法が採用される。また、酢酸エチル層からルテオリン6−C−グルコシドを得るには水層と同様に以下の方法が採用される。ここで、各層に含まれるルテオリン6−C−グルコシド単離・精製及び同定について詳細に説明する。
メタノールに置換した上記水層又は酢酸エチル層2mlを、セファデックス(Sephadex)LH−20をガラス管(内径2cm、高さ90cm)に充填したカラムクロマトグラフィーにアプライする。溶離液に60%メタノールを用い、フラクションコレクターで8mlずつ分画する。それぞれのフラクションについて波長350nm、330nm及び250nmにおける吸光度に従い分画し、ピークを得たら、該当ピークを濃縮しフォトダイオードアレイ検出器を用いたHPLCによる分取を行う。
この際のHPLCの条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(21.5mmI.D.×300mm)
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=7/2/1(v/v/v)
流速:6.0ml/min
オーブン温度:40℃
この際のHPLCの条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(21.5mmI.D.×300mm)
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=7/2/1(v/v/v)
流速:6.0ml/min
オーブン温度:40℃
なお、水層、酢酸エチル層から後述する加水分解によっても、目的物質を得ることができる。すなわち、各層を加水分解後ジエチルエーテルで液・液分配した水層について、酸や遊離糖を除くためにXADカラムに供し、水洗後メタノールで回収し、これを濃縮し上記の単離・精製手順を行う方法でもササ葉を原料として目的物質を製造することができる。
(物質の同定)
得られる組成物に含まれる有効成分の化合物は、吸収スペクトル分析、質量分析及びNMR分析等により同定することが出来る。以下、本発明者らが実施した同定法について詳述する。
<吸収スペクトル法>
精製物をメタノールに溶解し、450〜230nmにおけるUV・VIS吸収スペクトルを測定する。すなわち、試料のメタノール溶液を測定した後、ナトリウムメチラート(NaOMe)、塩化アルミニウム(AlCl3)、12%塩酸(12%HCl)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、ホウ酸(H3BO3)の各種試薬を添加し吸収スペクトルを測定する。
その結果は、下記の表1に示すとおりである。なお、表1には、ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin 6−C−glucoside)のほか、参照例として、ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin 6−C−arabinoside)及びトリシン(Tricin)のデータも併記している。
得られる組成物に含まれる有効成分の化合物は、吸収スペクトル分析、質量分析及びNMR分析等により同定することが出来る。以下、本発明者らが実施した同定法について詳述する。
<吸収スペクトル法>
精製物をメタノールに溶解し、450〜230nmにおけるUV・VIS吸収スペクトルを測定する。すなわち、試料のメタノール溶液を測定した後、ナトリウムメチラート(NaOMe)、塩化アルミニウム(AlCl3)、12%塩酸(12%HCl)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、ホウ酸(H3BO3)の各種試薬を添加し吸収スペクトルを測定する。
その結果は、下記の表1に示すとおりである。なお、表1には、ルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin 6−C−glucoside)のほか、参照例として、ルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin 6−C−arabinoside)及びトリシン(Tricin)のデータも併記している。
吸収スペクトルによるルテオリン6−C−グルコシドの同定は、次のような手順による。すなわち、NaOMe添加によってBd.Iが45〜65nmの深色移動することから、3位の遊離水酸基の欠如又は酸素化(OR)が示唆され、また、Bd.Iの極大吸収が増大することより、4’位に遊離水酸基の存在することがわかる。
AlCl3添加によってBd.Iが深色移動することより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。AlCl3+HCl添加によってAlCl3のBd.Iより浅色移動するが元のBd.Iに戻りきらないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在し、さらにB環中に隣接する遊離水酸基の存在する。そして、NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから7位に遊離水酸基が存在する。NaOAc+H3BO3添加によってBd.Iから12〜36nmの深色移動することより、3’,4’位に遊離水酸基が存在することがわかる。
以上のことより、3’,4’,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格のルテオリンであることが、そして、Bd.IIに2つの極大が見られることから6位又は8位に結合糖が存在することがわかる。
AlCl3添加によってBd.Iが深色移動することより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基ないしは隣接する遊離水酸基が存在する。AlCl3+HCl添加によってAlCl3のBd.Iより浅色移動するが元のBd.Iに戻りきらないことより、3位又は5位又はその両方に遊離水酸基が存在し、さらにB環中に隣接する遊離水酸基の存在する。そして、NaOAc添加によりBd.IIが5〜20nmの深色移動することから7位に遊離水酸基が存在する。NaOAc+H3BO3添加によってBd.Iから12〜36nmの深色移動することより、3’,4’位に遊離水酸基が存在することがわかる。
以上のことより、3’,4’,5,7位に遊離水酸基が存在するフラボン骨格のルテオリンであることが、そして、Bd.IIに2つの極大が見られることから6位又は8位に結合糖が存在することがわかる。
<質量分析>
精製した試料について、パーセプティブ社製質量分析計Marinerを用い、分子量を正イオンモード(POS)で測定する。条件は下記の表2に示すとおりである。(なお、表2でも参照例として、ルテオリン6−C−アラビノシド及びトリシンのデータも併記している。)
[質量分析条件]
内部標準:4−acetamidophenol(m/z152.07),reserpine(m/z609.28)
インターフェイス:Electrospray ionization(ESI)
温度:室温(25℃)
精製した試料について、パーセプティブ社製質量分析計Marinerを用い、分子量を正イオンモード(POS)で測定する。条件は下記の表2に示すとおりである。(なお、表2でも参照例として、ルテオリン6−C−アラビノシド及びトリシンのデータも併記している。)
[質量分析条件]
内部標準:4−acetamidophenol(m/z152.07),reserpine(m/z609.28)
インターフェイス:Electrospray ionization(ESI)
温度:室温(25℃)
質量分析によるルテオリン6−C−グルコシドの同定では、上記吸収スペクトルで糖の結合が示唆されたが、ルテオリン骨格であることを考慮するとm/zから結合糖はヘキソース1つであることがわかる。またイオン化の際に断片化を生じていないことから、糖とアグリコンの結合はC結合であることがわかる。
<NMR分析>
それぞれ、十分に乾燥した試料を2〜10mg計量採取し、NMR測定管に移して重メタノールもしくは重ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解する。1H−NMRをJeolJNM−A400(400MHz)にて測定する。(内部標準:CD3OD,3.30,DMSO−d6,2.49)
それぞれ、十分に乾燥した試料を2〜10mg計量採取し、NMR測定管に移して重メタノールもしくは重ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解する。1H−NMRをJeolJNM−A400(400MHz)にて測定する。(内部標準:CD3OD,3.30,DMSO−d6,2.49)
1H−NMRによるルテオリン6−C−グルコシドの測定値は以下のとおりである。
δ=3.41(m,1H,5’’−H),3.44−3.49(m,2H,3’’,4’’−H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H,6’’−CHH),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H,6’’−CHH),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H,2’’−H),4.90(m,1H,1’’−H),6.49(s,1H,8−H),6.56(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H).
δ=3.41(m,1H,5’’−H),3.44−3.49(m,2H,3’’,4’’−H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H,6’’−CHH),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H,6’’−CHH),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H,2’’−H),4.90(m,1H,1’’−H),6.49(s,1H,8−H),6.56(s,1H,3−H),6.89(d,J=8.4Hz,1H,5’−H),7.36(br.d,J=2.0Hz,1H,2’−H),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz,1H,6’−H).
芳香族由来と思われるシグナルが5種類それぞれ1H観測される。そのうちδ=6.89(d,J=8.4Hz),7.36(br.d,J=2.0Hz),7.37(dd,J=2.0,8.4Hz)の3種のシグナルの結合定数から、3置換ベンゼンの存在が推定され、置換位置は、オルト及びパラであると考えられる。また、その他2種の芳香族プロトンδ=6.49(s),6.56(s)は一重線であるが、その化学シフトと前述の3種の化学シフトを既知化合物であるルテオリンと比較すると、かなりよい一致を示すので、アグリコン部はルテオリンであると推定される。ただし、ルテオリンの6位に相当するシグナルは観測されないので、6位に何らかの置換基の存在が示唆され先の吸収スペクトルの結果によく一致する。
次に、δ=3.41(m,1H),3.44−3.49(m,2H),3.72(dd,J=5.6,12.4Hz,1H),3.86(dd,J=2.8,12.4Hz,1H),4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz,1H),4.90(m,1H)のシグナルにより、糖の存在が示唆される。アノマー位(1’’位)のプロトン4.90(m)に隣接すると考えられるプロトン4.16(ddd,J=2.8,9.6,9.6Hz)の結合定数より、2’’位は二つの隣接するプロトンとアキシアル−アキシアルの関係にあると考えられる。すなわち、糖部分はβ結合にてアグリコン部に結合していると推定される。また、その化学シフトがO−グルコシドよりも高磁場シフトしていることから、C−グリコシル化しているものと考えられ、先の質量分析の結果に一致する。糖部分のシグナルの化学シフトと結合定数はグルコースのものとよい対応を示すことから糖部分はグルコースであると推定される。
以上、アグリコン部、糖部を総合し、先の吸収スペクトルと質量分析結果とをあわせて考慮した結果、この化合物はルテオリン6−C−グルコシドと決定することができる。
以上、アグリコン部、糖部を総合し、先の吸収スペクトルと質量分析結果とをあわせて考慮した結果、この化合物はルテオリン6−C−グルコシドと決定することができる。
本発明のルテオリン6−C−グルコシドの製造方法によれば、日本各地に生育し容易に入手できるササ又はタケの葉を原料とするため、原料のコストが安いという利点がある。さらに、得られたルテオリン6−C−グルコシドは、DPPHラジカル消去活性、スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性(SOD様活性)、脂質過酸化抑制効果等に優れており、しかも、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害効果が極めて大きいという利点を有する。
したがって、本発明方法により製造されるルテオリン6−C−グルコシドは、医薬品、化粧品、食品等の分野で有用である。また、一般に、ルテオリン配糖体には、抗酸化の他に、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等が報告されており、ルテオリン6−C−グルコシドにも、本発明者らが確認した抗酸化活性のほかに、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等も期待される。
したがって、本発明方法により製造されるルテオリン6−C−グルコシドは、医薬品、化粧品、食品等の分野で有用である。また、一般に、ルテオリン配糖体には、抗酸化の他に、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等が報告されており、ルテオリン6−C−グルコシドにも、本発明者らが確認した抗酸化活性のほかに、抗炎症、ガン予防、抗不整脈作用等も期待される。
以下に、本発明方法の実施例及び比較例を詳述する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその範囲が限定されるものではない。なお、例中の%は特に断らない限り重量%を意味する。
なお、抗酸化活性の測定は次のように実施した。
なお、抗酸化活性の測定は次のように実施した。
1.DPPHラジカル消去活性
安定なラジカルであるDPPHラジカルに対するラジカル消去活性について検討した。
0.5mMのDPPHラジカル・エタノール溶液100μl、試料100μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。それぞれを下記条件のESRに供し、ラジカルの消去率を(1−試料値/ブランク値)×100として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:40μT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
安定なラジカルであるDPPHラジカルに対するラジカル消去活性について検討した。
0.5mMのDPPHラジカル・エタノール溶液100μl、試料100μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。それぞれを下記条件のESRに供し、ラジカルの消去率を(1−試料値/ブランク値)×100として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:40μT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
2.スーパーオキシドアニオンラジカル消去活性(SOD様活性)
ヒポキサンチンを基質とし、キサンチンオキシダーゼ(XOD)の反応によるスーパーオキシドアニオンラジカル発生系を用い、SOD様活性を測定した。この測定では、原液DMPO(ラボテックNH−687)15μl、5mMのHypoxanthine(SIGMA H−9377)50μl、5.5mMのDTPA(同仁化学347−01141)35μl、試料50μl、0.4U/mlのXOD(SIGMA X−4376)50μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。それぞれを下記条件のESRに供し、スーパーオキシドアニオンラジカルの消去率を(1−試料値/ブランク値)×100(%)として求めた。
Field:335±5mT
Power:4mW
Modulation Width:0.079mT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
ヒポキサンチンを基質とし、キサンチンオキシダーゼ(XOD)の反応によるスーパーオキシドアニオンラジカル発生系を用い、SOD様活性を測定した。この測定では、原液DMPO(ラボテックNH−687)15μl、5mMのHypoxanthine(SIGMA H−9377)50μl、5.5mMのDTPA(同仁化学347−01141)35μl、試料50μl、0.4U/mlのXOD(SIGMA X−4376)50μlの順に小ワッセルマンに採取し混合した。すばやく攪拌し、偏平セルに吸い上げてキャビティに挿入し、一定時間後(45秒)にESR装置(JeolJES−FR30)に装填し測定を開始した。ブランクには超純水又はアセトニトリルを用いた。それぞれを下記条件のESRに供し、スーパーオキシドアニオンラジカルの消去率を(1−試料値/ブランク値)×100(%)として求めた。
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Modulation Width:0.079mT
Sweep Time:2min
Time const:0.1sec
Amp:250
3.脂質過酸化抑制効果
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、試料1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。試料はササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールを試料の代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
生じた過酸化脂質の過酸化物価(POV)を常法にしたがって測定し、抗酸化剤が無い状態のコントロールのPOVを0%とし、試料の脂質過酸化抑制率を求めた。
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、試料1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。試料はササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールを試料の代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
生じた過酸化脂質の過酸化物価(POV)を常法にしたがって測定し、抗酸化剤が無い状態のコントロールのPOVを0%とし、試料の脂質過酸化抑制率を求めた。
(1)組成物の調製
原料のササ葉として北海道に自生しているクマイザサ(Sasa senanensis)の葉(採取地:網走市葉八坂)を用い、これを図1に示すような手順で、以下のように処理し、液状の組成物を得た。まず、水洗したササ葉1gに5倍容のメタノールを加え浸漬、抽出した。暗所で24時間放置して抽出した後、濾過した。次いで、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、ササ葉重量の2倍容の純水に溶解した。得られた水溶液を粗抽出液とした。
上記の粗抽出液に対して、等量の石油エーテルを加え、水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層及び水層を得た。得られた水層を用い、水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層と水層とを得た。得られた水層を採取してこれに酢酸エチルを加え、水・酢酸エチルの液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層及び水層を得た。
置換した各層の液状組成物を用い、フェノール物質の定量及び抗酸化活性の測定を行った。
原料のササ葉として北海道に自生しているクマイザサ(Sasa senanensis)の葉(採取地:網走市葉八坂)を用い、これを図1に示すような手順で、以下のように処理し、液状の組成物を得た。まず、水洗したササ葉1gに5倍容のメタノールを加え浸漬、抽出した。暗所で24時間放置して抽出した後、濾過した。次いで、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、ササ葉重量の2倍容の純水に溶解した。得られた水溶液を粗抽出液とした。
上記の粗抽出液に対して、等量の石油エーテルを加え、水・石油エーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、石油エーテル層及び水層を得た。得られた水層を用い、水・ジエチルエーテル溶媒の液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、ジエチルエーテル層と水層とを得た。得られた水層を採取してこれに酢酸エチルを加え、水・酢酸エチルの液・液分配を行った。この操作を2〜3回繰り返し行い、酢酸エチル層及び水層を得た。
置換した各層の液状組成物を用い、フェノール物質の定量及び抗酸化活性の測定を行った。
(2)ルテオリン6−C−グルコシドの単離・精製
上記の組成物から、次のようにしてルテオリン6−C−グルコシドを単離し精製した。
水層及び酢酸エチル層をロータリーエバポレーターでそれぞれ濃縮し、メタノールに置換した各層2mlを、カラムクロマトグラフィー(セファデックスLH−20)をガラス管(内径2cm、高さ90cm)に充填したカラムクロマトグラフィーにアプライした。溶離液に60%メタノールを用い、フラクションコレクターで8mlずつ分画した。それぞれのフラクションについて波長350、330及び250nmにおける吸光度に従い分画し、ピークを得たら、該当ピークを濃縮し、フォトダイオードアレイ検出器を用いたHPLCによる分取を行い目的物質を得た。このときのHPLCの条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(21.5mmI.D.×300mm)
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=7/2/1(v/v/v)
流速:6.0ml/min
オーブン温度:40℃
上記の組成物から、次のようにしてルテオリン6−C−グルコシドを単離し精製した。
水層及び酢酸エチル層をロータリーエバポレーターでそれぞれ濃縮し、メタノールに置換した各層2mlを、カラムクロマトグラフィー(セファデックスLH−20)をガラス管(内径2cm、高さ90cm)に充填したカラムクロマトグラフィーにアプライした。溶離液に60%メタノールを用い、フラクションコレクターで8mlずつ分画した。それぞれのフラクションについて波長350、330及び250nmにおける吸光度に従い分画し、ピークを得たら、該当ピークを濃縮し、フォトダイオードアレイ検出器を用いたHPLCによる分取を行い目的物質を得た。このときのHPLCの条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel ODS−80Ts(21.5mmI.D.×300mm)
移動相:水/アセトニトリル/メタノール=7/2/1(v/v/v)
流速:6.0ml/min
オーブン温度:40℃
上記のごとく、ササ葉から抽出し同定したルテオリン6−C−グルコシドの安定性を調べる目的で、耐熱性及び耐光性の試験を行った。耐熱性試験は100℃の条件で行い、耐光性試験は紫外線照射により行った。それぞれの試験において、比較試料としてルテオリン7−O−グルコシドを用いた。
耐熱性試験の結果を図2及び図4に、耐光性試験の結果を図3及び図5に示す。その結果、図2及び図4に示すように、100℃における耐熱性では、時間経過と共に残存率の減少傾向がみられたが、ルテオリン6−C−グルコシドはルテオリン7−O−グルコシドに比べても安定性が高かった。抗酸化活性は両試料ともに大幅な低下は見られなかった。また、耐光性についても、図3及び図5に示すように、紫外線照射による大きな変化は認められなかった。
耐熱性試験の結果を図2及び図4に、耐光性試験の結果を図3及び図5に示す。その結果、図2及び図4に示すように、100℃における耐熱性では、時間経過と共に残存率の減少傾向がみられたが、ルテオリン6−C−グルコシドはルテオリン7−O−グルコシドに比べても安定性が高かった。抗酸化活性は両試料ともに大幅な低下は見られなかった。また、耐光性についても、図3及び図5に示すように、紫外線照射による大きな変化は認められなかった。
この結果より、ササ葉由来のルテオリン6−C−グルコシドは100℃では壊れにくく、実用上十分な熱安定性を有すること、紫外線に対する安定性が高く耐光性にも優れていること、がわかった。下記の表3に、上記化合物とその他の類似化合物の精製品の抗酸化活性をまとめて示す。
なお、表3中の油脂過酸化抑制率の測定は次のように行った。
<油脂過酸化抑制率の測定>
(1)試料油脂の調整
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、試料1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。試料はササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールを試料の代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
(2)POV検定
POV検定は、日本油脂学会による酸化油脂中の過酸化物価の測定法に従い、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)が酸性条件下で還元される反応に基づき、遊離されるヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法で行った。
重クロム酸カリウムを純水に溶解し、0.01N重クロム酸カリウム溶液を作成する。このとき、重クロム酸カリウム溶液のファクター(f=採取量/理論値)を求めておいた。ヨウ化カリウム1gを純水5mlに溶解させた。そこに0.01N重クロム酸カリウム溶液20ml、塩酸5mlを加え、撹拌後栓をして5分間暗所に放置した。5分後、純水300mlを加え、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。褐色が消えかかったら、1%澱粉指示薬を加え、青色が完全に消失するまで滴定した。滴定値がVmlのとき、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクターは、F=20×f/Vで求め、滴定を行った。
上述のように調製した試料油脂1gを採取し、クロロホルム−氷酢酸混液(3:2)25ml、飽和ヨウ化カリウム溶液1mlを加え、すぐに撹拌し、1分間暗所に放置した。反応を止めるために純水75mlを加えた。2層に分かれる上層の赤紫色の消失を終点とし、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。空試験には純水1gを用いて行った。
<油脂過酸化抑制率の測定>
(1)試料油脂の調整
4%リノール酸メチル・メタノール溶液10ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)10mlを遠沈管に採取し、試料1ml加え、オーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。試料はササ葉1g/100mlの濃度になるように調製した。ブランクとしてメタノール、対象として20ppmトコフェロールを試料の代わりに加え、同様にオーブンで55℃、48時間加熱処理し、過酸化脂質を生成させた。
(2)POV検定
POV検定は、日本油脂学会による酸化油脂中の過酸化物価の測定法に従い、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)が酸性条件下で還元される反応に基づき、遊離されるヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法で行った。
重クロム酸カリウムを純水に溶解し、0.01N重クロム酸カリウム溶液を作成する。このとき、重クロム酸カリウム溶液のファクター(f=採取量/理論値)を求めておいた。ヨウ化カリウム1gを純水5mlに溶解させた。そこに0.01N重クロム酸カリウム溶液20ml、塩酸5mlを加え、撹拌後栓をして5分間暗所に放置した。5分後、純水300mlを加え、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。褐色が消えかかったら、1%澱粉指示薬を加え、青色が完全に消失するまで滴定した。滴定値がVmlのとき、0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクターは、F=20×f/Vで求め、滴定を行った。
上述のように調製した試料油脂1gを採取し、クロロホルム−氷酢酸混液(3:2)25ml、飽和ヨウ化カリウム溶液1mlを加え、すぐに撹拌し、1分間暗所に放置した。反応を止めるために純水75mlを加えた。2層に分かれる上層の赤紫色の消失を終点とし、遊離ヨウ素を0.01Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。空試験には純水1gを用いて行った。
表3に示す結果から、本発明によるササ葉由来のルテオリン6−C−グルコシドは、良好なDPPHラジカル消去活性、SOD様活性を有するのに加えて、脂質過酸化物抑制活性に優れていることがわかった。
次に、ササ葉由来のルテオリン6−C−グルコシドについて、褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の阻害効果を調べる目的で、一般に知られているPPO活性阻害剤、他のフラボノイド類との比較測定を行った。その測定方法は以下のとおりであり、測定結果は下掲の表4に示すとおりである。
<PPO(褐変酵素ポリフェノールオキシダーゼ)阻害活性の測定>
0.05Mクロロゲン酸を基質とし酵素液としてタマネギ鱗茎より抽出・部分精製を行った酵素液を用いた。すなわち、1.3mlの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に1mM濃度、2mM濃度、10mM濃度に調製した阻害剤を0.1ml、酵素液を0.1ml添加し混合、30℃に10分間予備加温後、0.05Mクロロゲン酸基質溶液を0.1ml加え混合し、30℃、30分間加温後の波長420nmにおける褐変度を求めた。阻害剤添加の代わりに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を加えたものをコントロールとし、活性を100%として阻害効果を相対活性で示した。
0.05Mクロロゲン酸を基質とし酵素液としてタマネギ鱗茎より抽出・部分精製を行った酵素液を用いた。すなわち、1.3mlの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に1mM濃度、2mM濃度、10mM濃度に調製した阻害剤を0.1ml、酵素液を0.1ml添加し混合、30℃に10分間予備加温後、0.05Mクロロゲン酸基質溶液を0.1ml加え混合し、30℃、30分間加温後の波長420nmにおける褐変度を求めた。阻害剤添加の代わりに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を加えたものをコントロールとし、活性を100%として阻害効果を相対活性で示した。
この結果、ササの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドは、一般のPPO活性阻害剤や他のフラボノイド類と比べて卓越したPPO阻害活性を有し、少量の使用でも褐変を防止できることがわかった。したがって、本発明方法によるルテオリン6−C−グルコシドは、例えば、食品類の褐変防止剤として有効に利用することができる。
さらに、前記ササの葉から抽出単離したルテオリン6−C−グルコシド及びルテオリン、ルテオリン7−O−グルコシドについても、同様の方法でヒト白血病細胞の増殖抑制効果を測定した。その結果は図6に示すとおりであり、ササの葉由来のルテオリン6−C−グルコシドは、卓越した高い増殖抑制効果を有することが確認された。
本実施例では、クマイザサ抽出液を加水分解した場合について説明する。試料葉にはトリシンアグリコンを含まないもの(採取地:北海道津別町相生)を使用した。
クマイザサの葉をメタノールで抽出した液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加えて(抽出液と塩酸の比率は1:1になるようにする)、混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱して加水分解を行わせ、30分後、氷中で冷却した。加水分解後、LH−20カラムに供し、精製工程で、各加水分解物(無処理を含む)はXADカラムに吸着させ、加水分解物から酸を洗い流し、メタノールに溶媒置換後、LH−20カラムに供し、精製後、HPLCで定量分析した。
クマイザサの葉をメタノールで抽出した液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加えて(抽出液と塩酸の比率は1:1になるようにする)、混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱して加水分解を行わせ、30分後、氷中で冷却した。加水分解後、LH−20カラムに供し、精製工程で、各加水分解物(無処理を含む)はXADカラムに吸着させ、加水分解物から酸を洗い流し、メタノールに溶媒置換後、LH−20カラムに供し、精製後、HPLCで定量分析した。
まず、図7にササ葉抽出液の非加水分解物のLH−20溶出パターンを示す。そして、ササ葉抽出液を0.2N塩酸で100℃、30分間、加水分解した後のLH−20溶出パターンを図8に、0.7N塩酸で100℃、30分間加水分解した後のLH−20溶出パターンを図9に示す。
図7のBIIはルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin 6−C−glucoside)の溶出ピーク、BIIIはルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)のピークであり、トリシンアグリコンは図8では2HIIIのピークである。それぞれの処理によって得られるルテオリン6−C−グルコシドの結果を、図10に示す。なお、HPLCやXADカラム、LH−20カラムの条件は既に述べた条件と同じである。
図7のBIIはルテオリン6−C−グルコシド(Luteolin 6−C−glucoside)の溶出ピーク、BIIIはルテオリン6−C−アラビノシド(Luteolin6−C−arabinoside)のピークであり、トリシンアグリコンは図8では2HIIIのピークである。それぞれの処理によって得られるルテオリン6−C−グルコシドの結果を、図10に示す。なお、HPLCやXADカラム、LH−20カラムの条件は既に述べた条件と同じである。
図7、図8、図9より、加水分解前の図7のBIピークが減少し、加水分解前により図8の2HIII及び図9の7HIIIが新たに検出することが確認できる。図7のBIIピーク、図8の2HIピーク及び図9の7HIピークは溶出位置から同じ成分であることがわかる。これらのピークはルテオリン6−C−グルコシドである。
また、図10より酸加水分解処理を行うことでルテオリン6−C−グルコシドの含量が約1.7倍多くなったことがわかる。したがって、最終濃度0.2〜0.7Nの塩酸で100℃、30分間加熱処理することでルテオリン6−C−グルコシドの収量を上げることが出来る。
本実施例では、クマイザサ抽出液を分画した液を加水分解した場合について説明する。
クマイザサのメタノール抽出液のLH−20カラム分画液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加えて(分画抽出液と塩酸の比率は1:1になるようにする)、混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱して加水分解を行わせ、30分後、氷中で冷却した。
クマイザサのメタノール抽出液のLH−20カラム分画液(メタノール溶液)に塩酸(最終濃度が0.2〜0.7N)を加えて(分画抽出液と塩酸の比率は1:1になるようにする)、混合後、100℃のウォーターバスで30分間加熱して加水分解を行わせ、30分後、氷中で冷却した。
図11に、上記図7の無処理ササ葉抽出液をLH−20カラム分画結果の配糖体が含まれていると考えられるフラクション(BI)を上記のように加水分解して得られるルテオリン6−C−グルコシド量の定量結果を示す。この図11から明らかなように、クマイザサの低級脂肪族アルコール抽出液をカラムクロマトグラフィー(セファデックスLH−20カラム)で分画した後でも、加水分解処理を行うことにより、高収率でルテオリン6−C−グルコシドを得ることが出来ることが確認された。
以上より、ルテオリン6−C−グルコシドの収量を上げる方法として、
(1)クマイザサ抽出液(粗抽出液、水層及び酢酸エチル層)の酸加水分解による方法、及び
(2)分画後ピークの酸加水分解による方法、
の2つの方法があることが確認された。
(1)クマイザサ抽出液(粗抽出液、水層及び酢酸エチル層)の酸加水分解による方法、及び
(2)分画後ピークの酸加水分解による方法、
の2つの方法があることが確認された。
本実施例では、クマイザサ葉(採取地:北海道津別町相生)約200gを切り刻み、メタノールに一晩浸し、これを2回繰り返した後、ロータリーエバポレーターで濃縮し水に置換した。これに等量の石油エーテルを加え液・液分配し、残存するクロロフィルを石油エーテル層に移行させて除去した。残った水に等量のジエチルエーテルを加え、液・液分配し得られる水層をカラムクロマトグラフィー(セファデックスLH−20カラム)に供することにより、図12に示すルテオリン6−C−グルコシドの画分を得た。この画分のルテオリン6−C−グルコシドの純度は約98%を示した。この画分を先に述べた分取HPLCを1回実施することで、高純度のルテオリン6−C−グルコシドを得ることができた。
Claims (4)
- ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換して濾過するか又は石油エーテルで液・液分配することによりクロロフィルを除去し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、酢酸エチル層の液を採取し、該層からルテオリン6−C−グルコシドを得ることを特徴とするルテオリン6−C−グルコシドの製造方法。
- ササ又はタケの葉の低級脂肪族アルコール抽出液から、該アルコールを蒸発するとともに水に置換して濾過するか又は石油エーテルで液・液分配することによりクロロフィルを除去し、石油エーテル及び/又はジエチルエーテルで液・液分配して水層の液を採取し、該水層の液に酢酸エチルを配合して液・液分配を行い、水層の液を採取し、該層からルテオリン6−C−グルコシドを得ることを特徴とするルテオリン6−C−グルコシドの製造方法。
- ササ葉及び/又はタケ葉を低級脂肪族アルコールで抽出し、前記抽出液を濃縮し、水に置換又は加水して濾過することによりクロロフィルを濾去し、濾去後の水層にジエチルエーテルを添加し液・液分配を行い、得られる水層からルテオリン6−C−グルコシドを採取することを特徴とするルテオリン6−C−グルコシドの製造方法。
- ササ又はタケの葉の抽出液を加水分解した液、又は、分画した液を加水分解してルテオリン6−C−グルコシドの含量を増大させた液からルテオリン6−C−グルコシドを採取することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のルテオリン6−C−グルコシドの製造方法。
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