JP2010100046A - ハニカム構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】隔壁と目封止部との境界部や端面部にクラックが生じ難く、耐久性に優れたハニカム構造体を提供する。
【解決手段】本発明のハニカム構造体10は、複数のセル14が区画形成された多孔質の隔壁12と、複数のセル14のうち、所定のセル14aにおける一方の端面22側の開口端部を目封止するとともに、残余のセル14bにおける他方の端面24側の開口端部を目封止する目封止部16と、を備え、少なくとも一方の端面22側における、隔壁12が交差する各交点部26の少なくとも一の交点部26aにおいて、その交点部26aを挟んで対角に配置された残余のセル14b,14b同士を結ぶように、一方の端面22を含む端部に所定の深さのスリット18が形成されている。
【選択図】図1B

Description

本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、自動車排ガスをはじめとした各種内燃機関排気ガスのフィルタ、各種濾過機器用フィルタ、熱交換器ユニット、或いは燃料電池の改質触媒用担体等の化学反応機器用担体として用いられるハニカム構造体に関する。
従来から、ディーゼルエンジンより排出される排気ガスのような含塵流体中に含まれる微粒子状物質(「パティキュレートマター」ともいう)を捕集除去するフィルタ、例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)として、多孔質の隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム構造体が用いられている。
このようなハニカム構造体は、隔壁によって区画された上記各セルの端部、あるいは中間部を交互に目封止部により閉塞することによってフィルタとして用いられている。そして、このようなフィルタは、フィルタを設置した排気系の上流側に、電気ヒーターやバーナー等を配置して、捕集した微粒子状物質を燃焼してフィルタを再生して使用されていた。
上述したように、捕集した微粒子状物質を燃焼する場合には、特に出口側端面の目封止部付近においてもっとも温度が上昇し、ハニカム構造体の出口側端面を含む端部に熱衝撃によりクラックが発生することがある。
このようなことから、従来、例えば、ハニカム構造体の排気出口側端部の目封止部の厚さ、特に温度が上昇する出口側端部の中心部における厚さを厚くするという方法がとられていた(例えば、特許文献1参照)。このような方法により、出口側端部の中心部の温度変化に対する剛性を高めるとともに、出口側端部の中心部での温度上昇を抑制しサーマルクラックを防止することができる。
また、入口側に配置される目封止部を、周縁部から中心部に向けて順次厚くする構造のハニカム構造体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
上述した特許文献2に記載のハニカム構造体においては、微粒子状物質の捕集能力を大幅に低減させないように、隔壁の表面積(即ち、フィルタ面積)の減少をできる限り抑えているが、このような構造であると、中心部の高熱容量化が不十分であり、周縁部と中心部の温度差が大きくなることが指摘されている。
また、上述した隔壁の表面積の減少というネガティブ面をある程度犠牲にすれば、出口側端部全体で目封止部の厚さを入口側端部よりも厚くすることは可能であるが、隔壁の表面積(フィルタ面積)が大幅に減少してしまい、フィルタ機能全体のバランスが悪くなる。
このため、特許文献2では、ハニカム構造体の排気入口側端部の目封止部の厚さ、特に温度が上昇する入口側中心部で厚くするという方法がとられた。このような方法により、入口側中心部の熱容量を高めることで、入口側中心部での温度上昇を抑制し、出口側の中心部と周縁部の温度差を小さくして、溶損又はサーマルクラックを防止している。これらの従来技術のように、出口側あるいは入口側における目封止部の厚さを厚くして、ハニカム構造体の端部を高熱容量化している。
そして、近年、そのハニカム構造体で排気ガスを処理する際の圧力損失を低減し、より効率的に排気ガスを処理するために、ハニカム構造体の隔壁の高気孔率化、薄壁化が進んでいる。また、フィルタ再生時の燃焼による温度上昇を抑制するために、フィルタに触媒を担持して、その作用により、比較的低温でも捕集された微粒子状物質が燃焼されるように工夫されている。触媒の担持量を増加すると隔壁の細孔を閉塞するので、隔壁の高気孔率化、細孔分布の均一化が要求される。
実公昭63−32890号公報 実公平6−31133号公報
しかしながら、上記したように、ハニカム構造体の隔壁の高気孔率化、薄壁化が進むに従い、隔壁が低熱容量化したため、捕集された微粒子状物質がフィルタ内で燃焼される場合において、特に出口側端面の目封止部付近においてもっと温度が上昇し、更に過度な温度上昇において、サーマルクラックが発生し易くなるようになってきた。クラックが発生し進展すると、そこからスートが漏れ出てフィルタ捕集性能を低下させる場合がある。
また、ハニカム構造体を用いたフィルタがエンジン近傍(close−coupled)に配置されるような場合には、排気ガスが比較的高温であり、かつ温度変化が激しくなるので、フィルタ入口側における熱衝撃が厳しくなり、入口側端面部においてクラックが発生するという問題も生じるようになってきた。クラックが発生し進展すると、そこからスートが漏れ出てフィルタ捕集性能を低下させる場合がある。
更には、目封止部を前述した従来技術の通り、入口側あるいは出口側において厚くする構造にすることで、目封止部の剛性が当然高くなり、温度変化による隔壁の寸法変化を高剛性の目封止部が阻止しようとする格好となり、隔壁と目封止部との境界にクラックが発生するという問題が生じることがあった。このため、従来では、目封止部を高気孔率化することにより、目封止部に通気性を持たせてフィルタ全体での圧力損失の低減を行ったり、高気孔率化による目封止部の低剛性化を行ったりしていた。
ところが、目封止部に通気性をもたせれば、目封止部内に微粒子状物質が捕集され堆積するので、燃焼再生時には目封止部でも発熱することになり、端部での過度な高温化を招くこととなる。また、通気性を有するほどではなくても目封止部の高気孔率化により、目封止部が低熱容量化することとなり、依然として端部での過度な高温化を招くという問題があった。過度な高温化を招くことで、クラックが発生し易くなり、クラックが発生し進展すると、そこからスートが漏れ出てフィルタ捕集性能を低下させる場合がある。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、隔壁と目封止部との境界部や端面部にスートを漏れ出させるようなクラックが生じ難く、耐久性に優れたハニカム構造体を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明は、以下のハニカム構造体を提供するものである。
[1] 流体の流路となる複数のセルが区画形成された多孔質の隔壁と、前記複数のセルのうち、所定のセルにおける一方の端面側の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける他方の端面側の開口端部を目封止する目封止部と、を備え、前記目封止部は、前記一方の端面側の開口端部が目封止された前記所定のセルと、前記目封止部が前記他方の端面側の開口端部が目封止された前記残余のセルとが交互に配置されるように配設されており、少なくとも前記一方の端面側における、前記隔壁が交差する各交点部の少なくとも一の交点部において、前記交点部を挟んで対角に配置された前記残余のセル同士を結ぶように、前記一方の端面を含む端部に所定の深さのスリットが形成されているハニカム構造体。
[2] 前記他方の端面側における、前記隔壁が交差する各交点部の少なくとも一の交点部において、前記交点部を挟んで対角に配置された前記所定のセル同士を結ぶように、前記他方の端面を含む端部に所定の深さのスリットが形成されている前記[1]に記載のハニカム構造体。
[3] 前記スリットは、前記端面の外径の90%以内の範囲に形成されている前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
[4] 前記スリットは、前記端面の外周縁から、この前記端面の半径の50%の環状の領域に形成されている前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
[5] 前記スリットは、前記目封止部の目封止深さに対して、1/3以上、3倍以下に相当する深さに形成されている前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
[6] 前記スリットは、前記交点部を挟んで対角に配置されたセル相互間の間隔に対して、10〜70%に相当する幅に形成されている前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
本発明のハニカム構造体は、目封止部を過度に厚くすることなく、隔壁と目封止部との境界部や端面部にクラックが生じ難く、耐久性に優れている。
本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。 図1Aに示すハニカム構造体の一方の端面を拡大した拡大平面図である。 図1Bに示すハニカム構造体のA−A’断面を模式的に示す概略断面図である。 図1Bに示すハニカム構造体のB−B’断面を模式的に示す概略断面図である。 本発明のハニカム構造体の他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。 本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。 本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を示す平面図である。 本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。 本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。 本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。 本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。 実施例9のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。 実施例10のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。 実施例11のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。 実施例13のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。 スートジェネレータ装置(PM強制発生装置)の概要図である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、図1A〜図1Dに示すように、流体の流路となる複数のセル14が区画形成された多孔質の隔壁12と、複数のセル14のうち、所定のセル14aにおける一方の端面22側の開口端部を目封止するとともに、残余のセル14bにおける他方の端面24側の開口端部を目封止する目封止部16と、を備えたハニカム構造体10である。
本実施形態のハニカム構造体10は、一方の端面22側の開口端部が目封止された上記所定のセル14aと、他方の端面24側の開口端部が目封止された上記残余のセル14bとが交互に配置されるように、目封止部16が配設されている。即ち、本実施形態のハニカム構造体10においては、複数のセル14の一方の端面22側の開口端部と他方の端面24側の開口端部とに、千鳥状に目封止部16が配設されている。
そして、本実施形態のハニカム構造体10においては、少なくとも一方の端面22側における、隔壁12が交差する各交点部26の少なくとも一の交点部26aにおいて、その交点部26aを挟んで対角に配置された残余のセル14b,14b同士を結ぶように、一方の端面22を含む端部に所定の深さのスリット18が形成されている。
このように、本実施形態のハニカム構造体10は、少なくとも一方の端面22を含む端部に所定の深さのスリット18が形成されているため、ハニカム構造体10の一方の端面22を含む端部に応力が加わった際に、隔壁12が歪むのと同様に目封止部16も歪むこととなる。これにより、隔壁12の交点部26における歪がスリット18により吸収されて応力集中が緩和される。
このため、本実施形態のハニカム構造体10においては、隔壁12にサーマルストレスによるクラックが入るのを防止し、スート漏れを防止してDPFとしての捕集性能低下を防止し、更には、ハニカム構造体10の耐久性を向上させることができる。また、仮に隔壁12にクラックが発生したとしても、スリット18によって歪を吸収することができるため、応力集中が緩和されて、クラックの進展を抑制して、ハニカム構造体10の耐久性を向上させることができる。
サーマルストレスによるクラックのおよその発生位置は予測できるが、正確な発生位置、そしてクラック発生進展の形態や方向はランダムで予測することが困難であり、クラックが排気ガス入口側のセルから排気ガス出口側セルにまたがって発生し進展する場合、あるいは目封止部全体に及んで発生し進展すると、スート漏れが発生する。スリットを予め形成する別の狙いとして、サーマルストレスによるクラックがスリットの形成された方向に沿って発生し進展するように、クラック発生の位置を限定し、クラック発生進展方向を誘導することにある。こうすることで仮にクラックが発生し進展してもその方向はスリット方向であるためスートが漏れることを抑制することができる。また、スートが漏れたとしても最小限に抑えることができる。
そして、交点部26aに形成されたスリット18は、一方の端面22において開口端部が解放された残余のセル14b,14b同士を結ぶように、交点部26aの対角線状に形成されているため、目封止部16にはスリット18が掛からず、ハニカム構造体10をフィルタ(例えば、DPF)として用いた場合に、過度なスート漏れを起すことはなく、また、捕集性能を損なうことなく、その性能を良好に維持することが可能となる。
なお、本実施形態のハニカム構造体において、隔壁の交点部に形成される「スリット」とは、ハニカム構造体の端面から所定の深さの端部において、隔壁が溝状に抉れた隙間のことをいう。
ここで、図1Aは、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図1Bは、図1Aに示すハニカム構造体の一方の端面を拡大した拡大平面図である。また、図1Cは、図1Bに示すハニカム構造体のA−A’断面を模式的に示す概略断面図であり、図1Dは、図1Bに示すハニカム構造体のB−B’断面を模式的に示す概略断面図である。
図1A〜図1Dにおいては、隔壁12の交点部26を挟んで対角に配置された残余のセル14b同士を結ぶように、上記対角線の一方向の延長線上の二以上の交点部(図1Aにおいては、四つの交点)にスリット18が形成された場合の例を示している。なお、このように、二以上のスリットが、対角線の延長線上(同一線上)の二以上の交点部に同一方向に形成される場合、この同一線上且つ同一方向に形成された二以上のスリットを称して、「一列のスリット」ということがある。また、このような一列のスリットを、「列状のスリット」ということもある。
本実施形態のハニカム構造体においては、格子状にセルを区画形成する隔壁の交点部の少なくとも一部にスリットが形成されていればよく、交点部の全てにスリットが形成されている必要はない。
例えば、図2に示すように、一方の端面22の開口部が開放されたセル(残余のセル14b)の少なくとも一つにおいて、互いに直行する二方向、即ち、図2における四角形セルの各対角線方向に、それぞれスリット18が形成されていてもよい。
更に、スリットを複数列形成する場合には、図3に示すように、複数列(図3においては、平行する二列)のスリット18が形成されていてもよい。なお、サーマルストレスによる歪吸収を考慮した場合、スリットを複数列形成する際には、各列のスリットは隣接させず、離して形成させた方が、ハニカム構造体の端面の広範囲に効果が及び好ましい。ハニカム構造体の端面の大きさ(外径)が比較的小さい場合にはスリットは1ヶ所でもよい。
ここで、図2は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図であり、図3は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。なお、図2及び図3に示すハニカム構造体50,60において、図1Bに示すハニカム構造体10の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
なお、本実施形態のハニカム構造体は、隔壁のクラックの発生を抑制するために、従来行われていたような目封止部を過度に厚くする必要がないため、隔壁の表面積、即ち、フィルタ面積を低減することがなく、圧力損失の増加を抑制することもできる。
また、図1A〜図1Dに示すハニカム構造体においては、一方の端面22側における、隔壁12が交差する各交点部26の少なくとも一の交点部(例えば、交点部26a)にスリット18が形成されているが、例えば、他方の端面側における、隔壁が交差する各交点部の少なくとも一の交点部においても、交点部を挟んで対角に配置された所定のセル同士を結ぶように、他方の端面を含む端部に所定の深さのスリットが形成されていてもよい。
即ち、本実施形態のハニカム構造体においては、他方の端面側についても、一方の端面側と同様に、隔壁の交点部にスリットが形成されていてもよいし、他方の端面側については、交点部にスリットが形成されていなくともよい。例えば、一方の端面側のみにスリットが形成されている場合には、使用時に温度上昇が比較的に激しくなる排気出口側に、ハニカム構造体の一方の端面側が配置されるように設置することにより、サーマルクラックの発生を良好に防止することができる。
DPF形状(外径と長さの比率など)とも関連して、スート堆積分布、再生条件(排気ガス温度、排気ガス流量、酸素濃度など)、キャニング条件(把持面圧)などの使用環境条件により、排気出口側端面中央付近で歪が発生する。また、再生時に排気出口側端面中央付近が高温化し、その直後に比較的低温の排気ガスが流れることで、排気出口側端面中央付近が冷却モードとなり、中央付近で歪が発生する場合もある。
また、再生時においては、排気出口側端面中央付近で温度が高温化して熱膨張を起し、端面外周部を押し広げようとして、排気出口側端面外周部で引張応力が発生することがある。このような場合、端面中央付近のスリットで熱膨張歪を吸収して、端面外周部の押し広げを緩和する。あるいは、端面角部を含む外周部にスリットを形成して外周部の歪を吸収することでもよい。この場合、スリットは、ハニカム構造体の端面角部から端面内部に向かうように形成されることが好ましい。
また、ハニカム構造体をエンジン近傍(close−coupled)に配置する場合には、排気ガスが比較的高温になり、かつ温度変化が激しくなるため、排気入口側端面(例えば、ハニカム構造体の他方の端面)にもスリットが形成されていれば、排気入口側端面におけるクラックの発生も同時に防止することができる。このような排気ガスの急激な温度変化がある場合、排気入口側端面中央付近で歪が発生するので、スリットは端面中央付近に形成することが好ましい。
本実施形態のハニカム構造体においては、一列又は複数列のスリットが、ハニカム構造体の端面を横断するように、即ち、ハニカム構造体の端面の外周上の一の点から他の点にかけて近接する交点部で連続するように、形成されていてもよいが、ハニカム構造体の端面の外径の90%以内の範囲に形成されていることが好ましく、60%以内の範囲に形成されていることが更に好ましい。また、図4に示すように、本実施形態のハニカム構造体40においては、例えば、上述したスリット18が、端面の外周縁側(即ち、端面と外壁とによって構成される端部角部側)から端面中心に向かう所定の幅をもった円周範囲28(環状の領域)内に形成されていてもよい。このような場合には、端面の外周縁から、その端面の半径の50%に相当する幅をもった円周範囲に形成されていることが好ましく、25%に相当する幅をもった円周範囲に形成されていることが更に好ましい。なお、図4に示すハニカム構造体40において、図1Bに示すハニカム構造体10の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
また、スリットの深さは、目封止部の深さに対して1/3以上に相当する深さであることが好ましく、目封止部の深さ以上であることが更に好ましい。列状のスリットの長さとスリットの深さは、キャニング時の機械的ストレスの大きさ、あるいはサーマルストレスの大きさに照らして、実験を通して、適宜、決められるものである。スリットの底部の形状については特に制限はないが、スリット部からクラックを発生させないようにするためには応力集中を起さないように丸みを持たせることが好ましい。また、スリット部からクラックを誘発させるためには鋭利にすることが好ましい。スリットの深さは、目封止部の深さの50%以上300%以下に相当する深さであることが更に好ましく、100%以上250%以下に相当する深さであること特に好ましい。スリットの深さの測定方法は、スリット部をスリット方向に対して垂直方向断面に切断して、切断面を光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡により観察測定する方法が用いられる。このほかに、X線CT測定方法や、超音波斜角探傷方法も用いられる。なお、上述したそれぞれの測定方法によって測定した場合に、得られる測定値に差異が生じる場合には、X線CTによって測定した測定値を真の値とする。
また、スリットの深さは、1本の中で必ずしも一定である必要はない。例えば、スリットの末端に向けて徐々に浅くしていくことにより、その先のスリットがない部分との連続性を持たせるのも、好ましい態様のひとつである。この場合、少なくとも、最も深い部分或いは深さが一定の部分が上記範囲に入っていることが好ましい。なお、スリットが複数本存在する場合には、各スリットの深さは同じである必要はないが、それぞれが上記範囲に入っていることが好ましい。
列状のスリットの長さが長すぎたり、スリットの深さが深すぎると、キャニング時の機械的ストレスの大きさ、あるいはサーマルストレスの大きさによっては、スリットの歪量が過度に大きくなり、スリット端部からクラックが発生し進展することがある。スリット端部からクラックを誘発する観点においても同様であり、過度なクラックの発生進展は、スート漏れを起こす可能性を増加させる。逆に列状のスリットの長さが短すぎたり、スリットの深さが浅すぎると、スリットでの歪吸収が不十分となり応力集中緩和が不十分となることがある。このため、複数の交点部にまたがる長さの列状のスリットであることが好ましい。
列状のスリットの絶対長としては、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることが更に好ましく、また、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることが更に好ましい。なお、「列状のスリットの絶対長」とは、列状のスリットを構成する各スリットを結んだ総長さのことをいう。また、スリットが複数本存在する場合には、各スリットの長さは同じである必要はないが、それぞれが上記範囲に入っていることが好ましい。
スリットの幅は、スート等の微粒子状物質の漏れを起さないようにするために、隔壁の交点部の対角線方向長さよりも狭く、即ち、交点部を挟んで対角に配置されたセル相互間の間隔よりも狭くする。スリットの幅が広すぎると、隔壁が肉薄となり強度低下を招くことがある。一方、スリットの幅が狭すぎると、スリット形成が困難になることがある。このため、スリットの幅については、隔壁の交点部の寸法に照らして、強度とスリット形成手段の観点から、実験を通して、適宜、決められるものである。例えば、隔壁の交点部の対角線方向長さ(即ち、交点部を挟んで対角に配置されたセル相互間の間隔)に対して、10〜70%に相当する幅であることが好ましく、20〜50%に相当する幅であることが更に好ましい。スリットの幅の測定方法は、スリット部を上部から光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡により観察測定する方法が用いられる。このほかに、表面形状測定機による測定方法も用いられる。なお、上述したそれぞれの測定方法によって測定した場合に、得られる測定値に差異が生じる場合には、光学顕微鏡によって測定した測定値を真の値とする。また、スリットが複数本存在する場合には、各スリットの幅は同じである必要はないが、それぞれが上記範囲に入っていることが好ましい。
本実施形態のハニカム構造体を構成する隔壁の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、DPFのような高熱に晒される環境下で使用する場合には、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、チタン酸アルミニウムを主成分とすることが、耐熱性、耐熱衝撃性、構造強度、大量生産性を考慮して総合的に判断すると好ましい。
また、目封止部の材質は、特に限定されるものではないが、ハニカム構造体を構成する隔壁との熱膨張差を抑えるため、隔壁と同材質を含むことが好ましい。なお、目封止部の材質は、隔壁よりも高熱容量かつ低剛性であることが更に好ましく、例えば、隔壁がコージェライトの場合、目封止材はチタン酸アルミニウムを主成分とする組み合わせも好適である。
本実施形態のハニカム構造体を構成する隔壁の気孔率は、フィルタ特性を発現する上で、35%以上であることが好ましく、45%以上であることが更に好ましい。このように構成することによって、近年のハニカム構造体の隔壁の高気孔率化の要求に応えつつ、隔壁へのクラックの発生を有効に抑制することができる。なお、隔壁の気孔率は、フィルタ特性を発現する上で、55%以上であることが更により好ましい。また、サーマルストレスは隔壁の剛性に比例するので、気孔率が比較的低い場合において、スリットがより効果的と考えられる。なお、隔壁の気孔率は、水銀圧入法により測定した値である。
また、本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の厚さが600μm以下の場合に好適に使用される。隔壁の厚さが薄くなると隔壁にクラックが発生し易くなるため、隔壁の厚さが600μm以下という、よりクラックが発生し易いハニカム構造体において、より大きな効果をもたらすものである。なお、隔壁の厚さは、350μm以下が更に好ましい。
本実施形態のハニカム構造体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ハニカム構造体の柱状構造の中心軸に垂直な断面形状(底面の形状)としては、四角形等の多角形、円形、楕円形、長円形、異形等である。
また、本実施形態のハニカム構造体は、隔壁が一体的に形成された一体型のハニカム構造体に限定されることはなく、例えば、図示は省略するが、多孔質の隔壁を有し、隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成された柱状のハニカムセグメントが、接合材層を介して複数個組み合わされた構造を有するハニカム構造体(以下、「接合型ハニカム構造体」ということがある)であってもよい。また、サーマルストレスはハニカム構造体の大きさに比例するので、ハニカム構造体が比較的大きい場合において、スリットがより効果的と考えられる。
このような接合型ハニカム構造体においても、少なくとも一のハニカムセグメントにおける隔壁の交点部にスリットを形成することによって、隔壁と目封止部との境界部や端面部にクラックが生じ難く、耐久性に優れたハニカム構造体とすることができる。
セルの形状は特に限定されるものではないが、正方形あるいは長方形の四角形セルが好適である。単一形状である必要はなく、例えば、八角形と四角形の組み合わせでもよい。例えば、図5及び図6は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。なお、図5及び図6に示すハニカム構造体70,80において、図1Bに示すハニカム構造体10の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すハニカム構造体70は、隔壁12によって八角形のセル14cと四角形のセル14dとが格子状に配置された構成のハニカム構造体70であり、一方の端面22において、八角形のセル14cの開口端部に目封止部16が配設され、他方の端部(図示せず)において、四角形とのセル14dの開口端部に目封止部16が配設されている。そして、交点部26を挟んで対角に配置された四角形のセル14d同士を結ぶように、一方の端面22を含む端部に所定の深さのスリット18が形成されている。また、図6に示すハニカム構造体80においては、一方の端面22において、四角形のセル14dの開口端部に目封止部16が配設され、交点部26を挟んで配置された八角形のセル14c同士を結ぶように、一方の端面22を含む端部に所定の深さのスリット18が形成されている。
また、図7に示すハニカム構造体70aのように、隔壁12によって四角形の大セル14eと四角形の小セル14fとが格子状に配置された構成のハニカム構造体70aであり、一方の端面22において、四角形の大セル14eの開口端部に目封止部16が配設され、交点部を挟んで配置された四角角形のセル(小セル14f)同士を結ぶように、一方の端面22を含む端部に所定の深さのスリット18が形成されたものであってもよい。
また、図8に示すハニカム構造体70bのように、隔壁12によって四角形の大セル14eと四角形の小セル14fとが格子状に配置された構成のハニカム構造体70bであり、一方の端面22において、四角形の小セル14fの開口端部に目封止部16が配設され、交点部を挟んで配置された四角形のセル(大セル14e)同士を結ぶように、一方の端面22を含む端部に所定の深さのスリット18が形成されたものであってもよい。
例えば、図8に示すようなハニカム構造体70bにおいては、四角形のセルの角部に応力集中を低減するための面取りあるいはR部が形成されていることがある。このような面取りやR部は、一応の応力集中軽減効果を得ることができるが、交点幅が狭い方向では、交点幅が広い方向と比較して、強度的に不利である。図8に示すように、交点幅の狭い方向へスリット18を形成することにより、応力集中を良好に軽減することができる。即ち、隔壁12の交点部における歪がスリット18により吸収されて応力集中が緩和される。あるいは、サーマルストレスによるクラックがスリット18の形成された方向に沿って発生し進展するように、クラック発生の位置を限定し、クラック発生進展方向を誘導することで、仮にクラックが発生し進展しても、その方向がスリット18の形成方向となるため、スートの漏れを有効に抑制することができる。
ここで、図7及び図8は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態における、一方の端面を拡大した拡大平面図である。なお、図7及び図8に示すハニカム構造体70a,70bにおいて、図1Bに示すハニカム構造体10の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
また、本実施形態のハニカム構造体におけるセル密度は、特に限定されるものではないが、セル密度が小さすぎると、ハニカム構造体をフィルタとして用いた場合に、強度及び有効GSA(幾何学的表面積)が不足することがあり、セル密度が大きすぎると、被処理流体が流れる際の圧力損失が上昇することがある。セル密度は、好ましくは、6〜2000セル/平方インチ(0.9〜311セル/cm)、更に好ましくは50〜1000セル/平方インチ(7.8〜155セル/cm)、特に好ましくは100〜600セル/平方インチ(15.5〜93.0セル/cm)の範囲である。
目封止部の厚さ、即ち、ハニカム構造体の長軸方向における目封止部の長さ(深さ)は、特に限定されるものではないが、1〜20mmが好ましい。1mmより短いと目封止部の強度が著しく低下することがあり、また、熱容量が減少する傾向にある。20mmより長いと、フィルタとして用いた場合に圧力損失が上昇することがある。なお、目封止部の厚さは、2〜10mmが更に好ましく、3〜7mmが特に好ましい。
また、目封止部の気孔率は特に限定されるものではないが、過度に気孔率が高くなると熱容量が減少するので、気孔率上限は熱容量との兼ね合いで適宜決められるものであり、実質的に概ね70%が上限であり、また、過度に低すぎると剛性が高くなるので、気孔率下限は剛性との兼ね合いで適宜決められるものであり、実質的に概ね5%が下限である。なお、目封止部の気孔率は、アルキメデス法によって測定した値である。
次に、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法(以下、「本ハニカム構造体の製造方法」ということがある)について以下に説明する。
本ハニカム構造体の製造方法においては、まず、ハニカム状の成形体(ハニカム成形体)を成形するための成形原料を調製する。成形原料の主原料としては、耐熱性及び低熱膨張性に優れるコージェライト質セラミックスの原料として、平均粒径5〜30μmのカオリン(Al・2SiO・2HO)0〜20質量%、平均粒径15〜30μmのタルク(3MgO・4SiO・HO)37〜40質量%、平均粒径1〜30μmの水酸化アルミニウム15〜45質量%、平均粒径1〜30μmの酸化アルミニウム0〜15質量%、平均粒径3〜100μmの溶融シリカ又は石英10〜20質量%の組成物を主原料とするのが好ましい。
本ハニカム構造体の製造方法においては、上述した成形原料の主原料となるセラミックス材料に、必要に応じて所望の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、バインダ、媒液への分散を促進するための分散剤、気孔を形成するための造孔材等を挙げることができる。
バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。また、分散剤としては、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を挙げることができる。また、造孔剤としては、例えば、グラファイト、コークス、小麦粉、澱粉、発泡系樹脂、吸水性樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、フライアッシュバルーン、シリカゲル、有機質繊維、無機質繊維、中空繊維等を挙げることができる。中でも、脱脂時に発熱量の少ない中空体の発泡樹脂、フライアッシュバルーンを好適例として挙げることができる。これら添加剤は、目的に応じて1種単独又は2種以上組合わせて用いることができる。
ハニカム成形体を成形するための成形原料は、通常、上述した主原料及び必要に応じて添加される添加物の混合原料粉末100質量部に対して、原料混合粉末を均一に予混合してから、10〜40質量部程度の水を投入する。投入後、更に混合、混練し、可塑性混合物とする。
次に、この可塑性混合物を成形してハニカム成形体を得る。成形方法としては、押出成形を挙げることができる。前記押出成形は、真空土練機、ラム式押出し成形機、2軸スクリュー式連続押出成形機等を用いて行うことができる。
ハニカム成形体の外形としては、例えば、端面の形状が真円又は楕円の円柱、端面の形状が三角、四角等の多角形である角柱、これらの円柱、角柱の側面がくの字に湾曲した形状等を挙げることができる。
次に、得られたハニカム成形体を乾燥する。ハニカム状成形体を乾燥する方法としては、各種方法で行うことが可能であるが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、遠赤外線乾燥等を挙げることができる。特に、マイクロ波乾燥と熱風乾燥、又は、誘電乾燥と熱風乾燥を組み合わせた方法で乾燥することが好ましい。乾燥条件としては、30〜150℃で1分〜2時間乾燥することが好ましい。その後、このように乾燥したハニカム成形体の両端面を所定の長さに切断加工する。
次に、セルの開口端部を目封止するための目封止部を形成するための目封止材を調製する。
目封止部を形成するための目封止材は、セラミック原料、界面活性剤、水、焼結助剤等を混合して、必要に応じて気孔率を高めるために造孔材を添加してスラリー状にし、その後、ミキサー等を使用して混練することにより得ることができる。
目封止材としては、上記したセラミック原料の他に、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を更に加えてもよい。なお、上述した界面活性剤の種類は、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を挙げることができる。
上述したように、気孔率を高めるために必要に応じて造孔材を加えてもよい。造孔材の種類は、特に限定されるものではないが、グラファイト、コークス、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、発泡樹脂、吸水性樹脂、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカゲル、アルミナゲル等を挙げることができる。中でも、脱脂時に発熱量の少ない中空体の発泡樹脂、フライアッシュバルーンを好適例として挙げることができる。このような造孔材の種類や添加量を変化させることにより、目封止部の気孔率、ヤング率を制御することができる。造孔材の添加量は、目封止材として用いられるセラミック原料100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
次に、得られたハニカム構造のセラミック成形体の一方の端面(ハニカム構造の一方の端面)において、一部のセルの開口部にマスクをし、その端面を、上記目封止材が貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止材を挿入し、目封止部を形成する。
その後、ハニカム成形体の他方の端面において、上記一方の端面においてマスクをしなかったセル(上記一部のセル以外のセル)の開口部にマスクをし、その端面を、上記目封止材が貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止材を挿入し、目封止部を形成する。このとき、目封止部を形成したセルと目封止部を形成しないセルとが交互に並び、両端面において、市松模様を形成するように千鳥状に目封止材を挿入する。
セルの開口部をマスクする方法について特に制限はないが、例えば、ハニカム成形体の端面全体に粘着性フィルムを貼着し、その粘着性フィルムを部分的に孔開けする方法等を挙げることができる。例えば、ハニカム成形体の端面全体に粘着性フィルムを貼着した後に、目封止部を形成したいセルに相当する部分のみをレーザにより孔を開ける方法等を好適例として挙げることができる。粘着性フィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレン、熱硬化性樹脂等の樹脂からなるフィルムの一方の表面に粘着剤が塗布されたもの等を好適に用いることができる。
次に、上記両端面が千鳥状に目封止されたハニカム構造のセラミック成形体を、例えば、40〜250℃で、2分〜2時間かけて乾燥させる。乾燥させた後に、一方の端面側における、セルを区画形成する隔壁が交差する各交点部の少なくとも一の交点部において、その交点部を挟んで対角に配置された目封止されていないセル同士を結ぶように、所定の深さのスリットを形成する。
スリットの形成方法は特に限定されないが、例えば、薄い円盤状あるいは平板状の加工工具によるスライサー、シッピキ(切り糸)、カッターなどを挙げることができる。
スリットの形状(例えば、列状のスリットの長さ、深さ、幅等)については、本実施形態のハニカム構造体において説明した形状となるように形成することが好ましい。
このようにスリットを形成した後、このハニカム成形体を焼成して、本実施形態のハニカム構造体を製造する。ハニカム成形体を焼成する方法としては、例えば、大気雰囲気中、1350〜1450℃まで昇温して焼成する方法が挙げられる。なお、本ハニカム構造体の製造方法においては、ハニカム成形体を目封止する前に一旦焼成しておき、焼成後に、ハニカム構造の焼成体に目封止を行い、再度、目封止部の焼成を行うことによってハニカム構造体を製造することもできる。焼成前にスリットを形成してから焼成することでスリットを成長(進展)させることも可能であり、焼成前の初期スリットが比較的小さくて済むのでスリット形成が容易である。
また、上述した製造方法においては、ハニカム成形体を焼成する前(即ち、ハニカム成形体の乾燥後)に、隔壁の交点部にスリットを形成しているが、ハニカム成形体を焼成した後にスリットを形成してもよい。また、ハニカム成形体を目封止する前に一旦焼成する場合には、目封止部の焼成前に、隔壁の交点部にスリットを形成してもよいし、目封止部を焼成した後にスリットを形成してもよい。
また、柱状のハニカムセグメントが、接合材層を介して複数個組み合わされた構造を有する接合型ハニカム構造体を製造する場合には、各ハニカムセグメントを成形してハニカムセグメント成形体を得、得られたハニカムセグメント成形体に目封止を施した後、各ハニカムセグメント成形体を貼り合わせる(接合する)前に、即ち、目封止を施す前、又は目封止を施した後に、少なくとも一のハニカムセグメント成形体における隔壁の交点部にスリットを形成することが好ましい。その後、得られた各ハニカムセグメント成形体を貼り合わせてハニカムセグメント接合体を得、得られたハニカムセグメント接合体を外周加工することによって、所定形状のハニカム構造体を製造することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1A〜図1Dに示すような、流体の流路となる複数のセル14が区画形成された多孔質の隔壁12と、複数のセル14のうち、所定のセル14aにおける一方の端面22側の開口端部を目封止するとともに、残余のセル14bにおける他方の端面24側の開口端部を目封止する目封止部16と、を備えたハニカム構造体10を製造した。
このハニカム構造体は、隔壁の厚さが310μm、セル密度が46.5セル/cm(300セル/平方インチ)の正方形セルであり、直径144mm、長さ152mmである。また、ハニカム構造体の外周を覆うように、厚さ約1mmの外壁を備え、隔壁と外壁とをコージェライト材料によって一体的に形成した。隔壁の気孔率は60%、平均細孔径は11μmである。なお、ハニカム構造体の隔壁の気孔率は、水銀圧入法にて測定し、目封止部分の気孔率は、アルキメデス法にて測定した。
目封止部は、コージェライト材料を用いて、ハニカム構造体の両端面が千鳥模様となるように配置した。目封止部の目封止深さは、ハニカム構造体の端面から3mmの深さである。
実施例1のハニカム構造体においては、ハニカム構造体の一方の端面における隔壁が交差する交点部にスリットを形成した。スリットは、ハニカム構造体の一方の端面の中央付近に位置するセルを中心として、一列の列状のスリットを形成した。スリット加工には、薄型平板状砥石を用いた。なお、この列状のスリットの長さは、ハニカム構造体直径の約30%に相当する長さとし、また、列状のスリットを構成する各スリットの深さは5mmとした。表1に、隔壁の気孔率、平均細孔径、目封止部の目封止深さ、列状のスリットの長さ、スリットの深さ、スリットの列数、スリットの幅、及びスリットの形成面を示す。なお、表1において、対角のセル相互間距離に対する、スリットの幅の割合(百分率)を、スリットの幅の欄にてカッコ書きに示す。
Figure 2010100046
(実施例2〜7)
列状のスリットの長さ、及びスリットの深さを表1に示すように変更した以外は、実施例1のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。
(実施例8)
表1に示すように、二列の列状のスリットがハニカム構造体の端面の中央付近に位置する一のセルにて交差するように(表1中、二列のスリットが交差する構成を「2(交差)」と示す)、各スリットを形成した以外は、実施例1のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。
(実施例9)
表2に示すように、五列の列状のスリットが平行に配置されるように(表2中、五列のスリットが平行に配置される構成を「5(平行)」と示す)、各スリットを形成した以外は、実施例1のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。なお、五列の列状のスリットは、図9に示すような形状に配置されている(ハニカム構造体90a)。ここで、図9は、実施例9のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。なお、この実施例9における各一列のスリット(列状のスリット)は、対角上に位置する10個の交点部にかかるような長さに形成されている(表2中、列状のスリットの長さを「10交点分」と示す。即ち、「10交点分」とは、「一列のスリットが10交点分の長さ」ということである)。
Figure 2010100046
(実施例10)
表2に示すように、十列の列状のスリットが各二列が一組となるように交差し、交差したスリットが五組配置されるように(表2中、二列のスリットが交差した組が五組配置される構成を「10(2(交差)×5)」と示す)、各スリットを形成した以外は、実施例1のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。なお、五組の交差したスリットは、図10に示すような形状に配置されている(ハニカム構造体90b)。ここで、図10は、実施例10のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。
(実施例11)
表2に示すように、四列の列状のスリットの各二列が平行に且つ互いに交差するように(表2中、四列の列状のスリットの各二列が平行に且つ互いに交差する構成を「4(交差&平行)」と示す)、各スリットを形成した以外は、実施例1のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。なお、各二列が平行に且つ互いに交差したスリットは、図11に示すような形状に配置されている(ハニカム構造体90c)。ここで、図11は、実施例11のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。
(実施例12)
実施例1と同様のコージェライト材料を用いて、隔壁の厚さが310μm、セル密度が46.5セル/cm(300セル/平方インチ)の正方形セルであり、直径267mm、長さ305mmとし、ハニカム構造体の外周部を一旦加工して新たに外壁を塗布した外周コート型コージェライト質ハニカム構造体を製造した。隔壁の気孔率は65%であり、平均細孔径は13μmである。
目封止部は、コージェライト材料を用いて、ハニカム構造体の両端面が千鳥模様となるように配置した。目封止部の目封止深さは、ハニカム構造体の端面から10mmの深さである。
実施例12のハニカム構造体においては、ハニカム構造体の一方の端面における隔壁が交差する交点部にスリットを形成した。スリットは、ハニカム構造体の一方の端面の中央に位置するセルを中心として、一列の列状のスリットを形成した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。なお、この列状のスリットの長さは、ハニカム構造体直径の約20%に相当する長さとし、また、列状のスリットを構成する各スリットの深さは15mmとした。
(実施例13)
表2に示すように、三列の列状のスリットが平行に配置されるように(表2中、三列の列状のスリットが平行に配置される構成を「3(平行)」と示す)、各スリットを形成した以外は、実施例12のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。なお、三列の列状のスリットは、図12に示すような形状に配置されている(ハニカム構造体90d)。ここで、図12は、実施例13のハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。
(実施例14)
表3に示すように、実施例1と同様に構成されたハニカム構造体において、両端面にスリットを形成したハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。
(実施例15〜18)
表3に示すように、実施例1と同様に構成されたハニカム構造体において、ハニカム構造体の外周部の一か所の角部からスリットを形成し、スリット長さを種々変更したハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。
(実施例19〜22)
表4に示すように、実施例1と同様に構成されたハニカム構造体において、スリット幅を種々変更したハニカム構造体を製造した。スリットの形成方法は、実施例1と同様であり、カッター刃厚さを変更した。
(実施例23)
図8に示すような、隔壁12によって四角形の大セル14eと四角形の小セル14fとが格子状に配置された構成のハニカム構造体70bとした以外は、実施例1と同様にスリットを形成したハニカム構造体を製造した。なお、実施例23においては、四角形の大セル14eの一辺の長さが、実施例1と比較して、それぞれ10%長くなり、一方、四角形の小セル14fの一辺の長さが、実施例1と比較して、それぞれ10%短くなるように構成した。スリットの形成方法は、実施例1と同様である。
Figure 2010100046
Figure 2010100046
(比較例1)
スリットを形成しないこと以外は、実施例1のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。
(比較例2)
スリットを形成しないこと以外は、実施例12のハニカム構造体と同様に構成されたハニカム構造体を製造した。
実施例1〜13、比較例1及び2のハニカム構造体を各5体製造し、LPGを燃料としたバーナー装置に配設し、100〜650℃間の急加熱急冷却試験を20サイクル行った。なお、排気ガス量は、ハニカム構造体の容積に応じて調整した。20サイクルの急加熱急冷却試験後、各5体のハニカム構造体において、入口側の目封止部付近における隔壁のクラックの有無を確認した。表1及び表2に、急加熱急冷却試験におけるクラックが確認されたハニカム構造体の個数を示す。なお、上記急加熱急冷却試験においては、ハニカム構造体の入口側により大きな熱応力が発生するため、ハニカム構造体の片端面にスリットを形成した実施例1〜13及び15〜23においては、スリットを形成した端面が、上述した入口側の端面となるようにして試験を行った。
また、図13に示すような、軽油を燃料としたバーナーにより微粒子状物質を発生させるスートジェネレータ装置81を用いて、それぞれのハニカム構造体の強制再生試験を行った。強制再生試験の方法は、まず、ハニカム構造体をスートジェネレータ装置81に配設し、約200℃のバーナー排気ガスをハニカム構造体76に導入して、排気ガスに含まれるスートをハニカム構造体76の単位容積当たり5〜15g/Lまで順次堆積量を増加させて捕集させた。
その後、650〜700℃の排気ガスをハニカム構造体に導入し、堆積させたスートを燃焼させた(強制再生)。このようにしてハニカム構造体を強制再生した後、再度、ハニカム構造体にスートを捕集させ、ハニカム構造体からのスートの漏れの有無を確認した。表1及び表2に、上記強制再生試験におけるスート漏れが確認されたハニカム構造体の個数を示す。なお、上記強制再生試験においては、ハニカム構造体の出口側により大きな熱応力が発生するため、ハニカム構造体の片端面にスリットを形成した実施例1〜13及び15〜23においては、スリットを形成した端面が、上述した出口側の端面となるようにして試験を行った。
ここで、図13は、スートジェネレータ装置(PM強制発生装置)の概要図である。なお、図13に示すスートジェネレータ装置81において、符号71は流量計、符号72は圧力ゲージ、符号73は熱電対、74は燃焼室、75はレコーダーを示す。また、流量計によって供給される酸素ガス(O)及び窒素ガス(N)は、特殊試験用ガスである。
また、強制再生試験における排気ガス通気条件は、次の通りである。
(1)スート捕集時:
温度:200℃
流量:9Nm/min
スート発生量:90g/hr
(2)再生時:
温度:600〜700℃
流量:1.5Nm/min
(結果)
バーナーによる急加熱急冷却試験の結果から、比較例1及び比較例2では、5体全てのハニカム構造体の入口側の目封止部付近において、隔壁の一部にクラックが発生した。一方、実施例1〜13,14〜23においては、クラックの発生が抑制されており、特に、実施例1、2、5、及び8〜13、14,15,22,23においては、全てのハニカム構造体においてクラックは発生せず、スリットの進展もなかった。
また、スートジェネレータ装置による強制再生試験においても、比較例1及び比較例2では、5体全てのハニカム構造体においてクラックの進展は認められ、スート漏れも確認された。一方、実施例1〜13,14〜23においては、クラックの発生進展が抑制され、スート漏れも各比較例と比較して軽微であった。特に、実施例1、2、5、6、及び8〜13,14,15,16,17,20,21,22,23においては、新たなクラック発生はなく、スリットからの進展もなくスート漏れも確認されなかった。
本発明のハニカム構造体は、自動車排ガスをはじめとした各種内燃機関排気ガスのフィルタ、各種濾過機器用フィルタ、熱交換器ユニット、或いは燃料電池の改質触媒用担体等の化学反応機器用担体として好適に用いることができる。
10,40,50,60,70,70a,80,90a,90b,90c,90d:ハニカム構造体、12:隔壁、14,14c,14d,14e,14f:セル、14a:所定のセル、14b,14b,14b:残余のセル、16:目封止部、18:スリット、22:一方の端面、24:他方の端面、26、26a:交点部、28:円周範囲、71:流量計、72:圧力ゲージ、73:熱電対、74:燃焼室、75:レコーダー、76:ハニカム構造体、81:スートジェネレータ装置。

Claims (6)

  1. 流体の流路となる複数のセルが区画形成された多孔質の隔壁と、
    前記複数のセルのうち、所定のセルにおける一方の端面側の開口端部を目封止するとともに、残余のセルにおける他方の端面側の開口端部を目封止する目封止部と、を備え、
    前記目封止部は、前記一方の端面側の開口端部が目封止された前記所定のセルと、前記他方の端面側の開口端部が目封止された前記残余のセルとが交互に配置されるように配設されており、
    少なくとも前記一方の端面側における、前記隔壁が交差する各交点部の少なくとも一の交点部において、前記交点部を挟んで対角に配置された前記残余のセル同士を結ぶように、前記一方の端面を含む端部に所定の深さのスリットが形成されているハニカム構造体。
  2. 前記他方の端面側における、前記隔壁が交差する各交点部の少なくとも一の交点部において、前記交点部を挟んで対角に配置された前記所定のセル同士を結ぶように、前記他方の端面を含む端部に所定の深さのスリットが形成されている請求項1に記載のハニカム構造体。
  3. 前記スリットは、前記端面の外径の90%以内の範囲に形成されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
  4. 前記スリットは、前記端面の外周縁から、この前記端面の半径の50%の環状の領域に形成されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
  5. 前記スリットは、前記目封止部の目封止深さに対して、1/3以上、3倍以下に相当する深さに形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  6. 前記スリットは、前記交点部を挟んで対角に配置されたセル相互間の間隔に対して、10〜70%に相当する幅に形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
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