JP2010099114A - Ct装置および金属形状抽出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属の正確な形状を抽出して金属アーチファクトを低減する。
【解決手段】X線CT装置は、被検体の周囲を回動しながら被検体にX線を照射するX線照射装置1と、被検体の周囲を回動しながら被検体を透過したX線を検出するX線撮像装置2と、X線撮像装置2から得られた画像を処理して被検体の断面画像を得る画像処理装置4とを有する。画像処理装置4は、X線照射装置1およびX線撮像装置2の回動角度毎にX線撮像装置2から投影1次元データを収集し、各投影1次元データを回動角度順に並べたシノグラムを生成し、シノグラムを2値化し、2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成し、逆投影画像を2値化する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、X線等の放射線を用いるCT装置に係り、特に金属の正確な形状を抽出して金属アーチファクトを低減する技術に関するものである。
CT(Computed Tomography )装置は、光源として通常X線を使用し、画像処理によって被検体の断面画像を得るが、この画像処理は被検体の物質がその原子番号に応じたX線の減衰特性を持つことを前提としている。被検体に金属が含まれる場合、金属の原子番号が大きいために、X線が金属をほとんど透過せず、正しい透過量が計測できない。結果として、正しい断面画像が得られず、金属周辺にライン状のノイズが多数発生し、金属部分以外の断面も正しく再現できない。このようなノイズを金属アーチファクトと呼ぶ。金属アーチファクトが生じる理由は、金属がX線を吸収してしまうために、被検体のX線吸収率の変化が投影データに現れなくなるなどにより、非線形特性を示すからである。金属アーチファクトは、産業用、医療用など、すべてのCTにおいて発生するが、特に歯科治療では原子番号が大きい金属を多用するのでその影響が著しい。このため、歯科治療用のCTにおいて激しい金属アーチファクトが発生する。金属アーチファクトが発生すると、被検体の正しい断面画像が得られず、診断等に支障が発生することが多い。
従来、X線CT装置において金属アーチファクトを低減する手法として、特許文献1に開示されたX線CT画像再構成方法が知られている。図18は特許文献1に開示されたX線CT画像再構成方法の処理の流れを示すフローチャートである。特許文献1に開示されたX線CT画像再構成方法では、被検体に対して多数の方向からX線を投影し、X線の吸収率を表す投影画像(シノグラム)を得る(ステップS1000)。そして、シノグラム上において適切な閾値以上の値を持つ画素、すなわち金属と思われる画素の値を「0」にし(ステップS1001)、このステップS1001の処理後のシノグラムを逆投影して逆投影画像を得る(ステップS1002)。続いて、逆投影画像において値が「0」である領域を金属領域として認識し(ステップS1003)、この金属領域に適切なX線の減衰率の値を与えた逆投影画像を生成し、この逆投影画像に対してコンピュータ上で投影処理を行い、投影画像(シノグラム)を得る(ステップS1004)。そして、ステップS1000で得たシノグラムに、ステップS1004で得たシノグラムを合成(加算)し(ステップS1005)、合成後のシノグラムを再構成することで、断面画像(再構成画像)を得る(ステップS1006)。
特許文献1に開示されたX線CT画像再構成方法では、ステップS1001の処理で金属と思われる領域の値を「0」にして金属領域を除去しているが、閾値処理を完全に行うことが難しいため、ステップS1002の処理で逆投影した画像において、もともと0の値を持つ領域が金属と混合される可能性があり、金属でない領域をステップS1003の処理で金属領域として誤認識してしまう可能性があった。ステップS1003の処理を誤認識なく行うためには、ステップS1001の閾値処理が完全である必要があるが、閾値を適切に設定することが難しく、もともと0の値を持つ領域が金属と混同される可能性があるので、正しい金属領域の形状を抽出することは困難であった。
また、特許文献1に開示されたX線CT画像再構成方法では、シノグラム上で金属領域とそれ以外の領域の合成を行っているため、金属領域の減衰率を適切に設定した上でシノグラムを合成しなければならず,金属領域の減衰率が適切でなかった場合には、再構成画像がコントラスト不足やノイズが目立つ画像となってしまうという問題点があった。
特開2006−167161号公報
以上のように従来のX線CT装置では、金属の形状が複雑であるとその形状を正確に抽出することが難しく、従って金属の影響を受けたシノグラム領域を補間しきれないので、金属アーチファクトを除去することが難しいという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、金属の正確な形状を抽出することができるCT装置および金属形状抽出方法を提供することを目的とする。
本発明のCT装置は、被検体の周囲を回動しながら前記被検体に放射線を照射する放射線照射手段と、前記被検体を挟んで前記放射線照射手段と対向するように配置され、前記被検体の周囲を回動しながら前記被検体を透過した放射線を検出する放射線撮像手段と、前記放射線照射手段および放射線撮像手段の回動角度毎に前記放射線撮像手段から投影1次元データを収集し、各投影1次元データを回動角度順に並べたシノグラムを生成するシノグラム生成手段と、前記シノグラムを2値化する第1の2値化処理手段と、前記第1の2値化処理手段による2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成する逆投影処理手段と、前記逆投影画像を2値化する第2の2値化処理手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のCT装置の1構成例は、さらに、前記第2の2値化処理手段による2値化後の逆投影画像を計算上で投影してシノグラムを得る投影処理手段と、この投影処理手段が生成したシノグラムに基づいて金属領域を特定し、前記シノグラム生成手段が生成したシノグラム上において前記特定した金属領域を補間する補間処理手段と、この補間処理手段が生成した補間後のシノグラムを計算上で再構成して再構成画像を生成する再構成処理手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のCT装置の1構成例は、さらに、前記再構成処理手段が生成した再構成画像と前記第2の2値化処理手段が生成した逆投影画像とを合成する合成処理手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のCT装置の1構成例において、前記第1の2値化処理手段は、金属領域と考えられる所定の閾値以上の領域を第1の値とし、金属以外の領域と考えられる前記閾値未満の領域を第2の値とすることにより、前記シノグラム生成手段が生成したシノグラムを2値化することを特徴とするものである。
また、本発明のCT装置の1構成例において、前記第2の2値化処理手段は、前記逆投影画像の最大値を閾値として前記逆投影画像を2値化することを特徴とするものである。
また、本発明のCT装置の1構成例において、前記補間処理手段は、前記シノグラム生成手段が生成したシノグラム上において前記放射線撮像手段の複数の検出素子が並ぶ方向に対応する方向をチャンネル方向としたとき、このシノグラム上において前記特定した金属領域を、チャンネル方向に沿った前記金属領域の両端の境界値を用いて補間することを特徴とするものである。
また、本発明のCT装置の1構成例において、前記合成処理手段は、前記合成時において前記逆投影画像の金属領域に所定の輝度値を割り当てることを特徴とするものである。
また、本発明の金属形状抽出方法は、被検体の周囲を回動しながら前記被検体に放射線を照射する放射線照射手段と前記被検体の周囲を回動しながら前記被検体を透過した放射線を検出する放射線撮像手段とによって投影1次元データを取得する投影1次元データ取得手順と、前記放射線照射手段および放射線撮像手段の回動角度毎に前記放射線撮像手段が取得した投影1次元データから、各投影1次元データを回動角度順に並べたシノグラムを生成するシノグラム生成手順と、前記シノグラムを2値化する第1の2値化処理手順と、前記第1の2値化処理手順による2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成する逆投影処理手順と、前記逆投影画像を2値化する第2の2値化処理手順とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の金属形状抽出方法の1構成例は、さらに、前記第2の2値化処理手順による2値化後の逆投影画像を計算上で投影してシノグラムを得る投影処理手順と、この投影処理手順で生成されたシノグラムに基づいて金属領域を特定し、前記シノグラム生成手順で生成されたシノグラム上において前記特定した金属領域を補間する補間処理手順と、この補間処理手順で生成された補間後のシノグラムを計算上で再構成して再構成画像を生成する再構成処理手順とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の金属形状抽出方法の1構成例は、さらに、前記再構成処理手順で生成された再構成画像と前記第2の2値化処理手順で生成された逆投影画像とを合成する合成処理手順を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の金属形状抽出方法の1構成例において、前記第1の2値化処理手順は、金属領域と考えられる所定の閾値以上の領域を第1の値とし、金属以外の領域と考えられる前記閾値未満の領域を第2の値とすることにより、前記シノグラム生成手順で生成されたシノグラムを2値化することを特徴とするものである。
また、本発明の金属形状抽出方法の1構成例において、前記第2の2値化処理手順は、前記逆投影画像の最大値を閾値として前記逆投影画像を2値化することを特徴とするものである。
また、本発明の金属形状抽出方法の1構成例において、前記補間処理手順は、前記シノグラム生成手順で生成されたシノグラム上において前記放射線撮像手段の複数の検出素子が並ぶ方向に対応する方向をチャンネル方向としたとき、このシノグラム上において前記特定した金属領域を、チャンネル方向に沿った前記金属領域の両端の境界値を用いて補間することを特徴とするものである。
また、本発明の金属形状抽出方法の1構成例において、前記合成処理手順は、前記合成時において前記逆投影画像の金属領域に所定の輝度値を割り当てることを特徴とするものである。
本発明によれば、放射線照射手段および放射線撮像手段の回動角度毎に放射線撮像手段から投影1次元データを収集してシノグラムを生成し、シノグラムを2値化し、2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成し、逆投影画像を2値化することにより、金属のみの逆投影画像を得ることができる。その結果、本発明では、従来よりも金属の正確な形状を抽出することができ、金属アーチファクトを低減することができる。
また、本発明では、2値化後の逆投影画像を計算上で投影してシノグラムを取得し、このシノグラムに基づいて金属領域を特定し、シノグラム生成手段が生成したシノグラム上において特定した金属領域を補間し、補間後のシノグラムを計算上で再構成して再構成画像を生成することにより、金属が存在しない被検体の断面画像を得ることができる。
また、本発明では、再構成処理手段が生成した再構成画像と第2の2値化処理手段が生成した逆投影画像とを合成することにより、金属アーチファクトが少なく、かつ金属が正確な形状で重畳された被検体の断面画像を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図である。
X線CT装置は、被検体の周囲を回動しながら被検体にX線を照射するX線照射装置1と、被検体を挟んでX線照射装置1と対向するように配置され、被検体の周囲を回動しながら被検体を透過したX線を検出するX線撮像装置2と、X線照射装置1とX線撮像装置2とを制御する制御装置3と、X線撮像装置2から得られた画像を処理して被検体の断面画像を得る画像処理装置4と、画像処理装置4が生成した被検体の断面画像を表示する表示装置5とを有する。
図2はX線照射装置1によるX線投影処理とX線撮像装置2によるX線撮像処理とを説明する図である。
X線照射装置1は、検査対象の患者(以下、被検体と呼ぶ)100に対してX線101を照射するX線管10と、被検体100を通るZ軸を回動軸としてX線管10が被検体100の周囲を回動するようにX線管10を駆動する駆動機構(不図示)とから構成される。
X線撮像装置2は、被検体100を挟んでX線管10と対向するように配置され、X線管10から放射されたX線101を検出する検出器20と、Z軸を回動軸として検出器20が被検体100の周囲を回動するように検出器20を駆動する駆動機構(不図示)とから構成される。検出器20は、図2に示すチャンネル方向102に沿って1次元状に配置された多数の検出素子200からなる。
図3は本実施の形態のX線CT装置の動作を示すフローチャートである。最初に、制御装置3は、X線管10と検出器20とが被検体100の周囲を回動するように、X線照射装置1とX線撮像装置2とを制御する。検出器20には、X線管10から放射されたX線が直接もしくは被検体100を通って入射するので、検出器20の出力からはX線の透過率を示す投影データが得られる。ここでは、検出器20が1次元状に配置された複数の検出素子200からなるため、1次元の投影データ(以下、投影1次元データと称す)が得られる。画像処理装置4は、投影1次元データをX線管10および検出器20の回動角度毎に収集する(図3ステップS100)。なお、実際には、回動角度毎に連続的に投影1次元データを収集するのではなく、所定の回動ステップ角毎に投影1次元データを収集することになる。
図4は画像処理装置4の構成例を示すブロック図である。画像処理装置4は、データを記憶する記憶部40と、X線照射装置1およびX線撮像装置2の回動角度毎にX線撮像装置2から投影1次元データを収集し、各投影1次元データを回動角度順に並べたシノグラムを生成するシノグラム生成部41と、シノグラムを2値化する2値化処理部(第1の2値化処理部)42と、2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成する逆投影処理部43と、逆投影画像を2値化する2値化処理部(第2の2値化処理部)44と、2値化後の逆投影画像を計算上で投影してシノグラムを得る投影処理部45と、投影処理部45が生成したシノグラムに基づいて金属領域を特定し、シノグラム生成部41が生成したシノグラム上において特定した金属領域を補間する補間処理部46と、補間処理部46が生成した補間後のシノグラムを計算上で再構成して再構成画像を生成する再構成処理部47と、再構成処理部47が生成した再構成画像と2値化処理部44が生成した逆投影画像とを合成する合成処理部48とから構成される。
検出器20から収集した投影1次元データは、記憶部40に格納される。記憶部40に格納された投影1次元データの各データは、個々の検出素子200にそれぞれ対応しており、X線の透過率を示している。シノグラム生成部41は、記憶部40に格納された投影1次元データの各データがX線の透過率を示す値からX線の吸収率を示す値になるように、投影1次元データを変換する(図3ステップS101)。シノグラム生成部41は、このような変換処理を回動角度毎に収集された投影1次元データの各々に対して行う。
記憶部40に格納された投影1次元データは、X線管10から扇形に広がるファンビームによる投影1次元データであるため、平行ビームによる投影1次元データに直す必要がある。そこで、シノグラム生成部41は、ファンビームによる投影1次元データを複数の投影1次元データから同じ方向のビームを補間によって平行化した投影1次元データに変換した上で、変換後の投影1次元データの各々を回動角度順に平行に並べて2次元にした投影画像(シノグラム)を生成する(図3ステップS102)。シノグラム生成部41が生成したシノグラムは、記憶部40に格納される。
図5に示すようにX線管10と検出器20とが被検体100の周囲を回動すると仮定する。図5では、被検体100の断面を、X線の吸収率が高くなるほど白色に近くなるように描いている。103は被検体100の内部に存在する金属である。金属103によるX線の吸収率が最も高いため、金属103を白色で描いている。104は被検体100の周囲を示していて、X線の吸収率が最も低くなっている。
図5のような被検体100から得られるシノグラムは図6のようになる。図6のシノグラム上のAの位置でのX線吸収特性を灰色、Bの位置でのX線吸収特性を黒色で示したシノグラム断面のX線吸収特性は図7のようになる。図6の縦軸および図7の横軸は、検出器20の各検出素子200の位置に対応している。ここでは、検出器20は、1024個の検出素子200からなるものとしている。また、検出器20は、X線の透過率を示すデータを出力するものであるが、図6、図7では、ステップS101で説明したとおり、X線の透過率を示すデータをX線の吸収率を示すデータに変換した後のシノグラムを示している。図6では、白色に近くなるほどX線の吸収率が高いことを示している。図6に示すシノグラム上において、サインカーブを描いている領域が図5の金属103に対応する領域である。
次に、2値化処理部42は、シノグラム生成部41が生成したシノグラムの各画素に対して閾値以上を「1」、閾値未満を「0」とする閾値処理を行い、シノグラムを2値化する(図3ステップS103)。ここでの閾値は、2値化した際に被検体100の内部またはその周辺に存在する金属がほぼ完全に「1」となるような値に設定する。したがって、金属のX線吸収率の値よりも若干低い値に閾値を設定すればよい。値が「1」の領域には金属以外の領域が含まれる可能性があるが、後述する処理で金属以外の領域を削除できるので、値が「1」の領域に金属以外の領域が含まれていても構わない。2値化後のシノグラムは、記憶部40に格納される。
続いて、逆投影処理部43は、2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影することにより、逆投影画像を生成する(図3ステップS104)。単純逆投影は、X線管10と検出器20とが回動しながら被検体100の投影データを取得するのと逆の処理を計算にて行うものである。この逆投影画像は、被検体100の断面の画像に相当する。
図8(A)〜図8(D)は単純逆投影の原理を説明する図である。図8(A)に示すような状態でX線管10から放射されたX線を検出器20で検出すると、図8(B)のような投影1次元データ80が得られる。前述のとおり、X線管10と検出器20とが被検体100の周囲を回動すると、回動角度毎に投影1次元データ80が得られる。これらの投影1次元データ80を回動角度順に平行に並べていくと、シノグラムが出来上がる。次に、図8(C)に示すように投影1次元データ80を回動角度毎に2次元空間に逆投影し、逆投影した各画像を重ね合わせて加算すると、図8(D)に示すような逆投影画像81が得られる。生成された逆投影画像は、記憶部40に格納される。
2値化処理部44は、逆投影処理部43が生成した逆投影画像の各画素に対して閾値以上を「1」、閾値未満を「0」とする閾値処理を行い、逆投影画像を2値化する(図3ステップS105)。ステップS103の2値化で金属領域を全て「1」として抽出できていれば、全ての角度からの逆投影が重なることにより、金属領域は逆投影画像において最大値(X線の吸収率が最大)をとり、2値化後のシノグラムに含まれていた金属以外の領域は最大値よりも低い値をとる。
したがって、基本的には逆投影画像の最大値を閾値として2値化すれば、金属領域を正確に抽出することができる。ただし、実際には金属のエッジ部分で画素の値が最大値よりも若干低い値となるので、2値化の閾値は逆投影画像の最大値よりも若干低い値とすることが望ましい。このステップS105の2値化処理により、金属のみの逆投影画像を得ることができる。2値化処理部44が生成した2値化後の逆投影画像は、記憶部40に格納される。
次に、投影処理部45は、2値化後の逆投影画像を計算上で投影して、投影画像(シノグラム)を得る(図3ステップS106)。この投影処理は、2値化後の逆投影画像を被検体の断面画像とし、X線管10と検出器20とが回動しながら被検体100の投影データを取得するのと同じ処理を計算にて行うものである。実際の投影と同様に、回動角度毎に投影1次元データが得られるので、これらの投影1次元データを回動角度順に平行に並べることによりシノグラムを生成することができる。
ここでのシノグラムは、後述する線形補間領域を特定するためのものであるので、2値化後の逆投影画像において値が「1」となっている金属領域のX線吸収率と2値化後の逆投影画像において値が「0」となっている金属以外の領域のX線吸収率とはそれぞれ任意の値でよく、金属領域が白色(吸収率が最大)、金属以外の領域が黒色(吸収率が最低)となるような投影を行えばよい。投影処理部45が生成したシノグラムは、記憶部40に格納される。
図9(A)は内部に金属103が存在する被検体100の断面画像の1例である。図9(B)はこのような被検体100から得られる理想的なシノグラムを示している。図9(A)のような被検体100に対してステップS100〜S102の処理を行うと、図9(C)のようなシノグラムが得られ、このシノグラムに対してステップS103の2値化処理を行うと、図9(D)のようなシノグラムが得られる。さらに、図9(D)のシノグラムを単純逆投影すると(ステップS104)、図9(E)のような逆投影画像が得られ、この逆投影画像に対してステップS105の2値化処理を行うと、図9(F)のような逆投影画像が得られる。図9(F)の逆投影画像に対してステップS106の投影処理を行うと、図10のようなシノグラムが得られる。このシノグラムのサインカーブを描いている領域は、図9(B)のサインカーブを描いている領域とほぼ同等であり、金属領域を正確に抽出できていることが分かる。
次に、補間処理部46は、ステップS106で投影処理部45が生成したシノグラムに基づいて金属領域を特定し、ステップS102でシノグラム生成部41が生成したシノグラム上において上記特定した金属領域に相当する領域を、チャンネル方向に沿って補間する(図3ステップS107)。
なお、補間処理としては線形補間、多項式補間、ウエブレット補間などが知られているが、何れの補間処理を採用してもよい。
図11はシノグラムの線形補間処理を説明する図であり、シノグラム生成部41が生成したシノグラムの1例を示す図である。上記のとおり、投影処理部45が生成したシノグラムにおいては金属領域が白色、金属以外の領域が黒色となっているので、補間処理部46は金属領域を容易に特定できる。また、図6、図9(B)〜図9(D)、図10、図11のシノグラムでは、縦方向がチャンネル方向(検出器20の検出素子200が並ぶ方向)である。
線形補間は、図11に示すようにシノグラム生成部41が生成したシノグラム上において金属領域と金属以外の領域との境界110の値と、チャンネル方向に沿って境界110と対向する境界111の値とを用いて、境界110と境界111との間の画素の値を補間するものである。金属領域と金属以外の領域との境界110、111の値として用いるのは、より正確にはチャンネル方向に沿って境界の外側に存在する金属以外の領域の画素のうち、直近に存在する画素の値である。このような線形補間により、金属が存在しないシノグラムを生成することができる。線形補間後のシノグラムを図12に示す。線形補間後のシノグラムは、記憶部40に格納される。
再構成処理部47は、補間処理部46が生成した線形補間後のシノグラムを、周知の画像再構成法により回動角度毎に計算上で2次元空間に逆投影することにより、再構成画像を生成する(図3ステップS108)。画像の再構成手法には、様々な手法があるが、一般的には処理速度の点からFBP(Filtered Back Projection)法が使用される。
図13(A)、図13(B)はFBP法の原理を説明する図である。FBP法は、上記の単純逆投影とは異なり、投影1次元データをフィルタ処理し、図13(A)に示すようにフィルタ処理した投影1次元データ130を回動角度毎に2次元空間に逆投影し、逆投影した各画像を重ね合わせて加算して図13(B)に示すような再構成画像131を得る。具体的には、投影1次元データをFFT(Fast Fourier Transform)により周波数空間に変換し、周波数空間上でフィルタ処理を適用し、逆FFTで実空間に戻して逆投影し、逆投影した各画像を重ね合わせて加算する。こうして、金属が存在しないシノグラムを再構成することで、金属が存在しない再構成画像(断面画像)を得ることができる。再構成処理部47が生成した再構成画像は、記憶部40に格納される。
合成処理部48は、再構成処理部47が生成した再構成画像と2値化処理部44が生成した逆投影画像とを対応する画素毎に重ね合わせることにより、最終的な再構成画像を生成する(図3ステップS109)。金属が存在しない再構成画像と金属のみの逆投影画像とを合成することにより、金属が存在する再構成画像(被検体100の断面画像)を得ることができる。この合成時において逆投影画像の金属領域には所定の輝度値を割り当てる。被検体100の断面画像において金属領域は金属であることが分かればよいので、逆投影画像において値が「1」となっている金属領域に割り当てる輝度値は任意の値でよい。合成処理部48が生成した再構成画像は、記憶部40に格納される。
表示装置5は、合成処理部48が生成した再構成画像を表示する(図3ステップS110)。以上で、X線CT装置の動作が終了する。
図14(A)〜図14(I)はCTアルゴリズムの線形性を説明する図である。図14(A)は被検体の断面画像の1例を示す図、図14(B)は図14(A)の断面画像を投影して得たシノグラムを示す図、図14(C)は図14(B)のシノグラムを再構成して得た再構成画像を示す図である。図14(D)は金属の断面画像の1例を示す図、図14(E)は図14(D)の断面画像を投影して得たシノグラムを示す図、図14(F)は図14(E)のシノグラムを再構成して得た再構成画像を示す図である。図14(G)は図14(A)の被検体の断面画像と図14(D)の金属の断面画像とを重ね合わせた図、図14(H)は図14(G)の断面画像を投影して得たシノグラムを示す図、図14(I)は図14(H)のシノグラムを再構成して得た再構成画像を示す図である。
図14(A)〜図14(I)は、図14(B)のシノグラムと図14(E)のシノグラムとを加算して図14(H)のシノグラムを生成して、このシノグラムを再構成した場合と、図14(C)の再構成画像と図14(F)の再構成画像とを加算した場合のいずれにおいても、図14(G)の断面画像に近似した図14(I)の再構成画像が得られることを示している。
図15(A)は本実施の形態のステップS103の処理によって2値化したシノグラムの1例を示す図であり、図11に示したシノグラムを2値化したものを示す図である。図15(A)のシノグラムをステップS104の処理によって単純逆投影すると、図15(B)のような逆投影画像となる。図15(B)の逆投影画像をステップS105の処理によって2値化すると、図15(C)のような逆投影画像となり、金属のみの逆投影画像を得ることができる。
図15(C)の逆投影画像をステップS106の処理によって投影すると、図15(D)のようなシノグラムとなる。図11に示したシノグラムをステップS107の処理によって線形補間すると、図15(E)のようなシノグラムとなり、金属の影響を除去したシノグラムを得ることができる。図15(E)のシノグラムをステップS108の処理によって再構成すると、図15(F)のような再構成画像となり、金属が存在しない再構成画像を得ることができる。さらに、ステップS109の処理によって図15(F)の再構成画像と図15(C)の逆投影画像とを重ね合わせると、図16のような再構成画像となり、金属が重畳された再構成画像を得ることができる。
図17は従来のX線CT装置によって得られた再構成画像を示す図である。この再構成画像は、図11、図15(A)〜図15(F)、図16の場合と同じ被検体から得た画像である。図17から明らかなように従来のX線CT装置では、金属アーチファクトが発生しているのに対し、図16に示した本実施の形態の再構成画像では、金属アーチファクトを大幅に低減できていることが分かる。
以上のように、本実施の形態では、シノグラムを2値化し、2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成し、逆投影画像を2値化することにより、金属のみの逆投影画像を得ることができる。その結果、本実施の形態では、従来よりも金属アーチファクトを低減し、金属の正確な形状を抽出することができる。また、本実施の形態では、2値化後の逆投影画像を計算上で投影してシノグラムを取得し、このシノグラムに基づいて金属領域を特定し、シノグラム生成部41が生成したシノグラム上において特定した金属領域を補間し、補間後のシノグラムを計算上で再構成して再構成画像を生成することにより、金属が存在しない被検体の断面画像を得ることができる。さらに、本実施の形態では、再構成処理部47が生成した再構成画像と2値化処理部44が生成した逆投影画像とを合成することにより、金属アーチファクトが少なく、かつ金属が正確な形状で重畳された被検体の断面画像を得ることができる。
金属アーチファクトは、再構成画像上で強力なノイズとなるため、再構成画像を用いた画像処理に多大な悪影響を及ぼす。例えば再構成画像を用いて、位相限定法を用いた位置決め、類似度計測などを行う場合、大きな問題となることが明確であるため、金属アーチファクト低減は、CTにより得られる画像を用いた画像処理に多大な効果をもたらすと考えられる。近年、X線以外の放射線を用いた透過による物体内部の観測方法の研究が進んできている。放射線の具体例としては、超音波、テラヘルツ光、電波(ミリ波)などが挙げられる。これらにおいても、その透過を遮蔽する物質に対しては同様の問題が発生すると思われるため、このような放射線を用いる場合にも、本発明は有効であると考えられる。
なお、本実施の形態では、X線CT装置の例として、広角ファンビームを用いて、被検体を固定して単一の断面を計測するファンビームスキャン方式に適用する場合について説明したが、これに限るものではなく、テーブルを動かしながら連続的にスキャンするヘリカルスキャン方式や、1次元の検出器を多層に配列したマルチスライスCTや2次元の検出器を用いるコーンビームCTなどの他の方式にも適用することができる。
また、本実施の形態の画像処理装置4は、CPU、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明したような処理を実行する。
本発明は、医療用や産業用などにおけるCTの画像処理技術に適用することができる。
本発明の実施の形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態におけるX線投影装置によるX線投影処理とX線撮像装置によるX線撮像処理とを説明する図である。 本発明の実施の形態に係るX線CT装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係るX線CT装置の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。 被検体の模式的な1例を示す図である。 図5の被検体から得られるシノグラムを示す図である。 図6のシノグラムの断面のX線吸収特性を示す図である。 本発明の実施の形態における単純逆投影の原理を説明するための図である。 本発明の実施の形態における被検体の断面画像の1例、被検体から得られるシノグラム、2値化後のシノグラム、逆投影画像、および2値化後の逆投影画像を示す図である。 図9の2値化後の逆投影画像を投影して得られるシノグラムを示す図である。 本発明の実施の形態におけるシノグラムの線形補間処理を説明する図である。 図11のシノグラムを線形補間した後のシノグラムを示す図である。 FBP法の原理を説明する図である。 CTアルゴリズムの線形性を説明する図である。 本発明の実施の形態における2値化したシノグラムの1例、逆投影画像、2値化後の逆投影画像、逆投影画像を投影して得たシノグラム、線形補間後のシノグラム、および線形補間後のシノグラムを再構成した再構成画像を示す図である。 図15の再構成画像と2値化後の逆投影画像とを重ね合わせた再構成画像を示す図である。 従来のX線CT装置によって得られた再構成画像を示す図である。 従来のX線CT画像再構成方法の処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
1…X線照射装置、2…X線撮像装置、3…制御装置、4…画像処理装置、5…表示装置、10…X線管、20…検出器、40…記憶部、41…シノグラム生成部、42…2値化処理部(第1の2値化処理部)、44…2値化処理部(第2の2値化処理部)、43…逆投影処理部、45…投影処理部、46…補間処理部、47…再構成処理部、48…合成処理部、100…被検体、101…X線、200…検出素子。

Claims (14)

  1. 被検体の周囲を回動しながら前記被検体に放射線を照射する放射線照射手段と、
    前記被検体を挟んで前記放射線照射手段と対向するように配置され、前記被検体の周囲を回動しながら前記被検体を透過した放射線を検出する放射線撮像手段と、
    前記放射線照射手段および放射線撮像手段の回動角度毎に前記放射線撮像手段から投影1次元データを収集し、各投影1次元データを回動角度順に並べたシノグラムを生成するシノグラム生成手段と、
    前記シノグラムを2値化する第1の2値化処理手段と、
    前記第1の2値化処理手段による2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成する逆投影処理手段と、
    前記逆投影画像を2値化する第2の2値化処理手段とを備えることを特徴とするCT装置。
  2. 請求項1記載のCT装置において、
    さらに、前記第2の2値化処理手段による2値化後の逆投影画像を計算上で投影してシノグラムを得る投影処理手段と、
    この投影処理手段が生成したシノグラムに基づいて金属領域を特定し、前記シノグラム生成手段が生成したシノグラム上において前記特定した金属領域を補間する補間処理手段と、
    この補間処理手段が生成した補間後のシノグラムを計算上で再構成して再構成画像を生成する再構成処理手段とを備えることを特徴とするCT装置。
  3. 請求項2記載のCT装置において、
    さらに、前記再構成処理手段が生成した再構成画像と前記第2の2値化処理手段が生成した逆投影画像とを合成する合成処理手段を備えることを特徴とするCT装置。
  4. 請求項1記載のCT装置において、
    前記第1の2値化処理手段は、金属領域と考えられる所定の閾値以上の領域を第1の値とし、金属以外の領域と考えられる前記閾値未満の領域を第2の値とすることにより、前記シノグラム生成手段が生成したシノグラムを2値化することを特徴とするCT装置。
  5. 請求項1記載のCT装置において、
    前記第2の2値化処理手段は、前記逆投影画像の最大値を閾値として前記逆投影画像を2値化することを特徴とするCT装置。
  6. 請求項2記載のCT装置において、
    前記補間処理手段は、前記シノグラム生成手段が生成したシノグラム上において前記放射線撮像手段の複数の検出素子が並ぶ方向に対応する方向をチャンネル方向としたとき、このシノグラム上において前記特定した金属領域を、チャンネル方向に沿った前記金属領域の両端の境界値を用いて補間することを特徴とするCT装置。
  7. 請求項3記載のCT装置において、
    前記合成処理手段は、前記合成時において前記逆投影画像の金属領域に所定の輝度値を割り当てることを特徴とするCT装置。
  8. 被検体の周囲を回動しながら前記被検体に放射線を照射する放射線照射手段と前記被検体の周囲を回動しながら前記被検体を透過した放射線を検出する放射線撮像手段とによって投影1次元データを取得する投影1次元データ取得手順と、
    前記放射線照射手段および放射線撮像手段の回動角度毎に前記放射線撮像手段が取得した投影1次元データから、各投影1次元データを回動角度順に並べたシノグラムを生成するシノグラム生成手順と、
    前記シノグラムを2値化する第1の2値化処理手順と、
    前記第1の2値化処理手順による2値化後のシノグラムを回動角度毎に計算上で2次元空間に単純逆投影して逆投影画像を生成する逆投影処理手順と、
    前記逆投影画像を2値化する第2の2値化処理手順とを備えることを特徴とする金属形状抽出方法。
  9. 請求項8記載の金属形状抽出方法において、
    さらに、前記第2の2値化処理手順による2値化後の逆投影画像を計算上で投影してシノグラムを得る投影処理手順と、
    この投影処理手順で生成されたシノグラムに基づいて金属領域を特定し、前記シノグラム生成手順で生成されたシノグラム上において前記特定した金属領域を補間する補間処理手順と、
    この補間処理手順で生成された補間後のシノグラムを計算上で再構成して再構成画像を生成する再構成処理手順とを備えることを特徴とする金属形状抽出方法。
  10. 請求項9記載の金属形状抽出方法において、
    さらに、前記再構成処理手順で生成された再構成画像と前記第2の2値化処理手順で生成された逆投影画像とを合成する合成処理手順を備えることを特徴とする金属形状抽出方法。
  11. 請求項8記載の金属形状抽出方法において、
    前記第1の2値化処理手順は、金属領域と考えられる所定の閾値以上の領域を第1の値とし、金属以外の領域と考えられる前記閾値未満の領域を第2の値とすることにより、前記シノグラム生成手順で生成されたシノグラムを2値化することを特徴とする金属形状抽出方法。
  12. 請求項8記載の金属形状抽出方法において、
    前記第2の2値化処理手順は、前記逆投影画像の最大値を閾値として前記逆投影画像を2値化することを特徴とする金属形状抽出方法。
  13. 請求項9記載の金属形状抽出方法において、
    前記補間処理手順は、前記シノグラム生成手順で生成されたシノグラム上において前記放射線撮像手段の複数の検出素子が並ぶ方向に対応する方向をチャンネル方向としたとき、このシノグラム上において前記特定した金属領域を、チャンネル方向に沿った前記金属領域の両端の境界値を用いて補間することを特徴とする金属形状抽出方法。
  14. 請求項10記載の金属形状抽出方法において、
    前記合成処理手順は、前記合成時において前記逆投影画像の金属領域に所定の輝度値を割り当てることを特徴とする金属形状抽出方法。
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