JP2010099086A - L−システイン生産菌及びl−システインの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エシェリヒア属細菌においてシステインデスルフヒドラーゼ活性を担う酵素及びその遺伝子を明らかにし、同遺伝子をL−システイン生産菌の育種に利用し、新たなL−システインの製造法を提供する。
【解決手段】 L−システイン生産能を有し、かつ、システインデスルフヒドラーゼ活性が低下又は欠失するようにMalY regulatory protein(MalY)遺伝子が改変されたエシェリヒア属細菌を培地で培養し、L−システインを培地中に生成蓄積させ、該培地よりL−システインを採取することにより、L−システインを製造する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、L−システインの製造法に関し、詳しくはL−システインの製造に好適な微生物、及びそれを用いたL−システインの製造法に関する。L−システイン及びL−システインの誘導体は、医薬品、化粧品及び食品分野で利用されている。
従来、L−システインは、毛髪、角、羽毛等のケラチン含有物質から抽出することにより、あるいはDL−2−アミノチアゾリン−4−カルボン酸を前駆体とする微生物酵素変換により得られている。また、新規な酵素を用いた固定化酵素法によるL−システインの大量生産も計画されている。
さらに、微生物を用いた発酵法によるL−システインの生産も試みられている。L−システインによるフィードバック阻害が低減された特定の変異を有するセリンアセチルトランスフェラーゼ(SAT)をコードするDNAを有する微生物を用いた、L−システインの製造法が知られている(特許文献1参照)。また、非特許文献1には、L−システインによるフィードバック阻害を受けないシロイヌナズナ由来のSATアイソザイムをコードする遺伝子を導入したエシェリヒア・コリを用いたL−システインの製造法が開示されている。一方、特許文献2には、抗生物質又は微生物に毒性の物質を細胞から直接放出するために好適である蛋白質をコードする遺伝子を過剰発現する微生物を用いたL−システインの製造法が報告されている。
また、本発明者らは、L−システイン分解系が抑制され、かつ、L−システインによるフィードバック阻害が低減されたセリンアセチルトランスフェラーゼ(serine acetyltransferase(EC 2.3.1.30):以下、「SAT」ともいう)を保持するエシェリヒア属細菌を用いたL−システインの製造法を開示している(特許文献3参照)。この文献では、L−システイン分解系を抑制する手段としては、細胞中のシステインデスルフヒドラーゼ(以下、「CD」ともいう)活性を低下させることが開示されている。
エシェリヒア・コリにおいて多少なりともCD活性をもつ酵素として、シスタチオニン−β−リアーゼ(metC産物。以下、「CBL」ともいう)(非特許文献2参照)、及びトリプトファナーゼ(tnaA産物。以下、「TNase」ともいう)(非特許文献3参照)が報告されている。特許文献4には、シスタチオニン−β−リアーゼ及びトリプトファナーゼ活性が低下したエシェリヒア属細菌を用いたL-システインの製造法が開示されていた。しかしながら、これら以外には、CD活性を有する酵素については知られていなかった。
特表2000−504926号公報 特開平11−56381号公報 特開平11−155571号公報 特開2003−169668号公報
FEMS Microbiol. Lett., vol.179 (1999) p453-459 Chandra et. al., Biochemistry, vol.21 (1982) p3064-3069 Austin Newton et. al., J. Biol. Chem. vol.240 (1965) p1211-1218
本発明は、CD活性を担う酵素及びその遺伝子を明らかにし、同遺伝子をL−システイン生産菌の育種に利用し、新たなL−システインの製造法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、O-アセチルセリン スルフヒドリラーゼB(OASS-B)及びMalY 調節タンパク質(MalY regulatory protein;MalY)がエシェリヒア・コリのCD活性を担う酵素であることを見出し、これらをコードする遺伝子を改変してCD活性を低下させることにより、L−システイン生産能を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1) L−システイン生産能を有し、かつ、システインデスルフヒドラーゼ活性が低下又は欠失するようにMalY 調節タンパク質をコードする遺伝子が改変されたエシェリヒア属細菌。
(2) MalY 調節タンパク質をコードする遺伝子が破壊された(1)のエシェリヒア属細菌。
(3) さらにL−システイン生合成系酵素活性が増強された(1)または(2)のエシェリヒア属細菌。
(4) L−システイン生合成系酵素がセリンアセチルトランスフェラーゼである(3)のエシェリヒア属細菌。
(5) セリンアセチルトランスフェラーゼがL−システインによるフィードバック阻害に非感受性のセリンアセチルトランスフェラーゼである(4)のエシェリヒア属細菌。
(6) エシェリヒア・コリである(1)〜(5)のいずれかのエシェリヒア属細菌。
(7) (1)〜(6)のいずれかのエシェリヒア属細菌を培地で培養し、L−システインを培地中に生成蓄積させ、該培地よりL−システインを採取する、L−システインの製造方法。
本発明の微生物を使用することにより、L−システインを効率よく発酵生産することができる。
エシェリヒア・コリ細胞抽出液Native-PAGEのCD活性染色の結果を示す図(写真)。 遺伝子破壊に使用したプライマーを示す図。 対照株及び各CD遺伝子破壊株の単位生育量あたりのL−システイン生産性を示すグラフ図。各グラフは、JM39(●)、JM39ΔtnaA(■), JM39ΔmetC(▲), JM39ΔcysM(*), JM39ΔmalY(+)、JM39ΔtnaAΔmetCΔmalYΔcysM(◆)を示す。
本発明のエシェリヒア属細菌は、L−システイン生産能を有し、かつ、CD活性が低下又は欠失するようにOASS-B又はMalY調節タンパク質をコードする遺伝子が改変されたエシェリヒア属細菌である。本発明のエシェリヒア属細菌は、L−システイン生産能を有し、かつ、CD活性が低下又は欠失するようにOASS-B遺伝子及びMalY遺伝子の両遺伝子が改変されたものであってもよい。本発明のエシェリヒア属細菌は、上記いずれかの細菌においてさらにL−システイン生合成系酵素活性が増強されたエシェリヒア属細菌であってもよい。また、上記いずれかの細菌において、さらに、トリプトファナーゼ(TNase)遺伝子及びシスタチオニン−β−リアーゼ(CBL)遺伝子のうちの1又は2種の遺伝子が改変されたも
のであってもよい。
本発明においてL−システイン生産能とは、本発明のエシェリヒア属細菌を培地に培養したときに、培地から回収することができる量のL−システインを培地中に蓄積する能力をいう。L−システイン生産能は、OASS-B遺伝子又はMalY遺伝子の改変とは別途付与されるものであってもよいが、これらの遺伝子の改変によって付与されたものであってもよい。さらに、L−システイン生産能を本来的に有する細菌を用いることもできる。尚、本発明においてL−システインとは、特記しない限り、還元型L−システインもしくはL−シスチンまたはこれらの混合物を指す。
エシェリヒア属細菌は、ナイトハルトらの著書(Neidhardt,F.C.et.al., Escherichia coli and Salmonella Typhimurium, American Society for Microbiology, Washington D.C.,1208, table 1)に挙げられるもの、例えばエシェリヒア・コリ等が利用できる。エシェリヒア・コリの野生株としては、例えばK12株又はその誘導体、エシェリヒア・コリ MG1655株(ATCC No.47076)、及びW3110株(ATCC No.27325)等が挙げられる。これらを
入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より分譲を受けることができる(住所 12301 Parklawn Drive,Rockville Maryland 20852,United
States of America )。
本発明の細菌は、上記のようなエシェリヒア属細菌を、CD活性が低下又は欠失するようにOASS-B遺伝子又はMalY遺伝子を改変し、さらに、L−システイン生産能を付与することによって得られる。また、L−システイン生産能を付与した後に、CD活性が低下又は欠失するようにOASS-B遺伝子、又はMalY遺伝子を改変することによっても取得することができる。さらに、これらの株においてTNase遺伝子、CBL遺伝子のうちの1又は2種の遺伝子を改変してもよい。
本発明のエシェリヒア属細菌を得る方法について、以下に具体的に説明する。
<1>OASS-B遺伝子又はMalY遺伝子の改変
エシェリヒア属細菌のCD活性が低下又は欠失するようにOASS-B又はMalY遺伝子を改変する方法としては、変異処理や遺伝子破壊などの方法を挙げることができる。変異処理法としては、例えば、エシェリヒア属細菌を紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、OASS-B遺伝子又はMalY遺伝子に変異が導入されて、CD活性が低下した変異株を選択する方法が挙げられる。ただし、OASS-B活性又はMalY活性を確実に低下又は消失させるためには、OASS-B、又はMalYをコードする遺伝子を用いた遺伝子破壊によって改変することが好ましい。
エシェリヒア・コリでは、OASS-BはCysM遺伝子、MalY調節タンパク質はMalY遺伝子によってそれぞれコードされている。これらの遺伝子の塩基配列は既に報告されている(cysM;GenBank accession M32101、J. Bacteriol. 172 (6), 3351-3357 (1990)、及びmalY;GenBank accession M60722、J. Bacteriol. 173 (15), 4862-4876 (1991))。したがって、それぞれの配列の基づいて合成したプライマーを用い、エシェリヒア・コリ染色体DNAを鋳型とするPCRによって、各々の遺伝子の破壊用DNA断片を取得することができる
。具体的には、例えば、OASS-Bをコードする遺伝子の内部を欠失し、正常に機能するOASS-Bを産生しないように改変したCysM遺伝子(欠失型CysM遺伝子)、又はMalYをコードする遺伝子の内部を欠失し、正常に機能するMalYを産生しないように改変したmalY遺伝子(欠失型malY遺伝子)を、図2に示したプライマーを用いたPCRにより取得することができる。なお、遺伝子破壊に使用するDNAは、必ずしも上記エシェリヒア・コリ由来のものである必要はなく、相同組換え可能なDNAである限り、他の生物由来のDNAや合成DNAを使用してもよい。具体的には、エシェリヒア・コリのcysM遺伝子又はmalY遺伝子の塩基配列と80
%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のホモロジーを有するDNAを使用することができる。
以下に、OASS-Bをコードする遺伝子を破壊する方法を説明するが、同様にしてMalYをコードする遺伝子を破壊することができる。
OASS-Bをコードする遺伝子の内部を欠失し、正常に機能するOASS-Bを産生しないように改変したCysM遺伝子(欠失型CysM遺伝子)を含むDNAでエシェリヒア属細菌を形質転換し、欠失型CysM遺伝子と染色体上のCysM遺伝子との間で組換えを起こさせることにより、染色体上のCysM遺伝子を破壊することができる。なお、形質転換に用いる改変遺伝子は、内部配列が欠失したものの他に、OASS-B遺伝子の発現産物の量が低下するようにプロモーターなどの発現調節領域に欠失又は変異が導入されたものや、OASS-B遺伝子産物の活性が低下するような部位特異的変異が導入されたものであってもよい。
このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、直鎖DNAを用いる方法や温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法などがある。エシェリヒア・コリ用の温度感受性複製起点を含むプラスミドとしては、例えばpMAN031(Yasueda, H. et al, Appl. Microbiol. Biotechnol., 36, 211 (1991))、pMAN997(WO99/03988号)、及びpEL3(K. A. Armstrong et. al., J. Mol. Biol. (1984) 175, 331-347)が挙げられる。
欠失型CysM遺伝子を、宿主染色体上のCysM遺伝子と置換するには、例えば以下のようにすればよい。温度感受性複製起点と、変異型CysM遺伝子と、アンピシリン又はクロラムフェニコール等の薬剤に耐性を示すマーカー遺伝子とをベクターに挿入して組換えDNAを調製し、この組換えDNAでエシェリヒア属細菌を形質転換し、温度感受性複製起点が機能しない温度で形質転換株を培養し、続いてこれを薬剤を含む培地で培養することにより、組換えDNAが染色体DNAに組み込まれた形質転換株が得られる。
こうして染色体に組換えDNAが組み込まれた株は、染色体上にもともと存在するCysM遺伝子配列との組換えを起こし、染色体CysM遺伝子と欠失型CysM遺伝子との融合遺伝子2個が組換えDNAの他の部分(ベクター部分、温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカー)を挟んだ状態で染色体に挿入されている。したがって、この状態では正常なCysM遺伝子が優性であるので、形質転換株は正常なCysMを発現する。
次に、染色体DNA上に欠失型CysM遺伝子のみを残すために、2個のCysM遺伝子の組換えにより1コピーのCysM遺伝子を、ベクター部分(温度感受性複製起点及び薬剤耐性マーカーを含む)とともに染色体DNAから脱落させる。その際、正常なCysM遺伝子が染色体DNA上に残され、欠失型CysM遺伝子が切り出される場合と、反対に欠失型CysM遺伝子が染色体DNA上に残され、正常なCysM遺伝子が切り出される場合がある。いずれの場合も、温度感受性複製起点が機能する温度で培養すれば、切り出されたDNAはプラスミド状で細胞内に保持される。次に、温度感受性複製起点が機能しない温度で培養すると、プラスミド上のCysM遺伝子は、プラスミドとともに細胞から脱落する。そして、PCRまたはサ
ザンハイブリダイゼーション等により、染色体上に欠失型CysM遺伝子が残った株を選択することによって、CysM遺伝子が破壊された株を取得することができる。
上記のようにして取得された遺伝子破壊株又は変異株のCD活性が低下又は消失していることは、候補株の菌体抽出液について、実施例に記載のCD活性染色や硫化水素を定量する方法等によりCD活性を測定し、親株又は非改変株のCD活性と比較することにより確認することができる。
なお、本発明の細菌は、さらに、トリプトファナーゼ(TNase)及び/又はシスタチオニン−β−リアーゼ(CBL)をコードする遺伝子が改変されたものであってもよい。これらの遺伝子(tnaA遺伝子又はmetC遺伝子)を改変する方法については、特開2003-169668
号公報に詳細に記載されている。
<2>L−システイン生合成系酵素活性の増強
本発明の細菌は、L−システイン生合成系酵素活性が増強されたものであってもよい。
L−システイン生合成系酵素活性の増強は、例えば、セリンアセチルトランスフェラーゼ(SAT)活性を増強することによって行うことができる。エシェリヒア属細菌細胞内のSAT活性の増強は、SATをコードする遺伝子のコピー数を高めることによって達成される。例えば、SATをコードする遺伝子断片を、エシェリヒア属細菌で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これを宿主エシェリヒア属細菌に導入して形質転換すればよい。
SAT遺伝子は、エシェリヒア属細菌由来の遺伝子および他の生物由来の遺伝子のいずれも使用することができる。エシェリヒア・コリのSATをコードする遺伝子として、cysEが野生株及びL−システイン分泌変異株よりクローニングされ、塩基配列が明らかになっている(Denk, D. and Boeck, A., J. General Microbiol., 133, 515-525 (1987))。したがって、その塩基配列(配列番号31)に基づいて作製したプライマーを用いて、エシェリヒア属細菌の染色体DNAを鋳型とするPCRによって、SAT遺伝子を取得することができる(特開平11-155571号参照)。他の生物のSATをコードする遺伝子も、同様にして取得され得る。
染色体DNAは、DNA供与体である細菌から、例えば、斎藤、三浦の方法(H. Saito and K.Miura, Biochem.B iophys. Acta, 72, 619 (1963)、生物工学実験書、日本生物工学会編、97〜98頁、培風館、1992年参照)等により調製することができる。
PCR法により増幅されたSAT遺伝子を含むDNA断片をエシェリヒア属細菌に導入するには、通常のタンパク質発現に用いられる種々のベクターを用いることができる。このようなベクターとしては、pUC19、pUC18、pHSG299, pHSG399, pHSG398, RSF1010, pBR322, pACYC184, pMW219等が挙げられる。
SAT遺伝子を含む組換えベクターをエシェリヒア属細菌に導入するには、D.A.Morrisonの方法(Methods in Enzymology 68, 326 (1979))あるいは受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))等、エシェリヒア属細菌の形質転換に通常用いられている方法により行うことができる。
SAT遺伝子のコピー数を高めることは、SAT遺伝子をエシェリヒア属細菌の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。エシェリヒア属細菌の染色体DNA上にSAT遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、SAT遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。
SAT活性の増強は、上記の遺伝子増幅による以外に、染色体DNA上またはプラスミド上のSAT遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することによっても達成される(特開平1-215280号公報参照)。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。発現調節配列の置換は、例え
ば温度感受性プラスミドを用いた遺伝子置換によっても行うことができる。
また、国際公開WO00/18935に開示されているように、SAT遺伝子のプロモーター領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強力なものに改変することも可能である。これらのプロモーター置換または改変によりSAT遺伝子の発現が増強され、SAT活性が増強される。これら発現調節配列の改変は、SAT遺伝子のコピー数を高めることと組み合わせてもよい。
さらに、SAT遺伝子の発現に「L−システインによるフィードバック阻害」などの抑制機構が存在する場合には、該抑制機構に非感受性となるように、発現調節配列又は抑制に関与する遺伝子を改変することによっても、SAT遺伝子の発現を増強することができる。
例えば、L−システインによるフィードバック阻害が低減又は解除されたSAT(以下、「変異型SAT」ともいう)をエシェリヒア属細菌に保持させることによって、SAT活性をさらに上昇させることができる。変異型SATとしては、野生型SAT(配列番号32)の256位のメチオニン残基に相当するアミノ酸残基をリジン残基及びロイシン残基以外のアミノ酸残基に置換する変異、又は256位のメチオニン残基に相当するアミノ酸残基からC末端側の領域を欠失させる変異を有するSATが挙げられる。前記リジン残基及びロイシン残基以外のアミノ酸残基としては、通常のタンパク質を構成するアミノ酸のうち、メチオニン残基、リジン残基及びロイシン残基を除く17種類のアミノ酸残基が挙げられる。より具体的にはイソロイシン残基が挙げられる。野生型SAT遺伝子に所望の変異を導入する方法としては、部位特異的変異が挙げられる。変異型SAT遺伝子としては、エシェリヒア・コリの変異型SATをコードする変異型cysEが知られている(WO 97/15673号国際公開パンフレット、特開平11-155571号参照)。256位のメチオニン残基をグルタミン酸残基に置換した変異型SATをコードする変異型cysEを含むプラスミドpCEM256Eを保持するエシェリヒア・コリJM39-8株(E. coli JM39-8(pCEM256E)、プライベートナンバー:AJ13391)は、平成9年11月20日より工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、FERM P-16527の受託番号のもとで寄託されている。
また、エシェリヒア属細菌に変異型SATを保持させるには、細胞内のSAT遺伝子に、コードされるSATのL−システインによるフィードバック阻害が解除されるような変異を導入することによって行うことができる。変異の導入は、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常の突然変異に用いられている変異剤による処理によって行うことができる。
なお、本発明において、「L−システインによるフィードバック阻害に非感受性」とは、上記のようにL−システインによるフィードバック阻害に非感受性になるように改変されるものであってもよいが、元来フィードバック阻害を受けないものであってもよい。シロイヌナズナのSATは、L−システインによるフィードバック阻害を受けないことが知られており、本発明に好適に用いることができる。シロイヌナズナ由来のSAT遺伝子含有プラスミドとして、pEAS-m(FEMS Microbiol. Lett., 179 (1999) 453-459)が知られている。
<3>L−システインの生産
上記のようにして得られる本発明のエシェリヒア属細菌を好適な培地で培養し、該培養物中にL−システインを生産蓄積せしめ、該培養物からL−システインを採取することにより、L−システインを効率よく、かつ、安定に製造することができる。尚、本発明の方法により製造されるL−システインには、還元型のシステインに加えてシスチンも含まれる場合があるが、本発明の製造法の対象物にはシスチン又は還元型のシステイン及びシスチンの混合物も含まれる。
使用する培地としては、炭素源、窒素源、イオウ源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地が挙げられる。炭素源としては、グルコース、フラクトース、シュクロース、糖蜜やでんぷんの加水分解物などの糖類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
イオウ源としては、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の無機硫黄化合物が挙げられる。有機微量栄養源としては、ビタミンB1などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じてリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
培養は好気的条件下で30〜90時間実施するのがよく、培養温度は25℃〜37℃に、培養中pHは5〜8に制御することが好ましい。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。培養物からのL−システインの採取は通常のイオン交換樹脂法、沈澱法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
1−1.菌株
CD遺伝子の同定には、cysE欠損株であるエシェリヒア・コリJM39(F+ cysE51 tfr-8
)(Denk, D. and Bock, A., J. Gene. Microbiol, 133, 515-525(1987))を用いた。CD遺伝子破壊株として、JM39ΔtnaA, JM39ΔmetC, JM39ΔcysM, JM39ΔmalY, JM39ΔcysKの単独CD遺伝子破壊株、そして、二重CD遺伝子破壊株JM39ΔtnaAΔmetC、JM39ΔcysKΔcysM及び四重CD遺伝子破壊株JM39ΔtnaAΔmetCΔcysMΔmalY、五重CD遺伝子破壊株JM39ΔtnaAΔmetCΔcysKΔcysMΔmalYを作製した。システイン生産では、JM39とJM39ΔtnaA, JM39ΔmetC, JM39ΔcysM, JM39ΔmalYの単独CD遺伝子破壊株、そして四重CD遺伝子破壊株JM39ΔtnaAΔmetCΔmalYΔcysMの計6株において、シロイヌナズナ由来のSAT遺伝子含有プラスミドpEAS-m(FEMS Microbiol. Lett., 179 (1999) 453-459)を導入した株を用いた。
1−2.プラスミド
CDの同定には、E. coliの全遺伝子 (ORF) 4,388個を含むpCA24Nプラスミドライブラリー(4,388種類のプラスミドが48枚の96穴プレートの各ウェルに分注されている)を使用した。このプラスミドライブラリーは、pCA24Nというベクターのlacプロモーターの下流に4,388個存在すると推定されているE .coliのORF全てが各々連結されていて、その発現は、IPTGによって誘導されるものである。また、遺伝子破壊用には、プラスミドpEL3(K.A. Armstrong et. al., J. Mol. Biol. (1984) 175, 331-347)を用い、pEL3gdtnaA, pEL3gdmetC, pEL3gdcysM, pEL3gdcysK, pEL3gdmalYを構築して使用した。その構築は後記する。
1−3.培地
E. coliの形質転換や一般的な培養には完全培地LBを、最小培地としてM9培地(Na2HPO4
6g/L、KH2PO4 3g/L、NaCl 0.5g/L、MgSO4・7H2O 0.25g/L、CaCl2・4H2O 0.015mg/L、グルコース 4g/L、チアミン・HCl 0.001g/L)を使用し、必要に応じてアンピシリン (Amp) を添加した。実験に応じて、10〜30mMのシステインを添加したLB液体培地を使用した。また、培養は特記しない場合37℃で行った。システインの生産培養は、C1(グルコース 30g/L、NH4Cl 10g/L、KH2PO4 2g/L、MgSO4・7H2O 1g/L、FeSO4・7H2O 10mg/L、MnCl2・4H2O 10
mg/L、CaCO3 20g/L) + チオ硫酸ナトリウム培地を用い、システイン定量のためのアッセイ培地も同じ組成の培地を用いた。
1−4. 細胞抽出液の調製
培養菌体からの細胞抽出液の調製は、超音波破砕によって行った。超音波破砕機その際に用いたBufferの組成は、[ [ 100 mM Tris-HCl (pH 8.6), 100 mM DTT ( (±)-Dithiothreitol ), 10 mM PLP ( Pyridoxal Phosphate ) ] ] である。
1−5. Native-PAGEゲルの組成とNative-PAGE
後述するCD活性染色によって、CDの同定や確認、CD遺伝子破壊株の構築を確認する等のために、細胞抽出液中のタンパク質を未変性状態のまま分離する必要があるためSDSを含まないNative-PAGEゲルを作製した。分離ゲル3枚分の組成は、12.5%ゲル [ Acrylamide/Bisacrylamide/amide (37 : 5 : 1) 6.4 ml, 1 M Tris-HCl (pH 8.7) 6.7 ml, dH2O 6.8 ml,
10% APS (Ammonium persulfate) 100 μl, TEMED (N, N, N, N'-Tetra-methyl-etylenediamine) 10 μl ]で、10%ゲル [ Acrylamide / Bisacrylamide / amide (37 : 5 : 1) 5.1 ml, 1 M Tris-HCl (pH 8.7) 6.7 ml, dH2O 8.1 ml, 10% APS 100 μl, TEMED 10 μl] である。また、濃縮ゲルは4.5%で、3枚分の組成は、[ Acrylamide / Bisacrylamide /amide (37 : 5 : 1) 0.7 ml, 1 M Tris-HCl (pH 6.8) 0.75 ml, dH2O 4.52 ml, 10% APS30 μl, TEMED 5 μl ]である。Native-PAGEは、ミニスラブ式電気泳動装置 (AEW-6500, ATTO社製)を用い、30 μg〜50 μgの細胞抽出液を2×Native-PAGE buffer と混合してゲルにアプライし、200 V, 20 mA/gelで、2時間から4時間泳動を行った。その際用いた泳動Bufferの1 L中の組成は、(L-Glycine 14.43 g, Tris 3.0 g) で、pH 8.6に調整した。
1−6.CD活性染色
CD活性を持つ酵素の存在を、特異的に視覚化し検出する方法としてCD活性染色法を用いた。1-5に記述したように細胞抽出液中のタンパク質を泳動分離後、CD活性染色液にゲルを浸し、室温で数時間から一晩、振とうしながら放置してCDのバンドを検出した。CD活性染色液の100 ml中の組成は、 [Tris 1.21 g, EDTA 0.372 g, L-Cysteine (システイン) 0.605 g, BiCl3 (塩化ビスマス)50 mg, 10 mM PLP 200 μl]で、pH 8.6である。CD活性染色は、Native-PAGEゲルで分離されたCDがゲル中の存在する場所で、その触媒反応によってCD活性染色液中に含まれるシステインをピルビン酸とアンモニア、H2Sに分解する。生成したH2Sは、同じくCD活性染色液中に含まれる塩化ビスマス (BiCl3)と反応し硫化ビスマス (Bi2S3)となって黒色バンドを呈するという原理を利用して行った。
1−7. E. coli全遺伝子プラスミドライブラリーを用いたCDの同定
各プラスミドが分注された48枚分の96穴プレートを、プレートナンバー1〜5、6〜10と言うように区切り、5プレート分毎の混合プラスミド液 (それぞれ480種類のプラスミドが含まれる)を9種類調製した。それぞれの混合プラスミド溶液を用い、JM39株を形質転換して、それぞれ約10,000コロニー分の形質転換体をグリセロールストックした。9種類のグリセロールストック溶液をLB + クロラムフェニコール (Cm) + 0.01 mM IPTG培地に添加して培養後、細胞抽出液を調製し、Native-PAGEに供したあとCD活性染色を行ってどの混合プラスミド溶液に目的のCDが存在するか検出した。目的のCDをコードする遺伝子が480種類に絞り込むことができたので、次に、96種類 まで絞り込む操作を行った。480種類のプラスミドを96種類ごとに分けた5つの混合プラスミド溶液を調製した。それぞれの混合プラスミド溶液でJM39株を形質転換し、形質転換体約6,000コロニー分をグリセロールストック後、培養してCD活性染色を行い目的のCDが存在する混合プラスミド溶液を確認した。目的のCDをコードする遺伝子を96種類にまで絞り込んだあと、さらに8種類に絞り込み、最後は、8種類のタンパク質をそれぞれ発現させてCD活性染色を行って目的のCDを同定した。
1−8. CD遺伝子破壊用プラスミドの構築
各CD遺伝子を破壊するために、温度感受性の複製開始点をもったプラスミドpEL3を用いて、5種類の破壊用プラスミド、pEL3gdtnaA , pEL3gdmetC ,pEL3gdcysM, pEL3gdcysK, pEL3gdmalYを構築した。これらの作製法を以下に示す。すなわち、E. coli JM39のゲノムを鋳型に、破壊したい各CD遺伝子の2箇所の領域で、300 bp〜700 bp のDNA断片をPCRによって増幅した。このDNA断片をそれぞれ相同領域DNA断片-AとBとする。用いたプライマーは、図2に記載した。相同領域DNA断片-Aの増幅には、各CD遺伝子破壊用プライマー1と2を用い、相同領域DNA断片-Bの増幅には3と4を用いた。プライマーのDNA配列内には制限酵素サイトが設計してあり、増幅した相同領域DNA断片の両末端には制限酵素サイトが付加される。A, B両断片に共通の制限酵素(KpnI、HindIII、又はEcoRI)で処理後、両断片をライゲーションさせて各CD遺伝子破壊用断片作成用の鋳型とした。各CD遺伝子破壊用プライマー1と4を用いてPCRにより各CD遺伝子破壊用断片を大量に調製した。破壊用断片とpEL3をBamHI制限酵素処理し、それぞれを連結させて各CD遺伝子破壊用プラスミドを構築した。構築の確認はDNAシーケンシングによって行った。
1−10. CD遺伝子破壊操作
1-9のように構築した破壊用プラスミドを用いて、E. coli JM39株からCD遺伝子破壊株の構築を行った。まず、JM39に各破壊用プラスミドを導入し形質転換体を得た。温度感受性プラスミドpEL3の制限温度は42 ℃で、通常のE. coliの培養温度である37 ℃は制限温度以下であるが、念のために30 ℃で培養を行った。次に各形質転換体をLB + Amp培地で30 ℃、一晩培養後、培養液を103希釈し、200 μlの希釈液をLB + Ampプレートに塗り広げた。42 ℃で培養することにより、プラスミドが複製不可能になり、そのままの状態では形質転換体がAmpによって生育阻害を受け、コロニー形成できない条件にした。そのような培養条件下において、複製が止まったプラスミド上の各破壊用断片とJM39株の染色体に存在する相同領域で相同組換えを起こし、破壊用プラスミドの全長が染色体に組み込まれることでAmp耐性のコロニーを形成した破壊用プラスミド組み込み株をスクリーニングした。破壊用プラスミドの染色体への組み込みの確認は、図2に記載した各CD遺伝子破壊用プライマーのFWとRVを用いたPCRによって確認した。破壊用プラスミドの染色体組み込みを確認したコロニーをLB液体培地で培養し、再度相同組み替えを起こして破壊用断片だけが残り、プラスミド配列と目的遺伝子を欠落させる操作を行った。LB液体培地で、数度植え継いで培養し、LB寒天培地で200〜300コロニー形成するように培養液を希釈して塗り広げた。生育してきたコロニーをLBとLB + Amp寒天培地にレプリカし、Amp感受性コロニーを選び出した。そして、FWとRVプライマーを用いたコロニーPCRを行い破壊用断片だけが残ったCD遺伝子破壊株をスクリーニングした。
破壊株についてCD活性染色を行い、破壊遺伝子に由来するCD活性の消失を確認した。また、多重CD遺伝子破壊株の構築は、構築の完了したCD遺伝子破壊株に、続けて目的のCD遺伝子を破壊する操作を行うことを繰り返すことで行った。
1−11. total CD活性測定 (硫化物・H2S定量法)
細胞抽出液中の全CDの活性 (total CD活性)を、システインがCDによって分解され発生
する硫化水素 (H2S) の量を定量することで測定した。活性を測定したい菌株を、5 mlのLBおよびLB + 10mMシステイン培地で37 ℃一晩培養後、細胞抽出液を2-2-4のように調製した。活性測定bufferの組成は、[ 100mM Tris-HCl (pH 8.6), 100 μM DTT, 10 mM PLP, 2μM L-Cysteine ]で、活性測定buffer 1 mlに細胞抽出液10 mlを添加し、30 ℃で10分間反応させた。また、検量線用に水および0.1 mM, 0.2 mM, 2 mMのNa2Sをそれぞれ10 μl活性測定bufferに添加し、同様にインキュベートした。反応終了後、100 mlの20 mM N, N-ジメチル-P-フェニルジアミン硫酸塩 (in 7.2 N HCl)と同量の30 mM FeCl3 (in 1.2 N HCl)を添加し激しく混合後、暗所で15分間静置した。N, N-ジメチル-P-フェニルジアミン硫酸塩 は、塩酸酸性で酸化剤として塩化鉄を共存させると試料中の硫化物と反応してチアジン色素メチレンブルーを生じ緑青ないし青色を呈する。この反応を15分間で生じさせた
。15分の静置後、OD650を測定し1 μmolのH2Sを与える酵素量を1Uと定義し活性を算出した。
1−12. システイン生産培養
得られた各形質転換株を、C1 + チオ硫酸ナトリウム(チオ硫酸 15g/L)培地を20mL入れた坂口フラスコに接種し、37℃で培養し、24、48、72および96時間後の上清のL−システイン含量を定量した。L−システインの含量は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)を用いるバイオアッセイ(Tsunoda, T. et al., Amino acids, 3, 7-13 (1961))により、還元型システイン及びシスチンの総量として測定した。
2. 結果
2-1. E. coli CDの存在の確認
E. coliに存在するCDを確認するために、JM39株の細胞抽出液を調製してNative-PAGEに供し、約2時間の泳動でタンパク質を分離後、活性染色を行った。その結果を図1に示す。CD活性を示す5本のバンドが検出できた。本実験により、E. coliにはCDが少なくとも5種類存在することがわかった。このうち、2つは、トリプトファナーゼ(TNase)、シスタチオニン−β−リアーゼ(CBL)であることがアミノ酸分析等によって明らかになっている(特開2003-169668号公報)。残りの3つを同定するために以下の実験を行った。
2-3. E. coli全遺伝子プラスミドライブラリーを用いた未同定CDの同定
E. coliのゲノムには、4,388個の遺伝子(ORF)が存在すると推定されている。それら全ORFを個々にプラスミドに連結したE. coli全ORFライブラリーを使用して、1−7に記した手順でCDの同定を続けた。CD活性染色で未同定CDのバンドを検出することによって、未同定CDをコードしている遺伝子が連結されているプラスミドをまず、4,388種類から480種類に絞り込み、次に96種類、さらに8種類と絞り込んだ。最後に8種類のプラスミドをそれぞれ評価したところ、cysM遺伝子、cysK遺伝子及びmalY遺伝子がコードするタンパク質が未同定CDであることを突き止めることができた。E. coliのcysMは、O-acetyl L-serinesulfhydlase-B (OASS-B)をコードしていることが報告されている(J. Bacteriol. 172 (6), 3351-3357 (1990))。また、cysKはO-acetyl L-serinesulfhydlase-A (OASS-A)をコードしていることが報告されている(Mol. Microbiol. 2 (6), 777-783 (1988))。さらに、malYは、マルトース資化経路遺伝子群の調節因子であり、CBLとその立体構造が相似していて、C-Sリアーゼ反応を触媒することも見出されたタンパク質であるMalYをコードしていることが報告されている(EMBO J. 2000,Mar; 19(5): 831-842)。
2-4. CDの確認
2−3で同定したOASS-B、OASS-A及びMalYがCDであることは、JM39株においてこれらの遺伝子を過剰発現させることにより確認できた。すなわち、各遺伝子を過剰発現させCD活性染色によってバンドを検出したところ、染色されるバンドがJM株に比べて濃くなり、各遺伝子がCD活性を有するタンパク質をコードすることがわかった。
2-5. CD遺伝子破壊株の構築
E. coliに存在する 5つのCDを全て同定することができたので、各CD遺伝子破壊株の構築を行った。なお、JM39ΔtnaA JM39ΔmetC 株については特開2003-169668号公報にもその作製方法が開示されている。まず、1−8のような手順でtnaA, metC, cysM, cysK, malYそれぞれの破壊用プラスミド、pEL3gdtnaA , pEL3gdmetC ,pEL3gdcysM, pEL3gdcysK, pEL3gdmalYを構築し、JM39に導入して破壊の操作を行い、それぞれの単独破壊株を構築した。さらに、遺伝子破壊を繰り返してtnaA, metC, cysM, malY が破壊された4重破壊株JM39ΔtnaAΔmetCΔcysMΔmalYなどの多重破壊株についても作製した。遺伝子破壊の操作後、コロニーPCRによって増幅したDNA断片の鎖長から、遺伝子レベルで破壊の確認を行い、さらにCD活性染色によって各CDが目的通り破壊され活性を失っていることを確認した。
2-6. total CD活性測定
1−11の方法に従って、本研究で用いた全CD遺伝子破壊株のtotal CD活性を測定した。結果を表1に示す。その結果、まず、LB培地で培養した場合の各菌株のtotal CD活性を親株のJM39と比較すると、全ての破壊株で活性の低下が認められた。多重破壊株の活性をJM39の活性と比較すると、JM39ΔcysMΔcysKを除き顕著な活性の低下が認められた。また、その活性の低下は、各単独破壊株の活性低下と比較しても有意であった。JM39ΔcysMΔcysKの活性もそれぞれの単独破壊株の活性と比較すると低下していた。次に、システインを培地に添加して培養した場合のtotal CD活性を分析した。JM39ΔtnaA を除いたすべての株において、LB培地で培養した場合の活性と比較して顕著な活性の増加が認められた。
Figure 2010099086
2-7. CD遺伝子破壊株を用いたシステイン生産
JM39とJM39ΔtnaA, JM39ΔmetC, JM39ΔcysM, JM39ΔmalYの単独CD遺伝子破壊株 を4株、そして四重CD遺伝子破壊株 JM39ΔtnaAΔmetCΔmalYΔcysMの計6株に、A. thaliana SAT-m プラスミド・pEAS-mを導入してシステイン生産に使用した。1-12の方法にしたがってシステインの生産培養を行い、システインの定量を行った。対照株及び各CD遺伝子破壊株のシステイン生産量を生育度 (Growth: OD562値)で割った値の経時変化を表2又は図3に示す。なお、生育度はJM39ΔtnaAについてはやや低下したが、その他の破壊株は対照株JM39とほとんど変わらなかった。
Figure 2010099086
各破壊株のL-システイン生産量は、いずれも対照株JM39の値を上回った。したがって、CD遺伝子を破壊しシステインの分解系を抑制することが、システインの生産性を向上させるために効果的であることが明らかになった。なお、cysK破壊株を使用した場合は、C1 +チオ硫酸ナトリウムのシステイン生産培地を用いる限り、システインをほとんど合成す
ることができなかった。
本発明の細菌を使用することにより、L−システインを効率よく製造することができる。L−システイン及びL−システインの誘導体は、医薬品、化粧品及び食品分野で有用である。

Claims (7)

  1. L−システイン生産能を有し、かつ、システインデスルフヒドラーゼ活性が低下又は欠失するようにMalY 調節タンパク質をコードする遺伝子が改変されたエシェリヒア属細菌。
  2. MalY 調節タンパク質をコードする遺伝子が破壊された請求項1に記載のエシェリヒア属
    細菌。
  3. さらにL−システイン生合成系酵素活性が増強された請求項1または2に記載のエシェリヒア属細菌。
  4. L−システイン生合成系酵素がセリンアセチルトランスフェラーゼである請求項3に記載のエシェリヒア属細菌。
  5. セリンアセチルトランスフェラーゼがL−システインによるフィードバック阻害に非感受性のセリンアセチルトランスフェラーゼである、請求項4に記載のエシェリヒア属細菌。
  6. エシェリヒア・コリである請求項1〜5のいずれか一項に記載のエシェリヒア属細菌。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のエシェリヒア属細菌を培地で培養し、L−システインを培地中に生成蓄積させ、該培地よりL−システインを採取する、L−システインの製造方法。
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