JP2010095601A - プロピレン系重合体の製造方法 - Google Patents

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Shinji Okada
晋爾 岡田
Shigeo Mizukami
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Abstract

【課題】チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分とするチーグラー型固体触媒成分を用い、フィッシュアイの問題も無く広い分子量分布を有するプロピレン系重合体の安定且つ効率的な製造方法の提供。
【解決手段】二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した連続式重合プロセスにおいて、(A)チタン、マグネシウム及びハロゲンを含有する原料固体成分、(B)Si−OR結合を2つ以上含有する有機ケイ素化合物、(C)周期表1〜3族金属の有機金属化合物を接触させて得られるチーグラー型固体触媒成分(a)を用い、第一槽目に、触媒成分(a)、有機アルミニウム(b)、水素及びプロピレンを供給し、第二槽目に、水素を供給し、水素は、塊状重合で供給する90%以上を第一槽目にフィードし、第一槽目と第二槽目のプロピレン系重合体の生産比率が20/80〜80/20であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系重合体の製造方法に関し、詳しくは、特定のチーグラー型固体触媒成分を用い、二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した連続式重合プロセスにおいて、各槽に水素を特定量比フィードすることで分子量分布の広いプロピレン系重合体を製造する方法に関する。
ポリプロピレンは、その優れた物性のために食品容器、トレイ等の真空・圧空成形品、フィルム・シートの如き押出成形品などの分野でも広く使用されているが、溶融時の弾性的性質に乏しいために成形時の生産性が低く、溶融弾性の改良が望まれていた。そこで、以前よりポリプロピレンの分子量分布を広げることにより溶融弾性を向上させる方法が提案されている。
例えば、極限粘度[η]の異なる複数のポリプロピレン樹脂を溶融混練して分子量分布の広いポリプロピレン樹脂を得る方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この手法の重合工程外(オフライン)での混合は、プロピレンの重合工程において両成分を交互に生成させる、いわゆる重合ブレンドに比べると、両成分の混ざり度合いが悪くフィッシュアイが発生しやすい。また生産性も低いという問題がある。
更に、2段重合により、溶融張力および剛性が高く、かつ成形性に優れたポリプロピレンを製造する方法が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法は、第一段目の重合において極限粘度[η]が0.5〜3.0dl/gのポリプロピレンを全重合体の50〜85重量%生成させ、次に第2段目の重合において極限粘度[η]が9dl/g、メルトフローレート(MFR)が0.01〜5g/1.0分、アイソタクチックペンタッド分率が0.940以上の結晶性ポリプロピレン組成物を製造する方法である。しかしながら、特許文献2の方法は、三塩化チタン触媒を使用し、更にスラリープロセスで行っているため、触媒活性が低く、また生産性、コストに課題があった。
また、2段以上の多段重合により、溶融張力および剛性が高く、かつ成形性に優れたポリプロピレンを製造する方法が報告されている(例えば、特許文献3参照。)。この方法は、チタン、マグネシウム及びハロゲンを含有する、いわゆるマグネシウム担持型チーグラー触媒を用いており、第1段目の重合において水素の非存在下でプロピレンを重合させて、極限粘度[η]が8〜13dl/gのポリプロピレンを全重合体の15〜50重量%生成させ、次に第2段目以降の重合において極限粘度[η]が8dl/g未満のポリプロピレンが生成するようにプロピレンの重合を行い、最終的に得られるポリプロピレン樹脂組成物全体のメルトフローレート(MFR)が0.01〜5g/10分、アイソタクチックペンタッド分率が97%以上の結晶性ポリプロピレン組成物を製造する方法である。しかしながら、この手法は、高分子量成分を製造した後、低分子量成分を製造する方法であり、この方法では一般にフィッシュアイが発生し易い傾向にある。その理由としては、高分子量成分を製造した時点で部分的に触媒が失活することがあり、ある一部分において、低分子量成分が存在せず、高分子量成分だけになることがある。この場合、その一部分においてオフライン混合と同様に不均一な混合状態が発生することになる。即ち、重合途中の触媒失活のため、重合ブレンド効果が低減する結果を招く。
特開昭58−7439号公報 特開昭59−149907号公報 国際公開第99/07752号パンフレット
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分とするチーグラー型固体触媒成分を用い、フィッシュアイの問題も無く、広い分子量分布を有するプロピレン系重合体を安定且つ効率的に製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、ある特定のチーグラー型固体触媒成分を用い、二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した重合プロセスにおいて第一槽目に、触媒成分、有機アルミニウム、及び水素を供給し、水素については、二つの塊状重合で供給する90%以上を第一槽目にフィードすることで、分子量分布の広いプロピレン系重合体が製造可能なことを見出した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した連続式重合プロセスにおいて、下記成分(A)〜(C)を接触させて得られることを特徴とするチーグラー型固体触媒成分(a)を用い、
第一槽目に、触媒成分(a)、有機アルミニウム(b)、水素及びプロピレンを供給し、
第二槽目に、水素を供給し、
水素は、塊状重合で供給する90%以上を第一槽目にフィードし、
第一槽目と第二槽目のプロピレン系重合体の生産比率が20/80〜80/20であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
成分(A):チタン、マグネシウム及びハロゲンを含有する原料固体成分
成分(B):Si−OR結合を2つ以上含有する有機ケイ素化合物(但し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基である。)
成分(C):周期表1〜3族金属の有機金属化合物
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、チーグラー型固体触媒成分(a)が、更に下記成分(D)を接触させて得られることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
成分(D):ビニルシラン化合物
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、チーグラー型固体触媒成分(a)の水素レスポンス性が、下記式(1)を満たすことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
logMFR=alog[H]+b ・・・(1)
(式(1)中、a>2であり、bは任意の実数を表す)
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、プロピレン系重合体がプロピレン単独重合体か、α−オレフィン含量が5重量%以下のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるプロピレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が5.5〜10.0であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、13C−NMRで測定されるプロピレン系共重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
本発明の製造方法により、分子量分布が通常のチタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分とするチーグラー型固体触媒成分で製造するプロピレン系重合体に比べ大きく広がるプロピレン系重合体が得られる。
本発明は、二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した連続式重合プロセスにおいて、成分(A)〜(C)、好ましくは、更に成分(D)を接触させて得られるチーグラー型固体触媒成分(a)を用い、第一槽目に、触媒成分(a)、有機アルミニウム(b)、水素、及びプロピレンを供給し、第二槽目に、プロピレンを供給し、水素は、塊状重合で供給する90%以上を第一槽目に供給し、第一槽目と第二槽目のプロピレン系重合体の生産比率が20/80〜80/20にしたことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法である。以下、触媒、製造方法、プロピレン系重合体の特徴について、詳細に説明する。
[I]触媒
1.チーグラー型固体触媒成分(a)
本発明で用いる触媒成分(a)は、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とするチーグラー型固体触媒成分であり、下記成分(A)〜(C)、好ましくは、更に成分(D)を接触させて得られる。
成分(A):チタン、マグネシウム及びハロゲンを含有する原料固体成分
成分(B):Si−OR結合を2つ以上含有する有機ケイ素化合物(但し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基である。)
成分(C):周期表1〜3族金属の有機金属化合物
成分(D):ビニルシラン化合物
(1)成分(A)
成分(A)は、チタン、マグネシウム及びハロゲンを含有する原料固体成分である。これらチタン(Ti)−マグネシウム(Mg)−ハロゲンの三元素(三成分)は、いずれも必須成分として含有するものである。
ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の三成分のほかに合目的的な他元素を含んでもよいこと、これらの元素はそれぞれが合目的的な任意の化合物として存在してもよいこと、ならびにこれら元素は相互に結合したものとして存在してもよいこと、を示すものである。
チタン、マグネシウム及びハロゲンを含む原料固体成分そのものは公知のものである。例えば、特開昭53−45688号、同54−3894号、同54−31092号、同54−39483号、同54−94591号、同54−118484号、同54−131589号、同55−75411号、同55−90510号、同55−90511号、同55−90511号、同55−127405号、同55−147507号、同55−155003号、同56−18609号、同56−70005号、同56−72001号、同56−86905号、同56−90807号、同56−155206号、同57−92007号、同57−121003号、同58−5309号、同58−5310号、同58−5311号、同58−8706号、同58−27732号、同58−32604号、同58−32605号、同58−67703号、同58−117206号、同58−127708号、同58−183708号、同58−183709号、同59−149905号、同59−149906号、同60−130607号、同61−55104号、同61−204204号、同62−508号、同62−15209号、同62−20507号、同62−184005号、同62−236805号、同63−199207号、同63−264607号、同63−264608号、特開平1−79203号、同1−139601号、同1−215806号、同7−258328号、同7−269125号、同11−21309号等の各公報等に記載のものが使用される。また、これらのものをタングステンやモリブテン化合物で処理したものなども挙げられる。
本発明において使用されるマグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、マグネシウムハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムのカルボン酸塩等が挙げられる。これらのうちで好ましいのはマグネシウムハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライドである。
また、チタン源となるチタン化合物は、一般式Ti(OR4−q(ここで、Rは、炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xはハロゲンを示し、qは0≦q≦4である。)で表される化合物が挙げられる。具体例としては、TiCl、TiBr、Ti(OC)Cl、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(O−i−C)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(O−n−CCl、Ti(OC)Br、Ti(OC)(O−n−CCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OC)Cl、Ti(O−i−CCl、Ti(OC11)Cl、Ti(OC13)Cl、Ti(OC、Ti(O−n−C、Ti(O−n−C、Ti(O−i−C、Ti(O−n−C13、Ti(O−n−C17、Ti(OCHCH(C)C等が挙げられる。
また、TiX’(ここで、X’はハロゲンである。)に後述する電子供与体を反応させた分子化合物をチタン源として用いることもできる。そのような分子化合物の具体例としては、TiCl・CHCOC、TiCl・CHCO、TiCl・CNO、TiCl・CHCOCl、TiCl・CCOCl、TiCl・CCO、TiCl・ClCOC、TiCl・CO等が挙げられる。
また、TiCl(TiClを水素で還元したもの、アルミニウム金属で還元したもの、あるいは有機金属化合物で還元したもの等を含む)、TiBr、Ti(OC)Cl、TiCl、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド等のチタン化合物の使用も可能である。これらのチタン化合物の中でもTiCl、Ti(OC、Ti(OC)Cl等が好ましい。
ハロゲンは、上述のマグネシウム及び(又は)チタンのハロゲン化合物から供給されるのが普通であるが、他のハロゲン源、例えばAlCl等のアルミニウムのハロゲン化物、BCl等のホウ素のハロゲン化物、SiCl等のケイ素のハロゲン化物、PCl、PCl等のリンのハロゲン化物、WCl等のタングステンのハロゲン化物、MoCl等のモリブデンのハロゲン化物といった公知のハロゲン化剤から供給することもできる。固体触媒成分(A)中に含まれるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はこれらの混合物であってもよく、特に塩素が好ましい。
また、原料固体成分(A)の製造に利用できる電子供与体(内部ドナー)としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸類のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類のような含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネートのような含窒素電子供与体、スルホン酸エステルのような含硫黄電子供与体などを例示することができる。
より具体的には、(イ)メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1〜18のアルコール類、(ロ)フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、ナフトールなどのアルキル基を有してよい炭素数6〜25のフェノール類、(ハ)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどの炭素数3〜15のケトン類、(ニ)アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2〜15のアルデヒド類、
(ホ)ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸セロソルブ、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロへキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、安息香酸セロソルブ、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ−ブチロラクトン、α−バレロラクトン、クマリン、フタリドなどの有機酸モノエステル、又は、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、コハク酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、炭酸エチレン、ノルボルナンジエニル−1,2−ジメチルカルボキシラート、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸−n−ヘキシル、1,1−シクロブタンジカルボン酸ジエチルなどの有機酸多価エステルの炭素数2〜20の有機酸エステル類、
(ヘ)ケイ酸エチル、ケイ酸ブチルなどのケイ酸エステルのような無機酸エステル類、(ト)アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリド、塩化フタロイル、イソ塩化フタロイルなどの炭素数2〜15の酸ハライド類、(チ)メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−t−ブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジエトキシプロパンなどの炭素数2〜20のエーテル類、
(リ)酢酸アミド、安息香酸アミド、トルイル酸アミドなどの酸アミド類、(ヌ)メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、トリベンジルアミン、アニリン、ピリジン、ピコリン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類、(ル)アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類、(ヲ)2−(エトキシメチル)−安息香酸エチル、2−(t−ブトキシメチル)−安息香酸エチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−s−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルなどのアルコキシエステル化合物類、
(ワ)2−ベンゾイル安息香酸エチル、2−(4’−メチルベンゾイル)安息香酸エチル、2−ベンゾイル−4,5−ジメチル安息香酸エチルなどのケトエステル化合物類、(カ)ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸イソプロピル、p−トルエンスルホン酸−n−ブチル、p−トルエンスルホン酸−s−ブチルなどのスルホン酸エステル類等を挙げることができる。
これらの電子供与体は、二種類以上用いることもできる。これらの中で好ましいのは有機酸エステル化合物、酸ハライド化合物及びエーテル化合物であり、特に好ましいのはフタル酸ジエステル化合物及びフタル酸ジハライド化合物からなる群から選択されるものである。
成分(A)は、必要により他成分を用いて、例えば以下のような製造方法により製造される。
(イ)ハロゲン化マグネシウムと電子供与体、チタン含有化合物を接触させる方法。
(ロ)アルミナ又はマグネシアをハロゲン化リン化合物で処理し、それにハロゲン化マグネシウム、電子供与体、チタンハロゲン含有化合物を接触させる方法。
(ハ)ハロゲン化マグネシウムとチタンテトラアルコキシド及び特定のポリマーケイ素化合物を接触させて得られる固体成分に、チタンハロゲン化合物及び/又はケイ素のハロゲン化合物、電子供与体を接触させた反応生成物を不活性有機溶媒で洗浄させる方法。
なお、ここで用いられるポリマーケイ素化合物としては、下式で示されるものが適当である。
−[Si(H)(R10)−O−]
ここで、R10は炭素数1〜10程度の炭化水素基であり、xはこのポリマーケイ素化合物の粘度が1〜100センチストークス程度となるような重合度を示す。具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、シクロヘキシルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が好ましい。
(ニ)マグネシウム化合物をチタンテトラアルコキシド及び/又は電子供与体で溶解させて、ハロゲン化剤又はチタンハロゲン化合物で析出させた固体成分に、チタン化合物、及び電子供与体を接触させるか又は、各々別に接触させる方法。
(ホ)グリニャール試薬等の有機マグネシウム化合物をハロゲン化剤、還元剤等と作用させた後、これに必要に応じて電子供与体を接触させ、次いでチタン化合物、及び電子供与体を接触させるか又は、各々別に接触させる方法。
(ヘ)アルコキシマグネシウム化合物にハロゲン化剤及び/又はチタン化合物を電子供与体の存在下もしくは不存在下に接触させるか又は、各々別に接触させる方法。これらの製造方法の中でも(イ)、(ハ)、(ニ)及び(ヘ)が好ましい。
(2)成分(B)
チーグラー型固体触媒成分(a)を製造するために使用される成分(B)は、Si−OR結合を2つ以上含有する有機ケイ素化合物(但し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)である。
本発明では、ケイ素原子に結合している−OR基以外の結合残基として、水素、ハロゲン、炭化水素基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等)及びシロキシ基等から選ばれる結合残基を有するものを使用するのが普通である。
本発明において好ましい有機ケイ素化合物は、少なくとも1つの炭化水素基を有するものであり、さらに好ましくは、ケイ素原子に隣接する炭素原子、すなわちα−位炭化水素原子が2級又は3級の炭素原子で炭素数3〜20の分岐鎖状炭化水素基を有するものである。
成分(B)の有機ケイ素化合物の具体例としては、(CHCSi(CH)(OCH、(CHCSi(CH(CH)(OCH、(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(C)(OCH、(CHCSi(n−C)(OCH、(CHCSi(n−C13)(OCH、(CCSi(CH)(OCH、(CH)(C)CHSi(CH)(OCH、((CHCHCHSi(OCH、(C)(CHCSi(CH)(OCH、(C)(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(OCH、(CHCSi(OC、(CH)(C)CHSi(OCH、(CHCH(CHCSi(CH)(OCH、((CHC)Si(OCH、(C)(CHCSi(OCH、(C)(CHCSi(OC、(CHCSi(OC(CH)(OCH、((CHCH)Si(OCH、((CHCH)Si(OC、(CSi(OCH、(CSi(OC、(C)(CH)Si(OCH、(C)((CHCHCH)Si(OCH、(C11)Si(CH)(OCH、(C11Si(OCH、(C11)((CHCHCH)Si(OCH、((CHCHCH)((C)(CH)CH)Si(OCH、((CHCHCH)((CHCH)Si(OC11、HC(CHC(CHSi(CH)(OCH、HC(CHC(CHSi(CH)(OC、HC(CHC(CHSi(OCH、(CHCSi(OCH(CH)(OCH、(CHCSi(OC(CH)(OCH等が挙げられる。
また、これらの中で好ましいものとしては、(CHCSi(CH)(OCH、(CHCSi(CH(CH)(OCH、(CHCSi(CH)(OC、(CHCSi(C)(OCH、(CHCSi(n−C)(OCH、(CHCSi(n−C13)(OCH、(CSi(OCH、(CSi(OC、(C11)Si(CH)(OCH、(C11Si(OCH等が挙げられる。
(3)成分(C)
チーグラー型固体触媒成分(a)を製造するために使用される 成分(C)は、周期表1〜3族金属の有機金属化合物である。有機金属化合物であることからこの化合物は少なくとも一つの有機基と金属との結合を持つ。その場合の有機基としては、炭素数1〜10程度、好ましくは1〜6程度、の炭化水素基が代表的である。この化合物の金属としては、リチウム、マグネシウム、アルミニウム及び亜鉛、特にアルミニウムが代表的である。
原子価の少なくとも一つが有機基で充足されている有機金属化合物の金属の残りの原子価(もしそれがあれば)は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基(炭化水素基は、炭素数1〜10程度、好ましくは1〜6程度)、あるいは炭素原子を介した当該金属(具体的には、メチルアルモキサンの−O−Al(CH)−)、その他で充足される。
このような有機金属化合物の具体例を挙げれば、(イ)メチルリチウム、n−ブチルリチウム、第三ブチルリチウム等の有機リチウム化合物、(ロ)ブチルエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ヘキシルエチルマグネシウム、ブチルマグネシウムクロリド、第三ブチルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム化合物、(ハ)ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛等の有機亜鉛化合物、(ニ)トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物が挙げられる。このうちでは、特に有機アルミニウム化合物が好ましい。
(4)成分(D)
チーグラー型固体触媒成分(a)を製造するために、必要に応じて、使用される成分(D)は、ビニルシラン化合物である。ビニルシラン化合物としては、モノシラン(SiH)中の少なくとも一つの水素原子がビニル基(CH=CH−)に置き換えられ、そして残りの水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくはCl)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
より具体的には、CH=CH−SiH、CH=CH−SiH(CH)、CH=CH−SiH(CH、CH=CH−Si(CH、CH=CH−SiCl、CH=CH−SiCl(CH)、CH=CH−SiCl(CH、CH=CH−SiH(Cl)(CH)、CH=CH−Si(C、CH=CH−SiCl(C、CH=CH−SiCl(C)、CH=CH−Si(CH(C)、CH=CH−Si(CH)(C)、(CH=CH)−SiH、(CH=CH)−SiH(CH)、(CH=CH)−SiH(CH)、(CH=CH)−Si(CH、(CH=CH)−SiCl、(CH=CH)−SiCl(CH)、(CH=CH)−SiH(Cl)、(CH=CH)−Si(C、(CH=CH)−SiCl(C)、(CH=CH)−Si(CH)(C)、(CH=CH)−SiH、(CH=CH)−Si(CH)、(CH=CH)−SiCl、(CH=CH)−Si(C)、(CH=CH)−Si等を例示することができる。これらのうちでは、CH=CH−Si(CH、(CH=CH)−Si(CHが好ましい。
ここで、ビニルシラン化合物の役割としては、定かではないが以下のように考えている。成分(A)の原料固体成分中の4価のTiは成分(C)の有機金属化合物により還元され重合活性が発現する3価のTiになるが、その際さらに還元され2価の状態まで過剰に還元されることがある。その際、ビニルシラン化合物が存在していることで、当該化合物がTiをマスクし、Ti種の過剰な還元(過還元)を抑制する働きがあると考えられている。そのためプロピレンモノマーに対して不活性な2価のTiの存在割合が減少し、活性な3価のTiの存在割合が多くなり、触媒活性を向上させる効果があるとされる。
(5)チーグラー型固体触媒成分(a)の製造
チーグラー型固体触媒成分(a)は、該成分を構成する各成分(A)〜(D)、及び必要により用いられる任意成分を、段階的にあるいは一時的に相互に接触させて、その中間及び/又は最後に有機溶媒で洗浄することによって製造することができる。
具体的には、(イ):成分(A)と成分(D)とを接触させた後に、成分(B)及び成分(C)を接触させ、最後に洗浄する方法、(ロ):成分(A)と成分(B)を接触させた後に、成分(C)、成分(D)を接触させ、洗浄する方法、(ハ):成分(A)、(B)、(D)を同時に接触した後に、成分(C)を接触させ、洗浄する方法などが採用される。このうちでは、特に(イ):成分(A)と成分(D)とを接触させた後に、成分(B)及び成分(C)を接触させ、最後に洗浄する方法が好ましい。また成分(A)のTi、Mg、ハロゲンの3成分はそれぞれが化学結合された状態である必要があり、どれか一つの成分が欠けた状態で他の成分(B)、(C)もしくは(D)と接触させてはならない。
溶剤洗浄に用いる溶剤としては、不活性有機溶媒、例えば、脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等)、あるいはハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、塩化−n−ブチル、1,2−ジクロロエチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等)を挙げることができる。
チーグラー型固体触媒成分(a)を構成する各成分の接触条件は、酸素の不存在下で実施する必要があるものの、本発明の効果が認められる限り任意のものでありうるが、一般的には、次の条件が好ましい。接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは0〜100℃である。接触方法としては、回転ボールミル、振動ミル、ジェットミル、媒体撹拌粉砕機などによる機械的な方法、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法などがある。このとき使用する不活性希釈剤としては、脂肪族又は芳香族の炭化水素及びハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等が挙げられる。
チーグラー型固体触媒成分(a)を構成する各成分使用量の量比は、本発明の効果が認められる限り任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。成分(A)のチタン化合物の使用量は、使用するマグネシウム化合物の使用量に対してモル比(Ti/Mg)で0.0001〜1000、好ましくは0.01〜10である。ハロゲン源としてそのための化合物を使用する場合は、その使用量はチタン化合物及び(又は)マグネシウム化合物がハロゲンを含む、含まないにかかわらず、使用するマグネシウムの使用量に対してモル比で0.01〜1000がよく、好ましくは0.1〜100である。電子供与体の使用量は、前記のマグネシウム化合物の使用量に対してモル比(ハロゲン/Mg)で0.001〜10がよく、好ましくは0.01〜5である。
成分(A)と成分(B)の量比は、成分(A)を構成するチタン成分に対する成分(B)のケイ素の原子比(ケイ素/チタン)で0.01〜1000、好ましくは0.1〜100である。成分(D)の成分(A)に対する量比は、成分(D)中のケイ素原子の、成分(A)中のチタン原子に対する原子比(ケイ素/チタン)で0.01〜1000、好ましくは0.01〜300である。成分(D)の成分(A)に対する量比は、有機金属化合物の金属の原子比(金属/チタン)で0.01〜1000、好ましくは0.1〜100である。成分(C)の有機金属化合物の使用量は、成分(A)を構成するチタン成分に対する金属の原子比(金属原子/チタン)で0.1〜100、好ましくは1〜50である。なお、チーグラー型固体触媒成分(a)の製造の中間及び/又は最後には、前記溶剤洗浄の他にも、該溶剤洗浄で用いられるのと同様の不活性有機溶媒での洗浄工程を付加することができる。
(6)チーグラー型固体触媒成分(a)の予備重合処理
上記したチーグラー型固体触媒成分を製造する際に、任意の過程で、「予備重合処理」を行っても良い。具体的には、(イ):成分(A)、(B)、(C)及び(D)の全成分の接触を完了して得られた固体触媒成分(a)に、予備重合処理を行い予備重合されたチーグラー型固体触媒成分(a’)を得る方法、(ロ):固体触媒成分(a)を構成する成分(A)に予備重合処理を行い、その後に成分(B)、(C)及び(D)を接触して予備重合されたチーグラー型固体触媒成分(a’)を得る方法、(ハ):固体触媒成分(a)を構成する成分(A)と(C)を接触した後、予備重合を行い、ついで成分(B)(D)を接触処理して予備重合されたチーグラー型固体触媒成分(a’)を得る方法などが採用される。
上記の予備重合で用いるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセンなどが挙げられる。
チーグラー型固体触媒成分(a)と上記のモノマーとの反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、以下の範囲内が好ましい。チーグラー型固体触媒成分(a)1グラムあたりの基準で、予備重合量は0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.5〜10gの範囲内が望ましい。モノマーの供給方法は、モノマーを反応槽に定速的に或いは定圧状態又は一定濃度になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合時の反応温度は−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。予備重合の時間は、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は複数回行ってもよく、この際用いるモノマーは同一であっても異なってもよい。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒で洗浄を行うこともできる。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
さらに、上記各成分の接触の際又は接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
2.有機アルミニウム(b)
本発明の製造時用いられる有機アルミニウム(b)としては、R 3−nAlX、又は、R 3−mAl(OR(ここで、R及びRは同一又は異なってもよい炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、n及びmはそれぞれ0≦n<3、0<m<3である。)で表されるものがある。
具体的には、(イ)トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、(ロ)ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、(ハ)ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、(ニ)ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド等が挙げられる。
これら(イ)〜(ニ)の有機アルミニウムに他の有機金属化合物、例えば、R14 3−tAl(OR15(ここで、R14及びR15は同一又は異なってもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、tは0<t≦3である。)で表されるアルミニウムアルコキシド等を併用することもできる。例えば、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドの併用、ジエチルアルミニウムモノクロライドとジエチルアルミニウムエトキシドとの併用、エチルアルミニウムジクロライドとエチルアルミニウムジエトキシドとの併用、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドとジエチルアルミニウムモノクロライドとの併用等が挙げられる。
有機アルミニウム成分(b)の供給量としては、チーグラー型固体触媒成分(a)のTiに対し、モル比(Al/Ti)で1〜1000が一般的であり、好ましくは、10〜500の割合で使用される。
3.チーグラー型固体触媒成分(a)の特徴
本発明のチーグラー型固体触媒成分(a)は、有機アルミニウム(b)と共に用いた場合、その水素レスポンス性が下式(1)のような特徴を有する。
logMFR=alog[H]+b ・・・(1)
(式(1)中、a>2であり、bは任意の実数を表す)
チーグラー型固体触媒成分(a)の水素レスポンス性を求めるために、3L耐圧金属容器に固体触媒成分10mg、トリエチルアルミニウム400mg、液化プロピレン750g、そして水素を250・750・1000・2000・4000・6000・8000・12000mlと複数水準振って仕込み、重合温度70℃で1時間重合を行った。得られたポリマーの水素ガス濃度の対数を横軸にMFR値の対数を縦軸に取り水素レスポンスの挙動を表すグラフを作成した。プロットした点の累乗近似より上式を導き出し、aに当てはまる水素レスポンスの傾きを求めた。aの数値は、水素レスポンスの傾きを示しており、本発明で用いる触媒はa>2.0であり、好ましくはa>2.5、より好ましくはa>3.0である。すなわち、本チーグラー型固体触媒成分(a)は、MFRの水素濃度依存性が高い特徴を有する。またbの数値は、反応槽のスケールや有機アルミニウム成分により変動する値であり、任意の実数である。
更に各水素仕込み量に対応する水素ガス濃度は、重合反応の終了時に採取した内部混合ガスをガスクロマトグラフィーにより分析した値である。
[II]プロピレン系重合体の製造方法およびプロピレン系重合体の特徴
本発明のプロピレン系重合体の製造は、二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した連続式重合プロセスで行う。また、二つ以上の塊状重合の後に、更に塊状重合、または気相重合いずれを行ってもよく、各段を別々の方法で行っても良い。塊状重合を行う第一槽目にチーグラー型固体触媒成分触媒成分(a)、有機アルミニウム(b)、水素及びプロピレンを供給し、第二槽目以降の反応器にプロピレンを供給する。
第二槽目以降に触媒は供給せず、水素も原則として供給せず、例外的に少量(水素供給量の10%未満)を添加することができる。重合生成物は、第一槽目から順次連続的に後段反応器に移送され、最終反応器から目的とするプロピレン系重合体が取得できる。
本発明では、第一槽目の塊状重合で、触媒成分(a)、有機アルミニウム(b)、水素、及びプロピレンを供給する。水素については、二つの塊状重合で供給する90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは100%を第一槽目にフィードをする。すなわち、第二槽目以降には原則として水素は供給せず、例外的に少量のみ添加することができる。第二槽目以降の反応器には、プロピレンは供給するが、触媒成分(a)、有機アルミニウム(b)は供給せず、例外的に有機アルミニウム(b)のみ少量添加することができる。
本発明では、第一槽目と第二槽目のプロピレン系重合体の生産比率が20/80〜80/20であるが、好ましくは30/70〜80/20、より好ましくは40/60〜80/20である。
本発明のプロピレン系重合体は、上述した成分(aまたはa’)から成るチーグラー型固体触媒成分を用いて、プロピレン単独重合もしくはプロピレンとα−オレフィンとの共重合により得られるものであり、二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した重合プロセスで行われる。各反応槽の重合温度は、通常30〜100℃程度、好ましくは50〜80℃であり、より好ましくは60〜75℃である。重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、塊状重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、などが挙げられる。
本発明のプロピレン系重合体の製造時に、必須ではないが、電子供与性化合物(外部ドナー)を使用することも出来る。電子供与性化合物(外部ドナー)としては、固体成分(A)の際に電子供与性化合物(内部ドナー)として例示したもの、成分(B)で例示したSi−OR結合を2つ以上含有する有機ケイ素化合物などを例示することができる。この中で特にtert−ブチルメチルジメトキシシランを製造時に外部ドナーとして使用すると、プロピレン系重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が更に高くなる。
なお、本重合の終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残査除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うこともできる。
本発明のプロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体か、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であり、α−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。工業的な見地から、最も手に入りやすいエチレンが好ましい。
本発明のプロピレンランダム共重合体中のα−オレフィンに基づく単量体単位としては、5重量%以下である。上限値を超えると、ランダム共重合体粒子の粘着性が高くなり、重合体の流動性が低下してしまうため不都合である。α−オレフィンの含量は、プロピレンランダム共重合体中の融点、透明性等の物性により、所望のものを設定することが出来る。
本発明の製造方法で得られるプロピレン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるプロピレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が5.0〜10.0であることを特徴とするが、好ましくは5.5以上10.0以下、より好ましくは6.0以上10.0以下である。
なお、GPCによる分子量分布の測定は、以下の方法によって求める値である。
装置:ウォーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長3.42μm)
カラム:昭和電工製AD806M/S 3本(カラムの校正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500、A2500,F1、F2,F4、F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここで、ポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/ml
注入量:0.2ml
溶媒:オルトジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
また、本発明の製造方法で得られるプロピレン系重合体は、13C−NMRで測定されるアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が、95%以上であることを特徴とするが、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上である。
なお、アイソタクチックペンタッド分率は、以下の方法で求める値である。
13C−NMRスペクトル分光法による。ポリプロピレン系重合体の試料約100mgを、2mlのオルトジクロロベンゼン(ODCB)と0.2mlのベンゼンとの混合溶媒に溶解させ、500MHzのNMR装置(Varian社製、Inova500)を用いて、共鳴周波数125.7MHzで13C−NMRを測定し、得られたスペクトルを、「Macromolecules 第20巻(1987年)、616〜620頁」及び「Macromolecules 第21巻(1988年)、617〜622頁」に記載の方法に基づき、各ピークの帰属を行い、全ペンタッド中のmmmm分率を求める。
本発明の製造方法に係るプロピレン系重合体は、押出発泡成形に適しているが、それのみならず真空・圧空成形、押出成形用、射出成形ほか各種成形法により種々の形状を有する成形品にすることが出来る。成形に際しては、本発明のプロピレン系重合体に、必要に応じて従来のプロピレン系重合体に用いられている公知の酸化防止剤や中和剤、帯電防止剤および耐候剤等を添加してもよい。
本発明の製造方法に係るプロピレン系重合体は、そのまま単独で使用することできるが、別のプロピレン系重合体や、エチレンゴムのような別のポリマーを添加しても良い。本発明のプロピレン系重合体を例えば成形性改良を目的に、逆に別のポリマーに添加しても良い。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた物性測定法(試験方法)は以下の通りである。
(1)アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率):前述の方法に基づいて測定した。
(2)MFR:JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」、試験条件:230℃ 2.16Kg荷重に、準拠して測定した。
(3)分子量分布(Mw/Mn):前述の方法に基づいて測定した。
(実施例1)
(1)成分(A)の製造
充分に窒素置換した内容積10リットルの攪拌機付きオートクレーブに、脱水及び脱酸素したn−ヘプタン、3530ミリリットルを導入し、次いでMgClを353g(3.7モル)、Ti(O−n−Cを2550g(7.5モル)導入し、90℃で1.5時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を557ミリリットル導入し、所定攪拌条件で5時間反応させた。固体成分の生成量はMgCl重量比で5.0であった。引き続いて上記と同様に精製したn−ヘプタンを導入し、上記で合成した固体成分を含んだ全液レベルを5.8リットルとした。これにSiCl434ミリリットルを30℃、60分間でオートクレーブへ導入し、90℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでフタル酸クロライド33ミリリットルをn−ヘプタンで10容量%に希釈混合して、90℃、30分間でオートクレーブへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでTiCl690ミリリットルを30℃、10分間でオートクレーブへ導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄して成分(A)を得た。この成分(A)の生成量はMgCl重量比で0.76、チタン含量は2.46重量%であった。
(2)チーグラー型固体触媒成分(a)の製造
引き続いて上記と同様に精製したn−ヘプタンを200ミリリットル導入し、上記で合成した成分(A)を含み全液レベルを2.75リットルとした。次いでSiCl77ミリリットルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、成分(D)として(CH=CH)Si(CHを30ミリリットル、70℃で導入して1時間反応させた。さらに温度を15℃として成分(B)として(t−C)(CH)Si(OCHを40ミリリットル導入。その後、成分(C)としてAl(C1845ミリリットル(10重量%)を15℃−60分で導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とするチーグラー型固体触媒成分(a)を得た。このチーグラー型固体触媒成分中チタン含量は、1.8重量%であった。
(3)予備重合されたチーグラー型固体触媒成分(a’)
引き続いて上記と同様に精製したn−ヘプタンを導入して上記で合成したチーグラー型固体触媒成分(a)を含み全液レベルを6.88リットルとした。温度を15℃としてAl(C638ミリリットル(10重量%)を30分で導入し、さらに15℃で5時間かけて一定速度で420gのプロピレンを供給した。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄した。得られた予備重合されたチーグラー型固体触媒成分(a’)の予備重合量はチーグラー型固体触媒成分(a)単位重量に対して1.6倍であった。
(4)チーグラー型固体触媒成分(a)の水素レスポンス
チーグラー型固体触媒成分(a)の水素レスポンスを調べるため、3L耐圧金属容器に固体触媒成分(a’)10mg、トリエチルアルミニウム400mg、液化プロピレン750g、そして水素を250・750・1000・2000・4000・6000・8000・12000mlと複数水準振って仕込み、重合温度70℃で1時間重合を行った。水素ガス濃度と得られたポリマーのMFR値を表1に示す。
Figure 2010095601
表1より作成したグラフから式(1)のaに当てはまる水素レスポンスの傾きを求めた。
logMFR=alog[H]+b ・・・(1)
得られた値は、a=3.27であった。
(5)プロピレン系重合体の製造
2つの攪拌式バルク重合槽を連結した重合槽を用い、プロピレンの単独重合体の製造を行い、プロピレン系重合体1を得た。
触媒として、固体触媒成分(a’)を第1反応器に目標の生産量になるように連続的に供給、また助触媒として、トリエチルアルミニウム(b)を、これも第1反応器にのみ触媒中のマグネシウムに対し5モル比になるように連続的に供給した。更に水素は、目標のMFRとなるよう第1反応器のみに連続的に供給した。各重合槽の運転条件は、第1反応器は、温度70℃、圧力3.0MPaG、水素濃度7.7mol%、平均滞留時間0.4時間のバルク重合、第2反応器は67℃、圧力2.7MPaG、水素濃度4.1mol%、平均滞留時間0.3時間のバルク重合で行った。
この重合の結果、触媒活性16,500gPP/gcatで、MFRが10g/10分、アイソタクチックペンタッド分率が96.5、分子量分布が6.0のプロピレン系重合体1が得られた。結果を表3に示す。
(実施例2)
実施例1で得られた触媒成分(a’)を用い、2つの攪拌式バルク重合槽を連結した重合槽を用い、プロピレンの単独重合体の製造を行い、プロピレン系重合体2を得た。
触媒として、固体触媒成分(a’)を第1反応器に目標の生産量になるように連続的に供給、また助触媒として、トリエチルアルミニウム(b)を、これも第1反応器にのみ触媒中のマグネシウムに対し5モル比になるように連続的に供給した。更に電子供与性化合物(外部ドナー)として、tert−ブチルメチルジメトキシシランを第1反応器にのみプロピレン量に対し12重量ppmになるよう連続的に供給した。また更に、水素は目標のMFRとなるよう第1反応器のみに連続的に供給した。各重合槽の運転条件は、第1反応器は、温度70℃、圧力3.0MPaG、水素濃度7.9mol%、平均滞留時間0.4時間のバルク重合、第2反応器は67℃、圧力2.7MPaG、水素濃度4.3mol%、平均滞留時間0.3時間のバルク重合で行った。
この重合の結果、触媒活性15,500gPP/gcatで、MFRが10g/10分、アイソタクチックペンタッド分率が98.0、分子量分布が5.9のプロピレン系重合体2が得られた。結果を表3に示す。
(比較例1)
実施例1で得られた触媒成分(a’)を用い、2つの攪拌式バルク重合槽を連結した重合槽を用い、プロピレンの単独重合体の製造を行い、プロピレン系重合体3を得た。
触媒として、固体触媒成分(a’)を第1反応器に目標の生産量になるように連続的に供給、また助触媒として、トリエチルアルミニウム(b)を、これも第1反応器にのみ触媒中のマグネシウムに対し5モル比になるように連続的に供給した。更に水素は、目標のMFRとなるよう第1反応器と第2反応器に連続的に供給した。各重合槽の運転条件は、第1反応器は、温度70℃、圧力2.9MPaG、水素濃度0.7mol%、平均滞留時間0.4時間のバルク重合、第2反応器は64℃、圧力2.6MPaG、水素濃度0.7mol%、平均滞留時間0.3時間のバルク重合で行った。
この重合の結果、触媒活性11,000gPP/gcatで、MFRが0.5g/10分、アイソタクチックペンタッド分率が96.6、分子量分布が4.5のプロピレン系重合体3が得られた。結果を表3に示す。
(比較例2)
(1)固体チタン触媒成分(A)の製造
無水塩化マグネシウム700gに、デカン3.7および2−エチルヘキシルアルコール3.5Lを130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸165gを添加し、130℃にて更に1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を該均一溶液に溶解させる。このようにして得られた均一溶液を室温まで冷却した後、−20℃に保たれた四塩化チタン中に1時間に亘って全量滴下装入する。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでジイソブチルフタレート0.4Lを添加し、これより2時間同温度にて攪拌下保持する。2時間の反応終了後熱濾過にて固体部を採取し、110℃デカン及びヘキサンにて、洗液中に遊離チタン化合物が検出されなくなるまで十分に洗浄をする。以上の製造方法にて合成されたチタン触媒成分をドライヤーにて乾燥した。このようにして得られたチタン触媒成分の組成は、チタン2.3重量%、塩素58.0重量%、マグネシウム18.0重量%およびジイソブチルフタレート14.0重量%であった。
(2)予備重合されたチタン触媒成分(Z)の製造
窒素置換された400mlのガラス製反応器に精製ヘキサン200mlを入れ、トリエチルアルミニウム20ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン4ミリモル及び前記チタン触媒成分(A)をチタン原子換算で2ミリモル投入した後、5.9Nl/時間の速度でプロピレンを1時間供給し、Ti触媒成分(A)1g当たり、2.8gのプロピレンを重合させた。
この予備重合終了後、濾過にて液相部を除去し、分離した固体部をデカンに再び分散させた。
(3)予備重合されたチタン触媒成分(Z)の水素レスポンス
予備重合されたチタン触媒成分Zの水素レスポンスを調べるため、3L耐圧金属容器にチタン触媒成分Z10mg、トリエチルアルミニウム400mg、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン32.6mg、液化プロピレン750g、そして水素を250・750・2000・4000・8000・12000mlと複数水準振って仕込み、重合温度70℃で1時間重合を行った。水素ガス濃度と得られたポリマーのMFR値を表2に示す。
Figure 2010095601
表2より作成したグラフから式(1)のaに当てはまる水素レスポンスの傾きを求めた。
logMFR=alog[H]+b ・・・(1)
得られた値は、a=1.07であった。
(4)プロピレン系重合体の製造
2つの攪拌式バルク重合槽を連結した重合槽を用い、プロピレンの単独重合体の製造を行い、プロピレン系重合体4を得た。
触媒として固体触媒成分(Z)を第1反応器に目標の生産量になるように連続的に供給、また助触媒としてトリエチルアルミニウム(b)を、これも第1反応器にのみ触媒中のマグネシウムに対し5モル比になるように連続的に供給、更にシクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.48kg/Hr連続的に供給した。更に水素は目標のMFRとなるよう第1反応器のみに連続的に供給した。各重合槽の運転条件は、第1反応器は、温度70℃、圧力2.9MPaG、水素濃度4.1mol%、平均滞留時間0.4時間のバルク重合、第2反応器は67℃、圧力2.6MPaG、水素濃度2.2mol%、平均滞留時間0.3時間のバルク重合で行った。
この重合の結果、触媒活性8,500gPP/gcatで、MFRが10g/10分、アイソタクチックペンタッド分率が95.5、分子量分布が4.8のプロピレン系重合体4が得られた。結果を表3に示す。
(比較例3)
実施例1で得られた触媒成分(a’)を用い、1つの攪拌式バルク重合槽を用い、プロピレンの単独重合体の製造を行い、プロピレン系重合体5を得た。
触媒として固体触媒成分(a’)を目標の生産量になるように連続的に供給、また助触媒としてトリエチルアルミニウム(b)を、触媒中のマグネシウムに対し5モル比になるように連続的に供給した。更に水素は目標のMFRとなるよう連続的に供給した。重合槽の運転条件は、温度70℃、圧力3.0MPaG、水素濃度7.7mol%、平均滞留時間0.4時間のバルク重合で行った。
この重合の結果、触媒活性11,500gPP/gcatで、MFRが20g/10分、アイソタクチックペンタッド分率が96.5、分子量分布が4.5のプロピレン系重合体5が得られた。結果を表3に示す。
Figure 2010095601
上記の各実施例及び比較例から次の事項が判明した。
(1)実施例1は、触媒製造工程でビニルシラン化合物を用いたチーグラー型固体触媒成分により連続バルク2段重合でプロピレン系重合体1を得ており、本重合体は触媒活性=16,500g/g、アイソタクチックペンタッド分率=96.5で分子量分布=6.0であった。
(2)実施例2は、実施例1と同様の触媒を用い、更に電子供与性化合物としてtert−ブチルメチルジメトキシシランを第1反応器にのみプロピレン量に対し12重量ppmになるよう連続的に供給し、連続バルク2段重合でプロピレン系重合体2を得ている。本重合体は触媒活性=15,500g/g、アイソタクチックペンタッド分率=98.0、そして分子量分布=5.9とプロピレン系重合体1に比べI.I.が高かった。
(3)比較例1は、実施例1・2と同様の触媒を用い、連続バルク2段重合でプロピレン系重合体3を得ている。本重合体は触媒活性=11,000g/g、アイソタクチックペンタッド分率=96.6、そして分子量分布=4.5とプロピレン系重合体1に比べ狭い分子量分布であった。
(4)比較例2は、触媒製造工程でビニルシラン化合物を用いなかったチーグラー型固体触媒成分により連続バルク2段重合でプロピレン系重合体4を得ている。本重合体は触媒活性=8,500g/g、アイソタクチックペンタッド分率=95.5、分子量分布=4.8とプロピレン系重合体1に比べ低触媒活性・狭い分子量分布であった。
(5)比較例3は、実施例1・2と同様の触媒を用い、連続バルク1段重合でプロピレン系重合体5を得ている。本重合体は触媒活性=11,500g/g、アイソタクチックペンタッド分率=96.5、そして分子量分布=4.5であった。
以上、本発明の実施例及び比較例から明らかなように、二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した連続式重合プロセスにおいて、触媒製造工程でビニルシラン化合物を用いたチーグラー型固体触媒成分を用い、更に水素の供給は第一槽目のみに行いプロピレン重合体の製造を行うと、分子量分布が通常のチタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分とするチーグラー型固体触媒成分で製造するプロピレン系重合体に比べ大きく広がることが判明した。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法によれば、分子量分布が通常のチタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分とするチーグラー型固体触媒成分で製造するプロピレン系重合体に比べ大きく広がったプロピレン系重合体が得られるので、得られたポリプロピレン系重合体は、押出発泡成形のみならず真空・圧空成形、押出成形用、射出成形ほか各種成形法に用いることができる。

Claims (6)

  1. 二つ以上の塊状重合を行う反応槽を連結した連続式重合プロセスにおいて、下記成分(A)〜(C)を接触させて得られることを特徴とするチーグラー型固体触媒成分(a)を用い、
    第一槽目に、触媒成分(a)、有機アルミニウム(b)、水素、及びプロピレンを供給し、
    第二槽目に、プロピレンを供給し、
    水素は、塊状重合で供給する90%以上を第一槽目に供給し、
    第一槽目と第二槽目のプロピレン系重合体の生産比率が20/80〜80/20であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
    成分(A):チタン、マグネシウム及びハロゲンを含有する原料固体成分
    成分(B):Si−OR結合を2つ以上含有する有機ケイ素化合物(但し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基である。)
    成分(C):周期表1〜3族金属の有機金属化合物
  2. チーグラー型固体触媒成分(a)が、更に下記成分(D)を接触させて得られることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
    成分(D):ビニルシラン化合物
  3. チーグラー型固体触媒成分(a)の水素レスポンス性が、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
    logMFR=alog[H]+b ・・・(1)
    (式(1)中、a>2であり、bは任意の実数を表す)
  4. プロピレン系重合体がプロピレン単独重合体か、α−オレフィン含量が5重量%以下のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  5. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるプロピレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)が5.0〜10.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
  6. 13C−NMRで測定されるプロピレン系共重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
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