JP2010091366A - 磁気平衡式電流センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】電流検出の方式を磁気平衡式として磁気比例式電流センサよりも高精度な電流検出を可能としつつ、故障時に異常検出信号を出力する機能も備えることでシステムの安全性を高めることの可能な、磁気平衡式電流センサを提供する。
【解決手段】異常検出回路120において、第2のホール素子H2の出力端子b,dは、差動増幅器39の入力端子にそれぞれ接続され、差動増幅器39の出力電圧Voutはウインドコンパレータ43に入力され、ウインドコンパレータ43は差動増幅器39の出力電圧Voutが2.5V(正常状態の理論値)を基準として所定レンジ内にあるか否かに応じて異なるレベル(ハイ又はロー)の異常検出信号E(det)を出力する。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばハイブリッドカーや電気自動車のバッテリー電流やモータ駆動電流を測定する電流センサに関し、特に、異常検出信号を出力する機能を有する磁気平衡式電流センサに関する。
ホール素子等の磁気検出素子を用いてバスバーに流れる電流(被測定電流)を非接触状態で検出する電流センサとして、磁気比例式のものが従来から知られている。磁気比例式電流センサは、図12(A)に例示のように、ギャップGを有するリング状の磁気コア820(高透磁率で残留磁気が少ない珪素鋼板やパーマロイコア等)と、ギャップGに配置されたホール素子816(磁気検出素子の例示)とを有する。磁気コア820は、被測定電流Iinの流れるバスバー810が貫通する配置である。したがって、被測定電流IinによってギャップG内に磁界が発生し、これがホール素子816の感磁面に印加される。磁界の強さは被測定電流Iinに比例するので、ホール素子816の出力電圧から被測定電流Iinが求められる。
一方、磁気平衡式電流センサは、図12(B)に例示のように、磁気比例式電流センサの構成に加え、磁気コア820に巻線を設けてなる負帰還用コイルLFBを有する。この構成においては、被測定電流IinによってギャップG内に第1の磁界が発生してこれがホール素子816の感磁面に印加される一方、ホール素子816の感磁面に印加される前記第1の磁界を相殺する(ゼロにする)第2の磁界を発生するように負帰還用コイルLFBに電流が供給される。この供給した電流から被測定電流Iinが求められる。
ところで、ハイブリッドカーやEV(電気自動車)に用いられる電流センサにおいて、故障が発生すると例えば次のような問題が考えられる。
(1) 「バッテリ電流モニタ用電流センサ」の場合、電流センサが故障するとバッテリの充電/放電を正しくモニタできなくなり、バッテリが過充電や過放電状態となり、バッテリの寿命を著しく縮めたり、最悪の場合にはバッテリの火災事故の発生もあり得る。
(2) 「インバータ電流モニタ用電流センサ」の場合、電流センサが故障するとモータ制御が不安定となったり、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を最悪、破壊してしまうこともあり得る。
下記特許文献1は、故障時に「異常信号」を出力して上位システムから故障判別を可能とすることでシステムのフェールセーフ性を向上させた電流検出器を開示している。
2000−275279号公報
特許文献1の電流検出器(磁気比例式)では、磁性体コアのギャップに2つ以上の感磁素子を配置し、それぞれの感磁素子に対して独立した信号処理回路を備え、それら信号処理回路からの出力のずれが設定範囲を超えたときに電流検出器が故障したと判別するように構成されている。これは、磁気比例式であれば2つの信号処理回路から同じ出力が得られることを利用している。しかし、磁性体コアに負帰還用コイルを有さない「磁気比例式電流センサ」は、温度特性等の精度があまり優れないという欠点がある。そこで、電流検出の方式を磁気平衡式にすることを考えると、原理的に特許文献1の技術を用いることはできない。というのも、磁気平衡式電流センサは負帰還用コイルへの供給電流でギャップ内の磁束をゼロにするため、2つの磁気平衡式電流センサを設けると何れの負帰還用コイルへの供給電流でギャップ内の磁束をゼロにしているかが不明となり、正確な電流検出ができなくなるとともに、2つの磁気平衡式電流センサから同じ出力を得ることも困難なためである。
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、電流検出の方式を磁気平衡式として磁気比例式電流センサよりも高精度な電流検出を可能としつつ、故障時に異常検出信号を出力する機能も備えることでシステムの安全性を高めることの可能な、磁気平衡式電流センサを提供することにある。
本発明のある態様は、磁気平衡式電流センサである。この磁気平衡式電流センサは、
被測定電流によって発生する第1の磁界が印加される位置に固定配置された磁気検出素子と、
前記磁気検出素子の出力電圧が入力される誤差増幅器と、
前記誤差増幅器から電流が供給されて、前記磁気検出素子に印加される前記第1の磁界を相殺する第2の磁界を発生する負帰還用コイルとを備え、
前記第2の磁界を発生するために前記負帰還用コイルに供給された電流に基づいて前記被測定電流を検出する磁気平衡式電流センサであり、
前記磁気検出素子の出力電圧が入力され、前記磁気検出素子の出力電圧が所定のレンジ内にあるか否かで異なるレベルの異常検出信号を出力する異常検出回路を有することを特徴とするものである。
ある態様の磁気平衡式電流センサにおいて、前記異常検出回路は、
前記磁気検出素子の出力電圧を増幅する差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力電圧が入力され、前記差動増幅器の出力電圧が第1の基準電圧と第2の基準電圧との間にあるか否かで出力信号のレベルが切り替わるウインドコンパレータとを有し、
前記ウインドコンパレータの出力信号を前記異常検出信号として出力するものであるとよい。
さらに、前記ウインドコンパレータは、前記差動増幅器の出力電圧と前記第1の基準電圧とを比較する第1のコンパレータと、前記差動増幅器の出力電圧と前記第2の基準電圧とを比較する第2のコンパレータと、前記第1及び第2のコンパレータの出力電圧に所定の論理演算を実行して前記異常検出信号を出力する論理回路とを有するとよい。
ある態様の磁気平衡式電流センサにおいて、
前記負帰還用コイルは、前記被測定電流の経路を囲むギャップ付きリング状磁気コアに巻線を施したものであり、
前記リング状磁気コアの前記ギャップ部に前記磁気検出素子が位置するとよい。
ある態様の磁気平衡式電流センサにおいて、前記磁気検出素子は、第1及び第2の磁気検出素子を有し、前記第1の磁気検出素子の出力電圧が前記誤差増幅器に入力され、前記第2の磁気検出素子の出力電圧が前記異常検出回路に入力されているとよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明の磁気平衡式電流センサによれば、磁気検出素子の出力電圧が所定のレンジ内にあるか否かで異なるレベルの異常検出信号を出力する異常検出回路を有するので、前記磁気検出素子に印加される第1の磁界と負帰還用コイルの発生する第2の磁界とが相殺している正常状態と、前記第1の磁界と前記第2の磁界が相殺しなくなった異常状態とを、前記異常検出信号のレベルによって区別して出力することができる。したがって、電流検出の方式を磁気平衡式として磁気比例式電流センサよりも高精度な電流検出を可能としつつ、故障時に異常検出信号を出力する機能も備えることでシステムの安全性を高めることが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気平衡式電流センサ100の回路図である。図2は、同磁気平衡式電流センサ100の模式図である。なお、図1では負帰還用コイルLを電流検出回路110に含めているが、図2では便宜的に負帰還用コイルLを電流検出回路110と別に記載している。
磁気平衡式電流センサ100は、磁気検出素子の例示である第1及び第2のホール素子H1,H2と、電流検出回路110と、異常検出回路120とを備える。第1のホール素子H1は電流検出回路110に接続され、第2のホール素子H2は異常検出回路120に接続される。
図2に示すように、第1及び第2のホール素子H1,H2はギャップ部を有するリング状磁気コア15(高透磁率で残留磁気が少ない珪素鋼板やパーマロイコア、アモルファス等からなる)の前記ギャップ部に配置され、負帰還用コイルLはリング状磁気コア15に巻線を施して構成される。被測定電流Iinはリング状磁気コア15を貫通する。被測定電流Iinによってリング状磁気コア15のギャップ部に第1の磁界が発生して第1及び第2のホール素子H1,H2の感磁面に印加される一方、第1のホール素子H1に印加される前記第1の磁界を相殺する(ゼロにする)すなわち前記ギャップ部の磁束をゼロにする第2の磁界を発生するように負帰還用コイルLに電流(図1の負帰還電流IFB)が供給される。負帰還電流IFBに基づいて被測定電流Iinが求められる。
ここで、第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出が正常に行われているとき(以下「正常状態」とも表記)、リング状磁気コア15のギャップ部の磁束がゼロとなっているので、第2のホール素子H2の出力電圧はゼロである。一方、第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出に異常(負帰還用コイルLの断線等。詳細は後述)が発生しているとき(以下「異常状態」とも表記)、前記ギャップ部における磁束はゼロとならず、第2のホール素子H2の出力電圧はゼロ以外の値をとる。異常検出回路120は、第2のホール素子H2の出力電圧をモニタして、後述のように正常状態と異常状態とで異なるレベルの異常検出信号を出力する。
以下、図1を参照して本実施の形態をより詳細に説明する。
図1に示される回路において、第1及び第2のホール素子H1,H2は等価的に4つの抵抗のブリッジ接続で表され、端子a,c間に一定のホール素子駆動電流を流しておくことにより出力端子b,d間に印加磁界に比例した(換言すれば被測定電流Iinに比例した)電圧を得る構成としている。
(電流検出回路110の構成・動作)
第1のホール素子H1の出力端子b,dは、誤差増幅器35(負帰還用差動増幅器)の入力端子にそれぞれ接続される。誤差増幅器35の出力端子と、例えば2.5V(VCC/2)の基準電圧端子とを接続する経路に、負帰還用コイルLと検出抵抗RSとが直列接続される。検出抵抗RSと並列に電圧計37が接続される。
第1のホール素子H1の出力電圧VH1は誤差増幅器35に入力される。誤差増幅器35は、出力端子から電流を吸い込む又は吐き出すことにより、端子b,d間の電位差が常にゼロとなるように、すなわち第1のホール素子H1の感磁面において被測定電流Iinによって発生する第1の磁界と負帰還用コイルLの発生する第2の磁界とが相殺するように、負帰還用コイルLに負帰還電流IFBを供給する。供給された負帰還電流IFBは検出抵抗RSで電圧に変換されて電圧計37によって検出(モニタ)される(又はセンサ出力として外部に取り出される)。なお、被測定電流Iinは負帰還電流IFBと負帰還用コイルLの巻線総和とから「等アンペアターンの原理」により求められる。
(異常検出回路120の構成・動作)
第2のホール素子H2の出力端子b,dは、差動増幅器39の入力端子にそれぞれ接続される。差動増幅器39は、オペアンプ41と、抵抗R1〜抵抗R4とを含む。抵抗R1〜抵抗R4の抵抗値はR1=R3、R2=R4であり、差動増幅回路39の増幅度はR2/R1である。差動増幅回路39の出力電圧Voutは、基準電圧を2.5V(VCC/2)としたとき、
out=−(R2/R1)VH2+2.5[V]
となる。したがって、差動増幅回路39の出力電圧Voutと第2のホール素子H2の出力電圧VH2とは直線的な関係となる。
差動増幅器39の出力電圧Voutはウインドコンパレータ43に入力される。ウインドコンパレータ43は差動増幅器39の出力電圧Voutが2.5V(正常状態の理論値)を基準として所定レンジ内にあるか否かに応じて異なるレベル(ハイ又はロー)の異常検出信号E(det)を出力する。
より具体的には、ウインドコンパレータ43は、第1及び第2のコンパレータ45,47と、論理回路としてのANDゲート49とを含み、第1のコンパレータ45の反転入力端子に第1の基準電圧としての下限側基準電圧Eref(L)が入力され、第2のコンパレータ47の非反転入力端子に第2の基準電圧としての上限側基準電圧Eref(H)が入力され、第1のコンパレータ45の非反転入力端子と第2のコンパレータ47の反転入力端子とに差動増幅器39の出力電圧Voutが入力され、第1及び第2のコンパレータ45,47の出力電圧E(wcL),E(wcH)がANDゲート49に入力され、ANDゲート49から異常検出信号E(det)を出力する。
したがって、下限側基準電圧Eref(L)及び上限側基準電圧Eref(H)と差動増幅器39の出力電圧Voutとの大小関係に対して、第1及び第2のコンパレータ45,47の出力電圧E(wcL),E(wcH)と異常検出信号E(det)のレベルは図3に示すとおりになる(同図でHはハイレベル(正常状態)、Lはローレベル(異常状態)を示す。図5も同様)。なお、図4に示すように、下限側基準電圧Eref(L)は例えば2.45V、上限側基準電圧Eref(H)は例えば2.55Vに設定される。このように、ウインドコンパレータ43は、差動増幅器39の出力電圧Voutが2.5V(正常状態の理論値)を中心に例えば±0.05Vの範囲内にあればハイレベルの異常検出信号E(det)を出力し、同出力電圧Voutがその範囲外にあればローレベルの異常検出信号E(det)を出力する。したがって、上位システムでは異常検出信号E(det)がローレベルとなったときに異常が発生したものと判断すればよい。以下、図5〜図8を参照して正常状態と異常状態とを具体例で説明する。
(No.1 正常状態)
図5のNo.1及び図6は、第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出が正常に行われている場合を示す。正常状態の場合、図6(A)に示すように被測定電流Iinの−400A〜+400Aのレンジに対して例えば負帰還電流IFBは−50mA〜+50mAのレンジで直線的な特性となり、同図(B)に示すように被測定電流Iinによらずリング状磁気コア15のギャップ部の磁束がゼロとなるので、被測定電流Iinによらず第2のホール素子H2の出力電圧VH2はゼロで同図(C)に示すように差動増幅器39の出力電圧Voutは2.5Vとなる。よって異常検出信号E(det)はハイレベルである。
(No.2 異常状態:負帰還用コイルLの断線)
図5のNo.2及び図7は、負帰還用コイルLの断線により第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出に異常が発生した場合を示す。この場合、図7(A)に示すように被測定電流Iinが流れても負帰還電流IFBは供給されずゼロであり、同図(B)に示すようにリング状磁気コア15のギャップ部の磁束は被測定電流Iinに比例して変化するので、同図(C)に示すように差動増幅器39の出力電圧Voutは被測定電流Iinの−400A〜+400Aのレンジに対して例えば0.5V〜4.5Vのレンジで直線的な特性となる(磁気比例式電流センサの場合と同様)。したがって、少しでも被測定電流Iinが流れれば異常検出信号E(det)はローレベルとなる。
(No.3 異常状態:負帰還用コイルLのショート)
図5のNo.3及び図8は、負帰還用コイルLのショート(ショート:磁束発生能力なし)により第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出に異常が発生した場合を示す。この場合、図8(A)に示すように、被測定電流Iinが正のとき負帰還電流IFBは+50mA(正方向最大値)となる一方で、被測定電流Iinが負のとき負帰還電流IFBは−50mA(負方向最大値)となるものの、リング状磁気コア15のギャップ部の磁束をゼロにできない。このため、同図(B)に示すようにギャップ部の磁束は被測定電流Iinに比例して変化し、同図(C)に示すように差動増幅器39の出力電圧Voutは被測定電流Iinの−400A〜+400Aのレンジに対して例えば0.5V〜4.5Vのレンジで直線的な特性となる(磁気比例式電流センサの場合と同様)。したがって、少しでも被測定電流Iinが流れれば異常検出信号E(det)はローレベルとなる。
(No.4 異常状態:第1のホール素子H1の破壊)
図5のNo.4は、第1のホール素子H1の破壊(出力電圧ゼロ)により第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出に異常が発生した場合を示す。この場合、被測定電流Iinが流れても負帰還電流IFBは供給されずゼロであり、負帰還用コイルLの断線(No.2)と同様になる。
(No.5 異常状態:誤差増幅器35の破壊(出力電流ゼロ))
図5のNo.5は、誤差増幅器35の破壊(出力電流ゼロ)により第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出に異常が発生した場合を示す。この場合、被測定電流Iinによらず負帰還電流IFBは供給されずゼロであり、負帰還用コイルLの断線(No.2)と同様になる。
(No.6 異常状態:誤差増幅器35の破壊(出力電流が順方向最大値又は逆方向最大値))
図5のNo.6は、誤差増幅器35の破壊(出力電流が順方向最大値又は逆方向最大値)により第1のホール素子H1と電流検出回路110とによる電流検出に異常が発生した場合を示す。この場合、負帰還が機能せずにリング状磁気コア15のギャップ部の磁束がゼロとならないため、異常検出信号E(det)はローレベルとなる。
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
(1) 電流検出の方式を磁気平衡式としているので、磁気比例式の場合と比較して、例えば環境温度範囲が−40℃〜+100℃において、ゲイン誤差(被測定電流Iinが±400Aのフルスケール時)を±3%→±1%以下に高精度化できた。その理由は、磁気平衡式電流センサは負帰還用コイルによりフィードバックをかけてリング状磁気コアの磁束を原理上ゼロとした制御により動作するため、ホール素子に貫通する磁束が常時ゼロとなりホール素子のゲイン特性の温度特性の影響がなくなり、温度特性に関して誤差の要因はホール素子のオフセットのみとなるからである。
(2) 第2のホール素子H2の出力電圧VH2がゼロ近傍の所定のレンジ内にあるか否かで異なるレベルの異常検出信号E(det)を出力する異常検出回路120を有するので、第2のホール素子H2に印加される第1の磁界と負帰還用コイルLの発生する第2の磁界とが相殺している正常状態と、前記第1の磁界と前記第2の磁界が相殺しなくなった異常状態とを、図5に例示のように異常検出信号E(det)のレベルによって区別して出力することができる。したがって、電流検出の方式を磁気平衡式として上記のように磁気比例式電流センサよりも高精度な電流検出を可能としつつ、故障時に異常検出信号を出力する機能も備えることでシステムの安全性を高めることが可能となる。
(3) 磁気平衡式電流センサ100を構成する各個別素子(ホール素子や誤差増幅器、負帰還用コイル)が図5に示されるような様々なモードで故障しても、結果としての異常検出信号E(det)は全て“Low”となり、正常状態のときのみ“High”となり、故障を確実に検出できる。
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
実施の形態ではホール素子を2つ用い、第1のホール素子H1を電流検出回路110に接続し、第2のホール素子H2を異常検出回路120に接続する場合を説明したが、変形例ではこれに替えてホール素子を1つとしてもよい。この場合、1つのホール素子を電流検出回路110及び異常検出回路120の双方に接続する。すなわち、図9に示すように、1つのホール素子Hの出力端子b,dを誤差増幅器35(負帰還用差動増幅器)の入力端子にそれぞれ接続するとともに、同出力端子b,dを差動増幅器39の入力端子にもそれぞれ接続する。その他の構成は図1に示した実施の形態と同様である。本変形例では、ホール素子Hの故障は検出できないものの、負帰還用コイルLの断線やショート、誤差増幅器35の破壊については実施の形態と同様に検出できる。
実施の形態ではリング状磁気コアに巻線を施したものを負帰還用コイルとしたが、変形例では図10に示すように巻線32を施したボビン26の内側に直線状の磁気ヨーク28(軟磁性体)を設けたものとしてもよい。本変形例は、本出願人が特願2007−115415号において既に提案しているバスバー一体型の磁気平衡式電流センサと同様のものであり、被測定電流Iinの経路を成す平板形状(例えば銅板)のバスバー12の主面上に負帰還用コイルL1,L2(回路上では直列接続)を配置し、負帰還用コイルL1,L2の間にホール素子(ここでは第1及び第2のホール素子H1,H2)を配置している。なお、本図では第1及び第2のホール素子H1,H2の両側に負帰還用コイルL1,L2を配置しているが、負帰還用コイルは片側のみに配置してもよい。本変形例においても、図1と同様の回路により、実施の形態と同様の異常検出が可能である。
実施の形態では磁気平衡式電流センサ100を単電源駆動としたが、変形例では両電源駆動としてもよい。
実施の形態では第1及び第2のコンパレータ45,47の出力電圧E(wcL),E(wcH)をANDゲート49に入力したが、変形例では図11に示すように、ANDゲートに替えてNANDゲートを用いてもよい。この場合、異常検出信号E(det)は正常状態のときローレベル、異常状態のときハイレベルとなる。その他、インバータ(反転回路)やORゲート等を組み合わせて同様の論理演算をするようにしてもよい。
実施の形態では差動増幅回路39の出力電圧Voutが2.5V(正常状態の理論値)を中心に±0.05Vの範囲内にあるか否かで異なるレベルの異常検出信号E(det)を出力したが、正常状態の理論値からの許容範囲は±0.05Vに限らずノイズの影響等を考慮して実験的に定めればよい。
本発明の実施の形態に係る磁気平衡式電流センサの回路図。 同磁気平衡式電流センサの模式図。 下限側基準電圧Eref(L)及び上限側基準電圧Eref(H)と差動増幅器の出力電圧Voutとの大小関係に対する、第1及び第2のコンパレータの出力電圧E(wcL),E(wcH)と異常検出信号E(det)のレベルの関係を示す説明図。 下限側基準電圧Eref(L)及び上限側基準電圧Eref(H)の例示的なグラフ。 正常状態と異常状態の具体例を示す説明図。 正常状態に関し、(A)は被測定電流Iinと負帰還電流IFBとの関係を示す特性図、(B)は被測定電流Iinとギャップ内磁束との関係を示す特性図、(C)は被測定電流Iinと差動増幅器の出力電圧Voutとの関係を示す特性図。 異常状態(負帰還用コイルの断線)に関し、(A)は被測定電流Iinと負帰還電流IFBとの関係を示す特性図、(B)は被測定電流Iinとギャップ内磁束との関係を示す特性図、(C)は被測定電流Iinと差動増幅器の出力電圧Voutとの関係を示す特性図。 異常状態(負帰還用コイルのショート)に関し、(A)は被測定電流Iinと負帰還電流IFBとの関係を示す特性図、(B)は被測定電流Iinとギャップ内磁束との関係を示す特性図、(C)は被測定電流Iinと差動増幅器の出力電圧Voutとの関係を示す特性図。 変形例に関し、ホール素子を1つとした場合の磁気平衡式電流センサの回路図。 変形例に関し、バスバー一体型の磁気平衡式電流センサとした場合の(A)は正断面図、(B)は平面図、(C)は側断面図。 変形例に関し、ANDゲートに替えてNANDゲートを用いる場合の(A)は部分的な説明図、(B)は異常検出信号E(det)等のレベルの関係を示す説明図。 (A)は磁気比例式電流センサの基本的構成を示す概略斜視図。(B)は磁気平衡式電流センサの基本的構成を示す概略斜視図。
符号の説明
H1 第1のホール素子
H2 第2のホール素子
L 負帰還用コイル
15 リング状磁気コア
35 誤差増幅器
39 差動増幅器
43 ウインドコンパレータ
45 第1のコンパレータ
47 第2のコンパレータ
49 ANDゲート
100 磁気平衡式電流センサ
110 電流検出回路
120 異常検出回路

Claims (5)

  1. 被測定電流によって発生する第1の磁界が印加される位置に固定配置された磁気検出素子と、
    前記磁気検出素子の出力電圧が入力される誤差増幅器と、
    前記誤差増幅器から電流が供給されて、前記磁気検出素子に印加される前記第1の磁界を相殺する第2の磁界を発生する負帰還用コイルとを備え、
    前記第2の磁界を発生するために前記負帰還用コイルに供給された電流に基づいて前記被測定電流を検出する磁気平衡式電流センサであり、
    前記磁気検出素子の出力電圧が入力され、前記磁気検出素子の出力電圧が所定のレンジ内にあるか否かで異なるレベルの異常検出信号を出力する異常検出回路を有することを特徴とする、磁気平衡式電流センサ。
  2. 請求項1に記載の磁気平衡式電流センサにおいて、前記異常検出回路は、
    前記磁気検出素子の出力電圧を増幅する差動増幅器と、
    前記差動増幅器の出力電圧が入力され、前記差動増幅器の出力電圧が第1の基準電圧と第2の基準電圧との間にあるか否かで出力信号のレベルが切り替わるウインドコンパレータとを有し、
    前記ウインドコンパレータの出力信号を前記異常検出信号として出力するものである、磁気平衡式電流センサ。
  3. 請求項2に記載の磁気平衡式電流センサにおいて、前記ウインドコンパレータは、前記差動増幅器の出力電圧と前記第1の基準電圧とを比較する第1のコンパレータと、前記差動増幅器の出力電圧と前記第2の基準電圧とを比較する第2のコンパレータと、前記第1及び第2のコンパレータの出力電圧に所定の論理演算を実行して前記異常検出信号を出力する論理回路とを有する、磁気平衡式電流センサ。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の磁気平衡式電流センサにおいて、
    前記負帰還用コイルは、前記被測定電流の経路を囲むギャップ付きリング状磁気コアに巻線を施したものであり、
    前記リング状磁気コアの前記ギャップ部に前記磁気検出素子が位置する、磁気平衡式電流センサ。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の磁気平衡式電流センサにおいて、前記磁気検出素子は、第1及び第2の磁気検出素子を有し、前記第1の磁気検出素子の出力電圧が前記誤差増幅器に入力され、前記第2の磁気検出素子の出力電圧が前記異常検出回路に入力されている、磁気平衡式電流センサ。
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