JP2010090515A - 溶融紡糸口金パック - Google Patents
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Abstract
【課題】異常滞留、ポリマー劣化を抑制し、それに起因する糸切れ、品質斑を低減することができる溶融紡糸口金パックを提供する。
【解決手段】少なくともその内部に溶融ポリマー流入孔6aを有するトップインサート6、濾材5a,5b、紡糸フィルター4a、分配板3、口金直上フィルター4b、及び紡糸口金2を順に組み込んでなる溶融紡糸用口金パックにおいて、前記濾材としてメタルサンド、ガラスビーズなどを使用し、濾材設置部の直径をDとした場合、0.8Dまでの中央部と、その周囲部とで周囲部の圧力損失が中央部と比較し小さくなるように前記濾材のmesh数を調整したものを使用することを特徴とする溶融紡糸口金パック。
【選択図】図1
【解決手段】少なくともその内部に溶融ポリマー流入孔6aを有するトップインサート6、濾材5a,5b、紡糸フィルター4a、分配板3、口金直上フィルター4b、及び紡糸口金2を順に組み込んでなる溶融紡糸用口金パックにおいて、前記濾材としてメタルサンド、ガラスビーズなどを使用し、濾材設置部の直径をDとした場合、0.8Dまでの中央部と、その周囲部とで周囲部の圧力損失が中央部と比較し小さくなるように前記濾材のmesh数を調整したものを使用することを特徴とする溶融紡糸口金パック。
【選択図】図1
Description
本発明は、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマーからなる合成繊維を溶融紡糸するための溶融紡糸用口金パックに関するものである。
一般に、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマーからなる合成繊維の溶融紡糸において、溶融ポリマー中の異物を除去して良好に紡糸口金から溶融ポリマーを吐出させ、繊維を形成するための紡糸口金パック(以下、単に「パック」とも称する)が用いられている。
このようなパックは、図3に示すように、パックケース1’の内部に紡糸口金2’、分配板(ブリッジプレート)3’、紡糸フィルター4a’、濾過層(メタルサンドなどの濾材)5’、溶融ポリマーの導入部材(トップインサート)6’、シール部材7’、口金直上フィルター4b’などの部品を組みこんで構成されている。
また、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマーは、加熱状態で長時間にわたってパック内に滞留すると、熱劣化が生じ糸切れや毛羽の発生の他、節糸、色相異常等の問題を引き起こす。また、ポリマーは高粘性流体であることに加え、一般的にパックの中央から供給され、パックの外周方向へ向って拡流されて濾過される構造を採る。
しかしながら、ポリマー流路壁から受ける流動抵抗などの影響により、流動するポリマーは外周方向に広がりにくい。このため、パック外周部はポリマー流速が低下し易く、パック外周部分でのポリマーの滞留時間が長くなる。更に、一般的なパック構造は、その周囲が保温加熱装置に囲まれている。このため、パック外周部側を流れるポリマーの方が内側を流れるポリマーと比較して受熱量が大きくなり、この時間と受熱量の関係から、外周部側を流れるポリマーの熱劣化が激しくなる。
このようなポリマーの熱劣化が生じると、得られる糸品質を損なうばかりでなく、紡糸工程調子の悪化をも招く。そこで、この熱劣化を抑制するため、従来から、パックに流入したポリマーが紡糸口金に到るまでに流れる流路上で異常滞留を生じることなく、しかも、パックの外周側と内側とを流れるポリマーの流れを均等化して紡出させるパックの構造について様々な研究がなされてきた。
例えば、特許文献1において、ポリマーが流入する流入ブロックと複数個のポリマー整流孔を備えた整流板と、複数個の紡糸孔が穿設された紡糸口金(以下、単に「口金」とも称す)とがポリマーの流動方向順に配置され、整流孔及び紡糸孔は同心円を描くように配置された紡糸口金パックが提案されている。なお、この整流板は、口金の中心とその中心から最も離れて位置する紡糸孔の中心との距離をRとした時、口金中心から0.7Rの位置を基準とし、整流孔の数を規定したものである。
しかしながら、このような構造を有する整流板であっても、その上流側では、滞留時間の長い濾過層での中心部と周辺部における熱履歴差をそのまま保持した状態であるので、熱履歴差を有するポリマーが口金へ流入することとなる。また、整流効果を出すためには、整流孔径を小さくしなければならず、そのためポリマーの流動抵抗が上昇してパック内圧力も上昇すると共に、異物が孔に詰まる危険性がある。
また、特許文献2において、静的混合素子を用いると共に、ポリマーの流入ブロックの下にポリマーを直接濾過する金網フィルターを設け、該金網フィルターをその直上で支持し、更に、該金網フィルターを通過したポリマーをその外周側へ分配する外周流路と該外周流路へ分配されたポリマーを下流へ流動させながら再合流させる再合流流路とが形成された分配部材を設けることが提案されている。そして、該分配部材を係合支持し、更に、該分配部材から再合流させて供給されたポリマーを口金に導く方法が提案されている。
しかしながら、この方法はメタルサンドなどの濾過材をまったく使用しない方法であるので、メタルサンドによるポリマーの分散機能、あるいは異物捕捉機能を有しないため、やはり、糸切れや品質斑などを発生させる。
しかも、このパックで用いられている静的混合素子の効果を有効に発現させるためには、設置する静的混合素子の必要段数を多く取る必要がある。ところが、このような多段の静的混合素子を設置するとなると、静的混合素子を入れる流路長が長くなりすぎて、パック構造とその形状の大幅な設計変更を迫られるという問題も発生する。
本発明は、前記従来技術が有する諸問題を解決することを目的としてなされたものである。すなわち、その目的とするところは、パック内に流入したポリマーの異常滞留とポリマーの熱劣化を抑制し、それに起因する糸切れなどの工程調子の悪化紡糸と、得られる糸の品質斑を低減することができる溶融紡糸口金パックを提供することである。
前記課題を達成するために、本発明者は鋭意検討した。その結果、以下の溶融紡糸口金パックによって解決できることを見出した。
ここに、前記課題を解決するための請求項1に係る本発明として、「熱可塑性ポリマーが流入するポリマー流入孔が設けられたトップインサート、円筒状の設置部に収納されて前記ポリマーを濾過する濾材、紡糸フィルター、分配板、紡糸口金直上フィルター、そして、紡糸口金をこの順に組み込んでなる溶融紡糸用口金パックにおいて、前記濾材の設置部を円筒によって内外に2分割して円筒内部に存在する濾材(A)と円筒外部に存在する濾材(B)とに区分すると共に前記濾材(B)の濾過抵抗を前記濾材(A)より小さくしたことを特徴とする溶融紡糸口金パック」が提供される。
ここに、前記課題を解決するための請求項1に係る本発明として、「熱可塑性ポリマーが流入するポリマー流入孔が設けられたトップインサート、円筒状の設置部に収納されて前記ポリマーを濾過する濾材、紡糸フィルター、分配板、紡糸口金直上フィルター、そして、紡糸口金をこの順に組み込んでなる溶融紡糸用口金パックにおいて、前記濾材の設置部を円筒によって内外に2分割して円筒内部に存在する濾材(A)と円筒外部に存在する濾材(B)とに区分すると共に前記濾材(B)の濾過抵抗を前記濾材(A)より小さくしたことを特徴とする溶融紡糸口金パック」が提供される。
このとき、本発明としては更に請求項2に記載のように、「前記円筒状の設置部の円筒直径をDとした場合に、前記濾材を内外に2分割する前記円筒を円筒中心から円筒外周側へ向って0.75D〜0.85Dまでの位置に配置したことを特徴とする、請求項1に記載の溶融紡糸口金パック」とすることが好ましい。
また、本発明として請求項3に記載のように、「前記濾材(A)に供給されるポリマー流量よりも前記濾材(B)に供給されるポリマー流量が多くなるように前記ポリマー流入孔を配設したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の溶融紡糸口金パック。」とすることが好ましい。
そして、本発明として請求項4に記載のように、「前記濾材(A)及び前記濾材(B)をメタルサンド、ガラスビーズ又は焼結金属により形成したことを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の溶融紡糸口金パック」とすることが好ましい。
以上に述べたように、本発明に係る溶融紡糸口金パックを用いることにより、パック内でのポリマーの異常滞留とポリマーの熱劣化とを抑制し、それに起因する糸切れ、品質斑を低減することができるという顕著な効果を奏する。
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の溶融紡糸口金パックの実施形態を例示した説明図(概略正断面図)を示す。この図1において、符号1はパックケース、符号2は紡糸口金、符号3は分配板、符号4はフィルター(なお、符号4aは紡糸フィルターであり、符号4bは口金直上フィルターである。)、符号5は濾材(なお、符号5aは中央部に設置する濾材(A)、5bは外周部に設置する濾材(B)である)、符号6はポリマー導入部材、符号7はシール部材、そして、符号8はフィルター締付部材をそれぞれ示す。
図1は、本発明の溶融紡糸口金パックの実施形態を例示した説明図(概略正断面図)を示す。この図1において、符号1はパックケース、符号2は紡糸口金、符号3は分配板、符号4はフィルター(なお、符号4aは紡糸フィルターであり、符号4bは口金直上フィルターである。)、符号5は濾材(なお、符号5aは中央部に設置する濾材(A)、5bは外周部に設置する濾材(B)である)、符号6はポリマー導入部材、符号7はシール部材、そして、符号8はフィルター締付部材をそれぞれ示す。
以上のように構成されたパックにおいて、ポリマー導入部材6に設けられた導入孔6aから流入する溶融ポリマーが濾過層5、紡糸フィルター4aを順次通過していく過程で、ポリマー中の異物の捕捉、あるいはポリマー流の細分化が行われる。
次に、前記図1に例示した本発明に係るパックの実施形態において、濾材5は、メタルサンド、ガラスビーズ、あるいは金属粉末を焼結して固めた多孔質焼結金属などから構成されている。なお、この濾材5は、図示したように円筒状設置部のスペース内に設置されるが、この濾材5が二分割されて円筒状設置部に配設される点において従来の濾材と大きく異なる。
ここで、本発明の実施形態に係る濾材5については、円筒によって円筒の内外に2分割して設置する。なお、その分割方法としては、濾材5が設置される円筒状の設置部に関して、その円筒直径をDとした場合に、濾材5を設置部の円筒中心から外周側へ向って0.75D〜0.85Dまでの中央部分の位置に濾材(A)を分割設置し、前記「0.75D〜0.85D」の位置から円筒状設置部の最外周部までの外周部に対して濾材(B)をそれぞれ区分けして設置する。
その際、濾材5を分割する方法としては、分割に用いる円筒の直径を0.75D〜0.85Dとなるように作成し、この円筒を仕切部材とする方法がある。この場合、仕切部材の内部と外部とに濾材(B)と濾材(A)とをそれぞれ詰め込んで設置し、これらの濾材(A)と濾材(B)の詰込み終了後、仕切部材を取り外しても良いが、仕切部材として用いる円筒を金網で製作し、この金網を濾材(A)と濾材(B)の詰め込み後もそのまま残しておいても良い。
本発明においては、円筒(仕切部材)の外部に存在する濾材(B)の圧力損失が、円筒(仕切部材)の内部に存在する前記濾材(A)の圧力損失より小さいことが肝要である。何故ならば、「背景技術」欄で説明した通り、従来技術のように濾材(A)と濾材(B)が実質的に同一であれば、外側に配置された濾材(B)を通過するポリマー流量が濾材(A)を通過するポリマー流量より少なくなる上に、その滞留時間も長くなるからである。そうすると、当然のことながら、濾材(B)を通過する側のポリマーの方が濾材(A)を通過するポリマーよりも熱劣化を受け易くなるからである。
そこで、通過するポリマー流量が少なくなる上に滞留時間も長くなる濾材(B)の濾過抵抗(すなわち、ポリマーがその濾材を通過するときに生じる圧力損失でもある)を濾材(A)より小さくすると、当然のことながらポリマーは、濾材(A)より濾材(B)の方をより通過し易くなる。したがって、濾材(A)と濾材(B)とをそれぞれ通過するポリマーの流量と滞留時間をほぼ等しくすることが可能となる。
その結果、ポリマーの熱劣化が抑制され、紡糸工程調子の安定化が図れる。また、その後に紡糸口金2に穿設された多数の紡糸孔から吐出されて形成されたフィラメント群間に品質差かなくなるという好ましい効果を奏する。
なお、濾過層5は、濾材設置面の直径をDとしたときに中心から0.8Dの中央部とその周囲部とで、周囲部の圧力損失が中央部と比較し小さくなるように前記濾材のmesh数を調整したものを使用するものである。また、ポリマー流入孔6aは通常パックの中央に設けられるが、このようにした場合、濾過層の中央にポリマーが多く流れ、外周部にはポリマーが少なくなって異常滞留の発生と滞留時間の大きな相違が発生してしまう。そこで、濾過層外周部には、中央部よりもポリマーが流れやすくなるように、圧力損失(すなわち、流動抵抗)の少ない、目の粗い(mesh数の小さい)濾材を使用する。
ここで、前述の濾材を詰める方法としては、予め濾過層の0.8Dとなるような円筒状の仕切部材を濾材詰込み時に設置して、濾材詰込み終了後、除去する方法や、該仕切部材を金網を使用して製作し、濾材詰込み後もそのまま設置しておく方法がある。
次に、図2は本発明のパックの別の実施形態例を説明するために模式的に示した説明図であって、この図2を参照しながら第2実施例について説明する。
図2の実施例では、濾過層5a,5bへの流入孔6aを中央部と外周部とでそれぞれ分離し、特に外周部への流入量を多くするようにバランスさせている。特に、固有粘度が高いポリマーの場合、ポリマー流の低速部は異常滞留を生じやすいため、このような構造を適用することにより異常滞留発生を低減できる。
図2の実施例では、濾過層5a,5bへの流入孔6aを中央部と外周部とでそれぞれ分離し、特に外周部への流入量を多くするようにバランスさせている。特に、固有粘度が高いポリマーの場合、ポリマー流の低速部は異常滞留を生じやすいため、このような構造を適用することにより異常滞留発生を低減できる。
このとき、濾過層5a,5bの構成としては、高さ方向に濾材の径が異なるものを使用する複数層にしてもよい。また、中央部と外周部でトータルとしての流動抵抗に差がつくように構成すれば、両者で部分的に同じ濾材径の濾材を使用してもかまわない。
濾過層の中央部と周囲部との、ポリマー通過時の圧力損失が異なることとその効果の判定方法として、実際にポリマーに着色を施した着色テストによりその有効性を先ず予備的に確認した。この予備着色テストにおいては、ポリマーの劣化の度合いによって着色濃度が異なるため、着色濃度を測定することによって、ポリマーの劣化度を知ることができるという知見を利用したものである。
次に、実験に使用する紡糸条件として、紡糸温度を290℃に設定し、固有粘度(IV)が0.7であるポリエチレンテルフタレートを使用した。この紡糸テストにおいて、評価因子は、濾過層出口の内外層の滞留時間のばらつきとした。
実施例1は濾過層を0.85Dの位置で分割し、中央を20+60mesh、外周を10+60meshとしたものである。
実施例2は濾過層の直径をDとして、その中心から半径方向に対して0.85Dの位置で分割し、中央を20+60meshの濾材をつめ、外周を10+60meshの濾材をつめ、かつトップインサートを図2のタイプとしたものである。
比較例1は図3に示す従来のパックを使用した結果得られたものであり、比較例2は、濾過層を0.6Dの位置で分割し、中央を20+60mesh、外周を10+60meshとしたものである。
実施例2は濾過層の直径をDとして、その中心から半径方向に対して0.85Dの位置で分割し、中央を20+60meshの濾材をつめ、外周を10+60meshの濾材をつめ、かつトップインサートを図2のタイプとしたものである。
比較例1は図3に示す従来のパックを使用した結果得られたものであり、比較例2は、濾過層を0.6Dの位置で分割し、中央を20+60mesh、外周を10+60meshとしたものである。
上記表1より明らかなように、実施例1と実施例2は、比較例1及び比較例2と比較して、明らかにパック内でのポリマーの滞留時間差が改善されていた。
1 パックケース
2 紡糸口金
3 分配板
4 フィルター
5 濾材
6 溶融ポリマー導入部材
7 シール部材
8 フィルター締付部材
2 紡糸口金
3 分配板
4 フィルター
5 濾材
6 溶融ポリマー導入部材
7 シール部材
8 フィルター締付部材
Claims (4)
- 熱可塑性ポリマーが流入するポリマー流入孔が設けられたトップインサート、円筒状の設置部に収納されて前記ポリマーを濾過する濾材、紡糸フィルター、分配板、紡糸口金直上フィルター、そして、紡糸口金をこの順に組み込んでなる溶融紡糸用口金パックにおいて、
前記濾材の設置部を円筒によって内外に2分割して円筒内部に存在する濾材(A)と円筒外部に存在する濾材(B)とに区分すると共に前記濾材(B)の濾過抵抗を前記濾材(A)より小さくしたことを特徴とする溶融紡糸口金パック。 - 前記円筒状の設置部の円筒直径をDとした場合に、前記濾材を内外に2分割する前記円筒を円筒中心から円筒外周側へ向って0.75D〜0.85Dまでの位置に配置したことを特徴とする、請求項1に記載の溶融紡糸口金パック。
- 前記濾材(A)に供給されるポリマー流量よりも前記濾材(B)に供給されるポリマー流量が多くなるように前記ポリマー流入孔を配設したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の溶融紡糸口金パック。
- 前記濾材(A)及び前記濾材(B)をメタルサンド、ガラスビーズ又は焼結金属により形成したことを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の溶融紡糸口金パック。
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2008
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