JP2010090103A - 新規オリゴヌクレオチド誘導体及びそれから成るNF−κBデコイ - Google Patents

新規オリゴヌクレオチド誘導体及びそれから成るNF−κBデコイ Download PDF

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Abstract

【課題】NF-κBデコイとして用いた場合に公知のNF-κBデコイよりもNF-κBに対する結合親和性が一層高い、新規なオリゴヌクレオチド誘導体、それから成るNF-κBデコイ、及びそれを有効成分として含有する医薬を提供すること。
【解決手段】特定の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと、その相補鎖が、特定のリンカーで結合されたヘアピン型の二本鎖オリゴヌクレオチドが、公知のNF-κBデコイよりも高いNF-κB結合親和性を発揮する。
【選択図】図3

Description

本発明は、新規なオリゴヌクレオチド誘導体及びそれから成るNF-κBデコイに関する。本発明のNF-κBデコイは、虚血性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、癌の転移、浸潤等の予防、改善又は治療等に有用である。
NF-κB(nuclear factor kappa B)は、サイトカインや接着因子等、免疫反応に関する遺伝子の発現を調節する役割を持つ一群の転写因子の総称であり、NF-κBがゲノム遺伝子上の結合部位に結合すると、免疫反応に関する遺伝子が過剰に発現する。このため、NF-κBは、免疫反応が原因となるアトピー性皮膚炎や関節リウマチ等のアレルギー性疾患、自己免疫疾患、さらには心筋梗塞等の虚血性疾患や動脈硬化等の各種疾患に関与することが知られている。
一方、転写因子に対するデコイを投与することにより、対象となる転写因子の活性を低下させ、該転写因子に起因して起きる疾患の治療や予防を行なうことが知られている。デコイ(decoy)とは、英語で「おとり」の意味であり、ある物質が本来結合あるいは作用すべきものと似せた構造を有するものをデコイと呼んでいる。転写因子のデコイとしては、主として転写因子のゲノム遺伝子上の結合領域と同じ塩基配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチドが用いられている(特許文献1〜3)。このようなオリゴヌクレオチドから成るデコイの共存下では、転写因子の分子のうちの一部は、本来結合すべきゲノム遺伝子上の結合領域に結合せずに、デコイオリゴヌクレオチドに結合する。このため、本来結合すべきゲノム遺伝子上の結合領域に結合する転写因子の分子数が減少し、その結果、転写因子の活性が低下することになる。この場合、オリゴヌクレオチドは、本物のゲノム遺伝子上の結合領域の偽物(おとり)として機能して転写因子を結合するため、デコイと呼ばれる。NF-κBに対するデコイオリゴヌクレオチドも種々知られており、それらの薬理効果も種々知られている(特許文献4〜12)。
特再表96/035430号公報 特許3392143号公報 国際公開公報WO 95/11687号公報 特開2005-160464号公報 国際公開公報WO 96/35430 国際公開公報WO 02/066070 国際公開公報WO 03/043663 国際公開公報WO 03/082331 国際公開公報WO 03/099339 国際公開公報WO 04/026342 国際公開公報WO 05/004913 国際公開公報WO 05/004914 特表平08−501928号公報 国際公開公報WO 93/06122 米国特許第5,495,006号公報 米国特許第5,556,752号公報
Milliganら、J.Med.Chem.1993,36,1923 Marwick, C.,(1998) J. Am. Med. Assoc., 280, 871 Stein & Cheng,Science 1993,261,1004 Levinら、Biochem. Biophys. Acta, 1999, 1489, 69 Neish ASら、J. Exp. Med. 1992, Vol. 176, 1583-1593. Leung Kら、Nature. 1988 Jun 23;333(6175):776-778. Marina A.ら、The Journal of Biological Chemistry, 1995, Vol.270, Number 6, pp. 2620-2627 M. Durandら、Nucleic Acids Res., 1990,18(21),6353-6359 P.E. VOROBJEVら、Biopolymers. 1993 Dec;33(12):1765-77 Squire Rumney, IVら、J.Am.Chem.Soc., 117(21),5635-5646,1995
本発明の目的は、NF-κBデコイとして用いた場合に公知のNF-κBデコイよりもNF-κBに対する結合親和性が一層高い、新規なオリゴヌクレオチド誘導体、それから成るNF-κBデコイ、及びそれを有効成分として含有する医薬を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、特定の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと、その相補鎖が、特定のリンカーで結合されたヘアピン型の二本鎖オリゴヌクレオチドが、公知のNF-κBデコイよりも高いNF-κB結合親和性を発揮することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式(I)又は(II)で表されるオリゴヌクレオチド誘導体を提供する。
Nn1-X1-Nn2-L-X2 (I)
X2-L-Nn1-X1-Nn2 (II)
(これらの式中、
Nはa、c、g又はtを表わし、
n1は1ないし5の整数を表わし、
n2は、1ないし3の整数を表わし、
X1は5'-ggrhtyyh-3'の塩基配列(ここでrはa又はg、hはc、a又はt、yはc又はtを表わす)を表わし、
X2は、Lをループ部として二つ折りにした際にNn1-X1-Nn2に対し相補的である塩基配列を表し、
Lは-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-、-OPO2-(OCH2CH2CH2)n3-OPO2O-又は-OPO2O-(CH2)n4-OPO2O-を表わし、
n3は4ないし8の整数を表わし、
n4は3ないし12の整数を表わす)。
また、本発明は、上記本発明のオリゴヌクレオチド誘導体から成るNF-κBデコイを提供する。さらに、本発明は、上記本発明のオリゴヌクレオチド誘導体を有効成分として含有する医薬を提供する。
本発明により、公知のNF-κBデコイよりもNF-κBに対する結合親和性が一層高い新規なオリゴヌクレオチド誘導体、それから成るNF-κBデコイ、及びそれを有効成分として含有する医薬が提供された。本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、公知のNF-κBデコイよりもNF-κBに対する結合親和性が極めて高いので、従来のNF-κBデコイを有効成分として含有する医薬よりも優れた薬効を発揮する。また、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、公知のNF-κBデコイよりも細胞毒性が低い。さらに、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、二本鎖オリゴヌクレオチドの末端同士がリンカーにより結合されたヘアピン型の構造をとるため、融解温度が通常の二本鎖オリゴヌクレオチドよりも遥かに高く、製剤工程、保存時及び生体内における安定性が高い。さらに、公知のNF-κBデコイよりも分子構造が小さいので、製造コストも低くなる。
実施例5のオリゴヌクレオチド誘導体をマウスLPS惹起急性肺障害モデルに投与した際の、マウス体内でのIL-6産生量を示す図である。 比較例1の二本鎖DNAをマウスLPS惹起急性肺障害モデルに投与した際の、マウス体内でのIL-6産生量を示す図である。 比較例1の二本鎖DNA並びに実施例10及び16のオリゴヌクレオチド誘導体をマウスLPS惹起急性肺障害モデルに投与した際の、マウス体内でのIL-6産生量を示す図である。
上記の通り、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、上記一般式(I)又は(II)で表わされる。一般式(I)及び(II)中、Nはa、c、g又はtを表わす。n1は1ないし5の整数、好ましくは2ないし4の整数を表わす。n2は、1ないし3の整数、好ましくは1又は2の整数を表わす。X1は5'-ggrhtyyh-3'の塩基配列(ここでrはa又はg、hはc、a又はt、yはc又はtを表わす)を表わし、好ましくは、ggatttcc又はggactttcである。X2は、L(リンカー)をループ部として二つ折りにした際にNn1-X1-Nn2に対し相補的である塩基配列を表わす。ここで、「Lをループ部として二つ折りにした際にNn1-X1-Nn2に対し相補的である塩基配列」とは、例えば、Nn1-X1-Nn2が5'-aggggatttcccc-3'(配列番号1)の場合には、下記式(III)又は(IV)に示すように、Lをループ部としてNn1-X1-Nn2の塩基とX2の塩基が向き合った際に互いに相補的であることを意味する。なお、Nn1-X1-Nn2の好ましい例としては5'-aggggatttcccc-3'(配列番号1)、5'-ggggatttcccc-3'(配列番号3)及び5'-gggatttccc-3'(配列番号4)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2010090103
一般式(I)及び(II)中、Lは-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-、-OPO2-(OCH2CH2CH2)n3-OPO2O-又は-OPO2O-(CH2)n4-OPO2O-、好ましくは、-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-又は-OPO2O-(CH2)n4-OPO2O-、さらに好ましくは-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-である。ここで、n3は4ないし8の整数、好ましくは5ないし7の整数、さらに好ましくは6であり、n4は3ないし12の整数を表わす。なお、リンカーLの両端の-OPO2O-は、それぞれ、隣接するヌクレオチドの糖の3'位又は5'位と結合するリン酸ジエステル結合を表わしている。また、リンカーの両端の-OPO2O-を除いた部分を「リンカー部」と呼ぶことがある。また、リンカーを介して末端が連結された2個の相補的オリゴヌクレオチドが二本鎖を形成している構造(上記式(III)や(IV)のような構造)を、本明細書において便宜的に「ヘアピン型」と呼ぶことがある。なお、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体が、ヘアピン型構造をとる(すなわち、オリゴヌクレオチド部分が二本鎖になる)ことは、下記実施例に具体的に示される融解温度やNF-κBとの結合活性から明らかである。
本発明にかかるオリゴヌクレオチドにおいては、適切な生化学的安定性を与える目的で、ヌクレオチド間結合のすべてあるいは一部にホスホロチオエート化等の耐ヌクレアーゼ修飾を施してもよい。すなわち、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体中のオリゴヌクレオチド部分は、基本的にDNAであることが好ましいが、隣接する少なくとも2個のヌクレオチド間の結合(及び/又はリンカー部に隣接するヌクレオチドでは、該ヌクレオチドとリンカー部の間)を、耐ヌクレアーゼ修飾してヌクレアーゼに対する耐性を増大させてもよい。ここで、「耐ヌクレアーゼ修飾」とは、ヌクレアーゼによる分解を天然のDNAよりも受けにくくする修飾のことを意味し、このようなDNAの修飾自体は周知である。耐ヌクレアーゼ修飾の例としては、ホスホロチオエート化(本明細書において「S化」と呼ぶことがある)、ホスホロジチオエート化、ホスホロアミデート化等を挙げることができる。これらのうち、S化が好ましい。S化は、上記の通り、隣接するヌクレオチド間のリン酸ジエステル結合を構成するリン原子に結合している2個の非架橋酸素原子のうちの1個をイオウ原子に変換することを意味する。任意の隣接するヌクレオチド間の結合をS化する手法自体は周知であり、例えば、非特許文献7に記載された方法により行なうことができ、S化オリゴヌクレオチドは商業的にも合成されている。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、単なる塩基配列は、そうでないことが文脈上明らかな場合を除き、ヌクレオチド間の結合及びリンカー部とヌクレオチド間の結合の一部又は全部がS化されているものも、全くS化されていないものをも包含する。ただし、1つの配列でS化の部位が明記されている場合には、S化が記載されていない部位はS化されていない。
本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、先ず、その5'末端にリンカーが結合される方の一本鎖オリゴヌクレオチドを常法により合成し、その5'末端にリンカーを結合し、さらに、リンカーの他端に所定のヌクレオチドの3'位を結合し、さらにこのヌクレオチドに続けて常法により所定のオリゴヌクレオチドを5'側に1個ずつ結合させていくことにより合成することができる。本発明で規定されるこのようなリンカー自体は公知であり、このようなリンカーで相補的なオリゴヌクレオチドの末端同士を連結し、オリゴヌクレオチド部分を二本鎖オリゴヌクレオチドとすることも公知である(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、特許文献14、特許文献15)。また、ヘアピン型の二本鎖オリゴヌクレオチドを調製するための各種リンカーを導入するための試薬(リンカーの誘導体)が市販されているので、これらの市販のリンカー試薬を用い、その指示書に従って容易にヘアピン型の二本鎖オリゴヌクレオチドを調製することができる。下記実施例にも調製方法の1例が具体的に記載されている。
ヘアピン型二本鎖オリゴヌクレオチドを調製するために利用できる、本発明で規定されるリンカーを導入するための試薬として市販されているものとして以下のものを挙げることができる。
1. エチレングリコール単位の繰返しから成るリンカー部を導入するための試薬
(1) 18-O-ジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト{18-O-Dimethoxytritylhexaethyleneglycol,1-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite}
(商品名:Spacer Phosphoramidite 18、米国Glen Research社)
(エチレングリコール単位6個から成るリンカー部を結合)
(2) 9-O-ジメトキシトリチルトリエチレングリコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
{9-O-Dimethoxytrityl-triethylene glycol,1-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite}
(商品名:Spacer Phosphoramidite 9、米国Glen Research社)
(エチレングリコール単位3個から成るリンカー部を結合)
(3) DMT-ドデカン-ジオール ホスホロアミダイト
DMT-dodecane-Diol phosphoramidite
(商品名:Spacer 12、米国ChemGenes社)
(エチレングリコール単位4個から成るリンカー部を結合)
2. アルキレン鎖から成るリンカー部を導入するための試薬
(1) 3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
{3-(4,4'-Dimethoxytrityloxy)propyl-1-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite}
(商品名:Spacer Phosphoramidite C3、米国Glen Research社)
(プロピレン鎖から成るリンカー部を結合)
(2) DMT-ブタン-ジオール ホスホロアミダイト
(DMT-butane-Diol phosphoramidite)
(商品名:C-4 Spacer、米国ChemGenes社)
(ブチレン鎖から成るリンカー部を結合)
(3) DMT-ヘキサン-ジオール ホスホロアミダイト
(DMT-hexane-Diol phosphoramidite)
(商品名:C-6 Spacer、米国ChemGenes社)
(ヘキシレン鎖から成るリンカー部を結合)
(4) DMT-ノナン-ジオール ホスホロアミダイト
(DMT-nonane-Diol phosphoramidite)
(商品名:C-9 Spacer、米国ChemGenes社)
(ノニレン鎖から成るリンカー部を結合)
(5) 12-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)ドデシル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト
{12-(4,4'-Dimethoxytrityloxy)dodecyl-1-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite}
(商品名:Spacer C12 CE Phosphoramidite、米国Glen Research社)
(ドデシレン鎖から成るリンカー部を結合)
本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、一般式(I)及び(II)中のX1がNF-κBのコンセンサス配列になっているため、NF-κBデコイとして機能する。従って、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、NF-κBデコイが有効成分として用いられる医薬の有効成分として用いることができる。このような医薬は、下記の各種疾患の治療及び予防に有効であることが認められている。
血管再狭窄、急性冠症候群、脳虚血、心筋梗塞、虚血性疾患の再潅流障害、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、接触性皮膚炎、ケロイド、褥創、潰瘍性大腸炎、クローン病、腎症、糸球体硬化症、アルブミン尿症、腎炎、腎不全、慢性関節リウマチ、変形性関節症、椎間板変性症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、大動脈瘤、脳動脈瘤。さらには、
1.免疫系疾患
大動脈炎症候群(高安動脈炎)
バージャー病(ビュルガー病)
結節性動脈周囲炎
ウェゲナー肉芽腫症
アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)
全身性エリテマトーデス
多発性筋炎・皮膚筋炎
シェーグレン症候群
成人スティル病
2.神経・筋疾患
パーキンソン病
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
多発性硬化症(MS)
3.呼吸器系疾患
特発性間質性肺炎
サルコイドーシス
原発性肺高血圧症
4.消化器系疾患
自己免疫性肝炎
劇症肝炎
重症急性膵炎
5.皮膚・結合組織疾患
強皮症
6.骨・関節系疾患
広範脊柱管狭窄症
7.腎・泌尿器系疾患
IgA腎症
急速進行性糸球体腎炎
これらの医薬用途に用いる場合、オリゴヌクレオチドの投与経路は、特に限定されないが、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、対象臓器ないしは組織への直接投与等の非経口投与が好ましい。投与量は、対象疾患、患者の症状、投与経路等により適宜設定されるが、通常、成人1日当たり0.1〜10000nmol、好ましくは1 〜1000 nmol、より好ましくは10〜100 nmolを投与することができる。製剤は、常法により行なうことができ、例えば、注射剤の場合には、生理食塩水中に本発明のオリゴヌクレオチドを溶解した溶液の形態とすることができる。製剤中には、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤、等張化剤などの、製剤分野で常用される添加剤が適宜混合されていてもよい。また、他の薬効成分を含んでいてもよい。
下記実施例に具体的に示されるように、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、公知のNF-κBデコイよりもNF-κBに対する結合親和性が一層高いので、従来のNF-κBデコイを有効成分として含有する医薬よりも優れた薬効を発揮する。特に、公知のNF-κBデコイよりも小さい分子構造を有し、より高い結合活性を有するので、投与量が少なくて済み、製造コストも低くなる。また、下記実施例に具体的に記載されるように、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、公知のNF-κBデコイよりも細胞毒性が低い。さらに、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、二本鎖オリゴヌクレオチドの末端同士がリンカーにより結合されたヘアピン型の構造をとるため、融解温度が通常の二本鎖オリゴヌクレオチドよりも遥かに高く、製剤工程、保存時及び生体内における安定性が高い。これらの特長に加え、本発明にかかるオリゴヌクレオチド誘導体は優れた耐ヌクレアーゼ特性も合わせ持つため、静脈注射等の全身投与によってもその効果を発揮することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各例の説明に先立ち、各特性の測定方法及び評価方法について説明する。
1.融解温度(Tm値)測定試験(デコイの二本鎖としての安定性を測定)
Tm解析システム(UV-1650PC/TMSPC-8:SHIMADZU社製)を使用して、PBS溶液中における各デコイの吸光度を1℃〜99℃の範囲で、複数回測定し、各温度における二本鎖の解離をモニターした。温度−吸光度曲線から、微分法で各Tm値(℃)を算出した。
2.結合活性試験(マウス血漿に対するデコイの活性安定性を、無細胞系実験で測定)
各デコイ溶液にマウス血漿を添加し(核酸の終濃度10μmol/L、マウス血漿90%)、37℃で0〜24時間反応させた。反応後、市販の転写因子アッセイキット(TransAM(商品名)NF-κB p65:Cat.No.40096:Active Motif, Inc社)を用い、NF-κBコンセンサス配列が固相化されているプレートへ上記核酸反応液と、Jurkat 細胞(ヒトTリンパ腫由来)核抽出液を添加し反応(室温、1時間)させた。洗浄後、一次抗体(抗NF-κB p65抗体)と二次抗体(HRP-抗IgG抗体)をキット説明書に従って添加、洗浄し、化学発光法を用いて測定した。
評価方法
各デコイ溶液の濃度値を対数に変換し、横軸を対数に変換した濃度値(0.005〜167nmol/Lの濃度内で5〜10点)、縦軸に各群のパーセンテージ値をプロットし、近似曲線を作成し、各反応時間におけるIC50(inhibition concentration 50%)を算出した。
3.変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動試験(マウス血漿に対するデコイの構造安定性を、ゲル電気泳動を用いて測定)
各デコイ溶液にマウス血漿を添加し(核酸の終濃度10μmol/L、マウス血漿90%)、37℃で0〜24時間反応させた。反応後、20%非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、100V、100分間分離した。2.5μg/mLエチジウムブロマイド水溶液で20分間染色した後、脱イオン水で15分間脱染色し、UVトランスイルミネーターで蛍光バンドとして可視化した。得られたゲルの画像を、画像解析装置(LAS-3000 UVmini:FUJI FILM社)で撮影すると共に、可視化された完全長のデコイ核酸化合物を装置付属のソウトウェアで定量した。
4.細胞内結合活性試験(デコイのNF-κB転写因子結合阻害活性を細胞を用いた実験系で測定)
マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞を播種(6ウェルプレート: 6.0〜9.0×105細胞/ウェル/2mL)し、37℃、5%CO2で24時間培養(10%FBS含有RPMI1640)した。各デコイ核酸(最終濃度は比較例1の二本鎖DNA:0.12〜4μmol/L、その他のデコイ:0.00012〜1.2μmol/L)を、DMRIE-C遺伝子導入用試薬(Invitrogen社)により細胞に導入した(4Hr、24Hrともに4時間導入)。24Hrの場合は4時間導入後に洗浄し、RPMI1640培養液で20時間培養した。その後細胞を洗浄し、LPS刺激(100ng/mL、1時間)を加えた。細胞洗浄の後、細胞の核抽出液を調製し、市販の転写因子アッセイキット(TransAM(商品名)NF-κB p65:Cat.No.40096:Active Motif, Inc社)を利用して、各核抽出サンプルにおける結合阻害活性を測定した。(上記結合活性試験参照)
評価方法
演算はMicrosoft Excel 2002(商品名、Microsoft社)を使用した。平均値はExcelの関数AVERAGE、標準偏差(S.D.)は関数STDEVを用いて演算した。データは3例の平均値±標準偏差として表した。
5.細胞毒性試験
HeLa細胞をTrypsin-EDTA処置により一度剥離させ、播種(96well plate: 1.0×104 細胞/ウェル/50μL、10%FBS含有RPMI1640)した。次に、10%FBS MEM培地で調製した6,20,60および200μmol/Lの各デコイを50μLずつ添加し、37℃、5%CO2で24時間培養した後、WST-1法より生細胞のミトコンドリア代謝活性を指標に、細胞増殖を測った。
評価方法
横軸に各デコイの濃度値(3、10、30、100 μmol/L)、縦軸に各濃度における無処置群の測定値を100%にした時のパーセンテージ値をプロットし、50%を挟む二点より LC50(半数致死濃度)を算出し、各群のLC50値と比較例1のLC50値との比を求めた。
6.紫外吸光分析
NanoDrop ND-1000 Spectrophotometer (商品名、NanoDrop Technologies, LLC)を用い、各サンプルのUV(水)λmaxを測定した。
7.HPLC保持時間
各サンプルを下記条件の逆相イオン対HPLCにて分析し、保持時間を測定した。
装置:SHIMADZU prominence(商品名、島津製作所)
カラム:Waters Xbridge C18(商品名、日本ウォーターズ、2.5μm、4.6×75mm)
カラム温度:50℃
A液:5%アセトニトリル, 0.1Mトリエチルアミン酢酸緩衝液(pH7.0)
B液:90%アセトニトリル, 0.1Mトリエチルアミン酢酸緩衝液(pH7.0)
グラジエントB液濃度:0%-30%(30min)
流速:1mL/min
検出波長:260nm
実施例1〜30
以下の構造を有する30種類のオリゴヌクレオチド誘導体を後記方法並びに合成例に従って調製した。
(1) 5'-agsggsgasttstcsccsc-(CH2CH2O)6-ggsggsaasatsccsccst-3'(実施例1)
(2) 5'-ggsggsaasatsccsccst-(CH2CH2O)6-agsggsgasttstcsccsc-3'(実施例2)
(3) 5'-agsggsgasttstcsccscs-(CH2CH2O)6-sggsggsaasatsccsccst-3'(実施例3)
(4) 5'-ggsggsaasatsccsccsts-(CH2CH2O)6-sagsggsgasttstcsccsc-3'(実施例4)
(5) 5'-agsgsggsasttstsccscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsaasastcscsccst-3'(実施例5)
(6) 5'-gggsgsaasastcscsccst-(CH2CH2O)6-agsgsggsasttstsccscsc-3'(実施例6)
(7) 5'-gggsgsaasastcscsccsts-(CH2CH2O)6-sagsgsggsasttstsccscsc-3'(実施例7)
(8) 5'-agsgsgsgastststcscscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsasaastscsccscst-3'(実施例8)
(9) 5'-gggsgsasaastscsccscst-(CH2CH2O)6-agsgsgsgastststcscscsc-3'(実施例9)
(10) 5'-agsgsgsgastststcscscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsasaastscsccscst-3'(実施例10)
(11) 5'-gggsgsasaastscsccscsts-(CH2CH2O)6-sagsgsgsgastststcscscsc-3'(実施例11)
(12) 5'-asgsgsgsgsastststscscscsc-(CH2CH2O)6-gsgsgsgsasasastscscscscst-3'(実施例12)
(13) 5'-asgsgsgsgsastststscscscscs-(CH2CH2O)6-sgsgsgsgsasasastscscscscst-3'(実施例13)
(14) 5'-gsgsgsgsasasastscscscscst-(CH2CH2O)6-asgsgsgsgsastststscscscsc-3'(実施例14)
(15) 5'-gsgsgsgsasasastscscscscsts-(CH2CH2O)6-sasgsgsgsgsastststscscscsc-3'(実施例15)
(16) 5'-agsgsggsasttstsccscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsaasastcscsccst-3' (実施例16)
(17) 5'-gsggsgasttstcsccsc-(CH2CH2O)6-ggsggsaasatsccscc-3' (実施例17)
(18) 5'-ggsggsaasatsccscc-(CH2CH2O)6-gsggsgasttstcsccsc-3' (実施例18)
(19) 5'-gsggsgasttstcsccscs-(CH2CH2O)6-sggsggsaasatsccscc-3' (実施例19)
(20) 5'-ggsggsaasatsccsccs-(CH2CH2O)6-sgsggsgasttstcsccsc-3' (実施例20)
(21) 5'-gsgsggsasttstsccscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsaasastcscscc-3' (実施例21)
(22) 5'-ggsggsasttstsccscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsaasastcscscsc-3' (実施例22)
(23) 5'-gggsgsaasastcscscc-(CH2CH2O)6-gsgsggsasttstsccscsc-3' (実施例23)
(24) 5'-gsgsggsasttstsccscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsaasastcscscc-3' (実施例24)
(25) 5'-gggsgsaasastcscsccs-(CH2CH2O)6-sgsgsggsasttstsccscsc-3' (実施例25)
(26) 5'-gsgsgsgastststcscscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsasaastscsccsc-3' (実施例26)
(27) 5'-gggsgsasaastscsccsc-(CH2CH2O)6-gsgsgsgastststcscscsc-3' (実施例27)
(28) 5'-gsgsgsgastststcscscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsasaastscsccsc-3' (実施例28)
(29) 5'-gggsgsasaastscsccscs-(CH2CH2O)6-sgsgsgsgastststcscscsc-3' (実施例29)
(30) 5'-gsggsasttstsccsc-(CH2CH2O)6-ggsgsaasastcscsc-3' (実施例30)
((1)〜(30)中、添え字sは、sの両隣のヌクレオチド同士又はsの両隣のヌクレオチドとエチレングリコール単位がホスホロチオエート結合していることを示す)。
上記各オリゴヌクレオチド誘導体は、基本的に、市販のDNA合成用固相支持体、DNAシアノエチルホスホロアミダイト、及び適切な反応/修飾試薬を用い、リン酸ジエステル結合を全部又は部分的にホスホロチオエート化修飾を施したオリゴヌクレオチドをDNA自動合成機(商品名:ABI394、米国Applied Biosystems社製)で3'→5'方向に合成した。ポリエチレングリコール鎖を導入したヘアピン型NF-κBデコイの製造に当たっては、まず、3'側配列(その5'末端にリンカーが結合される方の配列)を3'→5'方向に合成し、その5'末端に続けて、18-O-ジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト(商品名:Spacer Phosphoramidite 18、米国Glen Research社) 1分子をカップリングさせ、さらに、5'側配列(その3'末端にリンカーが結合される方の配列)を3'→5'方向に引き続き合成することで、3'側配列と5'側配列がヘキサエチレングリコールで連結されたオリゴヌクレオチド誘導体を得た。それを加熱、急冷により分子内アニーリングさせて製造した。
より具体的には、上記合成は次のように行なった。DMT-デオキシアデノシン(bz)β-シアノエチルホスホロアミダイト、DMT-デオキシシチジン(bz)β-シアノエチルホスホロアミダイト、DMT-デオキシグアノシン(bz)β-シアノエチルホスホロアミダイトおよびDMT-デオキシチミジンβ-シアノエチルホスホロアミダイトをSigma-Aldrich社から、Spacer18 phosphoramidite(商品名)、S化試薬(CPRII、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド)および合成用カラムをGlen Research社から、オリゴDNA合成用の脱保護溶液、活性化溶液、酸化溶液およびキャッピング溶液(CapA溶液およびCapB溶液)を和光純薬からそれぞれ購入した。(bzはベンゾイル基を意味する。)
合成例1(実施例1の配列化合物)
DNA自動合成装置ABI394(Applied Biosystems社製)を用いて、ホスホロアミダイト法により、固相支持体上に所望のオリゴヌクレオチドを以下のように合成した。合成装置に、保護された3’末端ヌクレオチド(dT)を予め結合した多孔性ガラス(Controlled Pore Glass: CPG)を含む合成用カラムを装着し、脱保護溶液、活性化溶液および3'末端の隣に隣接するヌクレオチド(dC)のβ-シアノエチルホスホロアミダイト(アセトニトリル溶液)、酸化溶液、キャッピング溶液(CapA溶液とCapB溶液との1:1混合液)の順に反応溶液を合成用カラムに通し、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合を形成させた。ヌクレオチド間連結がホスホロチオエートの場合、酸化溶液の代わりに無水アセトニトリルに溶解したS化試薬を使用した。各試薬の濃度および使用量は、製造元の指示書に従った。以下同様にして、3'→5'方向に順次1塩基ずつ延長合成した。Spacer 18 phosphoramidite(商品名)を、該商品に添付の指示書に従い、合成したオリゴヌクレオチドの5'末端に結合し、次いで、前記と同様に、Spacer 18 phosphoramidite(商品名)の他端側に結合するオリゴヌクレオチドを3'→5'方向に順次1塩基ずつ延長合成した。
固相担体からの切り出しおよび脱保護
28%アンモニア水溶液で室温、2時間処理し、オリゴヌクレオチド誘導体をCPGより切り出した。さらに、その溶液を65℃、6時間処理し、塩基部分の保護基およびリン酸部分の保護基を脱離させた。
カートリッジ精製
Oligo R3担体(Applied Biosystems社製)を充填した固相抽出カラムに0.1Mトリエチルアミン酢酸緩衝液(pH7.0)を加えて平衡化し、そこに精製前のオリゴヌクレオチドを入れて吸着させ、0.1Mトリエチルアミン酢酸緩衝液(pH7.0):アセトニトリル(9:1)を添加して不完全なオリゴヌクレオチドを洗い出した後、2%トリフルオロ酢酸水溶液の添加によって完全長のオリゴヌクレオチドから5'末端のジメトキシトリチル基を脱離させ、水を通して1回洗浄した。次に、20%アセトニトリルを添加してオリゴヌクレオチドを溶出させた。次いで、その溶出液から凍結乾燥により溶媒を蒸発させ、オリゴヌクレオチド誘導体を得た。
比較例1
以下の構造を有する、S化された通常の二本鎖DNAを常法により合成した(塩基配列は配列番号2に示す。)
5'-CsCsTsTsGsAsAsGsGsGsAsTsTsTsCsCsCsTsCsC-3'
3'-GsGsAsAsCsTsTsCsCsCsTsAsAsAsGsGsGsAsGsG-5'
(添え字sは、sの両隣のヌクレオチド同士がホスホロチオエート結合していることを示す)。
実施例31
上記新規オリゴヌクレオチド誘導体(実施例1〜30)及び比較例1の二本鎖DNAについて、上記した測定方法、又は測定方法を先に記載していない特性については常法により、各種特性を測定した。結果を下記表1−1及び表1−2に示す。
Figure 2010090103
Figure 2010090103
表1−1及び表1−2に示されている各特性の薬理学的な意味を以下に説明する。
(1) 結合活性
(i) 0Hr
無細胞系(セルフリー系)での、マウス血漿90%存在下で反応時間0Hr(0時間、以下同様)における、各化合物のNF-κB結合に対するIC50値である。実際には、各デコイ溶液にマウス血漿を添加後、3秒以内に測定した値を便宜上0Hrの値とした。
(ii) 24Hr 、24Hrs/0Hr 比
無細胞系での、マウス血漿90%存在下で反応時間24Hrにおける、各化合物のNF-κB結合に対するIC50値である。比較例1のIC50値が0Hrと24Hrの間で殆ど変わらないのに対し、実施例1〜16、21および23〜25の各化合物では24HrのIC50が増加している。これは各化合物がマウス血漿により分解されていることを示す。本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は生体に適用するのが目的であり、血漿成分に対する耐性と同時に、副作用を考慮すると適度に代謝を受けることも望ましい。生体では、生理活性を有する天然の物質は、いずれも分解と生合成のバランスにより適切な濃度に維持され、生体の恒常性が保たれるようになっている。本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、比較例1と比較し代謝されやすい特長を有することが明らかである。
(2) 50%残存時間
同じく無細胞系における本発明のオリゴヌクレオチド誘導体の核酸としての血漿に対する生化学的安定性を示すデータである。
(3) 細胞内結合活性
(i) 4Hrs
培養細胞系でのNF-κB阻害作用を示すデータであり、各化合物の細胞内・外耐性、細胞膜透過性を含んだ値である。本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、比較例1の二本鎖DNAと比較し約20〜500倍のポテンシャルを有することが明らかである。
(ii) 24Hrs
前述のように、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は比較例1の二本鎖DNAと比較し分解されやすい特長を有するが、24時間後においても、なお比較例1の二本鎖DNAより3〜14倍のポテンシャルを有することが明らかである。
(4) 細胞毒性
本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、比較例1の二本鎖DNAと比較して、LC50が約1.5〜3.8倍高く優れていた。
(5) Tm値
本発明のオリゴヌクレオチド誘導体の物理学的(熱力学的)安定性を示すデータである。比較例1の二本鎖DNAは、ヒトを始めとするほ乳類の体温より若干高い程度の熱力学的安定性しか有さず、例えば軟膏等の製剤化工程においてほとんど加熱することができないが、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は一般的製剤工程における温度条件であれば安定である。
(6) UV λmaxおよびHPLC保持時間
各化合物の物性値データである。
表1−1及び表1−2に示される通り、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体は、その結合活性が比較例1の二本鎖DNAよりも遥かに高く(0Hrの結合活性)、細胞内での代謝性は比較例1の二本鎖DNAよりも遥かに高いが(24Hrs/0Hr比)、24時間後でもなお本発明のオリゴヌクレオチド誘導体の方が結合活性が高い。また、細胞毒性は、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体の方が低い。特に、全てのヌクレオチド間結合がS化されている実施例15と比較例1を比較した場合、S化に起因する毒性を等しくして比較することができるが、本発明のオリゴヌクレオチド誘導体の細胞毒性は、比較例1の二本鎖DNAの細胞毒性の約57%であった。
実施例32 マウスLPS惹起急性肺障害モデルにおける効果(1)
実施例5のオリゴヌクレオチド誘導体を生理食塩水に溶解して2.5μg/mLおよび5μg/mLに調整し、BALB/cマウス(7週令、雌、1群10匹)へ100μL/匹で経気管内投与した。投与3日後に、リポ多糖(LPS、500μg/mL)を100μL/匹で経気管内投与し、投与24時間後に生理食塩水2mL/匹で肺を洗浄した。この肺胞洗浄液を回収し、含まれるIL-6の濃度をELISA法により測定した。肺胞洗浄液を生理食塩水で希釈し、市販のマウスIL-6免疫測定用キット(Mouse IL-6 Immunoassay(商品名)(R&D systems社製))を用いて、添付書類にしたがって実験を行った。吸光度(450/650nm)の測定には、Wallac1420ARVOsx(商品名、株式会社パーキンエルマージャパン)を用いた。対照群には、オリゴヌクレオチド誘導体を含まない生理食塩水を投与した。
解析方法
演算はMicrosoft Excel 2002(商品名、Microsoft)を使用した。平均値はExcel(商品名)の関数AVERAGEを,標準誤差(S.E.)は関数STDEV、SQRT、COUNTを用いて演算した。有意差検定は統計解析ソフトSAS前臨床パッケージver5.0(SAS Institute Japan)を用い、危険率5%未満を統計学的に有意であるとした。他群間の比較は、分散分析を実施し、等分散の場合はパラメトリックなDunnett検定、不等分散の場合はノンパラメトリックなDunnett検定を実施した。
結果を図1に示す。オリゴヌクレオチド誘導体の投与量が0.5μg/匹の場合には、対照群に対して統計学的に有意にIL-6産生量が低減された。
実施例33 マウスLPS惹起急性肺障害モデルにおける効果(2)
(1)比較例1の二本鎖DNAの作用
比較例1の二本鎖DNAを生理食塩水に溶解して1,10,100および1000μg/mLに調整し、BALB/cマウス(7週齢、雌、1群6〜16匹)へ100μL/匹で気管内投与した。対照群には二本鎖DNAを含まない生理食塩水を投与した。翌日LPS 500μg/mLを100μL/匹で気管内投与した。LPS投与24時間後に生理食塩水2mL/匹で肺を洗浄し(肺胞洗浄液)、肺胞洗浄液中のIL-6産生量をELISA法により測定した。実施例32と同様の手法でデータ解析を行なった。
結果を図2に示す。IL-6の生産量は二本鎖DNAの用量依存的に低下する傾向があったが、いずれの投与群でも対照群に対する有意差は認められなかった。
(2)オリゴヌクレオチド誘導体(実施例10及び16)の作用
比較例1の二本鎖DNA及びオリゴヌクレオチド誘導体(実施例10及び16)を生理食塩水に溶解して5μg/mLに調整し、BALB/cマウス(7週齢、雌、1群9匹)へ100μL/匹で気管内投与した。対照群には生理食塩水を投与した。投与3日後にLPS 500μg/mLを100μL/匹で気管内投与した。LPS投与24時間後に生理食塩水2mL/匹で肺を洗浄し(肺胞洗浄液)、肺胞洗浄液中のIL-6産生量をELISA法により測定した。実施例32と同様の手法でデータ解析を行なった。
結果を図3に示す。本発明のオリゴヌクレオチド誘導体投与群では、対照群に対して統計学的に有意にIL-6産生量が低減された。

Claims (13)

  1. 下記一般式(I)又は(II)で表されるオリゴヌクレオチド誘導体。
    Nn1-X1-Nn2-L-X2 (I)
    X2-L-Nn1-X1-Nn2 (II)
    (これらの式中、
    Nはa、c、g又はtを表わし、
    n1は1ないし5の整数を表わし、
    n2は、1ないし3の整数を表わし、
    X1は5'-ggrhtyyh-3'の塩基配列(ここでrはa又はg、hはc、a又はt、yはc又はtを表わす)を表わし、
    X2は、Lをループ部として二つ折りにした際にNn1-X1-Nn2に対し相補的である塩基配列を表し、
    Lは-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-、-OPO2-(OCH2CH2CH2)n3-OPO2O-又は-OPO2O-(CH2)n4-OPO2O-を表わし、
    n3は4ないし8の整数を表わし、
    n4は3ないし12の整数を表わす)。
  2. 前記一般式(I)又は(II)中、X1がggatttcc又はggactttcである請求項1記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  3. 前記一般式(I)又は(II)中、n1が2ないし4であり、n2が1又は2である請求項1又は2記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  4. 前記一般式(I)又は(II)中、Lが式-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-で表わされる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  5. 前記一般式(I)又は(II)中、Lが式-OPO2O-(CH2)n4-OPO2O-で表わされる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  6. 前記一般式(I)で表わされ、X2の5'-末端とNn2の3'-末端が、前記式-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-又は前記式-OPO2O-(CH2)n4-OPO2O-で表わされる構造により結合されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  7. 前記一般式(II)で表わされ、Nn1の5'-末端とX2の3'-末端が、前記式-OPO2-(OCH2CH2)n3-OPO2O-又は前記式-OPO2O-(CH2)n4-OPO2O-で表わされる構造により結合されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  8. 前記一般式(I)又は(II)中、Nn1-X1-Nn2がaggggatttcccc、ggggatttcccc又はgggatttcccである請求項1ないし7のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  9. 前記一般式(I)又は(II)中、Lが-(CH2CH2O)6-である請求項8記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
  10. 下記(1)〜(30)から成る群より選ばれる構造を有する請求項9記載のオリゴヌクレオチド誘導体。
    (1) 5'-agsggsgasttstcsccsc-(CH2CH2O)6-ggsggsaasatsccsccst-3'
    (2) 5'-ggsggsaasatsccsccst-(CH2CH2O)6-agsggsgasttstcsccsc-3'
    (3) 5'-agsggsgasttstcsccscs-(CH2CH2O)6-sggsggsaasatsccsccst-3'
    (4) 5'-ggsggsaasatsccsccsts-(CH2CH2O)6-sagsggsgasttstcsccsc-3'
    (5) 5'-agsgsggsasttstsccscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsaasastcscsccst-3'
    (6) 5'-gggsgsaasastcscsccst-(CH2CH2O)6-agsgsggsasttstsccscsc-3'
    (7) 5'-gggsgsaasastcscsccsts-(CH2CH2O)6-sagsgsggsasttstsccscsc-3'
    (8) 5'-agsgsgsgastststcscscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsasaastscsccscst-3'
    (9) 5'-gggsgsasaastscsccscst-(CH2CH2O)6-agsgsgsgastststcscscsc-3'
    (10) 5'-agsgsgsgastststcscscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsasaastscsccscst-3'
    (11) 5'-gggsgsasaastscsccscsts-(CH2CH2O)6-sagsgsgsgastststcscscsc-3'
    (12) 5'-asgsgsgsgsastststscscscsc-(CH2CH2O)6-gsgsgsgsasasastscscscscst-3'
    (13) 5'-asgsgsgsgsastststscscscscs-(CH2CH2O)6-sgsgsgsgsasasastscscscscst-3'
    (14) 5'-gsgsgsgsasasastscscscscst-(CH2CH2O)6-asgsgsgsgsastststscscscsc-3'
    (15) 5'-gsgsgsgsasasastscscscscsts-(CH2CH2O)6-sasgsgsgsgsastststscscscsc-3'
    (16) 5'-agsgsggsasttstsccscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsaasastcscsccst-3'
    (17) 5'-gsggsgasttstcsccsc-(CH2CH2O)6-ggsggsaasatsccscc-3'
    (18) 5'-ggsggsaasatsccscc-(CH2CH2O)6-gsggsgasttstcsccsc-3'
    (19) 5'-gsggsgasttstcsccscs-(CH2CH2O)6-sggsggsaasatsccscc-3'
    (20) 5'-ggsggsaasatsccsccs-(CH2CH2O)6-sgsggsgasttstcsccsc-3'
    (21) 5'-gsgsggsasttstsccscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsaasastcscscc-3'
    (22) 5'-ggsggsasttstsccscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsaasastcscscsc-3'
    (23) 5'-gggsgsaasastcscscc-(CH2CH2O)6-gsgsggsasttstsccscsc-3'
    (24) 5'-gsgsggsasttstsccscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsaasastcscscc-3'
    (25) 5'-gggsgsaasastcscsccs-(CH2CH2O)6-sgsgsggsasttstsccscsc-3'
    (26) 5'-gsgsgsgastststcscscsc-(CH2CH2O)6-gggsgsasaastscsccsc-3'
    (27) 5'-gggsgsasaastscsccsc-(CH2CH2O)6-gsgsgsgastststcscscsc-3'
    (28) 5'-gsgsgsgastststcscscscs-(CH2CH2O)6-sgggsgsasaastscsccsc-3'
    (29) 5'-gggsgsasaastscsccscs-(CH2CH2O)6-sgsgsgsgastststcscscsc-3'
    (30) 5'-gsggsasttstsccsc-(CH2CH2O)6-ggsgsaasastcscsc-3'
    ((1)〜(30)中、添え字sは、sの両隣のヌクレオチド同士又はsの両隣のヌクレオチドとエチレングリコール単位がホスホロチオエート結合していることを示す)。
  11. 請求項1ないし10のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド誘導体から成るNF-κBデコイ。
  12. 請求項1ないし10のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチド誘導体を有効成分として含有する医薬。
  13. 静脈内投与用である、請求項12記載の医薬。
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