以下、本発明を更に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する留置針組立体の一実施形態が、その縦断面形態において示されており、また、図2には、その一部が拡大して示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の留置針組立体は、内針10と、この内針10の基端部(図1及び図2中の右側端部)を固定する内針ハブ12と、内針10に外挿される外針14と、この外針14の基端部(図1及び図2中の右側端部)を固定する外針ハブ16と、外針ハブ14の内部に収容される針先保護用プロテクタ18とを、有している。なお、本明細書では、留置針組立体や針先保護用プロテクタを使用して患者への針の穿刺手技を行う際に、施術者よりも遠位の側を先端側、及びそのような遠位側に位置する留置針組立体や針先保護用プロテクタの端部、或いはそれらを構成する各部材の端部を先端部と言い、また、施術者の近位の側を基端側、及びそのような基端側の端部を基端部と言う。
より詳細には、図3に示されるように、内針10は、所定長さを有し、先端が鋭利な針先20とされた中空針からなっている。そして、そのような内針10の針先20の近傍には、係合部22が形成されている。この係合部22は、内針10の針先20の近傍の管壁部分が、その周方向の一部において、或いは全周に亘って、径方向外方に膨出して、かかる管壁部分の外径が、他の管壁部分よりも大径化されることによって、形成されている。なお、内針10の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料が、適宜に用いられる。
内針ハブ12は、ハブ本体24とキャップ26とを有している。ハブ本体24は、全体として、円筒形状を呈し、内孔28が、基部側開口部30を通じて、外方に開口している。このような内針ハブ12の先端部32には、軸方向に延びる貫通孔33が設けられている。そして、この貫通孔33に対して、内針10が、その基端部を、内針ハブ12の内孔28内に突入位置させるように挿通されて、固定されている。これによって、かかる内孔28が、内針10の内孔(細孔)内に連通している。
図3から明らかなように、内針ハブ12の先端部32には、その軸方向中間部の外周面に、円環状の段差面34が設けられて、この段差面34よりも先端側の部分が、その基部側部分よりも小径の突入部36とされている。この突入部36には、その先端面の外周部に、薄肉平板状の板状突起38の複数個(ここでは4個)が、一体的に立設されている。それら複数の板状突起38は、図には明示されてはいないものの、2個ずつが互いに対を為し、且つ対を為すもの同士が、内針ハブ12の中心軸を間に挟んで互いに対向配置されている。なお、この複数の板状突起38は、内針ハブ12の外針ハブ16への組み付け時に、針先保護用プロテクタ18が有する、後述する作用リング60を外針ハブ16に係止させ、また、内針ハブ12の外針ハブ16への組み付け後には、外針ハブ16内に収容される針先保護用プロテクタ18の無用な回転を阻止して、作用リング60の外針ハブ16に対する係止状態が不意に解消しないようにする役割を有している。
一方、キャップ26は、全体として、先端側部分が基端側部分よりも小径とされた略段付円筒形状を有しており、基端側の開口部には、通気フィルタ40が設けられている。この通気フィルタ40は、気体は透過させるものの、液体は透過させない性質を有している。このような通気フィルタ40としては、例えば、ポリエチレン等の高分子材料と親水性、水溶性または水膨潤性ポリマーを含む材料とを焼結してなる焼結多孔体や、疎水性不織布、多孔質体等からなるフィルタ部材が使用される。
そして、キャップ26が、通気フィルタ40の装着側とは反対側の小径の先端側部分において、ハブ本体24の基部側開口部30に圧入される等して、ハブ本体24に、取り外し可能に組み付けられている。これによって、内針ハブ12が、ハブ本体24とキャップ26との組付品として、構成されている。
そのような内針ハブ12の内部には、互いに連通状態とされたハブ本体24の内孔28とキャップの内孔42とにて、血液貯留空間44が、形成されている。この血液貯留空間44は、ハブ本体24の先端側において、内針10の内孔に連通し、且つキャップ26の基端側が、通気フィルタ40にて閉塞されている。これにより、後述するように、内針10を患者に穿刺した際のフラッシュバックによって、内針10内に流入した血液が、内針ハブ12内の血液貯留空間44内に流れ込んで貯留されて、外部に漏れ出さないようになっている。なお、内針ハブ12を形成するハブ本体24とキャップ26の材質は、何等限定されるものでない。しかしながら、フラッシュバックによる血液貯留空間44内への血液の流入を確認出来るように、透明または半透明の樹脂製であることが、望ましい。
一方、外針14は、図2及び図4に示されるように、内針10よりも短い長さを有する、内針10に外挿可能な細管からなっている。この外針14は、内針10とは異なって、鋭利な針先を有していないものの、先端面が、基端側に向かうに従って次第に大径化するテーパ面とされている。これによって、内針10と共に、患者の血管に穿刺される際の抵抗が、出来るだけ小さくされている。なお、外針14の先端部付近には、内部を流れる流体の出入りの効率化を図るために、1個または複数の穴が設けられていても良い。
このような外針14の材質も、何等限定されるものではないものの、患者の血管に留置される際に、血管壁等を傷付けないようにするために、適度な可撓性を有しているものであることが望ましい。その点からして、外針14の形成材料としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合、ポリウレタン、ポリエーテルナイロン、ポリプロピレン等の各種の軟質樹脂が、好適に用いられる。外針14は、患者の血管に留置された後において、内部を流通する液体の流れが把握出来るように、透明性を有していることが好ましい。また、外針14は、患者の血管内への留置部分の位置が把握出来るように、形成材料中に、硫酸バリウムや炭酸バリウム等のX線造影剤が配合されていても良い。
図2及び図4から明らかなように、外針ハブ16も、内針ハブ12と同様に、円筒状の全体形状を有し、内孔が、基端側開口部52を通じて、外方に開口している。そして、この外針ハブ16の内孔が、内針10に装着された前記針先保護用プロテクタ18を収容する、中空部としての収容部54とされている。外針ハブ16の先端部50には、軸方向に延びる貫通孔56が設けられ、この貫通孔56に対して、外針14が、その基端部において挿通されて固定されている。これによって、外針ハブ16の内孔からなる収容部54が、外針14の内孔(細孔)内に連通している。なお、外針ハブ16の先端部50への外針14の固定方法には、例えば、接着剤を用いたり、カシメピン等を用いたりする従来と同様な方法が採用される。
外針ハブ16の内周面の軸方向中間部には、凹溝からなる係止溝58が、全周に連続して延びるように形成されている。この係止溝58は、収容部54内に収容された針先保護用プロテクタ18が有する、後述する作用リング60の外周部が突入可能な溝幅と深さとを有している。かかる係止溝58の二つの側面のうち、外針ハブ16の先端側に位置する側面は、先端側に向かうに従って次第に小径化するテーパ面形状を有する先端側係止面62とされている。一方、外針ハブ16の基端側に位置する側面は、基端側に向かうに従って次第に小径化する、先端側係止面62とは逆テーパ面形状を呈する基端側係止面64とされている。
そして、図1及び図2に示されるように、内針10が、外針ハブ16の基端側開口部52を通じて、外針ハブ16の収容部54内に挿入され、更に、この収容部54内に連通する外針14に挿通されている。また、かかる内針10の基端部に固定された内針ハブ12も、外針ハブ16の収容部54内に、基端側開口部52を通じて突入し、配置されている。この外針ハブ16の収容部54内への内針ハブ12の突入は、内針ハブ12の先端部32の外周面に設けられた段差面34が、外針ハブ16の基端側開口部52の開口周縁部に当接することによって規制されて、内針ハブ12の先端側の突入部36のみが、収容部54内に突入配置されるようになっている。これによって、内針10が外針14に挿通された状態で、内針ハブ12と外針ハブ16とが、着脱可能な状態で、互いに組み付けられている。
そして、それら内針ハブ12と外針ハブ16とが互いに組み付けられた状態下において、内針10に装着された針先保護用プロテクタ18が、外針ハブ16の収容部54内に、基端側開口部52を通じて、挿入されて、収容されている。本実施形態の留置針では、この針先保護用プロテクタ18が、従来には見られない特別な構造を有している。
すなわち、図5に示されるように、針先保護用プロテクタ18は、上記した作用リング60と、この作用リング60が外挿されるプロテクタ本体66とを有している。より具体的には、プロテクタ本体66は、所定の形状に切り出された1枚の薄肉の金属プレートを、各種の部位において屈曲変形させてなる金属製の単一体にて、構成されている。なお、プロテクタ本体66を形成する金属材料としては、板材とされた形態において弾性を発揮するものが用いられる。例えば、ステンレス鋼や、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅系合金等の各種の金属材料が使用可能である。
そして、図6〜図11から明らかなように、金属製の単一体からなるプロテクタ本体66は、全体として、中心軸:P(図8に一点鎖線で示す)に沿って延びる角筒形状を呈し、第1及び第2の二つの横板部68,70と、第1、第2、第3、及び第4の四つの側板部72,74,76,78とを一体的に有している。
第1横板部68と第2横板部70は、図8〜図11に示されるように、互いに略同じ大きさの矩形平板形状を呈し、プロテクタ本体66の中心軸:P方向において互いに所定距離を隔てて対向して、中心軸:Pに交差するように配置されている。これら第1及び第2横板部68,70のそれぞれの中心部には、貫通孔80,82が形成されている。この第1横板部68に設けられた貫通孔80と第2横板部70に設けられた貫通孔82は、図8から明らかなように、何れも、内針10(図8に二点鎖線で示す)の外径よりも大径の円形状を有している。そして、第1横板部68の貫通孔80の径が、内針10に設けられた前記係合部22の外径よりも小さな寸法とされている一方、第2横板部70の貫通孔82の径が、かかる係合部22の外径よりも大きな寸法とされている。
これにより、内針10を第1及び第2横板部68,70の各管通孔80,82に挿通させることで、プロテクタ本体66が、内針10に対して、その針軸方向と中心軸:Pを一致させて、針軸方向に延びるように配置された状態で、針軸方向に移動可能に装着されるようになっている。そして、そのような内針10の針軸方向へのプロテクタ本体66の移動に際して、内針10の係合部22が、第2横板部70の貫通孔82を通過し得るものの、第1横板部68の貫通孔80を通過出来ないようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、第1横板部68と第2横板部70とにそれぞれ設けられた貫通孔80,82にて、挿通部が、各々構成されていると共に、第1横板部68と第2横板部70とにて、挿通部形成壁部が、それぞれ構成されている。
一方、図6〜図9から明らかなように、第1〜第4の四つの側板部72〜78は、何れも、長手矩形の平板形状を呈している。そして、プロテクタ本体66の中心軸:Pに対して、それと直角な方向に離間した位置において、かかる中心軸:Pを四方から取り囲んで、中心軸:Pに沿って延びるように配置されている。
そのような第1〜第4側板部72〜78のうち、第1側板部72と、それに対向位置する第2側板部74は、矩形状を呈する第1横板部68の四つの辺縁部のうち、貫通孔80を間に挟んだ両サイドに位置する二つの辺縁部から、第2横板部70が位置する側に向かって一体的に延び出している。換言すれば、第1側板部72及び第2側板部74と第1横板部68とにて、コ字状に屈曲変形されてなる金属プレートが構成され、このコ字状の金属プレートの互いに対向する二つのプレート部分によって、第1側板部72と第2側板部74とが形成される一方、それら第1側板部72と第2側板部74とを連結するプレート部分によって、第1横板部68が形成されている。
また、図8及び図9から明らかなように、第1側板部72と第2側板部74には、長さ方向の中間部に、各側板部72,74を、プロテクタ本体66の外側に向かって、比較的に緩やかな鈍角状に屈曲させる屈曲部83がそれぞれ設けられている。これにより、第1側板部72と第2側板部74の各屈曲部83よりも基端側の部分が、それぞれ、中心軸:P方向において、互いに平行に、つまり、互いの対向面間の距離を一定に保ちつつ真っ直ぐに延びる第1及び第2平行延出部84,85とされている。
この第1平行延出部84の幅方向の両側の辺縁部には、第2平行延出部85に向かって一体的に延出する第1ストッパ板部86と第2ストッパ板部87とが、互いに対向位置するように一体的に設けられている。それら第1ストッパ板部86と第2ストッパ板部87は、第1平行延出部84と第2平行延出部85に対して、それらをプロテクタ本体66の中心軸:P側に向かって押圧する作用力が外面に加えられたときに、第2平行延出部85の内面に当接又は接触して、各平行延出部84,85が中心軸:Pに接近する方向に撓み変形及び弾性変形することを阻止するストッパ機構として、形成されている。
一方、第1側板部72と第2側板部74の各屈曲部83よりも先端側の部分は、何れも、第2横板部70側に向かってプロテクタ本体66の中心軸:Pから徐々に離間するように、つまり互いの対向面間の距離が次第に大きくなるように、傾斜している。そして、そのような第1側板部72の屈曲部83よりも先端側の傾斜部分が、第1可撓片部88とされている一方、第2側板部74の屈曲部83よりも先端側の傾斜部分が、第2可撓片部89とされている。ここでは、前記のように、各平行延出部84,85の中心軸:P側への撓み変形及び弾性変形が阻止されるようになっているため、第1可撓片部88と第2可撓片部89とに対して、プロテクタ本体66の中心軸:P側に向かって押圧する作用力が加えられたときには、それら各可撓片部88,89が、屈曲部83を回動中心として、プロテクタ本体66の内側に向かって回動するように撓み変形及び弾性変形されるようになっている。つまり、第1及び第2可撓片部88,89は、その先端部を中心軸:Pに接近させる方向に撓み変形及び弾性変形され得るように構成されている。
図6及び図7に示されるように、第1側板部72と第2側板部74には、屈曲部83よりも基端側の各平行延出部84,85と屈曲部83よりも先端側の各可撓片部88,89とに跨って長さ方向に延び、且つ第1横板部68の側に向かって開口するコ字形状を呈するスロット90が、それぞれ形成されている。これによって、第1及び第2側板部72,74の各可撓片部88,89に対して、コ字状のスロット90にて囲まれた細長い矩形の平板部分からなる後退阻止爪部91が、各可撓片部88,89と同一方向に且つ同一角度で、プロテクタ本体66の外側に向かって傾斜して、各平行延出部84,85から一体的に延び出すように形成されている。つまり、第1可撓片部88と第2可撓片部89(第1側板部72と第2側板部74)とに対して、細長い矩形の板片形態を有する後退阻止爪部91が、切り起こしにより、それぞれ形成されているのである。そして、それによって、各後退阻止爪部91が、各可撓片部88,89とは独立して、中心軸:Pに接近する方向に撓み変形及び弾性変形可能とされている。
第1及び第2可撓片部88,89の先端には、保護部92,93が、それぞれ一体形成されている。図8に示されるように、それらの保護部92,93は、何れも、各可撓片部88,89の先端から、各可撓片部88,89と略同一の幅を有して一体的に延び出す長手矩形の平板が、その先端側部分において、プロテクタ本体66の内側に「くの字」状に折り返されてなる屈曲板状の全体形状を有している。即ち、各保護部92,93は、各可撓片部88,89の先端から、前記第1横板部68の配置側とは反対側に、各可撓片部88,89に対して鈍角の傾斜角度で、中心軸:Pに向かって傾斜して延びる第1保護板部94,101と、この第1保護板部94,101の先端から、前記第1横板部68の配置側に、第1保護板部94,101に対して鋭角な傾斜角度で、中心軸:Pに向かって傾斜して延びる第2保護板部95,103とを一体的に有している。
そして、そのような保護部92,93の第2保護板部95,103と第1保護板部94,101は、互いに同一の幅を有するものの、前者の延出長さが、後者の延出長さよりも十分に小さくされている。これによって、第1及び第2可撓片部88,89に設けられた各保護部92,93の第2保護板部95,103の先端が、プロテクタ本体66の中心軸:Pから、各可撓片部88,89の配置側に所定距離だけ隔てられた位置に配置されている。また、第1側板部72の第1可撓片部88に設けられた保護部92の第1保護板部94の延出長さが、第2側板部74の第2可撓片部89に設けられた保護部93の第1保護板部101の延出長さよりも、所定寸法だけ長くされている。
さらに、第1可撓片部88の保護部92の第1保護板部94には、その幅方向の両側の端縁部に、側方蓋板部98,98が、それぞれ一つずつ一体形成されている。この側方蓋板部98,98は、第1保護板部94の長さと略同一長さの二つの斜辺部を有し、且つそれら二つの斜辺部のなす角の大きさが、第1保護板部94に対する第2保護板部95の傾斜角度と同程度の大きさとされた略二等辺三角形状を有している。そして、そのような略二等辺三角形状の二つの側方蓋板部98,98が、第1可撓片部88の保護部92を間に挟んで、その幅方向両側において互いに対向し、且つ一つの斜辺部を、保護部92の第1保護板部94の側面に対応位置させた状態で、第1保護板部94の幅方向両側の端縁部から垂下するようにして、一体形成されているのである。これによって、第1可撓片部88の屈曲板形状を有する保護部92の幅方向両側に向かって開口する側方開口部が、二つの側方蓋板部98,98にて、それぞれ覆蓋されている。
それ故、第1側板部72の第1可撓片部88と第2側板部74の第2可撓片部89とが、それぞれの先端部をプロテクタ本体66の中心軸:Pに接近させる方向、つまりプロテクタ本体66の内側に、同時に撓み変形及び弾性変形した際には、図8に二点鎖線で示されるように、各可撓片部88,89の先端部にそれぞれ設けられた保護部92,93が、互いに接近し、やがて、第2可撓片部89の保護部93の第2保護板部103の先端が、第1可撓片部88の保護部92の第1保護板部94に接触するか、または接触直前の位置に配置される。このとき、プロテクタ本体66の第2横板部70よりも先端側に、第2横板部70と、第1可撓片部88の保護部92と第2可撓片部89の保護部93と、第1可撓片部88の保護部92に設けられた二つの側方蓋板部98,98とにて周囲が取り囲まれてなる略三角柱状の先端側閉鎖空間96が形成される。また、プロテクタ本体66の第2横板部70よりも基端側には、第1及び第2横板部68,70と第1〜第4側板部72〜78とにて周囲が取り囲まれてなる略長手矩形状の基端側閉鎖空間97が形成されるようになっている。
図8及び図9に示されるように、第3側板部76と第4側板部78は、第1及び第2側板部72,74とは異なって、それらをプロテクタ本体66の外側に屈曲させるような屈曲部を何等有することなく、プロテクタ本体66の中心軸:Pに平行に、第1及び第2側板部72,74の各平行延出部84,85の配置側から各可撓片部88,89側に向かって真っ直ぐに延出している。そして、それら第3側板部76と第4側板部78は、第1側板部72と第2側板部74の互いの対向方向とは直角な方向において、第1及び第2側板部72,74のそれぞれの幅と略同一の距離を隔て、且つ第1及び第2ストッパ板部86,87の外側に、それらを間にして、相互に対向配置されている。また、そのような配置状態下で、それぞれの基端側部分において、第2側板部74の第2平行延出部85の幅方向両側の端縁部に対して、一体的に連結されている。
そして、そのような第4側板部78の先端に、第2横板部70が、一体形成されている。この第2横板部70は、プロテクタ本体66の中心軸:Pに対して直角な方向に広がって、第3側板部76と第4側板部78との間に架け渡されるように配置されている。換言すれば、第4側板部78の長さが、第3側板部76よりも所定寸法長くされており、かかる第4側板部78が第3側板部76と同一の長さとなるように、第4側板部78の先端側部分が、プロテクタ本体66の内側に略直角に屈曲されている。そうして、第4側板部78の屈曲させられた部分にて、矩形平板状の第2横板部70が形成されている。
図10及び図11に示されるように、かかる矩形平板状を呈する第2横板部70の四隅には、係合突起99が、それぞれ一つずつ一体形成されている。この係合突起99は、第3側板部76と第4側板部78の互いの対向方向の両側に位置する第2横板部70の二つの辺縁部(側面)の両側端部から、互いに同一の長さで一体的に突出した板状の小片形態を有している。つまり、それら各係合突起99は、第4側板部78に一体形成された第2横板部70に対して一体的に設けられて、第3側板部76と第4側板部78のそれぞれの対向側とは反対側の外面から、プロテクタ本体66の外側に向かって、中心軸:Pに対して直角な方向に突出している。
一方、プロテクタ本体66に外挿される作用リング60は、図12及び図13に示されるように、全体として、略矩形の厚肉平板状の四つの側壁部100a,100b,100c,100dが矩形状に組み合わされて、矩形の内孔が形成されてなる枠状形態を有している。そして、この作用リング60の四つの側壁部100a〜100dのうち、互いに対向する一組の側壁部100a,100bの平面状の内面同士の間の距離が、第1及び第2側板部72,74の幅よりも僅かに大きな寸法とされている一方、それらの側壁部100a,100bと隣り合って、互いに対向する別の一組の側壁部100c,100dの平面状の内面同士の間の距離が、第3及び第4側板部76,78の幅よりも僅かに大きな寸法とされている。
そのような作用リング60の四つの側壁部100a〜100dのそれぞれの両側の端面には、それらの中央部に、断面矩形状の凹溝102が、各側壁部100a〜100dの長さ方向(図12中左右方向や上下方向)に延びるように形成されている。換言すれば、作用リング60の両側の端面に対して、それぞれ、四つの凹溝102,102,102,102が、互いに周方向に間隔を隔てて、周方向に延びるように設けられているのである。なお、各凹溝102は、前記後退阻止爪部91の先端部分が突入可能な幅と長さとを有している。
そして、それら各凹溝102の四つの側面のうち、各側壁部100a〜100dの内面側に位置する側面が、第1係合面104とされており、また、この第1係合面104と対向する側面が、第2係合面106とされている。即ち、作用リング60には、その両側の端面に対して、第1係合面104と第2係合面106とが、各端面に設けられた四つの凹溝102,102,102,102に対応して、それぞれ四つずつ、互いに周方向に間隔を隔てて、周方向に延びるように設けられているのである。
なお、このような作用リング60の材質も、特に限定されるものではなく、後述するように、プロテクタ本体66に外挿されて、その先端側に移動させられたときに、二つの可撓片部88,89や後退阻止爪部91,91とを、それらの付勢力に抗して、撓み変形及び弾性変形させ得るものであれば、如何なる材質であっても良い。その点からして、作用リング60の形成材料としては、例えば、樹脂材料や金属材料、セラミックス材料、或いはゴムやエラストマ等の弾性材料が、適宜に用いられる。なお、そのような樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂の他、アクリル系樹脂、アイオノマー、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の各種樹脂材料が、例示され得る。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅系合金等が挙げられる。弾性材料としては、天然ゴムや、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、熱可塑性エラストマ等が、例示され得る。
このような作用リング60が、図5に示されるように、第1及び第2側板部72,74の第1及び第2平行延出部84,85と、それに隣り合う第3及び第4側板部76,78部分とからなるプロテクタ本体66の基端側部分に外挿されて、組み付けられている。これにより、針先保護用プロテクタ18が、それらプロテクタ本体66と作用リング60との組付品として、構成されている。
そして、図1及び図2に示されるように、内針ハブ12の先端側底壁部32から延び出す内針10の基端側部位が、プロテクタ本体66の第1及び第2横板部68,70に設けられた貫通孔80,82にそれぞれ挿通されることにより、針先保護用プロテクタ18が、内針10に対して、その針軸方向(プロテクタ本体66の中心軸:Pと一致)に移動可能に装着されている。また、そのような装着状態下で、内針10が外針14に挿通されると共に、内針ハブ14が、外針ハブ16の収容部54内に突入されて、外針ハブ16に組み付けられることによって、針先保護用プロテクタ18が、外針ハブ16の収容部54内に収容されている。そうして、本実施形態の留置針組立体が構成されて、例えば、患者等の血管に外針14を穿刺して、留置する手技の使用に供されるのである。
なお、本実施形態の留置針組立体の使用前の状態では、プロテクタ本体66の基端部に外挿された作用リング60の外周部が、外針ハブ16の係止溝58内に突入して、作用リング60の各角部の両側端面が、係止溝58の先端側係止面62と基端側係止面64とにそれぞれ係止されている。これによって、収容部54内での作用リング60の軸方向(先端側方向と基端側方向)への容易な移動が規制されるようになっている。このことから明らかなように、ここでは、係止溝58にて、係止手段が構成されている。
次に、上記のような構造とされた留置針組立体の使用方法について詳述する。
先ず、図1に示されるように、内針ハブ12と外針ハブ16とを組み付けて、外針14内に内針10を挿通させた状態下で、内針10と外針14とを患者等の血管に穿刺する。
その後、内針ハブ12を外針ハブ16の収容部54内から引き抜いて後退移動させることにより、内針10を外針14から抜去する。これによって、外針14だけを患者等の血管に穿刺させたままで留置する。このとき、内針10に装着されて、外針ハブ16の収容部54内に収容された針先保護用プロテクタ18は、作用リング60の外周部が収容部54の係止溝58に係止しているため、移動が阻止されている。それ故、内針10は、プロテクタ本体66の二つの貫通孔80,82の内周面を摺動しつつ、針先保護用プロテクタ18に対して相対的に、施術者の側に向かって後退移動する。
そして、図14の(a)に示されるように、内針10の後退移動によって、内針10の針先20側に設けられた係合部22が、プロテクタ本体66の第2横板部70の大径の貫通孔82を通過して、第1横板部68の配置位置に到達すると、かかる係合部22が、第1横板部68の小径の貫通孔80を通過することなく、その開口周縁部に係合する。このとき、針先20が、第1及び第2可撓片部88,89の先端にそれぞれ設けられた二つの保護部92,93の間に位置すると共に、内針10の針先20よりも基端側の先端部が、プロテクタ本体66の第1横板部68と第2横板部70との対向面間に位置する。
そして、その状態から、内針10を更に後退移動させると、図14の(b)に示されるように、内針10の係合部22に係合したプロテクタ本体66が、内針10と共に、外針ハブ16の基端側開口部52に向かって後退移動する。
このとき、プロテクタ本体66に外挿される作用リング60は、係止溝58への係止により、未だ移動することなく、各角部が係止溝58内に係止した位置に維持される。そのため、プロテクタ本体66が作用リング60に対して相対移動し、それによって、作用リング60が、プロテクタ本体66の第1〜第4側板部72〜78の外面に摺動しつつ、プロテクタ本体66の先端側に移動する。そして、その際に、作用リング60が、第1及び第2側壁部100a,100bの平坦な内面にて、プロテクタ本体66の第1側板部72の第1可撓片部88及び後退阻止爪部91と第2側板部74の第2可撓片部89及び後退阻止爪部91とを、それぞれ、内針10に接近させる方向に押圧して、それと同一方向に撓み変形及び弾性変形させる。
その結果、前述したように、プロテクタ本体66の先端側と基端側とに、先端側閉鎖空間96と基端側閉鎖空間97とが形成される。そうして、針先20が、先端側閉鎖空間96内に収容位置されると共に、内針10の針先20よりも基端側の先端部が、基端側閉鎖空間97内に収容位置される。これによって、内針10の針先20を含む先端部の全体が、プロテクタ本体66にて覆われて、保護されるようになる。このことから明らかなように、本実施形態では、第1可撓片部88と第2可撓片部89の互いに接近する方向への撓み変形及び弾性変形により、それぞれの保護部92,93同士が相互に接触または略接触させられる位置が、各保護部92,93の保護位置とされている。なお、前記のように、第3側板部76と第4側板部78は、プロテクタ本体66の中心軸:P方向に平行に真っ直ぐに延び出しているため、作用リング60のプロテクタ本体66に対する相対的な前進移動時に、作用リング60の第3及び第4側壁部100c,100dの平坦な内面にて、プロテクタ本体66の内側に押圧されることがなく、従って、何等、撓み変形も弾性変形もさせられることがない。
そして、そのように、各保護部92,93が内針10の針先20を覆って保護する保護位置に達するまで、作用リング60がプロテクタ本体66の先端側に移動したときに、或いはかかる移動位置から、作用リング60が、更にプロテクタ本体66の先端側に移動すると、図15に示されるように、プロテクタ本体66の先端側に位置する作用リング60の前進側の端面(前端面)が、プロテクタ本体66の第2横板部70に一体形成された四つの係合突起99,99,99,99に係合する。これによって、作用リング60の更なる前進移動が阻止されて、プロテクタ本体66の先端側からの作用リング60の抜け出しが防止され得るようになる。
また、このとき、図14の(b)や図16に示されるように、作用リング60が、第1及び第2可撓片部88,89の各後退阻止爪部91,91を乗り越えた位置に達する。そうすると、第1及び第2可撓片部88,89の変形状態が維持された状態で、各後退阻止爪部91のみが弾性変形状態から復元して、第1可撓片部88と第2可撓片部89とにそれぞれ設けられた各後退阻止爪部91の先端部が、作用リング60の第1側壁部100aと第2側壁部100bの各後端面に設けられた凹溝102内に、それぞれ突入又は嵌入する。
これによって、各後退阻止爪部91の先端部が、凹溝102の二つの内面からなる第1係合面104と第2係合面106とに係合する。この各後退阻止爪部91の先端部の第1係合面104への係合によって、各後退阻止爪部91が、作用リング60との接触状態から、内針10への接近方向に無用に弾性変形することが規制される。また、各後退阻止爪部91の先端部の第2係合面106への係合によって、各後退阻止爪部91が、作用リング60との接触状態から、内針10に対して離隔する方向に無用に弾性変形することが規制されるようになる。その結果、各後退阻止爪部91の作用リング60との接触状態が容易に解消されることが防止されて、各後退阻止爪部91が凹溝102に突入した位置からの作用リング60の後退移動が阻止される。
また、各可撓片部88,89に対して、それらをプロテクタ本体66の内側に押圧する予期せぬ外力が加えられて、各可撓片部88,89が、内針10に接近する方向に更に撓み変形及び弾性変形したときにも、後退阻止爪部91の作用リング60に対する係合が解消されることが防止される。更に、各後退阻止爪部91に対して、それらをプロテクタ本体66の内側に押圧したり、外側に拡げるような予期せぬ外力が加えられても、各後退阻止爪部91が、内針10に接近する方向や離間する方向に容易に撓み変形及び弾性変形して、後退阻止爪部91の作用リング60に対する係合が解消されることも防止される。
そして、作用リング60のプロテクタ本体66に対する前進方向と後退方向の両方向への相対移動が阻止された状態から、図14の(c)に示されるように、内針10とプロテクタ本体66とを、共に更に後退移動させる。そうすると、作用リング60が、プロテクタ本体66の各係合突起99にて、プロテクタ本体66の後退移動方向に押圧されて、外針ハブ16の内周面に設けられた係止溝58の基端側係止面64に対して、作用リング60の外周部が摺動し、かかる係止溝58に対する係止状態が解消される。それによって、作用リング60が、内針10とプロテクタ本体66と共に、一体的に後退移動させられる。このとき、作用リング60は、プロテクタ本体66の各係合突起99と各後退阻止爪部91とに対して係合したままであるため、作用リング60によって各可撓片部88,89を撓み変形及び弾性変形させた状態、つまり各保護部92,93にて内針10の針先20を保護した状態が、維持される。このことから明らかなように、本実施形態では、係合突起99にて、係止解除手段が構成されている。
そして、内針10の更なる後退移動により、内針10の針先20をプロテクタ本体66の各保護部92,93にて保護したままで、内針10の全体を針先保護用プロテクタ18と共に、外針ハブ16の収容部54から離脱させるのである。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の留置針組立体では、針先保護用プロテクタ18が装着された内針10を外針14から抜去する際に、内針10は、針先保護用プロテクタ18のプロテクタ本体66に設けられた二つの貫通孔80,82の内周面に摺動するものの、弾性変形状態とされた部分が、内針10の外周面に対して付勢力をもって接触することがない。それ故、プロテクタ本体66に対して、内針10を相対的に後退移動させるときに、内針10の内周面とプロテクタ本体66との間で、付勢力に基づく大きな摺動抵抗が生ずることもない。
従って、このような本実施形態の留置針組立体を使用すれば、内針10の針先20の保護が、針先保護用プロテクタ18にて、より小さな力で、患者からの内針10の抜去後に、直ちに且つ確実に実施され得る。そして、それに加えて、針先保護用プロテクタ18による内針10の針先20の保護状態が、更に一層安定的に維持され得る。その結果として、患者への外針14の留置操作が、極めて安全に、しかもスムーズに実施され得るのである。
各可撓片88,89が、撓み変形に加えて弾性変形可能とされている。そのため、各可撓片部88,89の無用な撓み変形が、弾性に基づいて発揮される付勢力によって防止される。それ故、患者からの内針10の抜去時に、各可撓片部88,89の無用な撓み変形によって、二つの保護部92,93が、内針10の外周面に接触して、内針10の内周面とプロテクタ本体66との間で余分な摺動抵抗が生ずることが、効果的に防止され得る。
プロテクタ本体66の基端側と先端側とに所定距離を隔てて配置された第1横板部68と第2横板部70に対して、それぞれ同軸的に位置するように設けられた二つの貫通孔80,82に対して、内針10が挿通されることにより、針先保護用プロテクタ18が、内針10に対して摺動可能に装着されている。それ故、例えば、内針10が一つの貫通孔だけに挿通される場合に比して、内針10のプロテクタ本体66に対する相対移動時に、内針10のこじり方向等へのガタツキが有利に抑制されて、内針10のスムーズな移動が確保され得る。
プロテクタ本体66の基端側に位置する第1横板部68の貫通孔80を間に挟んで両側に位置する辺縁部から先端側に向かって延びる第1側板部72と第2側板部74とに対して、先端部に保護部92,93をそれぞれ有する第1可撓片部88と第2可撓片部89が、各々設けられている。これによって、プロテクタ本体66に対する作用リング60の前進移動に伴う二つの可撓片部88,89の撓み変形及び弾性変形によって、内針10の針先20が、二つの保護部92,93にて両側から挟まれるように覆われる。その結果、内針10の針先20の保護が、より確実に実施され得る。
各保護部92,93が、第1保護板部94,101と第2保護板部95,103とを一体的に有して、「くの字」状に折り返された屈曲形状を呈している。それによって、内針10の針先20が、各保護部92,93にて保護された状態で、第1保護板部94,101側や第2保護板部95,103側に変位しても、それら各保護板部94,95,101,103に接触、係合するため、各保護部92,93にて形成された、内針10の針先20を収容する先端側閉鎖空間96からの離脱が有利に防止され得る。
第1可撓片部88に一体形成された保護部92に対して、その幅方向の両側開口部をそれぞれ閉塞する二つの側方蓋板部98,98が設けられている。これによって、内針10の針先20が、その周囲の全てを取り囲まれた状態で、先端側閉塞空間96内に収容されるようになり、以て、内針10の針先20の保護が、より確実に実施され得る。
作用リング60に設けられた第1係合面104と第2係合面106に対する後退阻止爪部91の係合により、保護部92,93にて内針10の針先20が保護された状態でのプロテクタ本体66に対する作用リング60配置位置が保持されるようになっている。これによっても、内針10の針先20が、更に確実に保護され得る。
後退阻止爪部91が係合する第1係合面104と第2係合面106とが、作用リング60の端面に設けられた凹溝102の互いに対向する二つの側面にて構成されている。このため、単に、作用リング60に対する凹溝102の形成によって、第1係合面104と第2係合面106とが、一挙に且つ容易に設けることが出来る。これは、作用リング60、ひいては針先保護用プロテクタ18の構造の簡略化及び製作性の向上に少なからず貢献する。
第1係合面104と第2係合面106とを有する凹溝102が、作用リング60の四つの側壁部100a〜100dのそれぞれのものの両側端面に各々設けられている。このため、作用リング60を、決められた方向や向きでプロテクタ本体66に外挿する必要がなく、作用リング60のプロテクタ本体66に対する組付性の向上が、有利に図られ得る。
後退阻止爪部91が、プロテクタ本体66の二つの貫通孔80,82を挿通される内針10を間に挟んだ両側に、それぞれ一つずつ配置されていると共に、作用リング60に対して、第1及び第2係合面104,106を有する凹溝102が、各後退阻止爪部91に対応して設けられている。これによって、後退阻止爪部91が、第1及び第2係合面104,106に対して、より確実に係合され得る。その結果、作用リング60のプロテクタ本体60に対する所定位置での移動阻止効果が、より確実に発揮され得る。
後退阻止爪部91が、プロテクタ本体66に外挿された作用リング60によって撓み変形及び弾性変形させられる第1及び第2可撓片88,89に、それぞれ設けられている。このため、例えば、各可撓片部88,89とは別に、プロテクタ本体66に対して、作用リング60にて撓み変形及び弾性変形させられる部分を設けて、かかる部分にて後退阻止爪部91を形成する場合に比して、後退阻止爪部91の形成が容易となる。しかも、後退阻止爪部91が、各可撓片部88,89に対して切り起こしによって一体形成されている。これによって、各可撓片部88,89に対する後退阻止爪部91の形成が、更に容易となる。
プロテクタ本体66が、所定形状を呈する一つの金属プレートを部分的に屈曲変形させてなる単一体にて構成されている。このため、例えば、様々な部品を組み付けたり、固着したりして、プロテクタ本体66を形成する場合に比して、プロテクタ本体66、ひいては針先保護用プロテクタ18全体の製作性が、効果的に高められ得る。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態に関する具体的な記載によって、何等限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態では、プロテクタ本体66が、弾性変形可能な1枚の金属プレートを用いて形成されていたが、プロテクタ本体66のうち、各可撓片部88,89は、可撓性を有しておれば、必ずしも弾性を有している必要はない。一方、後退阻止爪部91は、弾性を有していなければならない。それ故、プロテクタ本体66は、各種の部位において必要とされる特性を備えておれば、金属材料以外の材料によっても形成され得る。例えば、プロテクタ本体66の全体を、樹脂材料を用いて形成したり、或いは、各種の部位において必要とされる特性を備えた材料を種々組み合わせて、構成することも出来る。即ち、プロテクタ本体66を、互いに異なる材料からなる幾つかの部品、例えば、金属製部品や樹脂製部品、或いは金属製や樹脂製とは異なる材料からなる部品を、互いに組み付けたり、固着したりして、形成しても良いのである。
また、プロテクタ本体66の全体或いは一部の形成材料として、樹脂材料を用いる場合には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂の他、アクリル系樹脂、アイオノマー、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の各種樹脂材料が、それぞれ単独で、或いはそれらのうちの2種類以上が組み合わされて、形成材料として用いられる。勿論、これらの樹脂材料が用いられてなるプロテクタ本体68についても、可撓片が可撓性を有し、且つ後退阻止爪部が弾性を有するものである必要がある。
前記実施形態では、プロテクタ本体66の中心軸:P方向に互いに所定距離を隔てて対向配置された第1横板部68と第2横板部70とにそれぞれ設けられた貫通孔80,82にて、針が挿通される挿通部が構成されていたが、例えば、それら第1及び第2横板部68,70に、貫通孔80,82に代えて、内針10が挿通可能なスリットや溝部を設けて、それらスリットや溝部にて、挿通部を構成しても良い。また、針先20側に位置する第2横板部70を省略することも出来る。
前記実施形態では、後退阻止爪部91が、第1及び第2可撓片部88,89がそれぞれ設けられた第1及び第2側板部72,74に形成されていたが、それらの可撓片部88,89が設けられていない第3及び第4側板部76,78に設けることも出来る。この場合には、例えば、第3及び第4側板部76,78のそれぞれに対して、それらの基端側に向かって開口するコ字状を呈するスロットを設けた上で、このスロットにて囲まれた部分がプロテクタ本体66の外側に向かって傾斜するように、かかる部分の基部を屈曲させた切り起こしによって、後退阻止爪部91を設けることも出来る。なお、スロットの形成方法は、何等限定されるものではなく、例えば、プレス加工の打ち抜きによって、容易に形成され得る。
第1〜第4側板部72〜78に対して、スロットの代わりに単なるコ字状の切込みを形成し、この切込みを形成しただけで、或いは切込みにて囲まれた部分を、プロテクタ本体66の外側に向かって屈曲させた切り起こしによって、後退阻止爪部91を形成することも可能である。
後退阻止爪部91の形成のために、第1〜第4側板部72〜78に設けられるスロットや切込みは、例示のコ字状に何等限定されるものではなく、例えば、V字状や山形状、U字状等の形状であっても良い。
第1〜第4側板部72〜78や、それら以外の第1横板部68等のプロテクタ本体66の所定部位等に、例えば、長手の小片部材を後退阻止爪部として、一体的に固設すること等により、後退阻止爪部を切り起こし以外の構造で設けることも出来る。
作用リング60に設けられる第1係合面104や第2係合面106は、作用リング60の後端面に接触した後退阻止爪部91に係合して、針10に接近する方向への後退阻止爪部91の弾性変形を規制するものであれば、その形成位置や形成個数、形態等が、特に限定されるものではない。
従って、例えば、作用リングの後端面に、全周に亘って連続して延びる凹溝を設けて、この凹溝の二つの側面にて、第1係合面と第2係合面とを形成することも出来る。また、作用リングの後端面における後退阻止爪部の接触部に、後退阻止爪部の個数に応じた数だけ、穴部等の凹所や凹溝を設けて、それらの凹所や凹溝の内面のうち、作用リングの内周面側と外周面側にそれぞれ位置する二つの内面部分にて、第1係合面と第2係合面とを形成することも出来る。更に、作用リングの後端面に、上記の凹所や凹溝に代えて、或いはそれらに加えて、突起や周方向に延びる突条を設けて、それらの突起や突条の側面のうち、作用リングの内周面側と外周面側にそれぞれ位置する二つの側面部分にて、第1係合面と第2係合面とを形成することも出来る。また、作用リングの後端面に、第1係合面のみを形成する場合には、作用リングの軸方向において、作用リングの外周側部分を内周側部分よりも一段高くする段差面を、周方向に延びるように形成し、この段差面にて、第1係合面を構成することも可能である。
作用リングの形状は、例示された矩形の枠形状に限定されるものではなく、外挿されるプロテクタ本体に外挿可能であれば、如何なる形状であっても良い。その点からして、例えば、円筒又は円環形状(図17参照)や、そのような円筒又は円環形状の周状の一部が除去されてなるC字形状(図19参照)、或いは矩形以外の多角形の枠形状、更にはそのような矩形や多角形の枠形状の周状の一部が除去されてなる形状等、様々な形状が採用可能である。
可撓片部88,89や後退阻止爪部91の数は、必ずしも2個であるわけではなく、それら可撓片部88,89や後退阻止爪部91の数は、例えば、図17〜図20に示されるように、それぞれ1個であっても良い。また、3個以上であっても良い。可撓片部が複数個設けられる場合には、それら複数の可撓片部のうちの少なくとも一つの先端部に、保護部が設けられておれば良い。また、後退阻止爪部に係合する第1係合面や第2係合面は、後退阻止爪部の個数に応じて、形成個数が適宜に決定される。なお、図17〜図20に示される二つの実施形態に関しては、前記第1の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1〜図16と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略した。
プロテクタ本体66の全体形状も、例示の角筒形状に何等限定されるものでない。
すなわち、図17及び図18に示されるように、第3側板部76と第4側板部78とを省略しても良い。また、係止解除手段としての係合突起99を、第1及び第2可撓片部88,89における後退阻止爪部91の形成部位よりも先端側に、切り起こしによって形成することも出来る。
図19及び図20に示されるように、第1側板部72と第2側板部74における後退阻止爪部91の形成部位よりも先端側部位の幅方向両側の端縁部に、コ字状の切欠部108を設け、それら各側板部72,74におけるコ字状切欠部108の先端側の側面を含む部分にて、係合解除手段としての係合突起99を形成することも可能である。この場合には、作用リング60が、周上の一部を除去してなる形状の弾性部材にて構成される。そして、作用リング60の一部が除去された部分の端面110,110同士の間の距離が大きくなるように、作用リング60が拡開されて、弾性変形した状態で、プロテクタ本体66に外挿される。これによって、作用リング60が、第1及び第2側板部72,74のコ字状切欠部108の形成部位に配置されたときに、弾性変形状態から復元し、コ字状切欠部108に嵌め込まれる。そうして、作用リング60が、係合突起99に係合するようになる。
加えて、前記実施形態では、本発明に従う針先保護用プロテクタを、留置針組立体の内針に装着されるものに適用した具体例を示したが、本発明に従う針先保護用プロテクタは、シリンジの先端に装着された注射針や、輸液用又は採血用の容器に接続されたチューブの先端に装着された針等、外針が何等外挿されることのない各種の針に装着されるものに対して、何れも、有利に適用され得ることは勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。