JP2010087199A - 有機半導体素子、および有機半導体素子の製造方法 - Google Patents

有機半導体素子、および有機半導体素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い電流密度を実現することで高周波数領域においても動作し、かつ簡易な方法によって製造することが可能な有機半導体素子、およびその製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】液晶性有機半導体材料からなる有機半導体層と、前記有機半導体層の一方の面上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極と、前記有機半導体層の他方の面上に形成され、前記第1導電性材料とは、仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有し、10MHz以上の交流で動作する有機半導体素子であって、前記液晶性有機半導体材料が、規則的に配向された状態で前記有機半導体層中に存在しており、かつ前記第1電極および前記第2電極が、前記有機半導体層に直接接着されていることを特徴とする有機半導体素子を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機ダイオード等に代表される、有機半導体層が2つの電極によって挟持された構成を有し、10MHz以上の交流で動作する有機半導体素子、およびその製造方法に関するものである。
有機半導体材料は、軽量でフレキシブルなエレクトロニクスデバイスを安価に作製できる可能性を有しており、フレキシブルディスプレイやRFID(Radio Frequency Identification)等の論理回路への応用が期待されている。そのため、これら電気回路の作製の鍵となる有機トランジスタ(OFET)の研究が盛んに行われている。
RFIDを作成する場合、OFETに加えて、交流を直流に変換するためのダイオードが必要であり、このダイオードも有機半導体を用いて作製する検討が行われている(例えば、非特許文献1、特許文献1)
このようなRFIDに用いる有機ダイオードは、例えば、13.56MHz程度の高周波数領域で作動させることが必要になる。ここで、一般に有機ダイオードは、半導体薄膜を2つの電極で挟持した構成を有するものであるため、必然的に大きな寄生容量を有している。このため、印加する周波数が高いと、変位電流が増加し、これによって有機ダイオードによる整流比が低下する。従って、上記RFIDのように高周波数領域で動作させる有機ダイオードは変位電流より十分に大きな導電性を有する必要があり、高移動度の有機半導体材料を用いる必要がある。
しかしながら、従来の有機半導体は移動度が必ずしも十分ではなく、上述したRFID等、高周波数領域における使用に適う有機ダイオードを得ることは困難であった。
また、有機半導体材料を用いて有機半導体層を形成する方法としては、有機半導体材料を含有する塗布液を塗布する方法や、真空蒸着法によって製膜する方法等が知られているが、上記塗布法によって形成される有機半導体層は、移動度が低くなる傾向があることから、移動度の高い有機半導体層を必要とするデバイスにおいては、もっぱら真空蒸着法が用いられる傾向があった。しかしながら、真空蒸着法は実施に際して大型の設備を要する等の欠点があることから、上記RFIDの汎用性を有するデバイスを製造する方法としては不向きであるという問題点があった。
このようなことから、従来は上記RFID等に使用可能な性能を有し、かつ生産性に優れた有機ダイオードを得ることは困難であった。
特表2004−50873号公報 S.Steudel.et.al.Nature Materials,4,597,(2005)
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、RFID等に用いられる有機ダイオードとして好適な高周波数の交流で動作する有機半導体素子であって、かつ簡易な方法によって製造することが可能な有機半導体素子、およびその製造方法を提供することを主目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、有機半導体層に用いられる有機半導体材料として液晶相を有する有機半導体材料(以下、「液晶性有機半導体」)を用い、これを液晶相温度以上に加熱することによって、有機半導体層において当該液晶性有機半導体材料を規則的に配向させることができる結果、移動度の高い有機半導体層が得られ、さらに有機半導体層を介して電極を直接接着することができることを発見したことを契機として、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、液晶性有機半導体材料からなる有機半導体層と、上記有機半導体層の一方の面上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極と、上記有機半導体層の他方の面上に形成され、上記第1導電性材料とは、仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極とを有し、10MHz以上の交流で動作する有機半導体素子であって、上記液晶性有機半導体材料が規則的に配向された状態で上記有機半導体層中に存在しており、かつ上記第1電極および上記第2電極が、上記有機半導体層に直接接着されていることを特徴とする有機半導体素子を提供する。
本発明によれば、上記有機半導体層を構成する材料として、液晶性を示す液晶性有機半導体層が用いられ、かつ当該液晶性有機半導体材料が規則的に配向していることにより、移動度が顕著に優れる有機半導体層を得ることができる。このため、本発明によれば、たとえば、高周波数の交流を印加して動作させることで、変位電流が発生した場合であっても、それよりも高い電流密度を実現することができる。したがって、本発明によれば高周波数領域においても安定して動作させることができる有機半導体素子を得ることができる。
また、本発明の有機半導体素子は、上記第1電極および第2電極が上記有機半導体層に直接接着された構成を有するものである。このため、本発明の有機半導体素子を製造する工程においては、有機半導体層をいわゆる接着層として用い、上記第1電極および第2電極を有機半導体層のみによって接着することができる。このため、本発明によれば、別途接着層等を形成する必要がなく、簡易な製造することが可能な有機半導体素子を得ることができる。さらに、電気特性を悪化させる原因となる接着剤を用いずに電極との密着性が良く、性能に優れた有機半導体素子を得ることができる。
このようなことから、本発明よれば、高周波数領域においても高い電流密度を実現することができ、かつ簡易な方法によって製造することが可能な有機半導体素子を得ることができる。
本発明の有機半導体素子は上記有機半導体層において、上記液晶性有機半導体材料が、上記有機半導体層の厚み方向への通電を促すように配向していることが好ましい。本発明の有機半導体素子のように有機半導体層が2つの電極によって挟持された構成を有する有機半導体素子においては、電圧を印加すると有機半導体層の厚み方向に電流が流れることになる。このため、この電流が流れる方向の通電を促すように液晶性有機半導体材料が配向していることによって、本発明における有機半導体層の実質的な移動度をさらに向上させることができ、その結果として高周波数領域においてさらに十分な電流密度を実現することが可能になるからである。
また本発明においては、上記第1電極および上記第2電極が、それぞれ第1基板および第2基板上に形成されていることが好ましい。これにより、本発明の有機半導体素子を製造する際に、ハンドリング上の便宜を図れるからである。また、有機半導体層が空気や紫外線に暴露されることによって経時劣化することを防止できるため、本発明の有機半導体素子の耐久性を向上させることができるからである。
上記課題を解決するために本発明は、第1基板と、上記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極とを有する第1電極積層体を用い、上記第1電極積層体の上記第1電極上に液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、第2基板と、上記第2基板上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、上記第2電極積層体を、上記有機半導体層と上記第2電極とが接するように配置し、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層に上記第1電極積層体および上記第2電極積層体を接着させる、接着工程と、を有することを特徴とする、有機半導体素子の製造方法を提供する。
また本発明は、第1基板と、上記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極とを有する第1電極積層体、および第2基板と、上記第2基板上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、上記第1電極積層体の第1電極上、および上記第2電極積層体の第2電極上に液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、上記第1電極上に形成された有機半導体層と、上記第2電極上に形成された有機半導体層とが接するように、上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを配置し、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層によって上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを接着させる接着工程と、を有することを特徴とする、有機半導体素子の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記有機半導体層形成工程において有機半導体層を形成する材料として液晶性有機半導体材料を用い、かつ上記接着工程において上記液晶性有機半導体材料の液晶相転移温度以上に有機半導体層を加熱することにより、本発明によって製造される有機半導体素子においては、有機半導体層において液晶性有機半導体材料が規則的に配向されたものになる。このため、本発明によれば移動度が高い有機半導体層を備え、高周波数領域においても十分な電流密度を実現することができる有機半導体素子を製造することができる。
また、本発明においては上記接着工程において、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することにより、接着層等の特別な構成を用いることなく、有機半導体層と上記第1電極積層体および上記第2電極積層体とを接着することが可能になる。したがって、本発明によれば簡易な工程により、高周波数領域においても十分な電流密度を実現できるという優れた性能を有する有機半導体素子を製造することができる。
本発明の有機半導体素子の製造方法においては、上記接着工程における上記有機半導体層の加熱温度が、上記液晶性有機半導体材料の液晶相−等方相転移温度以上であってもよい。また、上記第1基板および第2基板が、可撓性を有する基板であってもよい。これにより、上記接着工程において上記有機半導体層と、上記第1電極積層体および第2電極積層体とをより強固に接着することが可能になる場合があるからである。
また、本発明の有機半導体素子の製造方法においては、上記有機半導体層形成工程が、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を塗布することによって、有機半導体層を形成するものであることが好ましい。これにより、本発明によって製造される有機半導体素子を、より移動度の高い有機半導体層を備えるものにできるからである。また、上記有機半導体層形成工程を簡略化することができ、本発明の有機半導体素子の製造方法を、より製造効率が高いものとすることができるからである。
本発明の有機半導体素子は、高周波数領域においても高い電流密度を実現することができ、かつ簡易な方法によって製造することができるという効果を奏する。
以下、本発明の有機半導体素子、および有機半導体層について順に説明する。
A.有機半導体素子
まず、本発明の有機半導体素子について説明する。上述したように本発明の有機半導体素子は、液晶性有機半導体材料からなる有機半導体層と、上記有機半導体層の一方の面上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極と、上記有機半導体層の他方の面上に形成され、上記第1導電性材料とは、仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極とを有し、10MHz以上の交流で動作するものであって、上記液晶性有機半導体材料が規則的に配向された状態で上記有機半導体層中に存在しており、かつ上記第1電極、および上記第2電極が、上記有機半導体層に直接接着されていることを特徴とするものである。
このような本発明の有機半導体素子について図を参照しながら説明する。図1は本発明の有機半導体素子の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明の有機半導体素子10は、液晶性有機半導体材料からなる有機半導体層1と、上記有機半導体層の一方の面上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極2と、上記有機半導体層1の他方の面上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極3とを有するものであり、10MHz以上の交流で動作するものである。
このような例において、本発明の有機半導体素子10は、上記有機半導体層1において上記液晶性有機半導体材料が規則的に配向された状態で存在しており、かつ上記第1電極2、および上記第2電極3が上記有機半導体層1と直接接着されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、上記有機半導体層を構成する材料として、液晶性を示す液晶性有機半導体層が用いられ、かつ当該液晶性有機半導体材料が規則的に配向していることにより、移動度が顕著に優れる有機半導体層を得ることができる。このため、本発明によれば、たとえば、高周波数の交流を印加して動作させることで、変位電流が発生した場合であっても、それよりも高い電流密度を実現することができる。したがって、本発明によれば高周波数領域においても安定して動作させることができる有機半導体素子を得ることができる。
また、本発明の有機半導体素子は、上記第1電極および第2電極が上記有機半導体層に直接接着された構成を有するものである。このため、本発明の有機半導体素子を製造する工程においては、有機半導体層をいわゆる接着層として用い、上記第1電極および第2電極を有機半導体層のみによって接着することができる。このため、本発明によれば、別途接着層等を形成する必要がなく、簡易な製造することが可能な有機半導体素子を得ることができる。さらに、電気特性を悪化させる原因となる接着剤を用いずに、電極との密着性が良く、性能に優れた有機半導体素子を得ることができる。
本発明の有機半導体素子は、少なくとも有機半導体素子、第1電極、および第2電極を有するものであり、必要に応じた他の任意の構成を有してもよいものである。
以下、本発明の有機半導体素子に用いられる各構成について順に説明する。
1.有機半導体層
最初に、本発明に用いられる有機半導体層について説明する。本発明に用いられる有機半導体層は、液晶性有機半導体材料からなるものであり、当該液晶性有機半導体材料が規則的に配向した状態で存在することを特徴とするものである。また、本発明に用いられる有機半導体層は、後述する第1電極および第2電極を接着する、‘接着層’としての機能も果たすものである。
以下、このような有機半導体層について詳細に説明する。
(1)液晶性有機半導体材料
本発明に用いられる液晶性有機半導体材料としては、半導体特性を備えるものであって、液晶相温度以上に加熱されることにより、規則的に配向し、後述する第1電極と第2電極と、接着層等の他の構成を介さずに直接接着することができるものであれば特に限定されるものではない。このような液晶性有機半導体材料は、本発明の有機半導体素子の用途等に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも本発明に用いられる液晶性有機半導体材料は、液晶相を示す液晶相温度が、450℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
ここで、上記液晶相温度とは、上記液晶性有機半導体材料が液晶相を発現する温度を意味するものである。このような液晶相温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)による熱分析や、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察等によって測定することができる。
本発明に用いられる液晶性有機半導体材料は、有機半導体層の厚み方向への通電を促すように配向する性質を有するものであることが好ましい。本発明の有機半導体素子のように有機半導体層が2つの電極によって挟持された構成を有する有機半導体素子においては、電圧を印加すると有機半導体層の厚み方向に電流が流れることになるため、この電流が流れる方向の通電を促すように液晶性有機半導体材料が配向することによって、本発明における有機半導体層の実質的な移動度をさらに向上させることができ、その結果として高周波数領域においてさらに十分な電流密度を実現することが可能になるからである。
本発明に用いられる液晶性有機半導体材料としては、高分子系液晶性有機半導体材料と、低分子系液晶性有機半導体材料とを挙げることができる。本発明においては、高分子系液晶性有機半導体材料と、低分子系液晶性有機半導体材料とのいずれであっても好適に用いることができる。
上記高分子系液晶性有機半導体材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリジアセチレン誘導体、ポリトリフェニルアミン誘導体、トリフェニルアミンとフェニレンビニレンとの共重合誘導体、チオフェンとフェニレンとの共重合誘導体、チオフェンとチエノチオフェンとの共重合誘導体、およびチオフェンとフルオレンとの共重合誘導体等を挙げることができる。
一方、上記低分子系液晶性有機半導体材料としては、例えば、オリゴカルコゲノフェン誘導体、オリゴフェニレン誘導体、カルコゲノフェンとフェニレンのコオリゴマー誘導体、テトラチエノアセン等のカルコゲノフェンの縮環化合物誘導体、カルコゲノフェンとフェニレンの縮環化合物誘導体、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ピレン、トリフェニレン、コロネン等の縮合多環炭化水素誘導体、カルコゲノフェンと縮合多環炭化水素とのコオリゴマー誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラチオフルバレン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、チアゾロチアゾール誘導体、およびフラーレン誘導体等を挙げることができる。
なお、本発明に用いられる液晶性有機半導体材料は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
(2)有機半導体層
本発明に用いられる有機半導体層は、上述した液晶性有機半導体材料が規則的に配向した状態で存在するものである。ここで、本発明における有機半導体層において液晶性有機半導体材料が規則的に配向している態様は、所望の接着性と移動度とを発現できる態様であれば特に限定されるものではない。繰り返し述べているように、本発明の有機半導体素子のように有機半導体層が2つの電極によって挟持された構成を有する有機半導体素子においては、電圧を印加すると有機半導体層の厚み方向に電流が流れることになるため、本発明においては有機半導体層の厚み方向の通電を促すように液晶性有機半導体材料が配向していることが好ましい。より具体的には、本発明に用いられる液晶性有機半導体材料が、棒状の主骨格を有するものである場合は、導電性に寄与するπ電子雲は主骨格に対して垂直方向に張り出しているのが一般的であることから、このような棒状の液晶性有機半導体材料が用いられる場合は、主骨格が有機半導体層の厚み方向に対して垂直になるように液晶性有機半導体材料が配向していることが好ましい。一方、本発明に用いられる液晶性有機半導体材料が、ディスコティック液晶材料である場合は、導電性に寄与するπ電子雲は液晶性有機半導体材料のディスク面に対して垂直方向に張り出しているのが通常であるため、このような液晶性有機半導体材料が用いられる場合は、ディスク面の法線方向が、有機半導体層の厚み方向と平行になるように水平配向していることが好ましい。
本発明に用いられる有機半導体層の厚みとしては、上記液晶性有機半導体材料の種類等に応じて有機半導体層に所望の半導体特性を付与でき、かつ、後述する第1電極と第2電極とを所望の接着力で接着させることが可能な範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる有機半導体層の厚みは20nm〜2μmの範囲内であることが好ましく、50nm〜1μmの範囲内であることがより好ましく、80nm〜500nmの範囲内であることが特に好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、上記有機半導体層の全体に渡って液晶性有機半導体材料を均一に配向させることが困難になる場合があるからである。また、厚みが上記範囲よりも薄いと、電極の短絡等によって歩留まりが低下したり、有機半導体層に所望の半導体特性を付与することが困難になる場合があるからである。
2.第1電極および第2電極
次に、本発明に用いられる第1電極および第2電極について説明する。本発明に用いられる第1電極および第2電極は、それぞれ第1導電性材料、第2導電性材料から構成されるものであり、第1導電性材料および第2導電性材料は互いに仕事関数が異なるものである。また、本発明に用いられる第1電極および第2電極は、それぞれ上述した有機半導体層の厚み方向の異なる面上に直接接着されているものである。
以下、このような第1電極および第2電極について詳細に説明する。
本発明に用いられる第1電極、および第2電極は上述した有機半導体層に直接接着されているものであるが、ここで「直接接着されている」とは、第1電極および第2電極が、接着剤等を介することなく、直接に有機半導体層と接着していることを意味する。
本発明に用いられる第1導電性材料および第2導電性材料は、有機半導体素子における電極として十分な導電性を備えるものであり、かつ互いに仕事関数が異なるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる第1導電性材料および第2導電性材料は、仕事関数の差が0.2eV以上の範囲内であることが好ましく、0.4eV以上の範囲内であることがより好ましく、0.6eV以上の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明に用いられる第1導電性材料および第2導電性材料としては、通常、金属材料が用いられることが好ましい。第1導電性材料および第2導電性材料として用いられる金属材料としては、一般的に有機半導体素子に用いられる電極を構成する材料として公知のものを用いることができる。このような金属材料としては、例えば、Ag、Au、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Mo−Ta合金、ITO、IZOなどの金属酸化物、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチアジル及び導電性ポリマをあげることができる。
また、本発明に用いられる第1導電性材料と、第2導電性材料の好ましい組み合わせとしては、たとえば、ITOと銀ナノ粒子、Alと銀ナノ粒子等を挙げることができる。
3.任意の構成
本発明の有機半導体素子は、少なくとも上記有機半導体層、第1電極および第2電極を有するものであるが、必要に応じて他の任意の構成を有するものであってもよい。本発明の有機半導体素子に用いられる任意に構成としては、上述した本発明の目的を損なうものでなければ特に限定されるものではなく、本発明の有機半導体素子の用途等に応じて所望の機能を有する構成を適宜選択して用いることができる。中でも本発明の有機半導体素子に好適に用いられる構成としては、上記第1電極および上記第2電極をそれぞれ支持する、第1基板および第2基板が用いられていることが好ましい。本発明の有機半導体素子に上記第1基板および第2基板が用いられていることにより、本発明の有機半導体素子を製造する際に、ハンドリング上の便宜を図れるからである。また、有機半導体層が空気や紫外線に暴露されることによって経時劣化することを防止できるため、本発明の有機半導体素子の耐久性を向上させることができるからである。
本発明の有機半導体素子に上記第1基板および第2基板が用いられている場合について図を参照しながら説明する。図2は、本発明の有機半導体素子に第1基板および第2基板が用いられている場合の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、本発明の有機半導体素子10は、上記第1電極2および第2電極3が、それぞれ第1基板4および第2基板5上に形成されているものであってもよい。
ここで、本発明においては、上記第1電極と上記第1基板とを合わせて「第1電極積層体」、上記第2電極と上記第2基板とを合わせて「第2電極積層体」と称する。
本発明に用いられる第1基板および第2基板としては、それぞれ第1電極および第2電極を指示できるものであれば特に限定されるものではなく、本発明の有機半導体素子の用途等に応じて任意の基板を適宜選択して用いることができる。このような第1基板および第2基板としては、例えば、ガラス基板等の可撓性を有さないリジット基板であってもよく、または、プラスチック樹脂からなるフィルム等の可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。本発明においては、このようなリジット基板およびフレキシブル基板のいずれであっても好適に用いられるが、なかでもフレキシブル基板を用いることが好ましい。このようなフレキシブル基板を用いることにより、本発明の有機半導体素子の製造方法をRoll to Rollプロセスにより実施することができるため、本発明の有機半導体素子を、より高い生産性を有するものにできるからである。また、フレキシブル基板が用いられることにより、本発明の有機半導体素子を製造する際に、有機半導体層と、第1電極および第2電極との接着性を向上できる場合があるからである。
ここで、上記プラスチック樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等を挙げることができる。
また、本発明に用いられる第1基板、および第2基板は単一層からなるものであってもよく、または、複数の層が積層された構成を有するものであってもよい。上記複数の層が積層された構成を有する第1基板および第2基板としては、例えば、上記プラスチック樹脂からなる基板上に、金属材料からなるバリア層が積層された構成を有するものを例示することができる。ここで、上記プラスチック樹脂からなる基板は、本発明の有機半導体素子を、可撓性を有するフレキシブルなものにできるという利点を有する反面、表面に損傷を受けやすいという欠点を有することが指摘されている。しかしながら、上記バリア層が積層された基板を用いることにより、上記プラスチック樹脂からなる基板を用いる場合であっても、上記のような欠点を解消することができるという利点がある。
本発明に用いられる第1基板および第2基板の厚みは、通常、1mm以下であることが好ましく、なかでも1μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。ここで、本発明に用いられる第1基板および第2基板が、上述したような複数の層が積層された構成を有するものである場合、上記厚みは、各層の厚みの総和を意味するものとする。
なお、本発明に用いられる第1基板および第2基板は、同一の基板からなるものであってもよく、あるいは異なる基板からなるものであってもよい。
本発明の有機半導体素子に上記第1基板、および第2基板が用いられる場合、当該第1基板、および第2基板上に第1電極、および第2電極がそれぞれ形成されている態様としては、特に限定されるものではない。したがって、第1基板および第2基板の全面に、第1電極、および第2電極が形成されている態様であってもよく、あるいはパターン上に第1電極、および第2電極が形成されている態様であってもよい。さらに、本発明においては、上記第1基板上に第1電極が形成されている態様と、上記第2基板上に第2電極が形成されている態様とが、同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
4.有機半導体素子
本発明の有機半導体素子は、10MHz以上の交流で動作するものである。ここで、「10MHz以上の交流で動作する」とは、10MHz未満の交流や直流では動作しないこと意味するものではなく、少なくとも10MHz以上の交流で動作することを意味するものである。したがって、本発明の有機半導体素子は、10MHz以上の高周波数で動作することができるものであれば、10MHz未満の交流で動作するものであってもよい。
このように、本発明の有機半導体素子は10MHz以上の高周波数で動作するものであるが、中でも本発明の有機半導体素子は13.56MHzで動作することが好ましい。
本発明の有機半導体素子は、有機半導体層が第1電極および第2電極によって挟持された構成を有するものであることから、例えば、有機ダイオードや整流器として用いることができる。なかでも、本発明の有機半導体素子は、上記有機半導体層として、液晶性有機半導体材料が規則的に配向した状態で存在するものが用いられ、高周波数領域においても十分は電流密度を実現することが可能であるものであること、および上記有機半導体層が接着層としての機能を果たすことにより、簡易な工程により大量生産が可能であるものであることから、RFID用カードデバイス等の用途に好適に用いることができる。
5.有機半導体素子の製造方法
本発明の有機半導体素子の製造方法としては、上記構成を有する有機半導体素子を製造できる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的に有機半導体素子を製造する方法として公知の方法を用いることにより製造することができる。中でも本発明の有機半導体素子は、上記有機半導体層が上記第1電極と、第2電極とを接着する接着層としての機能を有するものであることから、このような有機半導体層の接着機能を積極的に利用する製造方法が用いられることが好ましい。このようなことから、本発明の有機半導体素子の製造方法としては、後述する「B.有機半導体素子の製造方法」の項において詳述する方法が最も好適に用いられる。
B.有機半導体素子の製造方法
次に、本発明の有機半導体素子の製造方法について説明する。本発明の有機半導体素子の製造方法は、有機半導体層形成工程の態様によって2つの態様に分けることができる。
したがって、以下、各態様に分けて本発明の有機半導体素子の製造方法について説明する。
B−1:第1態様の有機半導体素子の製造方法
まず、本発明の第1態様の有機半導体素子の製造方法について説明する。本態様の有機半導体素子の製造方法は、第1基板と、上記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極とを有する第1電極積層体を用い、上記第1電極積層体の上記第1電極上に、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、第2基板と、上記第2基板上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、上記第2電極積層体を、上記有機半導体層と上記第2電極とが接するように配置し、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層に上記第1電極積層体および上記第2電極積層体を接着させる、接着工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本態様の有機半導体素子の製造方法について図を参照しながら説明する。図3は本発明の有機半導体素子の製造方法について、その一例を示す概略図である。図3に例示するように本態様の有機半導体素子の製造方法は、第1基板4と、上記第1基板4上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極2とを有する第1電極積層体6を用い(図3(a))、上記第1電極積層体6の上記第1電極2上に、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層1を形成する有機半導体層形成工程と(図3(b))、第2基板5と、上記第2基板5上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極3と、を有する第2電極積層体7を用い、上記第2電極積層体7を、上記有機半導体層1と上記第2電極3とが接するように配置し、上記有機半導体層1を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層1に上記第1電極積層体6および上記第2電極積層体7を接着させる、接着工程と(図3(c))、を有することにより、第1電極積層体6と第2電極積層体7とが上記有機半導体層1によって接着された構成を有する有機半導体素子10を製造することを特徴とするものである(図3(d))。
本態様の有機半導体素子の製造方法によれば、上記有機半導体層形成工程において有機半導体層を形成する材料として液晶性有機半導体材料を用い、かつ上記接着工程において上記液晶性有機半導体材料の液晶相転移温度以上に有機半導体層を加熱することにより、本発明によって製造される有機半導体素子においては、有機半導体層において液晶性有機半導体層が規則的に配向されたものになる。このため、本発明によれば移動度が高い有機半導体層を備え、高周波数領域においても十分な電流密度を実現することができる有機半導体素子を製造することができる。
また、本態様の有機半導体素子の製造方法においては上記接着工程において、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することにより、接着層等の特別な構成を用いることなく、有機半導体層と上記第1電極積層体および上記第2電極積層体とを接着することが可能になる。したがって、本態様によれば簡易な工程により、高周波数領域においても十分に動作できるという優れた性能を有する有機半導体素子を製造することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも上記有機半導体層形成工程と、上記接着工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の構成を有してもよいものである。
以下、本態様の有機半導体素子の製造方法に用いられる各工程について順に説明する。
1.有機半導体層形成工程
まず、本態様に用いられる有機半導体層形成工程について説明する。本工程は、第1基板と、上記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極とを有する第1電極積層体を用い、上記第1電極積層体の上記第1電極上に、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する工程である。
本工程において有機半導体層を形成する方法としては、使用する液晶性有機半導体材料の種類に応じて、所望の厚みで均質な有機半導体層を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。このような方法としては、たとえば、上記液晶性有機半導体材料が溶媒に可溶なものである場合には、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を塗布することによって有機半導体層を形成する塗布法を挙げることができ、上記液晶性有機半導体材料が不溶なものである場合は、真空蒸着法によって有機半導体層を形成する方法を挙げることができる。本工程においては、これらのいずれの方法であっても好適に用いることができるが、なかでも塗布法が用いられることが好ましい。塗布法が用いられることによって、本態様の有機半導体素子によって製造される有機半導体素子を、より移動度の高い有機半導体層を備えるものにできるとともに、上記有機半導体層形成工程を簡略化することができるからである。
上記塗布法における有機半導体層形成用塗工液の塗布方式としては、たとえば、スピンコート、ディスペンサを用いて滴下するディスペンサ法、インクジェット法、スピンコーティング法、グラビア印刷、オフセット・グラビア印刷等を挙げることができる。
本工程において形成される有機半導体層の厚みは、本態様によって製造される有機半導体素子の用途等に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、通常は、20nm〜2μm の範囲内であることが好ましく、50nm〜1μmの範囲内であることがより好ましく、80nm〜500nmの範囲内であることが特に好ましい。
また、本工程においては必要に応じて、上記第1電極積層体の第1電極が形成された表面に各種表面処理を施してもよい。本工程に用いられる表面処理としては、たとえば、有機半導体層と第1電極積層体との接着性を向上させることを目的とする処理や、有機半導体層中の液晶性有機半導体材料の配向を促すことを目的とする処理等を挙げることができる。
前者の処理としては、例えば、Cr等基板と密着性の良いアンカー材料を用いる方法等を挙げることができる。
また、後者の処理としては、例えば、フェニルトリクロロシラン(PTS)、オクチルトリクロロシラン(OTS)等の単分子膜を用いた表面処理等を挙げることができる。
なお、本工程において形成される有機半導体層においては、通常、上記液晶性有機半導体材料は規則的に配向した状態で存在するのではなく、ランダムに存在するものであるが、後述する接着工程において有機半導体層が液晶相温度以上に加熱されることによって、液晶性を発現し、規則的に配向されることになる。
ここで、本工程に用いられる液晶性有機半導体材料、および第1電極積層体については、上記「A.有機半導体素子」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.接着工程
次に、本態様の有機半導体素子の製造方法に用いられる接着工程について説明する。本工程は、第2基板と、上記第2基板上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、上記第2電極積層体を、上記有機半導体層と上記第2電極とが接するように配置し、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層に上記第1電極積層体および上記第2電極積層体を接着させる工程である。
ここで、本工程において有機半導体層と、上記第1電極積層体および第2電極積層体と、を接着させる方法として、上記第2電極積層体を、上記有機半導体層と上記第2電極とが接するように配置し、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱する方法が用いられる。本工程において、このような方法が用いられるのは、上記液晶性有機半導体材料は液晶相温度以上に加熱され、規則的に配向されることによって有機半導体層に接着性を発現させることができるからである。本工程を実施することにより、有機半導体層と、第1電極積層体および第2電極積層体とを接着できることに加え、有機半導体層中の液晶性有機半導体材料を配向させ、有機半導体層の移動度を向上させることができることになる。
本工程において、上記有機半導体層を加熱する温度としては、上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上であれば特に限定されるものではない。すなわち、本工程は、上記有機半導体層中の液晶性有機半導体材料を相転移させることによって、上記有機半導体層に接着性を付与し、これに伴って上記有機半導体層と、第1電極積層体および第2電極積層体と対向基板とを有機半導体層を介して接着させるものである。したがって、液晶相温度以上に加熱することによって、相転移を生じさせることができるため、少なくとも液晶相温度以上に加熱することが必要になる。もっとも、本工程における有機半導体層の加熱温度は、上記液晶性有機半導体材料の液晶相−等方相転移温度以上としてもよい。これにより、本工程において上記有機半導体層と、上記第1電極積層体および第2電極積層体とをより強固に接着することが可能になる場合があるからである。
本工程において上記有機半導体層を加熱する態様としては、上記液晶製有機半導体材料の液晶相温度を経由させるように上記有機半導体層の温度を昇降させることができる方法であれば特に限定されるものではない。本工程において上記有機半導体層を加熱する方法としては、例えば、ホットプレートやオーブン、温度制御付加熱ステージ、ラミネーター装置等を用いる方法を挙げることができる。
また、本工程においては、上記第2電極積層体を、上記有機半導体層と上記第2電極とが接するように配置した後、上記有機半導体層と、上記第1電極積層体および第2電極積層体とを密着させるために必要に応じて加圧してもよい。
さらに、上記第1電極積層体および第2電極積層体は、第1基板および第2基板として、可撓性を有する基板が用いられたものであることが好ましい。これにより、本工程において上記有機半導体層と、上記第1電極積層体および第2電極積層体とをより強固に接着することが可能になる場合があるからである。
なお、本工程に用いられる第2電極積層体については、上記「A.有機半導体素子」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
3.その他の工程
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも上記有機半導体層形成工程と、上記接着工程とを有するものであるが、必要に応じて他の工程を有するものであってもよい。本態様に用いられる他の工程としては、本態様によって製造される有機半導体素子の用途等に応じて、当該有機半導体素子に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような他の工程としては、たとえば、スペーサを介した2枚のガラス基板間に液晶相温度以上に加熱した液晶性有機半導体を毛細管現象を利用して注入等を挙げることができる。
B−2:第2態様の有機半導体素子の製造方法
次に、本発明の第2態様の有機半導体素子の製造方法について説明する。本態様の有機半導体素子の製造方法は、第1基板と、上記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極とを有する第1電極積層体、および第2基板と、上記第2基板上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、上記第1電極積層体の第1電極上、および上記第2電極積層体の第2電極上に液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する、有機半導体層形成工程と、上記第1電極上に形成された有機半導体層と、上記第2電極上に形成された有機半導体層とが接するように、上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを配置し、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層によって上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを接着させる、接着工程と、を有することを特徴とするものである。
このような本態様の有機半導体素子の製造方法について図を参照しながら説明する。図4は本態様の有機半導体素子の製造方法について、その一例を示す概略図である。図4に例示するように、本態様の有機半導体素子の製造方法は、第1基板4と、上記第1基板4上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極2とを有する第1電極積層体6、および第2基板5と、上記第2基板5上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極3と、を有する第2電極積層体7を用い(図4(a))、上記第1電極積層体6の第1電極2上、および上記第2電極積層体7の第2電極3上に液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層1を形成する、有機半導体層形成工程と(図4(b))、上記第1電極2上に形成された有機半導体層1と、上記第2電極3上に形成された有機半導体層1とが接するように、上記第1電極積層体6と上記第2電極積層体7とを配置し、上記有機半導体層1を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層1を介して上記第1電極積層体6と上記第2電極積層体7とを接着させる接着工程と(図4(c))、有することにより、第1電極積層体6と第2電極積層体7とが上記有機半導体層1によって接着された構成を有する有機半導体素子10を製造することを特徴とするものである(図4(d))。
本態様の有機半導体素子の製造方法によれば、上記有機半導体層形成工程において有機半導体層を形成する材料として液晶性有機半導体材料を用い、かつ上記接着工程において上記液晶性有機半導体材料の液晶相転移温度以上に有機半導体層を加熱することにより、本発明によって製造される有機半導体素子においては、有機半導体層において液晶性有機半導体層が規則的に配向されたものになる。このため、本発明によれば移動度が高い有機半導体層を備え、高周波数領域においても十分な電流密度を実現することができる有機半導体素子を製造することができる。
また、本態様の有機半導体素子の製造方法においては上記接着工程において、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することにより、接着層等の特別な構成を用いることなく、有機半導体層と上記第1電極積層体および上記第2電極積層体とを接着することが可能になる。
したがって、本態様によれば簡易な工程により、高周波数領域においても十分な電流密度を実現できるという優れた性能を有する有機半導体素子を製造することができる。
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも上記有機半導体層形成工程と、上記接着工程とを有するものであり、必要に応じて他の任意の構成を有してもよいものである。
以下、本態様の有機半導体素子の製造方法に用いられる各工程について順に説明する。
1.有機半導体層形成工程
まず、本態様に用いられる有機半導体層形成工程について説明する。本工程は、第1基板と、上記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第2電極とを有する第1電極積層体、および第2基板と、上記第2基板上に形成され、上記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、上記第1電極積層体の第1電極上、および上記第2電極積層体の第2電極上に液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する工程である。
本工程において有機半導体層を形成する方法としては、使用する液晶性有機半導体材料の種類に応じて、所望の厚みで均質な有機半導体層を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。このような方法としては、上記「B−1:第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本工程において形成される有機半導体層の厚みは、本態様によって製造される有機半導体素子の用途等に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、通常は、20nm〜2μmの範囲内であることが好ましく、50nm〜1μmの範囲内であることがより好ましく、80nm〜5000nmの範囲内であることが特に好ましい。
また、本工程においては必要に応じて、上記第1電極積層体の第1電極が形成された表面に各種表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、上記「B−1:第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明したものと同様の処理を用いることができる。
なお、本工程において形成される有機半導体層においては、通常、上記液晶性有機半導体材料は規則的に配向した状態で存在するのではなく、ランダムに存在するものであるが、後述する接着工程において液晶相温度以上に加熱されることによって、液晶性を発現し、規則的に配向されることになる。
ここで、本工程に用いられる液晶性有機半導体材料、および第1電極積層体および第2電極積層体については、上記「A.有機半導体素子」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.接着工程
次に、本態様の有機半導体素子の製造方法に用いられる接着工程について説明する。本工程は、上記有機半導体層形成工程において、上記第1電極上に形成された有機半導体層と、上記第2電極上に形成された有機半導体層とが接するように、上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを配置し、上記有機半導体層を上記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、上記有機半導体層によって上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを接着させる工程である。
ここで、本工程において上記有機半導体層によって上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを接着させる方法としては、上記第1電極上に形成された有機半導体層と、上記第2電極上に形成された有機半導体層とが接するように、上記第1電極積層体と上記第2電極積層体とを配置すること以外は、上記「B−1:第1態様の有機半導体素子の製造方法」の項において説明した方法と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
3.その他の工程
本態様の有機半導体素子の製造方法は、少なくとも上記有機半導体層形成工程と、上記接着工程とを有するものであるが、必要に応じて他の工程を有するものであってもよい。本態様に用いられる他の工程としては、本態様によって製造される有機半導体素子の用途等に応じて、当該有機半導体素子に所望の機能を付与できるものであれば特に限定されるものではない。このような他の工程としては、たとえば、毛細管現象を利用した液晶性有機半導体の注入等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(1)液晶相同定・相転移温度確認実験
液晶性有機半導体材料である5,5’’−Dioctyl−2,2’:5’,2’’−Terthiophene、(以下「8−TTP−8」)の液晶相、相転移温度を確認するため加熱ステージ(メトラー・ドレド社製 FP82HT、FP80HT)を用いた偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製BH2−UMA)によるテクスチャー観察、及びDSC(示差走査型熱量計:Differential Scanning Calorimeter,NETZSCH社製DSC204 μ‐Sensor)測定を実施し、Iso 90.4、SmC87.6、SmF72.6、SmG59.3 Cryst.(℃)の結果を得た。
(2)有機半導体素子用基板の作製
<第1基板の作製>
第1基板としては、厚さ1mmのガラスを用いた。このガラスをトルエン、アセトン、イソプロピルアルコールで洗い、残液を窒素ガンで除いた後、100℃で1時間乾燥した。
<有機半導体層の形成>
ガラス上に、液晶性有機半導体材料である上記8−TTP−8の4wt%クロロホルム溶液をスピンコート(2000rpm、10秒)し、有機半導体層を形成した。
(3)第2基板の作製
第2基板としては、厚さ0.1mmのPENを用いた。
(4)接着工程
上記有機半導体素子用積層体と上記第2基板とを密着させ、熱転写装置(GLM350R6・GBC株式会社製)を用いて、ローラー温度120℃にて加熱することで、有機半導体層を接着層として一体化した有機半導体素子を形成した。
[比較例]
上記実施例1において、接着工程におけるローラー温度を50℃としたところ、接着が困難であり素子作製および特性評価に至らなかった。
[評価]
上記実施例において作製した有機半導体素子について、直流電圧を印加したときの電流−電圧特性を評価した。特性評価は、KEITHLEY製237HIGH VOLTAGE SOURCE MEASUREMENT UNITで行った。評価結果を図5に示す。
上記実施例において作製した有機半導体素子を整流器として用いたときの周波数特性を評価した。
周波数特性の評価は上記実施例において作製した有機半導体素子と負荷抵抗、コンデンサ、交流電源を図6のように接続して行った。負荷抵抗は1MΩ、コンデンサは1nFとした。
図7に、図6の回路に周波数、振幅の異なる交流電圧を印加したときの負荷抵抗両端の電位差(変換された直流電圧)の周波数特性を示す。
本発明の有機半導体素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機半導体素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の第1態様の有機半導体素子について、その一例を示す概略図である。 本発明の第2態様の有機半導体素子について、その一例を示す概略図である。 実施例で作製した有機半導体素子の評価結果を示すグラフである。 実施例で作製した有機半導体素子の周波数特性を評価する回路を示す概略図である。 実施例で作製した有機半導体素子の周波数特性の評価結果を示すグラフである。
符号の説明
1 … 有機半導体層
2 … 第1電極
3 … 第2電極
4 … 第1基板
5 … 第2基板
6 … 第1電極積層体
7 … 第2電極積層体
10 … 有機半導体素子

Claims (8)

  1. 液晶性有機半導体材料からなる有機半導体層と、
    前記有機半導体層の一方の面上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極と、
    前記有機半導体層の他方の面上に形成され、前記第1導電性材料とは、仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有し、10MHz以上の交流で動作する有機半導体素子であって、
    前記液晶性有機半導体材料が、規則的に配向された状態で前記有機半導体層中に存在しており、かつ前記第1電極および前記第2電極が、前記有機半導体層に直接接着されていることを特徴とする有機半導体素子。
  2. 前記有機半導体層において、前記液晶性有機半導体材料が、前記有機半導体層の厚み方向への通電を促すように配向していることを特徴とする、請求項1に記載の有機半導体素子。
  3. 前記第1電極および前記第2電極が、それぞれ第1基板および第2基板上に形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の有機半導体素子。
  4. 第1基板と、前記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第1電極とを有する第1電極積層体を用い、前記第1電極積層体の前記第1電極上に液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、
    第2基板と、前記第2基板上に形成され、前記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、前記第2電極積層体を前記有機半導体層と前記第2電極とが接するように配置し、前記有機半導体層を前記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、前記有機半導体層に前記第1電極積層体および前記第2電極積層体を接着させる接着工程と、
    を有することを特徴とする、有機半導体素子の製造方法。
  5. 第1基板と、前記第1基板上に形成され、第1導電性材料からなる第2電極とを有する第1電極積層体、および第2基板と、前記第2基板上に形成され、前記第1導電性材料とは仕事関数が異なる第2導電性材料からなる第2電極と、を有する第2電極積層体を用い、
    前記第1電極積層体の第1電極上、および前記第2電極積層体の第2電極上に液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層を形成する有機半導体層形成工程と、
    前記第1電極上に形成された有機半導体層と、前記第2電極上に形成された有機半導体層とが接するように、前記第1電極積層体と前記第2電極積層体とを配置し、前記有機半導体層を前記液晶性有機半導体材料の液晶相温度以上に加熱することによって、前記有機半導体層によって前記第1電極積層体と前記第2電極積層体とを接着させる接着工程と、
    を有することを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
  6. 前記接着工程における前記有機半導体層の加熱温度が、前記液晶性有機半導体材料の液晶相−等方相転移温度以上であることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の有機半導体素子の製造方法。
  7. 前記有機半導体層形成工程が、液晶性有機半導体材料を含有する有機半導体層形成用塗工液を塗布することによって、前記有機半導体層を形成するものであることを特徴とする、請求項4から請求項6までのいずれかの請求項に記載の有機半導体素子の製造方法。
  8. 前記第1基板および第2基板が可撓性を有する基板であることを特徴とする、請求項4から請求項7までのいずれかの請求項に記載の有機半導体素子の製造方法。
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