以下、本発明の各実施の形態につき図面を参照して説明する。なお、参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明は省略する。また、各図においては各実施形態で説明をする機能以外は説明を割愛するが、各図における機能は各実施形態で説明された機能のみに限られない。
[グループ分けα:試運転時におけるグループ分けについて]
図1に本実施形態に係る冷却システム1000の構成を示す。
コンプレッサが内蔵された冷媒送出器たる第1冷凍機100が、複数の冷却機器たるショーケース101〜104(ショーケースは、ショーケース1−1〜1−m1のm1台存在する。なお、m1は2以上の自然数である。ハイフンの前の数字は冷媒回路番号、ハイフンの後ろの「m1」の部分はショーケース番号としても使用可能である)とその中を冷媒が流れる冷媒配管300,301で接続されて一つの集合たる第1冷媒回路CT1を構成している。同図中第1冷媒回路CT1のショーケースはショーケース101〜104の4台が表されているが、台数はこれに限られない。なお、図面等や以下においてショーケースは単にケースと呼ぶ場合がある。
冷媒配管300は各ショーケースの冷媒の吸入側すなわち冷凍機100から送出される冷媒が流れる側の配管で、冷媒配管301は各ショーケースの冷媒の排出側すなわち冷凍機100へ戻される冷媒が流れる側の配管である。ショーケース101〜104の各々の冷媒の吸入側には弁101a〜104aがあり、冷媒のショーケース内部への吸入量を調節する。本実施形態では弁はその開栓率を調整しうる電磁弁などである。
また、コンプレッサが内蔵された冷媒送出器たる第2冷凍機200が、複数の冷却機器たるショーケース201〜204(ショーケースは、ショーケース2−1〜2−m2のm2台存在する。なお、m2は2以上の自然数である。上述のように、ハイフンの前の数字は冷媒回路番号、ハイフンの後ろの「m1」の部分はショーケース番号としても使用可能である)とその中を冷媒が流れる冷媒配管400,401で接続されて一つの集合たる第2冷媒回路CT2を構成している。同図中第2冷媒回路CT2のショーケースはショーケース201〜204の4台が表されているが、台数はこれに限られない。
冷媒配管400は各ショーケースの冷媒の吸入側すなわち冷凍機200から送出される冷媒が流れる側の配管で、冷媒配管401は各ショーケースの冷媒の排出側すなわち冷凍機200へ戻される冷媒が流れる側の配管である。ショーケース201〜204の各々の冷媒の吸入側には弁201a〜204aがあり、冷媒のショーケース内部への吸入量を調節する。本実施形態では弁はその開栓率を調整しうる電磁弁などである。
なお、ショーケースには保冷された生鮮食料品などの商品等(以下、保存品と呼ぶ)を陳列する庫内部分と、その内部を冷媒が流れることで庫内部分を冷却するエバポレータ部分とが存在する。冷蔵ショーケースでは庫内の設定温度が設定される事で、エバポレータ中を流れる冷媒により庫内温度を低下させて前記設定温度へ向けて保存品が冷蔵され、また冷凍ショーケースでは庫内の設定温度が設定される事で、エバポレータ中を流れる冷媒により庫内温度を低下させて前記設定温度へ向けて保存品が冷凍され保冷される。これら冷蔵、冷凍、保冷動作は、庫内の設定温度と庫内の実際の温度との差に基づいて行われ、単純には、例えばその差が大きいと冷蔵、冷凍、保冷動作は急速動作となり、例えばその差が零に近づくと冷蔵、冷凍、保冷動作は停止される。
また、弁101a〜104a、201a〜204aは全閉から全開までの間で任意に開くことができ、その開きの程度は開栓率(以下、開度)で現される。ショーケースが冷媒を取り込むために弁を開くことで、冷媒配管内部の圧力が変化しそれを冷凍機が感知して、冷媒送出を開始したり送出中の冷媒量を調整したりする。開度は0%〜100%で表現され、開度0%(以下、単に0と書く)は全閉を表し、開度100%(以下、単に100と書く)は全開を表す。ここで、開度とは、冷媒の流方向に対する断面積全体に対してその時刻に開いている部分の面積の割合のことを示す。なお開度は、全開か全閉の2つの機能しか使用しない場合や当該2つの機能しか有さない弁の場合においては、単位時間における全開の時間の占める割合(デューティ比)であってもよい。開度は、弁から送信される弁開閉用ステッピングモータの回転数や、同じく弁から送信される弁の開閉情報に従って統合コントローラ10などで計算される。
弁の開度の大小の制御は、ショーケース庫内の設定温度と現在の庫内温度との差分の大小に併せて行われ、当該弁の開度の大小の変化に併せてショーケース内部への冷媒の取り込み量が増減する。
冷凍機100、ショーケース101〜104、冷凍機200、およびショーケース201〜204等の設備機器は制御装置たる統合コントローラ10と電気的に通信線500を通じて接続されている。統合コントローラ10は、少なくとも設備機器のうちのこれら冷凍機、ショーケースの制御を行い、それらの機器から状態のデータを収集する。つまり、通信線500は冷凍機およびショーケースにおける制御やデータ収集のために使用される。なお、統合コントローラ10は、各設備機器の状態等に応じて、省エネルギーの点や動作時間短縮等の動作効率向上などの点から、統合的に各設備機器の制御を行う。制御とは、例えば、各設備機器において動作を設定するための制御レジスタに所望の設定値(例えば、設定温度や弁開度、など)をセットするために設定値を送信する事などによる設定指示の制御や、設備機器に備えられたセンサの計測データや設備機器を制御する機器コントローラ(次述)に格納されている状態データを送信させる制御などがあり、設定指示の内容には、例えばショーケースの庫内の所望温度設定やデフロスト(霜取り)指示、コンプレッサの回転数設定、冷凍機の圧力値設定、弁101a〜104a、201a〜204aの開度の設定などがある。なお、所望温度(以下、設定温度とも言う)とは操作者が設定するショーケースの庫内の温度のことで、操作者が最終的に到達することを希望する庫内温度のことである。
通信線500上に送出される制御の内容を以下では制御データと呼ぶ。なお、通信線は無線、有線どちらでもよい。また各機器における接続は、バス接続であっても良いし、ループ状接続、スター状接続などであっても良い。
同図中に表されていないが、各設備機器には実際はそれら設備機器を直接制御する機器コントローラと呼ばれるコントローラが備えられている。機器コントローラとは各設備機器個別に取り付けられ、統合的に各設備機器の制御を行う統合コントローラの制御等を受けて、当該設備機器の動作の制御を行うために使用されるものである。つまり、各設備機器はそれら機器コントローラを介して、通信線500を通じて統合コントローラ10と電気的に接続されている。以下においては、機器コントローラの動作説明は省略するが、統合コントローラによる通信線500を通じての各設備機器の制御には、この機器コントローラによる制御動作が介在するものと解釈してよい。
同図中において、冷媒回路は2つ記載されているが1つでもよく、また3つ以上含まれていてもよい。また、同図中には冷設機器しか記載されていないが、冷却システムには空調機器や照明機器等が含まれていてもよい。その場合、それら空調機器や照明機器等も統合コントローラにより制御等が可能となる。以下では、説明の上から、冷却システムが冷媒送出器と冷却機器からなる冷設機器によって構成されている場合について説明を行う。
図1に示されるように、特定の位置に配された冷凍機100、200と所定の位置に夫々配された各ショーケース101〜104、201〜204間の位置関係、すなわち冷凍機と各ショーケース間の距離はショーケース毎によって異なり、冷凍機に比較的距離が近いショーケースと冷凍機から比較的距離が遠いショーケースとがある。この場合の特定の位置とは例えば店舗内のバックヤードや店舗の外であり、所定の位置とは例えば店舗内においてショーケースの庫内に保存されている保存品の種類等に依存して各ショーケースが島状に構成される位置のことを言う。
冷媒が冷媒配管を流れる際には、冷媒配管と冷媒との間の抵抗分、冷媒配管中の気体との間の抵抗分などの影響により、ショーケースの間で冷媒の到達量に差が生じ、その抵抗分は距離が長くなるにつれて大きくなるので、冷凍機からの距離が遠いショーケースほど冷媒の到達量が減少する。各ショーケースにおける冷媒到達量の差の影響は、冷凍機の冷媒送出能力が何らかの理由により低下した場合に各ショーケースの間で現れ、冷凍機の冷媒送出能力が低下した場合、距離的に冷凍機に近いショーケースには必要な量の冷媒を到達させうるが、距離的に遠いショーケースには必要な量の冷媒を到達させることが困難になりうる。そのショーケースに流れる冷媒の到達量に依存してそのショーケースの保存品を保存する温度すなわち庫内の温度が主に決まるので、そのショーケースで要求される冷却容量(必要とされる単位時間当たりの冷媒量など)を充分満足する程度の冷媒をそのショーケースに到達できないとき、ショーケースの庫内の温度が上昇し保存品が融けるなどして保存品の鮮度低下などの品質低下を招くような場合が生じうる。
そこで、冷凍機と複数のショーケースの各々との相対的な位置の関係を考慮して、ショーケースの制御データを変更することで、上記の保存品が融けて品質に拘るといった問題を解決できる。例えば、冷凍機に対して距離的に遠いショーケースには必要な量の冷媒を流入させるため、距離的に冷凍機に近いショーケースに比べて距離的に遠いショーケースには冷媒の流入量を増加させる制御を統合コントローラ10が行う事で、距離的に遠いショーケースにおける保存品の融解を防ぐ事ができる。なお相対的な位置の関係は、上述の冷凍機に対する距離の面を含め、冷媒の到達のしやすさの面を考慮したものである。たとえばショーケースの設置場所によっては、冷凍機に対する距離が近いショーケースであっても冷媒配管の配管形状等により、そのショーケースで要求される冷却容量を充分満足する程度の冷媒をそのショーケースに流入できない場合が起こりうるからである。
上述のように、距離的に冷凍機に近いショーケースに比べて距離的に遠いショーケースの冷媒の流入量を増加させるが、双方における保存品の融解を防ぐ目的から、好ましくは距離的に冷凍機に遠いショーケース(後述の冷媒流入の難易性が比較的高いショーケースに相当)の組と距離的に冷凍機に近いショーケース(後述の冷媒流入の難易性が比較的低いショーケースに相当)の組の双方が、そのショーケースで要求される冷却容量を充分満足する程度の冷媒の量に近い量を取り込む、すなわち後述の冷媒の流入の難易性を近づけさせる。この場合、二者間の冷媒の流入の格差が低減される。
次に、こうした冷凍機と複数のショーケースの各々との相対的な位置の関係を考慮して制御を行う点について説明する。以下では、冷凍機と複数のショーケースの各々との相対的な位置の関係とは、主に冷凍機と複数のショーケースの各々との間の距離のことを言うものとする。
まず、図2に統合コントローラ10の構成を示す。
統合コントローラ10は、少なくとも、冷設機器や統合コントローラ10自身の制御などを行う制御部10a、通信線500と電気的に接続され冷凍機やショーケース等の冷設機器への制御データの送信や、冷設機器からの冷媒配管内部の温度の時系列情報といった計測データや、冷凍機から送信された当該冷凍機における冷媒の温度の時系列情報といった計測データの受信等のために使用される通信部10b、時間的なずれに関するずれ時間情報(詳しくは後述する)を算出するずれ時間情報算出部10c、複数のショーケースの組分けを行う組分け部10d、ショーケースで計測された時間軸方向に対する温度の値(以下、計測温度と呼ぶ)を記憶しているショーケース計測温度テーブル10e、時間計測に使用されるタイマ10f、組分け部10dで組分けされたショーケースに関する情報を格納する組情報格納テーブル10gを含む。さらに、液晶ディスプレイ等の表示部10h、スイッチや表示部10hと一体になったタッチパネル等の入力部10iを含む。
制御部10aは、少なくとも、組情報格納テーブル10gに従って変更された制御データを生成する組制御内容変更部10a1と組制御内容変更部10a1からの制御データに従って制御を行う組考慮制御部10a2、後で述べる通常運転における制御データを生成する通常時内容生成部10a5、組制御内容変更部10a1からの制御データを使用せずに通常時内容生成部10a5からの制御データを使用して制御を行う組無考慮制御部10a3、セレクタ10a4、セレクタ10a4で選択された制御データを記憶する制御内容格納部10a6とを含む。セレクタ10a4は、正常状態時には通常時内容生成部10a5のデータを選択し、下で述べる異常状態時には組考慮制御部10a2か組無考慮制御部10a3の何れかの出力を選択して出力する。制御部10aは、制御内容格納部10a6に記憶されている制御データを出力して各ショーケースの制御を行う。
ショーケースにおいて保存品を実際に保冷・陳列しているいわゆる通常の運転(以下、「通常運転」と称す)において、冷却システムでは通常冷媒回路中に存在するショーケース全部で要求される冷却容量を満たす程度の冷媒を送出する能力の冷凍機が接続されており、冷凍機はショーケース全部で要求される冷却容量を満たす程度の冷媒を送出している(以下、このような場合を正常状態と呼ぶ)。ショーケースで要求される冷却容量はそのショーケースの庫内に保存・陳列される保存品の品質低下を起こさない程度以上である必要がある。しかし、例えば冷凍機における不具合や故障、ショーケース周りの気温の上昇などにより、正常状態時(以下、単に正常時と書く)のようなショーケース全部で要求される冷却容量を満たす程度の冷媒を冷凍機が送出できない場合がある(以下、このような場合を異常状態と呼ぶ)。なお、異常状態時(以下、単に異常時と書く)には、結果的に全ショーケースで要求される冷却容量を満たす程度の冷媒を冷凍機が送出できないことから、冷媒回路中に存在するショーケース全部で要求される冷却容量を満たす程度の冷媒を送出する能力を有さない冷凍機が接続されている場合や、ショーケース周囲の温度の上昇といったショーケース周りの理由の場合や冷媒配管の破損等による冷媒配管周りの理由の場合も含められる。
異常時の場合には、冷凍機に対して比較的近方のショーケースは、そのショーケースで要求される冷却容量を満足しうる程度の冷媒を流入させる事ができても、冷凍機から遠方のショーケースには、そのショーケースで要求される冷却容量を充分満足する程度の冷媒を冷凍機が送出できない場合が発生する。そのショーケースに流れる冷媒の流入量に依存してそのショーケースの保存品を保存する温度すなわち庫内の温度が主に決まるので、そのショーケースで要求される冷却容量を充分満足する程度の冷媒をそのショーケースに流入できない結果、操作者が設定した所望温度からショーケースの庫内の温度が上昇して保存品が融けるなどして品質の低下を招く場合が生じうる。
そこで、冷設機器を含む冷却システムでは、各ショーケースの冷凍機に対する主に遠近にかかる位置関係がグループ分けαにおいては重要となり、特に異常時の場合には正常時に対して、そのショーケースの冷凍機に対する相対的な位置関係に依存して設定値などの制御データを変更する必要が生じてくる。当該制御データとしては、例えば、弁101a〜104a、201a〜204aの開度、ショーケース101〜104、201〜204の庫内の設定温度などがある。
次に、上で述べた各ショーケースの冷凍機に対する相対的な遠近距離に依存して各ショーケースを適数の組(以下、グループと呼ぶ)に組分け(以下、グループ分け)する統合コントローラ10の動作を説明し、それにより冷却システムで使用されるグループ分けに関する冷却方法について説明する。適数とは、単数または複数を意味し、事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果等から定める事ができる。なお、当該グループ分けは組分け部10dにおいてなされるが、主に冷却システムを導入する初期の段階において、例えば通常運転を行う前のシステムの動作確認などのための試運転時等において実行される。
なお、組分けでは、複数のショーケースが全て違う組となる場合、すなわち各組の要素が1つのショーケースのみとなる場合も含まれる。よって、各ショーケースにおいて個別に制御対応を判断することは、複数のショーケース全てを違う組に組み分けしてから制御データに変更することを意味する。この場合、異なるショーケース間で変更した制御内容が同じとなる場合も起こりうる。
因みに、組制御内容変更部10a1がグループに依存して制御内容格納部10a6に記憶されている制御データとは異なる制御データに変更したデータである変更制御内容(以下、変更制御データ)を生成し、組考慮制御部10a2が当該変更制御データを各ショーケースに対して送信するべく通信部10bへ指示を出すことで変更制御データを使用して統合コントローラ10が制御を行うが、統合コントローラ10が当該変更制御データを使用して制御を行うのは、冷却システムが通常運転を行っているときであり、例えば通常運転において正常状態から異常状態となった場合である。なお、グループ分けはずれ時間情報算出部10cで算出されるずれ時間情報に基づいてなされる。
図3に統合コントローラ10の第1冷媒回路CT1におけるグループ分けの動作のフロー図を、図4に統合コントローラ10の第1冷媒回路CT1における変更制御データを使用した制御のフロー図を示し、上で述べた内容も含めて本実施形態に係る冷却方法について説明する。なお、グループ分けαにおいては、グループ分けを試運転時において行っている前提で説明する。よって、どのショーケースがどの冷凍機に接続されているか、すなわちどの冷媒回路に属するかは試運転開始前には統合コントローラ10は把握していない。なお、グループ分けはシステムを導入する初期の段階や当該試運転時等に限られる訳ではない。
また、本実施形態においては、通常運転における冷凍機の冷媒送出動作は、主に第1冷凍機100の冷媒配管301側の配管内圧力を計測する事でなされており、通常運転におけるショーケースの冷却動作は、主にショーケース側が庫内の設定された所望温度と現在の庫内温度との差分の大小に併せて弁の開度を大小変更させて冷媒の取り込み量を増減させるように調整することでなされるものとする。一方、試運転における冷凍機の冷媒送出動作は、主に冷媒温度の目標温度(後出)や冷媒温度の変化速度を設定する事でなされており、通常運転におけるショーケースの冷却動作は、主に庫内の所望温度の設定、弁の開度を設定することでなされるものとする。
[試運転時におけるグループ分けのフロー]
まず試運転が開始されると、図3のグループ分け動作フロー図のステップS100へ動作が移行する。
ステップS100では、統合コントローラ10が受信部10bを通じて、冷凍機100に対して当該冷凍機が送出した冷媒の温度すなわち当該冷凍機における冷媒の温度を計測させる冷媒送出機冷媒温度計測指令を出し、その後第1冷媒回路CT1に含まれるショーケース101〜104、第2冷媒回路CT2に含まれるショーケース201〜204などのショーケース全てに対して各ショーケースに接続された冷媒配管内部の温度、すなわち各ショーケースにおける冷媒の温度、具体的には冷凍機100、200から送出され各ショーケース101〜104、201〜204に到達した冷媒の温度を同時に計測させる冷却機器冷媒温度計測指令を出す。なお、複数のショーケースに同時に冷媒の温度を計測させる手段としては、例えば同報通信等によりショーケース全てに同時に計測開始指示が到達するような手段が取りうる。その後、冷凍機100に対して所定条件で冷媒を送出する冷媒送出指令を出す。所定条件とは、冷凍機から送出する冷媒の最終的に到達する温度(以下、目標温度)や目標温度へ到達する時間すなわち冷媒温度の変化速度などで、事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果等から定める事ができる。
なお、冷凍機が送出した冷媒の温度を計測する箇所としては、例えば冷凍機の吐出部や吐出部付近の冷媒配管300、400、冷凍機内部における冷媒が通る管(図示せず)等の内部がある。各ショーケースに接続された冷媒配管内部には例えばショーケースの吸入部付近の冷媒配管300の内部、や冷媒配管400の内部、ショーケース内部における冷媒が通る管(図示せず)の内部等がある。また、各ショーケースに接続された冷媒配管内部の意味には、冷媒配管300において、各ショーケースの吸入部から略同じ距離の位置の内部の意味なども含まれる。
冷凍機における冷媒の温度や各ショーケースにおける冷媒の温度の意味には上述の冷媒配管等の内部の温度に加え、冷媒配管等の配管表面の温度の意味なども含められる。
ステップS200では、一定時間、冷凍機100が冷媒送出機冷媒温度計測指令に応じて、冷凍機における冷媒の温度を計測して、時刻毎の冷媒温度である冷凍機における冷媒の温度の時系列情報(以下、冷媒温度の時系列情報)を計測して出力する。また一定時間、ショーケース101〜104、ショーケース201〜204などのショーケースが冷却機器冷媒温度計測指令に応じて、各ショーケースにおける冷媒の温度すなわち冷媒配管内部の温度を計測して、時刻毎の冷媒配管内部の温度である冷媒配管内部の温度の時系列情報(以下、冷媒配管温度の時系列情報)を計測して、冷凍機100から送出され各ショーケースに到達した冷媒の温度として出力する。なお、温度を計測する当該一定時間は、グループ分けをしようとしている冷媒回路に属する全ショーケースにおいて計測した温度において、温度が変化する前の時点から解析に必要なだけの温度データを測定できる時間以上であればよく、事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果等から定める事ができる。この各ショーケースが計測した温度の値はショーケース計測温度テーブル10eに格納される。なお、冷凍機100やショーケース101〜104、ショーケース201〜204などのショーケースにおける当該計測は、所定のサンプリング周期τで行われる。サンプリング周期τは変動する温度をある程度の頻度でサンプリングできる様な値であり、事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果等から定める事ができる。過去の施設時における知見から、例えばτ=1秒とすることができる。
その後、統合コントローラ10は、冷凍機100からの全冷媒温度データおよびショーケース101〜104、ショーケース201〜204などのショーケースからの全冷媒配管内部温度データを、受信部10bを通じて受信する。
ステップS300では、ショーケース101〜104、ショーケース201〜204などの全ショーケースの中で冷媒配管内部温度が変化したものがあるかサーチし、冷媒配管内部温度が変化したものを第1冷媒回路CT1に属するショーケースと認識する。なお、ステップS500,S700の処理によりループ処理となってステップS300を2回以上実行する事になる場合は、2回目以降のステップS300の処理は行われない。すなわち、試運転においてステップS300は1回のみ実行される。第1冷媒回路CT1に属するショーケースの認識は1回目で終了するからである。
これ以降、冷凍機100と第1冷媒回路CT1に属する複数のショーケース101〜104の間でグループ分けが行われる。すなわち、冷凍機100の冷媒温度データとショーケース101〜104の冷媒配管内部温度データのみを使用する。特に断らない限りはこれらの温度データ以外は使用しない。
ステップS400では、ショーケース101〜104の各々の冷媒配管内部温度データと、冷凍機100の冷媒温度データの間における時間的なずれを算出する。
ステップS500では、ステップS400で算出した時間的なずれの情報(ずれ時間情報)を使用して、グループ分けが可能かどうかの判断を行う。グループ分けが可能な場合はステップS600へ移行し、グループ分けが可能でない場合はステップS700へ移行する。
ステップS600では、グループ分けを行い、当該グループ分けの結果を組情報格納テーブルに格納する。その後、ステップS1000へ移行する。以下において、組情報格納テーブルの作成を行った結果、組情報格納テーブルデータが存在している事を、単に組情報格納テーブルがあると記載する。
なお、この場合試運転後の通常運転において、組制御内容変更部10a1において分けられたグループ毎に前記ショーケースの制御データの変更を行って変更制御データを生成し、組考慮制御部10a2は組制御内容変更部10a1で生成された変更制御データに従ってショーケースの制御を行う。セレクタ10a4は組考慮制御部10a2の出力を選択して出力する。
なお、上記のステップS400における算出方法、ステップS500におけるグループ分けが可能かどうかの判断、ステップS600におけるグループ分けの方法については、後のずれ時間情報の算出の所で述べる。
ステップS700では、グループ分けを行った回数が限度回数以内かどうかの判断を行う。1回目でグループ分けができなかった場合は、ステップS900の所で述べるように条件を変えてグループ分けを行う。しかし、条件を変えてグループ分けを行うが冷媒回路によっては、そのショーケース等の配置状況等から、どのように条件を変えてもグループ分けができないことがおこりうる。そこで、限度回数を設けその限度以上グループ分けを試みてもグループ分けができなかった場合はグループ分けを行わない。なお限度回数は、過去におけるグループ分けができなかった場合の事例の情報やグループ分けができなかった実験結果、シミュレーション結果等から定める事ができる。限度回数以内の場合はステップS900へ移行し、限度回数以内でない場合はステップS800へ移行する。
ステップS800では、グループ分けを行わないとして、組情報格納テーブルの作成を行わない。その後、ステップS1000へ移行する。以下において、組情報格納テーブルの作成を行わなかった結果、組情報格納テーブルデータが存在しない事を、単に組情報格納テーブルが無いと記載する。
なお、試運転後の通常運転における異常時動作(後述の図4)の場合、図2において組無考慮制御部10a3は組制御内容変更部10a1で生成された変更制御データとは異なる制御データでショーケースの制御を行う。本実施形態では、組無考慮制御部10a3は通常時内容生成部10a5が作成した制御データでショーケースの制御を行う。セレクタ10a4は組無考慮制御部10a3の出力を選択して出力する。この場合は、冷凍機に対する距離の違いにより各ショーケースの間で冷媒の流入量に差が生じていても、組制御内容変更部10a1で生成された変更制御データに従った制御データの変更を行わない。具体的には、各ショーケースはそれまでの制御データを踏襲した動作などを行う。すなわち、異常時対応であるが、それまでの制御に使用されていた制御内容格納部10a6に格納されている制御データと同じ制御データを通常時内容生成部10a5が作成し、制御部10aから出力する。
上述のように、各ショーケースの間で冷媒の流入量に差が生じる場合であっても、その各ショーケースの冷凍機に対する相対的な位置の関係、例えば冷凍機と各ショーケース間の距離を考慮せずに統合コントローラ10が制御等を行う場合についても対応しうるものである。なお、特許文献(特開2006−214689号公報)には、室外機から各室内機へ冷媒が到達した序列に従って室内機のアドレス付与を行う旨の技術が開示されているが、各ショーケースの冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮する場合の具体的な開示が無い上、更にこのような各ショーケースの冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮しない場合についてもなんら開示されていない。
ステップS900では、再度グループ分けを行うためにグループ分け動作の条件の変更を行う必要があるので、変更した条件をセットする。グループ分け動作の条件には、例えば冷媒温度の変化速度、冷媒温度の目標温度などの所定条件や、サンプリング周期τなどがある。これら、冷媒温度の変化速度や冷媒温度の目標温度などの所定条件を変更して変更所定条件を算出して所定条件として再設定し、冷凍機から送出する冷媒の量等を変化させる。または、サンプリング周期τを短く変更して変更サンプリング周期を算出してサンプリング周期として再設定する。
なお、上記のステップS900における条件の変更の仕方についても、後のずれ時間情報の算出の所で述べる。
ステップS1000では、試運転における本実施形態では触れない他の動作を行い、試運転を終了する。
次に、通常運転における図4の変更制御データを使用した統合コントローラ10の制御のフロー図について説明する。
冷却システム1000に含まれる各設備機器および統合コントローラ10の電源が投入される事で、冷却システム1000において通常運転が開始され、図4のフロー図のステップS2000へ動作が移行する。
ステップS2000では、通常時内容生成部10a5において通常運転における制御データを生成する。なお電源投入後の初めてステップS2000に遷移した時は、初期値を用いて制御データを生成する。初期値は、例えばフラッシュメモリ等に予め出荷時等に記憶させられている値や、統合コントローラ10の起動後に操作者が初期値を入力することから得られる。予め記憶させられている値は、事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果から決定される。次に、ステップS2100へ移行する。
ステップS2100では、通常運転において第1冷媒回路CT1内のショーケースの中で異常状態にあるショーケースがあるか確認する。異常状態にあるショーケースがある場合はステップS2300へ移行し、異常状態にあるショーケースがない場合はステップS2200へ移行する。
なお、冷凍機が異常状態にあるかどうかの判断方法であるが、冷凍機に動作の異常状態を判定する判定部があるので、冷凍機からの異常状態の通知に基づいて判断を行う。なお、ショーケースにも冷却の異常状態を判定する判定部があるものがあるので、当該ショーケースからの冷却の異常状態の通知に基づいて、冷凍機の動作の異常状態を判断してもよい。
ステップS2200では、セレクタ10a4の出力として通常時内容生成部10a5の出力を選択するようにセレクタを切り替える。その後、ステップS2700に移行する。
ステップS2300では、組情報格納テーブルがあるかないか確認する。組情報格納テーブルがない場合はステップS2400へ移行し、組情報格納テーブルがある場合はステップS2500へ移行する。
ステップS2400では、セレクタ10a4の出力として組無考慮制御部10a3の出力を選択するようにセレクタを切り替える。その後、ステップS2700に移行する。
ステップS2500では、組制御内容変更部10a1において、組情報格納テーブルに格納された組情報を用いて、組毎に制御内容を変更させた変更制御データが作成される。組み情報とは、何組に組み分けされたか、及びどのショーケースがどの組に組み分けされたか、などについての情報の事である。その後、ステップS2600に移行する。
ステップS2600では、セレクタ10a4の出力として組考慮制御部10a2の出力を選択するようにセレクタを切り替える。その後、ステップS2700に移行する。
ステップS2700では、制御内容格納部10a6に保存されているステップS2200、ステップS2400、ステップS2600で選択されたセレクタ10a4の出力を、制御部10aの出力として用いて統合コントローラ10が制御を行う。
その後、ステップS2000に戻り、一連の動作を繰り返す。なお、途中で統合コントローラ10の電源がオフされた場合は、次に電源が投入された時にステップS2000へ遷移する。
次に、上で述べたずれ時間情報の算出方法、グループ分けが可能かどうかの判断、グループ分けの方法、グループ分け動作条件の変更の仕方について述べる。
[ずれ時間情報の算出およびグループ分けの方法]
まず時間的なずれに関するずれ時間情報の算出方法について説明する。
図5に、ステップS200において、ショーケースで計測された冷媒配管内部の温度(ショーケース計測温度テーブル10eに格納されている)と、冷凍機で計測された冷媒温度の波形図の一例を示す。
波形600が冷凍機100の波形図を表し、波形601がショーケース101の波形図、波形602がショーケース102の波形図、波形603がショーケース103の波形図、波形604がショーケース104の波形図を表す。冷凍機、ショーケースの各波形600〜604は、初期の温度に変化が無い定常状態から温度が変化する過渡状態を経て温度が目標温度に至って飽和する定常状態へ至っている。
同図によると、冷凍機で計測された冷媒温度の変化の後に(波形図600参照)各ショーケースの計測温度の変化が始まっており(波形図601〜604参照)、冷凍機に対してその相対的距離が近いショーケースから順、すなわち波形図601、602、603、604の順にその温度の変化が開始している。すなわち、各波形図間に時間的なずれが生じている。それは冷凍機に対する相対的距離に従う冷凍機から送出された冷媒の到達する時刻に依存しているためである。また、冷凍機に対してその相対的距離が近いショーケースほどその温度の変化の単位時間当たりの変化量が大きいすなわち同図におけるグラフの傾斜勾配が大きく(例えば波形図601を参照)その波形の変化の程度が急峻であり、冷凍機に対してその相対的距離が遠いショーケースほどその温度の変化の単位時間当たりの変化量が小さいすなわち同図におけるグラフの傾斜勾配が小さくその波形の変化の程度が緩やかである(例えば波形図604を参照)。単位時間当たりの温度の変化の度合いはショーケースに到達した冷媒の到達量に依存しており、それは冷凍機に対する相対的距離に依存しているためであり、冷凍機に対してその相対的距離が遠いショーケースほどその相対的距離が近いショーケースと比べてその冷媒到達量は少なくなるので単位時間当たりの温度の変化の度合いは小さくなる。
なお、上述のステップS100における冷媒送出指令、冷媒送出機冷媒温度計測指令、冷却機器冷媒温度計測指令のタイミングの順番およびそれらタイミング間の時間間隔(以下、タイミング等と書く)は、冷凍機から送出された冷媒の温度を、冷凍機において計測ができ、各ショーケースにおいて計測ができる様な関係のタイミング等であればよい。このタイミング等の適切な値は事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果等から定める事ができる。なお、ステップS100では冷媒送出機冷媒温度計測指令、冷却機器冷媒温度計測指令、冷媒送出指令の順番であるが、上述のように、冷凍機やショーケースにおける過渡状態の温度データが含まれるようなタイミング等であれば、これに限られるものではない。よって、これら3つの指令が略同時になされてもよい。なお、冷媒送出機冷媒温度計測指令、冷却機器冷媒温度計測指令によって収集する温度データは、下で述べるように各計測データは冷凍機やショーケースにおける過渡状態の温度データが一部含まれるような部分的な温度データであってもよい。
このように、本実施形態においては、少なくとも過渡状態におけるデータが必要であり、過渡状態におけるデータは一部であってもよい。
上で触れた各波形図間におけるずれ時間情報を説明する。具体的には、ずれ時間情報として、冷凍機の温度波形図と各ショーケースの温度波形図との間のずれ時間を説明する。すなわち、このずれ時間は、前記冷凍機から各ショーケースへ冷媒が到達するまでの時間の遅延量である。
ずれ時間の算出方法として、まず所定の閾値に至った時間からずれ時間を算出する方法がある。すなわち、冷凍機における冷媒の温度が閾値に至った時刻、および各ショーケースにおける冷媒の温度が閾値に至った時刻の差からずれ時間を算出する。なお、所定の閾値は、過去の施設時における知見や実験結果等から定める事ができる。
この閾値を使用する方法では、統合コントローラ10の構成を簡易化することができ使用メモリ量を削減できる点に利点がある。
他のずれ時間の算出方法として、相関の程度を使用する方法がある。具体的にはずれ時間を、冷凍機で計測された各冷媒温度データの時刻を所定値だけ変化させたデータと1台のショーケースで測定された冷媒配管内部温度のデータとの間の相関の程度を算出した際に、その相関の程度が最大となった場合の値のことであるとする。相関の程度とは、2者間における類似の程度を表す。よって、相関の程度には非類似の程度の概念も含まれ、この場合非類似の程度が最小である場合に相関の程度が最大となる。ここで、この所定値はサンプリング周波数τを、変数である整数kだけ乗算することで量子化された(又は離散化された)値(=kτ)を使用する。よって、整数kを変化させて上記相関の程度を表す相関値Mが最大(値Mmax)となるようなkmaxを算出する演算を行う。なお、最大相関ずれ時間情報は、最大相関ずれ時間であるkmaxτとなる。
上記の説明を、数式を用いて行う。
ショーケースpで計測された時刻tにおける冷媒配管内部の温度Ttのデータをap(t)=(t,Tt)とし、冷凍機qで計測された時刻tにおける冷媒の温度Ttのデータをbq(t)=(t,Tt)とする。t=kτであり、0≦t≦nとする。なおnはステップS200で述べた一定時間に最も近い値で、サンプリング周波数τの整数倍で量子化された値である(ατとする)。よってn=ατである。
よって最大相関ずれ時間であるkmaxτは、
1)b(t)=b(t−kτ)[1≦t≦ατ。b(0)は維持したまま。]
2)M=1/sum(ap(i)−bq(i))2 [sumは0≦i≦nにおける加算]
で示される、式1)、式2)により相関値Mを算出し、順次整数kを0からαまで変化させて式1)、式2)の計算を繰り返し(以下、ループ演算と呼ぶ)、M=Mmaxとなるようなkmaxを算出する。なお、式1)はループ演算の度にデータが1つだけシフトすることを意味している。なお、上記の説明からkやkmaxには次元(dimension)は存在しないが、以下ではずれ時間について便宜上「単位」と言う語を用いる。
以上の内容について図を用いて説明する。
なお、図を用いて説明するのは、把握のし易さから便宜的に用いるのであり、統合コントローラ10において必ずしも波形図を使用してずれ時間を算出している事を意味しない。
計測された温度データとして、温度変化前から温度変化後の飽和した状態に至るまでの全てのデータでなくてもよい。グループ分けの精度の点からデータ数が多い方が好ましく、また全てのデータが計測されている方が好ましいが、相関を演算する事ができれば、図5における冷凍機、ショーケースの各波形図が変化している部分が部分的に欠けている波形図となるような温度データであってもよい。この場合、それに依存して各相関値が低下するが、各ショーケース間での相関値の相対的な大小関係に影響を与える可能性が低いと考えられるからである。例えば、冷凍機の波形図が部分的に欠けている場合には、その温度データが完全でない影響は、全てのショーケースに対して平等に及ぶからである。
また、冷凍機に対して距離が遠いショーケースでは、冷凍機の波形グラフに比べてその波形グラフの傾斜勾配が小さくなっており、その結果冷凍機に対して距離が近いショーケースと比べて算出される各相関値が低くなると考えられるが、ずれ時間算出におけるその差の影響は低いと考えられる。相関値はずれ時間算出のために使用され、またその相関値は1台のショーケースの測定温度データと冷凍機の測定温度データとの間で比較を行う事から、波形グラフの傾斜勾配が小さく冷凍機との距離が近いショーケースと比べて相関値が低くなるとしても、上記式1)、式2)を用いた演算を繰り返し相関値Mを算出することで、M=Mmaxとなるようなkmaxを算出できると考えられるからである。
なお、以上の説明では、両時系列信号の誤差の逆数を相関値Mとしたが、両時系列信号について他の相関関数の演算結果を用いて相関値Mとしてもよい。
図6の図(a)には1台のショーケースで計測された冷媒配管内部の温度と、冷凍機で計測された冷媒温度の波形図が示されている。同図(b)は、同図(a)の波形をτ(k=1の場合の所定値)だけ冷凍機の冷媒温度の波形図を時間軸正方向へ移動させたものである。このことは、同図(c)に示すように冷凍機の冷媒温度データにおいては、一つだけデータをシフトさせたことを意味する。これは、上記式1)に対応している。
なおΔ=ap(i)−bq(i)とすると、Δは例えば同図(a)中に示した長さである(同図(a)はt=3kτの時を表している)。
各ショーケースのずれ時間は組情報格納テーブル10gに記憶される。
上で述べた手法により各ショーケースのずれ時間が算出されるが、そのずれ時間の種類zは第1冷媒回路CT1に属するショーケースの台数Sに対して、z≦Sとなり、通常zはSよりも小さくなる。これはずれ時間が量子化された値をとるからである。なお、ずれ時間の種類zは、ずれ時間の最大値をtM、最小値をtmとした場合にz=tM−tm+1である。
図7に組情報格納テーブル10gの一例を示し、ずれ時間の例とずれ時間の種類を示す。上の行に各ショーケースの番号(以下、ケースNo.と書く)が記載され、下の行にそのショーケースに対応するずれ時間の値が記載されている。同図(a)ではずれ時間の種類は(ずれ時間が1、2、5、11、12、13、14、15単位なので)8種類であり、同図(b)ではずれ時間の種類は(ずれ時間が1単位のみなので)1種類である。なお、同図(a)では3組に組み分けされていることが、同図(b)では複数の組に組み分けができなかったこと(すなわち組は1組のみであること)が模式的に示されている。
同図より、そのずれ時間の値(すなわち単位数)から、同図(a)も同図(b)もケースNo.が大きくなるに連れて冷凍機からの距離が遠くなっていっている事が分かる。
なお、ずれ時間の算出方法は、相関を使用するのであれば、上の例には限られない。組み分けは、ショーケースを適数のグループ数に分類できればよく、従って組に属するショーケースが1台であっても問題は無い。例えば、同図(a)のケースNo.9〜12のショーケースはそれらが所属する組にはショーケースが1台しかない(すなわちNo.9〜12の各々のショーケースしか含まれない)例である。
次に、グループ分けが可能かどうかの判断について説明する。
グループ分けできるかどうかは、ずれ時間の種類zに依存して判断する。
グループ分けしたいグループ数をAとすると、先出のずれ時間の種類zに対してz>=Aでないとグループに分けることができない。例えば、5グループにグループ分けしたい場合に、ずれ時間が1,2,3の3種類(z=3)であるような場合にはグループ分けが不可能である。先出の図7(b)はz=1であるので、複数のグループには分割できない。
よって、グループ分けできるかどうかの条件はz>=A+vである(v≧0)。ここで、vの適切な値は事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果等から定める事ができる。なお、グループ数Aには2または3の値が多く用いられると考えられる。すなわち、複数のショーケースを冷凍機に対して近いものと遠いものとに分けるか、冷凍機に対して近いものと遠いものとその間のものに分ける場合が多いと考えられるからである。つまり、グループ分けは、その保存品の品質の点から制御の内容を変更せねばならないショーケースがある場合に行われるので、冷媒の取り込み量を多くする制御に変更せねばならない点からそのようなショーケースになりうる冷凍機から遠いショーケース群、さらにはそのようなショーケースに対して冷媒の取り込み量を少なくする制御に変更せねばならない冷凍機に近いショーケース群、とを勘案したい場合が多いと考えられるからである。
グループ分けが可能であると判断した場合のグループ分けの方法について説明する。
グループ分けはずれ時間を使用して、例えばクラスタリングの手法を用いて行う。なお、当該クラスタリングによるグループ分けでは、クラスタリングの手法によっては、比較して冷凍機に近いショーケースAと比較して冷凍機から遠いショーケースBにおいて、ショーケースAが比して冷凍機から遠いグループに、ショーケースBが比して冷凍機に近いグループにグループ分けされる場合がある。しかし、このようなグループ分けが生じても、各ショーケース間の相対的な位置関係の些細な差例えば距離の些細な遠近の違いに依存して保存品が融けるケースと融けないケースとに分かれることは生じにくいと考えられるので、品質の低下を起こす可能性は低いと考えられる。
なお、上ではずれ時間、すなわち冷凍機から各ショーケースへ冷媒が到達するまでの時間の遅延量に基づいてグループ分けを行ったが、冷凍機から各ショーケースへの冷媒の到達時刻の差分を夫々検出して、各到達時刻の差分の値に基づいてグループ分けを行ってもよい。この各到達時刻の差分の値は遅延量の間の差に相当するからである。冷媒の到達時刻の差分は、例えば一のショーケースで計測された冷媒温度データと他のショーケースで計測された冷媒温度データとの差に現れる。視覚的見地からは、図5に示されるショーケース101〜104の計測温度波形図の時間軸方向における差dとなって現れる。なお、同図では差dはショーケース101の波形図とショーケース102の波形図の間の差を例示している。
つまり、冷凍機から各ショーケースへの冷媒の到達時刻の差分を検出する方法として、例えば上記の冷凍機で計測された各冷媒温度データの時刻を所定値だけ変化させる代わりに、一のショーケースで計測された冷媒温度データの時刻を所定値だけ変化させ他のショーケースで計測された冷媒温度データとの相関を演算する方法がある。その結果、統合コントローラ10において、冷凍機に対する冷媒送出機冷媒温度計測指令が不要となり、また前記冷媒送出機における前記冷媒の温度の時系列情報の受信が不要となり、統合コントローラ10内部の構成がより簡易化される利点がある。
上記の計測データ全部を使用し相関を取る方法は、閾値を使用する方法と比べて、検出精度が高い。それは計測データ全部を使用していないために閾値の取り方によっては、各ショーケース間の冷媒の温度が閾値に至った時刻の差が変わる場合がありえ、この点で相関を取る方法は比して精度が高い。また、閾値を使用する方法では閾値のとり方によってはその閾値まで温度が変化しないような不具合が生じる可能性がある。
次に、グループ分け動作条件の変更の仕方について説明する。
上述のように、グループ分け動作の条件には、例えば冷媒温度の変化速度、冷媒温度の目標温度などの所定条件や、サンプリング周期τなどがある。また、グループ分けは、ずれ時間の種類zとグループ分けしたいグループ数Aの大小関係によって決まる。よって、グループ分けができるための動作条件の変更であるので、ずれ時間の種類zを増加させるような変更である必要がある。
例えば視覚的見地から説明すると、図5に示された波形図のように、少なくとも各ショーケースの冷媒配管内部温度波形図のお互いが重なり気味とならないこと、すなわち冷媒配管内部温度波形図のお互いが閾値δ秒分以上離れていることが望ましい。なお、この閾値δはその値以上だとショーケース間で冷媒供給量に差が出ると考えられる値で、冷媒配管と冷媒との間の抵抗分、冷媒配管中の気体との間の抵抗分などに依存し、事前に収集された情報やシミュレーション、実験の結果等から定められる。
そこで、冷媒温度の変化速度については、冷媒温度の変化速度を急峻にする変更が考えられる。冷媒温度の変化量を急峻にすることで、相対的に冷凍機に近いショーケースと比較して冷凍機から遠いショーケースとの間で時間軸に対する温度の変化に散らばりが発生するものと考えられるからである。
冷媒温度の目標温度については、より低くする変更が考えられる。冷媒温度の目標温度を低くする事で目標温度への到達時間が長くなり、相対的に冷凍機に近いショーケースと比較して冷凍機から遠いショーケースとの間で時間軸に対する温度の変化に散らばりが発生するものと考えられるからである。
サンプリング周期τについては、その周期を短くする変更が考えられる。サンプリング周期を短くすることで、冷凍機の冷媒温度データおよび各ショーケースの冷媒配管内部温度データをより詳細にサンプリングする事ができるので、相対的に冷凍機に近いショーケースと比較して冷凍機から遠いショーケースとの間で時間軸に対する温度の変化の違いを発じさせることができるものと考えられるからである。
[グループ分けの決定画面]
図8に統合コントローラ10の液晶ディスプレイ等の表示部10hにおける、グループ分けの結果を操作者に確認を促す画面の表示例を示す。同図の場合は、表示欄DP1にグループナンバ1〜4が表示され、その4つのグループにショーケースがグループ分けされており(表示欄DP2)、グループナンバが大きいほど冷凍機からの距離が遠い。なお、画面下方の表示欄MSにこのグループ分けで了解するかの確認の文章が表示され、画面右下すなわち表示欄MSの右方に「登録」、「再」、「手動」と表示されている。「登録」の表示に対応した入力部10iにおけるスイッチSW1を押すなどすると現在表示されているグループ分けが登録され、「再」の表示に対応したスイッチSW2を押すなどすると図3に示したステップS100〜ステップS900のグループ分けの動作を行い再度グループ分けを行う。「手動」の表示に対応したスイッチSW3を押すなどすると、操作者が表示されているグループ分けについて手動により変更を行う事ができる。例えば、ショーケースの庫内に保存される保存品の種類に応じて操作者が手動でグループ分けの変更を行うことができる。グループナンバ2に属するショーケース(例えばケースNo.6)で保存品が肉魚類であるものを、異常時にその品質劣化を避けたい場合には、手動でグループナンバ3に属する様に変更ができる。なお、表示部10hと入力部10iは一体型のタッチパネルであってもよい。同図はタッチパネルの場合を表しており、符号SW1〜SW3の示すスイッチが表示部10h内に存在している。
[通常運転時における異常時の際の制御データの変更について]
なお、グループ分けができた場合には、試運転後の通常運転における異常時などにおいて当該グループ毎にショーケースの制御データが変更される。すなわち、正常時動作において、例えば操作者の入力データや、定められた冷却システム動作用のアルゴリズムに従って制御部10aが各ショーケースの設定温度を決定した後に、異常時において組制御内容変更部10a1は組情報格納テーブルに対応して決定された設定温度に変更する制御を行う。例えば、3つに組み分けを行った場合には、冷凍機から一番遠いグループは設定温度を−1℃だけ変更させ、冷凍機に近いグループは設定温度を+1℃だけ変更させる。なお、どちらか一方の変更だけでもよい。その間のグループは設定温度+0℃だけ変更させる(変更無し)。因みに、制御データの変更とは、グループ毎に変更された設定温度などの制御データがグループ間で同じとなる場合があることを排除するものではない。
なお、ショーケースにおいては、設定温度を1℃以上変化させると、その保存品の品質の点から、設定温度の変更は−1〜+1℃でされる事が多く、−3〜+3℃の範囲以上で使用されることは少ない(なお、必要に応じてこの範囲以外でも設定できることを排除するものではない)。そこで、本実施形態でも、設定温度の変更は−1〜+1℃で行うものとする。ただし、必要に応じてこの範囲以外でも設定できるものとする。
また、冷凍機から一番遠いグループの庫内の保存物の品質だけでなく、冷凍機に近いグループの庫内の保存品の品質も保障する点から、冷凍機から一番遠いグループの設定温度、冷凍機に近いグループの設定温度を上記のような値に設定させた上で、各グループのその後の温度を計測し、その温度変化に応じて適応的に設定温度を更に変更させてもよい。こうすることにより、冷凍機から一番遠いグループの庫内の温度を適温にすることのみに気を取られ、冷凍機に近いグループの庫内の温度が上昇しているのに対応できず、その庫内の保存品の品質を保障できない状況となる、といった点を改善する事ができる。
設定温度が低い値に変更されることで、弁の開度が増加して当該ショーケースへの冷媒の取り込み量が増加する。また設定温度が高い値に変更されることで、弁の開度が減少して当該ショーケースへの冷媒の取り込み量が減少する。
なお、上では庫内の設定温度を変化させる例で説明を行ったが、ショーケースにおける弁開度とショーケースの庫内における温度とは密接に関連しているので、弁開度を直接変化させてもよい。その場合、正常時の値に対して、上で述べたような設定温度の変更が−1〜+1℃となるような弁開度に変化させる。
以上により、組制御内容変更部10a1が冷凍機とそのショーケースとの距離に依存して設定温度を変更することで、組考慮制御部10a2が冷凍機とそのショーケースとの距離に依存した組制御内容変更部10a1からの制御データに従った制御データで制御を行い、その結果、設定温度が変更されたショーケースの弁の開度が変更され、当該ショーケースへの冷媒の取り込み量がその冷凍機との距離に依存して変化する。
なお、グループ分けαにおける冷却システムにおける統合コントローラにおいては、冷凍機に対する距離の違いにより各冷却機器の間で冷媒の流入量に差が生じる場合であっても、その各冷却機器の冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮しない、すなわち組制御内容変更部10a1で生成された変更制御データに従った制御データの変更を行わない場合もある。この場合の動作について以下で説明する。
図3で説明したように、ステップS500でずれ時間情報を使用してグループ分けが可能かどうかの判断を行いグループ分けができない場合にステップS700へ移行し、ステップS700において条件を変えてグループ分けを行い限度回数以上グループ分けを試みてもグループ分けができなかった場合はグループ分けを行わないでステップS800へ移行し、ステップS800では例えば各ショーケースはそれまでの制御データを踏襲した動作などを行う。例えば図2を参照すると、それまでの制御に使用されていた制御内容格納部10a6に格納されている制御データと同じ制御データを通常時内容生成部10a5が作成し、制御部10aから出力する。
視覚的見地から説明すると、限度回数だけ試行してもグループ分けが行えなかったと言う場合は、図5に示された波形図のように、冷媒配管内部温度波形図のお互いが閾値δ秒分以上離れておらず、閾値δ秒未満すなわち各ショーケースの冷媒配管内部温度波形図のお互いが重なり気味となっている場合を意味する。このことは同時に各ショーケースの冷媒供給量に差が無いことを意味しており、グループ分けをする意味が低い事になる。よって、このような場合にまでグループ分けを行う必要は無く、またグループ分けを行わなくても冷凍機からの距離に依存した各ショーケースにおける保存品の品質における問題は発生する可能性は低いと言える。
このように、グループ分けαにおける統合コントローラは、各冷却機器の冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮しない場合についても対応できる。
以上により、各ショーケースの冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮して複数のショーケースの制御データを変更する冷却システム、冷却方法および冷却コントローラを提供することができる(なお、各冷却機器の冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮しない場合についても対応できる)。このことにより、冷媒流入の難易性が比較的高いショーケースの組と冷媒流入の難易性が比較的低いショーケースの組の前記冷媒の流入の難易性を近づけさせることができ、二者間の前記冷媒の流入の格差を低減することができる。
[グループ分けβ:通常運転時におけるグループ分けについて]
以上では、グループ分けαについて説明を行った。
グループ分けβにおいては、複数のショーケース内部への冷媒の流入の難易を示す冷媒流入難易指数に基づいて、各ショーケースの制御の内容を異ならせる冷却システムについて述べる。以下の説明では、各ショーケースにおける弁の開度の制御の内容を、異常状態以外の状態である正常状態における内容から異常状態に対応する内容へ変更する例で説明を行う。
グループ分けαにおいては、組分け部10dにおけるグループ分けは、冷却システムを導入する初期の段階、例えば通常運転を行う前のシステムの動作確認などがなされる試運転時において行う前提で説明を行った。なお、統合コントローラ10が変更制御データを使用して(すなわち、各ショーケースの制御の内容を通常時とは異ならせて)制御を行うのは、冷却システムが通常運転を行っている状態のときであり、冷却システムが正常状態から異常状態となった場合であった。
しかし、グループ分けを試運転時に行った場合には、通常運転における異常時においてはそのグループ分けでは保存品の品質面からは不十分となる場合がある(以下、このことをグループ分けの精度が低いと呼ぶ)。それは、例えば、実際の通常運転ではショーケースにおける庫内の保存品に依存してショーケースの冷却特性が変化するので、そういった要因を加味しないで距離のみに依存しているために生じると考えられるからである。また、例えば、実際の通常運転においては店内の空調等の外的要因の影響によりショーケースの冷却特性が影響を受ける場合もあるので、そういった要因を加味しないで距離のみに依存しているために生じることも考えられる。また、例えば、試運転時に行ったグループ分けを更に細分化する必要性が生じる場合もある。
そこでグループ分けβにおいては、通常運転時において、動的に以下で述べるようなグループ分け(以下、再グループ分けと呼ぶ)を行うことで、より精度の高いグループ分けを行う。このことについて以下で詳しく述べる。なお、グループ分けαとの差異点について主に説明を行い、重複する部分については原則説明を割愛する。
またグループ分けβでは、試運転時において、グループ分けαで述べたようなグループ分けを行った後、通常運転時において、再グループ分けを行う例で説明を行う。なお試運転時のグループ分け方法は、グループ分けαで述べた方法以外が使用されてもよい。
グループ分けβにおける冷却システムの構成は、図1の冷却システム1000において統合コントローラ10を統合コントローラ10’に変更した構成である。
冷凍機100、ショーケース101〜104、冷凍機200、およびショーケース201〜204等の設備機器は制御装置たる統合コントローラ10’と電気的に通信線500を通じて接続されている。統合コントローラ10は、少なくとも設備機器のうちのこれら冷凍機、ショーケースの制御を行い、それらの機器から状態のデータを収集する。つまり、通信線500は統合コントローラ10’が冷凍機およびショーケースを制御するために又はデータを収集するために使用される。なお、統合コントローラ10’は、既述のように統合的に各設備機器の制御を行う。
図9に本実施形態における統合コントローラ10’の構成を示す。
統合コントローラ10’と図2に示した統合コントローラ10の構成との違いは、ずれ時間情報算出部10c、タイマ10fを有せず、代わりに冷媒流入難易指数算出部10k、ショーケース弁開度テーブル10jを有している点であり、組分け部10d’の機能が組分け部10dと異なる点である。
弁開度テーブル10jは、ショーケース101〜104、201〜204の各々で計測された弁101a〜104a、弁201a〜204aの時間毎の開栓率(開度)を記憶しているテーブルである。
組分け部10dがずれ時間情報算出部10cで算出されるずれ時間情報に基づいてグループ分けを行ったのに対し、組分け部10d’では後述のように冷媒流入難易指数に基づいてグループ分けを行う。なお、組分け部10d’で組分けされたショーケースに関する情報は、組情報格納テーブル10gに格納される。
なお、グループ分けβにおいては、グループ分けαで説明した方法などによって試運転時に行ったグループ分けに対して、通常運転時において再グループ分けを行うので、再グループ分けの初回に試運転時に記憶された組情報格納テーブル10gの内容に冷媒流入難易指数を追記する。以後、再グループ分けの都度冷媒流入難易指数を上書きしていく事になる。
冷媒流入難易指数算出部10kは複数のショーケース内部への冷媒の流入の難易を示す冷媒流入難易指数を算出する。なお、ショーケース内部への冷媒の流入とは、エバポレータなどのショーケース内部に存在する冷媒配管への冷媒の流入のことである。
冷媒流入難易指数は、ショーケース内部への冷媒の流入の困難さを表す指数のことであり、各ショーケースに関する温度、具体的にはショーケース庫内の設定温度と定常状態で計測された庫内温度との差分温度(「庫内温度−設定温度」の式で求まるとする)や、弁の開度、又は各ショーケースにおける冷媒の圧力など、ショーケースにおいて冷媒の供給の困難さに相関があると考えられる値に依存して求まる値、またはそれらのうち幾つかを組み合わせた値のことである。ショーケース内部への冷媒の流入が困難であると、設定温度に対して庫内温度は充分低下しないと考えられ、また、設定温度と庫内温度との差分温度が小さくても庫内温度を設定温度に到達させるべく弁の開度が全開に近くなっていることも考えられ、弁開度も加味されるべきである。さらに設定温度と庫内温度との差分温度が小さくても庫内温度を設定温度に到達させるべくショーケース内部の冷媒配管における冷媒の圧力も通常とは異なっていることもありうる。なお、ショーケースにおける冷媒の圧力とは、ショーケース内部に存在する冷媒配管の内部の圧力のことである。
なお、通信部10bには、上で述べたような、複数のショーケースに関して計測された温度、それらのショーケースに備えられた弁の開度、ショーケースにおける冷媒の圧力などのうちの少なくとも一つに関する値、例えば差分温度値、弁の開度値、冷媒の圧力値を含む冷媒流入情報が入力される。
因みに、冷凍機から当該ショーケースまでの冷媒配管の長さのみや冷凍機とショーケースの位置関係のみで必ずしも当該ショーケースへの冷媒の供給の困難さの相関を捉える事ができる訳ではないと考えられるので、冷媒配管の長さのみや位置関係のみに依存して冷媒流入難易指数が求められることは好ましくなく、冷媒配管の長さや位置関係に上記差分温度や、弁の開度、又は冷媒の圧力等を加味して使用されるのが好ましい。
次に、上で述べた内容も含めて本実施形態に係る冷却方法について説明する。
まず、グループ分けβに係る冷媒流入難易指数に基づいてグループ分けを行う方法について説明する。ここでは、冷媒流入難易指数として、各ショーケースにおける設定温度と計測された庫内温度との差分温度および弁の開度を使用する場合の例で説明を行う。なお、ショーケースにおける冷媒供給の困難さに相関があると考えられることから、ショーケースにおける冷媒の圧力も併せて使用した場合の例、および当該冷媒の圧力のみを使用した場合の例も容易に想到できることからその説明は省略する。
差分温度や弁の開度は、冷媒の圧力に比べて、その計測が困難ではなく、またその値を変更させる制御が困難ではないので、差分温度や弁の開度を用いるのが好ましい。また、差分温度のみを使用した場合の例、および弁の開度を使用のみを使用した場合の例も容易に想到できることからその説明は省略する。
[組分け部10d’におけるグループ分けのフロー]
図10に、グループ分けβに係る冷媒流入難易指数に基づく再グループ分けの動作フロー図を示す。
各設備機器および統合コントローラ10’の各動作が通常状態にある時に、統合コントローラ10’からショーケース101〜104、201〜204に対し周期的に通信を行ってデータ収集等を行うが、例えばそれが終了する毎に同図の再グループ分けルーチンを実行する。このデータ収集等の通信周期は、統合コントローラ10’が、頻度よく且つ全ての各設備機器の状態把握、動作設定等を行えるような周期であり、例えばその値は、通信線500に接続された設備機器の台数にも依存するが1分程度の値である。
ステップS3000では、上述のデータ収集により、各ショーケースの庫内の設定温度、各ショーケースで計測された庫内の温度、各ショーケースにおける弁の開度が得られる。これらの値はショーケース計測温度テーブル10e、ショーケース弁開度テーブル10j等に格納される。
ステップS3100では、再グループ分けのタイミングかどうか、すなわち組情報格納テーブル10gを上書きするタイミングかどうかの判断を行う。再グループ分け(組情報格納テーブルの上書き)は、所定の周期で行われる。所定周期は1日に2回程度でもよく、例えば12時間毎に行われてもよい。これは以下の理由による。
すなわち、組み情報は、通常時には基本的には短時間で大きく変化するものではないので、再グループ分けを頻繁に行う必要はないからである。なお、操作者が任意に変更できるものであってもよい。例えば、夜に比べて昼に大きくショーケースの状態が変わるような店舗の場合ならば、昼には頻繁に再グループ分けを行った方がその時々のショーケースの状態が的確に反映された組情報を作成することができる。このように、店舗にあわせた再グループ分けの周期を指定してもよい。
また、再グループ分けは異常状態時においては頻繁に行われてもよい。
すなわち、冷凍機に異常が生じた場合には、組み情報を元にショーケースの設定をグループ毎に変更させて、冷媒流入の難易性が比較的高いショーケースの庫内陳列物の品質問題の対応を図っているので、短時間の間に各ショーケースの状態が大きく変わることが起こりうる。よって、この場合には、例えば5分毎に再グループ分けを行って、都度、冷媒流入の難易性が比較的高いショーケースのグループの更新を行い、適応的に当該ショーケースの品質問題の対応を行う事が考えられる。
組情報格納テーブルの上書きのタイミングであればステップS3200へ移行し、組情報格納テーブルの上書きのタイミングでなければ当該再グループ分けフローを終了する。
ステップS3200では、冷媒流入難易指数算出部10kにおいて、ステップS3000で得られた各ショーケースの庫内の設定温度、各ショーケースで計測された庫内の温度、各ショーケースにおける弁の開度から、冷媒流入難易指数として、各ショーケースの設定温度と庫内温度との差分温度およびその平均値、弁開度の平均値が計算される。
ここで平均値とは、次に述べる平均値のことである。すなわちステップS3200が2時間毎に実行され、ステップS3000におけるデータ収集が1分毎に行われる場合、データは120(分)×1(データ/分)=120データ分得られる。よって平均値とは、これら120個のデータの平均値のことである。
ステップS3300では、組情報格納テーブルの上書きを行い、再グループ分けを行う。この後、当該再グループ分けフローを終了する。
以下において、組情報格納テーブルの上書きおよび再グループ分けについて、各ショーケースにおける差分温度の平均値、および弁開度の平均値を使用して行う例で説明する。
ステップS3300では、まず差分温度の平均値を使用して組情報格納テーブルの上書きおよび再グループ分けを行う。すなわちこの場合の冷媒流入難易指数は差分温度の平均値である。なお、もし全てのショーケースの差分温度の平均値のばらつきが所定の閾値より小さい場合には、弁開度の平均値も使用して組情報格納テーブルの上書きおよび再グループ分けを行う。この場合の冷媒流入難易指数は弁の開度の平均値または差分温度の平均値と弁の開度の平均値の双方となる。
まず最初に差分温度の平均値を使用する理由は、ショーケースにおいて冷媒流入の困難性はその差分温度に反映され易いからである。しかし、各ショーケースの差分温度の間においてそれらの値に大きな差がない場合でも、ショーケースによっては弁が大きく開くことでショーケース内部への冷媒の吸入量を確保している場合がある。ショーケースにおいて設定温度と庫内温度との差分温度が小さい場合であっても弁開度が大きい場合は、そのショーケースにおいて冷媒流入の困難性が高い事を意味していることから、各ショーケースの差分温度において大きな差がないにも関わらず弁開度が大きいショーケースというのは他のショーケースと比べて冷媒流入の困難性が高いということである。よって、全てのショーケースの差分温度の平均値のばらつきが所定の閾値より小さい場合には、次に弁開度の平均値を使用して行う。
以上により得られた組情報格納テーブル10gの一例を図11に示す。同図に寄ると、図7(a)に示された組情報格納テーブル10gに冷媒流入難易指数である差分温度の平均値、弁開度の平均値が追記されている。
次に再グループ分けにおけるショーケースの分け方について述べるが、再グループ分けにおいてもクラスタリングの手法を使用する。以下では、冷媒流入の難易性が比較的高いもの、比較的低いもの、それらの間、の3組に分けるものとする。なお、上記グループ分けα、グループ分けβにおいてショーケースの分け方では、クラスタリングを使用する手法に限らず、所定の閾値と差分温度の平均値や弁開度の平均値等とを比較する事で行ってもよい。所定の閾値は、実験や過去の動作履歴などを使用することで決定する事ができる。すなわち、所定の閾値は、シミュレーション結果や過去の異常時の動作履歴から、そのショーケースで要求される冷却容量を充分満足する程度の冷媒を受け取れたショーケースと、充分満足する程度の冷媒を受け取れなかったショーケースとを振り分ける値であり、この値を使用することで将来の異常時にも、要求される冷却容量を充分満足する程度の冷媒を受け取れたショーケースと、充分満足する程度の冷媒を受け取れなかったショーケースとを振り分けうる。
図12は、偏差温度の平均値を使用してクラスタリング(組み分けとも呼ぶ)する場合について説明する図である。
1回目のクラスタリングでは、各ショーケースの偏差温度の平均値の差が0のもの同士が組となっている。
2回目のクラスタリングでは、各ショーケース(1回目に組となっているものに対しては組も含む)の偏差温度の平均値の差が1のもの同士が組となっている。この場合、2回目に組となったその組の偏差温度の平均値は、そのショーケース(1回目に組となっているものに対しては組も含む)の偏差温度の平均値を更に加重平均したものを使用する。
なお、2回目における楕円で囲んだ部分におけるクラスタリングでは、ショーケース1,2の組とショーケース3,4の組およびショーケース3,4の組とショーケース5,6の組が各々偏差温度の差が1で同じであり、それら3つの組のどの2つを組み合わせるか決定する必要がある。そこで、例えば状態の良い方同士(すなわち偏差温度が小さいもの同士)を組み合わせるなどとすることができる。これにより同図では、ショーケース1,2の組とショーケース3,4の組を次の組としている。
3回目のクラスタリングでは、各ショーケース(2回目以前に組となっているものに対しては組も含む)の偏差温度の平均値の差が1.5のもの同士が組となっている。
以上により、3回目に全ショーケースが3組に組み分けされたので、クラスタリングを終了する。
図13は、弁開度の平均値を使用してクラスタリングする場合について説明する図である。
1回目のクラスタリングでは、各ショーケースの弁開度の平均値の差が0.1%のもの同士が組となっている。この場合、組となったその組の弁開度の平均値は、そのショーケースの弁開度の平均値を加重平均したものを使用する。
2回目のクラスタリングでは、各ショーケース(1回目に組となっているものに対しては組も含む)の弁開度の平均値の差が0.2%のもの同士が組となっている。この場合、2回目に組となったその組の弁開度の平均値は、そのショーケース(1回目に組となっているものに対しては組も含む)の弁開度の平均値の加重平均をとったものを使用する。
3回目のクラスタリングでは、各ショーケース(2回目以前に組となっているものに対しては組も含む)の弁開度の平均値の差が1.35%のもの同士が組となっている。この場合、3回目に組となったその組の弁開度の平均値は、そのショーケース(2回目以前に組となっているものに対しては組も含む)の弁開度の平均値の加重平均をとったものを使用する。
以上の手順を繰り返す事により、7回目に全ショーケースが3組に組み分けされたので、クラスタリングを終了する。なお、同図の例では、ショーケース12は何れの回でも組に組み込まれなかったことを示している。
以上により、クラスタリングが終了する。なお、図11の組情報格納テーブル10gには、12のショーケースが3つの組に組み分けされている事が模式的に示されている。
[制御データの変更について]
上記の組み分けの例では、異常時において、冷媒流入の難易性が比較的高いショーケースの組、比較的低いショーケースの組、それらの間のショーケースの組の3つの組毎に通常時に対して制御内容を変更させて制御を行う。
グループ分けβにおける変更制御データを使用した統合コントローラ10’の制御の動作は、組み分け情報などの内容が更新された組情報格納テーブル10gを使用する点が異なるだけで、組情報を使用する図4のフロー図で示される動作から容易に想到できる。よって詳しい説明は省略する。
なお、その際、冷媒流入の難易性が比較的高いショーケースの組(本発明における第一組に相当)は冷凍機から一番遠いグループに、冷媒流入の難易性が比較的低いショーケースの組(本発明における第二組に相当)は冷凍機に近いグループに対応させて適宜考えればよい。
上の例では、差分温度の平均値と弁開度の平均値双方を用いた例であったが、同様に考える事で差分温度の平均値のみ、弁開度の平均値のみ、さらには冷媒圧力の平均値単体、またはこれらの任意の組み合わせ等を用いることもできる。
また、統合コントローラ10’の液晶ディスプレイ等の表示部10hにおける、グループ分けの結果を操作者に確認を促す画面およびそこでの入力等については、図8の表示例およびそこでの動作と同じである。よって詳しい説明は省略する。
(効果)
以上により、ショーケースにおいて庫内における保存品の品質が低下することが改善された、すなわち冷却品質が低下することを抑制する冷却システム、冷却方法、冷却コントローラを提供することができる。
さらに、外的要因や庫内の保存物の変化などの影響で前回行ったグループ分けでは精度が低下する場合があっても、またグループ分けが行われなかった場合でも、グループ分けが所定の周期で何回も行われる事から、上記グループ分けを繰り返す事で精度を向上させたグループ分けを行う事ができ、いわゆるリカバリ(recovery)効果も有している。すなわち、適切でないグループ分けであっても、その場合の差分温度、開度等の計測結果から新たなグループ分けがなされ、これを繰り返す事で精度を向上させたグループ分けが達成できる。また、あるタイミングでステップS3300における組分けが達成されなかったとしても次のタイミングでグループ分けがなされればよい。
このことにより、冷媒流入の難易性が比較的高いショーケースの組と冷媒流入の難易性が比較的低いショーケースの組の前記冷媒の流入の難易性を近づけさせることができ、二者間の前記冷媒の流入の格差を低減することができる。
(その他の実施形態)
なお上では、本実施形態では試運転時にグループ分けを行い、通常運転時において再グループ分けを行う方法について説明を行ったが、試運転時におけるグループ分けを行わず、通常運転時において初めてグループ分けを行う方法であっても良い。この場合の初回のグループ分けの方法は、上で述べた再グループ分けの時の方法であるのは言うまでもない。
また、再グループ分けは、試運転時においてグループ分けされたものを更に細分化するグループ分けであってもよく、通常運転時に行ったグループ分けを更に細分化するグループ分けであってもよい。
これらの方法は上の実施形態で述べてきた事から容易に想到できるので詳細な説明は行わない。
(冷却プログラム)
なお、上記の各実施の形態における冷却コントローラは、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどで実現できる。また、ソフトウェア的には、メモリにロードされた冷凍冷蔵機能のあるプログラムなどによって実現される。図2および図9には、ハードウェアおよびソフトウェアによって実現される冷凍冷蔵の機能ブロックが示されている。ただし、これらの機能ブロックが、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、あるいは、それらの組合せ等、いろいろな形態で実現できることは言うまでもない。
つまり、冷却システム1000において使用される汎用コンピュータを統合コントローラ10、統合コントローラ10’として動作させる冷却プログラムは、図3、図4、図10で示されている流れ図の動作を行う。
すなわち、図1を使用して説明した冷却システム1000で使用される統合コントローラ10として動作するコンピュータで使用される冷却プログラムであって、冷凍機100と複数のショーケース101〜104が冷媒配管300、301に接続されることで一つの集合たる第1冷媒回路CT1をなしており、冷凍機100に対して冷媒送出指令、冷凍機100に対して冷媒送出機冷媒温度計測指令、および複数のショーケース101〜104全部に対して冷却機器冷媒温度計測指令を出し、冷媒配管温度の時系列情報を各ショーケース101〜104から受信し、かつ冷媒温度の時系列情報を冷凍機100から受信する通信ステップを含んでいる。また、通信ステップにより受信された冷媒温度の時系列情報と、複数のショーケース101〜104の夫々の冷媒配管温度の時系列情報との間におけるずれ時間情報を算出するずれ時間情報算出ステップと、ずれ時間情報算出ステップにより算出されたずれ時間情報に基づいて、複数のショーケース101〜104を第1冷媒回路CT1の中において複数のグループに分けることが出来るか否かの判断を行い、複数のグループに分けることが出来ると判断した場合に複数のショーケース101〜104を複数のグループに分ける組分けステップを含む(以上、図3参照)。
さらに、分けられた複数のグループ毎に、複数のショーケース101〜104の制御の内容の変更を行うための変更制御データを生成する組制御内容変更ステップと、組制御内容変更ステップで生成された変更制御データに従ってショーケース101〜104の制御を行う組考慮制御ステップを含んでいる。
なお、前記組分けステップにより、複数のショーケース101〜104を第1冷媒回路CT1の中において複数のグループに分けることが出来ないと判断した場合に、組制御内容変更ステップで生成された変更制御データを使用せずに、変更前の複数のショーケース101〜104の制御データを使用してショーケース101〜104の制御を行う組無考慮制御ステップを有する(以上、図4参照)。
以上により、各ショーケースの冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮して複数のショーケースの制御データを変更する冷却プログラムを提供することが出来る。
さらに、本実施形態の冷却プログラムでは、各冷却機器の冷凍機に対する相対的な位置の関係を考慮しない場合についても対応できる。
また、図1を使用して説明した冷却システム1000で使用される統合コントローラ10’として動作するコンピュータで使用される冷却プログラムであって、冷凍機100と複数のショーケース101〜104が冷媒配管300、301に接続されることで一つの集合たる第1冷媒回路CT1をなしており、統合コントローラ10’は通信線500を使用して冷凍機100、複数のショーケース101〜104とからデータの受信を行うステップを有しており、複数のショーケース101〜104内部への冷媒の流入の難易を示す冷媒流入難易指数(複数のショーケースに関して計測された温度、複数のショーケースに備えられた冷媒を取り入れるための弁の開度、複数のショーケースにおける冷媒の圧力)に基づいて、複数のショーケース101〜104を、冷媒の流入の難易性が比較して高い組である第一組と低い組である第二組を少なくとも含む2以上の適数の組に分ける組分けステップと、複数のショーケースにおいて必要とされる冷媒の量を満たす程度の冷媒を送出できない異常状態において、分けられた適数の組毎に、複数のショーケース101〜104の制御の内容の変更を行うための変更制御内容を生成する組制御内容変更ステップ、すなわち複数のショーケースの設定温度を第一組において異常状態となる前に比べて下降させる内容へ変更させる変更制御内容を生成し、または、複数のショーケースの設定温度を第二組において異常状態となる前に比べて上昇させる内容へ変更させる変更制御内容を生成する組制御内容変更ステップ(複数のショーケースの開度を第一組において異常状態となる前に比べて上昇させる内容へ変更させる変更制御内容を生成し、または、複数のショーケースの開度を第二組において異常状態となる前に比べて下降させる内容へ変更させる変更制御内容を生成し、または、複数のショーケースの冷媒の圧力を第一組において異常状態となる前に比べて上昇させる内容へ変更させる変更制御内容を生成し、または、複数のショーケースの冷媒の圧力を第二組において異常状態となる前に比べて下降させる内容へ変更させる変更制御内容を生成してもよい)と、当該組制御内容変更ステップで生成された前記変更制御内容に従ってショーケース101〜104の制御を行う組考慮制御ステップを有している。
以上により、ショーケースにおいて庫内における保存品の品質が低下することが改善された、すなわち冷却品質が低下することが改善された冷却プログラムを提供することができる。
(空調システムについて)
以上の各実施形態では、冷設機器を例に本願発明の説明を行ってきたが、空調機器を含むシステムであっても同様の効果が得られる。この場合の実施形態については、冷凍機を室外機に、ショーケースを室内機に、対象物を室内機が冷房する室内の人、動物、家具等に、冷媒回路を空調回路に対応させて考える事で上で述べてきた事から容易に想到できるので説明は割愛する。なお、本発明で言う所の冷却機器が空気調和機の室内機である場合、本発明で言う冷却機器に関して計測された温度とは、当該室内機が冷房する室内の温度であり、冷房する範囲が室内の一部のときはその一部の範囲の温度のことである。
室内機では操作者により設定温度が設定される事で、室内機中のエバポレータの中を流れる冷媒により気温を低下させて前記設定温度へ向けて室内などが冷房される。この冷房動作は、設定温度と室内の実際の温度(気温)との差に基づいて行われ、単純には、例えばその差が大きいと冷房動作は急速動作となり、例えばその差が零に近づくと冷房動作は停止される。
空調分野については、温度変化に対する人の快適性が主に問題となり、異常時に上述のような各室内機の室外機に対する位置関係や冷媒の流入の困難さを考慮して各室内機の制御を変更する対応をすることで、例えば室外機から遠い距離にある室内機でも人の快適性を担保するように対応できる。
また、冷設分野では冷却機器において保存している保存品の温度変化に対する品質などが主に問題となり、異常時に上述のような各ショーケースの冷凍機に対する位置関係や冷媒の流入の困難さを考慮して、各ショーケースの制御を変更する対応をすることで、例えば冷凍機から遠い距離にあるショーケースでも品質の劣化を起こさないように対応できる。なお、冷設機器における冷媒の流入量すなわち冷媒の流入の困難性や各冷却機器の冷凍機に対する位置関係の影響を受ける冷媒の到達量に依存して保存品を保存する温度が主に左右されるので、冷設分野において各冷却機器の冷凍機に対する位置関係を考慮することの重要性は高い。食品における安全性が、空調分野における快適性に比べて極めて重要性が高いからである。
また、冷却システムには冷設機器と空調機器が並存していてもよい。冷媒回路と空調回路は各々独立に動作し各回路におけるグループ分け等において相互依存性が無いので、冷設機器による実施形態と空調機器による実施形態の双方を加味して考えればよい。
以上により、空気調和機において冷房の機器が弱くなり不快感が増すことが改善された、すなわち冷却品質が低下することが改善された冷却プログラムを提供することができる。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。