JP2010082688A - β型チタン合金板の製造方法及びβ型チタン合金板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 異方性が抑制されたβ型チタン合金板およびその製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】 β型チタン合金を、β変態点以下の温度及び35%以上の圧下率で1方向に1次熱間圧延した後、β変態点以下の温度及び35%以上80%以下の圧下率で1次熱間圧延方向に対して70〜90°方向に2次熱間圧延するβ型チタン合金板の製造方法などを提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、β型チタン合金板の製造方法及び該製造方法で製造されたβ型チタン合金板に関する。
従来、比較的軽量で高強度であり、強度延性バランス及び疲労強度の点で優れ、自動車エンジン部分や航空機部品に用いられる材料として有望視されているチタン合金としては、例えば、Ti−6Al−4V系合金のようなα+β型チタン合金が知られている。α+β型チタン合金から製造されたα+β型チタン合金板については、様々な研究がなされ、上記のような用途における材料として実用化されている。
一方、チタン合金のうちβ型チタン合金は、冷間加工性に優れるチタン合金として知られている。β型チタン合金は、時効処理により高強度化することが知られているところ、強度延性バランスの点、疲労強度の点で、さらに優れたβ型チタン合金板が要望されている。
そこで、β型チタン合金板の強度延性バランスを向上させ疲労強度を向上させ得るβ型チタン合金板の製造方法、例えば、比較的安価に実施できる熱間圧延を採用し、β型チタン合金材をβ変態点以下で加工するβ型チタン合金板の製造方法が提案されている(特許文献1)。また、熱間圧延、所定の溶体化処理、および所定の冷間圧延を順次おこなうβ型チタン合金板の製造方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、この種のβ型チタン合金板の製造方法は、圧延を採用するが故に、異方性を生じさせやすいという問題があり、板材において圧延方向と圧延直交方向との特性を大きく異ならせ得るおそれがある。詳しくは、圧延直角方向の強度が高くなり、延性が大きく低下し、β型チタン合金の特徴である冷間加工性が圧延直角方向において比較的低くなるという問題がある。
チタン合金板の異方性を抑制させ得る製造方法としては、α+β型チタン合金板の製造方法ではあるものの、熱間圧延後に、この熱間圧延方向と異なる方向で冷間圧延を施すことで異方性の発生を抑制する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、斯かるα+β型チタン合金板の製造方法によって製造されたα+β型チタン合金板は、圧延直角方向の延性が圧延方向の延性に比べて低く、未だ異方性が比較的高い。
特開2004−156064号公報 特開2003−55749号公報 特許第2871292号公報
そこで、圧延方向の延性に比して圧延直角方向の延性が低くなるなどの異方性が抑制されたβ型チタン合金板を製造し得るβ型チタン合金板の製造方法が要望されている。
本発明は、上記の問題点、要望点等に鑑み、異方性が抑制されたβ型チタン合金板およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、異方性を生じさせやすいα相が存在するβ型チタン合金板の製造方法について、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、異方性をより大きくさせやすいと考えられるβ変態点未満の温度での熱間圧延を施すにも関わらず、圧延方向および圧下率を変化させることでβ型チタン合金板の異方性の発生を抑制できることを見出したのである。
上記課題を解決すべく、本発明に係るβ型チタン合金板の製造方法は、β型チタン合金を、β変態点以下の温度及び35%以上の圧下率で1方向に1次熱間圧延した後、β変態点以下の温度及び35%以上80%以下の圧下率で1次熱間圧延方向の70〜90°方向に2次熱間圧延することを特徴とする。
本発明に係るβ型チタン合金板は、上記製造方法で製造されていることを特徴とする。
また、本発明に係るβ型チタン合金板は、1次熱間圧延した方向の破断伸びに対して、1次熱間圧延した方向と直交する方向の破断伸びの比率が0.7以上1.5以下であることが好ましい。
本発明に係るβ型チタン合金板の製造方法は、異方性が抑制されたβ型チタン合金板を製造し得るという効果を奏する。
以下、本発明に係るβ型チタン合金板の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、β型チタン合金をβ変態点以下の温度及び35%以上の圧下率で1方向に1次熱間圧延した後、β変態点以下の温度及び35%以上80%以下の圧下率で1次熱間圧延方向の70〜90°方向に2次熱間圧延する。
詳しくは、本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、続く1次熱間圧延をより簡便に実施するための前処理をしてから、上記のごとく1次熱間圧延し、2次熱間圧延する。
前記前処理においては、続く1次熱間圧延をするために、予め所望の大きさ及び形状の板材を作製することができる。詳しくは、例えば、鋳塊から鍛造によってβ型チタン合金のスラブを作製し、さらにスラブを熱間圧延することによって所望の大きさ及び形状の板材を作製することができる。
本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、前記前処理を実施した後に、1次熱間圧延する。即ち、前記前処理を実施した後に、β型チタン合金をβ変態点以下の温度及び35%以上の圧下率で1方向に熱間圧延する。
本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、1次熱間圧延することにより、β型チタン合金板に異方性を生じさせやすいと考えられるα相が生じ得るが、加工した板材を続いて2次熱間圧延することにより、異方性が抑制された板材となり、さらに時効処理することにより、異方性が抑制され強度も高まったβ型チタン合金板を製造することができる。
前記β型チタン合金は、状態図上において常温でα+βの2相を示すものを含むもので、マルテンサイト変態点が室温以下にある点をもって、α+β型合金と区別されたりしている。
前記β型チタン合金は、状態図上では常温でα+β相を示すことから、β相の割合を大きくすべく、通常は、β変態点以上で完全にβ相に変態させた後に、比較的急速に冷却し製造される。このように製造された場合であっても、前記β型チタン合金は、β変態点より低い温度では、化学組成等によって程度の差はあるが、α相が存在する。
通常、前記βチタン合金を熱間圧延する場合、α相が消失し変形抵抗が小さくなるβ変態点以上で行う。一方、βチタン合金をβ変態点以下で熱間圧延する場合、結晶粒径が大幅に細粒化し、熱延板の加工時に肌荒れ等の問題が生じ難いという利点があることが知られているが、斯かる場合には、α相の存在するチタン合金を熱間圧延することから、異方性が発生し易いという問題があることも知られている。
本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法は、βチタン合金のβ変態点以下の温度での圧延を施しつつも、β型チタン合金板における上記異方性を抑制し得るものである。具体的には、例えば、時効処理前の冷間成形加工においてβ型チタン合金板の異方性を抑制し得るものである。
また、本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法は、β型チタン合金板における異方性を抑制すると同時に、β型チタン合金板における結晶粒径の微細化をなし得る。さらに、冷間成形加工におけるβ型チタン合金板の表面の肌荒れをも同時に抑制し得る。
なお、β変態点が700℃未満のβ型チタン合金であると、加熱後、炉から取り出したところですぐに温度が下がり、熱間加工が難しくなることから、前記β型チタン合金は、具体的には、700℃以上のβ変態点をもつものが好ましい。
前記β型チタン合金としては、例えば、Ti−20V−4Al−1Sn、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn、Ti−3Al−8V−6Cr−4Zr−4Moなどが挙げられる。
1次熱間圧延するときの温度は、結晶粒径を微細化するためにβ変態点以下とする。また、圧延するときの変形抵抗をより小さくし、圧延によって圧下しやすくする点で、600℃以上が好ましい。
前記β変態点は、大気圧条件下でそれ以上の温度において実質的にβ単相となる温度である。なお、前記β変態点は、β型チタン合金の種類により、即ち、配合される金属元素の種類およびその量により変わる。
前記圧下率とは、圧延前の板厚に対する、圧延後における板厚減少分(%)を意味する。具体的には、例えば、板厚10mmの板が圧延後に板厚6mmになった場合、圧下率は40(%)である。
1次熱間圧延するときの前記圧下率は、35%以上とする。圧延の途中で再加熱する場合は、合計の圧下率が35%以上とする。前記圧下率を35%未満とすると、金属組織がより均一になりにくくなるおそれがある。前記圧下率の上限は特に限定されるものではないが、95%以下にすることが好ましい。
前記熱間圧延は、本実施形態で圧延されるβ型チタン合金の再結晶温度以上に加熱して行う圧延である。
本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、1次熱間圧延した板状のβ型チタン合金をさらに2次熱間圧延する。即ち、1次熱間圧延した板状のβ型チタン合金を、さらにβ変態点以下の温度及び35%以上80%以下の圧下率で1次熱間圧延方向の70〜90°方向に熱間圧延する。
2次熱間圧延するときの前記圧下率は、35%〜80%である。該圧下率が35%未満であるとβ型チタン合金板の異方性が抑制されないおそれがあり、80%を超えても異方性が抑制されないおそれがある。2次熱間圧延における前記圧下率は、β型チタン合金板の異方性をより抑制できるという点で、好ましくは、40〜60%である。なお、2次熱間圧延における前記圧下率は、1次熱間圧延をおこなった後の板材の厚さに対する2次熱間圧延をおこなった板材の厚さから算出される値である。
2次熱間圧延するときは、1次熱間圧延した方向に対して70〜90°、即ち90±20°(70〜110°)の角度をもった方向におこなう。また、β型チタン合金板の異方性をより抑制するという点では、80〜90°方向におこなうことが好ましく、90°方向におこなうことがより好ましい。
1次熱間圧延した方向に対して70〜90°の方向に2次熱間圧延することにより、製造されたβ型チタン合金板の異方性がより抑制されるという利点がある。
1次熱間圧延および2次熱間圧延を通した合計の圧下率は、特に限定されるものではないが、より加工しやすいという点で、95%以下にすることが好ましい。なお、熱間圧延後の板材の厚さをより薄いものにする場合は、1次熱間圧延する前、即ち前記前処理において、β変態点を超える温度で粗熱間圧延を実施することができる。
なお、1次熱間圧延および2次熱間圧延における熱間圧延は、従来公知の一般的な加熱炉や圧延機などの装置を用いておこなうことができる。加熱炉においては、圧延中に加工熱により温度が上がり得ることなどを考慮しつつ、実際の圧延温度がβ変態点を超えないようにする。β変態点を超えるとα相が消失し、結晶粒径が大幅に大きくなる。圧延中の温度が設定温度を下回るようであれば、再加熱することができる。
本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、上記のごとく2次熱間圧延したあとに必ずしもさらなる処理や加工をする必要はないが、上記のごとく2次熱間圧延した後に、時効処理することが好ましい。斯かる時効処理を行うことにより、異方性がより抑制されたβ型チタン合金板を製造することができるという利点がある。
この時効処理は、所定の温度に保持することによって過飽和固溶体から微細なα相を析出させる硬化処理である。前記時効処理は、300℃〜600℃の温度でおこなうことが好ましく、硬度上昇が始まるという点で15分以上が好ましく、時効の効果が飽和する時間より短い方が効率的であるという点で100時間以下が好ましい。また、時効処理中は、被処理板材の表面が酸化して酸化被膜等が生じ得るため、時効処理後に該酸化被膜等を酸などにより化学的に溶解したり、機械的に切削加工したりすることができるが、該酸化被膜等は熱間圧延における加温時や溶体化処理時に生成するスケールや硬化層に比べて薄いため、これらの操作は必要に応じておこなえばよい。
本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、2次熱間圧延した後、時効処理の前に、さらに冷間加工することが好ましい。より好ましくは、2次熱間圧延した後、時効処理の前に、さらにβ変態点以下で溶体化処理し、冷間加工する。さらに好ましくは、2次熱間圧延した後、時効処理の前に、さらに冷間加工し、その後β変態点以下で溶体化処理する。最も好ましくは、2次熱間圧延した後、時効処理の前に、さらにβ変態点以下で溶体化処理し、その後冷間加工し、続いてβ変態点以下で溶体化処理する。
斯かる処理や加工を行うことにより、異方性が抑制され強度もより高まったβ型チタン合金板を製造することができるという利点がある。
前記冷間加工は、本実施形態で圧延されるβ型チタン合金の再結晶温度未満の温度で行う加工であり、例えば、常温(室温)でおこなうことができる。
前記冷間加工としては、圧延、曲げ等を採用することができる。なお、前記冷間加工をおこなう前には、冷間加工を十分におこなうべく、熱間圧延や溶体化処理によって板材の表面に付着したスケールや硬化層を取り除くことが好ましい。スケールや硬化層を取り除く方法としては、酸などにより化学的に溶解したり、機械的に切削加工をおこなったりする方法を採用することができる。
なお、一般的にβ型チタン合金は、冷間加工性に優れるため、冷間加工により最終形状へ変形させることが比較的容易である。
前記溶体化処理は、熱間圧延又は冷間加工をすることによりβ型チタン合金の板材の内部に生じたひずみを緩和し、最終的に得られるβ型チタン合金板の延性を高めるべくおこなう処理である。従って、本実施形態のβ型チタン合金板の製造方法においては、β型チタン合金板の延性を高めるべく、溶体化処理することが好ましい。溶体化処理は、一般的におこなわれているβ変態点以上の温度ではなく、β変態点未満の温度でおこなうことが好ましい。また、時効α相が微細に析出し、硬度が上昇しやすくなるという点で600℃以上の温度でおこなうことが好ましい。
なお、本実施形態の製造方法においては、上記のごとく時効処理をしたあと、チタン合金板の製造分野において一般的におこなわれる後処理を必要に応じておこなうことができる。
また、本実施形態の製造方法で製造されたβ型チタン合金板は、通常、表面が平坦で実質的に曲面のない形状であるが、このような形状に限られず、表面に凹凸を有するものや曲面を有する形状のものであってもよい。
本実施形態のβ型チタン合金板は、本実施形態の製造方法で製造されたことを特徴とする。
本実施形態のβ型チタン合金板は、1次熱間圧延した方向の破断伸びに対して、1次熱間圧延した方向と直交する方向の破断伸びの比率が0.7〜1.5であることが好ましく、0.90〜1.35であることがより好ましい。
より詳しくは、1次熱間圧延した方向(L)の破断伸びEl(L)と、1次熱間圧延した方向と直交する方向(T)の破断伸びEl(T)とで計算された下記式(1)のGの値が0.7以上1.5以下であることが好ましく、0.90以上1.35以下であることがより好ましい。
G=[El(T)/El(L)] (1)
なお、破断伸びは、実施例に記載された方法によって測定されたものである。
本発明は、上記例示のβ型チタン合金板の製造方法、該製造方法により製造したβ型チタン合金板に限定されるものではない。
即ち、一般的なβ型チタン合金板の製造方法において用いられる種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。また、一般的なβ型チタン合金板において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(試験例1)
以下に示す方法により、β型チタン合金板を製造した。
Ti−20V−4Al−1Sn(β変態点730℃)のβ型チタン合金の鋳塊からスラブを鍛造で製造し、β変態点より高い1000℃に加熱し、40mmまで熱間圧延した。
これをβ変態点以下である700℃に加熱し、10mm厚まで熱間圧延した(1次熱間圧延)。ここで切り分けて、圧延方向を変えず、700℃に加熱し5mm厚まで(圧下率50%)熱間圧延した(2次熱間圧延)。
(試験例2)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して30°とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例3)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して60°とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例4)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して80°とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例5)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して90°とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例6)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して90°とし、2次熱間圧延における圧下率を0%とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例7)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して90°とし、2次熱間圧延における圧下率を20%とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例8)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して90°とし、2次熱間圧延における圧下率を40%とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例9)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して90°とし、2次熱間圧延における圧下率を80%とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例10)
2次熱間圧延における圧延方向を1次熱間圧延方向に対して90°とし、2次熱間圧延における圧下率を90%とした点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(試験例11)
1次熱間圧延における温度をβ変態点以上である1000℃とし、圧下率90%とし、2次熱間圧延を行わなかった点以外は、試験例1と同様にしてβ型チタン合金板を製造した。
(引張試験)
各試験例で得られたβ型チタン合金板から引張試験片(ASTMサブサイズ)を切り出し、JIS Z 2241に準じて引張強度(YS)、及び、延性の指標としての破断伸び(El)を測定した。
(曲げ試験)
各試験例で得られたβ型チタン合金から曲げ試験片を作製した。曲げ試験片は、切削により1mm厚に調製した。試験片は、L方向(曲げ軸がT方向と平行)とT方向(同じくL方向と平行)を用意した。これら試験片をJIS Z2248に準拠して、Vブロック法による90°曲げ試験を実施した。押し金具の先端には曲率がつけられており、その曲率としては2mmの曲率を採用し、斯かる曲率の押し金具を用いて曲げ試験を実施した。曲げ試験後の試験片の凸部を観察し、特に問題がない場合を○、拡大鏡で拡大すると割れが見られる場合を△、目視で割れが確認される場合を×、破断した場合を××と判定した。
各試験例における結果を表1、表2に示す。なお、L方向とは1次熱間圧延方向を意味し、T方向とは1次熱間圧延方向に対して直交する90°の方向を意味する。
Figure 2010082688
Figure 2010082688
表1は、2次熱間圧延の圧延方向の影響を調べた結果を示す。圧延方向を変えない試験例1では、1次熱間圧延した方向と直交する方向(T方向)の強度が若干高く、延性が低い。2次熱間圧延の圧延方向がT方向に近づくにつれ、T方向の引張強度が低下し延性が向上する。2次熱間圧延の圧延方向が80°の場合、T方向の引張強度および延性は、1次熱間圧延した方向(L方向)の引張強度および延性とほぼ同等となった。
表2は、2次熱間圧延において、1次熱間圧延した方向と直交する方向(T方向)に圧延した圧下率の影響を調べた結果を示す。2次熱間圧延前(試験例6)では、L方向と比べてT方向の延性が低く異方性が大きいことが認識できる。一方、圧下率が90%の試験例10では、逆にT方向と比べてL方向の延性が小さくなり異方性が生じることが認識できる。
(結晶粒径及び曲げ試験における肌荒れ)
試験例5及び試験例11について、結晶粒径及び曲げ試験における肌荒れを調査した結果を表3に示す。なお、肌荒れの結果については、肌荒れが観察されたものを○、観察されなかったものを×とした。
試験例11のようにβ変態点以上の温度で熱間圧延を行った場合には、β型チタン合金板の結晶粒径が極めて大きく、また、曲げ試験後に肌荒れが観察された。
なお、β変態点以下の温度で熱間圧延を行った試験例1〜4,6〜10におけるβ型チタン合金板の結晶粒径は、試験例5におけるものと同等であった。
Figure 2010082688

Claims (3)

  1. β型チタン合金を、β変態点以下の温度及び35%以上の圧下率で1方向に1次熱間圧延した後、β変態点以下の温度及び35%以上80%以下の圧下率で1次熱間圧延方向に対して70〜90°方向に2次熱間圧延することを特徴とするβ型チタン合金板の製造方法。
  2. 請求項1に記載された製造方法で製造されたことを特徴とするβ型チタン合金板。
  3. 1次熱間圧延した方向の破断伸びに対して、1次熱間圧延した方向と直交する方向の破断伸びの比率が0.7以上1.5以下であることを特徴とする請求項2記載のβ型チタン合金板。
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