JP2010082673A - レーザ溶接部材およびレーザ溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電解ニッケル膜8が被覆された銅の下側金属板1の上面に、無電解ニッケル−リンめっき膜9が被覆された銅の上側金属板3を重ね合わせ、所定圧力を負荷した状態で図示しないレーザ光を無電解ニッケル−リンめっき膜9が被覆された上側金属板3の上面より照射する。銅より融点の高い無電解ニッケル−リンめっき膜9にレーザ光を照射することで、スパッタの発生を防止し、溶接面積の拡大を図ることができる。
【選択図】 図1
Description
図9(a)において、下側金属板1の上面に上側金属板3を重ねたレーザ溶接部材に、所定荷重を負荷した状態で図示しないレーザ光を上側金属板3の上面より所定時間照射することにより、下側金属板1と上側金属板3とが溶接部5によって接合される。
レーザパワーが低くレーザ照射時間が短い場合、溶接部5の深さが下側金属板1まで到達できず、未接合状態となる。レーザパワーが高くレーザ照射時間が長い場合には、溶接部5が下側金属板1を貫通し、穴あき状態となるため接合強度の不足を招いてしまう。
しかしながら、溶接点数削減のために、1点あたりの溶接面積S1(図9(b)参照)を大きくしようとした場合、レーザパワーを高く、レーザ照射時間を長くする必要があり、図9(a)に示したように、入熱過多の状態となって溶接部5の一部がスパッタ6(溶融金属が飛散したもの)が生じてしまう。本構成を電子機器類の接合方法として用いた場合、飛散したスパッタ6により、回路の焼損や絶縁不良を引き起こしてしまうという課題がある。
尚、図9(c)に示すように、溶接部5の外側では金属膜2、4を前記のように電解ニッケルめっき膜で形成した場合は溶接部5の銅より融点が高いために隙間20(未溶接部)ができる。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、スパッタ発生の防止や溶接面積の拡大ができるレーザ溶接部材およびレーザ溶接方法を提供することにある。
また、第1の金属板と第2の金属板を重ね合わせてなるレーザ溶接部材をレーザ溶接する方法において、前記第1の金属板の少なくともレーザ照射面に第1の金属板の融点よりも高い融点を有する金属膜を被覆する工程と、前記第1の金属板と第2の金属板を重ね合わせ、加圧治具で第1の金属板と第2の金属板を押さえて密着させる工程と、レーザ光を前記金属膜及び第1の金属板に照射してレーザ溶接する工程と、を有するレーザ溶接方法とする。
また、前記無電解ニッケル−リンめっき膜の融点が900℃〜1425℃であるとよい。
また、前記無電解ニッケル−リンめっき膜のリンの含有量が1重量%〜4重量%であるとよい。
また、無電解ニッケル−リンめっき膜の融点を900℃〜1425℃とすることにより、スパッタの発生が無いレーザ溶接が可能となることに加え、スポットレーザ溶接1点あたりの溶接面積を大きくでき溶接強度の増大を図ることができる。
(第1の実施の形態)
図1は、この発明の第1の実施の形態に係るレーザ溶接部材とレーザ溶接方法の手順を示す図であり、同図(a)および同図(b)は工程順に示した要部製造工程図である。
図1(a)において、レーザ溶接部材は上側金属板3(第1の金属板)と下側金属板1(第2の金属板)を重ね合わせたものである。上側金属板3の表面には、YAGレーザ光30を照射する面と下側金属板1に対向する面を含め、無電解ニッケル−リンめっき膜9が被覆される。下側金属板1の表面には、上側金属板3に対向する面を含め、電解ニッケル膜8が被覆される。
無電解ニッケル−リンめっき膜9及び電解ニッケルめっき膜8の厚さは1μm〜8μmの範囲とするのが良く、好ましくは3μm〜6μmとするのが良い。1μm未満では、膜厚が薄すぎて被覆した効果がなくなる。また8μmを超えても効果があまり変わらなく、被覆するためのコストが増大するだけである。また、無電解ニッケル−リンめっき膜9の融点を、銅または銅合金より高い、900℃〜1425℃とすることが重要である。特に銅の場合は1084℃〜1425℃が好ましい。めっき膜9は1重量%〜4重量%のリンを含有する。
図1(a)に示すように、まず、上側金属板3(第1の金属板)と下側金属板1(第2の金属板)を重ね合わせたレーザ溶接部材を用意する。上側金属板3の表面には無電解ニッケル−リンめっき膜9を被覆し、下側金属板1の表面には電解ニッケル膜8を被覆しておく。上記のとおり無電解ニッケル−リンめっき膜9の融点を、上側金属板3の融点より高くすることが重要である。
上側金属板3に銅を用いる場合、YAGレーザ光30の基本波(1064nm)における吸収率が10%程度と低いが、無電解ニッケル−リンめっき膜9は29%程度であり溶接性を向上することができる。下側金属板1は直接YAGレーザ光30が照射されないため、めっき処理無し状態でもよいが、酸化防止目的で全面に電解ニッケルめっき膜8を被覆することが望ましい。
図2(a)に示すように、無電解ニッケル−リンめっき膜9に照射されたYAGレーザのエネルギーは熱エネルギーに変換され、溶接部5が形成される。本発明の無電解ニッケル−リンめっき膜9の融点は900℃〜1425℃であり、電解ニッケルめっき膜の融点より上側金属板3と下側金属板1の融点に近い。このため、溶接部5の周囲の無電解ニッケル−リンめっき膜9も、融点を超えた領域が溶融し、下側の電解ニッケル−リンめっき膜8と接合される(符号12参照)。
(実験例)
図3は、この溶接面積とレーザピークパワーとの関係を示す図である。レーザ溶接部材として、下側金属板1に電解ニッケルめっき膜8を被覆したものと、上側金属板3に無電解ニッケル−リンめっき膜8を被覆したものを重ね合わせた試料を用意した。また、比較のため、無電解ニッケル−リンめっき膜8に代え、電解ニッケルめっき膜を形成した試料を用意した。これらの試料にレーザピークパワーを変えてYAGレーザ溶接(波長1064nm)を実施し、溶接面積を測定した。
図3から明らかなように、上側金属板3に電解ニッケルめっき膜を被覆した場合よりも、無電解ニッケル−リンめっき膜を被覆した場合の方が、同じレーザピークパワーであっても溶接面積を大きくすることができた。
溶接面積が増大したことより、例えば、従来30点のスポットレーザ溶接を行っていた箇所を10点まで減らすことが可能となり、工数を1/3に削減することができる。
ニッケルめっき膜を電解ニッケルめっき膜から無電解ニッケルめっき膜に変えたことにより、溶接面積の拡大とスパッタ発生の抑制を図ることができる。これは、ニッケルめっき膜の低融点化(電解ニッケルめっき膜の融点は1450℃であるが、無電解ニッケル−リンめっき膜の融点は890℃である。)による効果である。
図4は、レーザ光のパルス幅と溶接部の深さの関係を示す図である。レーザ溶接部材として上記実験例と同じ試料を用いた。レーザピークパワーは5.5kWでパルス幅は1msから6msの矩形波パルスのYAGレーザ光30である。電解ニッケルめっき膜の場合は溶接部5の深さが短時間で深くなるのに対して、無電解ニッケル−リンめっき膜では溶接部5の深さが深くなるのに時間がかる。
このように、無電解ニッケル−リンめっき膜を用いることにより溶接の品質を向上できたが、本発明者はさらにスパッタの発生を防止するため検討を行った。
すなわち、母材である上側金属板3の融点より無電解ニッケル−リンめっき膜9の融点が低いと、母材より先にめっき膜が溶け、銅の表面にレーザが当って溶接が進行する。このとき銅から金属蒸気が発生し周辺の溶けためっき膜が飛び散りスパッタとなる。これに対し、めっき膜の融点が母材の融点より高ければ、銅が溶け蒸気が発生しても、めっき膜の溶融物の粘度が高いのでスパッタは起きにくいと推測される。
(第2の実施の形態)
図6は、この発明の第2の実施の形態のレーザ溶接部材の溶接部の要部断面図である。上側金属板及び下側金属板の両方ともに無電解ニッケル−リンめっき膜9を被覆した場合である。この場合も図1で示した第1実施例と同様の効果(溶接面積の拡大とスパッタ発生なし)が得られる。尚、図中の符号の13はニッケル−リン/ニッケル−リンの接合部であり、この分が溶接面積を拡大している分である。
(第3の実施の形態)
図7は、この発明の第3の実施の形態のレーザ溶接部材の溶接部の要部断面図である。上側金属板3側に無電解ニッケル−リンめっき膜9を被覆し、上側金属板3と対向する下側金属板1の表面には銅の素地が出ている状態である。
(第4の実施の形態)
図8は、この発明の第4の実施の形態のレーザ溶接部材の溶接部の要部断面図である。上側金属板3の表面に電解ニッケルめっき8を形成し,下側金属板1の表面に無電解ニッケル−リンめっき9を形成した場合である.この場合はスパッタ6の発生はあるが、溶接面積の拡大が得られる。
2、4 金属膜
3 上側金属板
5 溶接部
6 スパッタ
7、11 銅/銅の溶接部の切断面
8 電解ニッケルめっき膜
9 無電解ニッケル−リンめっき膜
12 ニッケル−リン/ニッケルの接合部
12a ニッケル−リン/ニッケルの接合部の切断面
13 ニッケル−リン/ニッケル−リンの接合部
14 ニッケル−リン/銅の接合部
15 ニッケル/ニッケル−リンの接合部
20 隙間
30 YAGレーザ
41 X−Yステージ
42 照射ユニット
43 加圧治具
S1 銅/銅の溶接部の切断面の面積
S2 ニッケル−リン/ニッケルの接合部の切断面の面積
Claims (11)
- 第1の金属板と第2の金属板を重ね合わせてなるレーザ溶接部材において、前記第1の金属板の少なくともレーザ照射面に第1の金属板の融点より高い融点を有する金属膜を備えることを特徴としたレーザ溶接部材。
- 前記第1の金属板及び第2の金属板の材質が銅もしくは銅合金であり、前記金属膜が無電解ニッケル−リンめっき膜であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接部材。
- 前記無電解ニッケル−リンめっき膜の融点が900℃〜1425℃であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接部材。
- 前記無電解ニッケル−リンめっき膜のリンの含有量が1重量%〜4重量%であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接部材。
- 前記無電解ニッケル−リンめっき膜の膜厚が1μm〜8μmであることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接部材。
- 第1の金属板と第2の金属板を重ね合わせてなるレーザ溶接部材をレーザ溶接する方法において、前記第1の金属板の少なくともレーザ照射面に第1の金属板の融点より高い融点を有する金属膜を被覆する工程と、前記第1の金属板と第2の金属板を重ね合わせ、加圧治具で第1の金属板と第2の金属板を押さえて密着させる工程と、レーザ光を前記金属膜及び第1の金属板に照射してレーザ溶接する工程と、を有することを特徴とするレーザ溶接方法。
- 前記第1の金属板及び第2の金属板の材質が銅もしくは銅合金であり、前記金属膜が無電解ニッケル−リンめっき膜であることを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接方法。
- 前記無電解ニッケル−リンめっき膜のリンの含有量が1重量%〜4重量%であることを特徴とする請求項7に記載のレーザ溶接方法。
- 前記無電解ニッケル−リンめっき膜の膜厚が1μm〜8μmであることを特徴とする請求項7に記載のレーザ溶接方法。
- 前記レーザ光の波長が0.19μm〜10.64μmであることを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接方法。
- 前記第1の金属板及び第2の金属板の厚さが0.3mm〜1.5mmであることを特徴とする請求項7に記載のレーザ溶接方法。
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