JP2010080396A - 電池缶及び筒型電池 - Google Patents

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【課題】電池内容積を確保しつつ、電池製造工程における変形や落下時の衝撃による変形を抑えることができる電池缶を提供すること。
【解決手段】有底筒状の正極缶11は、底部18と、底部18の外周部から垂直に立ち上がって筒状に形成された胴部17と、胴部17において底部18の反対側にある開口部15とを有する。正極缶11の胴部17において、胴部最下端を始端とする立ち上がり部31が設けられており、立ち上がり部31は、胴部17の全長に対して3%以上の長さL1を有する。底部18の板厚をt1とし、立ち上がり部31の板厚をt2とし、胴部17の板厚をt3としたとき、1.25<t1/t2≦1.47の関係及び1.06≦t2/t3<1.25の関係を満たすように立ち上がり部31が設けられている。
【選択図】図2

Description

本発明は、開口部、胴部及び底部を有する有底筒状の電池缶、及びその電池缶を使用して構成された筒型電池に関するものである。
一般に、アルカリ電池は、有底筒状の正極缶と、その正極缶内に収納されるリング状の正極合剤と、正極缶の中心部に配置されるゲル状負極合剤と、正極合剤とゲル状負極合剤との間に介在される有底筒状のセパレータと、正極缶の開口部に装着される集電体とを備えている。このアルカリ電池の正極缶は、NPS(Nickel Plated Steel)と呼ばれるニッケルめっき鋼板を有底筒状にプレス成形することで作製されている。
ところで、近年では、デジタルカメラなどの電子デバイスのように重負荷放電用途の機器が増加しており、それに伴いアルカリ電池の高容量化が進んでいる。この高容量化を実現するための手段として、底部よりも胴部を薄く形成した正極缶が使用されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−78894号公報
ところが、電池缶を薄肉化すると、缶自体の強度が低下してしまう。特に、電池缶における底部側の側壁部分(底部の外周部から垂直に立ち上がる部分)では、肉厚が変化するため強度が弱くなる。このため、その電池缶を用いて電池を製造すると、例えば、正極缶の開口部を封口する工程にて、正極缶に上方から底部側に力が加わり、比較的強度が弱い底部側の側壁部分が変形してしまう。また、電池落下時の衝撃によっても、電池缶が変形したり、亀裂が生じたりするといった問題が生じてしまう。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池内容積を確保しつつ、製造工程における変形や落下時の衝撃による変形を抑えることができる電池缶を提供することにある。また、別の目的は、電池性能を確保することができ、耐衝撃性に優れた筒型電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、底部と、前記底部の外周部から垂直に立ち上がって筒状に形成された胴部と、前記胴部において前記底部の反対側にある開口部とを有する有底筒状の電池缶であって、前記底部の板厚をt1とし、前記胴部最下端を始端とする立ち上がり部の長さを前記胴部の全長に対して3%以上としかつその場合における当該部分の板厚をt2とし、前記胴部の板厚をt3としたとき、1.25<t1/t2≦1.47の関係及び1.06≦t2/t3<1.25の関係を満たすことを特徴とする電池缶をその要旨とする。
請求項1に記載の発明によれば、電池缶において、胴部最下端を始端とする立ち上がり部が、胴部の全長に対して3%以上の長さであり、底部の板厚t1と立ち上がり部の板厚t2とが1.25<t1/t2≦1.47の関係を満たすように形成されている。このようにすると、立ち上がり部の強度を十分に確保することができ、製造工程における変形や落下時の衝撃による変形を防止することができる。また、立ち上がり部の板厚t2と胴部の板厚t3とが1.06≦t2/t3<1.25の関係を満たすように電池缶を形成することにより、その電池缶の内容積の減少を1.2%以下に抑えることができるため、電池性能を十分に確保することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、深絞り加工により作製されたことをその要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、深絞り加工により電池缶が形成されるので、前記板厚t1,t2,t3間に所定の大小関係を有する有底筒状の電池缶を比較的に低コストで容易に形成することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、ニッケルを主体とするめっきが表面に施されためっき鋼板を材料として作製されたことをその要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、表面にニッケルめっきが施されためっき鋼板により作製されているので、電池缶の耐蝕性を高めることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記めっき鋼板における表面めっきの厚さが、1μm以上3μm以下であることをその要旨とする。
請求項4に記載の発明によれば、電池缶の耐蝕性を十分に確保することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池缶を使用して構成された筒型電池をその要旨とする。
請求項5に記載の発明によれば、電池性能を確保することができ、耐衝撃性に優れた筒型電池を提供することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記電池缶が集電体を兼ねることをその要旨とする。
請求項6に記載の発明によれば、電池缶が集電体を兼ねるので、集電体を別途に設ける場合と比較して筒型電池の部品点数を低減することができる。
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、電池内容積を確保しつつ、製造工程における変形や落下時の衝撃による変形を抑えることができる電池缶を提供することができる。また、請求項5,6に記載の発明によると、前記電池缶を用いることにより、電池性能を確保することができ、耐衝撃性に優れた筒型電池を提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるアルカリ電池10の概略構成を示す断面図である。なお、本実施の形態のアルカリ電池10は、LR6タイプ(単3形)の電池である。
図1に示されるように、アルカリ電池10は、有底筒状の正極缶11(電池缶)と、その正極缶11の内面に沿って嵌着されたリング状の正極合剤12(電極合剤)と、正極合剤12の内側に挿入される有底筒状のセパレータ13と、正極缶11の中心部となるセパレータ13の中空部に配置されるゲル状負極合剤14と、正極缶11の開口部15に装着される集電体16とを備える。
正極缶11は、ニッケルを主体とするめっきが表面に施されためっき鋼板を材料として作製されたプレス加工品であり、深絞り加工を施すことにより、開口部15、胴部17及び底部18を有する有底筒状に成形されている。正極缶11における底部18の中央には正極端子19が突設されている。つまり、正極缶11は、正極の集電体を兼ねている。また、正極缶11のめっき鋼板における表面めっきの厚さは、2μm程度である。さらに、正極缶11の内表面には、電流を流れやすくするために、樹脂を担体とした炭素系導電材が塗布されている。
正極合剤12は、電解二酸化マンガン、黒鉛、水酸化カリウム、及びバインダーを混合した正極合剤粉を整粒した後、円筒状にプレス成形することで作製される。
セパレータ13は、ビニロン・レーヨン不織布やポリオレフィン・レーヨン不織布などのセパレータ原紙を円筒状に巻回し、重なり合う部分を熱融着させることで作製される。
ゲル状負極合剤14は、水と酸化亜鉛と水酸化カリウムとを混ぜて溶解し、ポリアクリル酸などのゲル化剤と亜鉛粉とを混合することで作製される。
集電体16は、負極端子板21、負極集電子22、及び封口ガスケット23を含んで構成されている。正極缶11の開口部15付近には、集電体16を載置するためのビード部24が形成されている。そして、そのビード部24上に集電体16を載置した状態で、正極缶11の開口部15にカール及び絞り加工を施すことにより、正極缶11が封口されている。
集電体16は、真鍮を用いて棒状に形成された負極集電子22をその基端側の頭部で負極端子板21に抵抗溶接するとともに、負極集電子22の首部に封口ガスケット23を嵌着することで、形成されている。そして、負極集電子22の先端側がゲル状負極合剤14に挿入されている。
負極端子板21は、正極缶11と同じくニッケルめっき鋼板をプレス成形することで作製され、封口ガスケット23を介して正極缶11の開口部15を封口している。封口ガスケット23は、ポリオレフィン樹脂やポリアミド樹脂などの樹脂材料を用いて射出成形することで作製される。
この封口ガスケット23における中心にはボス部26が設けられ、そのボス部26に負極集電子22が貫通されている。さらに、封口ガスケット23におけるボス部26の近傍に板厚が薄い薄肉部27(安全弁)が形成されている。そして、ガスの発生により内圧が高まった場合には、その圧力上昇によりこの封口ガスケット23の薄肉部27を破損させてガスを外部に放出するようにしている。
以下、本実施の形態のアルカリ電池10に使用されている正極缶11の構成について詳述する。
図2に示されるように、正極缶11において、胴部17は、底部18の外周部から垂直に立ち上がって筒状に形成されており、底部18よりも厚さが薄くなっている。また、この胴部17における底部18の反対側に開口部15が形成されている。
胴部17の底部18側には、胴部最下端を始端とする立ち上がり部31が設けられている。この立ち上がり部31は、開口部15側(図2では上側)に向けて徐々に板厚が減少するようテーパー状に設けられている。立ち上がり部31の長さL1は、例えば、2.0mmであり、正極缶11の全長(=48.8)の4%程度に設定されている。より詳しくは、底部18外周部の曲げ加工部32における内側のR面33の端部を立ち上がり部31の始端とし、板厚の変化がなくなる部位を立ち上がり部31の終端としている。本実施の正極缶11では、底部18の板厚t1が0.25mmであり、立ち上がり部31の板厚t2は、始端(最下端)で0.18mmであり、終端で0.16mmである。また、胴部17の板厚t3は、0.16mmである。
本発明者らは、上記構成の正極缶11について、立ち上がり部31の板厚t2や長さL1を変更して作製し、アルカリ電池10の製造工程(具体的には、封口時の絞り加工)で発生する正極缶11の変形発生率を確認した。その結果を表1に示している。なおここでは、立ち上がり部31の板厚t2(具体的には、始端での板厚)を、0.16mm、0.17mm、0.18mm、0.20mm、0.21mmに設定し、正極缶11の全長に対する立ち上がり部31の長さ割合を1%〜6%に設定している。そして、作製された各正極缶11についてそれぞれ確認を行った。なお、表1には、立ち上がり部31の板厚t2に対応するパラメータとして、底部18の板厚t1(=0.25mm)と立ち上がり部31の板厚t2との比率(t1/t2)を示している。
Figure 2010080396
表1に示されるように、立ち上がり部31の板厚t2を胴部17と同じ板厚t3(=0.16)とした場合(従来構成の場合)では、100%の確率で変形が発生した。また、立ち上がり部31の長さL1を短く設定した場合(長さ割合が1%,2%の場合)、板厚t2を厚くすることにより変形発生率を低減することができるが、板厚t2を0.21mmに厚くした場合でも40%以上の確率で変形が発生していた。これに対して、長さ割合が3%以上、板厚t2が0.17mm以上(t1/t2≦1.47)となるよう立ち上がり部31を設定した場合、変形発生率を0%に抑えることができた。
また、立ち上がり部31の板厚t2を胴部17の板厚t3よりも厚くしたことによる各正極缶11の電池内容積の減少量を表2に示している。なお、表2には、立ち上がり部31の板厚t2に対応するパラメータとして、立ち上がり部31の板厚t2と胴部17の板厚t3との比率(t2/t3)を示している。
Figure 2010080396
表2に示されるように、立ち上がり部31の板厚t2を0.17mmにした場合では0.3%の減少量であり、立ち上がり部31の板厚t2を0.18mmにした場合では0.6%の減少量であった。また、立ち上がり部31の板厚t2を0.20mmにした場合では、1.2%の減少量であり、立ち上がり部31の板厚t2を0.21mmにした場合では、0.15%であった。表2に示されるように、立ち上がり部31の板厚t2を0.20mm未満(t2/t3<1.25)とすれば、電池内容積の減少量を1.2%未満に抑えることができる。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の場合、底部18の板厚t1と立ち上がり部31の板厚t2とが1.25<t1/t2≦1.47の関係(t1=0.25mmの場合、0.17mm≦t2<0.20mm)を満たすように正極缶11を形成することにより、立ち上がり部31の強度を十分に確保することができる。この結果、アルカリ電池10の製造工程における正極缶11の変形や落下時の衝撃による正極缶11の変形を防止することができる。また、立ち上がり部31の板厚t2と胴部17の板厚t3とが1.06≦t2/t3<1.25の関係(t3=0.16mmの場合、0.17mm≦t2<0.20mm)を満たすように正極缶11を形成することにより、正極缶11の内容積の減少を1.2%未満に抑えることができる。このため、アルカリ電池10の電池性能を十分に確保することができる。
(2)本実施の形態の正極缶11では、従来構成のように胴部17の板厚t3(=0.16mm)と等しくなるよう立ち上がり部31をいきなり薄くするのではなく、徐々にテーパー状に薄くするように形成した。このようにすれば、立ち上がり部31での強度を増すことができ、アルカリ電池10の製造工程での缶変形による不良率を低減することができる。またこの場合、従来の製造工程を変更することなく、プレス加工時の金型の一部形状を変更することにより、正極缶11を作製することができるため、製造コストを抑えることができる。
(3)本実施の形態の正極缶11は深絞り加工により形成されるので、板厚t1,t2,t3間に所定の大小関係を有する有底筒状の正極缶11を比較的に低コストで容易に形成することができる。
(4)本実施の形態の場合、ニッケルを主体とするめっきが表面に施されためっき鋼板を材料として正極缶11が製造されており、表面めっきの厚さが2μm程度であるので、正極缶11の耐蝕性を十分に確保することができる。
(5)本実施の形態の場合、正極缶11が集電体を兼ねるので、集電体を別途に設ける場合と比較してアルカリ電池10の部品点数を低減することができる。
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、正極缶11の立ち上がり部31をテーパー状に徐々に薄くするよう構成していたが、多段状に薄くするよう構成してもよい。
・上記実施の形態では、電極合剤として、二酸化マンガンを主成分とする正極合剤12を用いたが、これ以外にオキシ水酸化ニッケルを主成分とする正極合剤を用いてもよいし、二酸化マンガン及びオキシ水酸化ニッケルの両成分を含んだ正極合剤を用いてもよい。
・上記実施の形態では、本発明をアルカリ電池10の正極缶11に具体化するものであったが、アルカリ電池以外の筒型電池の電池缶に具体化してもよい。また、上記実施の形態では、単三形のアルカリ電池に具体化していたが、単四形等の他の電池に具体化してもよい。但し、単三形や単四形の電池のように、正極缶11を薄型化することによって高容量化が図られるアルカリ電池に本発明を適用することが好ましい。
・上記実施の形態の正極缶11では、底部18の板厚t1が0.25mmであり胴部17の板厚t3が0.16mmであったが、これら板厚が異なる電池缶に本発明を適用してもよい。
・上記実施の形態では、プレス加工品である正極缶11に本発明を適用していたが、プレス加工以外の他の製造方法(例えば、鋳型を用いた製造方法など)で作製した電池缶に具体化してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項1乃至4のいずれか1項において、樹脂を担体とした炭素系導電材が内表面に塗布されていることを特徴とする電池缶。
(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記立ち上がり部の板厚が徐々に減少するように構成されていることを特徴とする電池缶。
(3)請求項1乃至4のいずれか1項において、アルカリ電池に使用されるアルカリ電池用正極缶であることを特徴とする電池缶。
(4)請求項1乃至4のいずれか1項において、単三型または単四型の電池缶であって、前記立ち上がり部の板厚t2が0.17mm以上0.20mm未満であることを特徴とする電池缶。
(5)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記電池缶が、胴部及び底部を有しかつ一端が開口した有底筒状をなし、ニッケルめっき鋼板製のプレス加工品であり、二酸化マンガン及びオキシ水酸化ニッケルのうちの少なくともいずれかを主成分とする電極合剤が収容可能であることを特徴とする電池缶。
本発明を具体化した実施の形態のアルカリ電池を示す断面図。 正極缶を示す断面図。
符号の説明
10…筒型電池としてのアルカリ電池
11…電池缶としての正極缶
15…開口部
17…胴部
18…底部
31…立ち上がり部
t1…底部の板厚
t2…立ち上がり部の板厚
t3…胴部の板厚

Claims (6)

  1. 底部と、前記底部の外周部から垂直に立ち上がって筒状に形成された胴部と、前記胴部において前記底部の反対側にある開口部とを有する有底筒状の電池缶であって、
    前記底部の板厚をt1とし、前記胴部最下端を始端とする立ち上がり部の長さを前記胴部の全長に対して3%以上としかつその場合における当該部分の板厚をt2とし、前記胴部の板厚をt3としたとき、1.25<t1/t2≦1.47の関係及び1.06≦t2/t3<1.25の関係を満たすことを特徴とする電池缶。
  2. 深絞り加工により作製されたことを特徴とする請求項1に記載の電池缶。
  3. ニッケルを主体とするめっきが表面に施されためっき鋼板を材料として作製されたことを特徴とする請求項1または2に記載の電池缶。
  4. 前記めっき鋼板における表面めっきの厚さが、1μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の電池缶。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池缶を使用して構成された筒型電池。
  6. 前記電池缶が集電体を兼ねることを特徴とする請求項5に記載の筒型電池。
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