JP2010080316A - 透明導電性基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡便な塗布法にて優れた導電性を発現する酸化チタン系透明導電性膜を形成する透明導電性基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(C1)金属ナノ粒子および金属ナノファイバーの少なくとも一方からなる導電性物質とを含む前駆体分散液、または、前記(A)の反応生成物と、前記(B)の反応生成物と、(C2)還元雰囲気下での加熱により金属ナノ粒子を析出する導電性物質前駆物とを含む前駆体液を、透明基材上に塗布し、焼成した後、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す。
【選択図】 なし
【解決手段】 (A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(C1)金属ナノ粒子および金属ナノファイバーの少なくとも一方からなる導電性物質とを含む前駆体分散液、または、前記(A)の反応生成物と、前記(B)の反応生成物と、(C2)還元雰囲気下での加熱により金属ナノ粒子を析出する導電性物質前駆物とを含む前駆体液を、透明基材上に塗布し、焼成した後、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す。
【選択図】 なし
Description
本発明は、良好な導電性を発現する酸化チタン系透明導電性膜を備えた透明導電性基板とその製造方法に関する。
従来から、太陽電池や液晶表示装置等に用いられる透明導電性基板としては、例えば酸化インジウム錫(ITO)膜やAlをドープした酸化亜鉛(ZnO)膜などの導電性膜を設けたものが汎用されている。しかし、ITO膜は希少金属であるIn(インジウム)を必須とするので、他の金属への代替が要望されているという実情があり、また、AlをドープしたZnO膜は両性元素を含むので吸湿しやすく用途が制限されることがあるという欠点があった。そこで、近年、酸化チタンを用いた透明導電性基板の開発が進められている。
ところで、一般に、金属酸化物の薄膜を形成する方法には、大別して、スパッタ法やPLD(パルスレーザーデポジション)法のように真空系で成膜する方法と、金属酸化物粒子を含むスラリーあるいは溶液を基材に塗布した後に加熱する方法とがある。前者は、大掛かりな装置が必要で設備的なコストが嵩み、ひいては製品コストが高騰するという問題があるのに対し、後者の塗布法は、既存の設備を用いて簡便な操作で安価に実施することができる方法であり、工業的な大量生産に適している。しかしながら、これまで、透明導電性膜などの用途においては、通常、前者の真空系を利用した成膜方法が採用されていた。これは、前者の真空系での成膜方法であれば、後者の塗布法よりも高い導電性を有する膜を形成することができるからである。つまり、塗布法により形成された膜は、クラックが発生しやすく均一な膜を作製するのが困難であり、真空で形成された膜に比べて、膜の緻密性に劣る傾向があり、結晶粒同士のネッキングが弱くなるため、導電性が低下しやすかったのである。また、塗布法は、真空系にて成膜する方法に比べて、系外から不純物が混入する可能性が高いが、形成された膜に不純物が混入することも膜の緻密性を損なう原因となり、導電性の低下に繋がることが懸念される。
酸化チタンを用いた透明導電性基板の開発においても、透明導電性膜の成膜方法としては通常、スパッタ法やPLD法が採用されている(非特許文献1参照)。しかし、たとえスパッタ法やPLD法で成膜された膜であっても、酸化チタン膜は未だ従来のITO膜やZnO膜と同等の導電性を発現するには至っていないのが現状であった(非特許文献1参照)。
以上のことから、酸化チタン系透明導電性基板の実用化に向けては、透明導電性膜の導電性のさらなる向上が求められており、なおかつ、そのような透明導電性膜を簡便な塗布法にて形成することができる方法を確立することが要望されていた。
以上のことから、酸化チタン系透明導電性基板の実用化に向けては、透明導電性膜の導電性のさらなる向上が求められており、なおかつ、そのような透明導電性膜を簡便な塗布法にて形成することができる方法を確立することが要望されていた。
「最新透明導電膜大全集〜材料別特注と代替展望/サイクル・工程別ノウハウ・応用別要求特性等〜」、株式会社情報機構発行、2007年12月17日、p187〜p198
そこで、本発明の課題は、簡便な塗布法にて優れた導電性を発現する酸化チタン系透明導電性膜を形成する透明導電性基板の製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させてペルオキシ化した反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させてペルオキシ化した反応生成物とを含む前駆体液に、(C1)金属ナノ粒子および金属ナノファイバーの少なくとも一方からなる導電性物質、または、(C2)還元雰囲気下での加熱により金属ナノ粒子を析出する導電性物質前駆物を予め添加して均一に分散あるいは溶解させておき、それを透明基材上に塗布し、焼成した後に還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施すようにすれば、塗布法でありながら、得られる透明導電性膜の導電性を格段に向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第一の透明導電性基板の製造方法は、透明基材上に、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(C1)金属ナノ粒子および金属ナノファイバーの少なくとも一方からなる導電性物質とを含む前駆体分散液を塗布し、焼成した後、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す、ことを特徴とする。
本発明の第二の透明導電性基板の製造方法は、透明基材上に、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(C2)還元雰囲気下での加熱により金属ナノ粒子を析出する導電性物質前駆物とを含む前駆体液を塗布し、焼成した後、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す、ことを特徴とする。
本発明の透明導電性基板は、前記本発明の透明導電性基板の製造方法によって得られたものである。
本発明の透明導電性基板は、前記本発明の透明導電性基板の製造方法によって得られたものである。
本発明によれば、簡便な塗布法にて優れた導電性を発現する酸化チタン系透明導電性膜を形成することができ、これにより、良好な導電性を有する透明導電性基板を提供することができる。
本発明の第一の透明導電性基板の製造方法においては、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物(以下、「ニオブ化合物またはタンタル化合物」を纏めて「ドーパント化合物」と称し、「ニオブまたはタンタル」を纏めて「ドーパント」と称することもある)に過酸化水素を反応させた反応生成物とからなる金属酸化物前駆体含有液に、(C1)金属ナノ粒子および金属ナノファイバーの少なくとも一方からなる導電性物質を分散させた前駆体分散液を、膜形成材料とする。他方、本発明の第二の透明導電性基板の製造方法においては、前記(A)および(B)からなる金属酸化物前駆体含有液に、(C2)還元雰囲気下での加熱により金属ナノ粒子を析出する導電性物質前駆物を溶解させた前駆体液を、膜形成材料とする。
前記金属酸化物前駆体含有液は、(A)チタン化合物および(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物がペルオキシ化されてなる錯体(ペルオキシ錯体)であり、加熱によりニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンとなるものである。このように周期律表のVA族に属する5価のニオブまたはタンタルが酸化チタンにドープされた金属酸化物で形成された膜は、良好な導電性を発現する。本発明においては、さらに、この金属酸化物前駆体含有液の中に(C1)導電性物質を分散させておくか、もしくは(C2)導電性物質前駆物を溶解させておくことにより、前記金属酸化物(ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタン)の膜中に別の導電性物質が存在することとなるので、形成された透明導電性膜の抵抗はより低くなり、優れた導電性を発現させることができるのである。
本発明の第一の製造方法において(C1)導電性物質とする金属ナノ粒子や金属ナノファイバーとしては、例えば、アルミニウム、錫、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銀、金、白金、パラジウム、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、銅、マンガン、カルシウム、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等のナノ粒子やナノファイバーが挙げられる。これらの中でも、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属のナノ粒子やナノファイバーは、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンよりも導電性が高いので、より効果的に透明導電性膜の低抵抗化を図ることができる点で、特に好ましい。(C1)導電性物質は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、本発明において、金属ナノファイバーとは、いわゆる金属ナノロッドをも包含する。
前記金属ナノ粒子は、粒径(一次粒子径)が10nm以下であることが好ましい。粒径が10nmを超えると、成膜時にニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンのアナターゼ型への結晶成長が阻害されて、ドープ酸化チタンが発現する導電性を低下させるおそれがあり、さらに、着色原因となって膜の透明性を損なうおそれもある。金属ナノ粒子の粒径の下限は、特に制限されないが、通常、1nm以上である。
前記金属ナノ粒子の形状やサイズ分布については、特に制限されないが、表面が平滑な膜を形成するうえでは、粒子形状は、球状や立方体など対称性が良好な形状であることが好ましい。また、そのサイズ分布は、単分散、すなわち大きさが揃っていることが好ましい。
前記金属ナノ粒子の形状やサイズ分布については、特に制限されないが、表面が平滑な膜を形成するうえでは、粒子形状は、球状や立方体など対称性が良好な形状であることが好ましい。また、そのサイズ分布は、単分散、すなわち大きさが揃っていることが好ましい。
前記金属ナノファイバーは、直径が30nm以下であることが好ましい。金属ナノファイバーの直径が30nmを超えると、成膜時にニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンのアナターゼ型への結晶成長が阻害されて、ドープ酸化チタンが発現する導電性を低下させるおそれがあり、さらに、着色原因となって膜の透明性を損なうおそれもある。金属ナノファイバーの直径の下限は、特に制限されないが、通常、5nm以上である。
前記金属ナノファイバーの形状は、特に制限されないが、導電性の点では、アスペクト比(長さ/直径)が大きいほど、膜中で互いに接触する確率が高くなり、好ましい。但し、アスペクト比があまりに大きすぎると、膜の透明性を低下させるおそれがあるので、通常、金属ナノファイバーのアスペクト比(長さ/直径)は100〜1000の範囲であるのがよい。
なお、金属ナノファイバーは、分散時などに細かく分断されることがあるが、得られる透明導電性膜中に存在する金属ナノファイバーの長さの上限およびそのアスペクト比が上述した範囲であれば差し支えない。
前記金属ナノファイバーの形状は、特に制限されないが、導電性の点では、アスペクト比(長さ/直径)が大きいほど、膜中で互いに接触する確率が高くなり、好ましい。但し、アスペクト比があまりに大きすぎると、膜の透明性を低下させるおそれがあるので、通常、金属ナノファイバーのアスペクト比(長さ/直径)は100〜1000の範囲であるのがよい。
なお、金属ナノファイバーは、分散時などに細かく分断されることがあるが、得られる透明導電性膜中に存在する金属ナノファイバーの長さの上限およびそのアスペクト比が上述した範囲であれば差し支えない。
本発明の第一の製造方法において、膜形成材料とする前駆体分散液中の各成分(すなわち、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、(B)ドーパント化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、および(C1)導電性物質)の含有割合は、(A)および(B)の固形分合計量100重量部に対して、(C1)導電性物質が0.1〜20重量部となるようにすることが好ましい。(C1)導電性物質の量が前記範囲よりも少ないと、充分な導電性向上効果が期待できないおそれがあり、一方、前記範囲よりも多いと、膜の透明性を低下させるおそれがある。なお、ここで、(A)および(B)の固形分合計量は、後述する「金属酸化物前駆体含有液の固形分濃度」から求められる固形分重量に相当する。
本発明の第二の製造方法において、(C2)導電性物質前駆物は、還元雰囲気下での加熱により還元されて金属ナノ粒子を析出するものであり、最終的に得られる膜において透明性を損なわないものであればよく、例えば、アルミニウム、錫、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銀、金、白金、パラジウム、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、銅、マンガン、カルシウム、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の各種金属の塩化物、硝酸塩、酸化物のほか、金属酸塩、金属酸化物等が挙げられる。具体的には、例えば、塩化アルミニウム、塩化第一及び第二錫、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第一及び第二アンチモン、塩化第一及び第二鉄、硝酸銀、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第一セリウム、四塩化セレン、塩化第二銅、硝酸銅、塩化マンガン、塩化カルシウム、塩化第二白金、四塩化タングステン、オキシニ塩化タングステン、タングステン酸カリウム、塩化第二金、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、水酸化インジウム等が挙げられる。これらの中でも、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属を金属種とするものが、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンよりも導電性が高いので、より効果的に透明導電性膜の低抵抗化を図ることができる点で、特に好ましい。(C2)導電性物質前駆物は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、(C2)導電性物質前駆物は、前駆体液中で金属イオンと対イオンに分かれて存在することになる(例えば、硝酸塩であれば硝酸イオン、塩化物であれば塩化物イオンが対イオンとなる)。一般に、対イオンが最終的に得られる膜中に残存すると、導電性や透明性に悪影響を及ぼすことが懸念されるが、その多くは通常、還元雰囲気下での加熱により分解して揮散する。また、特に硝酸イオンおよび塩化物イオンは、たとえ膜中に残存しても、導電性や透明性を損なうことがない。この点から、前記導電性物質前駆物としては、硝酸塩または塩化物を用いることが好ましい。さらに、前記導電性物質前駆物として硝酸塩または塩化物を用いると、前駆体液の液性が酸性になるので、該液中のペルオキシ錯体が安定化され、前駆体液の保存安定性が向上するという効果も得られる。
前記(C2)導電性物質前駆物は、還元雰囲気下での加熱により還元されて金属ナノ粒子を析出するものであるが、析出する金属ナノ粒子の粒径は10nm以下であることが好ましい。析出する金属ナノ粒子の粒径が10nmを超えると、光がナノ粒子に散乱することにより、透明性が低下するおそれがある。析出する金属ナノ粒子の粒径の下限は、特に制限されないが、通常、1nm以上である。なお、析出する金属ナノ粒子の粒径は、膜形成材料とする前駆体液中に含有させる(C2)導電性物質前駆物の量によって調整することができ、具体的には、前駆体液中の各成分の含有割合を後述する範囲に設定すればよい。
本発明の第二の製造方法において、膜形成材料とする前駆体液中の各成分(すなわち、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、(B)ドーパント化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、および(C2)導電性物質前駆物)の含有割合は、(A)および(B)の固形分合計量100重量部に対して、(C2)導電性物質前駆物から析出する金属ナノ粒子の理論量(理論析出量)が0.1〜20重量部となるようにすることが好ましい。(C2)導電性物質前駆物の理論析出量が前記範囲よりも少ないと、充分な導電性向上効果が期待できないおそれがあり、一方、前記範囲よりも多いと、析出する粒子の粒径が大きくなりすぎる結果、膜の透明性が低下するおそれがある。なお、ここで、(A)および(B)の固形分合計量は、後述する「金属酸化物前駆体含有液の固形分濃度」から求められる固形分重量に相当する。
本発明の第一および第二の製造方法において膜形成材料とする前記前駆体分散液または前記前駆体液は、例えば、前記(A)の反応生成物と、前記(B)の反応生成物と、前記(C1)の導電性物質または(C2)の導電性物質前駆物とを混合することにより得ることができるが、その際の混合順序等は特に制限はされない。例えば、通常、前記(A)の反応生成物と前記(B)の反応生成物とからなる金属酸化物前駆体含有液(ペルオキシ錯体)を調製し、これに前記(C1)の導電性物質または(C2)の導電性物質前駆物を添加して、分散もしくは溶解させる方法が採用される。以下、この方法について詳述する。
前記金属酸化物前駆体含有液の調製は、i)(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させることにより得られた反応生成物であるチタンのペルオキシ錯体と、(B)ドーパント化合物に過酸化水素を反応させることにより得られた反応生成物であるドーパントのペルオキシ錯体とを所望の割合で混合することにより行ってもよいし、ii)(A)チタン化合物と(B)ドーパント化合物とを予め所望の割合で混合した混合物に対して過酸化水素を反応させることにより行ってもよい。
前記金属酸化物前駆体含有液を得るに際しては、(A)チタン化合物もしくは該チタン化合物由来のペルオキシ錯体と、(B)ドーパント化合物もしくは該ドーパント化合物由来のペルオキシ錯体との混合割合は、特に制限されないが、最終的に形成された酸化チタン膜におけるドーパント(ニオブまたはタンタル)の含有比率が0.1〜30モル%、好ましくは1〜25モル%となるようにすればよい。前記(B)(ドーパント化合物もしくは該ドーパント化合物由来のペルオキシ錯体)が前記範囲よりも少ないと、ドープ効果が不充分となり、導電性が低下するおそれがあり、一方、前記(B)が前記範囲よりも多いと、導電性が低下したり、膜の透明性が低下したりするおそれがある。
前記金属酸化物前駆体含有液を得るに際し、過酸化水素による反応(すなわち、ペルオキシ化反応)は、例えば、チタン化合物、ドーパント化合物またはこれらの混合物を適当な溶媒により溶解させ、必要に応じて攪拌しつつ、濃度1〜60重量%程度の過酸化水素水を添加することにより行うことができる。ペルオキシ化反応の反応時間は、通常1秒〜60分、好ましくは5分〜20分程度である。なお、過酸化水素によるペルオキシ化反応は、通常、激しい発熱を伴うので、反応は冷却しながら(具体的には、内温を−10℃以下に保つようにして)行うことが望ましい。反応後、さらに、−10℃以下に冷却しつつ熟成保持してもよい。
前記過酸化水素によるペルオキシ化反応に用いることのできる溶媒としては、特に制限はないが、水系やアルコール系等の水溶性溶剤が好ましく用いられる。具体的には、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール等が挙げられる。
前記(A)チタン化合物としては、チタン源としてTi原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化チタン(二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等)、チタンアルコキシド(メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等)、硫酸チタニル、金属チタン、水酸化チタン(オルトチタン酸)、オキシ硫酸チタン等を用いることができる。
前記(B)ドーパント化合物のうちニオブ化合物は、ニオブ源としてNb原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化ニオブ、ニオブアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属ニオブ、水酸化ニオブ等を用いることができる。他方、前記(B)ドーパント化合物のうちタンタル化合物は、タンタル源としてTa原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化タンタル、タンタルアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属タンタル、水酸化タンタル等を用いることができる。
なお、上記のうち、チタンアルコキシド、ニオブアルコキシド、タンタルアルコキシドは、水分と接触すると直ちに反応する不安定な物質なので、乾燥(低湿度)雰囲気で扱うことが好ましい。
なお、上記のうち、チタンアルコキシド、ニオブアルコキシド、タンタルアルコキシドは、水分と接触すると直ちに反応する不安定な物質なので、乾燥(低湿度)雰囲気で扱うことが好ましい。
前記金属酸化物前駆体含有液を得るに際しては、前記(A)チタン化合物および前記(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物として水酸化物を用いることが好ましい。具体的には、前記(A)として水酸化チタンを用い、前記(B)として水酸化ニオブまたは水酸化タンタルを用いるか、もしくは、これら水酸化物以外のチタン化合物およびドーパント化合物を用い、過酸化水素と反応させる前に予めアルカリあるいは水を加えるなどして水酸化し、生じた水酸化物の沈殿を分取、洗浄すればよい。このように、水酸化物を過酸化水素と反応させて得られたペルオキシ錯体であれば、炭素原子を含む有機部位が全く存在しないことになり、高温に加熱して有機部位を分解・揮散させる必要がないため、酸化物に変換する際の加熱温度を比較的低温に設定することができるので好ましい。例えば、水酸化物以外のチタン化合物およびドーパント化合物をそのまま用いて過酸化水素と反応させた場合には、得られたペルオキシ錯体の一部に有機部位が存在することになり、この有機部位を分解・揮散させるためには、少なくとも400℃以上、好ましくは500〜600℃程度の温度に加熱することが必要になる。
前記金属酸化物前駆体含有液の固形分濃度は、通常、10重量%以下とするのが好ましく、特に、膜形成材料(前駆体分散液または前駆体液)の保存安定性(ポットライフ)の観点からは、2重量%以下であるのがより好ましい。固形分濃度が10重量%を超えると、膜形成材料の保存安定性が大幅に低下し、塗布時に粘度が上昇するので、透明基材上に均一に塗布することが困難になるおそれがある。なお、ここでいう固形分濃度は、金属酸化物前駆体含有液を得る際に用いたチタン化合物およびドーパント化合物の合計重量が、金属酸化物前駆体含有液の全重量中に占める割合(重量%)を意味するものである。
前記(C1)導電性物質を前記金属酸化物前駆体含有液に分散させるに際しては、i)導電性物質を粉体の状態で金属酸化物前駆体含有液に添加し、その後で分散機(例えば、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル等)により分散処理を施すようにしてもよいし、ii)導電性物質を分散媒に分散させるか、もしくはボトムアップで液相から導電性物質を合成して得られた反応液に必要に応じて分散処理を施すことにより、あらかじめ導電性物質の分散体を調製し、この分散体を金属酸化物前駆体含有液に添加するようにしてもよい。また、例えば、市販の金属ナノ粒子分散液や金属ナノファイバー分散液を金属酸化物前駆体含有液に添加するようにしてもよいことは勿論である。なお、上記ii)のように導電性物質をあらかじめ分散体として添加する場合にも、分散体の添加後に、分散機にて分散処理を施すことが好ましい。
導電性物質の分散体を調製する場合、分散媒としては、金属酸化物前駆体含有液(ペルオキシ錯体)との相溶性の観点から、金属酸化物前駆体含有液と同一系統の溶媒を用いることが好ましく、例えば、水あるいはアルコール系の極性溶媒(水溶性溶媒)が好適である。導電性物質の分散体と金属酸化物前駆体含有液の溶媒の種類が大きく異なると、両者を混合した際に、ソルベントショックにより導電性物質が凝集して沈降してしまうおそれがある。なお、導電性物質の分散体には、最終的に得られる膜の透明性や導電性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、各種添加剤、分散剤、界面活性剤等を含有させることもできる。
前記(C2)導電性物質前駆物を前記金属酸化物前駆体含有液に溶解させるに際しては、i)導電性物質前駆物を金属酸化物前駆体含有液に直接添加して溶解させてもよいし、ii)導電性物質前駆物をあらかじめ水あるいはアルコール系の極性溶媒(水溶性溶媒)等に溶解させておき、これを金属酸化物前駆体含有液に添加するようにしてもよい。
本発明の第一および第二の透明導電性基板の製造方法は、透明基材上に、前記膜形成材料(前駆体分散液または前駆体液)を塗布し、焼成した後、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す。
前記透明基材としては、熱が付加される各工程(後述する焼成およびアニール処理など)における加熱温度で形状を維持しうるものであり、かつ透明性を有するものであれば、特に制限はない。例えば、各種ガラス等の無機材料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミドなどのプラスチック類)等の高分子材料などで形成された板状物、シート状物、フィルム状物等を用いることができる。透明基材の可視光透過率は、通常、90%以上、好ましくは95%以上であるのがよい。
前記透明基材としては、熱が付加される各工程(後述する焼成およびアニール処理など)における加熱温度で形状を維持しうるものであり、かつ透明性を有するものであれば、特に制限はない。例えば、各種ガラス等の無機材料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミドなどのプラスチック類)等の高分子材料などで形成された板状物、シート状物、フィルム状物等を用いることができる。透明基材の可視光透過率は、通常、90%以上、好ましくは95%以上であるのがよい。
前記膜形成材料を透明基材の上に塗布する際の塗布方法は、均一にウェットコーティングできる方法であれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、キャピラリコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法等を採用することができる。なお、膜形成材料として前駆体分散液を用いる場合には、該前駆体分散液中の導電性物質は、透明基材上に塗布する時点において、均一に分散していることが望ましく、例えば、塗布直前に分散機を用いて分散処理を施すようにしてもよい
前記膜形成材料を塗布するに際し、塗布量は特に制限されるものではなく、例えば、最終的に形成される膜の厚み(ドライ膜厚)が10nm〜300nmとなるようにすればよい。最終的に形成されたドライ膜厚が前記範囲よりも小さいと、基材に凹凸が存在する場合などに部分的に塗布されにくい箇所や実際に塗布されていない箇所が生じるおそれがあり、一方、前記範囲よりも大きいと、透明性が低下するおそれがある。なお、このような厚みに膜形成材料を塗布する際には、1回の塗布作業で行ってもよいし、複数回の塗布作業を重ねて行うようにしてもよい。
前記膜形成材料を塗布した後の基板は、続いて焼成に付する。これにより、基材上のペルオキシ錯体(前駆体液)はNbまたはTaドープ酸化チタンに変化する。このときの結晶状態は、通常、アモルファス相からアナターゼ結晶相となる。
焼成の際の加熱温度は、例えば、室温〜500℃、好ましくは400℃以下とするのがよい。焼成時の加熱温度が高すぎると、安定した結晶相が析出し、アニール処理効果の発現が見られなくなるおそれがある。また、焼成時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、1分〜1時間程度である。なお、焼成は、どのような雰囲気下で行ってもよく、特に制限はされない。例えば塗布した膜形成材料の固形分濃度が低い場合などには、焼成に先立ち、真空乾燥や減圧乾燥等の手段によって溶媒を均一に揮散させてもよく、これにより、均一な膜を形成しやすくなる。
本発明においては、焼成した後の基板に対し、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す。これにより、膜を形成するNbまたはTaドープ酸化チタンに酸素欠損を生じさせて導電性を向上させることができる。しかも、通常、酸素欠損を導入すると抵抗の高いルチル結晶相に変化しやすい傾向となるが、本発明においては、酸化チタンにドープしたニオブまたはタンタルが、酸素欠損を導入してもアナターゼ結晶相を安定化させる作用をなすため、高い導電性を発現しうる結晶状態を維持させることができる。また、前記膜形成材料として(C2)導電性物質前駆物を含む前駆体液を用いた場合には、該アニール処理によって導電性物質を膜中に析出させることができる。
前記アニール処理の際の還元雰囲気には、特に制限はなく、例えば、窒素、一酸化炭素、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素、真空、アンモニア、不活性ガス(アルゴン等)、あるいはこれらの混合ガスの雰囲気など、一般的な還元雰囲気であればよい。好ましくは、強還元雰囲気である水素雰囲気(水素ガス100%雰囲気)を採用するのがよい。
前記アニール処理における加熱温度は、使用する透明基材の耐熱温度に応じて適宜設定すればよい。例えば、無アルカリガラスを透明基材として用いる場合には、通常550℃以下、好ましくは250〜550℃であり、また、高分子材料からなるフィルム、シート、板状物等を透明基材として用いる場合には、通常250〜500℃、好ましくは250〜350℃であるのがよい。アニール処理時間(加熱時間)は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、1分〜1時間程度である。
以上のような方法によって、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンの多結晶体からなる膜中に導電性物質((C1)の導電性物質または(C2)の導電性物質前駆物由来の析出物)が均一に分散して存在した透明導電性膜が、透明基材上に形成される。このような透明導電性膜は、良好な透明性を備えると同時に、高い導電性を発現するものである。具体的には、本発明の製造方法により得られた透明導電性基板の透過率は、可視光領域で、通常75%以上、好ましくは80%以上であり、赤外領域で、通常70%以上、好ましくは75%以上である。また、本発明の製造方法により得られた透明導電性基板の比抵抗は、通常9×10-3Ω・cm以下、好ましくは8×10-3Ω・cm以下である。なお、これらの透過率および比抵抗は、例えば実施例で後述する方法によって測定することができる。
本発明の透明導電性基板は、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、プラズマディスプレイ等のディスプレイ電極、太陽電池の電極、窓ガラスの熱線反射膜、帯電防止膜等の用途に好適に用いられる。
なお、上述した本発明の製造方法では、前記膜形成材料は透明基材の上に直接塗布しているが、例えば液晶ディスプレイのようなデバイス等の透明電極用途においては、透明基材の上に着色膜(カラーフィルター)等の中間膜を介在させ、それらの上に直接前記膜形成材料を塗布するようにしてもよく、このように透明基材と透明導電性膜との間に中間膜を介在させた態様も本発明の範囲に包含される。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
なお、透明導電性基板の物性は以下の方法で測定した。
なお、透明導電性基板の物性は以下の方法で測定した。
<比抵抗> 比抵抗は、低抵抗率計(三菱化学(株)製「LORESTA−GP,MCP−T610」)を用いて、四探針法により測定した。詳しくは、サンプルに4本の針状の電極を直線上に置き、外側の二探針間に一定の電流を流し、内側の二探針間に一定電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定し、抵抗を求めた。
<透過率> 透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製「V−670」)を用いて、190nm〜2700nmの範囲で測定した。
<結晶性> X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用いて、薄膜測定用のアタッチメントを使用して結晶性を評価した。
(実施例1)
まず、アルゴンガス雰囲気中でチタンテトライソプロポキシド4.0gを脱水エタノール28.5g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水8.0gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキシ化反応させた。なお、反応は、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をチタンペルオキシ錯体(a1)とした。
まず、アルゴンガス雰囲気中でチタンテトライソプロポキシド4.0gを脱水エタノール28.5g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水8.0gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキシ化反応させた。なお、反応は、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をチタンペルオキシ錯体(a1)とした。
他方、アルゴンガス雰囲気中でニオブペンタエトキシド1.5gを脱水エタノール19.2g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水1.6gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキシ化反応させた。なお、反応は、上記と同様に、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をニオブペルオキシ錯体(b1)とした。
次に、上記チタンペルオキシ錯体(a1)と、上記ニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。この前駆体液に、該前駆体液の固形分合計量100重量部に対して3重量部に相当する量の銀ナノファイバーを含む均一分散液(Cambrios社製;銀ナノファイバーのサイズ:直径30nm、長さ20μm、固形分濃度:約5重量%、溶媒:水+エチレングリコール、分散剤使用)を添加し、スターラーにて均一攪拌して、銀ナノファイバーが分散した前駆体分散液を得た。
次いで、上記前駆体分散液を、透明基材(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)の上に、ドライ膜厚100nmとなるように、スピンコーターにて1回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)し、その後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施して、透明導電性基板を得た。この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、高結晶性のアナターゼ型であり、銀ナノファイバーは膜中に均一に分散していた。つまり、銀ナノファイバーが膜中に存在することによってニオブドープ酸化チタンのアナターゼ型への結晶化が阻害されることはなかった。なお、膜中の銀ナノファイバーのサイズについて、電解放射型電子顕微鏡(FE−SEM)により測定したところ、直径約10nm、長さ約3μmであった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は3.5×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は3.5×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
(実施例2)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。この前駆体液に、該前駆体液の固形分合計量100重量部に対して5重量部に相当する量の金ナノ粒子を含む均一分散液(京都ナノケミカル(株)製「シングルナノ金分散液」;金ナノ粒子の1次サイズ:粒径(直径)3〜5nm、固形分濃度:10mM、溶媒:水のみ、分散剤(ポリエチレンイミン)少量使用、金原子に対してモル比で4倍に相当する量の塩化物イオン含有)を添加し、スターラーにて均一攪拌して、金ナノ粒子が分散した前駆体分散液を得た。
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。この前駆体液に、該前駆体液の固形分合計量100重量部に対して5重量部に相当する量の金ナノ粒子を含む均一分散液(京都ナノケミカル(株)製「シングルナノ金分散液」;金ナノ粒子の1次サイズ:粒径(直径)3〜5nm、固形分濃度:10mM、溶媒:水のみ、分散剤(ポリエチレンイミン)少量使用、金原子に対してモル比で4倍に相当する量の塩化物イオン含有)を添加し、スターラーにて均一攪拌して、金ナノ粒子が分散した前駆体分散液を得た。
次いで、上記前駆体分散液を、透明基材(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)の上に、ドライ膜厚100nmとなるように、スピンコーターにて1回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)し、その後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施して、透明導電性基板を得た。この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、高結晶性のアナターゼ型であり、金ナノ粒子は膜中に均一に分散していた。つまり、金ナノ粒子が膜中に存在することによってニオブドープ酸化チタンのアナターゼ型への結晶化が阻害されることはなかった。なお、膜中の金ナノ粒子の粒径(直径)について、電解放射型電子顕微鏡(FE−SEM)により測定したところ、約5nmであった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は4.0×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は4.0×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
(実施例3)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。この前駆体液に、該前駆体液の固形分合計量100重量部に対して5重量部に相当する量の銀ナノ粒子を含む均一分散液(京都ナノケミカル(株)製「シングルナノ銀分散液」;銀ナノ粒子の1次サイズ:粒径(直径)3〜5nm、固形分濃度:10mM、溶媒:水が主成分(メタノール0.8%、ホルムアルデヒド3%含有)、分散剤(ポリエチレンイミン)少量使用、銀原子に対してモル比で1倍に相当する量の硝酸イオン含有)を添加し、スターラーにて均一攪拌して、銀ナノ粒子が分散した前駆体分散液を得た。
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。この前駆体液に、該前駆体液の固形分合計量100重量部に対して5重量部に相当する量の銀ナノ粒子を含む均一分散液(京都ナノケミカル(株)製「シングルナノ銀分散液」;銀ナノ粒子の1次サイズ:粒径(直径)3〜5nm、固形分濃度:10mM、溶媒:水が主成分(メタノール0.8%、ホルムアルデヒド3%含有)、分散剤(ポリエチレンイミン)少量使用、銀原子に対してモル比で1倍に相当する量の硝酸イオン含有)を添加し、スターラーにて均一攪拌して、銀ナノ粒子が分散した前駆体分散液を得た。
次いで、上記前駆体分散液を、透明基材(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)の上に、ドライ膜厚100nmとなるように、スピンコーターにて1回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)し、その後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施して、透明導電性基板を得た。この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、高結晶性のアナターゼ型であり、銀ナノ粒子は膜中に均一に分散していた。つまり、銀ナノ粒子が膜中に存在することによってニオブドープ酸化チタンのアナターゼ型への結晶化が阻害されることはなかった。なお、膜中の銀ナノ粒子の粒径(直径)について、電解放射型電子顕微鏡(FE−SEM)により測定したところ、約5nmであった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は4.1×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は4.1×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
(実施例4)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。この前駆体液に、該前駆体液の固形分合計量100重量部に対して5重量部に相当する量の銀を理論的に析出する量の硝酸銀を含む水溶液(固形分濃度:10重量%、溶媒:水のみ)を添加し、スターラーにて均一攪拌して、銀イオンが溶解してなる銀イオン含有前駆体液を得た。
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。この前駆体液に、該前駆体液の固形分合計量100重量部に対して5重量部に相当する量の銀を理論的に析出する量の硝酸銀を含む水溶液(固形分濃度:10重量%、溶媒:水のみ)を添加し、スターラーにて均一攪拌して、銀イオンが溶解してなる銀イオン含有前駆体液を得た。
次いで、上記銀イオン含有前駆体液を、透明基材(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)の上に、ドライ膜厚100nmとなるように、スピンコーターにて1回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)し、その後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施して、透明導電性基板を得た。この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、高結晶性のアナターゼ型であり、銀ナノ粒子が膜中に均一に分散していた。つまり、前駆体液中の銀イオンは、還元雰囲気下でアニールした際に金属銀に還元され、銀ナノ粒子として膜中に均一に析出しており、該銀ナノ粒子が膜中に存在することによってニオブドープ酸化チタンのアナターゼ型への結晶化が阻害されることはなかった。なお、析出した銀ナノ粒子の粒径(直径)について、電解放射型電子顕微鏡(FE−SEM)により測定したところ、約5nmであった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は3.6×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は3.6×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。
この前駆体液を、透明基材(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚100nmとなるように、スピンコーターにて1回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)し、その後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施して、透明導電性基板を得た。この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、高結晶性のアナターゼ型であった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は5.0×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、固形分濃度7重量%の前駆体液とした。
この前駆体液を、透明基材(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚100nmとなるように、スピンコーターにて1回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)し、その後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間アニール処理を施して、透明導電性基板を得た。この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、高結晶性のアナターゼ型であった。
得られた透明導電性基板の比抵抗は5.0×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。
Claims (8)
- 透明基材上に、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(C1)金属ナノ粒子および金属ナノファイバーの少なくとも一方からなる導電性物質とを含む前駆体分散液を塗布し、焼成した後、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す、ことを特徴とする透明導電性基板の製造方法。
- 前記金属ナノ粒子の粒径が10nm以下である、請求項1記載の透明導電性基板の製造方法。
- 前記金属ナノファイバーの直径が30nm以下である、請求項1記載の透明導電性基板の製造方法。
- 前記前駆体分散液における(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、および(C1)導電性物質の含有割合は、(A)および(B)の固形分合計量100重量部に対して、(C1)導電性物質が0.1〜20重量部となるようにする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性基板の製造方法。
- 透明基材上に、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と、(C2)還元雰囲気下での加熱により金属ナノ粒子を析出する導電性物質前駆物とを含む前駆体液を塗布し、焼成した後、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す、ことを特徴とする透明導電性基板の製造方法。
- 前記還元雰囲気下での加熱により析出する金属ナノ粒子の粒径が10nm以下である、請求項5記載の透明導電性基板の製造方法。
- 前記前駆体液における(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物、および(C2)還元雰囲気下での加熱により金属ナノ粒子を析出する導電性物質前駆物の含有割合は、(A)および(B)の固形分合計量100重量部に対して、(C2)導電性物質前駆物から析出する金属ナノ粒子の理論量が0.1〜20重量部となるようにする、請求項5または6記載の透明導電性基板の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られた透明導電性基板。
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JP2012109063A (ja) * | 2010-11-16 | 2012-06-07 | Peccell Technologies Inc | 光電変換素子の作製方法、光電変換素子及び光電池 |
US10564780B2 (en) | 2015-08-21 | 2020-02-18 | 3M Innovative Properties Company | Transparent conductors including metal traces and methods of making same |
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2008
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