JP2010077538A - 基盤加熱ヒータ - Google Patents

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Abstract

【課題】サイズが大きい基板を均一な温度に保って製膜処理を行う。
【解決手段】基板Kを指示するヒータカバー115の中央の温度を計測し、ヒータカバー115の中央における計測温度が目標温度に近づくように、PID制御によりヒータカバー115中央におけるヒータ116の発熱量を決める。ヒータカバー115の中央領域以外の領域に対しては、領域ごとに決められた比例係数に基づいて、ヒータカバー115中央におけるヒータ116の発熱量に比例する発熱量でヒータ116が発熱される。タクトタイム(基板Kが製膜室112に入れられ、製膜処理が施され、製膜室112から導出されるまでの時間)が短い場合ほど、基板Kの中央付近と基板Kの端部とのヒータ116の発熱量の差は小さく制御される。
【選択図】図1

Description

本発明は、基板加熱ヒータに関する。
真空処理装置としてプラズマCVD(ChemicalVapourDeposition)装置、スパッタリング装置、ドライエッチング装置などが知られている。それら真空処理装置において基板が処理される際、その基板は基板加熱ヒータにより加熱される。これにより適正な基板処理条件が満たされる。
製膜装置、例として大型の太陽電池パネルの製膜を行うためのプラズマCVD装置においては、製膜処理の対象となる基板がヒータカバー上に設置され、ヒータカバーに対して基板と反対側のヒータにより加熱される。そして所定の温度条件のもとで、製膜処理が行われる。基板は全体が均一な温度とされることが好ましい。基板のサイズが大きい場合には、基板の全体が均一な温度となるような制御が必要とされる。
図1は、特許文献1に記載された真空処理装置と基板加熱ヒータの構造を示す概略図である。基板処理装置111は製膜室112を備え、製膜室112は図示しない真空ポンプによって減圧される。製膜室112内には、ラダー電極(放電電極)113などを備える製膜ユニット114が設置されている。この製膜ユニット114の両側に、ヒータカバー115を介して基板加熱ヒータ116が設置されている。ヒータカバー115は接地電極である。被処理体である基板Kは、ラダー電極113に対向するように配置され、ヒータカバー115により支持される。基板Kが図示されない基板搬送装置により搬入されヒータカバー115に設置された後、基板搬送台車は搬出され、ヒータカバー115は基板加熱ヒータ116から製膜ユニット114方向へ移動する。その結果、ヒータカバー115とラダー電極(放電電極)113との距離は所定の距離となる。基板Kを基板加熱ヒータ116により加熱しながら製膜処理などが行われる。
図1に示されるように、この基板加熱ヒータ116は、複数のヒータユニット121から構成されている。ヒータユニット121は、導入パイプ122が接続された集電ボックス123と、複数のカートリッジヒータ(棒状ヒータ)124を備える。導入パイプ122は、製膜室112の壁面を通して外部へ接続され、発熱エレメントへ電力を供給する配線類が製膜室112外部へと導出されている。この時、製膜室112は、真空シール(図示されない)で密閉されている。複数のカートリッジヒータ124は、互いに間隔をあけて略平行に設置されている。また、各々のカートリッジヒータ124は、管体と、その管体内に配設された発熱エレメント(発熱体)を備える。その発熱エレメントに電力が供給され、カートリッジヒータ124は発熱する。管体は集電ボックス123とともに気密に構成され、その内部は略大気圧に保たれる。
このようなカートリッジ型の基板加熱ヒータ116は、軽量化及び低コスト化の面で優れる。また、カートリッジヒータ124を長尺化させ、またカートリッジヒータ124の本数を増加させることによって、このような基板加熱ヒータ116を、被処理体である基板Kの大型化に対応させることは容易である。更に、発熱エレメント(コイル)の巻き密度の分布をあらかじめ設定することにより、基板加熱ヒータ116は発熱量に分布が生じるように構成され得る。
特開2002−212738号公報
本発明および参考例の目的は、基板処理条件に合わせて発熱量の分布を制御することができる基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置を提供することである。
本発明および参考例の他の目的は、基板温度の分布が最適になるように調整することができる基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置を提供することである。
本発明および参考例のさらに他の目的は、容易に大型化できる基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置を提供することである。
本発明および参考例のさらに他の目的は、温度のハンチングを抑制する基板加熱ヒータ、及び真空処理装置を提供することである。
本発明および参考例のさらに他の目的は、製膜処理のタクトタイム(基板が製膜処理を施されて送出されるのにかかる平均時間)が短い場合に、上記の目的を達成する基板加熱ヒータ、及び真空処理装置を提供することである。
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
本発明の参考例による基板加熱ヒータは、基板を保持するヒータカバー(60)と、ヒータカバー(60)に対向するヒータ(40)とを備えている。ヒータ(40)は各々が第1方向に長く、かつ第1方向に垂直な第2方向に平行に並んで複数配列された棒状ヒータ(10、210)を備えている。ここで例えば、基板加熱ヒータの加熱領域を第2の方向である水平方向へ1、2、3、4、5の5つの領域に分けて温度制御を行う場合について、本発明の説明を行うこととする。基板加熱ヒータは更に、ヒータカバー(60)の中央領域における温度を検出する温度検出部(63)と、温度に応答して中央領域(3)に対応する位置におけるヒータ(40)の中央発熱密度を制御し、中央領域(3)に対して第2方向に隣接する隣接領域(1、2、4、5)に対応する位置におけるヒータ(40)の隣接発熱密度が中央発熱密度に比例するように制御する制御部(65、67)とを備えている。
本発明の参考例による基板加熱ヒータにおいて、中央発熱密度は、温度を目標温度に近づけるためにPID(Proportional、Integral、Differential)制御により制御される。
本発明の参考例による基板加熱ヒータにおいて、中央領域(3)はヒータの中心部に対応する位置である。隣接領域(1、2、4、5)は中央領域よりもヒータの周縁部に対応する位置である。隣接発熱密度は中央発熱密度よりも大きい。
本発明の参考例による基板加熱ヒータにおいて、棒状ヒータ(10、210)の各々は、第1発熱部(11、256)と、第2発熱部(12、257)と、第3発熱部(13、258)とを含んでいる。第2発熱部(12、257)は第1発熱部(11、256)と第3発熱部(13、258)との間に位置している。制御部(65、67)は、第1発熱部(11)の第1発熱密度が第2発熱部(12)の第2発熱密度に比例し、かつ、より大きくなるように制御する。
本発明の参考例による基板加熱ヒータにおいて、棒状ヒータ(10、210)の各々は、第1発熱部(11、256)と、第2発熱部(12、257)と、第3発熱部(13、258)とを含んでいる。第2発熱部(12、257)は第1発熱部(11、256)と第3発熱部(13、258)との間に位置している。制御部(65、67)は、第3発熱部(13、258)の第3発熱密度が第2発熱部(12、257)の第2発熱密度に比例し、かつ、より大きくなるように制御する。また、比較的運転条件が一定であるもので、第1発熱部(256)と第2発熱部(247)と第3発熱部(258)の発熱密度比が一定条件で固定して運用できるものについては、予め第1発熱部(256)と第2発熱部(247)と第3発熱部(258)の発熱密度を発熱エレメントの巻数などで設定しておくことで、制御を簡素化することができる。
本発明による基板加熱ヒータは、基板(61)を保持するヒータカバー(60)と、ヒータカバー(60)に対向するヒータと、ヒータカバー(60)の中央領域における温度を検出する温度検出部(63)と、温度に応答して中央領域(3)に対応する位置におけるヒータの中央発熱密度を制御し、中央領域(3)に隣接する隣接領域(1、2、4、5)に対応する位置におけるヒータの隣接発熱密度が中央発熱密度に比例するように制御する制御部(65、67)と、隣接発熱密度の中央発熱密度に対する比例係数を対応づけるテーブルと、を備えている。
本発明による基板加熱ヒータにおいて、中央発熱密度は、温度を目標温度に近づけるPID(Proportional、Integral、Differential)制御により制御される。
本発明による基板加熱ヒータにおいて、中央領域(3)は基板(61)の略中心部領域に対応する位置である。隣接領域(1、2、4、5)は中央領域よりもヒータの周縁部に対応する位置である。隣接発熱密度は中央発熱密度よりも大きい。
本発明による基板加熱ヒータにおいて、ヒータ(40)は、中央領域に対して上側にあるヒータカバー(60)の周縁部である第3領域(1’、2’、3’、4’、5’)に対応する位置において、中央発熱密度に比例し、かつ中央発熱密度よりも大きい第3発熱密度で加熱する第3発熱部(13、258)を備える。
本発明による基板加熱ヒータにおいて、ヒータ(40)は、中央領域に対して下側にあるヒータカバー(60)の周縁部である第1領域(1”、2”、3”、4”、5”)に対応する位置において、中央発熱密度に比例し、かつ中央発熱密度よりも大きい第1発熱密度で加熱する第1発熱部(11、256)を備える。
本発明の参考例による真空処理装置(111)は、真空ポンプにより減圧される製膜室(112)と、製膜室(112)に設置された請求項1から10のうちのいずれか1項に記載された基板加熱ヒータと、基板加熱ヒータにより加熱された基板に製膜処理を施す製膜処理装置とを備えている。
本発明の参考例による真空処理装置(111)は、基板(61)が製膜室(112)に導入され製膜処理を施されて製膜室(112)から導出されるまでの時間を示すタクトタイムと、隣接発熱密度の中央発熱密度に対する比例係数とを対応づけるテーブル(62)を記憶する記憶部と、タクトタイムと中央発熱密度とを収集し、収集されたタクトタイムにテーブルにおいて対応する比例係数を、収集された中央発熱密度に積算した値を隣接発熱密度とする隣接発熱密度制御部(67)とを備えている。
本発明の参考例による真空処理装置の運転方法は、基板(61)が製膜室(112)に導入され製膜処理を施されて製膜室(112)から導出されるまでの時間を示すタクトタイムと、隣接発熱密度の中央発熱密度に対する比例係数とを対応づけるテーブル(62)を参照して、タクトタイムと中央発熱密度とを収集し、収集されたタクトタイムにテーブルにおいて対応する比例係数を、収集された中央発熱密度に積算した値を隣接発熱密度として設定する。
本発明および参考例によれば、基板処理条件に合わせて発熱量の分布を制御することができる基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置が提供される。
更に本発明および参考例によれば、基板温度の分布が最適になるように調整することができる基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置が提供される。
更に本発明および参考例によれば、容易に大型化できる基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置が提供される。
更に本発明および参考例によれば、温度のハンチングを抑制する基板加熱ヒータ、及び真空処理装置が提供される。
更に本発明および参考例によれば、製膜処理のタクトタイム(基板が製膜処理を施されて送出されるのにかかる平均時間)が短い場合に、上記の目的を達成する基板加熱ヒータ、及び真空処理装置が提供される。
図1は、背景技術における真空処理装置の構成を示す。 図2は、本発明および参考例による真空処理装置の構成を示す。 図3は、棒状ヒータの構成を示す。 図4は、棒状ヒータの制御装置の構成を示す。 図5は、関数テーブルを示す。 図6は、基板加熱ヒータの領域を示す。 図7は、基板加熱ヒータおよび真空処理装置の動作を示すフローチャートである。 図8は、タクトタイムに対するヒータカバー内の温度偏差を示す。 図9は、棒状ヒータの構成を示す。
以下、添付図面を参照しながら、本発明および参考例による基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置について説明する。
図2は、本発明および参考例に係る基板処理装置の構成の一例を示す概略図である。基板処理装置100は製膜室80を備えている。製膜室80は図示しない真空ポンプによって減圧される。製膜室80内には、放電電極(ラダー電極)81を備える製膜ユニット82が設置されている。この放電電極81に対向するようにヒータカバー60が設置される。ヒータカバー60は接地電極である。ヒータカバー60に対して放電電極81の反対側には基板加熱ヒータ40が設置される。被処理体である基板61は、ヒータカバー60によって支持されることにより、放電電極81に対向するように配置される。
基板61は、図示されない基板搬送台車により製膜室80に搬入される。基板搬送台車が製膜室80から出た後、ヒータカバー60は製膜ユニット82の方へ移動し、製膜時の所定位置にセットされる。
本発明および参考例において、基板加熱ヒータ40は、複数の棒状ヒータ(ヒータカートリッジ)10と、その複数の棒状ヒータ10の各々へ電力を供給するために接続される複数の温度制御部50を備える。また、図2に示されるように、基板加熱ヒータ40は複数のヒータユニット41を含んでもよい。ヒータユニット41は、複数の棒状ヒータ10と、その複数の棒状ヒータ10の各々へ電力を供給するために接続される複数の温度制御部50を一つの単位として備える。複数の温度制御部50は、製膜室80外部の大気雰囲気中にあってもよい。基板加熱ヒータ40をこのヒータユニット41へ分割することで、組立作業や保守作業が容易になる。
図3を参照すると、棒状ヒータ10の構成が示されている。図中の矢印Aはヒータカバー60が存在する方向を示す。本実施の形態において、棒状ヒータ10は複数の発熱部を有する。例えば図3において、棒状ヒータ10は、上部発熱部11、中央発熱部12、下部発熱部13を備える。これら発熱部は棒状ヒータ10の長手方向に沿って分布している。また、中央発熱部12は、上部発熱部11と下部発熱部13との間に位置する。ここで、棒状ヒータ10の上部発熱部11と下部発熱部13の長さは、中央発熱部12の長さの0.1〜0.2倍の値に設定される。また、棒状ヒータ10の端部には、それら発熱部を挟むように上部非発熱部14と下部非発熱部15が存在し、これにより発熱部に電力の供給を安定して行えるようになっている。
棒状ヒータ10の外殻は管体30で構成される。管体30は屈曲部31を有し、下部発熱部13及び下部非発熱部15の一部で屈曲している。後述されるように、これは下部非発熱部15をヒータカバー60(矢印A方向)から隔離するためである。棒状ヒータ10の一端部は、集電ボックス32に接続される。集電ボックス32は端子台33を備える。端子台33には、導入パイプ34を用いて真空雰囲気である製膜室80の壁面を通過して大気下の外部へと通された導電線35が接続される。ここで、棒状ヒータ10、集電ボックス32、及び導入パイプ34は、それらの内部が略大気圧となるように導入パイプ34の周囲を図示していないOリングシールなどを用いて密閉してあり、ガスなどが製膜室80内へ漏出しないように処置してある。これにより、棒状ヒータの内部が大気圧となるために棒状ヒータ内部の伝熱が促進されるとともに、放電電圧が高くなるので、後述の発熱エレメント付近での異常放電の発生が抑制される。
管体30の内部には、複数の発熱部に対応するように、例えば発熱素線をコイル状に巻くことで発熱密度を調整した複数の発熱エレメント(発熱体)が設けられる。上部発熱部11に対応する位置には上部発熱エレメント21が配設される。中央発熱部12に対応する位置には中央発熱エレメント22が配設される。下部発熱部13に対応する位置には下部発熱エレメント23が配設される。例えば図3に示される様に、管体30の内部には二本の導電線20a、20bが配設されている。導電線20aは、上部発熱エレメント21と下部発熱エレメント23を含む。また、導電線20bは、中央発熱エレメント22を含む。それら導電線20a、20bは端子台33に接続されている。
導電線20a、20bには、複数の温度制御部50(図2参照)から導電線35を介して電力が供給される。導電線20aに電力が供給されると、上部発熱エレメント21、下部発熱エレメント23が発熱する。導電線20bに電力が供給されると、中央発熱エレメント22が発熱する。ここで、導電線20aに供給される電力と、導電線20bへ供給される電力とは、複数の温度制御部50によって別々に制御される。すなわち、上部、下部発熱エレメント21、23における発熱量と中央発熱エレメント22における発熱量は別々に制御される。これにより、棒状ヒータ10の発熱量の分布、特に長手方向の発熱量の分布を制御することが可能になる。
図3に示すように、管体30は屈曲部31を有する。下部非発熱部15や集電ボックス32などの配線部はヒータカバー60(矢印A方向)から離れて位置するようになる。これにより、ヒータカバー60は一部の上部非発熱部14を除いて、発熱が制御された部分に対面するようになる。この時、上部非発熱部14もヒータカバー60から離れて位置するようになるので、上部発熱部11からの輻射伝熱とヒータカバー60内部の熱伝導により、ヒータカバー60上部も加熱されることになる。従って、ヒータカバー60をより均一に加熱することが可能になる。但し、棒状ヒータ10の形状は図3に示される形状に限られない。例えば、真空容器80に下部非発熱部15の設置スペースが許せば、これをヒータカバー60側に設置した形状として、棒状ヒータ10が屈曲部がない直管構造であっても良い。逆に、上部非発熱部14のスペースを少なくするために、棒状ヒータ10の上下に屈曲部を設けても良い。
図4を参照すると、図3にしめされた棒状ヒータ10を制御する制御手段の構成が示されている。棒状ヒータ10(基板加熱ヒータ40)に対向するようにヒータカバー60が配置されている。基板61は、ヒータカバー60により棒状ヒータ10の反対側に支持される。棒状ヒータ10の上部、下部、裏面、及び図示されていない基板ヒータ両端部分には、反射板45が設けられ、ヒータカバー60への有効な均一加熱が可能となっている。
図4において、棒状ヒータ10に導電線35を介して中央温度制御部65と周辺温度調整器67が接続される。中央温度制御部65は更に、上位コンピュータ69に接続されている。上位コンピュータ69からは例えば目標設定温度などの基板加熱ヒータ40の運転条件を指示し、更には中央温度制御部65の演算で使用するP、I、D値などの関数値を指示することも出来る。ヒータカバー60の後述する領域3には、中央温度計測用熱電対57が接続された中央温度センサー63が接続されている。ここで、中央の領域3の計測用熱電対57は基板61の略中央付近が望ましく、更には領域3全体の温度を検出するために、計測用熱電対57を複数箇所へ設置して、その前部または一部代表部の平均値または最高値を用いても良い。中央温度制御部65は図示しない演算制御装置を備えており、中央温度センサー63が検出する温度に基づいて、基板加熱ヒータ40の後述する領域3における発熱量を制御する。
周辺温度調整器67は、中央温度制御部65から信号を受信する。周辺温度調整器67は図示されない記憶装置を備え、その記憶装置の内部には関数テーブル62が格納されている。周辺温度調整器67は図示されない演算制御装置を備え、中央温度制御部65から受信した信号と関数テーブルとを用いて、基板加熱ヒータ40の後述する領域1、1’、1”、2、2’、2”、4、4’、4”、5、5’、および5”における発熱量を制御する。
例えば、中央温度制御部65は、後述する領域3における棒状ヒータ10の導電線20bを流れる電流量を制御することによって、中央発熱エレメント22における発熱量を制御する。周辺温度制御部66は、領域1、2、4、および5に位置対応する棒状ヒータ10を流れる電流量を制御することによって、それらの領域における発熱量を制御する。周辺温度制御部66はさらに、導電線20aを流れる電流量を制御することによって、上部発熱エレメント21及び下部発熱エレメント23における発熱量を制御する。
図5を参照すると、関数テーブル62が示されている。関数テーブル62は、タクトタイムを横軸に、発熱密度比を縦軸に取った座標軸上にプロットされた数個の関数を含んでいる。図5においては、例えば発熱密度比を設定する3種類の関数Z1、Z2、およびZ3が示されていて、これを用いて周辺温度の発熱密度を制御するものである。タクトタイムとは、基板が製膜室80に搬入されてから、製膜処理を施され製膜室80から搬出されるまでの一連の動作にかかる平均時間である。
図6を参照して、基板加熱ヒータ40の各領域について説明する。図面の上向きが鉛直方向上向きである。基板加熱ヒータ40は、例えば水平方向に5つに分割した領域に分けられ、さらに鉛直方向に3つ、かけ合わせて15の領域に分けて発熱量を制御される。基板加熱ヒータ40の中央は領域3であり、棒状ヒータ10の中央発熱部12による加熱領域である。領域3に水平方向に隣接する両側の領域が、各々領域2と領域4とである。領域2に対して水平方向に隣接する領域1は、基板加熱ヒータ40の側端部である。領域4に対して水平方向に隣接する領域5は、基板加熱ヒータ40の側端部である。領域1、5の幅は、領域2、3、4を合計した幅に対して、0.1〜0.2倍の値に設定される。
領域1(、2、3、4、5)の鉛直方向に上方には領域1’(、2’、3’、4’、5’)が隣接する。領域1’(、2’、3’、4’、5’)は基板加熱ヒータ40の上端部であり、棒状ヒータ10の上部発熱部11による加熱領域である。領域1(、2、3、4、5)の鉛直方向に下方には領域1”(、2”、3”、4”、5”)が隣接する。領域1”(、2”、3”、4”、5”)は基盤加熱ヒータ40の下端部であり、棒状ヒータ10の下部発熱部13による加熱領域である。
図7を参照すると、以上の構成を備えた基板加熱ヒータ、及びそれを備える真空処理装置の動作がフローチャートにより示されている。
ステップS1:レシピにより設定するか、または真空処理装置の運用状況により自己計測して、上位コンピュータ69にてタクトタイムを把握して、タクトタイムが設定される。
ステップS2:図示されない基板搬送台車により、製膜室80の内部に基板61が導入される。
ステップS4:中央温度センサー63により、基板加熱ヒータ40の領域3に対応する位置のヒータカバー60の温度を示す信号が生成される。生成された信号は中央温度制御部65に送信される。
ステップS6:中央温度制御部65は、PID制御などにより、領域3の温度が所定の目標温度に近づくような、領域3に位置対応する棒状ヒータ10の中央発熱部12の発熱量(以下、領域3の発熱量制御値と呼ぶ)を算出する。
真空処理装置を操作するオペレータは、ヒータカバー60の各領域の温度を監視して、上位コンピュータ69から中央温度制御部65に対してPID制御のP、I、Dの値やその関数値を適切に変更することが可能である。あるいは、そうした制御の変更は、上位コンピュータ69が記憶している所定のプログラムにより行われてもよい。
ステップS8:中央温度制御部65は、領域3の発熱量制御値を周辺温度調整器67に送信する。周辺温度調整器67は、関数テーブル62を読み出す。
ステップS10:周辺温度調整器67は、関数テーブル62と、中央温度制御部65から受信した領域3の発熱量制御値とを用いて、領域3以外の領域の発熱量制御値を算出する。例えば、図5に示される関数Z1は領域2と領域4に適用される関数である。タクトタイムが5分のとき、領域2と領域4との発熱量制御値は、領域3の発熱量にタクトタイムが5分のときのZ2の値を掛けることにより算出される。関数Z3は領域1と領域5に適用される関数である。タクトタイムが5分のとき、領域1と領域5との発熱量制御値は、領域3の発熱量にタクトタイムが5分のときのZ3の値を掛けることにより算出される。また、装置の運用により、ヒータカバー60の温度分布をより均一にするために、関数Z2を設けて、領域2、4、及び領域1、5の発熱量算出に用いることも可能である。
関数テーブル62はさらに、2’、3’、4’の発熱量制御値と領域3の発熱量制御値との比を示す関数Z4と、1’、5’の発熱量制御値と領域3の発熱量制御値との比を示す関数Z5と、2”、3”、4”の発熱量制御値と領域3の発熱量制御値との比を示す関数Z6と、1”、5”の発熱量制御値と領域3の発熱量制御値との比を示す関数Z7とを備えていることが好ましい。その場合、周辺温度調整器67は、受信した領域3の発熱量制御値に対して、(1)領域2と4、(2)領域1と5、(3)領域2’と3’と4’、(4)領域1’と5’、(5)領域2”と3”と4”、および(6)領域1”と5”、の各々の発熱量制御値を算出する。
領域1と5の発熱量制御値は、領域3の発熱量制御値の2〜6倍であることが好ましい。領域2’、3’、4’、2”、3”、および4”の発熱量制御値は、領域3の発熱量制御値の2〜6倍であることが好ましい。領域1’、5’、1”、および5”の発熱量制御値は、領域3の発熱量制御値の8〜12倍であることが好ましい。
ステップS12:中央温度制御部65は、算出された発熱量制御値に基づいて、領域3に位置対応する棒状ヒータ10の中央発熱部12の発熱量をPID制御する。周辺温度調整器67は、算出された発熱量制御値に基づいて、領域3以外の各領域を、領域3の発熱量に比例した発熱量に制御する。ヒータカバー60の各領域は、基板加熱ヒータ40の各領域により加熱され、ヒータカバー60の全体がほぼ一定の温度に制御される。
ヒータカバー60の各領域には温度センサーが取り付けられ、リアルタイムで各領域の温度が監視され、ヒータカバー60の面内温度分布の均一性が監視されていることが好ましい。
ステップS14:ステップS4からステップS12までの手順は、製膜処理の間続けられる。製膜処理が終了すると、図示されない基板搬送台車により、製膜室80の外部に基板61が導出される。
以上に示される手順により、基板はその全体がほぼ均一に加熱された状態で製膜処理される。
(現象の説明)
図8を参照して、タクトタイムに応じて周辺の発熱量を変える理由について説明する。
図8に示される図の横軸はタクトタイム、縦軸はヒータカバー60の水平方向の面内温度の最大偏差である。カーブ91は、領域1、2、3、4、5に対応する位置の基板加熱ヒータ40の発熱量が3:1:1:1:3である場合を示している。カーブ92は、領域1、2、3、4、5に対応する位置の基板加熱ヒータ40の発熱量が2:1:1:1:2である場合を示している。
図8を参照すると、タクトタイムが3分から6分程度のときは、発熱量が2:1:1:1:2であるカーブ92に示される場合の方が、ヒータカバー60の温度偏差が小さく好ましい。タクトタイムが6分以上の場合については図示されていないが、もし6分以上のときカーブ91とカーブ92とが交差して反転するなら、そのときは発熱量が3:1:1:1:3である場合の方がヒータカバー60の温度偏差が小さく好ましい。これは、タクトタイムが長いと各バッチ処理間の基板ヒータカバー60から基板61への伝熱量が相対的に少なくなるので、基板61の存在するヒータカバー60の中央の温度低下が少なくなり、両端領域である領域1、領域5に比べて、中央の領域である領域2、3、4の発熱密度を低く抑えることになるためである。
大型の太陽電池パネルに例示されるサイズの大きい基板に製膜処理を行うために、全体を均一な温度に制御することは次の理由により難しい。
(1)基板搬送中の高真空状態は伝熱量が低く、製膜状態では製膜ガス(SiH4、H2など)が導入されて伝熱が促進されるため、製膜時間が短い(タクトタイムが短い)条件では、基板ヒータからヒータカバーへの伝熱状態の変化サイクルが短くなり温度分布が乱れ易い。
(2)製膜室に投入された基板はヒータカバーから伝熱され所定の製膜温度まで昇温されるが、基板がセットされるヒータカバー中央領域の熱が基板に奪われるため、タクトタイムが短くなると基板ヒータから基板(またはヒータカバー)への伝熱が追いつかずヒータカバーの中央付近の温度が下がりやすい。図8を参照してなされた説明において、タクトタイムが短い場合の方がタクトタイムが長い場合に比べて周辺発熱密度比が低く制御され、中央の発熱密度が増加したのは、このためである。
(3)上記(1)(2)の現象に対処するために、タクトタイムが短い場合にヒータカバーを複数の領域に分け、各々の領域に対して例えばPID制御を行うことが考えられる。この場合、熱容量の大きい大型構造物の温度調整を温度ハンチングを抑制しながら制御するには積分パラメータ:Iを大きくする必要があるが、そうすると数分間で繰り返される製膜処理に追従することが難しくなる。
本発明による基板加熱ヒータによる実験では、上述のような困難にもかかわらず、制御過渡状態における中央の温度と左右及び上下の温度のアンバランスが抑制された。さらに、左右及び上下での温度分布の非対称によるアンバランスも抑制され、安定な温度分布を得ることができた。また、温度制御機構がシンプルであり、ハンチングや予想外の異常制御で温度が乱れることがなく、信頼性が向上した。
図6に基板加熱ヒータ116を左右及び上下に15分割した制御を示したが、更なる分割化による制御により、ヒータカバー60の温度の均一化を行っても良い。また逆に、運転状態が比較的一定のものは、図9のように、棒状ヒータ210の上下の発熱密度比を最初から固定して、基板加熱ヒータ116を左右方向に5分割した制御を行うことも可能である。すなわち、図9を参照して、本実施の形態における棒状ヒータ10に代えて、棒状ヒータ210を用いることが可能である。棒状ヒータ210の外殻は管体245で構成される。棒状ヒータ210の一端部は、集電ボックス232に接続される。集電ボックス232は端子台233を備える。端子台233には、導入パイプ234を用いてこの周囲を図示しないOリングシールなどを用いることで、真空雰囲気である製膜室80の壁面を通過して大気下の外部へと通された導電線235が接続される。棒状ヒータ210の上下側、裏面側及び図示されない基板ヒータ両端側には、反射板245が設けられ、ヒータカバー260への有効な加熱が可能となっている。
棒状ヒータ210は、上部発熱部256、中央発熱部257、下部発熱部258を備える。これら発熱部は棒状ヒータ210の長手方向に沿って分布している。また、中央発熱部257は、上部発熱部256と下部発熱部258との間に位置する。
管体245の内部には、複数の発熱部に対応するように、例えば発熱素線をコイル状に巻くことで発熱密度を調整した複数の発熱エレメント(発熱体)が設けられる。上部発熱部256に対応する位置には上部発熱エレメント221が配設される。中央発熱部257に対応する位置には中央発熱エレメント224が配設される。下部発熱部258に対応する位置には下部発熱エレメント223が配設される。
図3に示される棒状ヒータ10とは異なり、棒状ヒータ210の管体245の内部には一本の導電線220が配設されている。導電線220は延長して、下部発熱エレメント223、中央発熱エレメント224、及び上部発熱エレメント221を形成している。導電線220の両端は端子台233に接続されている。
こうした棒状ヒータ210を平行に並べることにより形成される基板加熱ヒータは、中央領域に対して、上部発熱エレメント221に対向する上端付近と、下部発熱エレメント223に対向する下端付近において、中央領域よりも所定の高い比率で発熱する。こうした棒状ヒータは構成が簡素で製作が容易である。また、運転状況の変更により、上部発熱エレメント221、下部発熱エレメント223の発熱密度の変更が必要になった場合には、多孔反射板271を設けることで、ヒータカバー260への伝熱量を少なくすることが
可能である。
10…棒状ヒータ
11…上部発熱部
12…中央発熱部
13…下部発熱部
14…上部非発熱部
15…下部非発熱部
20a、20b…導電線
21…上部発熱エレメント
22…中央発熱エレメント
23…下部発熱エレメント
30…管体
31…屈曲部
32…集電ボックス
33…端子台
34…導入パイプ
35…導電線
40…基板加熱ヒータ
41…ヒータユニット
45…反射板
50…温度制御部
60…ヒータカバー
61…基板
62…関数テーブル
63…中央温度センサー
65…中央温度制御部
67…周辺温度調整器
80…製膜室
81…放電電極
82…製膜ユニット
100…基板処理装置
111…基板処理装置
112…製膜室
113…ラダー電極
114…製膜ユニット
115…ヒータカバー
116…基板加熱ヒータ
121…ヒータユニット
122…導入パイプ
123…集電ボックス
124…カートリッジヒータ
220…導電線
221…ヒータユニット
223…集電ボックス
224…棒状ヒータ
224a…管体
231…発熱エレメント
232…端子台
234…導入パイプ
235…反射板
K…基板

Claims (5)

  1. 基板を保持するヒータカバーと、
    前記ヒータカバーに対向するヒータと、
    前記ヒータカバーの中央領域における温度を検出する温度検出部と、
    前記温度に応答して前記中央領域に対応する位置における前記ヒータの中央発熱密度を制御し、前記中央領域に隣接する隣接領域に対応する位置における前記ヒータの隣接発熱密度が前記中央発熱密度に比例するように制御する制御部と、
    前記隣接発熱密度の前記中央発熱密度に対する比例係数を対応づけるテーブルと、を具備する基板加熱ヒータ。
  2. 請求項1に記載された基板加熱ヒータであって、
    前記中央発熱密度は、前記温度を目標温度に近づけるPID(Proportional、Integral、Differential)制御により制御される基板加熱ヒータ。
  3. 請求項1または2のうちのいずれか1項に記載された基板加熱ヒータであって、
    前記中央領域は前記ヒータの中心部に対応する位置であり、
    前記隣接領域は前記中央領域よりも前記ヒータの周縁部に対応する位置であり、
    前記隣接発熱密度は前記中央発熱密度よりも大きい基板加熱ヒータ。
  4. 請求項1から3のうちのいずれか1項に記載された基板加熱ヒータであって、
    前記ヒータはさらに、前記中央領域に対して上側にある前記ヒータカバーの周縁部である第3領域に対応する位置において、前記中央発熱密度に比例し、かつ前記中央発熱密度よりも大きい第3発熱密度で加熱する第3発熱部
    を備える基板加熱ヒータ。
  5. 請求項1から4のうちのいずれか1項に記載された基板加熱ヒータであって、
    前記ヒータはさらに、前記中央領域に対して下側にある前記ヒータカバーの周縁部である第1領域に対応する位置において、前記中央発熱密度に比例し、かつ前記中央発熱密度よりも大きい第1発熱密度で加熱する第1発熱部
    を備える基板加熱ヒータ。
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