JP2010074908A - 固定子コイルおよび回転電機 - Google Patents

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徹志 岡本
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史雄 澤
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Abstract

【課題】回転電機の起動、停止時の機械的ストレスによる絶縁層の破壊が抑制され、素線導体における電流密度の増加により回転電機の小型化、低コスト化、および大容量化が可能な固定子コイルを提供すること。
【解決手段】銅線の周囲に絶縁被覆が施されてなる素線2aを複数束ねてなる素線導体2と、前記素線導体2の周囲に形成され、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層3と、前記第1の絶縁層3の周囲に形成され、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁体層4と、前記第2の絶縁体層4の周囲に形成され、表面抵抗率が1Ω以上1MΩ以下の半導電層5とを有する固定子コイル1。
【選択図】図1

Description

本発明は、固定子コイルおよび回転電機に関する。
発電機や電動機等の回転電機における固定子コイルは、例えば絶縁被覆が施された素線を複数本束ねた素線導体の周囲にマイカテープを巻回して巻線体とし、これを固定子鉄心のスロットに収容して結線し、さらに固定子鉄心ごとエポキシ樹脂等を含浸、加熱硬化させて素線導体の周囲に絶縁層を形成することで製造されている。
このような固定子コイルについては、回転電機の小型化、低コスト化、および大容量化の観点から、素線導体に流れる電流を増加させることが検討されている。素線導体に流れる電流を増加させる方法としては、例えば素線導体を太くすることが考えられるが、素線導体を太くした場合、回転電機が大型化、高コスト化するおそれがある。このため、素線導体の断面積を従来と同様なものとしつつ電流を増加させること、すなわち素線導体における電流密度を増加させることが検討されている。
しかし、素線導体における電流密度を増加させた場合、素線導体が発熱しやすくなり、その周囲に設けられる絶縁層が熱的に損傷するおそれがある。このため、例えば固定子コイルの絶縁層を高熱伝導化して冷却性能を向上させることにより、また該絶縁層を高耐熱化して耐熱性クラスを向上させることにより、素線導体における電流密度を増加させつつ、絶縁層の熱的な損傷を抑制し、結果として回転電機を小型化、低コスト化、および大容量化することが検討されている。
固定子コイルの絶縁層を高熱伝導化して冷却性能を向上させる方法としては、例えばマイカよりも熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を含有させたマイカテープを用いて絶縁層を形成する方法、あるいは素線導体にマイカテープを巻回した後にマイカよりも熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を含有する樹脂を含浸させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、固定子コイルの絶縁層を高耐熱化する方法としては、マイカテープに含浸させる樹脂としてガラス転移温度の高い高耐熱性の樹脂を用いることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
特開2002−93257号公報 A. Block 、CIGRE2002 SC11-11-102
図11は、従来の固定子コイルを示す断面図である。従来の固定子コイル50は、例えば銅線の周囲に絶縁被覆が施されてなる素線52aが複数束ねられた素線導体52と、この素線導体52の周囲を覆うように設けられるマイカテープにエポキシ樹脂等が含浸され、硬化された絶縁層53と、この絶縁層53の周囲を覆うように設けられる半導電層54とを有している。また、縦方向に配列される素線52aからなる2つの素線列どうしの間には、例えばセパレータ56が設けられている。
しかし、このような固定子コイル50については、長手方向における素線導体52の線膨張係数と絶縁層53の線膨張係数とが異なることから、回転電機の起動、停止時の素線導体52の温度昇降に伴い、絶縁層53には繰り返し機械的ストレスが負荷される。このような機械的ストレスは、素線導体52の温度差が大きいほど高くなり、絶縁層53を機械的に破壊させるおそれが高くなる。
特に、上記したように絶縁層53にマイカよりも熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を多量に含有させた場合、高熱伝導化により冷却性能は向上するものの、多量に含有される高熱伝導性充填剤のために絶縁層53が脆くなり、機械的に破壊するおそれが高くなる。また、絶縁層53にガラス転移温度の高い樹脂を用いた場合についても、耐熱性は向上するものの、一般にガラス転移温度の高い耐熱性に優れる樹脂が硬くて脆いことから、機械的に破壊するおそれが高くなる。
上記したように固定子コイルについては、絶縁層が機械的に破壊しやすくなっており、特に回転電機を小型化、低コスト化、および大容量化するために、絶縁層に熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を多量に含有させて高熱伝導化した場合や、絶縁層53にガラス転移温度の高い樹脂を用いて耐熱化した場合に、絶縁層が脆くなり、機械的に破壊しやすくなる。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであって、回転電機の起動、停止時の機械的ストレスによる絶縁層の破壊が抑制され、結果として素線導体における電流密度の増加が可能となり、回転電機の小型化、低コスト化、および大容量化が可能な固定子コイルを提供すること目的としている。また、本発明は、このような固定子コイルを具備する小型化、低コスト化、および大容量化が可能な回転電機を提供することを目的としている。
本発明の固定子コイルは、銅線の周囲に絶縁被覆が施されてなる素線を複数束ねてなる素線導体と、前記素線導体の周囲に形成され、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の周囲に形成され、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁体層と、前記第2の絶縁体層の周囲に形成され、表面抵抗率が1Ω以上1MΩ以下の半導電層とを有することを特徴としている。
前記第1の絶縁層におけるシロキサン結合を主鎖に持つ高分子は、ガラス転移点が30℃以下であることが好ましい。また、前記第1の絶縁体層におけるマイカは、配向されていることが好ましい。さらに、前記第1の絶縁層は、半硬化状態のシロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する被覆材料を前記素線導体の周囲に配置して加熱加圧硬化することにより形成されたものであることが好ましい。
一方、前記第2の絶縁体層におけるガラス転移点が100℃以上の高分子は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、およびこれらの変性物の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記第2の絶縁体層は、マイカより熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を含有することが好ましい。
本発明の固定子コイルは、全含浸法により作製されたものであることが好ましい。
本発明の回転電機は、回転子鉄心と前記回転子鉄心に設けられる回転子コイルとを有する回転子と、固定子鉄心と前記固定子鉄心に設けられる固定子コイルとを有する固定子とを有する回転電機であって、前記固定子コイルが上記した本発明の固定子コイルであることを特徴としている。
本発明の回転電機は、前記固定子鉄心の長さをL、前記回転電機の起動時と停止時との温度差をΔT、前記固定子コイルにおける素線導体の線膨張係数をα、前記固定子コイルにおける第2の絶縁層の線膨張係数をα、前記固定子コイルにおける第2の絶縁層の引張強度の応力歪み曲線が線形領域から外れるときの歪みの大きさをdとしたとき、
(L/2)・(α−α)ΔT > d
を満たすことが好ましい。
本発明の固定子コイルでは、素線導体と、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁体層との間に、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層を配置することで、素線導体と第2の絶縁体層との線膨張係数の違いによりこれらの間に発生する機械的ストレスを第1の絶縁層によって緩和し、第2の絶縁体層の破壊を抑制することができる。結果として、素線導体における電流密度を増加させることができ、回転電機の小型化、低コスト化、および大容量化が可能となる。
また、本発明の回転電機では、上記した絶縁層の破壊が抑制された固定子コイルを用いることで、固定子コイルの素線導体における電流密度を増加させることができ、結果として小型化、低コスト化、および大容量化が可能となる。
以下、本発明について説明する。
図1は、本発明の固定子コイルの一例を示す断面図である。固定子コイル1は、例えば銅線の周囲に絶縁被覆が施されてなる素線2aが複数束ねられた素線導体2と、この素線導体2の周囲を覆うように設けられるシロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層3と、この第1の絶縁層3の周囲を覆うように設けられるガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁体層4と、この第2の絶縁層4の周囲を覆うように設けられる表面抵抗率が1Ω以上1MΩ以下の半導電層5とを有している。このような固定子コイル1における素線導体2については、例えば縦方向に配列される素線2aからなる2つの素線列どうしの間にセパレータ6が設けられている。
本発明では、素線導体2と、従来の絶縁層に相当するガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁層4との間に、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層3を設けることで、回転電機の起動、停止時の温度差により発生する機械的ストレスによりガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁層4の破壊を抑制することができる。
すなわち、素線導体2と、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁層4とは線膨張係数が異なるために、このようなものを直接的に接触させた場合、回転電機の起動、停止時の温度差による機械的ストレスにより、第2の絶縁層4が破壊しやすくなる。
シロキサン結合を主鎖に持つ高分子はゴム弾性を有することから、このようなものとマイカとを有する第1の絶縁層3を、素線導体2と、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁層4との間に配置することで、これらの間に発生する機械的ストレスを緩和し、第2の絶縁層4が破壊することを抑制することができる。
また、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子は耐熱性に優れることから、このようなものとマイカとを有する第1の絶縁層3を素線導体2の近くに配置しても、素線導体2の温度上昇による劣化は抑制される。
このように、素線導体2と、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁層4との間に、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層3を設けることで、第1の絶縁層3自体の劣化を抑制しつつ、第2の絶縁層4の破壊を抑制することができる。結果として、素線導体2における電流密度を増加させることができ、結果として回転電機の小型化、低コスト化、および大容量化が可能となる。
第1の絶縁層3におけるシロキサン結合を主鎖に持つ高分子は、主鎖(長鎖)にシロキサン結合(Si−O結合)を有するものであれば必ずしも限定されるものではないが、ガラス転移点が30℃以下であるものが好適に用いられる。一般にガラス転移点の前後では物性が大きく変化するが、回転電機の運転中、例えば停止状態から起動状態にかけての温度上昇時、あるいは起動状態から停止状態にかけての温度低下時に物性が変化することは、第2の絶縁層4の破壊を抑制する観点から好ましくない。
回転電機の温度範囲は、通常、停止時の温度、すなわち室温である30℃以上であるため、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子のガラス転移点が30℃以下であれば、回転電機の運転中における大幅な物性変化を抑制することができ、第2の絶縁層4の破壊を有効に抑制することができる。
シロキサン結合を主鎖に持つ高分子としては、例えばポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン、ポリメチルフルオロアルキルシロキサン等が好適なものとして挙げられ、適切なゴム弾性等を得る観点から分子量が1800以上のものがより好適なものとして挙げられる。シロキサン結合を主鎖に持つ高分子としては、第2の絶縁層4におけるガラス転移点が100℃以上の高分子との親和性や接着性の観点から変性されたものであってもよく、例えば第2の絶縁層4におけるガラス転移点が100℃以上の高分子をエポキシ樹脂とする場合には、エポキシ変性されたものとすることが好ましい。
また、ポリジメチルシロキサン等のシロキサン結合を主鎖に持つ高分子の多くはガラス転移点が0℃以下であるため、このようなポリジメチルシロキサン等のシロキサン結合を主鎖に持つ高分子を用いることで、上記したような回転電機の運転中における大幅な物性変化を抑制することができ、第2の絶縁層4の破壊を有効に抑制することができる。
第1の絶縁層3におけるマイカとしては、天然の軟質・硬質マイカ、または合成マイカが挙げられ、これらははがしマイカでも集成マイカでもよい。集成マイカは、合成マイカや天然マイカを集成したもので、天然マイカについては硬質あるいは軟質マイカを叩解し、微細なりん片(例えば厚さ約0.1〜10μm、大きさ0.005〜5mm )を集成したものである。これらのマイカは、1種のみを用いても良いし、複数種を混合して用いてもよい。
第1の絶縁層3におけるマイカは、例えばシロキサン結合を主鎖に持つ高分子中に無配向の状態で含有されてもよいが、配向された状態で含有されていることが好ましい。マイカはアスペクト比が大きい鱗片状の粘土鉱物であることから、配向させることにより第1の絶縁層3における占積率を高くすることができ、結果として電気的な破壊強度を向上させることができる。
マイカが無配向の状態で含有された第1の絶縁層3は、例えばシロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを混合して得られる塗料状あるいはペースト状の混合物を半硬化状態あるいは完全硬化状態としたものを切断してシート状あるいはテープ状の被覆材料とし、この被覆材料を素線導体2の周囲に巻回し、必要に応じて加熱硬化等をさせることにより形成することができる。
また、マイカが配向された状態で含有された第1の絶縁層3は、例えばマイカが配向されたマイカ紙にシロキサン結合を主鎖に持つ高分子を含浸し、必要に応じて半硬化あるいは完全硬化させたものを切断してシート状あるいはテープ状の被覆材料とし、この被覆材料を素線導体2の周囲に巻回し、必要に応じて加熱硬化等をさせることにより形成することができる。なお、マイカが配向されたマイカ紙は、例えばマイカ鱗片を水中に分散させ、紙漉と類似の要領で抄紙することにより容易に得ることができる。
図2に、マイカが配向された被覆材料の断面図を示す。被覆材料31は、例えばマイカ32が配向されたマイカ紙33にシロキサン結合を主鎖に持つ高分子34が含浸されたものである。被覆材料31は、素線導体2の周囲に巻回し、その後に加熱硬化等をさせることから、適度な強度や接着性を有することが好ましく、含浸されたシロキサン結合を主鎖に持つ高分子34は半硬化状態とされていることが好ましい。
このような観点から、例えば図3に示すように、マイカ紙33にシロキサン結合を主鎖に持つ高分子34を含浸させ、このシロキサン結合を主鎖に持つ高分子34を完全硬化状態とすると共に、その少なくとも一方の表面に同様なシロキサン結合を主鎖に持つ高分子35を塗布し、このシロキサン結合を主鎖に持つ高分子35を半硬化状態として被覆材料31としてもよい。また、同様な観点から、例えば図4に示すようにマイカ紙33にシロキサン結合を主鎖に持つ高分子34を含浸させ、このシロキサン結合を主鎖に持つ高分子34を半硬化状態としたものをガラスクロスや不織布等からなる繊維基材37の上に積層して被覆材料31としてもよい。
なお、図3、4に示すことからも明らかなように、第1の絶縁層3は、必ずしもシロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する層のみからなるものに限られず、例えば図3に示すようなシロキサン結合を主鎖に持つ高分子35のみから形成される層や、また例えば図4に示すようなガラスクロスや不織布等からなる繊維基材37からなる層を含んでいても構わない。
第1の絶縁層3におけるマイカの含有量、特にシロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとから構成される層におけるマイカの含有量は、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとの合計量中、好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上80質量%以下である。マイカの含有量が50質量%未満であると、第1の絶縁層3の絶縁特性が十分でなくなるおそれがあり、また90質量%を超えると、相対的にシロキサン結合を主鎖に持つ高分子の含有量が低下し、脆くなるおそれがある。
第1の絶縁層3の厚みは、例えば0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。第1の絶縁層3の厚みが0.1mm未満の場合、素線導体2と第2の絶縁層4との間に発生する機械的ストレスを十分に緩和することができず、また機械的ストレスを緩和する観点からは2mm程度もあれば十分であり、これを超えて厚くしても機械的ストレスを緩和する効果は変わらず、かえって第1の絶縁層3の製造性が低下するため好ましくない。
第2の絶縁体層4は、従来の絶縁層と略同様なものであり、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有するものである。一般に、回転電機については固定子コイル1の素線導体2が90℃以上となるように設計されている。このため、第2の絶縁体層4における高分子のガラス転移点が100℃未満であると、回転電機の運転中に第2の絶縁体層4における高分子の温度がガラス転移点を超え、ゴム状となることにより強度が低下する。
第2の絶縁体層4における高分子として、ガラス転移点が100℃以上のものを用いることで、回転電機の運転中における大幅な物性変化を抑制し、信頼性に優れるものとすることができる。このようなガラス転移点が100℃以上の高分子としては、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、およびこれらの変性物の中から選ばれる少なくとも1種が好適なものとして挙げられる。
第2の絶縁層4におけるマイカは、第1の絶縁層3におけるマイカと同様なものを用いることができ、天然の軟質・硬質マイカ、または合成マイカを用いることができ、これらははがしマイカでも集成マイカでもよく、また1種のみを用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、第2の絶縁層4におけるマイカは、第1の絶縁層3におけるマイカと同様、例えばガラス転移点が100℃以上の高分子中に無配向の状態で含有されてもよいし、配向された状態で含有されていてもよい。ガラス転移点が100℃以上の高分子中にマイカが配向された状態で含有されていれば、第2の絶縁層4における占積率を高くすることができ、結果として電気的な破壊強度を向上させることができるため好ましい。
マイカが無配向の状態で含有された第2の絶縁層4は、例えばガラス転移点が100℃以上となる高分子とマイカとを混合して得られる塗料状あるいはペースト状の混合物を半硬化状態あるいは完全硬化状態としたものを切断してシート状あるいはテープ状の被覆材料とし、この被覆材料を第1の絶縁層3の周囲に巻回し、必要に応じて加熱硬化等をさせることにより形成することができる。
また、マイカが配向された状態で含有された第2の絶縁層4は、例えばマイカが配向されたマイカ紙にガラス転移点が100℃以上となる高分子を含浸し、必要に応じて半硬化状態あるいは完全硬化状態としたものを切断してシート状あるいはテープ状の被覆材料とし、この被覆材料を素線導体2の周囲に巻回し、必要に応じて加熱硬化等をさせることで形成することができる。また、第1の絶縁層3の周囲に未含浸のマイカテープを巻回し、さらに半導電層5となる半導電テープを巻回した後、ガラス転移点が100℃以上となる高分子を含浸し、加熱硬化等をさせることにより形成することもできる。
このような第2の絶縁体層4には、高熱伝導化する観点から、マイカより熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を含有させることが好ましい。第2の絶縁体層4にマイカより熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を含有させることで、第2の絶縁体層4を高熱伝導化し、熱的に損傷しにくいものとすることができ、結果として素線導体2における電流密度を増加させ、回転電機の更なる小型化、低コスト化、および大容量化が可能となる。なお、第2の絶縁体層4に高熱伝導性充填剤を含有させる場合、第2の絶縁体層4が脆くなるために機械的ストレスにより破壊しやすくなるが、第1の絶縁層3を設けることで、このような第2の絶縁体層4における破壊を有効に抑制することができる。
第2の絶縁体層4に含有させる高熱伝導性充填剤としては、マイカの熱伝導率約0.6W/m・Kよりも大きなものであればよく、例えば窒化ホウ素(熱伝導率約84W/m・K)、酸化アルミニウム(熱伝導率約33W/m・K)、酸化マグネシウム(熱伝導率約38W/m・K)、酸化ベリリウム(熱伝導率約377W/m・K)、炭化ケイ素(熱伝導率約42W/m・K)等の粉末が挙げられ、これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
高熱伝導性充填剤の粒径は、好ましくは5μm以上50μm以下である。高熱伝導性充填剤の粒径がこれより小さいと、例えばマイカと高熱伝導性充填剤とからマイカ紙を抄紙する際に高熱伝導性充填剤が抄き網から抜け落ちて抄紙の歩留まりが低下するおそれがあり、またこれよりも粒径が大きいと、例えば第2の絶縁体層4の絶縁特性が低下するおそれがある。
高熱伝導性充填剤は、第2の絶縁層4に単に分散された状態で含有されていてもよいし、第2の絶縁層4における配向されたマイカ中、すなわちマイカ紙に混抄された状態で含有されていてもよい。第2の絶縁層4に高熱伝導性充填剤を単に分散させる場合、例えばシート状あるいはテープ状の被覆材料を作製する際に用いられるガラス転移点が100℃以上となる高分子に高熱伝導性充填剤を混合することにより行うことができる。また、高熱伝導性充填剤をマイカ紙に混抄させる場合、水中にマイカ鱗片を分散させると共に高熱伝導性充填剤を分散させて抄紙することにより行うことができる。
第2の絶縁体層4にマイカより熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を含有させる場合、マイカ100質量部に対して、高熱伝導性充填剤を50質量部以下とすることが好ましい。高熱伝導性充填剤の含有量が、これよりも多くなると、第1の絶縁層3の絶縁特性が低下するおそれがある。
第2の絶縁体層4におけるマイカと高熱伝導性充填剤との合計した含有量は、50質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。これら合計した含有量が50質量%未満であると、第2の絶縁体層4の絶縁特性が十分でなくなるおそれがあり、また90質量%を超えると、ガラス転移点が100℃以上の高分子の含有量が低下し、脆くなるおそれがある。
半導電層5は、回転電機における固定子鉄心と同電位にするために設けられるものであって、表面抵抗率が1Ω以上1MΩ以下であるものである。半導電層5の表面抵抗率が1Ω未満では固定子コイル1の表面に渦電流が発生するおそれがあり、1MΩを超えると固定子鉄心との電位を安定的に同電位とできないおそれがある。このような半導電層5を設けることによって、特に高電圧の回転電機に用いた場合に、固定子コイル1の表面に発生する渦電流等を抑制し、回転電機の特性を向上させることができる。なお、表面抵抗率は2端子法あるいは4端子法によって測定することができる。
半導電層5は、表面抵抗率が1Ω以上1MΩ以下であれば必ずしも制限されるものではなく、例えばガラス、ポリエステル、ポリアミド等の絶縁性、耐熱性に優れた一般的な絶縁材料からなる織布または不織布からなるテープ状の繊維基材に、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等にカーボンやグラファイト等の導電性あるいは半導電性材料の粉末あるいは繊維を混合して得られる塗料等を含浸させたもの、またはカーボン繊維を混抄したテープ状の繊維基材等の半導電テープからなるものとすることができる。
本発明の固定子コイル1は、上記した第1の絶縁層、第2の絶縁体層、および半導電層5を少なくとも有するものであるが、必要に応じて、かつ本発明の趣旨に反しない限度で他の構成を付加することができる。例えば、本発明の固定子コイル1には、半導電層5と一部が重なるようにして沿面放電を抑制するための電界緩和テープ等が設けられていてもよい。
次に、本発明の固定子コイル1の製造方法について説明する。本発明の固定子コイル1は、素線導体2の周囲に、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層3を形成する以外は公知の固定子コイルの製造方法を採用して製造することができる。
すなわち、例えば銅線の周囲に絶縁被覆が施されてなる素線2aを複数束ねると共に、セパレータ6を配置して素線導体2とし、この素線導体2の周囲に第1の絶縁層3を形成する。第1の絶縁層3は、上記したようなシロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを混合して得られる塗料状あるいはペースト状の混合物を半硬化状態あるいは完全硬化状態とした被覆材料、またはマイカ紙にシロキサン結合を主鎖に持つ高分子を含浸し、必要に応じて半硬化状態あるいは完全硬化状態とした被覆材料を素線導体2の周囲に巻回し、必要に応じて加熱硬化等をさせることにより形成することができる。
る。
加熱硬化は、例えば図5に示すように、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子を有する被覆材料31を素線導体2に巻回した状態で、外側から断面がL字状の1対の金型8、9を対角線上に対向するように配置し、金型8、9で加圧しながら例えば150〜230℃程度で1〜5時間程度の熱処理(加熱加圧硬化)を行うことが好ましい。このような加熱加圧硬化を行うことにより、第1の絶縁層3を素線導体2に密着して形成することができ、より信頼性に優れるものとすることができる。
このようにして第1の絶縁層3が形成された素線導体2には、さらに第2の絶縁体層4、半導電層5を形成する。第2の絶縁体層4、半導電層5の形成は、公知の固定子コイルの製造方法を採用することができ、例えば液圧モールド法、単体含浸法、全含浸法等により行うことができる。
液圧モールド法としては、例えばマイカ紙にエポキシ樹脂等のガラス転移点が100℃以上となる高分子を含浸し、半硬化状態としたものをテープ状とした被覆材料を第1の絶縁層3が形成された素線導体2に巻回し、さらに導電性あるいは半導電性材料を含有する樹脂を繊維基材に含浸させた半導電テープを巻回し、必要に応じて電界緩和テープ等を巻回する。
その後、この巻回体の周囲に鉄板を密着させて配置し、鉄板を含めた全体に熱収縮性テープを巻回し、先に半硬化状態としたガラス転移点が100℃以上となる高分子を完全硬化させて、第2の絶縁体層、半導電層5を形成し、固定子コイル1を得る。
図6に、液圧モールド法より得られる固定子コイル1を示す。なお、図6に示す固定子コイル1については、半導電層5と一部が重なるようにして沿面放電を抑制するための電界緩和テープ7を設けている。また、液圧モールド法による場合、巻回体の周囲に離型テープを巻回してから鉄板を密着させて配置することで、固定子コイル1と鉄板との接着を抑制することができる。
また、全含浸法による場合、例えばレーストラック状に巻回された素線導体2の直線部分に略同様にして第1の絶縁層3を形成したものをコイル成形機で亀甲状に成形し、さらに未含浸のマイカテープ、半導電テープを巻回し、必要に応じて電界緩和テープ等を巻回する。
その後、この巻回体を回転電機の固定子鉄心のスロットに挿入し、固定した後、固定子鉄心ごとタンクに入れ、真空引きし、エポキシ樹脂等のガラス転移点が100℃以上となる高分子を注入し、加圧する。その後、タンクから巻回体を取り出し、乾燥炉にいれ、100〜200℃、1〜20時間の硬化処理を行い、第2の絶縁層4、半導電層5を形成し、固定子コイル1を得る。
図7に、全含浸法より得られる固定子コイル1を示す。なお、図7に示す固定子コイル1についても、半導電層5と一部が重なるようにして沿面放電を抑制するための電界緩和テープ7を設けている。
全含浸法によれば、液圧モールド法よりも製造が容易なことから、より低価格に固定子コイル1、回転電機を製造することができる。一方、全含浸法では、固定子鉄心に素線導体2等からなる巻回体を組み込んだ後に樹脂を含浸し、硬化させて固定子コイル1を製造することから、固定子コイル1は固定子鉄心に強固に固定され、第2の絶縁層4には高い機械的ストレスが負荷されやすい。しかし、本発明のような構成とすることにより、全含浸法により製造した場合であっても、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁層4に負荷される機械的ストレスを低減し、破壊を有効に抑制することができる。
次に、本発明の回転電機について説明する。
図8は、本発明の回転電機を概略的に示す断面図である。回転電機10は、固定子11を含む固定構造部分に回転子12が軸受機構を介して支持されている。固定子11は、固定子鉄心13と上記した本発明の固定子コイル1とから主に構成されている。回転子11は、回転軸14aを有する回転子鉄心14と回転子コイル15とから主に構成されており、回転軸14aの両端にそれぞれ対称的に設けられたファン16や、通風ダクトなどを備えて構成される冷却構造を有している。
図9に示すように、固定子コイル1は、アース電位となる固定子鉄心13のスロット13a内に収容されている。具体的には、固定子鉄心13のスロット13aの底部上に、スペーサ21を介して設置されている。また、固定子コイル1の側面は、固定子鉄心13のスロット13aの内側面と接触するように配置されている。さらに、固定子鉄心13のスロット13aの開口部には、固定子コイル1の上面に他のスペーサ22を介して楔23が打ち込まれており、この楔23によって固定子鉄心13のスロット13a内に固定子コイル1が固定されている。
本発明の回転電機10では、上記した本発明の固定子コイル1を用いることで、固定子コイル1、特に第2の絶縁層4の破壊が有効に抑制され、耐熱クラスがH種(最高許容温度180℃)に相当するものである。このため、素線導体2における電流密度を増加させることができ、回転電機の更なる小型化、低コスト化、および大容量化が可能となる。
本発明の回転電機10は、固定子鉄心13の長さをL(図8では、固定子鉄心13の半分の長さであるL/2を図示している)、回転電機10の起動時と停止時との温度差(起動時の温度から停止時の温度を引いたもの)をΔT、固定子コイル1における素線導体2の線膨張係数をα、固定子コイル1における第2の絶縁層4の線膨張係数をα、第2の絶縁層4の引張強度の応力歪み曲線が線形領域から外れるときの歪みの大きさをdとしたとき、
(L/2)・(α−α)ΔT > d
を満たすものであることが好ましい。
回転電機10において、仮に第1の絶縁層3を有しないものとしたとき、起動時と停止時とのヒートサイクルによる第2の絶縁層4(従来の絶縁層に相当)における歪みの大きさtは、上記した符号の定義に基づいてt=(L/2)・(α−α)ΔTで表される。この式からも明らかなように、回転電機10における固定子鉄心13の長さLが短く、また温度差ΔTが小さいほど、第2の絶縁層4に負荷される機械的ストレスも小さくなり、第2の絶縁層4を保護するために設けられる第1の絶縁層3の効果も小さくなる。
図10は、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとからなる第2の絶縁層4の室温における引張強度の応力歪み曲線を模式的に示したものである。図10から明らかなように、第2の絶縁層4に加えられる引張応力がある値を超えると、応力歪み曲線が線形領域から外れ、歪みが急激に増加することにより破壊しやすくなる。なお、このときの歪みの大きさが上記した線形領域から外れるときの歪みの大きさdに相当する。
従って、この第2の絶縁層4の材料特性である歪みの大きさdよりも、上記した第2の絶縁層4に発生することとなる歪みの大きさtが大きいとき、第2の絶縁層4に過度な歪みが発生し、破壊しやすくなる。一方、上記した歪みの大きさtが上記した歪みの大きさdの範囲内であれば、第2の絶縁層4は破壊しにくいため、第1の絶縁層3を形成する必要がなく、かえって第1の絶縁層3を形成すると製造工程が増えるために好ましくない。
このため、特に上記歪みの大きさtが上記歪みの大きさdよりも大きくなるような回転電機10について第1の絶縁層3を形成することで、第2の絶縁層4が破壊するおそれがあるものについてのみ効果的に第1の絶縁層3を形成することができる。なお、上記歪みの大きさdは温度の上昇に伴って大きくなる傾向にあることから、室温における歪みの大きさdを基準としておくことで、信頼性に優れたものとすることができる。また、上記歪みの大きさdは、第2の絶縁層4の材料構成により異なるものであり、具体的にはJIS K 6251により測定される応力歪み曲線から求められるものである。
以下、本発明について、実施例を参照してより具体的に説明する。
(実施例1)
液圧モールド法より図6に示すような固定子コイル1を作製した。すなわち、薄いガラスクロスを巻回したガラス巻き素線2aを列状に配列し、それらの間にセパレータ6となるガラスクロスにエポキシ樹脂を含ませて半硬化状態としたものを配置して素線導体2とした。この素線導体2の周囲に硬化後のガラス転移点が−123℃、分子量20000となるポリジメチルシロキサン70質量部とマイカ30質量部と混合して半硬化状態としたシート状の被覆材料を硬化後の厚さが1mmとなるように巻回し、所定の金型を用いて200℃、2時間の加熱加圧処理を行って第1の絶縁層3を形成した。
次に、第1の絶縁層3が形成された素線導体2の周囲に、未含浸のマイカテープに硬化後のガラス転移点が110℃となるエポキシ樹脂を含浸し、半硬化状態とした被覆材料を硬化後の厚さが3mmとなるように巻回し、その外周に表面抵抗率が1kΩの半導電テープを巻回した。また、半導電テープに20mm程度重なるようにして沿面放電を抑制するための電界緩和テープを巻回した。さらに、その周囲に離型テープを巻回し、所定の大きさの鉄板をあてた後、熱収縮性のテープを巻き、液圧モールド法によってエポキシ樹脂を硬化させ、第1の絶縁層3の周囲に第2の絶縁層4、半導電層5を形成し、固定子コイル1を得た。
このようにして作製された固定子コイル1は、素線導体2と、エポキシ樹脂とマイカとからなる第2の絶縁層4との間にポリジメチルシロキサンとマイカとからなる第1の絶縁層3が設けられているため、エポキシ樹脂とマイカとからなる第2の絶縁層4の破壊が有効に抑制される。結果として、素線導体2に流れる電流を増加させることができ、回転電機10の小型化、低コスト化、および大容量化が可能となる。
(実施例2)
全含浸法により図7に示すような固定子コイル1を作製した。すなわち、素線2aとしてのマイカル線をレーストラック状に巻回し、その直線部にガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸し、半硬化状態としたものを挟み込んで素線導体2とした。また、この素線導体2の周囲に硬化後のガラス転移点が−123℃、分子量20000となるポリジメチルシロキサン70質量部とマイカ30質量部と混合して半硬化状態としたシート状の被覆材料を硬化後の厚さが3mmとなるように巻回し、所定の金型を用いて200℃、2時間の加熱加圧処理を行って第1の絶縁層3を形成した。その後、この第1の絶縁層3が形成された素線導体2をコイル成形機により亀甲状に成形した。
この第1の絶縁層3が形成された素線導体2の外周に硬化後の厚さが3mmとなるように未含浸のマイカテープを巻回し、さらに表面抵抗率が1kΩの半導電テープを巻回した。この巻回体を図8に示すような回転電機10における固定子鉄心13のスロット13aに挿入し、繊維強化プラスチック(FRP)からなるスペーサ21、22、楔23によって固定した。また、コイルエンド部には、コイル同士を固定するためにガラスロービングを巻回した。この状態で、巻回体を固定子鉄心13ごとタンクにいれ、真空引きした後、硬化後のガラス転移点が110℃となる含浸用のエポキシ樹脂を注入し、加圧した。これを取り出し、乾燥炉にいれ、150℃、10時間の硬化処理を行い、第1の絶縁層3の周囲に第2の絶縁層4、半導電層5を形成し、固定子コイル1を得た。
全含浸法によれば、液圧モールド法よりも容易に固定子コイル1、回転電機10を製造することができるものの、固定子コイル1が固定子鉄心13に強固に固定され、高い機械的ストレスが負荷されるために第2の絶縁層4が破壊しやすくなるが、例えば上記したようなポリジメチルシロキサンとマイカとを有する第1の絶縁層3設けることで、第2の絶縁層4の破壊を有効に抑制することができる。
本発明の固定子コイルの一例を示す断面図。 第1の絶縁層の形成に用いられる被覆材料の一例を示す断面図。 第1の絶縁層の形成に用いられる被覆材料の他の例を示す断面図。 第1の絶縁層の形成に用いられる被覆材料のさらに他の例を示す断面図。 第1の絶縁層の形成方法を示す断面図。 液圧モールド法により得られる固定子コイルの一例を示す外観図。 全含浸法により得られる固定子コイルの一例を示す外観図。 本発明の回転電機の一例を示す断面図。 本発明の回転電機における固定子コイルの状態を示す断面図。 第2の絶縁層の引張強度の応力歪み曲線を模式的に示す図。 従来例の固定子コイルの一例を示す断面図。
符号の説明
1…固定子コイル、2…素線導体、2a…素線、3…第1の絶縁層、4…第2の絶縁体層、5…半導電層、6…セパレータ、10…回転電機、11…固定子、12…回転子、13…固定子鉄心、14…回転子鉄心、14a…回転軸、15…回転子コイル、16…ファン、21、22…スペーサ、23…楔、31…被覆材料、32…マイカ、33…マイカ紙、34、35…シロキサン結合を主鎖に持つ高分子、37…繊維基材

Claims (9)

  1. 銅線の周囲に絶縁被覆が施されてなる素線を複数束ねてなる素線導体と、
    前記素線導体の周囲に形成され、シロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する第1の絶縁層と、
    前記第1の絶縁層の周囲に形成され、ガラス転移点が100℃以上の高分子とマイカとを有する第2の絶縁体層と、
    前記第2の絶縁体層の周囲に形成され、表面抵抗率が1Ω以上1MΩ以下の半導電層と
    を有することを特徴とする固定子コイル。
  2. 請求項1記載の固定子コイルにおいて、
    前記第1の絶縁層におけるシロキサン結合を主鎖に持つ高分子は、ガラス転移点が30℃以下であることを特徴とする固定子コイル。
  3. 請求項1または2記載の固定子コイルにおいて、
    前記第1の絶縁体層におけるマイカは、配向されていることを特徴とする固定子コイル。
  4. 請求項1乃至3記載のいずれか1項記載の固定子コイルにおいて、
    前記第2の絶縁体層におけるガラス転移点が100℃以上の高分子は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、およびこれらの変性物の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする固定子コイル。
  5. 請求項1乃至4記載のいずれか1項記載の固定子コイルにおいて、
    前記第2の絶縁体層は、マイカより熱伝導性に優れる高熱伝導性充填剤を含有することを特徴とする固定子コイル。
  6. 請求項1乃至5記載のいずれか1項記載の固定子コイルにおいて、
    前記第1の絶縁層は、半硬化状態のシロキサン結合を主鎖に持つ高分子とマイカとを有する被覆材料を前記素線導体の周囲に配置して加熱加圧硬化することにより形成されたものであることを特徴とする固定子コイル。
  7. 請求項1乃至6記載のいずれか1項記載の固定子コイルにおいて、
    全含浸法により作製されたことを特徴とする固定子コイル。
  8. 回転子鉄心と前記回転子鉄心に設けられる回転子コイルとを有する回転子と、固定子鉄心と前記固定子鉄心に設けられる固定子コイルとを有する固定子とを有する回転電機であって、
    前記固定子コイルは請求項1乃至7のいずれか1項記載の固定子コイルであることを特徴とする回転電機。
  9. 請求項8記載の回転電機において、
    前記固定子鉄心の長さをL、前記回転電機の起動時と停止時との温度差をΔT、前記固定子コイルにおける素線導体の線膨張係数をα、前記固定子コイルにおける第2の絶縁層の線膨張係数をα、前記固定子コイルにおける第2の絶縁層の引張強度の応力歪み曲線が線形領域から外れるときの歪みの大きさをdとしたとき、
    (L/2)・(α−α)ΔT > d
    を満たすことを特徴とする回転電機。
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