JP2010074791A - 通信体及びカプラ - Google Patents

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Abstract

【課題】非接触で2つの線路同士が結合して通信信号を伝送できるようにした通信体及びそれを備えたカプラを構成する。
【解決手段】カプラ503は平行平板型の通信体440,450から成る。通信体440の誘電体基板20の第1面には第1の外導体21、第2面には第2の外導体22がそれぞれ形成されている。第1の外導体21には多数の電磁界結合用の開口Aが配置されている。第2の外導体22は誘電体基板の全面に形成されている。通信体450についても同様である。但し、通信体450の幅は通信体440より狭く、また、開口Aを配置する領域の伝搬方向の寸法は、通信体440−450間の伝送電力が最大の状態からゼロの状態を経て再び最大となる物理長を結合周期Lとしたとき、その1/2に定められている。通信体440と通信体450とは分布定数的に結合して、通信体440から通信体450へ電力が受け渡される。
【選択図】図7

Description

この発明は、近接状態で互いに結合するカプラ及び近接状態で通信を行う信号伝達装置用の通信体に関するものである。
この発明の背景技術として下記特許文献1〜9を挙げる。
[特許文献1〜3]
本発明を完成させた後に、本発明の特徴的な構成要素を表す語から公報を検索してヒットしたものである。
特許文献1〜3は、第1導体層、第1誘電体層、第2導体層、第2誘電体層及び第3導体層がこの順序で積層された積層体基板において、第1導体層には厚さ方向に導体層を貫通する同一形状のホールが第1方向に第1間隔で配列され、第1方向と直交する第2方向に第2間隔で配列された第1格子状ホールパターンを有する第1接地導体が形成され、第2導体層には第1格子状ホールパターンの第1方向に帯状導体パターンが中心導体として形成され、第3導体層には第1導体層上の格子状ホールパターンを積層方向に投影した第2格子状ホールパターンを有する第2接地導体が形成されたメッシュホールグランドストリップライン構造を有する積層体基板に関するものである。
[特許文献4]
無線LANシステム用の高周波を伝送する高周波ストリップ線路であって、誘電材料からなる長尺誘電体層と、この誘電体層を挟む導電性材料からなる一対の長尺グランド層とが積層されてなり、前記誘電体層内に信号線が誘電体層長手方向に配設され、グランド層の一部に高周波結合用の開口部が設けられた高周波ストリップ線路。
[特許文献5]
誘電体基板を挟持する一対の導体層と、高周波信号の伝送方向に高周波信号の信号波長の1/2未満の繰り返し間隔で導体層間が電気的に接続されて形成された2列の貫通導体群とを有し、導体層及び貫通導体群に囲まれた領域によって高周波信号を伝送する誘電体導波管線路を2つ備え、導体層の一方が隣接又は共有して重ねて配置されるとともに、この一方の導体層の高周波信号の伝送方向に、高周波信号の管内波長λgの1/4の間隔で結合孔が少なくとも2つ設けられた方向性結合器。
[特許文献6]
データを送信する送信装置とデータを受信する受信装置からなる通信システムにおいて、送信装置は、所定の間隔で平行に配置された、マイクロ波帯の信号を伝送させる第1・第2の伝送線路と、送信信号である差動信号の一方を第1の伝送線路に出力するとともに、差動信号の他方を第2の伝送線路に出力する差動信号出力手段とを備え、受信装置は、所定間隔で平行配置された、マイクロ波帯の信号を伝送させる第3・第4の伝送線路と、第3・第4の伝送線路のそれぞれが、第1・第2の伝送線路と対向して近付けられたときに、線路間結合によって第3・第4の伝送線路に生じる差動信号を、データに対応する信号に変換する手段とを備えた通信システム。
[特許文献7]
電磁界を内部で伝搬させ、当該電磁界を開孔から浸出させるシート状の信号伝達装置と通信するインターフェース装置であって、信号伝達装置が有する開孔の縁辺のある領域の近傍に配置される第1の電極、当該縁辺の他の領域の近傍に配置される第2の電極を備え、第1の電極と第2の電極との間の電圧もしくは電流の変化と、ある領域における電界もしくは磁界の変化と、他の領域における電界もしくは磁界の変化と、の相互作用により、信号伝達装置と通信するインターフェース装置。
[特許文献8]
誘電体を挟んで平行に形成された一対の主導体層と、信号伝達方向に遮断波長以下の間隔で、主導体層間を電気的に接続するように形成された二列のバイアホール群で囲まれた領域によって誘電体導波管線路が形成され、主導体層の少なくとも一方にスロット孔が形成され、マイクロストリップ線路やコプレーナ線路が電磁結合されるようにした伝送線路。
[特許文献9]
第1の誘電体基板と、第1の誘電体基板の第1面に形成され、一端に第1の開放端を有し、他端が第1の誘電体基板の端部に至るように延在する第1のストリップ導体と、第1の誘電体基板の第2の面に形成された接地導体と、第1の誘電体基板に対向して配置された第2の誘電体基板と、第1の誘電体基板の第1の面に対向する第2の誘電体基板の面に形成され、一端に第2の開放端を有し、該第2の開放端から所定区間離れた位置で幅が変化して第2の誘電体基板の端部に至るように延在する第2のストリップ導体と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられ所定区間を覆う誘電体シートとを備え、第1のストリップ導体と第2のストリップ導体とが、誘電体シートを介して所定長さ対向するように、且つ第1の開放端と第2の開放端が互いに逆向きとなるように第1の誘電体基板、誘電体シート、及び第2の誘電体基板が積層された線路間結合構造。
ここで特許文献7に示されている信号伝達装置用のインターフェース装置について、図1・図2を参照して説明する。
図1は、特許文献7に係る信号伝達装置の概要構成を示す図であり、(a)は信号伝達装置101の上面図、(b)はその断面図である。信号伝達装置101は、メッシュ状の第1導体部111と、これに略平行な平板状の第2導体部121と、を備えている。第1導体部111と第2導体部121とに挟まれる領域が狭間領域131であり、第1導体部111の上側にある領域が浸出領域141である。
このように、第1導体部111は、メッシュ状の構造を持ち、開孔があるので、メッシュの間隔と同程度の高さまで、電磁界が浸出するようになる。この電磁波が浸出する領域が浸出領域141である。
図2は、指向性を有するインターフェース装置601の構成を示す説明図である。インターフェース装置601は、内部導体部602、外部導体部603、及び経路導体部604で構成されている。
内部導体部602は、信号伝達装置101のメッシュ状の第1導体部111に近接する導体であり、その一端は外部導体部603に、その他端は経路導体部604に、それぞれ接続されている。外部導体部603は箱状を成して内部導体部602を覆っている。外部導体部603には開孔があり、その開孔を経路導体部604が非接触に貫通している。
この構成により、外部導体部603と経路導体部604に同軸ケーブルを介して信号送受信回路が結合して、そこに流れる電流が変化すると、電磁波が主に図中矢印の方向に放出される。
特開2005−191901号公報「メッシュホールグランドストリップライン構造を有する積層体基板」 特開2005−191902号公報「メッシュホールグランドストリップライン構造を有する積層体基板」 特開2005−191903号公報「メッシュホールグランドストリップライン構造を有する積層体基板」 特開2002−353707号公報「高周波ストリップ線路及びアンテナ装置」 特開平11−308025号公報「方向性結合器」 特開2007−49422号公報「通信システム、送信装置及び方法、並びに、受信装置及び方法」 特開2007−150652号公報「信号伝達装置用のインターフェース装置」 特開平10−107518号公報「誘電体導波管線路及び配線基板」 特開2002−185206号公報「線路間結合構造及びこれを用いた高周波装置」
特許文献1〜9に開示された装置では次のような課題があった。
[特許文献1〜3]
特許文献1〜3に記載された発明は、基板成形時に発生するガスを放出させるのが主な目的であり、ホール開口径とホール間隔について、放射を抑圧できるような規定はされていない。また、内導体を挟む両方の接地導体に格子状ホールパターンが形成されていて、基板両側からの放射が発生する。
[特許文献4]
特許文献4の本発明のストリップラインは,線路の開口部に結合させて高周波を放射させるためのアンテナ装置であり,周辺機器と干渉するおそれがある。
[特許文献5]
誘電体導波管線路を2つ隣接させて重ねて配置した構成の場合、互いの結合孔の位置がずれたときに結合特性が悪くなる。隣接する2つの誘電体導波管線路の距離が離れたとき、一方の誘電体導波管線路のもつ孔から漏洩した電磁波が遠方まで放射し、その電力が大きい場合に電波法による規制値を超えるおそれがある。結合孔の大きさと間隔が管内波長に依存するため、適切に作用する周波数帯域が狭い。
[特許文献6]
差動伝送路のペア間で線路長の不揃いがある場合、遠方での放射電磁界の打ち消し合いが弱まり、放射抑圧効果が低減する。差動線路に曲がり部分がある場合、長さ方向の対称性がくずれて放射抑圧効果が小さくなる。差動ペアの間隔を広くすると放射抑圧効果は低減する。一方、差動ペアの間隔を狭くすると放射抑圧効果は高まるものの、クロストークが発生して信号品質が劣化するので、両者のトレードオフを考慮しなければならない。差動ペアの線路長の不揃いがある場合は差動スキューが発生し、ビットエラーやパケットエラーの原因となって信号品質が劣化する。また通信速度が高速になるほど発生するスキューが大きくなるので高速通信用途には不向きである。
[特許文献7]
インターフェース装置が共振器であり、信号伝送装置内に伝送される信号の周波数と共振周波数を一致させ、かつインピーダンスを整合させることで結合を得ている。そのため、整合帯域が狭くなる傾向があり、高速伝送など広帯域が必要となる場合に問題となる。
[特許文献8]
スロット孔から漏洩した電磁波が遠方まで放射し、その電力が大きい場合、電波法による規制値を超えるおそれがある。スロット孔の大きさが管内波長に依存するため、適切に作用する周波数帯域が狭い。
[特許文献9]
放射を抑えるための機構が備わっていない。線路間結合の際に遠方界への電磁波の放射を伴うので,周辺の電気機器と干渉する可能性がある。電波法による規制値を超えるおそれがある。
そこで、この発明の目的は、以上に述べた各種の問題を解消して、非接触で2つの線路同士が結合して通信信号を伝送できるようにした通信体及びそれを備えたカプラを提供することにある。
(1)この発明の通信体は、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1の面に形成された第1の外導体と、前記誘電体基板の第2の面に形成された第2の外導体と、前記第1の外導体と前記第2の外導体とをそれぞれ電気的に導通させる複数の貫通導体が互いに平行な列を成す複数の貫通導体群と、を備え、前記第1の外導体の前記貫通導体群以外の所定領域に電磁界結合用の複数の開口が配置されるとともに、前記開口の寸法が前記誘電体基板中を伝搬する波の1/4波長以下であることを特徴とする。
この構成により、電磁波の伝送する機能に加え、電磁界結合用の開口が形成された第1の外導体の表面近傍に通信用のエバネッセント波が誘起される。電磁界結合用の開口の寸法が媒質(誘電体基板)中を伝搬する波の1/4波長以下であることにより、放射が抑圧された遮断状態を実現することができる。
(2)前記貫通導体群は、前記誘電体基板の対向する2つの辺に沿った位置と、当該2つの辺より内側の位置とにそれぞれ配置されてもよい。
この構成により、伝送線路が並列配置されることになり、エバネッセント波が誘起される通信領域を広くすることができる。
(3)この発明のカプラは、前記通信体を少なくとも2つ備え、前記通信体の第1の外導体の形成面側同士が対向し、且つ前記通信体の内部を伝搬する波の伝搬方向が略平行となるように前記2つの通信体を配置したことを特徴とする。
この構成により、互いに接点を持たない2つの通信体を近接させることで結合するカプラを提供することができる。また、2つの通信体の分布定数的な結合領域が一定である場合、2つの通信体が互いに伝搬方向にずれても結合特性に影響しない配置自由度をもつ。さらに、2つの通信体の基本構造が略同じであるため、結合特性が広帯域にできる。
(4)前記カプラの2つの通信体のうち少なくとも一方の通信体の前記開口が形成される領域より外側に一定幅のつば状導体を設ける。
この構成により、2つの通信体の間隙に発生する平行平板モードを通じて外部に放射される電力を抑圧することができる。
(5)前記2つの通信体のうち少なくとも一方の通信体における前記開口の形成領域の寸法が、前記誘電体基板中を伝搬する波の伝搬方向に沿って、結合周期の半奇数倍(1/2,3/2,…)に設定する。
この構成により、カプラの結合効率を極大にすることができる。
この発明によれば、放射が抑圧された遮断状態で電磁波を伝送する機能とともに、表面近傍に通信用のエバネッセント波を誘起することができる。そのため、非接触で2つの線路同士を結合させることのできる通信体が構成できる。
また、2つの通信体が非接触で結合するカプラを構成できる。
《第1の実施形態》
図3は第1の実施形態に係る通信体410の構成を示す斜視図である。
この通信体410は、誘電体基板10の両面に電極を形成して構成される平行平板型の通信体である。
誘電体基板10の第1面(上面)には第1の外導体11、第2面(下面)には第2の外導体12がそれぞれ形成されている。誘電体基板10は、厚さtが約0.25mmのフッ素樹脂板である。第1・第2の外導体11,12は厚さ約0.02mmの銅電極である。
第1の外導体11には多数の電磁界結合用の開口Aが配置されている。第2の外導体12は誘電体基板10の下面の全面に形成されている。誘電体基板10の左右の側部には、誘電体基板10の対向する2つの辺に沿った複数の位置で第1の外導体11と第2の外導体12とをそれぞれ電気的に接続する複数の貫通導体16から成る2列の貫通導体群が設けられている。この2列の貫通導体群の間隔aは2.8mmに定められている。
上記貫通導体群を構成する複数の貫通導体の配列ピッチは、誘電体基板中を伝搬する電磁波の波長の1/4以下としている。
第1の外導体11に形成されている開口Aはそれぞれの一辺wが0.48mmの正方形であり、ピッチpが0.60mmの正方格子状に配置されている。
この通信体410はミリ波帯で用いられる。誘電体基板10は比誘電率が約2.2のフッ素樹脂であり、誘電体基板10内を、誘電体基板10の長手方向(貫通導体群の配列方向)へ電磁波が伝搬する。この誘電体基板中を伝搬する電磁波の波長は例えば60GHzにおいて約3.4mmである。
図3では通信体410の長手方向の寸法は所定長に描いているが、長手方向寸法は必要に応じた寸法にすればよい。誘電体基板の電磁波伝搬方向の両端(始端と終端)は無反射終端とするために抵抗体を配置してもよい。
また、図3には表されていないが、通信体410を伝搬する信号(電磁波)を励振する信号入力手段又は通信体410を伝搬する信号(電磁波)と結合して信号を取り出す信号出力手段が、この通信体410に設けられる。
電磁界結合用の開口Aの大きさが媒質中を伝搬する電磁波の波長の1/4以下である場合、媒質中を伝搬する電磁波が殆ど減衰することなく、且つ開口を配置した外導体の表面近傍にエバネッセント波が誘起される。上記電磁界結合用の開口Aの一辺の寸法wの寸法(0.48mm)は、誘電体基板10中を伝搬する電磁波の波長(約3.4mm)の約1/7に相当するので、第1の外導体11の表面近傍にエバネッセント波が誘起されることになる。
エバネッセント波は空間に向けて指数関数的に減衰する波であり、物体表面の近傍での通信が可能で、且つ遠方への放射には寄与しない特性をもつ。したがって、電波法による放射規制に対して問題とならない。
左右の側部に形成された複数の貫通導体16からなる貫通導体群は、方形導波管のH面として作用し、この貫通導体群、第1の外導体11、及び第2の外導体12によって導波管と同等の伝送線路を構成している。上記2列の貫通導体群の間隔aは導波管の遮断周波数に応じて定める。すなわち、通信信号の周波数帯が導波管モード(TE01モード)で伝搬して遮断されない幅以上に定める。但し、この間隔aを広くしすぎると高次のスプリアスモードが伝搬されて通信特性が悪化するので、適宜定める。
なお、誘電体基板の厚み寸法は、伝搬路の遮断周波数に影響を与えないので、装置の扱いが容易となるようになるべく薄くする。但し、薄くする程、導体損失が増して線路のQが低下するので、その点を考慮して定める。
このようにして通信体内部の電磁波伝搬中に信号強度が殆ど低下することなく、第1の外導体11の表面近傍にエバネッセント波を誘起させることができる。
なお、この例では電磁界結合用の開口Aが正方形であるが、この開口Aの形状を円形、長方形、六角形等に変形しても有効であり、同様の作用効果が得られる。
《第2の実施形態》
図4は第2の実施形態に係る通信体420の構成を示す斜視図である。この通信体420には3列以上の貫通導体群が設けられている。
誘電体基板20の第1面(上面)には第1の外導体21、第2面(下面)には第2の外導体22がそれぞれ形成されている。第1の外導体21には多数の電磁界結合用の開口Aが配置されている。第2の外導体22は誘電体基板20の下面の全面に形成されている。
誘電体基板20には、電磁波の伝搬方向に複数の貫通導体26が並んで成る6列の貫通導体群が設けられている。この6列の貫通導体群のうち隣接する貫通導体群の間隔aは2.8mmに定められている。その他の構成は図3に示したものと同様である。
このようにして、5列の通信体420a,420b,420c,420d,420eを備えた通信体420が構成される。
上記5列の通信体420a,420b,420c,420d,420eを伝搬する信号(電磁波)を励振する信号入力手段又はこれらの通信体を伝搬する信号(電磁波)と結合して信号を取り出す信号出力手段が各通信体に設けられる。
この構成により、エバネッセント波が誘起される通信領域を広くすることができる。
《第3の実施形態》
図5は第3の実施形態に係るカプラ501の構成を示す斜視図である。
このカプラ501は、第1の実施形態で図3に示した平行平板型の通信体410と第2の実施形態で図4に示した通信体420とを組み合せて構成される。
図5に示した状態では、図3に示した通信体410の上下が反転している。また、通信体410の第1の外導体11の形状を示すために、誘電体基板10及び第2の外導体12の一部を破断状態にして表している。
上記通信体410,420は、開口Aが配置された第1の外導体11,21の面が数mmの間隙を介して互いに対向し、伝搬方向の向きが互いに平行となるように配置される。
通信すべき信号に対応する電磁波を通信体420に伝搬させたとき、開口Aを形成した第1の外導体21の表面近傍にはエバネッセント波が誘起される。2つの通信体410,420の第1の外導体11,21の面を互いに数mmの間隙を介して対向させた場合、エバネッセント波が干渉し、そのことによって互いに結合する。
この例のように、電磁波の伝搬方向が互いに平行となる向きに通信体410,420を配置すると、両者は分布定数的に結合するため、カプラとして機能する。
また、互いに結合する通信体420のうちの一つと通信体410とが同じ構造である場合、線路の分散関係も同じであるので、カプラ特性として広帯域かつ低損失な結合特性が実現できる。
《第4の実施形態》
図6は第4の実施形態に係るカプラ502の構成を示す斜視図である。
このカプラ502は、平行平板型の通信体430,440から構成される。
一方の通信体440の構成は次のとおりである。
誘電体基板20の第1面(上面)には第1の外導体21、第2面(下面)には第2の外導体22がそれぞれ形成されている。第1の外導体21には多数の電磁界結合用の開口Aが配置されている。第2の外導体22は誘電体基板20の第2面(下面)の全面に形成されている。誘電体基板20には、第1の外導体21と第2の外導体22とをそれぞれ電気的に接続する複数の貫通導体26から成る6列の貫通導体群が設けられている。さらに誘電体基板20の第1面(上面)の両側部には、一定幅のつば状導体25,25が形成されている。
他方の通信体430は一方の通信体440に比べて幅が狭く、複数の貫通導体16による貫通導体群は2列のみ設けている。その他の構成は一方の通信体440と同様である。但し図6では、通信体430の第1の外導体11の形状を示すために、誘電体基板10の一部を破断状態にして表している。
第3の実施形態として図5に示した例では、通信体410と通信体420との結合電力の一部が誘電体基板10側の第1の外導体11と誘電体基板20側の第1の外導体21との間隙で平行平板モードとなって伝搬し、外部空間へ放射される可能性がある。
これに対して、図6に示した構成では、他方の通信体430の幅を一方の通信体440の幅よりも狭くしているので平行平板モードの発生領域が小さくなる。また、開口Aが配置された領域の両側につば状導体15,15,25,25がそれぞれ形成されているので、通信体430と通信体440との対向によって生じる間隙において、つば状導体15,15,25,25の内側と外側の線路の不連続部でそれぞれ反射が生じる。このつば状導体15,15,25,25の幅は、つば状導体15,15,25,25とそれに対向する相手側の第1の外導体との間に定在波が生じるような寸法に定めておく。これにより、つば状導体15,15とそれに対向する相手側の第1の外導体との間に共振が生じる。同様につば状導体25,25とそれに対向する相手側の第1の外導体との間に共振が生じる。
このように、スタブによる反射を利用して、通信体430−440の対向によって生じる間隙(結合領域)から外部を見たときの伝送路のインピーダンスを変化させることで放射が抑圧される。例えば通信周波数が60GHzである場合、平行平板モードの1/2波長は1.7mmであるので、つば状導体15,15の幅は1.7mm前後となる。但し、実際には、上記つば状導体とそれに対向する相手側の第1の外導体との間に電磁波が斜めに入射するので、シミュレーションで様子を見ながら特性的に良好な条件を選べばよい。
このように、通信体430−440の対向によって生じる間隙(結合領域)から外部を見たときの伝送路のインピーダンスを変化させることで放射が抑圧される。
《第5の実施形態》
図7は第5の実施形態に係るカプラ503の構成を示す斜視図である。
このカプラ503は、平行平板型の通信体440,450から構成される。第4の実施形態で図6に示した例と異なるのは、幅を狭くした方の通信体450については、開口Aを配置する領域の伝搬方向の寸法を、後に示す結合周期Lの1/2に設定している。その他の構成は第4の実施形態と同様である。
カプラ503は、通信体440と通信体450とが分布定数的に結合して、一方の通信体から他方の通信体に一定の周期で電力の受け渡しをするように動作する。一方の通信体の伝送電力が最大の状態からゼロの状態を経て再び最大となる物理長は結合周期Lとして後に示す(3)式で表される。
この第5の実施形態のように、開口Aを配置する領域の伝搬方向の寸法を結合周期の1/2に設定すればカプラの結合効率が極大となる。すなわち、一方の通信体から他方の通信体に取り出す電力を極大にすることができる。
次に、カプラの設計と解析について示す。
図8はカプラの設計の考え方について示す図である。図8(A)は、2つの通信体同士の結合モードである偶モードと奇モードの位相差が180°となる関係を示している。分布定数線路による方向性結合器の結合原理は、このように偶モードと奇モードとに分けて説明することができる。偶モードと奇モードとの位相差が180°となる関係を満たす条件は次の式で表される。
Figure 2010074791
ここで、βevenは偶モードの位相定数、βoddは奇モードの位相定数、lcoupleは偶モードと奇モードの位相差が180°となる物理長である。
図8(B)は、結合線路の等価回路(磁界結合モデル)における分布定数線路の微小(dz)区間について表している。結合係数kの定義と位相定数との関係は次の式で表される。
Figure 2010074791
ここで、L1,L2,Mは図8(B)中に示したとおり、分布定数線路の微小区間におけるインダクタンス及び相互インダクタンスである。βevenは結合後の偶モードの位相定数、βoddは結合後の奇モードの位相定数、β1は結合前の第1通信体の導波路の位相定数、β2は結合前の第2通信体の導波路の位相定数である。
図9は条件の異なる3つの例について結合距離の変化を示している。
図9の(A)(B)(C)の各条件は次のとおりである。
(A)k=5%,λ1=3.37mm,λ2=3.37mm
(B)k=10%,λ1=3.37mm,λ2=3.37mm
(C)k=5%,λ1=3.37mm,λ2=3.21mm(λ1/λ2=1.05)
図9において、P1は入力電力(電力密度)の瞬時値、P2は出力電力(電力密度)の瞬時値である。P1の細かな山から山の間隔又は谷から谷への間隔が波長λ1に対応している。同様にP2の細かな山から山の間隔又は谷から谷への間隔が波長λ2に対応している。結合周期Lは次式で近似される距離であり、一方の通信体から他方の通信体へ電力が乗り移る割合がこの結合周期Lで変化する。この関係は、上記(C)の条件のように、λ1とλ2に差がある場合にも成り立つ。
Figure 2010074791
結合距離は結合周期Lの1/2であり、一方の通信体から他方の通信体へ乗り移る電力はこの結合距離で示す位置で極大となる。同様に、結合周期Lの半奇数倍(1/2,3/2,…)の位置で、一方の通信体から他方の通信体へ乗り移る電力は極大となる。なお、縦軸は最大値を1に正規化した電力であるので、その単位は(−)のように表しているとおり無次元である。
2つの通信体の誘電体基板の比誘電率は共に2.2(フッ素樹脂)に設定した。条件(A)では、結合距離L/2(一方の通信体から他方の通信体へ電力が最大に伝わる距離)は約34mmとなった。条件(B)のように、結合係数を条件(A)の2倍にすると、条件(A)の場合に比べて結合距離Lは1/2に短縮された。さらに、条件(C)のように、線路2の波長を線路1よりも5%短くすると、条件(A)に比べて結合距離Lが短縮されるが、結合効率は最大でも約50%に留まる。
図10は、波長比と結合効率との関係を示している。
結合効率は、入力電力P1のピーク値をPin、出力電力P2のピーク値(結合距離lcoupleにおける電力)をPcoulpeとしたとき、図10(A)に示すように、Pcoulpe/Pinであり、次式で表される。
Figure 2010074791
因みに、図10(A)は、k=5%,λ1=4.23mm,λ2=3.85mm(λ1/λ2=1.1)の例である。
図10(B)は、結合係数kをパラメータにして、波長比に対する結合電力の関係を示している。このように、波長比(λ1/λ2)が大きくなる程、結合電力は小さくなり、また、結合係数kが小さい程、波長比の増大に伴う結合電力の低下率が大きい。
したがって、結合効率を100%にするためには、2つの通信体を伝搬する波長を一致させることが重要である。
図11は、一つの開口Aを含む単位格子について、電磁界解析を行った結果である。図11(A)は単位格子の解析モデルであり、この例では絶縁皮膜を設けている。
解析条件は次のとおりである。
格子寸法:0.2〜1.2mm(パラメータ変化)
開口寸法:格子寸法の80%
基板厚さ:0.50mm
皮膜厚さ:0.25mm
基板比誘電率:2.2(フッ素樹脂)
皮膜比誘電率:2.2(フッ素樹脂)
導体導電率:53MS/m
図11(B)は誘電体基板の下面(グランド面)からの高さ位置での電界強度、図11(C)は同じく高さ位置での磁界強度をそれぞれ表している。図中の数値は単位格子の寸法である。下面からの高さが1mmを超えた辺りから、電磁界共に指数関数的に減衰する状況が確認できる。(図11では縦軸が対数目盛であるので直線的に変化しているが、リニアスケールであれば指数関数的に変化する。)
このように、誘電体基板内には面方向に電磁波が伝搬するが、上部空間には遮断がかかっていて放射しない。但し、表面近傍ではエバネッセント波の電磁界で通信が可能である。
減衰定数は約13dB/mmであり、数m離れた位置では電波法の規制対象とはならない。
図12は、開口比の依存性について示している。単位格子のモデルは図11(A)に示したものから絶縁皮膜を無くし、誘電体基板の下面(開口表面から0.5mm)の高さで評価している。図12(A)は格子寸法に対する電界強度、図12(B)は格子寸法に対する磁界強度であり、開口比(格子寸法に対する開口寸法の比)が75%と80%とについてそれぞれ示している。
このように格子寸法が大きい程、電磁界強度が増し、開口比が大きい程、電磁界強度が増す。この例では、開口の開口比が80%である場合に比べ、開口比75%の場合は底面から1.0mmにおける位置で約1.5dB程度減衰量が増大する。
なお、以上に示した例では、開口の配置を正方格子状にしたが、開口の配置はこれに限らず、六角格子状に配置してもよいし、ランダムに配置してもよい。但し、開口の分布密度が高い程、表面から浸出するエバネッセント波の電磁界強度が高まるので、開口の分布密度を高めること、すなわち単位格子として考えたときの開口比をなるべく大きくすることはカプラとしての目的に叶う。但し、開口比がある程度大きくなると、隣接する開口同士の間隔が狭くなって導体損失が大きくなる。また、隣接する開口同士の間隔が狭くなるほど微細加工の難易度が高まるので、これらの要素を考慮して開口比を定める。
なお、通信体を構成する誘電体基板はリジッドなものに限らず、フレキシブルであってもよい。
さらに、図5〜図7に示した例では、一方の通信体を複数の通信体の並列配置構造にしたが、両方の通信体を並列配置構造にしてもよい。
特許文献7に係る信号伝達装置の概要構成を示す図であり、(a)は信号伝達装置101の上面図、(b)はその断面図である。 特許文献7に係る信号伝達装置のインターフェース装置601の構成を示す説明図である。 第1の実施形態に係る通信体410の構成を示す斜視図である。 第2の実施形態に係る通信体420の構成を示す斜視図である。 第3の実施形態に係るカプラ501の構成を示す斜視図である。 第4の実施形態に係るカプラ502の構成を示す斜視図である。 第5の実施形態に係るカプラ503の構成を示す斜視図である。 カプラの設計の考え方について示す図である。 条件の異なる3つの例について結合距離の変化を示す図である。 波長比と結合効率との関係を示す図である。 一つの開口Aを含む単位格子についての電磁界解析の結果を示す図である。 一つの開口Aを含む単位格子について、開口比の依存性を示す図である。
符号の説明
10,20…誘電体基板
11,21…第1の外導体
12,22…第2の外導体
15,25…つば状導体
16,26…貫通導体
410,420,430,440,450…通信体
501〜503…カプラ
A…開口

Claims (5)

  1. 誘電体基板と、前記誘電体基板の第1の面に形成された第1の外導体と、前記誘電体基板の第2の面に形成された第2の外導体と、前記第1の外導体と前記第2の外導体とをそれぞれ電気的に導通させる複数の貫通導体が互いに平行な列を成す複数の貫通導体群と、を備え、前記第1の外導体の前記貫通導体群以外の所定領域に電磁界結合用の複数の開口が配置されるとともに、前記開口の寸法が前記誘電体基板中を伝搬する波の1/4波長以下であることを特徴とする信号伝達装置用の通信体。
  2. 前記貫通導体群は、前記誘電体基板の対向する2つの辺に沿った位置と、当該2つの辺より内側の位置とにそれぞれ配置された、請求項1に記載の通信体。
  3. 請求項1又は2に記載の通信体を少なくとも2つ備え、前記通信体の第1の外導体の形成面側同士が対向し、且つ前記通信体の内部を伝搬する波の伝搬方向が略平行となるように前記2つの通信体を配置したことを特徴とするカプラ。
  4. 前記2つの通信体のうち少なくとも一方の通信体の前記開口が形成される領域より外側に一定幅のつば状導体を設けた、請求項3に記載のカプラ。
  5. 前記2つの通信体のうち少なくとも一方の通信体における前記開口の形成領域の寸法が、前記誘電体基板中を伝搬する波の伝搬方向に沿って、結合周期の半奇数倍(1/2,3/2,…)に設定されている、請求項3又は4に記載のカプラ。
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