以下に、本発明に係わる多端子半導体スイッチの最良の実施形態について、その一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[本発明の特徴]
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要を簡潔にまず説明する。本発明は、複数のSPSTスイッチ(例えばFET)を用いた多端子半導体スイッチにおいて、各SPSTスイッチから共通接続点(つまり各SPSTスイッチの共通端子が互いに接続される接続点)までの電気配線の距離が最短かつ等長となるように各SPSTスイッチを配置することを特徴とするものであり、多端子半導体スイッチの広帯域化、小型化・低コスト化を実現している。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチについて、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチの一例であるSP8Tスイッチのパタンレイアウトを示すレイアウト図である。
図1のSP8Tスイッチに示すように、GaAs等からなる半導体基板上に、1本の第1の配線である配線201と1個の第1の端子(図示せず)と、n本(n:2以上の整数。図1の場合、n=4)の第2の配線である配線211〜214とn個の第2の端子(図示せず)と、m本(m:2以上の整数。図1の場合、m=4)の第3の配線である配線215〜218とm個の第3の端子(図示せず)とを備え、かつ、1個のSingle‐Pole Double‐Throw(SPDT:単極双投)スイッチ8と、n個のSPSTスイッチを形成するためのn個の第1のFETであるFET421〜424と、m個のSPSTスイッチを形成するためのm個の第2のFETであるFET425〜428とを備えることにより、全体として、SP(n+m)Tスイッチ(つまり、図1の場合、SP8Tスイッチ)を構成している。
ここで、n本(図1の場合、n=4)の第2の配線である配線211〜214、m本(図1の場合、m=4)の第3の配線である配線215〜218は、それぞれ、一端が互いに接続された配線であり、図1においては、n本の第2の配線である配線211〜214の互いに接続された一端が、分岐点A(つまり、n本の第2の配線が1本になる共通接続点)において、第6の配線である配線202に接続され、m本の第3の配線である配線215〜218の互いに接続された一端が、分岐点B(つまり、m本の第3の配線が1本になる共通接続点)において、第7の配線である配線203に接続されている。
この結果、SPDTスイッチ8の2個の個別端子がそれぞれ第6の配線である配線202、第7の配線である配線203を経由して接続されている分岐点A、分岐点Bから見て、n個の第1のFETであるFET421〜424、m個の第2のFETであるFET425〜428が、それぞれ、SPnTスイッチ部(n=4)すなわち第1のSP4Tスイッチ部、SPmTスイッチ部(m=4)すなわち第2のSP4Tスイッチ部を形成して、全体として、SP(n+m)TスイッチすなわちSP8Tスイッチを構成している。
さらに説明すると、次の通りである。図1に示すSP8Tスイッチでは、第1の端子を構成する1個の共通端子(図示せず)からの配線201が、第1の配線として、第5のFETであるFET411、412等によって構成されるSingle‐Pole Double‐Throw(SPDT:単極双投)スイッチ8の共通端子に接続される。
図1のSPDTスイッチ8の個別端子の一方は、第6の配線である配線202を介して、分岐点Aにおいて、n本(n=4)の第2の配線である配線211〜214にn分岐され、n本の配線211〜214を介して、n個(n=4)の第1のFETであるFET421〜424のソース(またはドレイン)にそれぞれ接続される。つまり、一端が互いに接続された4本の第2の配線である配線211〜214を介して、SPDTスイッチ8の個別端子の一方と、4個のFET421〜424のソース(またはドレイン)とのそれぞれが接続される。
また、n個(n=4)のFET421〜424のドレイン(またはソース)は、n本(n=4)の第8の配線である配線221〜224にそれぞれ接続され、n個(n=4)の第2の端子を構成する個別の端子(図示せず)に接続されている。したがって、分岐点Aを、第1のFETであるFET421〜424からなるn個(n=4)の各SPSTスイッチの共通端子として見ると、4個のSPSTスイッチからなるSingle‐Pole 4‐Throw(SP4T)スイッチを形成しており、第1のSP4Tスイッチ部を構成している。
同様に、SPDTスイッチ8の個別端子の他の一方は、第7の配線である配線203を介して、分岐点Bにおいて、m本(m=4)の第3の配線である配線215〜218にm分岐され、m本の配線215〜218を介して、m個(m=4)の第2のFETであるFET425〜428のソース(またはドレイン)にそれぞれ接続される。つまり、一端が互いに接続された4本の第3の配線である配線215〜218を介して、SPDTスイッチ8の個別端子の他の一方と、4個のFET425〜428のソース(またはドレイン)とのそれぞれが接続される。
また、m個(m=4)のFET425〜428のドレイン(またはソース)は、m本(m=4)の第9の配線である配線225〜228にそれぞれ接続され、m個(m=4)の第3の端子を構成する個別の端子(図示せず)に接続されている。したがって、分岐点Bを、第2のFETであるFET425〜428からなるm個(m=4)の各SPSTスイッチの共通端子として見ると、4個のSPSTスイッチからなるSP4Tスイッチを形成しており、第2のSP4Tスイッチ部を構成している。
ここで、配線201、202、203は、ギャップを挟んだ接地導体1とともに半導体基板上に形成されたコプレーナ線路であり、配線211〜218も含めて多層配線プロセス等の複雑な製造プロセスは必要ではなく、極めて一般的な半導体集積回路における配線プロセスで比較的低コストに実現することができるものである。なお、分離された接地導体1間は、コプレーナ線路に不要モードが励起されないように、エアブリッジやワイヤなどを用いて接続される(図示せず)。
2個の第5のFETであるFET411、412のゲートには、第5の抵抗である抵抗511、512がそれぞれ接続され、第1のFETであるFET421〜424のゲートには、n個(n=4)の第1の抵抗である抵抗521〜524がそれぞれ接続され、第2のFETであるFET425〜428のゲートには、m個(m=4)の第2の抵抗である抵抗525〜528がそれぞれ接続され、制御端子(図示せず)からそれぞれ抵抗511、512および抵抗521〜528を経由して各FETのゲート制御電圧を印加することによって、配線201が接続される共通端子(図示せず。つまり第1の端子)と配線221〜228がそれぞれ接続される8個の個別端子(図示せず。4個の第2の端子と4個の第3の端子とからなる合計8個の端子)との間の切替制御が行われる。
また、第5の抵抗である抵抗511、512、第1の抵抗である抵抗521〜524および第2の抵抗である抵抗525〜528は、それぞれ、接続される各FETの直近(近傍)において、あるいは、接続される各FETと隣接のFETとの間において、各FETのゲートに平行に配置されているため、FET間隔を拡げることなく、制御信号間の干渉を避けることができる。FET間隔を狭めることは、第2、第3の配線である配線211〜218の長さを短くすることを可能にし、後述するように、スイッチの動作帯域を拡大することに直結する。
なお、4個の第1のFETであるFET421〜424、4個の第2のFETであるFET425〜428のそれぞれのゲートは、あるいは、4個の第1のFETであるFET421〜424、4個の第2のFETであるFET425〜428、2個の第5のFETであるFET411、412のそれぞれのゲートは、互いに平行になるように配置される。
次に、図1のSP8Tスイッチの詳細な動作について説明する。図1のSP8Tスイッチは、図1の上下に対称な構造であるので、図1の上側の第1のSP4Tスイッチ部を形成している分岐点Aを中心とした構成に関してその詳細な動作を説明する。4個の第1のFETであるFET421〜424のうち、分岐点Aからは最も遠くに位置するFET422と423とは、FET421と424と比較して図1の横方向に関して分岐点A点側に近づく方向にシフトするように配置されている。
かくのごときレイアウトを採用することにより、高性能FETの製造などの観点から、ゲート加工方位が一般的には一方向に限定されるFETを複数個用いて多ポートスイッチを構成した場合においても、第2の配線である配線211〜214のそれぞれを等長な直線として、配線211〜214の長さを最短かつ等長にすることが可能になり、オープンスタブの影響を大幅に低減することができることに加えて、分岐点Aから4つのFET421〜424までの通過特性を揃えることができる。また、第3の配線である配線215〜218のそれぞれについても同様であり、それぞれを等長な直線として、配線215〜218の長さを最短かつ等長にすることが可能である。したがって、多ポートスイッチの広帯域化に加えてポート間特性の均一化も図ることができる。
また、図1の上側の第1のSP4Tスイッチ部を形成する分岐点A側に信号を通過させる場合には、SPDTスイッチ8中のFET411をON、FET412をOFFとするように制御が行われるため、オープンスタブとして動作する可能性のあった配線203から分岐点B側の伝送線路は分離され、分岐点A側に信号を通過させる動作にほとんど関与しないようにすることができる。
したがって、SP4Tスイッチと同程度の広帯域特性を有するSP8Tスイッチを実現することができる。これは、帯域特性を制限する分岐点からの配線長、つまり、第1のSP4Tスイッチ部、第2のSP4Tスイッチ部の共通端子からの配線がそれぞれ共通に接続される共通接続点からの配線長(すなわち、第2、第3の配線である配線211〜218の配線長)を、8分岐よりも4分岐の方がより短くすることができるためである。
なお、図1に示す本実施の形態では、広帯域特性を実現するために、SPDTスイッチ8を含めて、2段のスイッチ構成となっているが、図9に示した3段構成の従来例と比較すると、挿入損失を低減することができること、および、制御端子数を減らすことができることなどの利点も得られる。
次に、図1のSP8Tスイッチとは異なるSP12Tスイッチのパタンレイアウトについて図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチの図1の場合とは異なる例であるSP12Tスイッチのパタンレイアウトを示すレイアウト図である。
図2に示すSP12Tスイッチでは、第1の端子を構成する1個の共通端子(図示せず)からの配線201が、第1の配線として、図1の場合と同様、第5のFETとなるFET411、412等によって構成されるSingle‐Pole Double‐Throw(SPDT:単極双投)スイッチ8の共通端子に接続される。
図2のSPDTスイッチ8の個別端子の一方は、第6の配線である配線202を介して、分岐点Aにおいて、n本(n=6)の第2の配線である配線211〜216にn分岐され、n本の配線211〜216を介して、n個(n=6)の第1のFETであるFET421〜426のソース(またはドレイン)にそれぞれ接続される。つまり、一端が互いに接続された6本の第2の配線である配線211〜216を介して、SPDTスイッチ8の個別端子の一方と、6個のFET421〜426のソース(またはドレイン)とのそれぞれが接続される。
また、n個(n=6)のFET421〜426のドレイン(またはソース)は、n本(n=6)の第8の配線である配線221〜226にそれぞれ接続され、n個(n=6)の第2の端子を構成する個別の端子(図示せず)に接続されている。したがって、分岐点Aを、第1のFETであるFET421〜426からなるn個(n=6)の各SPSTスイッチの共通端子として見ると、6個のSPSTスイッチからなるSingle‐Pole 6‐Throw(SP6T)スイッチを形成しており、第1のSP6Tスイッチ部を構成している。
同様に、SPDTスイッチ8の個別端子の他の一方は、第7の配線である配線203を介して、分岐点Bにおいて、m本(m=6)の第3の配線である配線217〜2112にm分岐され、m本の配線217〜2112を介して、m個(m=6)の第2のFETであるFET427〜4212のソース(またはドレイン)にそれぞれ接続される。つまり、一端が互いに接続された6本の第3の配線である配線217〜2112を介して、SPDTスイッチ8の個別端子の他の一方と、6個のFET427〜4212のソース(またはドレイン)とのそれぞれが接続される。
また、m個(m=6)のFET427〜4212のドレイン(またはソース)は、m本(m=6)の第9の配線である配線227〜2212にそれぞれ接続され、m個(m=6)の第3の端子を構成する個別の端子(図示せず)に接続されている。したがって、分岐点Bを、第2のFETであるFET427〜4212からなるm個(m=6)の各SPSTスイッチの共通端子として見ると、6個のSPSTスイッチからなるSP6Tスイッチを形成しており、第2のSP6Tスイッチ部を構成している。
ここで、配線201、202、203は、図1の場合と同様、ギャップを挟んだ接地導体1とともに半導体基板上に形成されたコプレーナ線路であり、配線211〜2112も含めて多層配線プロセス等の複雑な製造プロセスは必要ではなく、極めて一般的な半導体集積回路における配線プロセスで比較的低コストに実現することができるものである。なお、分離された接地導体1間は、コプレーナ線路に不要モードが励起されないように、エアブリッジやワイヤなどを用いて接続される(図示せず)。
2個のFET411、412のゲートには、第5の抵抗である抵抗511、512がそれぞれ接続され、第1のFETであるFET421〜426のゲートには、n個(n=6)の第1の抵抗である抵抗521〜526がそれぞれ接続され、第2のFETであるFET427〜4212のゲートには、m個(m=6)の第2の抵抗である抵抗527〜5212がそれぞれ接続され、制御端子(図示せず)からそれぞれ抵抗511、512および抵抗521〜5212を経由して各FETのゲート制御電圧を印加することによって、配線201が接続される共通端子(図示せず。つまり第1の端子)と配線221〜2212がそれぞれ接続される12個の個別端子(図示せず。6個の第2の端子と6個の第3の端子とからなる合計12個の端子)との間の切替制御が行われる。
また、図1の場合と同様、第5の抵抗である抵抗511、512、第1の抵抗である抵抗521〜526および第2の抵抗である抵抗527〜5212は、それぞれ、接続される各FETの直近(近傍)において、あるいは、接続される各FETと隣接のFETとの間において、各FETのゲートに平行に配置されているため、FET間隔を拡げることなく、制御信号間の干渉を避けることができる。FET間隔を狭めることは、第2、第3の配線である配線211〜2112の長さを短くすることを可能にし、後述するように、スイッチの動作帯域を拡大することに直結する。
なお、6個の第1のFETであるFET421〜426、6個の第2のFETであるFET427〜4212のそれぞれのゲートは、あるいは、6個の第1のFETであるFET421〜426、6個の第2のFETであるFET427〜4212、2個の第5のFETであるFET411、412のそれぞれのゲートは、互いに平行になるように配置される。
次に、図2のSP12Tスイッチの詳細な動作について説明する。図2のSP12Tスイッチは、図2の上下に対称な構造であるので、図2の上側の第1のSP6Tスイッチ部を形成している分岐点Aを中心とした構成に関してその詳細な動作を説明する。6個の第1のFETであるFET421〜426のうち、分岐点Aからは最も遠くに位置するFET423と424とは、FET421、422、425、426と比較して図1の横方向に関して分岐点A点側に近づく方向にシフトするように配置されている。
かくのごときレイアウトを採用することにより、図1の場合と同様、高性能FETの製造などの観点から、ゲート加工方位が一般的には一方向に限定されるFETを複数個用いて多ポートスイッチを構成した場合においても、第2の配線である配線211〜216のそれぞれを等長な直線として、配線211〜216の長さを最短かつ等長にすることが可能になり、オープンスタブの影響を大幅に低減することができることに加えて、分岐点Aから6つのFET421〜426までの通過特性を揃えることができる。
また、第3の配線である配線217〜2112のそれぞれについても同様であり、それぞれを等長な直線として、配線217〜2112の長さを最短かつ等長にすることが可能である。したがって、多ポートスイッチの広帯域化に加えてポート間特性の均一化も図ることができる。
また、図1の場合と同様、図2の上側の第1のSP6Tスイッチ部を形成する分岐点A側に信号を通過させる場合には、SPDTスイッチ8中のFET411をON、FET412をOFFとするように制御が行われるため、オープンスタブとして動作する可能性のあった配線203から分岐点B側の伝送線路は分離され、分岐点A側に信号を通過させる動作にほとんど関与しないようにすることができる。
したがって、SP6Tスイッチと同程度の広帯域特性を有するSP12Tスイッチを実現することができる。これは、帯域特性を制限する分岐点からの配線長、つまり、第1のSP6Tスイッチ部、第2のSP6Tスイッチ部の共通端子からの配線がそれぞれ共通に接続される共通接続点からの配線長(すなわち、第2、第3の配線である配線211〜2112の配線長)を、12分岐よりも6分岐の方がより短くすることができるためである。
なお、図2に示す本実施の形態では、広帯域特性を実現するために、SPDTスイッチ8を含めて、2段のスイッチ構成となっているが、図9に示した3段構成の従来例と比較すると、図1の場合と同様、挿入損失を低減することができること、および、制御端子数を減らすことができることなどの利点も得られる。
ここで、図1、図2の実施の形態において、第1の配線である配線201、第6の配線である配線202、第7の配線である配線203のそれぞれを信号線として使用するコプレーナ線路の特性インピーダンスは、好ましくは、配線幅を細くしたり、グランドとのギャップを拡げたりすることによって、それらの配線の一部もしくは全部について、多端子半導体スイッチの入出力インピーダンスよりも高く設定することが望ましい。かくのごとき特性インピーダンスの配線とすることにより、より一層、オープンスタブの影響を相殺することができ、反射損失を改善することができる。
また、図8の特性図に示したように、反射損失を−10dB以下に確保するために、n本(n=4)の第2の配線である配線211〜214およびm本(m=4)の第3の配線である配線215〜218の実効電気長を、あらかじめ定めた所望の動作周波数において、5度以下とすることが望ましい。
また、図1、図2のごとき回路構成においては、信号線がグランドに接続されていないため、入力された信号レベルをほぼそのまま出力することができる。したがって、RF(Radio Frequency)帯の信号を用いる無線通信用途などに加えて、信号直流ロジックレベルに無依存な広帯域ベースバンド信号を利用する高速データ伝送用スイッチとしても利用することができる。
なお、SPDTスイッチ8の2個の個別端子のそれぞれに接続されるスイッチは、図1、図2のようなSP4TスイッチやSP6Tスイッチに限定されることはなく、SP3Tスイッチ、SP5Tスイッチなど、任意のSPkTスイッチ(k:2以上の整数)を使用することができる。
また、図1、図2の分岐点A、Bにおいてそれぞれn分岐、m分岐することにより配置されるSPnTスイッチ、SPmTスイッチのそれぞれのポート数は、図1や図2に例示したような同一のポート数に限定されることはなく、それぞれに配置されるポート数が異なるポート数となるスイッチを適用して、例えばSP4TスイッチとSP5Tスイッチとを適用して、全体として、SP9Tスイッチを構成するなどのスイッチ構成としても構わない。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチについて、まず図3を用いて説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチの一例であるSP8Tスイッチを形成するための構成要素の一つであるSP4Tスイッチ部のパタンレイアウトを示すレイアウト図である。つまり、図3は、第1の実施の形態として図1に例示したSP8Tスイッチの構成要素である2個のSP4Tスイッチ部のうち、図1の下側のSP4Tスイッチ部(つまり第2のSP4Tスイッチ部)のパタンレイアウトを示しており、第1の実施の形態の第1の変型例を示している。
図3のSP4Tスイッチ部(第2のSP4Tスイッチ部)の構成においては、図1のSP4Tスイッチ部の場合に比して、さらに、m個(m:2以上の整数。図3の場合、m=4)の第4のFET(シャントFET)として、m個のFET425S〜428Sを備え、さらに、m個(m=4)の第4のFETであるFET425S〜428S(シャントFET)とm個(m=4)の第2のFETであるFET425〜428(シリーズFET)とをそれぞれ接続するためのm本(m=4)の第5の配線である配線235〜238を備えている。
なお、図3には省略した上側のSP4Tスイッチ部(つまり第1のSP4Tスイッチ部)も同様であり、図示していないが、図1の第1のSP4Tスイッチ部の場合に比して、さらに、n個(n:2以上の整数。本実施の形態の場合、n=4)の第3のFET(シャントFET)として、n個のFET421S〜424Sを備え、さらに、n個(n=4)の第3のFETであるFET421S〜424S(シャントFET)とn個(n=4)の第1のFETであるFET421〜424(シリーズFET)とをそれぞれ接続するためのn本(n=4)の第4の配線である配線231〜234を備えている。
すなわち、図3に示す第2の実施の形態は、第1の実施の形態の第1の変型例を例示するものであり、多端子半導体スイッチの一例であるSP8Tスイッチの全体としては、図1の場合と同様、SPDTスイッチ1個とSP4Tスイッチ2個とによって構成される。しかし、本第2の実施の形態のSP8Tスイッチの場合、SPDTスイッチは、図1に示したSPDTスイッチ8と同一のパタンレイアウトであるが、SP4Tスイッチ部が、図1のSP4Tスイッチ部とは異なり、図3に示すようなシリーズ・シャント構成のパタンレイアウトである。
なお、本実施の形態におけるSP8Tスイッチについても、第1の実施の形態の場合と同様、上下に対称な構造としているので、図3には、SP8Tスイッチを形成する2個のSP4Tスイッチ部のうち、分岐点Bにて4分岐する下側のSP4Tスイッチ部(つまり、第2のSP4Tスイッチ部)のパタンレイアウトのみを示している。したがって、以下では、図3に示すSP4Tスイッチ部(第2のSP4Tスイッチ部)について、詳細な説明を行うこととする。
図3に示すSP4Tスイッチ部は、前述したように、図1の下側のSP4Tスイッチ(つまり、第2のSP4Tスイッチ部)と比較して、シリーズFETを構成している第2のFETであるFET425〜428をm個(m=4)備えていることに加えて、シャントFETを構成する第4のFETであるFET425S〜428Sをm個(m=4)追加したシリーズ・シャント構成のスイッチを成している。
つまり、図3に示すSP4Tスイッチにおいては、それぞれのソース(またはドレイン)が接地され、それぞれのドレイン(またはソース)がm個(m=4)の第2のFETであるシリーズFET425〜428のドレイン(またはソース)に、m本(m=4)の配線235〜238(つまり第5の配線)を介してそれぞれ接続されたm個(m=4)のシャントFET425S〜428Sが、第4のFETとして配置されている。なお、シリーズFET425〜428のドレイン(またはソース)とシャントFET425S〜428Sのドレイン(またはソース)とを、第5の配線である配線235〜238を介することなく、直接接合させたレイアウトとしても良く、かかる場合については、図3の変型例を示すものとして、図4において後述する。
図3のシリーズ・シャント構成においては、スイッチのON/OFF動作時に、それぞれに第5の配線である配線235〜238を介して接続されたシリーズFET425〜428とシャントFET425S〜428SとのON/OFF状態が、互いに逆になるように制御される。
したがって、信号径路としてOFFの経路については、第2のFET側のシリーズFET例えばFET425がOFF、第4のFET側のシャントFET例えばFET425SがONとなるため、第4のFET側のシャントFET例えばFET425Sを通じて信号線例えば配線215の他端(分岐点Bと反対側の端子)が接地されることになり、アイソレーション特性を大幅に向上させることができ、スイッチの広帯域化を図ることができる。
なお、第2のFETであるシリーズFET425〜428、第4のFETであるシャントFET425S〜428Sのゲートは、図3に示すように、それぞれ、互いに平行になるように形成されている。ただし、各FETのゲートに接続されるべき抵抗は図示していないが、図1の場合と同様、各FETの間または各FETの近傍に配置される。
ここで、4本の第5の配線である配線235〜238によりそれぞれ接続されるシリーズFET425〜428とシャントFET425S〜428Sとは、図3に示すように、それぞれについて同一直線上に並ぶように配置し、かつ、シリーズFET425〜428とシャントFET425S〜428Sとをそれぞれに接続する4本の第5の配線である配線235〜238は、それぞれ直線で形成され、かつ、互いに同じ長さに揃えるように配置される。
なお、上側の第1のSP4Tスイッチ部の場合についても同様であり、4本の第4の配線である配線231〜234によりそれぞれ接続されるシリーズFET421〜424とシャントFET421S〜424Sとは、それぞれについて同一直線上に並ぶように配置し、かつ、シリーズFET421〜424とシャントFET421S〜424Sとをそれぞれに接続する4本の第4の配線である配線231〜234は、それぞれ直線で形成され、かつ、互いに同じ長さに揃えるように配置される。
また、4個の第1のFETであるシリーズFET421〜424および4個の第3のFETであるシャントFET421S〜424S、4個の第2のFETであるシリーズFET425〜428および4個の第4のFETであるシャントFET425S〜428S、あるいは、4個の第1のFETであるシリーズFET421〜424および4個の第3のFETであるシャントFET421S〜424S、4個の第2のFETであるシリーズFET425〜428および4個の第4のFETであるシャントFET425S〜428S、2個の第5のFETであるFET411、412、のそれぞれのゲートは、互いに平行になるように配置される。
かくのごときパタンレイアウトを採用することにより、下側の第2のSP4Tスイッチ部について、分岐点Bと4個の第2のFETであるシリーズFET425〜428のソース(またはドレイン)との間をそれぞれ接続している4本の第3の配線である配線215〜218の長さを、図1のシリーズFETのみで構成した実施の形態の場合と同一に保ったまま、シリーズ・シャント構成のスイッチを実現することができ、ポート間特性の均一なスイッチの広帯域化を図ることができる。
上側の第1のSP4Tスイッチ部についても、全く同様であり、4本の第2の配線である配線211〜214の長さを、図1のシリーズFETのみで構成した実施の形態の場合と同一に保ったまま、シリーズ・シャント構成のスイッチを実現することができ、ポート間特性の均一なスイッチの広帯域化を図ることができる。
次に、図3のSP4Tスイッチ部とは異なるSP4Tスイッチ部のパタンレイアウトについて図4を用いて説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチの一例であるSP8Tスイッチを形成するための構成要素の一つであるSP4Tスイッチ部の図3の場合とは異なるパタンレイアウトを示すレイアウト図である。つまり、図4は、第1の実施の形態として図1に例示したSP8Tスイッチの構成要素であるSP4Tスイッチ部のうち、下側のSP4Tスイッチ部(つまり第2のSP4Tスイッチ部)のパタンレイアウトを示しており、図3に示したパタンレイアウトとは異なる例として、第1の実施の形態の第2の変型例を示している。
図4のSP4Tスイッチ部(第2のSP4Tスイッチ部)の構成においては、図1の第2のSP4Tスイッチ部の場合に比して、図3の場合と同様、さらに、m個(図3の場合、m=4)の第4のFET(シャントFET)として、m個のFET425S〜428Sを備えているが、図3の場合とは異なり、第5の配線である配線235〜238を設ける代わりに、m個(m=4)の第4のFETであるFET425S〜428S(シャントFET)をm個(m=4)の第2のFETであるFET425〜428(シリーズFET)にそれぞれ直接接合している。
なお、上側のSP4Tスイッチ部(つまり第1のSP4Tスイッチ部)も同様であり、図1の第1のSP4Tスイッチ部の場合に比して、さらに、n個(本実施の形態の場合、n=4)の第3のFET(シャントFET)として、n個のFET421S〜424Sを備え、第4の配線である配線231〜234を設ける代わりに、n個(n=4)の第3のFETであるFET421S〜424S(シャントFET)をn個(n=4)の第1のFETであるFET421〜424(シリーズFET)にそれぞれ直接接合している。
すなわち、図4に示す第2の実施の形態は、第1の実施の形態の第2の変型例として図3とは異なるパタンレイアウトを例示するものであり、多端子半導体スイッチの一例であるSP8Tスイッチの全体としては、図1の場合と同様、SPDTスイッチ1個とSP4Tスイッチ2個とによって構成される。しかし、図4に示す本第2の実施の形態のSP8Tスイッチの場合、SPDTスイッチは、図1に示したSPDTスイッチ8と同一のパタンレイアウトであるが、SP4Tスイッチ部が、図1のSP4Tスイッチ部とは異なり、さらに、図3のSP4Tスイッチ部とも異なり、図4に示すような、直接接合型のシリーズ・シャント構成のパタンレイアウトとしている。
なお、図4には、SP8Tスイッチを形成する2つのSP4Tスイッチ部のうち、分岐点Bにて4分岐する下側のSP4Tスイッチ部(つまり、第2のSP4Tスイッチ部)のパタンレイアウトのみを示している。したがって、以下では、図4に示すSP4Tスイッチ部(第2のSP4Tスイッチ部)について、詳細な説明を行うこととする。
図4に示すSP4Tスイッチ部は、前述したように、図1の下側のSP4Tスイッチ(つまり、第2のSP4Tスイッチ部)として、シリーズFETを構成している第2のFETであるFET425〜428をm個(m=4)備えていることに加えて、図3に例示したSP4Tスイッチ部の場合と同様、シャントFETを構成する第4のFETであるFET425S〜428Sをm個(m=4)追加したシリーズ・シャント構成のスイッチを成しているが、図3に例示したSP4Tスイッチ部と比較して、配線の種類およびFETの配置方法が異なっている。
つまり、配線の種類としては、図1〜図3に例示したコプレーナ線路とは異なり、半導体基板の表面には、接地導体1および図示していない1層以上の誘電体層が順に積層され、第7の配線を形成する配線203、m本(m=4)の第3の配線を形成する配線215〜218、および、m個(m=4)の第3の端子にそれぞれ接続するm本(m=4)の第9の配線である配線225〜228は、半導体基板上および各誘電体層も含めた各層のうち、いずれかの層上に形成されるが、図4では、同一の層上に形成された構成を例示している。なお、第7の配線を形成する配線203、m本(m=4)の第3の配線を形成する配線215〜218、および、m本(m=4)の第9の配線である配線225〜228は、必ずしも同一の層上に形成される必要はなく、それぞれ、異なる層上に形成しても構わない。また、半導体基板上に順に1層以上の誘電体層と接地導体とが積層された構造において、第7の配線を形成する配線203、m本(m=4)の第3の配線を形成する配線215〜218、および、m本(m=4)の第9の配線である配線225〜228を、半導体基板上を含み、接地導体が形成された層上とは異なる層上に形成しても構わない。
好ましくは、m本(m=4)の第3の配線である配線215〜218間の相互干渉を低減することができるように、少なくとも、第3の配線である配線215〜218と接地導体との間の誘電体層の厚さが、数μm〜10μm程度に設定されることが望ましい。
かくのごとき配線構造を採用することにより、配線間の干渉を低減することができるため、4本の配線215〜218の間隔を狭めることができる。この結果、4本の配線215〜218の長さを短くすることができ、スイッチのより一層の広帯域動作を図ることができる。
なお、m本(m=4)の第3の配線である配線215〜218の他の一端とm個(m=4)の第2のFETであるFET425〜428とのそれぞれの接続は、m個(m=4)の第4のスルーホールであるスルーホール315〜318を介して行われ、m本(m=4)の第9の配線である配線225〜228とm個(m=4)の第2のFETであるFET425〜428とのそれぞれの接続は、m個(m=4)の第6のスルーホールであるスルーホール325〜328を介して行われる。
ここで、順次積層された接地導体を介して、m個(m=4)の第4のスルーホールであるスルーホール315〜318、m個(m=4)の第6のスルーホールであるスルーホール325〜328を設置する場合、当該接地導体の一部の領域には、m個(m=4)の第4のスルーホールであるスルーホール315〜318、m個(m=4)の第6のスルーホールであるスルーホール325〜328を、それぞれ、当該接地導体に接触することなく、貫通させるための間隙が設けられている。
また、上側に配置される第1のSP4Tスイッチ部の場合についても同様であり、第6の配線を形成する配線202、n本(n=4)の第2の配線を形成する配線211〜214、および、n個(n=4)の第2の端子にそれぞれ接続するn本(n=4)の第8の配線である配線221〜224は、半導体基板上も含め、1層以上の誘電体層(好ましくは各誘電体層の厚さが数μm〜10μm程度)上のうち、いずれかの層上に形成される。
さらに、少なくとも、第2の配線である配線211〜214および接地導体が、半導体基板上および1層以上の誘電体層を含めた各層のうち互いに異なるいずれかの層上に形成されるようにし、かつ、n本(n=4)の第2の配線である配線211〜214の他の一端とn個(n=4)の第1のFETであるFET421〜424とのそれぞれの接続は、n個(n=4)の第3のスルーホールであるスルーホール311〜314を介して行われ、n本(n=4)の第8の配線である配線221〜224とn個(n=4)の第1のFETであるFET421〜424とのそれぞれの接続は、n個(n=4)の第5のスルーホールであるスルーホール321〜324を介して行われる。
ここで、順次積層された接地導体を介して、n個(n=4)の第3のスルーホールであるスルーホール311〜314、n個(n=4)の第5のスルーホールであるスルーホール321〜324を設置する場合、当該接地導体の一部の領域には、n個(n=4)の第3のスルーホールであるスルーホール311〜314、n個(n=4)の第5のスルーホールであるスルーホール321〜324を、それぞれ、当該接地導体に接触することなく、貫通させるための間隙が設けられている。
また、図1のSP8Tスイッチに示した、第1の端子である共通端子とSPDTスイッチ8とを接続する配線201についても、1層以上の誘電体層上に形成する前述したような配線構造を適用することができる。
一方、図4に示すSP4Tスイッチ部におけるFETの配置方法に関しては、第2のFETであるFET425〜428のドレイン(またはソース)と第4のFETであるシャントFET425S〜428Sのドレイン(またはソース)とを、配線(図3の場合の第5の配線である配線235〜238)を介することなく、直接接合させ、さらに、SP4Tスイッチ部を形成する各SPSTスイッチは、分岐点Bの水平方向に対して図の上下に対称な位置に配置した構成となっている点が、図3に例示したSP4Tスイッチ部の場合とは異なっている。
つまり、例えば、分岐点Bの右上方向のSPSTスイッチには、第3の配線の一つである配線215および第4のスルーホールの一つであるスルーホール315を介して、第2のFETの一つであるシリーズFET425のソース(またはドレイン)が接続され、シリーズFET425のドレイン(またはソース)は、ソース(またはドレイン)が接地された第4のFETの一つであるシャントFET425Sのドレイン(またはソース)に直接接合されるとともに、第6のスルーホールの一つであるスルーホール325を介して、第9の配線の一つである配線225に接続された状態で配置されている。
かかるパタンレイアウトと同様の構成として、例えば、図4の分岐点Bの右下方向に位置するSPSTスイッチに関しても、配線216、スルーホール316、FET426、シャントFET426S、スルーホール326、配線226の各構成要素については、分岐点Bの右上に位置している各構成要素と上下に対称な位置関係で配置されている。
このようなFETの構成を採用することにより、FET間の間隔を、図3に例示した構成の場合よりもさらに狭めることができ、前述した配線の効果と合せて、より一層スイッチの広帯域化を図ることができる。
また、図3、図4のようなSP4Tスイッチ部を構成要素とするSP8Tスイッチの場合においても、図8の特性図に示したように、反射損失を−10dB以下に確保するために、n本(n=4)の第2の配線である配線211〜214およびm本(m=4)の第3の配線である配線215〜218の実効電気長を、あらかじめ定めた所望の動作周波数において、5度以下とすることが望ましい。
なお、SPDTスイッチ8の2個の個別端子のそれぞれに接続されるスイッチは、図3、図4に例示したようなSP4Tスイッチに限定されることなく、例えば図2において例示したSP6Tスイッチ、あるいは、SP3Tスイッチ、SP5Tスイッチなど、任意のSPkTスイッチ(k:2以上の整数)を使用することができる。
また、分岐点A、Bにおいてそれぞれn分岐、m分岐することにより配置されるSPnTスイッチ、SPmTスイッチのそれぞれのポート数は、同一のポート数に限定されることはなく、それぞれに配置されるポート数が異なるポート数となるスイッチを適用して、例えばSP4TスイッチとSP6Tスイッチとを適用して、全体として、SP10Tスイッチを構成するなどのスイッチ構成としても構わない。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチについて、図5、図6を用いて説明する。図5は、本発明の第3の実施の形態に係わる多端子半導体スイッチの一例であるSP16Tスイッチのパタンレイアウトを示すレイアウト図である。また、図6は、図5のパタンレイアウト構造を分かり易く示すための説明図であり、図6(A)は、図5の各構成要素のうち、第6、第7の配線である配線202、203、接地導体12、13、および、第1のスルーホールであるスルーホール33、接地導体11、12間を接続するスルーホール341〜344、第2のスルーホールである35、接地導体11、13間を接続するスルーホール361〜364を取り除いた状態のパタンレイアウトを示すレイアウト図であり、図6(B)は、図5のX‐X′面における断面図を示している。
図5、図6に例示する多端子半導体スイッチは、SP16Tスイッチを構成しており、1個の第1の端子を構成する共通端子(図示せず)からの配線201が、図1の場合と同様、第1の配線として、第5のFETとなるFET411、412等で構成されるSingle‐Pole Double‐Throw(SPDT:単極双投)スイッチ8の共通端子に接続される。
図6に示すように、SPDTスイッチ8の個別端子の一方は、第6の配線である配線202を介して、分岐点Aにおいて、n本(n:2以上の整数。図6の場合、n=8)の第2の配線である配線211〜218にn分岐され、n本の配線211〜218を介して、n個(n=8)の第1のFETであるFET421〜428のソース(またはドレイン)にそれぞれ接続される。つまり、一端が互いに接続された8本の第2の配線である配線211〜218を介して、SPDTスイッチ8の個別端子の一方と、8個の第1のFETであるFET421〜428のソース(またはドレイン)とのそれぞれが接続される。
また、n個(n=8)のFET421〜428のドレイン(またはソース)は、n本(n=8)の第8の配線である配線221〜228にそれぞれ接続され、n個(n=8)の第2の端子を構成する個別の端子(図示せず)に接続されている。したがって、分岐点Aを、第1のFETであるFET421〜428からなるn個(n=8)の各SPSTスイッチの共通端子として見ると、8個のSPSTスイッチからなるSingle‐Pole 8‐Throw(SP8T)スイッチを形成しており、第1のSP8Tスイッチ部を構成している。
同様に、SPDTスイッチ8の個別端子の他の一方は、第7の配線である配線203を介して、分岐点Bにおいて、m本(m:2以上の整数。図6の場合、m=8)の第3の配線である配線219〜2116にm分岐され、m本の配線219〜2116を介して、m個(m=8)の第2のFETであるFET429〜4216のソース(またはドレイン)にそれぞれ接続される。つまり、一端が互いに接続された8本の第3の配線である配線219〜2116を介して、SPDTスイッチ8の個別端子の他の一方と、8個のFET429〜4216のソース(またはドレイン)とのそれぞれが接続される。
また、m個(m=8)のFET429〜4216のドレイン(またはソース)は、m本(m=8)の第9の配線である配線229〜2216にそれぞれ接続され、m個(m=8)の第3の端子を構成する個別の端子(図示せず)に接続されている。したがって、分岐点Bを、第2のFETであるFET429〜4216からなるn個(n=8)の各SPSTスイッチの共通端子として見ると、8個のSPSTスイッチからなるSP8Tスイッチを形成しており、第2のSP8Tスイッチ部を構成している。
ここで、第1の配線である配線201、第8、第9の配線である配線221〜2216に関しては、図4に例示した配線構造と同様に形成される。つまり、半導体基板7の表面に、接地導体11および図示していない1層以上の誘電体層が順に積層され、配線201、配線221〜2216は、いずれかの誘電体層上に形成されている。
また、第7の配線である配線203に関しては、図6(B)に例示するように、半導体基板7の表面に、8本の第3の配線である配線219〜2116、誘電体層61、接地導体13、誘電体層62が順に積層され、配線203は、この誘電体層62上に形成された構造となっている。ここで、接地導体13、誘電体層61、62には、それらの一部の領域例えば中心部に第2のスルーホールであるスルーホール35を通過させるための間隙(穴)が穿設されており、配線203と配線219〜2116とを接地導体13と接触することなく接続することができる。
同様に、第6の配線である配線202に関しては、半導体基板7の表面に、8本の第2の配線である配線211〜218、誘電体層61、接地導体12、誘電体層62が順に積層され、配線202は、この誘電体層62上に形成された構造となっている。ここで、接地導体12、誘電体層61、62には、それらの一部の領域例えば中心部に第1のスルーホールであるスルーホール33を通過させるための間隙(穴)が穿設されており、配線202と配線211〜218とを接地導体12と接触することなく接続することができる。
つまり、第2の配線である配線211〜218および第6の配線である配線202が存在する領域の半導体基板7上には、順に1層以上の誘電体層61、接地導体12、1層以上の誘電体層62が積層され、当該領域において、第2の配線である配線211〜218と第6の配線である配線202とが、接地導体12が形成されていない半導体基板7上および誘電体層61、62を含めた各層のうち互いに異なるいずれかの異なる層上に形成され、かつ、第2の配線である配線211〜218の互いに接続された一端と第6の配線である配線202とは、第1のスルーホールであるスルーホール33を介して接続される。
一方、第3の配線である配線219〜2116および第7の配線である配線203が存在する領域の半導体基板7上には、順に1層以上の誘電体層61、接地導体13、1層以上の誘電体層62が積層され、当該領域において、第3の配線である配線219〜2116と第7の配線である配線203とが、接地導体13が形成されていない半導体基板7上および誘電体層61、62を含めた各層のうち互いに異なるいずれかの異なる層上に形成され、第3の配線である配線219〜2116の互いに接続された一端と第7の配線である配線203とは、第2のスルーホールであるスルーホール35を介して接続される。
さらに、n本(n=8)の第2の配線である配線211〜218の他の一端とn個(n=8)の第1のFETであるFET421〜428のソース(またはドレイン)とは、図4に示した例では第3のスルーホールを介して接続されていたが、本実施の形態の場合は、図6に示すように、直接接続される。同様に、m本(m=8)の第3の配線である配線219〜2116の他の一端とm個(m=8)の第2のFETであるFET429〜4216のソース(またはドレイン)についても、直接接続される。
また、図5に示すように、接地導体12、13は、それぞれ、スルーホール341〜344、スルーホール361〜364を介して、半導体基板7上の接地導体11と接続されている。
かくのごとき構造は、例えば、ポリイミドなどを絶縁層間膜として使用し、半導体基板7上においてポリイミドの塗布、加熱硬化、ドライエッチングによるスルーホール形成という製造工程を繰り返すことによって実現することができる。なお、第1の配線である配線201、第8、第9の配線である221〜2216の領域に適用される誘電体層に関しても、誘電体層61あるいは誘電体層61および誘電体層62によって構成することにより、図5、図6に示した全ての配線構造を共通の製造工程を用いて実現することができる。
このような構成とすることにより、スルーホール部を除き、全ての信号配線を高周波信号の伝送に適した特性インピーダンスとしてあらかじめ定めた特性の伝送線路として形成することができるため、スイッチの広帯域動作が容易になる。
さらに、第6の配線である配線202と第2の配線である配線211〜218との間、および、第7の配線である配線203と第3の配線である配線219〜2116との間に、それぞれ、接地導体12、13を設けることが可能になり、よって、配線202と配線211〜218との間、および、配線203と配線219〜2116との間の電磁結合をなくすことができるため、電磁結合による悪影響を懸念することなく、配線211〜218、219〜2116をレイアウトすることが可能になる。
つまり、電磁結合によるポート間特性のバラツキを懸念することなく、配線211〜218、219〜2116の最短かつ等長化に最適なレイアウトとすることができる。
一方、接地導体12、13が存在しない場合には、電磁結合の強弱により(例えば、図5、図6(A)に示すように配線202に近い配線211、218に関しては、両者の電磁結合が強くなり、配線202から離れた配線214、215に関しては、両者の電磁結合が弱くなることから)、ポート間特性の均一化が困難であり、その影響を低減するためには、レイアウトの自由度が制限されることになる。
なお、誘電体層61、62の厚みを、それぞれ、数μm〜10μm程度に設定することによって、配線202、配線211〜218のそれぞれから接地導体12までの距離、配線203、配線219〜2116のそれぞれから接地導体13までの距離をそれぞれ数μm〜10μm程度にすることができるため、配線211〜218および219〜2116相互の間隔を狭くしても、互いの不要な電磁結合を低減することができ、ポート数の増大に対応することが容易になる。
図5、図6に示すSP16Tスイッチにおいては、第5のFETであるFET411、412、第1のFETであるFET421〜428および第2のFETであるFET429〜4216のゲートに、それぞれ、第5の抵抗である抵抗511、512および第1の抵抗である抵抗521〜528および第2の抵抗である抵抗529〜5216が接続されており、制御端子(図示せず)からそれぞれ抵抗511、512および抵抗521〜5216を経由して各FETのゲート制御電圧を印加することによって、配線201が接続される共通端子(図示せず。つまり第1の端子)と配線221〜2216がそれぞれ接続される16個の個別端子(図示せず。8個の第2の端子と8個の第3の端子とからなる合計16個の端子)との間の切替制御が行われる。
また、第5の抵抗である抵抗511、512、第1の抵抗である抵抗521〜528および第2の抵抗である抵抗529〜5216は、接続される各FETの直近(近傍)において、あるいは、接続される各FETと隣接のFETとの間において、各FETのゲートに平行に配置されているため、FET間隔を拡げることなく、制御信号間の干渉を避けることができる。FET間隔を狭めることは、第2、第3の配線である配線211〜2116の長さを短くすることを可能にし、スイッチの動作帯域を拡大することに直結する。
なお、8個の第1のFETであるFET421〜428、8個の第2のFETであるFET429〜4216のそれぞれのゲートは、あるいは、8個の第1のFETであるFET421〜428、8個の第2のFETであるFET429〜4216、2個の第5のFETであるFET411、412のそれぞれのゲートは、互いに平行になるように配置される。
図5、図6に示すパタンレイアウトのSP16Tスイッチに関する以上に説明したような効果により、反射特性およびポート間特性の均一なSP16Tスイッチの広帯域動作を実現することができる上に、小型化・低コスト化も図ることができる。
なお、第1の配線である配線201、第6の配線である配線202、第7の配線である203、第2の配線である配線211〜218、第3の配線である配線219〜2116を信号線として使用する伝送線路の特性インピーダンスは、好ましくは、配線幅を細くすることなどによって、それらの配線の一部もしくは全部について、多端子半導体スイッチの入出力インピーダンスよりも高く設定することが望ましい。かくのごとき特性インピーダンスの配線とすることにより、より一層、オープンスタブの影響を相殺することができ、反射損失を改善することができる。
また、図8の特性図に示したように、反射損失を−10dB以下に確保するために、n本(n=8)の第2の配線である配線211〜218およびm本(m=8)の第3の配線である配線219〜2116の実効電気長を、あらかじめ定めた所望の動作周波数において、5度以下とすることが望ましい。
また、図5、図6のごとき回路構成においては、信号線がグランドに接続されていないため、入力された信号レベルをほぼそのまま出力することができる。したがって、RF帯の信号を用いる無線通信用途などに加えて、信号直流ロジックレベルに無依存な広帯域ベースバンド信号を利用する高速データ伝送用スイッチとしても利用することができる。
なお、SPDTスイッチ8の2個の個別端子に接続されるスイッチは、図5、図6に例示したようなSP8Tスイッチに限定されることはなく、SP3Tスイッチ、SP4Tスイッチ、SP5Tスイッチ、SP6Tスイッチなど、任意のSPkTスイッチ(k:2以上の整数)を使用することができる。
また、図6の分岐点A、Bにおいてそれぞれn分岐、m分岐することにより配置されるSPnTスイッチ、SPmTスイッチのそれぞれのポート数は、図5、図6に例示したような同一のポート数に限定されることはなく、それぞれに配置されるポート数が異なるポート数となるスイッチを適用して、例えばSP9TスイッチとSP10Tスイッチとを適用して、全体として、SP19Tスイッチを構成するなどのスイッチ構成としても構わない。
なお、図6(B)の断面図に示した構成と異なる構成としても良く、例えば、配線202、203と配線211〜2116との位置関係を逆にして、配線202、203を半導体基板7上に、配線211〜2116を誘電体層62上に配するような構成であっても構わない。
また、図5、図6のような構造を、第1の実施の形態における図1、図2、第2の実施の形態における図3、図4に示した多端子半導体スイッチに適用しても構わない。
[その他の実施の形態]
本実施の形態においては、多端子半導体スイッチ中のSPDTスイッチ8を構成するFETの個数については、前述した各実施の形態のように、FET411、412の2個に限るものではなく、2個以上のFETを用いて構成するようにしても良い。また、SPDTスイッチ8を、FETに代えて、微小な機械式スイッチ(MEMS(Micro‐Electro‐Mechanical Systems)スイッチ)を用いて構成しても構わない。MEMSスイッチを用いる場合、FETを用いた構成と比較して、制御電圧が大きくなり、切替時間が遅くなるというデメリットがあるものの、スイッチの低損失化および高アイソレーション化を図ることができる。
また、SPDTスイッチ8の2個の個別端子と分岐点A、Bとのそれぞれの間を接続する際に、前述した各実施の形態においては、第6の配線である配線202、第7の配線である配線203を介して接続する例を示したが、場合によっては、SPDTスイッチ8の2個の個別端子と分岐点A、Bとのそれぞれの間を、第6、第7の配線を介することなく、直結するようにしても良い。
また、n個の第1のFETとn個の第2の端子とのそれぞれの間、m個の第2のFETとm個の第3の端子とのそれぞれの間を接続する際に、前述した各実施の形態においては、n本の第8の配線、m本の第9の配線を介して接続する例を示したが、n本の第8の配線、m本の第9の配線は、それぞれ、等長であることが望ましい。あるいは、場合によっては、第8、第9の配線を介することなく、第1、第2のFETと第2、第3の端子とを、それぞれ、直結するようにしても良い。
また、半導体基板7上に1層以上の誘電体層を積層する場合、前述した各実施の形態においては、n本の第8の配線とn個の第1のFETの間、m本の第9の配線とm個の第2のFETとの間を、それぞれ、第5のスルーホール、第6のスルーホールを介して接続する例を説明したが、場合によっては、誘電体層を積層する場合であっても、n本の第8の配線とn個の第1のFETとを、m本の第9の配線とm個の第2のFETとを、それぞれ、同一の層上に配置して、n本の第8の配線とn個の第1のFETの間、m本の第9の配線とm個の第2のFETとの間を、スルーホールを介することなく、直接接続するようにしても良い。
さらに、n個の第1のFETおよびm個の第2のFETのゲートについては、それぞれ、ゲートフィンガ1本で構成され、かつ、同一の方向に向くように形成されて、互いに平行になるように配置されることが望ましい。かくのごとき構成を用いることにより、各FET間の間隔を狭めることが可能になり、n本の第2の配線、m本の第3の配線の長さを短くすることでき、多端子半導体スイッチの動作帯域を拡大することができる。
また、n個の第1のFETおよびm個の第2のFETのゲート幅についても、それぞれ、n本の第2の配線およびm本の第3の配線の長さ以下になっていることが望ましい。かくのごとき構成を用いることにより、第1のFET、第2のFETのOFF時に、第2の配線、第3の配線とともにオープンスタブに見えてしまう第1のFET、第2のFETの物理長の影響を大幅に低減することができ、多端子半導体スイッチの動作帯城をさらに拡大することができる。