JP2010068379A - 無線通信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低電圧かつ簡単な構成でキャンセル信号を生成できるとともに、迅速な感度改善処理を行うことができる無線通信装置を提供すること。
【解決手段】 アンテナ20に供給される送信信号を分配器161により分配し、レベル調整器164および位相調整器165により分配信号のレベルおよび位相を調整してキャンセル信号を生成し、合成器163によりアンテナ20の受信信号と合成する。このようにレベル調整器164および位相調整器165によりキャンセル信号のレベルおよび位相が調整される間、レベル測定器17により測定される信号のレベルと所定の閾値とを比較する。そして、比較結果に基づき分配信号の調整を停止する。
【選択図】 図1
【解決手段】 アンテナ20に供給される送信信号を分配器161により分配し、レベル調整器164および位相調整器165により分配信号のレベルおよび位相を調整してキャンセル信号を生成し、合成器163によりアンテナ20の受信信号と合成する。このようにレベル調整器164および位相調整器165によりキャンセル信号のレベルおよび位相が調整される間、レベル測定器17により測定される信号のレベルと所定の閾値とを比較する。そして、比較結果に基づき分配信号の調整を停止する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、電波を介して無線タグと交信を行うRFIDリーダなどの無線通信装置に関する。
無線通信機能を備えたリーダ・ライタを使用して、固有のIDを記憶してなる無線タグからデータを非接触で読み取ったり、データを非接触で書き込んだりするシステムは、一般にRFID(Radio Frequency Identification)システムと称され、物流・流通などの様々な分野で利用されている。
RFIDシステムのリーダ・ライタとして機能する無線通信装置は、リーダ部とアンテナとから構成される。リーダ部は、無線タグに対する送信信号をアンテナに供給する送信部と、アンテナで受信した信号から無線タグの信号を取り込む受信部と、上記送信部及び受信部を制御する制御部とを備えている。また、アンテナが送受信共用である場合、リーダ部は、送信信号と受信信号とを分離するための方向性結合器をさらに備えている。
方向性結合器は、送信部からの信号をアンテナに出力し、アンテナで受信した信号を受信部に出力する。このような方向性結合器として、サーキュレータが知られている。サーキュレータの場合、信号の分離度は、一般に、1:0.01〜1:0.001である。このため、送信部側から受信部側に信号が回り込むことは避けられない。
一方、無線タグには、電池を内蔵し、自らデータを送信する機能を有しているアクティブ型と、自らデータを送信する機能を有しておらず、無線通信装置から送られてきた搬送波の電力を利用してデータの送信や書き込みを行うパッシブ型とがある。物流や流通の分野では、電池が不要なパッシブ型の無線タグが適している。
パッシブ型の無線タグと無線通信装置との通信方式には、バックスキャッタと呼ばれる方式が採用されている。この通信方式は、無線通信装置が無線タグに対して無変調の搬送波を送信し、この搬送波を受信した無線タグが搬送波を直流電力に変換して動作電源にし、さらにアンテナのインピーダンスを変化させることによって受信電波の反射と吸収を行い、無線通信装置は、無線タグからの反射波を受信することにより、この無線タグとの通信を行う、というものである。
したがって、無線通信装置は、無線タグに対して電波を送出しながら無線タグからの反射波を受信するという動作となる。このため、前述した送信部側から受信部側への回り込み信号は、アンテナで受信した信号の妨害波となり得る。しかも、無線タグからの反射波は、アンテナからの送信波に比べて微弱である。このため、アンテナからの送信波がその周囲で反射するような使用環境下にあっては、このアンテナ周囲からの反射波も無線タグからの反射波の妨害波になり得る。
従来、送信信号の一部から妨害波の逆位相を有するキャンセル信号を生成し、アンテナからの受信信号にこのキャンセル信号を合成することによって、受信信号から妨害波成分を打ち消す感度改善処理に関する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−158599号公報
ところで、各国ごとに無線通信装置が発する電波の連続送信時間および電波の送信後の送信停止時間が定められている。我が国では電波法において、高出力のパッシブタグシステムの場合、上記連続送信時間は4ms以内、上記送信停止時間は50ms以上としなければならない旨が定められている。そのため、無線通信装置は、連続送信時間4ms以内に無線タグのインベントリや無線タグへのデータのリード・ライトを行う必要がある。上記感度改善処理は、電波送信開始後、無線タグのインベントリを開始する前に実行することが理想的であるため、やはり当該処理も連続送信時間4ms以内に行う必要がある。
このように、連続送信時間4msの間に感度改善処理を行うことにより、1度の電波送信により通信できる無線タグの枚数が減少することや、無線タグとの通信時間が短くなってしまうという問題が生じる。この場合には、無線通信装置の読み取り範囲内にある全ての無線タグにアクセスするためには、連続送信時間4msの読み取り動作の後、送信停止時間50msを待機し、そして再度連続送信時間4msの読み取り動作を行うといった処理を繰り返さなければならないため、全ての無線タグへのアクセス完了が大幅に遅延する蓋然性がある。
また、上記回り込み信号などを有効に打ち消すキャンセル信号を生成するためには、キャンセル信号の位相を360°の範囲で調整するための可変移相器が必要である。可変移相器としては、シリコンバラクタダイオードを用いたものが知られている。シリコンバラクタダイオードを用いた可変移相器の場合、12ボルト程度の制御電圧を加えれば略90度の位相調整が可能である。したがって、この種の可変移相器を4段階に接続すれば、360度の範囲で位相を調整することができる。
しかしながら、この種の可変移相器は、制御電圧が低いとその電圧に応じて位相の可変範囲が小さくなる。このため、例えば5ボルト程度の低電圧で360度の位相調整が可能なキャンセル信号を生成しようとした場合には、必要となる可変移相器の数が増加するため、構成が複雑化してしまう。
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、低電圧かつ簡単な構成でキャンセル信号を生成できるとともに、迅速な感度改善処理を行うことができる無線通信装置を提供することである。
本発明は、アンテナから送信信号を送信し、この送信信号を受信した通信対象からの応答信号を前記アンテナで受信する無線通信装置において、前記アンテナに供給される送信信号を分配する分配手段と、この分配手段により前記送信信号から分配された分配信号に基づいて応答信号の受信を妨害する妨害波を打ち消すキャンセル信号を生成する生成手段と、この生成手段により生成されたキャンセル信号を前記アンテナの受信信号と合成する合成手段と、前記生成手段により生成されるキャンセル信号を調整する調整手段と、前記合成手段により合成された信号のレベルを測定するレベル測定手段と、前記調整手段により前記キャンセル信号が調整される間、前記レベル測定手段により測定される信号のレベルと所定の閾値とを比較する比較手段と、この比較手段による比較結果に基づき、前記調整手段によるキャンセル信号の調整を停止せしめる停止手段とを備えてなることを特徴としている。
かかる手段を講じた本発明によれば、低電圧かつ簡単な構成でキャンセル信号を生成できるとともに、迅速な感度改善処理を行うことができる無線通信装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。
なお、この実施の形態は、パッシブ型の無線タグを用いたRFIDシステムのRFIDリーダとして機能する無線通信装置1に、本発明を適用した場合である。
なお、この実施の形態は、パッシブ型の無線タグを用いたRFIDシステムのRFIDリーダとして機能する無線通信装置1に、本発明を適用した場合である。
本実施の形態に係る無線通信装置1の概略構成を、図1のブロック図で示す。無線通信装置1は、リーダ部10とアンテナ20とからなる。アンテナ20は、送受信共用であり、送信時には、リーダ部10から与えられた高周波信号を電波として放射する。受信時には、アンテナ20で受信した電波を高周波信号に変換して、リーダ部10に出力する。
リーダ部10は、通信インターフェイス11、制御部12、送信部13、受信部14、サーキュレータ15、キャンセル信号生成装置16およびレベル測定器17から構成している。通信インターフェイス11は、ホスト装置(不図示)との間のデータ通信を司る。制御部12は、リーダ部10の全体を統轄制御するものであり、CPU、メモリ121等を備えている。
送信部13は、無線タグ(不図示)への信号を送信するものであり、変調器131とアンプ132とを備えている。変調器131は、無線タグに対して電力を供給するときは、無変調信号をアンプ132に送出する。また、無線タグにデータを送るときは、制御部12からのベースバンド信号によって搬送波を変調し、変調信号をアンプ132に送出する。アンプ132は、変調器131から送られてきた無変調信号及び変調信号の電力増幅を行う。増幅された信号は、サーキュレータ15を介してアンテナ20に供給される。
受信部14は、アンテナ20で受信した信号から無線タグの信号を取り込むものであり、復調器141とアンプ142とを備えている。復調器141は、受信信号からベースバンド信号を復調する。アンプ142は、復調されたベースバンド信号の電力増幅を行う。増幅されたベースバンド信号は、制御部12に送られて処理され、無線タグのデータに復号される。
サーキュレータ15は、送信部13からの信号をアンテナ20に導くとともに、アンテナ20で受信した信号を受信部14に出力する。
レベル測定器17は、本実施の形態におけるレベル測定手段であり、入力された高周波信号の電力に基づいて入力信号のレベルを測定し、その測定値を制御部12に出力するとともに、入力された高周波信号を受信部14に伝達する。
キャンセル信号生成装置16は、分配手段としての分配器161と、生成手段としてのキャンセル信号生成部162と、合成手段としての合成器163とからなる。さらにキャンセル信号生成部162は、レベル調整手段としてのレベル調整器164と、位相調整手段としての位相調整器165とからなる。これらレベル調整器164と位相調整器165とは、調整手段を構成する。
分配器161は、送信部13から送信された信号を、所定の比率で2つに分配する。この分配器161で2つに分配された信号の一方は、サーキュレータ15を介してアンテナ20に送られ、電波として放射される。分配信号の他方は、レベル調整器164に送られる。
レベル調整器164は、例えば入力された信号のレベルを減衰させる可変ATT(アッテネータ)であり、分配器161によって分配された送信信号のレベルを調整する。レベル調整器164によってレベルが調整された信号は、位相調整器165へと送られる。位相調整器165は、レベル調整器164から送られてきた信号の位相を調整する。以下、このようにキャンセル信号生成部162によってレベルと位相とが調整された信号を、キャンセル信号と称す。
上記のごとく生成されたキャンセル信号は、合成器163に送られる。なお、妨害波とは、送信部13側からサーキュレータ15を介して受信部14側に回り込む信号と、アンテナ20から放射された電波の反射波を該アンテナ20で受信したときの信号とを示す。これらの信号は、パッシブ型の無線タグからバックスキャッタ方式により反射された信号の妨害波となる。
合成器163は、アンテナ20からの受信信号に上記キャンセル信号を合成する。受信信号にキャンセル信号を合成することにより、受信信号に含まれる妨害波成分のうち、キャンセル信号と逆位相の成分が除去される。
位相調整器165の回路構成を、図2に示す。図示するように、入力端子31と出力端子32との間に、位相遅延量が90度の固定移相器40と、位相遅延量が45度の固定移相器50と、位相遅延量が180度の固定移相器60と、少なくとも45度以上の位相調整が可能な可変移相器70とを直列に接続することで、位相調整器165を構成している。上記固定移相器40,50,60は本実施の形態における固定位相部を構成し、上記可変移相器70は本実施の形態における可変移相部である。
位相遅延量が90度の固定移相器40は、3dBハイブリッドカプラ41と、単極双投(Single Pole Double Throw:SPDT)スイッチS1とで構成している。具体的には、入力端子31を、3dBハイブリッドカプラ41の第1ポートP1に接続している。さらに、この3dBハイブリッドカプラ41の第2ポートP2を、SPDTスイッチS1の双投端子bに接続し、第3ポートP3を、同SPDTスイッチS1の双投端子aに接続している。
3dBハイブリッドカプラ41は、伝送路を伝達する信号の位相を90度遅延させることができる固定移相器である。すなわち、第1ポートP1に入力された信号が第2ポートP2と第3ポートP3とに半分(3dB)ずつ分離されて出力され、このとき、第3ポートP3の出力信号は、第2ポートP2の出力信号に対して位相が90度遅延する。したがって、入力端子31からSPDTスイッチS1の双投端子aまでの伝送経路A1は、入力端子31からSPDTスイッチS1の双投端子bまでの伝送経路A2よりも位相が90度遅延する。
位相遅延量が45度の固定移相器50は、位相遅延量が45度の積層チップフェーズシフタ51と、一対のSPDTスイッチS2,S3とで構成している。具体的には、入力端子31側に位置するSPDTスイッチS2の単極端子cを、固定移相器40におけるSPDTスイッチS1の単極端子cと接続している。また、両SPDTスイッチS2,S3の双投端子a,b間を並列に接続している。そして、双投端子a間を結ぶ伝送路のみに、上記積層チップフェーズシフタ51を介在させている。したがって、SPDTスイッチS2,S3の双投端子a間の伝送経路B2は、双投端子b間の伝送経路B1よりも位相が45度遅延する。
位相遅延量が180度の固定移相器60は、3dBハイブリッドカプラ61と、それぞれ位相遅延量が45度の積層チップフェーズシフタ62,63と、SPDTスイッチS4とで構成している。具体的には、SPDTスイッチS4の単極端子cを、固定移相器50におけるSPDTスイッチS3の単極端子cと接続している。また、SPDTスイッチS4の双投端子a,bを、それぞれ3dBハイブリッドカプラ61の第2ポートP2と第3ポートP3とに並列で接続している。そして、SPDTスイッチS4の双投端子bと3dBハイブリッドカプラ61の第3ポートP3との間を結ぶ伝送路のみに、上記積層チップフェーズシフタ62,63を2個直列に介在させている。したがって、SPDTスイッチS4の双投端子bから3dBハイブリッドカプラ61の第3ポートP3までの伝送経路C2は、同SPDTスイッチS4の双投端子aから3dBハイブリッドカプラ61の第2ポートP2までの伝送経路C1よりも位相が180度遅延する。
可変移相器70は、その入力ポートを、固定移相器60における3dBハイブリッドカプラ61の第1ポートP1と接続し、出力ポートを、出力端子32に接続している。可変移相器70は、シリコンバラクタダイオードを用いたもので、供給電圧の制御により最低でも45度の位相を調整できるものである。すなわち、キャンセル信号に必要な位相の調整範囲である360度から、各固定移相器40,50,60の位相遅延量合計値(90°+45°+180°=315度)を減算した値以上の位相を調整できるものである。このときの位相調整の分解能は、可変移相器70に供給される電圧レベルの変化量によって決まる。
かかる構成の位相調整器165においては、レベル調整器164でレベルが調整された送信信号が入力端子31に入力される。そして、この送信信号が、各固定移相器40,50,60及び可変移相器70を通過することによって、妨害波の逆位相を有するキャンセル信号が生成される。生成されたキャンセル信号は、出力端子32から合成器163に出力されて、アンテナ20からの受信信号と合成される。
ここで、キャンセル信号の位相は、各固定移相器40,50,60と可変移相器70との組合せによって決定される。この組合せについて、図3のデータテーブル80を参照しながら説明する。
因みに、データテーブル80は、キャンセル信号の位相範囲に対する各SPDTスイッチS1〜S4の選択データ(“a”は双投端子aを選択し、“b”は双投端子bを選択することを意味する)を記憶したもので、制御部12内のメモリ121に保存されている。制御部12は、データテーブル80の選択データに基づいて、位相調整器165の各SPDTスイッチS1〜S4を切換制御することができる。
ここで、キャンセル信号の位相範囲は45度単位に設定されている。この45度とは、可変移相器70が少なくとも調整可能な位相の値である。
キャンセル信号の位相範囲が0〜45°の場合、可変移相器70のみによって調整が可能である。すなわち各固定移相器40,50,60は、いずれも位相の遅延が不要である。そこで、SPDTスイッチS1,S2,S3はいずれも双投端子bを選択し、SPDTスイッチS4は双投端子aを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、各固定移相器40,50,60において位相の遅延が生じることなく可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、0〜45°の範囲で調整されたキャンセル信号を生成することができる。
キャンセル信号の位相範囲が45〜90°の場合、位相遅延量が45度の固定移相器50を選択し、可変移相器70で残りの0〜45°の範囲の位相を調整すれば対応できるようになる。そこで、SPDTスイッチS1は双投端子bを選択し、SPDTスイッチS2,S3,S4はいずれも双投端子aを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、固定移相器50において位相が45度遅延された後、可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、45〜90°の範囲で位相が調整されたキャンセル信号を生成することができる。
キャンセル信号の位相範囲が90〜135°の場合、位相遅延量が90度の固定移相器40を選択し、可変移相器70で残りの0〜45°の範囲の位相を調整すれば対応できるようになる。そこで、SPDTスイッチS1,S4は双投端子aを選択し、SPDTスイッチS2,S3は双投端子bを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、固定移相器40において位相が90度遅延された後、可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、90〜135°の範囲で位相が調整されたキャンセル信号を生成することができる。
キャンセル信号の位相範囲が135〜180°の場合、位相遅延量が90度の固定移相器40と位相遅延量が45度の固定移相器50とを選択し、可変移相器70で残りの0〜45°の範囲の位相を調整すれば対応できるようになる。そこで、SPDTスイッチS1,S2,S3,S4はいずれも双投端子aを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、固定移相器40において位相が90度遅延され、さらに固定移相器50において位相が45度遅延された後、可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、135〜180°の範囲で位相が調整されたキャンセル信号を生成することができる。
キャンセル信号の位相範囲が180〜225°の場合、位相遅延量が180度の固定移相器60を選択し、可変移相器70で残りの0〜45°の範囲の位相を調整すれば対応できるようになる。そこで、SPDTスイッチS1,S2,S3,S4はいずれも双投端子bを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、固定移相器60において位相が180度遅延された後、可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、180〜225°の範囲で位相が調整されたキャンセル信号を生成することができる。
キャンセル信号の位相範囲が225〜270°の場合、位相遅延量が180度の固定移相器60と位相遅延量が45度の固定移相器50とを選択し、可変移相器70で残りの0〜45°の範囲の位相を調整すれば対応できるようになる。そこで、SPDTスイッチS1,S4は双投端子bを選択し、SPDTスイッチS2,S3は双投端子aを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、固定移相器50において位相が45度遅延され、さらに固定移相器60において位相が180度遅延された後、可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、225〜270°の範囲で位相が調整されたキャンセル信号を生成することができる。
キャンセル信号の位相範囲が270〜315°の場合、位相遅延量が180度の固定移相器60と位相遅延量が90度の固定移相器40とを選択し、可変移相器70で残りの0〜45°の範囲の位相を調整すれば対応できるようになる。そこで、SPDTスイッチS1は双投端子aを選択し、SPDTスイッチS2,S3,S4はいずれも双投端子bを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、固定移相器40において位相が90度遅延され、さらに固定移相器60において位相が180度遅延された後、可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、270〜315°の範囲で位相が調整されたキャンセル信号を生成することができる。
キャンセル信号の位相範囲が315〜360°の場合、位相遅延量が180度の固定移相器60と位相遅延量が90度の固定移相器40と位相遅延量が45度の固定移相器50とを選択し、可変移相器70で残りの0〜45°の範囲の位相を調整すれば対応できるようになる。そこで、SPDTスイッチS1,S2,S3はいずれも双投端子aを選択し、SPDTスイッチS4は双投端子bを選択する。こうすることにより、分配器161で分配された送信信号は、固定移相器40において位相が90度遅延され、さらに固定移相器50において位相が45度遅延され、さらに固定移相器60において位相が180度遅延された後、可変移相器70に入力されるので、この可変移相器70によって0〜45°の範囲で位相を遅延させることにより、315〜360°の範囲で位相が調整されたキャンセル信号を生成することができる。
次に、上記のような無線通信装置1の構成による作用について説明する。
無線通信装置1は、無線タグとの無線通信を行うに際して、キャンセル信号を調整して無線タグとの通信感度を改善するための感度改善処理を実行する。なお、当該処理で使用される第1の閾値である閾値b1と第2の閾値である閾値b2は、予めその値が決定されてメモリ121に記憶されている。これら閾値b1,b2は、妨害波の影響が十分小さくなったかどうかを判断するための比較用であり、その値は無線通信装置1の回路構成や使用環境などを考慮し、実験値に基づいて定められる。
無線通信装置1は、無線タグとの無線通信を行うに際して、キャンセル信号を調整して無線タグとの通信感度を改善するための感度改善処理を実行する。なお、当該処理で使用される第1の閾値である閾値b1と第2の閾値である閾値b2は、予めその値が決定されてメモリ121に記憶されている。これら閾値b1,b2は、妨害波の影響が十分小さくなったかどうかを判断するための比較用であり、その値は無線通信装置1の回路構成や使用環境などを考慮し、実験値に基づいて定められる。
図4および図5は、感度改善処理において制御部12が実行する処理の流れ図である。なお、この処理は、メモリ121に記憶された動作プログラムに基づいて実行される。
先ず、制御部12は、ST1としてレベル調整器164の設定値aを前回の感度改善処理にて設定した設定値a´に調整し、ST2として位相調整器165の設定値θを前回の感度改善処理にて設定した設定値θ´に調整することで、キャンセル信号生成部162に前回の感度改善処理において生成されたキャンセル信号と同レベルかつ同位相のキャンセル信号を生成させる(調整制御手段)。これらレベル調整器164の設定値a´および位相調整器165の設定値θ´は、前回の感度改善処理における後述のST18の処理にてメモリ121に記憶されたものである。
先ず、制御部12は、ST1としてレベル調整器164の設定値aを前回の感度改善処理にて設定した設定値a´に調整し、ST2として位相調整器165の設定値θを前回の感度改善処理にて設定した設定値θ´に調整することで、キャンセル信号生成部162に前回の感度改善処理において生成されたキャンセル信号と同レベルかつ同位相のキャンセル信号を生成させる(調整制御手段)。これらレベル調整器164の設定値a´および位相調整器165の設定値θ´は、前回の感度改善処理における後述のST18の処理にてメモリ121に記憶されたものである。
このようにレベル調整器164および位相調整器165の設定値を前回の感度改善処理の設定値に設定したならば、制御部12は、ST3としてレベル測定器17から合成信号のレベルLを取得し、メモリ121に記憶する。しかる後、ST4として合成信号のレベルLと閾値b2とを比較する(第2の比較手段)。ST4の処理にて合成信号のレベルLの値が閾値b2以下であると判断したときには(ST4の“L≦b2”)、レベル調整器164および位相調整器165によるキャンセル信号のレベルおよび位相の調整を停止して、当該感度改善処理を終了する(第2の停止手段)。
一方、ST4の処理にて合成信号のレベルLの値が閾値b2よりも大きいと判断したときには(ST4の“L>b2”)、ST5としてキャンセル信号の生成を停止して、レベル測定器17から妨害波のみのレベルL1を取得する。なお、キャンセル信号は、そのレベルが0となるようにレベル調整器164の設定値aを調整することによって生成を停止することができる。
このように妨害波のレベルL1を測定した後、ST6として妨害波のレベルL1と閾値
b1とを比較する。ST6の処理にて妨害波のレベルL1の値が閾値b1以下であると判断したときには(ST6の“L1≦b1”)、レベル調整器164および位相調整器165によるキャンセル信号のレベルおよび位相の調整を停止して、当該感度改善処理を終了する。
b1とを比較する。ST6の処理にて妨害波のレベルL1の値が閾値b1以下であると判断したときには(ST6の“L1≦b1”)、レベル調整器164および位相調整器165によるキャンセル信号のレベルおよび位相の調整を停止して、当該感度改善処理を終了する。
一方、ST6の処理にて妨害波のレベルL1が閾値b1よりも大きいと判断したときには(ST6の“L1>b1”)、ST7としてキャンセル信号のレベルL2が妨害波のレベルL1と同程度になるようにレベル調整器164の設定値aを調整する。
このようにレベル調整器164の設定値aを調整した後、図5に示した“A”の処理に移る。すなわち、制御部12は、ST8としてデータテーブル80に従い、位相調整器165の各固定移相器40,50,60が備えるSPDTスイッチS1〜S4を切り換える。例えば、データテーブル80中の位相範囲の昇順(0°〜45°,45°〜90°,90°〜135°,135°〜180°,180°〜225°,225°〜270°,270°〜315°,そして315°〜360°の順)にST8の処理を行う度に切り換えるようにする。
SPDTスイッチS1〜S4を切り換えた後、制御部12は、ST9として可変移相器70により位相調整器165の設定値θを0°〜45°の範囲で調整して、現在のSPDTスイッチS1〜S4の設定で合成信号のレベルLが最小になる設定値θminを探す。そして、ST10として位相調整器165の設定値θをST9の処理にて特定した設定値θminに設定する。
このように位相調整器165の設定値θをθminに設定した後、制御部12は、ST11としてレベル測定器17から合成信号のレベルLを取得し、ST12として合成信号のレベルLと閾値b1とを比較する。合成信号のレベルLが閾値b1よりも大きいと判断したときには(ST12の“L>b1”)、ST13としてキャンセル信号の位相調整が終了したか否かを判断する。具体的には、データテーブル80に設定されたSPDTスイッチS1〜S4の全ての組合せを設定し終えているか否かを判断する。
データテーブル80に設定されたSPDTスイッチS1〜S4の全ての組合せを設定し終えていない場合には位相調整が終了していないと判断し(ST13のNo)、ST8の処理に戻って未だ設定していないSPDTスイッチS1〜S4の組合せを実現する。このとき、前回のSPDTスイッチS1〜S4の組み合せにおけるθminと合成信号のレベルLとを対応つけてメモリ121に記憶しておく。
一方、データテーブル80に設定されたSPDTスイッチS1〜S4の全ての組合せを設定し終えている場合には位相調整が終了したと判断し(ST13のYes)、メモリ121に記憶した各回のSPDTスイッチS1〜S4の組み合せにおける合成信号のレベルLの中から、最小となるものを特定し、そのレベルLに対応つけられたθminを設定値θに設定する。
しかる後、ST14としてレベル調整器164の設定値aを再調整する。このようにレベル調整器164の設定値aを再調整するのは、ST8〜ST13の処理にて位相を調整した際に生じた位相調整器165内の経路差に起因して、位相の調整前と調整後とでキャンセル信号のレベルが変化するためである。このようにレベルを再調整するので、ST7の処理では、厳密にキャンセル信号のレベルL2が妨害波のレベルL1と同一になるように調整する必要はなく、大まかに調整すればよい。なお、ST14の処理における設定値aの調整方法については、図6の説明にて後述する。
ST14の処理にてレベル調整器164の設定値aを調整した後、制御部12は、ST15としてレベル測定器17から合成信号のレベルLを取得し、ST16として合成信号のレベルLと閾値b1とを比較する。合成信号のレベルLが閾値b1よりも大きいと判断したときには(ST16の“L>b1”)、ST17としてキャンセル信号のレベル調整が終了したか否かを判断する。具体的には、ST14の処理における設定値aの調整が所定の終了回数n(整数;n>0)に達したか否かを判断する。この終了回数nは、予め定められてメモリ121に記憶されている。ST14の処理における設定値aの調整回数が終了回数nに達していないときには、キャンセル信号のレベル調整が終了していないと判断し(ST17のNo)、ST14の処理に戻って再度設定値aを調整することになる。
一方、ST17の処理にて設定値aの調整回数が終了回数nに達したためレベル調整が終了したと判断したときには(ST17のYes)、レベル調整器164および位相調整器165によるキャンセル信号のレベルおよび位相の調整を停止する。
また、ST12あるいはST16の処理にて合成信号のレベルLが閾値b1よりも小さいと判断したときにも(ST12またはST16の“L≦b1”)、レベル調整器164および位相調整器165によるキャンセル信号のレベルおよび位相の調整を停止する(停止手段または第1の停止手段)。
そして、制御部12は、ST18として上記設定値a´を現在のレベル調整器164の設定値aに変更し、上記設定値θ´を現在の位相調整器165の設定値θに変更してメモリ121に記憶する。しかして当該感度改善処理を終了し、無線タグの読み取りを開始する。
なお、上記ST12およびST16の処理は、レベル調整器164および位相調整器165により分配器161からの分配信号が調整される間、レベル測定器17により測定される合成信号のレベルLと閾値b1とを比較する比較手段または第1の比較手段を構成する。
続いて、図6を用いて上記ST14の処理における設定値aの調整方法の一例について説明する。レベル調整器164の設定値aの可変範囲が下限値amin〜上限値amaxであるとする。感度改善処理が開始された後、第1回目のST14の処理においては、先ず図示したように下限値amin〜上限値amaxの範囲を4等分し、各境界値をa1(=amin),a2,a3,a4,a5(=amax)とする。
次に、レベル調整器164の設定値aを境界値a1〜a5のそれぞれに設定し、レベル測定器17から各境界値a1〜a5に対する合成信号のレベルLa1,La2,La3,La4,La5を取得する。そして、境界値a1〜a3を設定値aとした場合のそれぞれについて取得した合成信号のレベルLの加算値La1+La2+La3と、境界値a2〜a4のそれぞれについて取得した合成信号のレベルLの加算値La2+La3+La4と、境界値a3〜a5のそれぞれについて取得した合成信号のレベルLの加算値La3+La4+La5とを比較し、これら3つの加算値の中で最も値が小さいものを特定する。このように特定した最小の加算値に対する境界値の範囲の中間値が第1回目のST14の処理における設定値aの調整値となる。
例えば、境界値a2〜a4のそれぞれについて取得した合成信号のレベルLの加算値La2+La3+La4が、上記3つの加算値の中で最小であったとする。かかる場合には、境界値a2〜a4の範囲における中間値であるa3に設定値aが調整される。
このように第1回目の処理にて設定値aが調整された後、ST15の処理にて合成信号Lのレベルが取得され、ST16の処理にて取得したレベルと閾値b1とが比較され、ST17の処理にて調整回数が上記終了回数nに達したか否かが判断され、終了回数nに達していない場合には、第2回目のST14の処理が行われる。
第2回目のST14の処理では、前回の処理にて合成信号のレベルLの加算値La1+La2+La3,La2+La3+La4,La3+La4+La5の中から特定された最小の加算値に対する境界値の範囲を、第1回目の処理と同様に4等分し、各境界値の値を新たなa1,a2,a3,a4,a5とする。例えば、第1回目の処理にて境界値a2〜a4における合成信号のレベルLの加算値が最小であったとする。かかる場合には、図示したように、境界値a2〜a4の範囲を4等分し、第2回目のa1(=第1回目のa2),a2,a3(=第1回目のa3),a4,a5(=第1回目のa4)とする。以降、第1回目の処理と同様の処理を行い、ST15およびST16の処理を経て、ST17の処理にて未だ終了回数nに達していないと判断されたならば、第3回目のST14の処理を実行する。このように設定値aの調整を繰り返し、終了回数nに達したならば、設定値aの調整処理を終了してST18の処理に移ることとなる。しかして、レベル調整器164の設定値aは、合成信号のレベルLが最小となるような値に設定される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、上記感度改善処理においてキャンセル信号生成部162にて分配器161からの分配信号の調整が行われている間、適宜合成信号のレベルLと閾値b1とを比較し、合成信号のレベルLが閾値b2以下になった場合には、分配信号の調整を停止して感度改善処理を終了する。このように感度改善処理に閾値を用いた終了判定を導入したことにより、良好な通信状態を確保するとともに感度改善処理の迅速化を図ることができる。
また、キャンセル信号生成部162は、レベル調整器164と位相調整器165とを備えている。制御部12は、これら調整器を制御して分配器161からの分配信号のレベルと位相とを調整することにより、妨害波を打ち消すに最適なキャンセル信号を生成することができる。
また、位相調整器165は、固定移相器40,50,60と可変移相器70とを備えている。これら各固定移相器40,50,60と可変移相器70との組合せにより、0°〜360°の範囲で位相の調整が可能なキャンセル信号を生成することができる。この場合において、可変移相器70で必要な位相の調整量は最大で45度であるので、3〜5ボルト程度の低電圧で360度の位相調整を実現することができる。しかも、必要な移相器は、固定移相器40,50,60と可変移相器70の4段であるので、90度の位相調整が可能な可変移相器を4段階に接続した場合と同等の規模である。また、可変移相器70を複数持つ必要も無い。したがって、位相調整器165の構成が複雑化することなく、位相調整に要する電力の低電圧化を図ることができる。
なお、位相調整器165の構成は、図2に示すものに限定されるものではない。そこで次に、位相調整器165の他の構成例について、図7,図8,図9を用いて説明する。
図7に示した位相調整器165は、SPDTスイッチが異なる。すなわち、直列に接続されているSPDTスイッチS1とSPDTスイッチS2、及びSPDTスイッチS3とSPDTスイッチS4とを、それぞれデュアル式のSPDTスイッチ91,92に置き換えたものである。こうすることにより、図2のキャンセル信号生成部162よりも部品点数を少なくできるメリットがある。
図8に示した位相調整器165は、位相遅延量が180度の固定移相器60の他の構成例である。積層チップフェーズシフタには、位相遅延量が45度のものだけではなく、90度のものも存在する。そこで、3dBハイブリッドカプラ61の代わりに、SPDTスイッチS5を用い、このSPDTスイッチS5の双投端子a,bと、SPDTスイッチS4の双投端子a,bとの間を並列に接続する。そして、各双投端子b間を結ぶ伝送路のみに、位相遅延量が90度の積層チップフェーズシフタ64,65を直列に介在させる。
このような構成を採用しても、位相遅延量が180度の固定移相器60を実現することができる。積層チップフェーズシフタやSPDTスイッチは、3dBハイブリッドカプラと比較すると価格が非常に安い。したがって、キャンセル信号生成装置16の低価格化、ひいては無線通信装置の低価格化を図ることができる。
なお、図2に示した位相調整器165の固定移相器60において、直列接続された2つのフェーズシフタ62,63の代わりに、位相遅延量が90度の積層チップフェーズシフタ66を用いることも可能である。
図9に示した位相調整器165は、可変移相器70の代わりに位相遅延量が22.5度の固定移相器100を用いることによって、0〜360度の位相範囲に対し、22.5度の間隔で位相調整が可能なキャンセル信号を生成するようにしたものである。
この例では、位相遅延量が90度の固定移相器40と、45度の固定移相器50は,図2と同一である。固定移相器50の次段に、位相遅延量が22.5度の固定移相器100を接続している。
すなわち、SPDTスイッチS4の双投端子a,bを、それぞれSPDTスイッチS5の双投端子a,bに並列に接続している。そして、SPDTスイッチS4,S5の各双投端子b間を結ぶ伝送路のみに、位相遅延量が22.5度の積層チップフェーズシフタ101を介在させている。
また、位相遅延量が180度の固定移相器60は、前述した位相遅延量が90度の積層チップフェーズシフタ66を用いたものが示されている。さらに、直列に接続されるSPDTスイッチS5とS6は、デュアル式のSPDTスイッチ93を用いている。
積層チップフェーズシフタは、可変移相器70と比較して非常に安価である。したがって、位相調整量の分解能は低いものの、低価格の簡易な位相調整器165を提供することができる。
図2,図7,図8および図9に示したように、位相調整器165の固定移相器の構成は、様々な組み合せが想定できる。かかる位相調整器165を用いて分配器161により送信信号から分配された分配信号の位相を調整する際には、固定移相器の組み合せが変更されたことに応じて合成信号のレベルLと閾値b1とが比較される(ST8〜ST12)。こうすることにより、0°〜360°までの全ての位相について合成波のレベルLを調べることなく、閾値b1以下になった時点で位相の調整を終了することができるので、一層感度改善処理の迅速化を図ることができる。
また、無線通信装置1の部品やアンテナケーブルを交換したなどの特段の事情がない場合には、前回の感度改善処理にて生成したキャンセル信号と同レベルかつ同位相のキャンセル信号により妨害波を打ち消すことができる可能性が高い。これに鑑み、上記実施の形態においては、感度改善処理を開始した後、先ずレベル調整器164の設定値aを設定値a´に設定し(ST1)、位相調整器165の設定値θを設定値θ´に設定する(ST2)ことで、前回の感度改善処理にて生成したキャンセル信号と同レベルかつ同位相のキャンセル信号を生成するようにしている。そして、このときの合成信号のレベルLと閾値b2とを比較し、合成信号のレベルLが閾値b2以下であれば調整を停止して感度改善処理を終了する(ST4)。こうすることにより、無駄なレベル調整や位相調整を省略することができるので、感度改善処理が著しく迅速化される。
また、このように前回の設定値を用いることで感度改善処理が著しく迅速化されることに鑑み、閾値b2を閾値b1よりも大きい値に設定することで、感度改善処理の迅速化により重点を置いた設定を実現することができる。
なお、この発明は前記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲内にて各構成要素を適宜変形して具体化することができる。
例えば、感度改善処理においてキャンセル信号の位相を調整する際、固定移相器40,50,60のSPDTスイッチをデータテーブル80に従って順次切り替え、可変移相器70の設定値θを調整するとしたが、0°〜360°の範囲でバイナリサーチを行うなど、他の調整方法を採用してもよい。
また、感度改善処理においてキャンセル信号のレベルを調整する際、図6を用いて説明した手順でレベル調整器164の設定値aを調整するとしたが、amin〜amaxの範囲でバイナリサーチを行うなど、他の調整方法を採用してもよい。
このように、感度改善処理における位相の調整方法やレベルの調整方法を変更する場合には、合成波のレベルLと閾値b1とを比較するタイミングを、バイナリサーチの1ステップごとなどに適宜変更すればよい。
また、各固定移相器40,50,60,100と可変移相器70との配列順は、図2,図7,図8,図9に示したものに限定されるものではない。例えば、図2において、固定移相器40と固定移相器50とを入れ替えてもよい。また、可変移相器70を、入力端子31と固定移相器40との間に介在させてもよい。また、配列順が異なることによって、データテーブル80の選択データが変化するのは言うまでもないことである。
ところで、前記各実施の形態では、固定移相器40,50,60のばらつきについては考慮されていない。ばらつきを考慮した場合、可変移相器70の位相調整範囲は、45度よりも広いものが好ましい。
この他、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全体構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合せてもよい。
1…無線通信装置、10…リーダ部、11…通信インターフェイス、12…制御部、13…送信部、14…受信部、15…サーキュレータ、16…キャンセル信号生成装置、17…レベル測定器、20…アンテナ、121…メモリ、131…変調器、132,142…アンプ、141…復調器、161…分配器、162…キャンセル信号生成部、163…合成器、164…レベル調整器、165…位相調整器
Claims (10)
- アンテナから送信信号を送信し、この送信信号を受信した通信対象からの応答信号を前記アンテナで受信する無線通信装置において、
前記アンテナに供給される送信信号を分配する分配手段と、
この分配手段により前記送信信号から分配された分配信号に基づいて応答信号の受信を妨害する妨害波を打ち消すキャンセル信号を生成する生成手段と、
この生成手段により生成されたキャンセル信号を前記アンテナの受信信号と合成する合成手段と、
前記生成手段により生成されるキャンセル信号を調整する調整手段と、
前記合成手段により合成された信号のレベルを測定するレベル測定手段と、
前記調整手段により前記キャンセル信号が調整される間、前記レベル測定手段により測定される信号のレベルと所定の閾値とを比較する比較手段と、
この比較手段による比較結果に基づき、前記調整手段によるキャンセル信号の調整を停止せしめる停止手段とを備えてなることを特徴とする無線通信装置。 - 前記調整手段は、
前記分配信号のレベルを調整するレベル調整手段と、
前記分配信号の位相を調整する位相調整手段とを備え、
これらレベル調整手段および位相調整手段により前記キャンセル信号のレベルおよび位相を調整することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。 - 前記位相調整手段は、
位相遅延量がそれぞれ異なる複数の固定移相部と、
360度から前記各固定移相部の位相遅延量合計値を減算した値以上の位相調整が可能な可変移相部とを備え、
これら固定移相部と可変移相部との組合せにより、360度の範囲で前記分配信号の位相調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。 - 前記固定移相部は、位相遅延量が45度の固定移相器と、90度の固定移相器と、180度の固定移相器とからなることを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
- 前記位相遅延量が90度の固定移相器は、3dBハイブリッドカプラであることを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
- 前記位相調整手段は、位相遅延量がそれぞれ異なる複数の固定移相部の組合せにより、360度の範囲で前記分配信号の位相調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
- 前記固定移相部は、位相遅延量が22.5度の固定移相器と、45度の固定移相器と、90度の固定移相器と、180度の固定移相器とからなることを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。
- 前記比較手段は、前記固定移相部の組合せが変更されたことに応じて前記レベル測定手段により測定される信号のレベルと前記閾値とを比較することを特徴とする請求項3乃至7のうちいずれか1に記載の無線通信装置。
- 前記閾値を第1の閾値とし、前記比較手段を第1の比較手段とし、前記停止手段を第1の停止手段とし、
前記調整手段によりキャンセル信号の調整を行うに際して、前回生成されたキャンセル信号と同レベルかつ同位相のキャンセル信号に調整させる調整制御手段と、
この調整制御手段の制御により前記調整手段がキャンセル信号を前回生成されたキャンセル信号と同レベルかつ同位相に調整したとき、前記レベル測定手段により測定される信号のレベルと第2の閾値とを比較する第2の比較手段と、
この第2の比較手段による比較結果に基づき、前記調整手段によるキャンセル信号の調整を停止せしめる第2の停止手段と、
をさらに備えてなることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1に記載の無線通信装置。 - 前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも大きい値に設定されていることを特徴とする請求項9に記載の無線通信装置。
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