JP2010064303A - 透明導電膜付ガスバリアフィルムとこれを用いたタッチパネル - Google Patents
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Abstract
【課題】たとえ過酷な環境下においても、HC層と多層スパッタ膜間等の膜剥離の発生を防止して、長期にわたり安定したガスバリアを発揮することが可能な透明導電膜付ガスバリアフィルムと、これを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】ベースフィルム40の一方の主面にHC層41を配設し、さらにその上に第一のガスバリア層(第一屈折層(中屈折層)42、第二屈折層(低屈折層)43)を順次形成する。低屈折層43上には透明導電膜13を積層する。ベースフィルム40の他方の主面に、第二のガスバリア層として42と同様の構成を持つ第一屈折層45を配設する。第一屈折層442、45は、オキソ窒化ケイ素(SixOyNz)からなる薄膜で構成する。但し、xは0.35以上0.55以下であり、y/zは0.4以上2.0以下であり、x+y+z=1を満たすものとする。
【選択図】図1
Description
代表的なタッチパネルの方式としては抵抗膜式が挙げられる。これは透明面状部材の片面にインジウム酸化スズ(ITO)等の透明電極が形成された透明導電膜付フィルムを、一定間隔をおいて対向配置させた構成を持つ。タッチパネルは良好な透明性を有するので、使用時に液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OELD)等のディスプレイ表面に直接配設される。
すなわち、一般に透明導電膜付フィルムはタッチパネルとしてディスプレイとともに大気中で使用されるが、使用環境によって様々な外部光線の照射を受ける可能性がある。屋外用途やナビゲーションシステム等の用途の場合、タッチパネルは屋内用途に比べて太陽光線・紫外線照射、高温・多湿環境等の影響を被りやすい。工場や公共施設で使用する場合には、水銀灯などの各種照明光源によって、継続的に光照射を受ける場合がある。
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、たとえ過酷な環境下においても、HC層と多層スパッタ膜間等の膜剥離の発生を防止して、長期にわたり安定したガスバリアを発揮することが可能な透明導電膜付ガスバリアフィルムと、これを用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
また、第二のガスバリア層は、組成式がSixOyNzで表されるオキソ窒化ケイ素からなる無機層を備える構成としてもよい。但し、xは0.35以上0.55以下であり、y/zは0.4以上2.0以下であり、x+y+z=1を満たすものとする。
また、第一屈折層を前記無機層と同一の構成とすることもできる。
<実施の形態1>
(透明導電膜付フィルムの構成)
図1は、本実施の形態1におけるタッチパネル用の透明導電膜付ガスバリアフィルム1の積層構造を示す断面図である。
当該フィルム1は、タッチパネルにおいては実施の形態3で説明するように2枚を対向配置させて利用される。
ベースフィルム40は、透明性及び可撓性、打鍵耐久性等のタッチパネル特性に優れる透明樹脂フィルムで構成される。その素材は限定しないが、前記特性を満たすものとしてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ノルボルネンなどの環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)が例示できる。市販製品としては、東洋紡績株式会社製「コスモシャイン A4300」、JSR社製「アートン」シリーズ、日本ゼオン社製「ゼオノア」シリーズ等が挙げられる。
HC層41、44の表面には、中屈折層42、45との密着性の向上やアンチグレア(AG)特性の確保を主な目的として、微細な凹凸領域(不図示)を存在させてもよい。この凹凸領域は、上記粒径が0.5μm以上5μm以下のSiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3の少なくとも何れかの比較的大きな無機微粒子を混合させて作製できる。また、エンボス賦型或いはエッチング処理を行う他、無機微粒子を吹き付けて表面処理等することも可能である。
HC層は、少なくともベースフィルム40の一方の主面に形成されていればよいが、両面に設けることが機械的強度等を得る面で望ましい。ベースフィルム40の下面側にもHC層44を設けることにより、ユーザの指或いは入力手段であるスタイラスペン等の操作性(筆記性)および表面の耐摩耗性が付与される。
中屈折層42は、透明導電膜付ガスバリアフィルム1における第一の屈折層であって、オキシ窒化ケイ素(SixOyNz)からなる無機層で構成されている。ここで、xは0.35以上0.55以下であり、y/zは0.4以上2.0以下の関係を有するように調整されている。また、x+y+z=1を満たすものとする。
低屈折層43は、多層スパッタ膜3中の第二の屈折層であって、酸化ケイ素(SiO2)を主成分として含む無機層であり、スパッタリング法により成膜してなる。層厚みは15nm以上35nm以下、屈折率は1.46(波長630nm)にそれぞれ設定されている。
透明導電膜13はITOの結晶性膜で構成されている。一例として、表面抵抗を200〜1kΩ/sq.、厚みを20nm以上40nm以下、屈折率を2程度にそれぞれ設定できる。図1には図示されていないが、当該透明導電膜13は、実際には低屈折層43の表面で、ストライプ状の所定の電極パターンをなすように形成されている。
一方、フィルム1の下面側に配設された中屈折層45は、入力面側ガスバリア層であって、前述の42と同様にオキソ窒化ケイ素膜で構成された無機層である。この入力面側ガスバリア層を配設した点が本発明の主たる特徴である。
なお、y/zが0.4以下では屈折率をより高くすることができるが、褐色に着色することで透明性が低下してしまう。一方、y/zが2.0以上では、透明性はより高くなるが屈折率が低くなるため、本発明の多層スパッタ膜の効果が十分に得られない。
すなわち本発明では、フィルム1の入力面側からのガス侵入が、新たに設けられた中屈折層45によってブロックされる。このため、多層スパッタ膜3と接するHC層41がフィルム内に侵入した酸素や水蒸気により酸化反応、加水分解反応を生じ、HC層中の樹脂分子が低分子化して密着性が低下するといった問題が抑制される。
次に、実施の形態2について、実施の形態1との差異を中心に説明する。
図2は、実施の形態2の透明導電膜付ガスバリアフィルム1aの構成を示す部分的な断面図である。当図に示すように、実施の形態1のフィルム1との違いは、入力面側ガスバリア層6が中屈折層45と低屈折層46の積層体で構成されている点にある。中屈折層45は42、低屈折層46は43とそれぞれ同様の構成であって、いずれも多層スパッタ膜と同様に、公知の薄膜形成法等で順次形成されている。
なお、図2では、入力側ガスバリア層6を中屈折層45と低屈折層46の2層で構成する例を示したが、本発明はこの構成に限定されず、積層順序を逆にすることもできる。或いは、多段に中屈折層45と低屈折層46を積層して構成することも可能である。積層数に比例してガスバリア特性が向上するものと予想される。
図3は、実施の形態3にかかる抵抗膜式タッチパネル2(以下、単に「タッチパネル2」と称する。)の構成と、これに組み合わされるLCDとの構成例を示す組図である。また図4は、当該タッチパネル2の断面図である。
図3及び4に示されるように、タッチパネル2は、上から順に偏光板11、上部透明基板5A、抵抗膜13、スペーサー16、抵抗膜14、配線基板30、下部透明基板5Bを積層してなる。下部透明基板5Bの下面(中屈折層45の表面)には、パネルの構成となるLCD本体20と偏光板21とが同順に積層されており、全体としてLCD一体型タッチパネルが構成されている。
当該タッチパネル2は、いわゆる「4線式」と呼ばれる入力検出方法が採用されており、且つ各透明基板5A、5Bの両方にフィルム材料を用いた「フィルムーフィルム」の構成であって、ここでは車載用カーナビゲーション用途を想定して、最表層に直線偏光板を設けたインナータッチパネルと呼ばれる形式を採用している。
下部透明基板5Bに直接積層される20は、LCD本体部である。これは公知のTFT型LCD基板であって、上から下に同順に、不図示の透明層、カラーフィルター、液晶分子層、TFT基板、透明層の各層が積層されたユニットである。なお、LCD本体20はTFT型以外でもよく、積層構造も上記に限られない。前記偏光板21は、当該LCD本体部20の下に積層されている。
また、透明導電膜13、14の表面には、xy方向に沿ってマトリクス状に半球状の突起スペーサー16が一定間隔毎に配設され、透明導電膜13、14同士の不要な接触が抑制されている。突起スペーサー16は透明な光硬化型アクリル樹脂で作製され、上部および下部透明基板5A、5Bの対向距離に合わせ、例えば高さ10μm、直径10μm〜50μmのサイズに設定されている。図3では図示の都合上、実際より突起スペーサー16のサイズを大きく表している。当該突起スペーサー16は、半球状以外の形状、例えば円錐状、もしくは円柱状等としてもよい。
次に、x軸に沿った引き出し線141、142間に電圧印加を行い、y軸に沿った引き出し線131、132を電圧検出電極としてx軸方向の位置データを獲得する。以上でxy両方の座標情報が得られる。タッチパネル2ではこの検出ステップを交互に繰り返すことにより、逐次的にユーザからの入力情報を獲得し、GUI(Graphical User Interface)が実現される。
なお、LCD20の表面には下部透明基板5Bが直接配設される。従って、LCD20の構成要素のガスバリア対策としては、5A、5Bのうち下部透明基板5Bのみにフィルム1を適用すれば、それなりの効果が得られる。しかしながら、フィルム1は5A、5B中のフィルム1A、1Bのいずれにも適用できるので、これらを共にフィルム1を用いて作製することで、製造効率上良好となるメリットがある。
また、上記F−Gタイプの構成においては、ガラス基板の代わりに、ガラス板または樹脂板に上記面状部材のフィルム材料を適宜粘着材で貼着してなる積層体(F−F−Gタイプ、あるいはF−F−Pタイプとも称される)を配設するようにしてもよい。また、フィルムとガラス基板との積層枚数、積層順等についても適宜変更調整が可能である。
さらに本発明を適用するタッチパネルの入力方式はいずれの方式であってもよく、例えば静電容量式であってもよい。
<フィルムの製造方法>
ここでは、本発明の透明導電膜付ガスバリアフィルムの製造方法を例示する。
1.ベースフィルム40として、厚さ188μm、幅300mmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製「コスモシャイン A4300」を用意する。
2.HC層の作製
紫外線(UV)硬化樹脂材料と、粒径10nm以上100nm以下のSiO2、Al2O3の何れかで構成されている無機微粒子とを含む塗料を調整する。紫外線硬化樹脂は、カチオン重合型又はラジカル重合型のいずれでもよく、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系等が例示できる。無機微粒子はHC層中での最終組成が43wt%となるように添加し、これを有機溶媒で適宜希釈する。これを例えばロールコーティング法に基づき、ベースフィルム40の一方主面に塗布し、乾燥させて余分な溶媒を除去する。その後、高圧水銀灯等を用いて紫外線照射することで、前記樹脂材料を重合させ、最終厚みが6μm(1μm以上10μm以下程度)のHC層41を形成する。同様の層をベースフィルム40の他方の主面にも形成し、HC層44とする。以上でベースフィルム40の両主面にHC層41、44を持つ透明面状部材4が作製される。
3.中屈折層の作製
成膜装置内部に透明面状部材4を載置する。そして装置内部を減圧するとともに酸素、窒素等のガスを導入し、ターゲットにシリコンを用いたスパッタリングを実施する。これによりHC層41の上に、オキソ窒化ケイ素(SixOyNz)の組成からなる無機層を形成し、中屈折層42とする。
なお中屈折層42は、上記した組成の他、例えばSiO2−SnO2系の組成で構成することもできる。さらに膜構造も上記薄膜に限定せず、所定の材料を用い、ゾルゲル法に基づいて成膜しても良い。例えば、HC層41の最表面上において、Si、Ti、Al、Zrの少なくとも何れかの元素を含む化合物を1種又は2種以上含有する無機成分(例えば酸化チタンゾル)を含む有機・無機複合材料を含有し、且つ、所定の粒径を持つ粒子状無機フィラーを分散させて形成することもできる。前記粒子状無機フィラーには、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2の少なくとも何れかを利用できる。その平均粒径は特に限定されず、例えば10nm〜70nm程度が例示できる。層厚みは40nm以上90nm以下に設定できる。
4.低屈折層の作製
成膜装置内部に、前記中屈折層42を形成したフィルムを載置する。装置内部を十分に減圧した後に酸素ガスを導入し、ターゲットにSi材料を用いてスパッタリングを実施する。これにより中屈折層42の上に、厚さ30nm(15nm以上35nm以下の範囲)のSiO2膜を形成し、第二の屈折層(低屈折層)43を得る。
5.透明導電膜の作製
成膜装置内部に、前記低屈折層43を形成したフィルムを載置する。装置内部を減圧するとともに酸素ガスを導入し、ターゲットにインジウム及びスズを用いてスパッタリングを実施する。これにより、最終生成物として表面抵抗が200Ω/sq.以上1kΩ/sq.以下、且つ、厚みが20nm以上40nm以下の透明導電膜13(ITO膜)を得る。なお、透明導電膜13の結晶構造は、前記スパッタリング法による成膜の際に、例えばIn2O3−SnO2セラミックターゲットのSnO2組成を低くしたもの(SnO2組成が3〜10wt%含有)を用い、150℃程度で基板を暖めると良好に形成できる。
この透明導電膜13についても低屈折層43、中屈折層42と同様に塗布方法で形成できる。この場合、PSS/PEDOTなどのチオフェン系導電性高分子材料やバインダーにカーボンナノチューブなどの導電材料を分散させてなる塗料を用いることができる。
6.入力面側ガスバリア層の作製
多層スパッタ膜3を形成する透明面状部材4の主面と反対の主面に対し、入力面側ガスバリア層を形成する。
フィルム1(図1)に示すように、入力面側ガスバリア層を中屈折層45のみで構成する場合には、中屈折層42と同様の手順で層を形成する。
また、これらの層を繰り返し形成して、ガスバリア特性をさらに向上させることもできる。この場合、各層の材料を交互に置き換え、スパッタリングを繰り返して形成することができる。
<性能確認実験>
次に、本発明の性能を確認するための各種実験を行った結果について説明する。
(紫外線照射試験)
実施の形態1と同様の透明導電膜付ガスバリアフィルム(透明面状部材の一方の面に多層スパッタ膜3を配し、他方の面に中屈折層45を形成したもの)を実施例サンプルとして作製した。比較用に、中屈折層45を備えないサンプルを比較例として作製した。
(雰囲気試験)
次に、フィルムに対して雰囲気が与える影響について確認試験を行った。
上記した実施例及び比較例のサンプルを、所定の高湿度雰囲気で且つ不活性雰囲気(N2雰囲気)に設定した恒温高湿槽内(25〜30℃×90%RH以上、N2100%雰囲気)に載置した。
以上の状態で、十分な時間(1800hr)にわたり継続して紫外線フェードメーターによる紫外線を照射したところ、高湿度且つ不活性雰囲気ではテープ剥離が発生しなかった。
この結果から、多層スパッタ膜とHC層との剥離は、水蒸気よりも酸素による影響が大きいことが確認された。
なお、本願発明者らの行った別の実験では、窒素雰囲気に設定した紫外線照射試験を行ったところ、実施例・比較例のいずれのサンプルでも、比較的長期にわたり、密着性が維持されることが分かった。このことからも、フィルム中に酸素が侵入することが主な原因であり、このような酸素の侵入を防止すれば、フィルムの密着性を安定的に維持できることが分かる。
2 タッチパネル
3 多層スパッタ膜
4 透明面状部材
5、5A、5B 透明基板
6 入力面側ガスバリア層
13、14 抵抗膜(透明電極膜或いは電極層)
40 ベースフィルム
41、44 ハードコート(HC)層
42、45 中屈折層(第一屈折層)
43、46 低屈折層(第二屈折層)
131、132、141、142 引き出し線
133 接続線
131a、132a、141a、142a 電極端子
302、303、304、305 引き出し線
302a〜305a 電極端子
301 フレキシブル基板
Claims (6)
- ベースフィルムの一方の主面に、紫外線硬化樹脂を含むハードコート層を配設してなる透明面状部材と、前記ハードコート層上に順次形成された第一のガスバリア層とインジウム酸化スズからなる透明導電膜とを有し、
第一のガスバリア層は、透明面状部材側から順に、オキソ窒化ケイ素からなる第一屈折層と、酸化ケイ素からなる第二屈折層とを積層した複合層で構成され、
ベースフィルムの他方の主面側に第二のガスバリア層が配設されている
ことを特徴とする透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 第一屈折層、第二屈折層、透明導電膜の各々は、スパッタリングで形成された薄膜である
ことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 第二のガスバリア層は、組成式がSixOyNzで表されるオキソ窒化ケイ素からなる無機層を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。
但し、xは0.35以上0.55以下であり、y/zは0.4以上2.0以下であり、x+y+z=1を満たすものとする。 - 第二のガスバリア層は、組成式がSixOyNzで表されるオキソ窒化ケイ素からなる無機層と、SiO2を含む層とを積層してなる
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。
但し、xは0.35以上0.55以下であり、y/zは0.4以上2.0以下であり、x+y+z=1を満たすものとする。 - 第一屈折層が前記無機層と同一の構成である
ことを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 一対の透明導電膜付基板が、互いの透明導電膜を対向させた状態で一定間隔をおいて配置されてなるタッチパネルであって、
前記透明導電膜付基板の少なくとも一方が、請求項1から5のいずれかに記載の透明導電膜付ガスバリアフィルムである
ことを特徴とするタッチパネル。
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