本発明は、記録部材にインク液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置に関し、特に、維持手段にインクヘッドを正確に移動できる画像形成装置に関する。
インクヘッドを用紙の搬送方向と直行する方向に走査しながらインク液滴を吐出することで用紙に画像を記録するインクジェット記録装置では、インクヘッド、インクヘッドを搭載したキャリッジを案内するガイドロッド、その他種々の部品の取り付け精度が印字品質に大きく影響する。例えば、主走査方向においてインクヘッドと用紙の間のギャップが変化すると、インク液滴の着弾位置が変わってしまい印字品質が低下する。一方、取り付け精度を維持しようと工程を厳密にすることはコスト増をもたらす。そこで、キャリッジを案内するガイドロッドの両端部を側板に保持する保持部に、偏芯方向が直交した2つのアジャスタ部材を備えるインクジェット記録装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載のインクジェット記録装置は、2つのアジャスタ部材のうちのいずれか一方を回転することでインクヘッドと用紙のギャップ、他方を回転したときにキャリッジの移動方向と用紙の搬送方向との角度が変化して、ガイドロッドの取り付け後に2方向の寸法を調整できるようになっている。
ところで、インクジェット記録装置においては、ヘッド面の状態を良好に保つために維持動作を行う必要がある。具体的には、インクを吐出せずに長時間放置したりして、良好なメニスカス(液体架橋)が壊れた場合、ノズル内のインクを吸引し、ワイパーでノズル面を払拭する。この維持動作の効果を最大限得るためには、ヘッドと維持ユニットの位置精度が重要となる。また、吐出しない期間のノズル面のメニスカスを保つために行うキャッピングも同様である。すなわち、インク液滴の吐出時だけでなく、維持ユニットにおいても部品間の位置精度を保つことが要請される。
単純な対策としては、キャップ部材をヘッド面に対して大型化したり、ワイパーの幅や動作を大きくすることが挙げられるが、マシンは大きくなり、ダウンタイムも増大し、コストも増大するため最適な対策とはいえない。
維持ユニットにおけるインクヘッドの位置を保つため、維持ユニットに原点位置の検出センサを設けたインクジェット記録装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。図21(a)は、原点位置の検出センサを備えたインクジェット記録装置の構造を示す。キャリッジと一体になったセンサ切り板が原点位置出しセンサを遮ることにより、原点位置出しセンサからの出力信号が変化して、ホームポジションの検出を行うことができる。
また、ホームポジションを検出する技術としてキャリッジをフレーム等に突き当てる方法が知られているが、モータ負荷が大きくなりまた衝撃音が生じることが知られている。そこで、キャリッジの移動位置(絶対位置)が不明な状態からキャリッジをフレーム等に突き当てることなくホームポジションを特定する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。図21(b)は、特許文献3記載のインクジェット記録装置の構造図を示す。 第1の被検出部M1と第2の被検出部M2とは、所定の間隔(L)をもって配設され、第1の被検出部M1の主走査方向幅と第2の被検出部M2の主走査方向幅とは、相対的に異なって(L1>L2)いる。第1の被検出部M1は、キャリッジが主走査方向への往復動領域の一方側の最外端にある状態においてもPWセンサにて検出される如く配置される。第2の被検出部M2は、主走査方向におけるPWセンサの検出位置が第2の被検出部M2の主走査方向における中心位置と一致する状態で、キャリッジの停止位置がホームポジションと一致するように配置される。
特開平9−99603号公報
特開2002−127390号公報
特開2006−192632号公報
しかしながら、特許文献2記載のインクジェット記録装置では、センサ切り板と原点位置出しセンサとがある1点のみで位置あわせすることになるため、残紙やユーザの指、センサ不良などによりセンサ切り板が誤検出されるおそれがある。誤検知されると維持ユニットと全く異なる場所で維持動作が始まってしまう。
また、特許文献3記載のインクジェット記録装置では、ヘッド部の位置を検出するのではなくヘッドを搭載しているキャリッジの位置を検出するものであるため、維持ユニットにおけるヘッド位置が正確とは限らないという問題がある。また、2つの検出部までキャリッジを移動させないと位置を確定できないため、位置検出に時間がかかる。
本発明は、上記課題に鑑み、維持ユニットにおけるインクヘッドの位置を精度よく検出できる画像形成装置を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明は、インク液滴をノズル面から吐出するインクヘッドと、複数の前記インクヘッドを搭載したキャリッジと、ガイドロッドに案内されるキャリッジを移動させる電動モータと、キャリッジが基準位置で待機する間、待機時のノズル面の機能を維持する維持動作を行う維持手段と、を有し、記録部材にインク液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置において、維持手段内に設けられ、キャリッジが維持手段の方向に移動される際、2以上のインクヘッドとの距離情報を検出する検出手段と、前記距離情報を時系列に取得して、前記インクヘッドの端部により得られる特徴を含んだ信号波形を取得する信号波形検出手段と、信号波形に基づき基準位置を決定する基準位置決定手段と、を有することを特徴とする。
維持ユニットにおけるインクヘッドの位置を精度よく検出できる画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、インクジェット記録装置100の主要部の構造の斜視図の一例を示す。インクジェット記録装置100の主要部には公知の構造を用いることができる。
インクヘッド11は、キャリッジ21内に配置されている。キャリッジ21内のインクヘッド11はUV接着剤などで接着固定されていたり、スプリングなどで圧接固定され、キャリッジ21におけるインクヘッド11は精度よく固定されている。
キャリッジ21は貫通孔を有し、インクジェット記録装置100の両端を張架したガイドロット13が貫通孔を貫通することでキャリッジ21を保持している。キャリッジ21の一部は、ガイドレール16に付勢するように常時接触することで、キャリッジ21の姿勢が一定に保たれている。この姿勢を精度良く維持することにより、主走査方向の位置に関わらず、インクヘッド11と記録部材(以下、単に用紙という)の距離が均等に保たれ、インク着弾位置のバラツキを抑制している。
キャリッジ21は、タイミングベルト14に接続されている。主走査モータ18にかけられたプーリーを介してタイミングベルト14が回転すると、キャリッジ21はガイドロッド13に案内され用紙搬送方向と直行する方向(主走査方向)に直線運動を行う。直線運動の際、リニアスケール(不図示)に印刷されたパルス信号をキャリッジ21上に固定されたエンコーダセンサ(不図示)22で読み取りキャリッジ21の位置を検出し、インクヘッド11から所定のタイミングでインク液滴を吐出する。
一方、用紙の搬送は、副走査モータ19によって用紙搬送ベルト17を回転することによって行われる。用紙搬送ベルト17は、搬送ローラとテンションローラの間を張架されており、副走査モータ19の回転に連動して搬送ベルトが回転する。この際、副走査モータ19の回転位置は、搬送ローラの回転軸に固定されたホイールエンコーダ20により検出され、副走査モータ19はこのホイールエンコーダ20の検出信号に基づき制御される。
図2は、キャリッジ21と維持ユニット12の接合部分の断面図を、図3は正面図をそれぞれ示す。キャリッジ21には5つのインクヘッド11が搭載されている。それぞれのインクヘッド11から例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、K(顔料系ブラック)の各色のインク液滴が吐出される。図2では紙面の厚み方向(奥から手前方向)にインク液滴が吐出され、図3では、インク液滴は垂直方向下向きに吐出される。
インクヘッド11のインク液滴の吐出機構には、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなど、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段が適用される。
維持ユニット12は、インク液滴を吐出せずに放置した場合でも、インクヘッド11のノズル口の状態を良好に保つための維持動作、例えば、ノズル内のインクの吸引、ワイパーによるノズル面の払拭、乾燥防止、等を行う。本実施例のインクジェット記録装置100は、この維持動作の効果を最大限得るため、インクヘッド11と維持ユニット12の位置精度を向上させる。
ゴムキャップ12aは、インクヘッド11が維持ユニット12により維持されている間、インクヘッド11のノズル面が乾燥しないようにキャッピングする。吸引キャップ12bは、ゴムキャップ12aに内設されており、キャッピングにより吸引キャップ12bとインクヘッド11と近接するようになっている。ゴムキャップ12aは吸引ポンプと連結されており、ゴムキャップ12aによりインクヘッド11をキャッピングした後、吸引ポンプを動作させることで、インクヘッド11内のインクを吸引することができる。
また、ワイパ12cは、吸引動作した後のノズル面を拭き取る。キャリッジ21を直線移動させると、ワイパ12cとインクヘッド11のノズル面が接触して、ノズル面を拭き取るようになっている。
なお、図示するインクヘッド11の並び方は機種固有のものであり、インクヘッド11の数や維持ユニット12の形状は限定されない。
図4は、インクジェット記録装置100のハードウェア構成図の一例を示す。なお、図4において図1〜3と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。インクジェット記録装置100はコントローラ29により制御され、コントローラ29にはバスを介して主走査モータ18、副走査モータ19、エンコーダセンサ22、透過型光学センサ23、インクヘッド11、USBI/F10、電源24、モータドライバ25、タイマー26、ROM27、RAM28及びインクヘッド駆動ドライバ31が接続されている。
透過型光学センサ23について詳しくは後述するが、この透過型光学センサ23がインクヘッド11の位置を高精度に検出し、維持ユニット12におけるインクヘッド11の位置を高精度に制御することを可能にする。
USBI/F10は、USBケーブルを用いて印刷データを送信する例えばパーソナルコンピュータ(PC)と接続するインターフェイスである。PCで実行されたアプリケーションソフトで印刷実行が入力されると、印刷データと共に印刷条件が送信され、コントローラ29は印刷条件に従い、後述するように印刷データを用紙に印刷する。なお、印刷データは、PC側のプリンタドライバでビットマップデータに展開される場合と、インクジェット記録装置100側で展開される場合があるが、本実施形態ではどちらでもよい。
電源24は、インクジェット記録装置100に電力を供給するもので、商用電源から供給された交流電圧を所定の直流電力に変換するとともに、インクジェット記録装置100に定格の電流/電圧を生成する。
モータドライバ25は、DCモータやステップモータ等で駆動される主走査モータ18、副走査モータ19に流れる電流を制御するICである。図ではモータドライバ25は1つであるが、主走査モータ18と副走査モータ19のそれぞれに配置される。モータドライバ25は、コントローラ29からの制御信号に応じて、決定した電流値の電流を所定の方向に流したり、パルス信号を生成し、また、電流のオン/オフを制御する。これと、用紙搬送方向の位置やインクヘッド11の主走査方向の位置を検出するセンシングにより、主走査モータ18と副走査モータ19を制御する。
タイマー26は設定された時間をカウントダウンしたり、クロック信号を生成して出力するものである。タイマー26によりバスに接続された各部が同期をとることができる。また、タイマー26により計測された時間は、インクヘッド11の位置を検出する際に用いられる。
ROM27には各種のプログラム30や標準パターン32を登録したファイルが記憶されており、コントローラ29のCPUはROM27に記憶されたプログラム30を実行して、主走査モータ18、副走査モータ19、インクヘッド11を制御する。また、このプログラム30をCPUが実行することで、維持ユニット12におけるインクヘッド11の位置を精度よく検出する。標準パターン32については後述する。
RAM28はプログラム30やデータを一時的に展開する作業メモリである。本実施形態では、透過型光学センサ23が出力した信号(センサ出力パターン)を記憶する際に用いられる。
コントローラ29はCPUやASIC(Application Specific Integrated Circuit)、入出力インターフェイス等を備えたコンピュータの一形態であって、印刷データの印字の際、主走査モータ18、副走査モータ19及びインクヘッド11を制御して、印刷データに基づき用紙に画像を形成する。
コントローラ29は、ビットマップデータで階調表現された印刷データにディザ処理などのインクジェット方式に好適な画像処理を施す。そして、印刷データに対応した画素値に応じて各色のインク毎にインク液滴の大きさを決定する。吐出量が3段階(小、中、大)の場合、吐出しない場合を含めて各ノズル毎に4つの状態を指示できればよいので各インク液滴(画素ドット)毎に、2ビットの信号を生成する。また、これらの信号は、インクヘッド11の主走査方向への走査速度やインクヘッド11の応答速度に適切な順番に並び替えられる。
インクヘッド駆動ドライバ31は、インクヘッド11によるインク液滴の吐出を制御するための駆動波形を生成する。インクヘッド駆動ドライバ31は、コントローラ29が生成した信号を受信し、信号に対応するROM27に記憶された駆動波形のパターンデータを読み出し、主走査方向の1行に相当する信号に対応した駆動波形を生成する。そして、インクヘッド駆動ドライバ31は、駆動波形を選択的にインクヘッド11の圧力発生手段に印加してインクヘッド11のインク吐出口からインクを吐出する。
コントローラ29は、用紙を搬送方向に移動させ、インクヘッド11を印刷媒体の幅に応じて間欠的に移動させ、用紙の搬送とインク液滴の吐出を交互に繰り返すことによって用紙に画像を形成する。
本実施例では、維持ユニット12に、各インクヘッド11の通過を検出する透過型光学センサ23を設け、透過型光学センサ23が各インクヘッド11の通過を検出することでセンサ出力パターンを生成する。そのセンサ出力パターンが、予め記憶している標準パターン32と一致すると判定された場合に、最後に通過したインクヘッド11の端面を起点位置して、キャリッジ21のキャリッジ基準位置を決定する。キャリッジ基準位置はホームポジションと呼ばれ、維持ユニット12おける待機位置となる。
すなわち、複数のインクヘッドの位置に対応して形成されたセンサ出力パターンが一致するか否かによりインクヘッド11の端面を検出するので、残紙やユーザの指によりインクヘッド11を誤検出するおそれがない。このため、正確にインクヘッド11の端面を検出でき、維持ユニット12におけるインクヘッド11の位置を精度よく決定できる。
図5は、透過型光学センサ23を模式的に説明する図の一例である。上記のように、キャリッジ21はガイドロッド13と平行に移動し、インクヘッド11を維持動作する維持ユニット12もその軌跡上に配置されている。図5は上面図であり、インクヘッド11のノズル面は紙面の厚み方向下向きに、維持ユニット12は紙面の厚み方向上向きに配置されている。
透過型光学センサ23は、発光部23aと受光部23bとから構成され、発光部23aから発せられた光は受光部23bにより受光される。位置精度を高めるには発光部23aが発する光の光束は小さいほどよいので、発光部23aは例えばレーザダイオードを有し、受光部23bはレーザ光を電機に変換するフォトダイオードを有する。なお、発光部23aに比較的に光束の大きい光源を用い、受光部23bの面積を小さくしてもよい。
発光部23aと受光部23bは、キャリッジ21の移動方向と直行するように、向かい合って配置されている。すなわち、発光部23aと受光部23bを結ぶ光路は、キャリッジ21の移動方向と直交する。受光部23bと発光部23aがインク吐出方向と直行しているため、インクのミストによる検知面の汚染リスクを低くすることができる。なお、キャリッジ21を跨ぐ形での配置となるため、透過型光学センサ23の配置精度が重要となる。また、単純に発光部23aから出た光路上に受光部23bが配置されていれば良いのではなく、キャリッジ移動方向(=ガイドロッド13の長手方向)との直角度が重要となる。
透過型光学センサ23は、維持ユニット12のゴムキャップがある面よりも紙面の厚み方向の手前側に突出している。この突出した発光部23aと受光部23bが形成する空間内を各インクヘッド11が通過する。インクヘッド11はそれぞれノズル面がキャリッジ底面よりも突出しているので、透過型光学センサ23は各インクヘッド11それぞれの通過を検出できる。
なお、図5では、透過型光学センサ23は、維持ユニット12の中央よりやや左側に配置されているが、透過型光学センサ23の位置は、維持ユニット12の中央よりもやや右側よりも左にあればよい。これは、インクヘッド11を2つ検出できれば、センサ出力パターンを生成できるからである。より好ましくは、全てのインクヘッド11(この場合は5つ)を検出できるように、維持ユニット12の左端に設ける。
図6は、本実施例のインクジェット記録装置100の機能ブロック図の一例を示す。センサパターン検出部33、センサパターン比較部34、起点位置決定部35及びキャリッジ基準位置決定部36は、コントローラ29のCPUがプログラム30を実行するかASICにより実現される。
センサパターン検出部33は、透過型光学センサ23が出力する信号に基づき次述するセンサ出力パターンを生成する。センサパターン比較部34は、センサ出力パターンと標準パターン32を比較して、一致するか否かを判定する。起点位置決定部35は、最後にインクヘッド11の端部が通過した際のキャリッジ21の位置を起点位置に決定する。この起点位置は、リニアスケールの通過パルスを検出するエンコーダセンサ22により取得される。キャリッジ基準位置決定部36は、起点位置から予め定められた距離Aだけ移動した位置を、維持ユニット12におけるキャリッジ基準位置に決定する。このキャリッジ基準位置でノズル面のキャッピング等の維持作業が行われる。
図7(a)〜(d)は、センサパターン検出部33が生成するセンサ出力パターンを時系列に説明する図の一例である。図7(a)〜(d)の左図はインクヘッド11の位置と透過型光学センサ23の位置の関係を、右図はその時の透過型光学センサ23のセンサ出力を示す。図7でのセンサ出力は、透過型光学センサ23の発光部23aと受光部23bの間をインクヘッド11が遮蔽していない(透過する)場合と、遮蔽する場合の2値信号となっている。透過する場合にセンサ出力をゼロとしてもよい。
図7(a)に示すように、キャリッジ21が維持ユニット12の手前まで到達しても、インクヘッド11が透過型光学センサ23を遮蔽するまでセンサ出力は透過状態を示す。次に、図7(b)のように、右端のインクヘッド11(以下、維持ユニット12に近い方から順に、インクヘッド11の1番目〜5番目と称することがある)によって光路が遮られると、センサ出力が「透過」状態から「遮蔽」状態となる。
さらにキャリッジ21が移動すると1番右のインクヘッド11aが光路から抜けて「遮蔽」状態から「透過」状態となる。また、さらにキャリッジ21が右に移動し、右から2番目のインクヘッド11bによって再び光路が遮蔽されると、センサ出力が「透過」状態から「遮蔽」状態となる。
したがって、5つのインクヘッド11がある場合、計5つの遮蔽状態を有するセンサ出力パターンが形成される。遮蔽状態から透過状態又は遮蔽状態から透過状態に遷移する時のセンサ出力パターンの変化(図では90度の変化)が、インクヘッド11の端部を示す(特許請求の範囲の特徴部に相当する)。
図8は、センサ出力パターンの一例を示す。センサパターン検出部33は、時間又は距離(リニアスケールのパルス)に対し透過状態と遮蔽状態をプロットして、センサ出力パターンを生成する。
図示するようにインクヘッド11に対応する5つの遮蔽状態が形成されている。センサ出力パターンと、ROM27に記憶された標準パターン32との比較について説明する。
センサ出力パターンのX軸は、時間またはリニアスケールのパルスを、Y軸は出力(例えば電圧)を示す。X軸を時間とした場合、パルスを取得する必要がないのでシステムが容易となりよりコスト増を抑制できる。一方、キャリッジ21の速度変動の影響をそのまま受けるため、直線運動するキャリッジ21の等速性(回転ムラがない又は少ない)が求められる。
これに対し、リニアスケールのパルス換算による計測の場合は、キャリッジ速度に影響されずにより正確な測定ができるが、構成及び制御が複雑になりコスト増となる。したがって、技術的にはどちらを用いても実現できる。標準パターン32のX軸は、センサ出力パターンと同じである。
なお、キャリッジ21上のインクヘッド11の配置(位置関係)は固定であり、所定の間隔で配置されている。全てのインクヘッド11が等間隔なのか、一部の間隔が異なるかは機種によって異なる。図8で示した例は、5つのインクヘッド11が等間隔で配置された例である。
センサパターン比較部34は、このセンサ出力パターンと標準パターン32を比較する。なお、センサ出力は劣化等により変動するおそれがあるので、センサ出力パターンの「透過」状態と「遮蔽」状態をそれぞれ「1」「0」など所定の値に正規化してもよい。比較の方法にはパターンマッチング等もあるが、センサ出力は2値信号なので、5つの遮蔽状態と4つの透過状態のパルス数をそれぞれ、標準パターン32のものと比較する方法が、処理負荷としても小さいため好ましい。
右端のインクヘッド11により得られた遮蔽状態のパルス数をk1、右端のインクヘッド11aと右から2番目のインクヘッド11bの間隔により得られる透過状態のパルス数をm1、…とする。図示するように、標準パターン32にも対応するパルス数が記憶されているので、それぞれのパルス数を比較する。
「k1とf1」、「k2とf2」、「k3とf3」、「k4とf4」、「k5とf5」、「m1とg1」、「m2とg2」、「m3とg3」、「m4とg4」をそれぞれ比較して、センサパターン比較部34は、全て一致した場合に、センサ出力パターンと標準パターン32とが一致すると判定する。
なお、パターンマッチングにより比較する場合、センサ出力パターンを標準パターンと同じ解像度のビットマップに展開し、1画素毎に対応をずらしながら最も画素値が一致する対応関係を取得する。
キャリッジ21が移動して、最終的に「k5とf5」まで一致すると、一致した時のキャリッジ21の位置が起点位置である。図8では、距離Aの左側の端部が起点位置であり、最も左側のインクヘッド11の端部が透過型光学センサ23を通過した直後のキャリッジ21の位置を示す。
起点位置からどのくらいキャリッジ21を移動させるとキャリッジ基準位置に到達するか、すなわち距離Aは既知である。キャリッジ基準位置決定部36は、起点位置からリニアスケールのパルスをカウントし、距離Aだけ移動させることで、インクヘッド11を正確に維持ユニット12まで移動させる。移動完了後、維持ユニット12は維持動作を開始したり、キャッピング動作を実行する。
図9は、本実施例のインクジェット記録装置100がキャリッジ基準位置までキャリッジ21を移動させる手順を示すフローチャート図の一例である。なお、図9ではリニアスケールパルスをカウントする方式でセンサ出力パターンを生成するものとする。図9のフローチャート図は、例えばキャリッジ21を維持ユニット12に移動する際にスタートする。
まず、キャリッジ21が維持ユニット12の方向に移動を開始する(S10)。すると、透過型光学センサ23の受光部23bが受光した光に応じてセンサ出力の取得を開始する(S20)。
センサパターン検出部33は、透過型光学センサ23のセンサ出力を監視しながら、リニアスケールのパルスをカウントを開始する(S30)。インクヘッド11が全て光学センサを通過するか所定時間が経過すると、センサ出力パターンの取得が完了する(S40)。
ついで、センサパターン比較部34は、センサ出力パターンとROM27に記憶された標準パターン32を比較して一致するか否かを判定する(S50)。
一致しない場合(S60のNo)、センサパターン比較部34は規定のリトライ回数を超えたか否かを判定し(S110)、リトライ回数を超えている場合(S110のYes)、センサパターン比較部34はエラーメッセージを液晶などの表示部に表示する(S120)。なお、表示部がない場合、警告ランプを点灯する。また、PCに接続されている場合は、PCのディスプレイにエラーメッセージが表示される。
リトライ回数を超えていない場合(S110のNo)、再度、センサ出力パターンを検出するため、コントローラ29はキャリッジ21を反対方向(画像形成領域方向)に移動する(S100)。最も右側のインクヘッド11が透過型光学センサ23を通過すると、キャリッジ21が再度、維持ユニット12方向に移動開始するので、センサ出力パターン出力部は改めてセンサ出力パターンを検出する。
センサ出力パターンとROM27に記憶された標準パターン32が一致する場合(S60のYes)、起点位置決定部35が起点位置を決定し、キャリッジ基準位置決定部36がそこから距離Aの位置をキャリッジ基準位置に決定する(S70)。
コントローラ29はキャリッジ21をキャリッジ基準位置まで移動させる(S80)。これにより、維持作業が可能となるので、維持ユニット12はインクヘッド11にキャッピング等を施す(S90)。
以上説明したように、本実施例のインクジェット記録装置100は、維持ユニット12に固定されているセンサで直接インクヘッド11の位置検出を行なうので、維持ユニット12内のキャップやワイパーとインクヘッド11との相対位置精度を向上することができる。搬送不良を起こした用紙や、ユーザの手などをインクヘッド11と誤検知しても、センサ出力パターンが標準パターン32と一致しない限りキャリッジ基準位置を決定しないので、誤検知による位置ずれが生じることがない。
本実施例では、透過型光学センサ23のセンサ出力を利用して、キャリッジ基準位置におけるキャリッジ21と維持ユニット12の距離(キャリッジ21の高さ)を検出することができるインクジェット記録装置100について説明する。
図10は、本実施例の透過型光学センサ23を模式的に説明する図の一例である。図10において図5と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。本実施例のキャリッジ21には、主走査方向の端部にテーパリブ41を備える。テーパリブ41は、キャリッジ21から用紙方向に離れるにつれ細くなる略三角形状のリブである。テーパリブ41の高さはインクヘッド11と同程度かそれよりも高ければよい。
テーパリブ41はインクヘッド11と同様に透過型光学センサ23の光路を遮蔽する。したがって、実施例1よりも1つ多く遮蔽状態が形成されたセンサ出力パターンが得られる。
このようにテーパリブ41を設けることで、キャリッジ21の高さを検出することができる。図11(a)に示すように、テーパリブ41の先端部(用紙側)が透過型光学センサ23を遮蔽する距離は、キャリッジ側が透過型光学センサ23を遮蔽する距離よりも短い。テーパリブ41の先端部を通過するかキャリッジ側が通過するかは、キャリッジ21の高さに依存する。したがって、テーパリブ41が透過型光学センサ23を通過する距離を検出することで、キャリッジ21の高さを検出することができる。
図11(b)は、本実施例のインクジェット記録装置100の機能ブロック図の一例を示す。図11(b)において図6と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。本実施例ではキャリッジ位置検出部を有し、キャリッジ位置検出部は、テーパリブ41が透過型光学センサ23を通過する距離(リニアスケールのパルス)に基づき、キャリッジ21の高さを検出する。
また、本実施例では、ROM27に「パルス数とキャリッジ高さ」の関係を登録したマップ38が記憶されている。したがって、テーパリブ41によるパルス数が検出されれば、マップ38からキャリッジ高さを読み出すことができる。
図12はセンサ出力パターンの一例を示す。センサパターン検出部33は、最後の(5つめの)インクヘッド11eを検出した後も、キャリッジ21の移動を継続し、テーパリブ41の「遮蔽時間」を測定する。この遮蔽時間が長ければ長いほど、「ノズル面と維持ユニット間の距離が遠い」こととなり、逆に、遮蔽時間が短ければ短いほど、「ノズルと維持ユニット間の距離が近い」こととなる。
図12では、最も右側の遮蔽状態がテーパリブ41によるものであるので、キャリッジ高さ検出部37は、テーパリブ41が遮蔽した距離Lに基づきマップ38からキャリッジ高さを読み出す。
図13は、本実施例のインクジェット記録装置100がキャリッジ基準位置までキャリッジ21を移動させ、キャリッジ高さを検出する手順を示すフローチャート図の一例である。図13において図9と同一ステップの説明は省略する。ステップS80でキャリッジ基準位置へ移動する際、テーパリブ41が遮蔽した距離Lが検出されるので、ステップS85において、キャリッジ高さ検出部37がキャリッジ高さを検出する(S85)。
本実施例のインクジェット記録装置100は、インクジェット記録装置100において重要な寸法である「ノズルと用紙搬送装置及び維持ユニット間の距離」を検出できる。この寸法に基づき、例えばインクの吐出タイミングを補正することで、印字品質を向上させることができる。
実施例1及び2では、キャリッジ21が一方向(維持ユニット12に接近する方向)に移動する際のセンサ出力パターンを検出したが、本実施例では、双方向に移動する際のセンサ出力パターンを検出する。
キャリッジ21はガイドロット13に貫通孔を貫通させて保持されているが、キャリッジ21とガイドロッド13には、直線運動するためのガタ(空隙)が必要である。ガタによりスムースな直線運動が可能となるが、ガタのため運動方向に応じてキャリッジ21の首振り(ヨーイング)が発生する。すなわち、静止状態でガイドロッド13に平行なキャリッジ21の軸が、往路(例えば、維持ユニット12に接近する方向)ではガイドロッド13と角度をなし、また復路(その逆方向)で逆方向に角度をなす。
したがって、往路で検出されたキャリッジ基準位置も若干の誤差を含むことが予想されるため、より好ましくは往路と復路でキャリッジ基準位置を決定することが好ましい。そこで、本実施例では、往路と復路の両方向にキャリッジ21を移動させてそれぞれセンサ出力パターンを計測する。
機能ブロック図は実施例1又は2と同様であるが、本実施例ではROM27に復路のセンサ出力パターンが予め記憶されている。センサパターン比較部34は、往路と復路の両方のセンサ出力パターンが一致した場合に、センサ出力パターンが一致すると判定する。
また、本実施例の起点位置決定部35は、往路との起点位置と復路の起点位置をそれぞれ記憶しておき、その平均を起点位置に決定する。そして、キャリッジ基準位置決定部36は、起点位置から距離Aだけ離れたキャリッジ21をキャリッジ基準位置に移動させる。
図14は、本実施例インクジェット記録装置100がキャリッジ基準位置までキャリッジ21を移動させる手順を示すフローチャート図の一例である。なお、図14では図9と異なるステップのみ示した。
まず、キャリッジ21が維持ユニット12の方向に移動を開始する(S10)。すると、透過型光学センサ23の受光部23bが受光した光に応じてセンサ出力を開始する(S20A)。
センサパターン検出部33は、往路においてセンサ出力を監視しながら、リニアスケールのパルスをカウントを開始する(S30A)。インクヘッド11が全て光学センサを通過するか所定時間が経過すると、往路のセンサ出力パターンの取得が完了する(S40A)。
ここで、コントローラ29はキャリッジ21を復路方向に移動を開始する。そして、透過型光学センサ23の受光部23bが受光した光に応じてセンサ出力を開始する(S20B)。
センサパターン検出部33は、復路においてセンサ出力を監視しながら、リニアスケールのパルスをカウントを開始する(S30B)。インクヘッド11が全て光学センサを通過するか所定時間が経過すると、復路のセンサ出力パターンの取得が完了する(S40B)。以上で、往路と復路のセンサ出力パターンが検出された(S40)。以降の処理は図9と同様であるので説明は省略する。
本実施例によれば、キャリッジ21の首振り(ヨーイング)によるインクヘッド11の傾き成分の除去が可能となり、より高精度なキャリッジ基準位置を決定できる。したがって、実施例1よりも、維持ユニット12内のキャップやワイパーとインクヘッド11との相対位置精度を向上することができる。
実施例1〜3では、キャリッジ21の底面から突出したインクヘッド11を透過型光学センサ23により検出したが、キャリッジ21からの突出量が十分でない場合など、インクヘッド11の位置を透過型光学センサ23により検出困難な場合も想定できる。そこで、透過型光学センサ23により位置を検出する突起部をインクヘッド11と一体に設けることが好適となる。
図15は、本実施例のインクヘッド11と透過型光学センサ23の斜視図の一例を示す。インクヘッド11にキャリッジ21の外側まで突出する長さの突起部が設けられている。突起部は、キャリッジ21が主走査方向に移動することで、発光部23aと受光部23bの間を通過する。なお、本実施例においても透過型光学センサ23は維持ユニット12内又は維持ユニット12と一体に設けられており、起点位置から所定距離Aによりキャリッジ基準位置を決定できる。
本実施例によれば、実施例1〜3と同等の効果を少ない部品点数でより低コストに達成することができる。また、より好適な条件でインクヘッド11の条件を検出できる。
実施例1〜4では、透過型光学センサ23によりインクヘッド11の位置を検出したが、本実施例ではヘッド位置検知センサ42によりインクヘッド11の位置を検出する。センサ出力パターンを標準パターン32と比較する点は実施例1〜4と同様である。
図16は、ヘッド位置検知センサ42によるインクヘッド11の検出を模式的に説明する図の一例である。図16(a)は正面図を、図16(b)は側面図をそれぞれ示す。インクヘッド11の性能を保つため、維持ユニット12とキャリッジ21は、キャリッジ21内のヘッド面と対向する位置に配置される。なお、機能ブロック図は実施例1の図6と同様である。
ヘッド位置検知センサ42は、ヘッド面に対向して維持ユニット12内に配置されている。ヘッド位置検知センサ42は、反射型センサ、距離検知センサなどである。反射型センサの場合、発光部と受光部を一体に設けており、発光部が発した光(レーザ)を受光部で検出するまでの時間に基づきインクヘッド11又はキャリッジ21までの距離を検出する。また、例えば、スリット光を斜めに投光してキャリッジ21に縞状模様を撮影し、縞状模様の間隔から公知の三角測量の原理を適用してインクヘッド11の形状と位置を検出してもよい。また、距離検知センサの場合、例えば超音波を発してそれがインクヘッド11又はキャリッジ21に反射して帰ってくるまでの時間に基づきインクヘッド11の位置を検出する。
キャリッジ21を維持ユニット12に待機させる際、コントローラ29はキャリッジ21を等速移動させ、センサパターン検出部33は、ヘッド位置検知センサ42の出力とリニアスケール44のパルスを検出する。
図17(a)〜(c)は、センサパターン検出部33が生成するセンサ出力パターンを時系列に説明する図の一例である。図17(a)〜(c)の左図はインクヘッド11の位置とヘッド位置検知センサ42の位置の関係を、右図はその時のヘッド位置検知センサ42のセンサ出力を示す。
図17では、距離が近いほどヘッド位置検知センサ42の出力する値が高くなる場合を示す。図示するように、インクヘッド11の数だけ、ヘッド位置検知センサ42の出力もピークを示す。出力が完全なパルス状にならないのは、インクヘッド11とキャリッジ21の境界の影響を受けるためである。したがって、実施例1と異なり、遮蔽していない(透過する)場合と、遮蔽する場合の2値信号とはなっていない。
図17(a)に示すように、キャリッジ21が維持ユニット12に到達し、1つめのインクヘッド11aがヘッド位置検知センサ42の真上を通過すると、ヘッド位置検知センサ42の出力も1つめのピークを示す。
次に、図17(b)のように、3つめまでのインクヘッド11cがヘッド位置検知センサ42の真上を通過すると、ヘッド位置検知センサ42の出力も3つのピークを示す。また、最後の5つめのインクヘッド11eがヘッド位置検知センサ42の真上を通過すると、ヘッド位置検知センサ42の出力も5つのピークを示す。なお、本実施例ではインクヘッド11の間隔が等間隔でいないので、ヘッド位置検知センサ42の出力のピークも等間隔になっていない。
したがって、5つのインクヘッド11がある場合、計5つのピークが得られる。センサパターン検出部33は、時間又は距離(リニアスケール44のパルス)に対しセンサ出力をプロットして、センサ出力パターンを生成する。
図18は、最終的に検出されたパルスとヘッド位置検知センサ42の出力の関係の一例を示す。センサパターン比較部34は、ヘッド位置検知センサ42により取得されたセンサ出力パターンと、予めROM27に記憶している標準パターン32を比較して、一致するか否かを判定する。本実施例においても、パターンマッチングやピークと谷部それぞれのパルス数を標準パターン32と比較することで、一致するか否かを判定できる。なお、本実施例では、インクヘッド11とキャリッジ21の境界が明確でないおそれがあるので、一致するか否かは実施例1〜4よりも緩やかに判定される。
一致した場合、起点位置決定部35は、最後(5番目の)インクヘッド11eの端部が検出された際のキャリッジ位置を起点位置に決定する。起点位置から距離Aだけ移動した位置がキャリッジ基準位置である。
ところで、ヘッド位置検知センサ42の出力値に傾きがあるとインクヘッド11の端部を検出しにくい。そこで、閾値を設定し、ヘッド位置検知センサ42の出力が閾値を下回った箇所のリニアスケール44のパルスからキャリッジ21の起点位置を決定する。
閾値はインクヘッド11を検知していない状態の出力値と検知している状態の出力値の中間値、又は、ヘッド位置検知センサ42の出力値が検知定常状態(ピーク後にほぼ一定となった状態)になった時点での出力値である。後者の検知定常状態の出力値は1つめのピークが得られれば決定できるので、5つめのピークでは、例えばそれまでの4つのピークの平均などから決定することができる。図18では、検知していない状態の出力値と検知している状態の出力値の中間値とした。したがって、起点位置決定部35は、5つめのピークが閾値以下となった時のパルス数から起点位置を決定する。
キャリッジ基準位置決定部36は、起点位置から予め定められた距離Aだけ移動した位置を、維持ユニット12におけるキャリッジ基準位置に決定する。このキャリッジ基準位置でノズル面のキャッピング等の維持作業が行われる。
なお、本実施例において、インクジェット記録装置100がキャリッジ基準位置までキャリッジ21を移動させる手順は図9と同様であるのでフローチャート図は省略する。
以上説明したように、本実施例のインクジェット記録装置100は、維持ユニット12に固定されているセンサで直接インクヘッド11の位置検出を行なうので、維持ユニット12内のキャップやワイパーとインクヘッド11との相対位置精度を向上することができる。
なお、本実施例では、センサ出力パターンからキャリッジ21の高さ情報が得られている。例えば、ピークの山部はノズル面の高さに相当し、谷部はキャリッジ21の高さに相当するので、ピークの谷部の出力値からキャリッジ高さを求めることができ、実施例2のようにテーパリブ41を設ける必要がない。
実施例5では、5つめのピークが閾値以下となった時のパルス数からそのまま起点位置を決定したが、本実施例では起点位置を補正してより正確な起点位置を算出するインクジェット記録装置100について説明する。
インクヘッド11間の実寸の距離は予め既知とすることができる。例えば、図16に示したように、1つめの(一番右の)インクヘッド11aから次のインクヘッド11bまでの間隔を例えばXとすればXは実測しておくことができる。本実施例では、3番目のインクヘッド11cから4番目のインクヘッド11dの間隔のみをYとし、他は全て間隔Xであるとする。この間隔X,Yは予めROM27に記憶されている。
センサ出力パターンのピークの間隔もX又はYとなるはずなので、ピーク間の間隔からX又はYを減じた値は、ヘッド位置検知センサ42の誤差としてよい。したがって、この誤差を補正することで起点位置の精度を向上できる。
具体的な補正を図19に基づき説明する。図19に示すように、ピーク間の間隔をそれぞれL1〜L4とすると、
L1'=L1−X
L2'=L2−X
L4'=L4−Y
L3'=L3−X
のそれぞれが誤差である。いずれか1つを用いてもよいが、L1'〜L4'の平均を用いることで平均的な誤差を取得できるので、L1'〜L4'の平均Eを誤差とする。
基準位置決定手段は、起点位置を平均Eで補正する。平均Eが正の場合は、センサ出力パターンから得たピーク間の距離L1〜L4が実寸より大きいことになるので、キャリッジ21の基準位置を左側に補正し、負の場合は、キャリッジ21の基準位置を右側に補正する。
図20は、本実施例のインクジェット記録装置100がキャリッジ基準位置までキャリッジ21を移動させる手順のフローチャート図の一例である。図20の手順は、ステップS75以外は実施例5と同様である。
すなわち、起点位置を決定した後(S70)、起点位置決定手段は、ピーク間の間隔L1〜L4と実寸の間隔X、YからL1'〜L4'の平均Eを算出し、起点位置を補正する(S75)。
キャリッジ基準位置決定手段は、補正後の起点位置から距離Aだけ移動した位置を、キャリッジ基準位置に決定する(S80)。
本実施例のインクジェット記録装置100では、起点位置を実寸の間隔X、Yで補正することで、より正確なキャリッジ基準位置を決定することができる。
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、複数のインクヘッドの位置に対応して形成されたセンサ出力パターンが一致した場合に、インクヘッド11の端面を検出するので、残紙やユーザの指によりインクヘッド11を誤検出するおそれがない。このため、インクヘッド11の端面を正確に検出でき、維持ユニット12におけるインクヘッド11の位置を精度よく決定できる。
インクジェット記録装置の主要部の構造の斜視図の一例である。
キャリッジと維持ユニットの接合部分の断面図の一例である。
キャリッジと維持ユニットの接合部分の正面図の一例である。
インクジェット記録装置のハードウェア構成図の一例である。
透過型光学センサを模式的に説明する図の一例である。
インクジェット記録装置の機能ブロック図の一例である(実施例1)。
センサ出力パターンを時系列に説明する図の一例である。
センサ出力パターンの一例を示す図である。
インクジェット記録装置がキャリッジ基準位置までキャリッジを移動させる手順を示すフローチャート図の一例である(実施例1)。
透過型光学センサを模式的に説明する図の一例である(実施例2)。
テーパリブと光路の遮蔽を説明する図の一例である。
センサ出力パターンの一例を示す図である(実施例2)。
インクジェット記録装置がキャリッジ基準位置までキャリッジを移動させ、キャリッジ高さを検出する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
インクジェット記録装置がキャリッジ基準位置までキャリッジを移動させる手順を示すフローチャート図の一例である(実施例3)。
インクヘッドと透過型光学センサの斜視図の一例である(実施例4)。
ヘッド位置検知センサによるインクヘッドの検出を模式的に説明する図の一例である(実施例5)。
センサパターン検出部が生成するセンサ出力パターンを時系列に説明する図の一例である(実施例5)。
最終的に検出されたパルスとヘッド位置検知センサの出力の関係の一例を示す図である(実施例5)。
起点位置の補正を説明する図の一例である。
インクジェット記録装置がキャリッジ基準位置までキャリッジを移動させる手順を示すフローチャート図の一例である(実施例6)。
従来のインクジェット記録装置の構造の一例を示す図である。
符号の説明
11 インクヘッド
12 維持ユニット
13 ガイドロッド
16 ガイドレール
17 用紙搬送ベルト
18 主走査モータ
19 副走査モータ
21 キャリッジ
23 透過型光学センサ
41 テーパリブ
42 ヘッド位置検知センサ
100 インクジェット記録装置