JP2010058073A - 親水化ポリエーテルスルホン分離膜及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】親水化剤と末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンを含有する、親水化剤の溶出が少なく、親水性を長期にわたって有する低ファウリング性の親水化ポリエーテルスルホン分離膜とその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリエーテルスルホンと親水化剤とを含有する親水化ポリエーテルスルホン分離膜であって、前記ポリエーテルスルホンの数平均分子量が少なくとも25,000であり、末端にヒドロキシフェニル基を有し、前記ポリエーテルスルホンの末端基全体における前記ヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%である親水化ポリエーテルスルホン分離膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンと親水化剤をブレンドすることによって、親水化剤の溶出が少なく、親水性を長期にわたって有する低ファウリング性の親水化ポリエーテルスルホン分離膜に関する。
近年、膜分離技術は、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、ガス分離膜、浸透気化膜などの研究を通じ、幅広く産業界に浸透してきている。特に、浄水処理分野や食品工業分野では、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を適宜添加し、酸・アルカリ・塩素・界面活性剤などによる膜の薬品洗浄も頻繁に実施される。食品工業分野での洗浄の場合、アルカリ洗浄としては、例えば、水酸化ナトリウムを主成分とし有機キレート剤、塩類などを含んだ薬液、また、酸洗浄としてはリン酸を主成分とした薬液が使用されている。さらに、Membrane Filtration Handbook(2001)(Osmonics,Inc、p84)によると、洗浄は45℃〜70℃で行うと記載されている。このため、高耐薬品性あるいは高耐熱性を備えた分離膜が必要であり、耐薬品性や耐熱性に優れたポリエーテルスルホンを素材とした分離膜が既に実用化されている。
しかしながら、ポリエーテルスルホンのような疎水性ポリマーからなる多孔質膜を浄水処理分野や食品工業分野に用いる場合、透水性が充分ではなく、疎水性の高い油、タンパク質等の有機系分子との親和性が高いため、これらが膜に堆積あるいは吸着しやすいという問題がある。このような問題点を克服するために、ポリエーテルスルホン膜を親水化する方法が種々提案されている。
例えば、ポリスルホン自体に親水基を導入して親水化ポリスルホン膜を得る方法は、特許文献1、2に開示され、ポリスルホンの主鎖にスルホン酸基を導入している。しかしながら、ポリスルホンの主鎖にスルホン酸基のような極性の高い親水基を導入した場合、ポリスルホンが有する耐熱性などの物性が低下するだけでなく、対荷電を有する物質を強く吸着してしまうために長期間安定して分離操作を継続し難い。
また、親水化剤をポリスルホンにブレンドして親水化ポリスルホン膜を得る方法としては、例えば、特許文献3では、セルロース誘導体を、特許文献4では、ポリビニルピロリドンを、それぞれポリスルホンにブレンドして分離膜を得る方法が開示されている。ここで、親水性を付与するためには、ある程度の量の親水化剤をブレンドする必要があるが、ポリスルホンのような分子凝集力が大きいポリマーと均一なブレンドを行うことは困難であった。このため、得られる分離膜には不均質な構造が現れ易く、この傾向は親水化剤のブレンド率を高める程顕著になる。また、60〜100℃の高温下では徐々に親水化剤とポリスルホン系ポリマーとの絡み合いが解け始めるため、親水化剤が溶出してしまうという問題がある。それによって分離膜の親水性が低下し、透水性が低下する問題があった。
特公昭53−13679号公報 特開昭59−196322号公報 特開昭57−50507号公報 特開2007−289886号公報
本発明は、従来の技術の上述した問題点に鑑み、親水化剤と末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンを含有する、親水化剤の溶出が少なく、親水性を長期にわたって有する低ファウリング性の親水化ポリエーテルスルホン分離膜とその製造方法を課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、下記(1)〜(4)の構成によって達成される。
(1)ポリエーテルスルホンと親水化剤とを含有する親水化ポリエーテルスルホン分離膜であって、前記ポリエーテルスルホンの数平均分子量が少なくとも25,000であり、末端にヒドロキシフェニル基を有し、前記ポリエーテルスルホンの末端基全体における前記ヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%である親水化ポリエーテルスルホン分離膜。
(2)前記親水化剤がポリプロピレンオキサイドセグメントおよびポリエチレンオキサイドセグメントを有するブロック共重合体である(1)記載の親水化ポリエーテルスルホン分離膜。
(3)前記ポリプロピレンオキサイドセグメントの繰り返し単位と前記ポリエチレンオキサイドセグメントの繰り返し単位とのモル比が10:90〜90:10である(2)記載の親水化ポリエーテルスルホン分離膜。
(4)末端基全体におけるヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%であるポリエーテルスルホンを10重量%以上50重量%以下、親水化剤を1重量%以上30重量%以下、溶媒を20重量%以上89重量%以下で含有する製膜原液を用いる親水化ポリエーテルスルホン分離膜の製造方法。
本発明によれば、耐熱性・化学的耐久性に優れ、さらには60〜100℃の高温下においても親水化剤の溶出が少なく、親水性を長期にわたって有する親水化ポリエーテルスルホン製の分離膜が提供される。
本発明は、末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンと、親水化剤を含有してなるポリエーテルスルホン分離膜であることを特徴とする。
ポリエーテルスルホンとは、一般的に下記一般式(a−1)または一般式(a−2)で示される構造を繰り返し単位として有する疎水性ポリマーであり、その末端は塩素置換された状態である。ポリエーテルスルホンを分離膜として使用した場合、耐湿熱性において優れた特性を示すものの、透水速度といった濾過性能や取扱い性において不十分である。
Figure 2010058073
一方、本発明に用いられるポリエーテルスルホンとは、上記一般式(a−1)または一般式(a−2)で示される構造を繰り返し単位として有するが、数平均分子量が少なくとも25,000であり、末端にヒドロキシフェニル基を有し、ポリエーテルスルホンの末端基全体におけるそのヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%であることを特徴とする。以降、本発明に係る、末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンを親水化ポリエーテルスルホンと呼び、末端が特に制限されないもの、すなわち、本発明に係る親水化ポリエーテルスルホンとは限定されない一般的なポリエーテルスルホンを指す場合には、単にポリエーテルスルホンと呼ぶこととする。
ポリエーテルスルホンに親水化剤を含有させて分離膜を成形した場合、親水性である親水化剤と疎水性であるポリエーテルスルホンとの間に十分な相互作用がなく、実際に膜を使用すると親水化剤とポリエーテルスルホンの絡み合いが徐々に解けてしまうので親水化剤が分離膜から溶出してしまう。一方、本発明の末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンであれば、親水化ポリエーテルスルホンの末端に存在するヒドロキシフェニル基と親水化剤の相互作用が強いため、親水化剤が親水化ポリエーテルスルホンと強固に結びつく。また、末端にヒドロキシフェニル基を有するので、ポリエーテルスルホンに比べて親水性が高く、親水化剤を含有させて分離膜として成形した場合、ポリエーテルスルホンで成形した分離膜と比べて親水性が高くなる。したがって、本発明の分離膜は親水化剤の溶出が少なく、親水性を長期間にわたって維持できる。
ここで、親水化ポリエーテルスルホンの末端基全体におけるそのヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%の時には、両末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンが、親水化ポリエーテルスルホン全体の少なくとも20モル%を占めるようになる。このような両末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンが存在することにより、上述した効果が飛躍的に高められた結果、得られる分離膜の諸性能を高いレベルでバランスできるようになったと考えられる。
また、本発明の分離膜の物理的耐久性や化学的耐久性を高レベルでバランスさせるためには、親水化ポリエーテルスルホンの数平均分子量は25,000以上である必要があり、好ましくは30,000以上、さらに好ましくは35,000以上である。なお、数平均分子量の上限値については特に制限はないが、数平均分子量が1,000,000を超える親水化ポリエーテルスルホンを用いて製膜を行うと、製膜原液の粘度が高くなり、製膜が困難となる可能性がある。
すなわち、親水化ポリエーテルスルホンの末端基全体におけるそのヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%であり、親水化ポリエーテルスルホンの数平均分子量が少なくとも25,000であるならば、高い物理的耐久性や化学的耐久性を併せ有し、かつ親水化剤の溶出が少なく、親水性を長期間にわたって維持できる分離膜を得ることができる。
本発明に係る親水化ポリエーテルスルホンの末端基組成は、例えば、重水素化DMSO溶媒中、400MHz H−NMRを用い、積算回数100回により、7.7ppmにクロル置換された芳香族炭素に隣接する該芳香環上の2つのプロトン(Cl)と、6.9ppmにヒドロキシル基で置換された芳香族炭素に隣接する該芳香環上の2つのプロトン(OH)が高分解能で観測でき、H−NMRの面積比は、そのモル数を反映している。よって、ヒドロキシフェニル末端基、クロロフェニル末端基組成(モル%)は、下記式により算出することができる。
[ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)]=
OHのピーク面積]/([OHのピーク面積]+[Clのピーク面積])×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
Clのピーク面積]/([OHのピーク面積]+[Clのピーク面積])×100
すなわち、ヒドロキシフェニル末端基とクロロフェニル末端基が1:1で存在する場合は、ヒドロキシフェニル末端基/クロロフェニル末端基組成は、50/50モル%で表すことができる。
本発明に係る親水化ポリエーテルスルホンの数平均分子量が大きいほど、得られる親水化ポリエーテルスルホン分離膜の物理的耐久性や耐熱性・化学的耐久性が大きくなる傾向がある。本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。GPC測定は、例えば、検出器に株式会社島津製作所示差屈折計RID−10Aを用い、ポンプにLC−10ADvpを用い、カラムは昭和電工株式会社製GPC用カラム、Shodex(登録商標) KD−806Mを2本接続して行うことができる。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶離液にジメチルホルムアミド(DMF)を用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入する方法が挙げられる。
ここで、本発明に係る親水化ポリエーテルスルホンを得るために好適な方法、すなわち末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンを高含有率で得る方法について説明する。
一般に、芳香族ポリエーテルスルホンは、上述したように、高分子量化した場合には、ポリマー末端の一方はヒドロキシフェニル末端基、もう片一方がハロゲノフェニル末端基となる。そこで、ヒドロキシフェニル末端基量を高めるために、モノマーのモルバランスをずらした場合には、ポリマー分子量が著しく低下することが知られている。このため、ヒドロキシフェニル基を60〜100モル%有し、かつ、数平均分子量が少なくとも25,000程度と高分子量の親水化ポリエーテルスルホンは得られていなかった。従って、ポリマー分子量が著しく小さいために、分離膜に用いた場合に耐ファウリング性と耐熱性、化学的強度(耐薬品性)及び物理的強度を両立することができていなかった。
そこで、本発明者らは、高分子量を維持しつつ、両末端にヒドロキシフェニル基を有する芳香族ポリエーテルスルホンの存在割合を高める方法を鋭意検討し、芳香族ポリエーテルスルホンに60〜100モル%のヒドロキシフェニル末端を導入するという後述する方法を見出した。この方法によって、数平均分子量が少なくとも25,000程度の高分子量を有し、かつ、少なくとも20モル%が両末端にヒドロキシフェニル基を有する芳香族ポリエーテルスルホンを得ることができるため、ここに通常の方法でポリエーテル化合物をブロック共重合させ、本発明の親水化ポリエーテルスルホンを得ることができた。
本発明に係る親水化ポリエーテルスルホンを得るために好適な、高分子量を維持しつつ、両末端にヒドロキシフェニル基を有する芳香族ポリエーテルスルホンを高含有率で得る方法について説明する。
末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンを高含有率で得るには、通常公知のポリエーテルスルホンの製造方法、すなわち二価フェノール化合物に対し、ジハロゲノジフェニル化合物の重縮合により直接製造する方法、重縮合の後半で末端封鎖剤を添加して製造する方法とは異なり、高分子量のポリエーテルスルホン(A)と、二価フェノール化合物を非プロトン性極性溶媒中で加熱することによって製造する。従来の製造方法では、二価フェノール化合物とジハロゲノジフェニル化合物を原料モノマーとするのに対し、ジハロゲノジフェニル化合物を反応に使用しない点で大きく異なる。
次に、ポリエーテルスルホン(A)から、末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンを高含有率で得る方法を明確にするため、反応スキームを下記式(b)に示した。
Figure 2010058073
(式中のXは、Cl、Fを表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、CHを表し、nは1以上の整数を表す。)
まず目的とする末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンよりも、相対的に分子量の高いポリエーテルスルホン(A)を上述のような方法であらかじめ重合して製造する。ここでは、下記一般式(c)で示されるジハロゲノジフェニル化合物と下記一般式(d−1)で示される二価フェノール化合物(より、従来公知の方法により重合した後、回収し、その後必要に応じて、洗浄、乾燥したものを使用することができる。重合後の反応溶液には、残存モノマー、溶媒、アルカリ類が残存していることから、本発明で使用するポリエーテルスルホン(A)は、回収後、洗浄・乾燥したものが特に好ましい。
Figure 2010058073
(式中のXは、Cl、Fを表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。)
Figure 2010058073
(式中のRは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基を表し、mは0〜3の整数を表す。Yは直接結合、酸素、硫黄、SO、CO、C(CH2、CH(CH)、CHを表す)。
ポリエーテルスルホン(A)を中間原料として、二価フェノール化合物(ここでは上記一般式(d−1)を例示)と非プロトン性極性溶媒中で加熱することにより、二価フェノール化合物によるポリエーテルスルホン(A)のポリマー主鎖への求核置換反応により(式中矢印αの位置)、末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンを誘導するものである。
また、本発明に係る反応では、前記ポリマー主鎖への求核置換反応のほかに、ハロゲノフェニル末端と二価フェノール化合物の求核置換反応によっても(式中矢印βの位置)、ヒドロキシフェニル末端基が生成する。ポリマー主鎖モル数に対し、ハロゲノフェニル末端は、ポリマー末端にのみ極わずかに存在するため、ポリマー主鎖への求核置換反応が確率的に優勢となるが、二価フェノール化合物の添加量や、アルカリ金属塩の添加量、反応温度、反応時間を調整することにより、ポリマー主鎖への求核置換反応だけでなく(αの反応)、ハロゲノフェニル末端への求核置換反応(βの反応)も同時に進行させることが可能となり、ヒドロキシフェニル末端基量の高い親水化ポリエーテルスルホンを誘導することができる。
一方、公知の重縮合の場合、二価フェノール化合物とジハロゲノジフェニル化合物の仕込みモル比(r)、その時得られるポリマー分子量、ポリマー末端基組成は、高分子化学序論(第2版)(化学同人発行、p206)などに記載されているように、
r=ジハロゲノジフェニル化合物の仕込みモル数(a)/二価フェノール化合物の仕込みモル数(b)(ここで過剰成分を分母とし、a/b=rと置く)、反応率をpと置くと、その時得られるポリマーの数平均重合度(Pn)は、
Pn=(1+r)/[2r(1−p)+(1−r)]と表される。
反応率が100%と仮定すると(p=1)、
Pn=(1+r)/(1−r)
反応率が100%と仮定したこの式から、二価フェノール化合物が1%過剰に存在する場合、その数平均重合度は201となる。また末端基比率は、各モノマー成分の仕込みモル比に準じ、[ハロゲノフェニル末端]/[ヒドロキシフェニル末端]=r=1.0/1.01となり、ヒドロキシフェニル末端基組成は50.2モル%程度となる(なお反応率が100%未満の場合は、さらに低い値になる)。
一方、得られるポリマー中のヒドロキシフェニル末端を過剰に生成させるために、二価フェノール化合物を10%過剰に仕込む場合(r=1.0/1.1)、その数平均重合度は21、数平均分子量は9,800、ヒドロキシフェニル末端基組成は52.4モル%程度、さらに二価フェノール化合物を50%過剰に仕込んだ場合(r=1.0/1.5)、生成するヒドロキシフェニル末端基組成は60モル%程度であるが、数平均重合度はわずかに5で数平均分子量は2,400である。このようなヒドロキシフェニル基末端組成と数平均分子量を有するポリエーテルスルホンでは、分離膜そのものを作製することが困難であり、ましてや、上述したような物理的耐久性や化学的耐久性が高レベルでバランスされ、さらに親水性を長期にわたって有する低ファウリング性の分離膜を作製するのは困難である。
本発明者らは、上記式(b)の反応により効率良く、かつ定量的にヒドロキシフェニル末端を導入できることを見出し、さらに本反応によれば、高収率で目的の末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンが得られ、さらに好ましいことに、本反応により高濃度のヒドロキシフェニル末端基を有し、従来の方法に比べ高分子量であり、さらに後処理工程が極めて単純化でき、かつ純度の高いポリエーテルスルホンが得られることを見出した。
本発明で使用される二価フェノール化合物は、上記一般式(d−1)、および/または(d−2)で表されるものである。
本発明において、中間原料として使用されるポリエーテルスルホン(A)とは、上記一般式(a−1)および/または一般式(a−2)で表される構造を繰り返し単位として有するポリマーである。
このようなポリエーテルスルホン(A)は、通常公知の方法により製造することができる。
例えば、アルカリ金属化合物の存在下、有機溶媒中、上記一般式(c)で表されるジハロゲノジフェニル化合物と上記一般式(d−1)および/または(d−2)で表される二価フェノール化合物とを重縮合させ、あるいはジハロゲノジフェニル化合物と、あらかじめ調製した一般式(d−1)および/または(d−2)で表される二価フェノール化合物のアルカリ金属塩とを重縮合させることにより製造することができる。
二価フェノール化合物に対し、ジハロゲノジフェニル化合物は、通常等モル使用される。分子量や末端基組成を微調整するために、二価フェノール化合物を等モルからわずかに過剰量もしくは過小量で使用することもできる。しかしながら、モルバランスが大きく崩れると分子量の低下を招く恐れがある。また、分子量や末端基組成を調整するために、少量のモノハロゲノジフェニル化合物あるいは一価フェノール化合物を重合溶液中に添加することもできる。
重縮合の反応温度は、使用する溶媒の特性に依存するが、通常140〜340℃で実施するのが好ましい。340℃以上より高温で重縮合すると、生成ポリマーの分解反応が進行するため、高分子量体や高純度のポリエーテルスルホン(A)が得られなくなる傾向があり、140℃より低い温度で重縮合すると、高分子量体が得られない傾向にある。
反応時間は、反応原料成分の種類、重合反応の形式、反応温度により大幅に変化するが、通常は10分〜100時間の範囲であり、好ましくは30分〜24時間の範囲で実施される。反応雰囲気としては、酸素が存在しないことが好ましく、窒素もしくはその他の不活性ガス中で行うことが好ましい。二価フェノール化合物のアルカリ金属塩は酸素の存在下で加熱すると酸化されやすく、目的とする重合反応が妨げられ、高分子量化が困難になるほか、重合体の着色原因ともなる。
また重縮合反応は、重合終了時に、適当な末端封鎖剤、例えば、メチルクロライド、t−ブチルクロライド、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンのような単官能クロライド、多官能クロライドを、反応溶液に重合体の末端封鎖剤として添加し、例えば90〜150℃で反応させることによって末端封鎖することができる。
ここで、使用される有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドンなどのピペリドン系溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの2−イミダゾリノン系溶媒、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホンなどのジフェニル化合物、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、スルホランなどのスルホラン系溶媒、これら2種以上の混合物などが挙げられる。
また、重合時に発生する水を分離する目的で、水共沸溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒を使用することもできる。
また、アルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。なかでも炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩が好ましく、とりわけ無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムなどの無水アルカリ金属塩が好ましい。
重縮合により得られた粗ポリエーテルスルホン(A)は、反応溶液中に含まれているアルカリ金属化合物を濾過あるいは遠心分離によって分離した後、あるいは濾過や遠心分離をせずに、反応溶液にポリエーテルスルホン(A)の貧溶媒を加えて、あるいは貧溶媒に反応溶液を加えて、析出固体として分離することができる。ポリエーテルスルホン(A)の貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどのニトリル類、水などを挙げることができる。またこれらの貧溶媒を2種以上混合して用いることができる。また上記の貧溶媒には、ポリマーが析出可能な範囲で、前記の重合反応溶媒などのポリマーの良溶媒が含有されていても良い。
析出固体は貧溶媒で洗浄後、乾燥させることによって、ポリエーテルスルホン(A)の粉末を得ることができる。
本発明で使用されるポリエーテルスルホン(A)は、前記の方法により製造することが可能であるが、最終的に得られる末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンを効率よく、高純度で製造するためには、ポリエーテルスルホン(A)をDMF中、25℃、1g/dlで測定した還元粘度(JIS K7367−1(2002)に記載の方法)は0.35以上が好ましく、さらに好ましくは0.4以上、より好ましくは0.45以上のものである。
本還元粘度をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてDMF、標準ポリスチレンより換算した数平均分子量(Mn)に置き換えると、その数平均分子量としては、47,000以上のものが好ましく、さらに好ましくは54,000以上、より好ましくは61,000以上である。
ポリエーテルスルホン(A)の還元粘度が低い(数平均分子量が低い)と、最終的に得られる末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンの分子量が極めて小さくなり、低分子量側のポリマーやオリゴマーが貧溶媒に溶解、あるいは膨潤したりし、その結果、ポリマーの回収率や洗浄効率が低下する傾向が認められる。さらに洗浄効率の低下により、ポリマー中にアルカリ金属化合物などの不純物量が増加するという傾向が認められる。
また、低分子量化に伴いガラス転移温度が低下し、ポリエーテルスルホンの本来の特徴である耐熱性が低下する場合がある。
また、使用するポリエーテルスルホン(A)の末端基組成は、ポリエーテルスルホン(A)の製造性の観点や、反応性の末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンを、効率良く製造するためには、ヒドロキシフェニル末端基よりもクロロフェニル末端が相対的に多いポリエーテルスルホン(A)を使用することが好ましい。より具体的には、ポリエーテルスルホン(A)を原料とし、二価フェノール化合物との反応により、ヒドロキシフェニル末端を導入する本発明の方法においては、ヒドロキシフェニル末端導入効率の面、反応後の後処理効率の面から、ポリエーテルスルホン(A)中のヒドロキシフェニル末端基組成は、0〜50モル%が好ましく、より好ましくは0〜30モル%、さらに好ましくは0〜10モル%である。
このようなポリエーテルスルホン(A)としては、前記のごとく公知の方法により製造することが可能であるが、前記の方法により製造されている市販品のポリエーテルスルホン(例えばBASF社製 “ULTRASON(登録商標) E”シリーズ、住友化学社製 “スミカエクセル(登録商標)”シリーズ)を使用することができる。これらの中で、好ましくはスミカエクセル(登録商標)3600P、4100P、4800P、5003P、5200P、より好ましくはスミカエクセル(登録商標)3600P、4100P、4800P相当品である。
また、二価フェノール化合物としては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジフェニルスルホン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのジヒドロキシフェニルエーテル類、およびこれらの構造異性体が挙げられるが、これらの中で、入手性や実用性、価格面から、ハイドロキノン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、4,4’−エチリデンビスフェノール(ビスフェノール−E)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが好ましく、またこれら二価フェノール化合物の構造異性体を使用することもできるが、より好ましくは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、4,4’−エチリデンビスフェノール(ビスフェノール−E)であり、特に好ましくは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノール−S)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)である。
本反応で使用する二価フェノール化合物の添加量は、最終的に得ようとする末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンの目標とする末端基量や目標とする分子量によるが、むしろ、これらは、二価フェノール化合物の添加量により制御することが可能となる。本反応を定量的に進行させるためには、ポリエーテルスルホン(A)1モルに対し、0.001〜2.0倍モルが好ましく、より好ましくは0.01〜1.5、さらに好ましくは0.01〜1.0倍モル、特に好ましくは0.01〜0.5倍モルである。
なお、ここで、ポリエーテルスルホン(A)のモル数とは、本発明の反応で使用するポリエーテルスルホン(A)の添加量/ポリエーテルスルホン(A)の繰り返し単位の分子量(前記一般式(a−1)、(a−2)で表される繰り返し単位の分子量)より算出されるモル数を意味する。
二価フェノール化合物の添加量が2.0モルを超えると、得られる末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンの分子量が小さくなりすぎ、ポリマーの回収・洗浄が困難となるだけでなく、酸性を示す未反応の二価フェノール化合物や二価フェノール化合物のアルカリ金属塩、あるいはアルカリ金属塩そのものがポリマー中に残存する傾向、ポリマーが着色する傾向がある。特にヒドロキシフェニル末端基導入量の増加に伴い、ポリマーの溶解性や、アルカリ金属塩との相互作用が増加するため、洗浄・回収・分離が困難となる傾向がある。一方、0.001未満では、ヒドロキシフェニル末端基を定量的に導入することが困難となる。
本発明に係る前記式(b)の反応を定量的に進行させるため、本反応の有機溶媒として、非プロトン性極性溶媒を使用することが好ましい。具体的には、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチル−2−ピペリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびこれら2種以上の混合物などが挙げられるが、特に好ましくは、ジメチルスルホキシド、DMF、NMPが挙げられる。
なお本発明では非プロトン性極性溶媒中で本反応を実施することが重要であるが、場合によっては、非プロトン性極性溶媒以外の有機溶媒を併用することもできる。特に、原料中に含まれる微量の水分、反応中に外部から入ってくる水分、使用するアルカリ金属塩の結合水、アルカリ金属塩水溶液中、アルカリ金属塩調製時の水分などは、本発明の目的の反応、すなわち中間原料であるポリエーテルスルホン(A)と二価フェノール化合物の求核置換反応以外に、水による加水分解が進行することがある。反応系内の水分は、本発明の反応を阻害することがあることから、反応系内の水分を除去する目的で、水と共沸する溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレンから選ばれる1種または2種以上の混合物などの水共沸系溶媒を使用することもできる。
本反応に使用される溶媒量は、ポリエーテルスルホン(A)、二価フェノール化合物を溶解させる量であれば、特に制限はないが、全モノマーの重量に対して、0.5〜20倍重量の範囲が好ましい。さらに好ましくは2〜10倍重量である。
0.5倍重量未満では原料となるポリエーテルスルホン(A)、二価フェノール化合物が溶解せず、また反応時の攪拌等の操作が困難となり、均一な反応が困難となる。また溶媒量が20倍重量を超えると、ポリマー濃度や二価フェノール化合物の濃度が下がり、反応速度が遅くなり、再沈殿物生成、洗浄、回収が困難になる傾向が認められることに加え、何よりも溶媒量の増加により、生産量の低下、溶媒回収コストに影響する。
水共沸溶媒の使用量は、系内の水分を除去可能な量であれば特に制限はないが、全モノマーの重量に対して、0.01〜10倍重量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.02〜5倍重量である。
また本発明に係る反応では、反応系にアルカリ金属塩を添加すると、さらに反応速度を向上させることができる。
本発明で使用するアルカリ金属塩におけるアルカリ金属の種類としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられるが、特に好ましいのはカリウム、ナトリウムである。
使用されるアルカリ金属塩としては、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が挙げられ、特に水酸化物、炭酸塩がこのましい。具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムなどを使用することができ、なかでも無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムなどを好ましく使用することができる。
アルカリ金属塩の添加量は、使用する二価フェノール化合物1モルに対し、0.1〜3倍モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1倍モルである。
アルカリ金属塩の添加量が二価フェノール化合物1モルに対し、3倍モルを超えると、得られるヒドロキシフェニル末端基を有する親水化ポリエーテルスルホンの分子量が小さくなりすぎ、ポリマーの回収・洗浄が困難となるだけでなく、酸性の二価フェノール化合物や二価フェノール化合物の金属塩、さらにはアルカリ金属塩自身がポリマー中に残存し、ポリマーが着色する傾向がある。また得られた親水化ポリエーテルスルホンの分子量が小さすぎると、ポリエーテルスルホン本来の耐熱性、機械特性などが損なわれ、ポリエーテルスルホン本来の効果が付与できない傾向がある。一方、0.5倍モル未満では、反応性のヒドロキシフェニル末端基を導入することが困難となる。
加熱温度は、使用する溶媒種、溶媒の沸点、反応溶液の濃度、二価フェノール化合物の添加量、アルカリ金属塩の添加量に依存するが、通常100〜250℃で実施するのが好ましく、さらに好ましくは100〜200℃である。250℃を超える温度で反応すると、二価フェノール化合物のアルカリ金属塩の熱分解、反応系内で生成したヒドロキシフェニル末端基を有する親水化ポリエーテルスルホンそのものの熱分解が進行するため、分子量の制御やヒドロキシフェニル末端基導入量の制御が困難となり、最終的に得られる末端にヒドロキシフェニル基を有する親水化ポリエーテルスルホンの熱安定性・滞留安定性の低下や、着色といった傾向が認められるようになる。一方、100℃より低い温度で本反応を行うと、反応が非常に遅くなるという問題がある。
反応に要する時間は、二価フェノール化合物の種類・添加量、アルカリ金属塩の種類・添加量、反応濃度、反応温度により大幅に変化するが、通常は10分〜10時間の範囲であり、好ましくは30分〜5時間の範囲で実施される。反応雰囲気としては、酸素が存在しないことが好ましく、窒素もしくはその他の不活性ガス中で行うとよい結果が得られる。二価フェノール化合物のアルカリ金属塩は酸素の存在下で加熱すると酸化されやすく、目的とする反応が妨げられ、その結果、分子量制御、ヒドロキシフェニル末端基導入量の制御が困難となるほか、重合体の着色原因ともなる。
本発明の方法により得られた粗ヒドロキシフェニル末端基を有する親水化ポリエーテルスルホンは、反応溶液中に含まれているアルカリ金属塩を濾過あるいは遠心分離によって分離した後、あるいは濾過や遠心分離をせずに、反応溶液に貧溶媒を加えて、あるいは貧溶媒に反応溶液を加えて、析出固体として分離することができる。ヒドロキシフェニル末端基を有する親水化ポリエーテルスルホンの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどのニトリル類、水などを挙げることができる。またこれらの貧溶媒を2種以上混合して用いることができる。また上記の貧溶媒には、ポリマーが析出可能な範囲で、前記の重合反応溶媒などのポリマーの良溶媒が含有されていてもよい。析出固体を貧溶媒で洗浄後、乾燥させることによって、ヒドロキシフェニル末端基を有する親水化ポリエーテルスルホンの粉末を得ることができる。
本発明に係る親水化ポリエーテルスルホンを得るためには、すなわち、末端にヒドロキシフェニル基を有するポリエーテルスルホンを高含有率で得るためには、親水化ポリエーテルスルホンの末端基全体に対して60〜100モル%のヒドロキシフェニル末端を有するように上記反応を制御すれば良く、より好ましくは70〜100モル%であり、さらには80〜100モル%が好ましく、100モル%とすることが最上である。例えば、80モル%のヒドロキシフェニル末端を有するようにした場合、両末端にヒドロキシフェニル末端基を有するポリエーテルスルホンが、ヒドロキシフェニル末端基を有するポリエーテルスルホン全体の少なくとも60モル%を占めることになる。
本発明で用いられる親水化剤は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。特に、後述する特徴を有したポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが望ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとは、ポリプロピレンオキサイドセグメントおよびポリエチレンオキサイドセグメントを有する親水化剤である。ここで、ポリプロピレンオキサイドセグメントおよびポリエチレンオキサイドセグメントとは、それぞれ実質的にプロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドを繰り返し単位に有する親水化剤の構成成分である。例えば、ポリエチレンオキサイド1−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド2のABA型ブロック共重合体を親水化剤として用いる場合、ポリエチレンオキサイドセグメントはポリエチレンオキサイド1およびポリエチレンオキサイド2であり、ポリプロピレンオキサイドセグメントはポリプロピレングリコールであり、繰り返し単位はそれぞれエチレンオキサイドおよびプロピレングリコールである。
ポリエチレンオキサイドセグメントは親水性であるため、膜ファウリングを惹起する物質の吸着を抑制する効果がある。上述したABA型のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを親水化剤として用いると、ポリエチレンオキサイドセグメントは分離膜の親水性を向上させる効果が高く、さらには親水化剤中の親水化ポリエーテルスルホンの末端に存在するヒドロキシフェニル基との間に良好な親和性を示すため、分離膜からの溶出を抑制する効果を持つ。一方、ポリプロピレンオキサイドセグメントは、親水化ポリエーテルスルホンの主鎖との間に親和性を示すため、分離膜からの溶出を抑制する効果を高めることができる。
上述したポリエチレンオキサイドセグメントの効果は、ポリエチレンオキサイドセグメントの数平均分子量が大きくなるほど高くなるが、逆にポリエチレンオキサイドセグメントの数平均分子量が大きくなるほどポリプロピレンオキサイドセグメントが親水化剤の分子鎖内部に取り残されてしまい易い。そうすると、親水化剤のポリプロピレンオキサイドセグメントが親水化ポリエーテルスルホンの主鎖の近傍に位置することが困難になるため、ポリプロピレンオキサイドセグメントと親水化ポリエーテルスルホンとの間の相互作用が低下してしまう。
このような観点から、親水化剤中のポリエチレンオキサイドセグメントの数平均分子量は1,000以上50,000以下であることが好ましく、2,000以上20,000以下であることがさらに好ましい。
また、ポリプロピレンオキサイドセグメントの効果は、ポリプロピレンオキサイドセグメントの数平均分子量が大きくなるほど高くなるが、逆にポリプロピレンオキサイドセグメントの数平均分子量が大きくなるほど相対的にポリエチレンオキサイドセグメントの割合が低下してしまう。そのため、分離膜に親水性を付与することが困難となる。このため、親水化剤中のポリプロピレンオキサイドセグメントの数平均分子量は1,000以上10,000以下であることが好ましく、1,500以上7,000以下であることがさらに好ましい。
親水化剤による上述した2つの効果、すなわち、膜ファウリングの抑制および親水化剤と親水化ポリエーテルスルホンとの強固な結びつきを達成するためには、ポリプロピレンオキサイドセグメントとポリエチレンオキサイドセグメントのバランスが重要となる。このような観点から、親水化剤のポリプロピレンオキサイドセグメントとポリエチレンオキサイドセグメントのそれぞれの繰り返し単位のモル比が10:90〜90:10であることが好ましく、より好ましくは15:85〜85:15、さらに好ましくは20:80〜80:20である。ポリプロピレンオキサイドセグメントおよびポリエチレンオキサイドセグメントを有する親水化剤として、BASF社のPluronic(登録商標)シリーズや三洋化成工業株式会社のニューポール(登録商標) PEシリーズが挙げられる。これらの中から、上述したポリエチレンオキサイドセグメントの平均分子量、ポリプロピレンオキサイドセグメントの数平均分子量および両セグメントの繰り返し単位のモル比となるように適宜選択して使用する。
本発明の親水化ポリエーテルスルホン分離膜を製造する際には、親水化ポリエーテルスルホンおよび親水化剤を、それらを溶解する溶媒に溶解または分散させた製膜原液とし、製膜工程に供給することができる。用いる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。特に、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンは取り扱いが簡便であるため好ましく使用される。
本発明の親水化ポリエーテルスルホン分離膜において、親水化剤の溶出が少なく、さらには親水性を長期にわたって維持するためには、末端基全体におけるヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%である親水化ポリエーテルスルホンを好ましくは10重量%以上50重量%以下、より好ましくは15重量%以上30重量%以下で含有し、親水化剤を好ましくは1重量%以上30重量%以下、より好ましくは5重量%以上15重量%以下で含有し、さらに溶媒を好ましくは20重量%以上89重量%以下、より好ましくは55重量%以上80重量%以下で含有する製膜原液を用いて親水化ポリエーテルスルホン分離膜を製造するとよい。
本発明の分離膜の物理的耐久性や化学的耐久性を高レベルでバランスさせるためには、素材である親水化ポリエーテルスルホンの数平均分子量は25,000以上である必要があり、より好ましくは30,000以上、さらに好ましくは35,000以上である。なお、数平均分子量の上限値については特に制限はないが、数平均分子量が1,000,000を超える親水化ポリエーテルスルホンを用いて製膜を行うと、製膜原液の粘度が高くなり、製膜が困難となる可能性がある。製膜原液における親水化ポリエーテルスルホンが10重量%未満であると、得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜が脆弱となりやすく、親水化ポリエーテルスルホンが50重量%を超えると、得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜に良好な透水性能を発現させることが困難となる。製膜原液中の親水化剤が1重量%未満であると、得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜の膜ファウリングを惹起する物質の吸着をしにくくなり、分離膜としての機能を維持し難くなる。また、親水化剤が30重量%を超えると、得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜が脆弱となりやすく分離膜としての機能を果たすことが困難となる。
分離膜の形状は平膜が好ましいが、中空糸膜など他の形態であってもよい。平膜の場合、例えば、不織布基材に上記溶液をキャスト法で塗布した後に非溶媒中に浸漬させることにより分離膜とする、いわゆる非溶媒誘起相分離を利用して分離膜を得ることができる。
非溶媒誘起相分離とは、ポリマー溶液中にポリマーの非溶媒が参入することにより、ポリマー溶液がポリマー濃厚相とポリマー希薄相とに相分離する現象である。最終的に、ポリマー濃厚相を分離膜の壁とし、ポリマー希薄相を分離膜の孔として利用することになる。一般に、常温でポリマーを溶解できる良溶媒がポリマー溶液の調製に使用され、ポリマーを溶解しない非溶媒を凝固に使用する。
非溶媒誘起相分離による親水化ポリエーテルスルホン分離膜の製造時には、上述したように、親水化ポリエーテルスルホンの非溶媒を製膜原液に接触させて相分離を生じさせる。ここで、非溶媒に良溶媒を少量混和させて非溶媒誘起相分離を遅延させる方法や、低温の非溶媒を用いることにより非溶媒誘起相分離を遅延させる方法も分離膜に所望の細孔径や細孔数を付与するために採用されうる。
非溶媒誘起相分離における親水化ポリエーテルスルホンの非溶媒としては、水やメタノール、エタノールなどのアルコール類を用いることができる。特に水やエタノールが好ましく、これらの混合溶液であってもよい。
非溶媒誘起相分離における親水化ポリエーテルスルホンの良溶媒としては、上述した溶媒、とりわけN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。
親水化ポリエーテルスルホン分離膜の膜厚は、分離特性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐ファウリング性の各性能が要求される条件を満足するように自由に調整できるが、膜厚が薄いと分離特性や物理的強度が低く、厚いと透水性能が低くなる。従って、上述した各性能のバランスや運転コストを考慮すると、膜厚は100μm以上500μm以下、より好ましくは200μm以上300μm以下が良い。
以下に具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。また、ポリエーテルスルホンと、ポリプロピレンオキサイドセグメントおよびポリエチレンオキサイドセグメントを有する親水化剤は以下のようにして調製した。
(1)還元粘度(ηsp/c)
還元粘度は、JIS K7367−1(2002)に記載の方法で、毛細管粘度計を用い、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した。
なお還元粘度(ηsp/c)は、下記式に基づき計算し、5回の測定値を平均化した値を使用した。
ηsp/c=(t−t)/t/c
t;重合体溶液の粘度計における標線間の通過時間(秒)
;純溶媒の粘度計の標線間の通過時間(秒)
c;重合体溶液の濃度(g/dl)
(2)数平均分子量測定
ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。GPC測定は、検出器に株式会社島津製作所示差屈折計RID−10Aを用い、ポンプにLC−10ADvpを用い、カラムは昭和電工株式会社製GPC用カラム、Shodex(登録商標) KD−806Mを2本接続して行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶離液にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
(3)末端基組成の分析
400MHz H−NMR(核磁気共鳴)装置(日本電子株式会社製 AL−400)を用い、試料濃度1mg/mLの重水素化DMSO溶液中、積算回数100回で測定した。
7.7ppmにクロロ基に隣接する該芳香環上の2つのプロトン(Cl)、6.9ppmにヒドロキシル基に隣接する該芳香環上の2つプロトン(OH)、3.6ppmにポリエチレンオキサイドのメチレン鎖中の4つのプロトン(CH2)が観察される。これらのピーク面積比を用い、末端基組成を下記関係式より算出した。
[ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)]=
OHのピーク面積]/{[OHのピーク面積]+[Clのピーク面積]+([CH2のピーク面積]/(2×[ポリエチレンオキサイドの繰り返し単位の数]))}×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
Clのピーク面積]/{[OHのピーク面積]+[Clのピーク面積]+([CH2のピーク面積]/(2×[ポリエチレンオキサイドの繰り返し単位の数]))}×100
[ポリエチレンオキサイド末端組成(モル%)]=
{[CH2のピーク面積]/(2×[ポリエチレンオキサイドの繰り返し単位の数])}/([OHのピーク面積]+[Clのピーク面積]+([CH2のピーク面積]/(2×[ポリエチレンオキサイドの繰り返し単位の数]))}×100
(4)初期の水透過性能
各分離膜(直径45mm)に、温度25℃で、蒸留水を操作圧力100kPaで供給し、全量ろ過を行った。このときの、単位時間(d)及び単位面積(m)当たりの透過水量(m)を測定し、初期の水透過性能(m/m/d)を算出した。
(5)耐ファウリング性
耐ファウリング性は、乳製品の分離・濃縮工程を模倣するために、スキムミルクを用いて下記の方法で評価した。
まず、スキムミルク(森永乳業製 森永スキムミルク 250g入り)を蒸留水に溶かして10wt%スキムミルク水溶液を調製した。各分離膜(直径45mm)に、温度50℃で前記10wt%スキムミルク水溶液50mLを操作圧力100kPaで供給し、全量ろ過を行った。
次に、各分離膜を0.01N塩酸20mL中に1時間浸漬して洗浄を行った。洗浄後、(4)と同様の方法でスキムミルクろ過後の水透過性能を測定した。
耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100(%)で表現され、数値の大きな膜ほど耐ファウリング性が高い膜となる。
(6)耐熱安定性
まず、蒸留水を90℃に加熱・保温し、90℃熱水を調製した。各分離膜(直径45mm)を、90℃熱水1L中にそれぞれ1時間浸漬した。
90℃熱水に浸漬後、(4)と同様の方法で90℃熱水に浸漬後の水透過性能を測定した。
耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100(%)で表現され、数値が100%に近い膜ほど90℃熱水による影響が小さい膜であり、耐熱安定性が高い膜となる。
[参考例]ポリエーテルスルホン(A)の作製
特開平5−86186号公報に記載の明細書本文、実施例を参考に、攪拌器、温度計、冷却器、留出物分液器および窒素導入管を備えた1Lの四口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下DHDPSと略す)(50.06g、0.20モル)、トルエン100ml、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(250.8g)、40%水酸化カリウム水溶液(56.0g、0.39モル)を秤量し、攪拌しながら窒素ガスを通じ、反応系をすべて窒素置換した。窒素ガスを通じながら130℃まで加熱した。反応系の温度が上昇するとともにトルエンの環流が開始され、反応系内の水をトルエンとの共沸で除去し、トルエンを反応系に戻しながら共沸脱水を130℃で4時間行った。この後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(以下DCDPSと略す)(57.40g、0.20モル)をトルエン40gとともに反応系に加え、反応系を150℃に加熱した。トルエンを留出させながら4時間反応させ、高粘度の茶褐色の溶液を得た。反応液の温度を室温まで冷却し、反応溶液をメタノール1kgに投下し、ポリマー粉を析出させた。濾過によりポリマー粉を回収し、これに水1kgを加え、さらに1Nの塩酸をスラリー溶液のpHが3〜4になるまで加え、酸性にした。濾過によりポリマー粉を回収した後、ポリマー粉を水1kgで2回洗浄した。さらにメタノール1kgに洗浄し、150℃で12時間真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は88.3g(収率95.0%:収率=(88.3/464.53(ポリエーテルスルホン(A)の繰り返し単位当たりの分子量)/0.2×100より算出)、ガラス転移温度(Tg)=234℃、還元粘度は0.58、数平均分子量は78,000であった。400MHz H−NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=50/50(モル%)であった。
(7)ポリエーテルスルホンa
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付けた300mLの四口フラスコに、参考例で得たポリエーテルスルホン(A)(5g、10.7mmol(5/464.53×1000で計算))に対し、DHDPS(1.25g、4.35mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP) 200ml、無水炭酸カリウム(0.7g、5.06mmol)を秤量し、NMP反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間5時間で反応を終了し、反応溶液を500mlのメタノールに投下し、析出固体を粉砕、500mlの水で2回洗浄し、130℃で真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は7.2g、収率96%(収率は回収したポリエーテルスルホン重量/(仕込みの参考例で得たポリエーテルスルホン(A)重量+仕込みDHDPS)×100により算出)、ガラス転移温度=190℃、還元粘度(ηsp/c)は0.25、数平均分子量は35,000であった。H−NMRではクロロフェニル末端基は確認されず、ヒドロキシフェニル末端基組成が100モル%の親水化ポリエーテルスルホンが得られた。
(8)ポリエーテルスルホンb
DHDPS(0.1g、0.40mmol)、無水炭酸カリウム(0.06g、0.43mmol)とした以外は(7)と同様にして、親水化ポリエーテルスルホンの合成反応を行った。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は7.3g、収率97%(収率は回収したポリエーテルスルホン重量/(仕込みの参考例で得たポリエーテルスルホン(A)重量+仕込みDHDPS)×100により算出)、ガラス転移温度=210℃、還元粘度(ηsp/c)は0.40、数平均分子量は55,000であった。H−NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=38/62(モル%)の親水化ポリエーテルスルホンが得られた。
(9)ポリエーテルスルホンc
数平均分子量が32,000で、クロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=0/100であるBASF社製Ultrason(登録商標) E2020Pを使用した。
(10)親水化剤A
ポリプロピレンオキサイドセグメント/ポリエチレンオキサイドのそれぞれの繰り返し単位のモル比が16:84、ポリオキシプロピレン鎖部分の数平均分子量が4,000の三洋化成工業株式会社製ニューポール(登録商標) PE−128(親水化剤A)を使用した。
(11)親水化剤B
ポリプロピレンオキサイドセグメント/ポリエチレンオキサイドのそれぞれの繰り返し単位のモル比が87:13、ポリオキシプロピレン鎖部分の数平均分子量が2,050の三洋化成工業株式会社製ニューポール(登録商標) PE−71(親水化剤B)を使用した。
<実施例1>
ポリエーテルスルホンa;15重量%、親水化剤A;5重量%、N−メチル−2−ピロリドン;80重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.98m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.91m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が0.93m/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=93%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=95%であり、耐ファウリング性と耐熱安定性を併せ有する分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
<実施例2>
ポリエーテルスルホンa;15重量%、親水化剤A;2重量%、N−メチル−2−ピロリドン;83重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.81m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.70m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が0.77m/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=86%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=95%であり、耐ファウリング性と耐熱安定性を併せ有する分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
<実施例3>
ポリエーテルスルホンa;10重量%、親水化剤A;5重量%、N−メチル−2−ピロリドン;85重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.97m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.90m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が0.88m/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=93%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=91%であり、耐ファウリング性と耐熱安定性を併せ有する分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
<実施例4>
ポリエーテルスルホンa;15重量%、親水化剤B;5重量%、N−メチル−2−ピロリドン;80重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.90m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.80m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が0.84m/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=89%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=93%であり、耐ファウリング性と耐熱安定性を併せ有する分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
<実施例5>
ポリエーテルスルホンb;15重量%、親水化剤A;5重量%、N−メチル−2−ピロリドン;80重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.80m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.71m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が0.75m/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=89%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=94%であり、耐ファウリング性と耐熱安定性を併せ有する分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
<実施例6>
ポリエーテルスルホンa;20重量%、親水化剤A;7重量%、N−メチル−2−ピロリドン;73重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.95m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.89m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が0.92m/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=94%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=97%であり、耐ファウリング性と耐熱安定性を併せ有する分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
<比較例1>
ポリエーテルスルホンa;15重量%、N−メチル−2−ピロリドン;85重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.47m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.10m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が0.43m/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=21%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=91%であり、耐熱安定性を有するが、耐ファウリング性が低いために長期間使用することが困難な分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
<比較例2>
ポリエーテルスルホンc;15重量%、親水化剤A;5重量%、N−メチル−2−ピロリドン;80重量%を100℃で2時間撹拌溶解して製膜原液を調製した。この製膜原液をポリエチレンテレフタレート製不織布にアプリケータを用いて総厚み200μmになるように塗布し、ただちに水浴中に浸漬して凝固させ、親水化ポリエーテルスルホン分離膜を得た。得られた親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、クラック等の欠点が無いものであった。
また、この分離膜の性能を評価した結果、初期の水透過性能が0.94m/m/d、スキムミルクろ過後の水透過性能が0.82m/m/d、90℃熱水浸漬後の水透過性能が1.14/m/dであった。従って、耐ファウリング性は、(スキムミルクろ過後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=87%、耐熱安定性は、(90℃熱水に浸漬後の水透過性能)/(初期の水透過性能)×100=121%であり、耐熱安定性を有するが、耐ファウリング性および熱安定性が低いために長期間使用することが困難な分離膜であることが分かった。
表1に評価の結果をまとめた。
Figure 2010058073
本発明の親水化ポリエーテルスルホン分離膜は、各種分離膜分野で好適に使用できる。特に、耐ファウリング性、耐熱性、化学的強度(耐薬品性)及び物理的強度が要求される用途に好適に使用され、特に耐ファウリング性と耐熱性が強く要求される用途、例えば浄水処理分野や食品工業分野において好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. ポリエーテルスルホンと親水化剤とを含有する親水化ポリエーテルスルホン分離膜であって、前記ポリエーテルスルホンの数平均分子量が少なくとも25,000であり、末端にヒドロキシフェニル基を有し、前記ポリエーテルスルホンの末端基全体における前記ヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%である親水化ポリエーテルスルホン分離膜。
  2. 前記親水化剤がポリプロピレンオキサイドセグメントおよびポリエチレンオキサイドセグメントを有するブロック共重合体である請求項1記載の親水化ポリエーテルスルホン分離膜。
  3. 前記ポリプロピレンオキサイドセグメントの繰り返し単位と前記ポリエチレンオキサイドセグメントの繰り返し単位とのモル比が10:90〜90:10である請求項2記載の親水化ポリエーテルスルホン分離膜。
  4. 末端基全体におけるヒドロキシフェニル基濃度が60〜100モル%であるポリエーテルスルホンを10重量%以上50重量%以下、親水化剤を1重量%以上30重量%以下、溶媒を20重量%以上89重量%以下で含有する製膜原液を用いる親水化ポリエーテルスルホン分離膜の製造方法。
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