JP2010057483A - 内臓知覚過敏改善食品 - Google Patents

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誠 徳永
Tsutomu Okubo
勉 大久保
Seiji Shu
政治 朱
Reka Raju Juneja
レカ ラジュ ジュネジャ
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Abstract

【課題】副作用などの問題がないため安全性が高く、しかも比較的少量の使用でも早期に改善効果が現れる内臓知覚過敏改善食品を提供する。
【解決手段】グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物と、グルタミン誘導体、ツバキ科植物由来のポリフェノール類及びアムラ抽出物から選択される少なくとも1種とを含有する内臓知覚過敏改善食品である。グルタミン誘導体としてはテアニンがある。ツバキ科植物由来のポリフェノール類としてはカテキンがある。
【選択図】なし

Description

本発明は、内臓知覚過敏改善食品に関するものである。
近年、食生活や住環境の変化がもたらす文明病として、内臓知覚過敏などの内臓疾患の患者が急増している。
内臓知覚過敏は機能性内蔵疾患とも呼ばれており、その代表例としては過敏性腸症候群(IBS)が知られている。過敏性腸症候群(IBS)は、数ある消化器疾患の中でも、最もよく見られる疾患の一つである。日本では、便通異常で受診する患者のうち約20〜30%は過敏性腸症候群であるといわれている。年代的にみると、女性では20歳代及び50歳代、男性では30〜40歳代に多く見られる。
IBSの主な症状としては、便通異常、腹痛及び腹部不快感が挙げられる。このうち、腹痛は、必ずしも痛む場所が一定しておらず、また痛みの程度も様々で、軽い痛みから強い痛みまである。また、排便によって腹痛が軽くなることも特徴の一つである。
IBSについて、ストレスがその原因の一つであると考えられている。これは、内臓と神経とが関連しているからである。内臓の働きは自律神経によって支配されており、この自律神経は脳の視床下部からのシグナルによって働いている。ストレスとなる情報が外部から脳に入ると、視床下部がその情報に反応するため、適切なシグナルを自律神経に送ることが困難となり、それにより内臓の働きが乱れる。
このようなIBSを有する患者に対しては、規則正しい生活を送り、正常な便通習慣を取り戻すこと;スポーツ、趣味などによりストレスを発散させること;専門家によるカウンセリング;鎮痛薬、消化器運動機能改善剤、精神安定剤、漢方薬などによる薬剤治療のような指導、治療方法などが試みられている(佐々木大輔、須藤智行、G.I.Research,vol.7,p3−9,1999)。
ところで、過敏性腸症候群に対しては、上記のような薬物治療などが行われているが、副作用の問題から継続して行うことが困難であり、また、メカニズムが明確にわかっていないため根本的な治療方法が確立されていない。このような事情のもと、副作用などの問題がなく安全性の高い製品の開発が望まれていた。また、この種の製品形態としては薬剤ではなく摂食しやすい食品の形態であることが望まれていた。
そして、このような事情のもと、ガラクトマンナン分解物を含有してなる過敏性腸症候群の予防、改善または治療に用いられる組成物を含有してなる食品が従来提案されている(例えば特許文献1参照)。そして、この過敏性腸症候群改善食品を摂食すれば、副作用などの問題を伴わずに、過敏性腸症候群の改善等を図ることができるものと期待されている。
WO2005/056022号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の過敏性腸症候群改善食品は、そもそも薬剤ではないため、摂食してから効き目が現れるまでの期間が比較的長いという特徴がある。このため、もっと早く効き目が現れる過敏性腸症候群改善食品、さらには従来に比べて使用量が少なくても早く効き目が現れる過敏性腸症候群改善食品に対する要求があった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、副作用などの問題がないため安全性が高く、しかも比較的少量の使用でも早期に改善効果が現れる内臓知覚過敏改善食品を提供することである。
上記課題を解決すべく本願発明者らが鋭意研究を行ったところ、ガラクトマンナン分解物が多く含まれているグアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物の単独使用では少量使用での早期改善効果を達成するうえで限界があるものと予測し、この予測のもとに、当該酵素分解物とそれ以外の物質との併用を試みた。そして、試行錯誤の結果、グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物と、グルタミン誘導体、ツバキ科植物由来のポリフェノール類及びアムラ抽出物から選択される少なくとも1種とを併用することが有効であるという新規の知見を得て、これをさらに発展させて下記の課題解決手段を想到するに至ったのである。なお、グルタミン誘導体、ツバキ科植物由来のポリフェノール類、アムラ抽出物については、これまでに単独で内臓知覚過敏改善効果があることは全く知られていなかった。
[1]グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物と、グルタミン誘導体、ツバキ科植物由来のポリフェノール類及びアムラ抽出物から選択される少なくとも1種とを含有する内臓知覚過敏改善食品。
[2]前記グルタミン誘導体がテアニンであることを特徴とする請求項1に記載の内臓知覚過敏改善食品。
[3]前記ツバキ科植物由来のポリフェノール類がカテキンであることを特徴とする請求項1または2に記載の内臓知覚過敏改善食品。
従って、請求項1〜3に記載の発明によれば、副作用などの問題がないため安全性が高く、しかも比較的少量の使用でも早期に改善効果が現れる内臓知覚過敏改善食品を提供することができる。
本発明のガラクトマンナン酵素分解物の製造手順を説明するためのフローチャート。
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
本発明は内臓知覚過敏症を改善する効果を有する食品に関する。ここで、「内臓知覚過敏」とは、過敏性腸症候群などに代表される主として機能性消化器疾患のことを指す。
過敏性腸症候群(IBS)は、下痢型、便秘型および交替型の3つの型に分類される。下痢型の過敏性腸症候群の症状は、腹痛を伴う1日3回以上の下痢が続く症状であり、便秘型の過敏性腸症候群の症状は、腹痛を伴う便秘が続く症状であり、交替型の過敏性腸症候群の症状は、腹痛を伴う下痢の症状が数日間続き、次に腹痛を伴う便秘の症状がでるといった、下痢と便秘が交互に繰り返される症状である。また、過敏性腸症候群には至っていないものの、下腹部痛が頻繁におこる患者は、過敏性腸症候群の発症の可能性を秘めている。本発明の内臓知覚過敏改善食品は、過敏性腸症候群を改善するだけではなく、その予防や治療にも有効性があると考えられ、頻繁に起こる下腹部痛をも改善等できると考えられている。さらに、本発明は食品として使用される成分からなるため、ほとんど毒性はない。
過敏性腸症候群(IBS)以外の機能性消化器疾患として具体例を挙げると、例えば、機能性胃腸炎(神経性胃炎)などがある。本発明の内臓知覚過敏改善食品は、広く消化器(食物が通過し消化吸収をおこなう食道から胃、小腸、大腸、肛門までの消化管と、消化管に付随する肝臓、胆嚢、胆管、膵臓などの臓器)に起こる機能性の疾患に対して何らかの改善効果を期待することができる。
本発明の内臓知覚過敏改善食品は、グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物を含有しており、その主成分はガラクトマンナンの酵素分解物である。
ガラクトマンナンは、人の消化酵素で消化されない難消化性の粘質多糖類であって、主鎖のβ−(1→4)マンナン鎖のO−6位にα−ガラクトシル基が結合した櫛状の分岐構造を有する物質として知られている。ガラクトマンナンは、主としてマメ科植物の種子に多く含まれる成分として知られているが、本発明ではコスト性等の観点から原料としてグアー(Cyamopsis tetragonolobus)の種子を用いている。なお、グアーの種子は全体的に用いてもよいが、例えば種皮などをあらかじめ除去した後にその胚乳部分を選択的に用いてもよい。この場合、酵素反応効率の向上を達成しやすくなる。
また、グアー種子由来の多糖類画分は、分解処理を行わずそのまま使用されるのではなく、食品の粘度上昇を抑制する観点から、ガラクトマンナンを加水分解したガラクトマンナン分解物として使用される。加水分解の方法としては、例えば、酵素分解法、酸分解法などが挙げられるが、本発明では、分解物の分子量を容易に揃えることが可能である観点から、酵素分解法を採用している。
本発明で使用するガラクトマンナン酵素分解物は、種々の有用な生理作用を有している必要があるため、平均分子量の値やマンノース直鎖の鎖長の値がそれぞれ所定範囲内であることが望ましい。具体的にいうと本発明のガラクトマンナン酵素分解物は、平均分子量が5000〜30000であり、マンノース直鎖の鎖長が30単位〜200単位の範囲内に80%以上分布していることが好ましい。
その理由は、この条件を満たすガラクトマンナン酵素分解物には各種の有用な生理作用が認められるからである。平均分子量が5000未満の場合には、所望とする有用な生理作用を発揮できなくなる。また、平均分子量が30000を越える場合には、所望とする有用な生理作用を発揮できなくなるばかりでなく、粘性が増すことで大量摂取が困難になりかつ水に対する溶解性も小さくなる。それゆえ、ガラクトマンナン酵素分解物の平均分子量は、10000以上かつ27000以下がより好ましく、13000以上かつ25000以下がさらに好ましい。なお、平均分子量の測定方法は特に限定されないが、高速液体クロマトグラフ法を用いて分子量分布を測定する方法等が好適である。この方法によれば分子量分布を比較的簡単にかつ正確に求めることができる。好ましい具体例としては、酵素分解物を水に溶解し、803D型(東ソー株式会社製)の高速液体クロマトグラフィーを用い、水を移動相にしてG3000PW(東ソー株式会社製)のカラムにてゲル濾過を行い、示差屈折計にて検出するという測定方法を挙げることができる。
また、ガラクトマンナン酵素分解物の好ましい鎖長は、マンノース直鎖の鎖長の範囲が30単位〜200単位、特には30単位〜100単位の範囲内に80%以上分布していることが好適である。このような条件を満たす酵素分解物は、得られる生理作用の程度及び持続性が一般的に高いと考えられるからである。なお、ガラクトマンナン酵素分解物の鎖長とは、当該酵素分解物の主鎖であるマンノースの結合している数を指す。それらの測定法は特に限定されないが、基本的に上記の「平均分子量の測定方法」と同様の方法を採用することができる。例えば、高速液体クロマトグラフ法を用いた測定方法等によれば、当該酵素分解物の鎖長を比較的簡単にかつ正確に求めることができる。
ガラクトマンナン酵素分解物の粘度は、B型粘度計にてローターNo.1またはLowローターを使用し、5℃,60rpm及び30秒の条件で5%(w/v)水溶液を測定したときに、5mPa・s〜15mPa・sを示すことが好適である。その理由は、粘度を5mPa・s未満にしようとすると、平均分子量を好適範囲内に設定することが困難になる場合があり、好ましくないからである。また、15mPa・sを超えると、粘性が高くなるため大量に摂取し辛くなり、水に対する溶解性も小さくなるからである。ゆえに、食品としての利用を考慮すると、やはり粘度は5mPa・s〜15mPa・sの範囲内であることが望ましいという結論になる。
あるいは、ガラクトマンナン酵素分解物の粘度は、B型粘度計にてLowローターを使用し、20℃,60rpm及び30秒の条件で15%(w/v)水溶液を測定したときに、5mPa・s〜13mPa・sを示すものであってもよい。その理由については上記のとおりである。
本発明で使用するガラクトマンナン酵素分解物において、水溶性食物繊維含量は、AOAC 985.29に記載の酵素重量法による測定値で65%以上、好ましくは70%以上、最も好ましくは75%以上を示すことがよい。その理由は、水溶性食物繊維含量が65%未満であると、種々の生理作用が十分に得られないからである。即ち、水溶性食物繊維含量が少ないということは、ガラクトマンナンの主鎖が過度に酵素で切断されていることを意味し、ひいては所望とするガラクトマンナン酵素分解物の収率が悪いことを意味するからである。
本発明で使用するガラクトマンナン酵素分解物は、グルコースを標品としてソモジー・ネルソン法で測定したときに、10重量%以下の還元糖含量を示すことが好ましい。即ち、還元糖含量が多いということは、ガラクトマンナンの側鎖が過度に酵素で切断されていること、あるいはガラクトマンナンの主鎖末端の糖(マンノース)が過度に酵素で切断されていることを意味し、ひいては所望とするガラクトマンナン酵素分解物の収率が悪いことを意味するからである。従って、高収率であるというためには還元糖含量が10重量%以下であることが好ましく、さらには8重量%以下であることがより好ましい。
本発明で使用するガラクトマンナン酵素分解物は、例えば、以下のような製造方法により製造される。即ち、ガラクトマンナンを含有するグアー種子の胚乳部分を酸性域で酵素的に加水分解する酵素処理工程を行った後、得られた溶液の加水分解反応を停止させ(反応停止工程)、さらに前記溶液の遠心分離処理を行って未反応物を除去し、次いで精製処理、加熱殺菌処理及び冷却処理を行った後、中和処理を行うようにする。
酵素処理工程では、グアー種子の胚乳部分を酸性域で酵素的に加水分解する。この工程では、ガラクトマンナナーゼを主成分として含有し、さらにα−ガラクトシダーゼ等を含有する酵素群が使用される。その理由は、グアーの胚乳部分にはガラクトマンナンが最も多く含まれており、これを加水分解することが当該工程の主目的だからである。ここで使用する酵素群には、α−ガラクトシダーゼよりも少量のβ−マンノシダーゼが含有されていてもよく、さらにはα−ガラクトシダーゼよりも少量の酸性プロテアーゼが含有されていてもよい。
酵素処理工程では、上記の酵素群を用いて酸性域で加水分解を行うことがよく、より具体的にはpH2.0〜pH6.0の範囲内で加水分解を行うことが好ましい。その理由は、上記の酵素群を構成する酵素の至適pHは酸性域にあるからである。当該工程においてpHが6.0を超えていると(即ち中性域になると)、加水分解反応が効率よく進まないため、ガラクトマンナン酵素分解物の収率が低下してしまう。しかも、基質を含む溶液に土壌細菌等の雑菌が繁殖しやすくなり、保存性の悪化や臭いの付着といった問題が起こりやすくなる。また、当該工程においてpHが2.0未満であると、雑菌の繁殖といった問題は起こらない反面、加水分解反応の効率が悪くなり、ガラクトマンナン酵素分解物の収率が低下してしまう。なお、加水分解はpH3.0〜pH5.0の範囲内で行うことがより好適であり、pH4.0〜pH5.0の範囲内で行うことが最も好適である。
酵素処理工程では、50℃〜80℃で8時間〜24時間、または60℃〜80℃で3時間〜12時間加水分解を行うことが好ましい。つまり、酵素の作用温度を高くすることで加水分解の反応時間を短く設定することが可能となり、ひいては生産性の向上を達成しやすくなる。
ちなみに、作用温度を50℃〜80℃とした場合において、反応時間が8時間未満のとき、または24時間を越えるようなときには、生理作用のある有効なガラクトマンナン酵素分解物の収率が低下してしまう。同様に、作用温度を60℃〜80℃とした場合において、反応時間が3時間未満のとき、または12時間を越えるようなときにも、生理作用のある有効なガラクトマンナン酵素分解物の収率が低下してしまう。
続く反応停止工程では、酵素処理工程を経て得られた未精製の溶液の加水分解反応を停止させる。仮に加水分解反応の停止を遅いタイミングで行ったとすると、反応が必要以上に進んでガラクトマンナンが過度に低分子化するおそれがあり、生理作用のある有効なガラクトマンナン酵素分解物が得にくくなる。これに対して反応停止を早いタイミングで行えば、反応を適時に停止させることができ、生理作用のある有効なガラクトマンナン酵素分解物を確実に得ることができる。そして、このことはガラクトマンナン酵素分解物を高い収率で得るのに貢献する。
加水分解反応を停止させる具体的手法としては、例えば、基質から酵素を分離除去する方法や、基質における酵素を熱や薬品で失活させる方法などがある。ただし、本発明の製造方法においては、酵素を熱で失活させる方法が工程的に有利である。具体的には、85℃以上で15分間〜60分間加熱して酵素を失活させ、加水分解反応を停止させることがよい。加熱による方法は、薬品等の添加を伴わず比較的簡単に実施できることに加え、熱により反応液をある程度殺菌することもできる点で好ましい。ただし、反応液中には不純物が残っているので、後工程において液中の不純物を除去する処理が必要となる。
なお、加熱温度が85℃未満であったり加熱時間が15分間未満であったりする場合には、加水分解反応が十分に進まず、生理作用のある有効なガラクトマンナン酵素分解物が得にくくなる。逆に、加熱時間が60分間を超える場合には、加水分解反応が過度に進んでしまう結果、生理作用のある有効なガラクトマンナン酵素分解物が得にくくなる。ここで好ましい加熱温度は85℃〜100℃であり、特には85℃〜95℃である。即ち、沸点を超える温度に加熱しなくても反応を停止させることは十分可能だからである。また、沸点を超えるような温度に加熱しようとすると、専用の容器や加熱装置が必要になり、設備コスト高の原因になるからである。
反応停止工程後には、遠心分離処理、精製処理、加熱殺菌処理、中和処理が行われる。各処理を実施する順序は特に限定されないが、この順序で実施することが好適である。
遠心分離処理では、反応停止工程を経た溶液(反応液)から未反応物が除去される。この処理は、例えば従来周知の遠心分離装置等を用いて実施することが可能である。この処理を経て得られた清澄液は、ガラクトマンナン酵素分解物を含有する酸性の溶液となっている。
精製処理では、前記清澄液中の不純物がさらに除去され、その結果として生理作用のある有効なガラクトマンナン酵素分解物の純度が高められる。また、不純物が除去される結果、脱臭・脱色が図られ、高品質化を達成しやすくなる。精製処理の方法は特に限定されず、溶媒沈殿法、限外濾過法、ゲル濾過、イオン交換樹脂法、電気泳動法などが挙げられるが、前記溶液に濾過助剤を添加して攪拌した後に濾過を行う方法が好ましい。このような処理方法によると、溶液中の不純物が濾過助剤に吸着されるため、当該溶液を濾過して濾過助剤とともに取り除くことにより、溶液中のガラクトマンナン酵素分解物の純度を比較的容易に高めることができるからである。
加熱殺菌処理では、熱によって溶液中の微生物を死滅させることで雑菌の繁殖が抑えられる。この処理を行うと製品の保存性を向上させることができる。加熱殺菌処理は精製処理後に行われることが好ましい。その理由は以下のとおりである。仮に精製処理前の状態、つまり不純物が含まれた状態で加熱殺菌処理を行うとすると、相対的に多量の液体を加熱殺菌装置に通じる必要があるため設備コストが高くなり、しかも殺菌の確実性が低下する可能性がある。それに対して、精製処理後に加熱殺菌処理を行えば、設備コスト高や殺菌の確実性低下といった心配がないからである。ここで、加熱殺菌処理は、従来周知の超高温瞬間殺菌装置(UHT殺菌装置)を用いて、前記溶液を120℃〜150℃で1秒間〜6秒間加熱する超高温瞬間殺菌処理であることが好ましい。このような処理であれば、溶液が100℃を超える高温に晒されるため、溶液中の微生物を確実に死滅させることができ、雑菌の繁殖を効果的に抑えることができる。しかも、極めて短い時間で処理できるため生産効率の低下も来たさない。
中和処理では、これまでpHが酸性域に保たれていた溶液をアルカリで中和して中性域にする。このようにして得られた液状のガラクトマンナン酵素分解物は、使用時に特にpH調整する必要がないため、使い勝手がよい。また、使用可能な範囲も広いため、汎用性に優れている。さらに、本発明の製造方法では中和処理を遅いタイミングで行っているため、グアーに含まれている土壌細菌等の繁殖を確実に抑えることができる。よって、得られるガラクトマンナン酵素分解物の保存性を向上させることができる。
中和処理を行った後には、さらに従来周知の濃縮装置を用いて前記溶液を濃縮する濃縮工程を行ってもよい。この工程を行うと、ガラクトマンナン酵素分解物を高濃度で含む溶液を得ることができる。ここで濃縮法としては、例えば、凍結濃縮法、蒸発濃縮法、減圧蒸留濃縮法、膜濃縮法などを採用することができる。また、濃縮工程の実施後には、さらに前記溶液を乾燥して粉末化する乾燥粉末化工程を行ってもよい。この工程を行うと、液状のガラクトマンナン酵素分解物を固体状にすることができ、保存や取扱いに適した形態とすることができる。ここで乾燥法としては、加熱乾燥法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、減圧乾燥法、造粒乾燥法などを採用することができる。
また、本発明で使用するグアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物(ガラクトマンナンの酵素分解物)は、内臓知覚過敏改善食品における含有量が1重量%〜99.5重量%であり、好ましくは5重量%〜99.5重量%であり、特に好ましくは10重量%〜99.5重量%である。
本発明の内臓知覚過敏改善食品は、グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物に加えて、グルタミン誘導体、ツバキ科植物由来のポリフェノール類及びアムラ抽出物から選択される1種または2種以上を含有している。その理由は、グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物とこれらの物質とを併用することで、内臓知覚過敏改善食品の使用量を低減時でも改善効果が早期に得られるからである。
本発明で使用するグルタミン誘導体としては、例えば、グルタミルフェニルアラニン、グルタミルチロシンメチルエステル、グルタミルDOPA、グルタミルグルタミン等が挙げられ、好ましくは、ピログルタミン酸、γ−グルタミルエチルアミド(テアニン)、γ−グルタミルメチルアミドである。テアニンは緑茶の旨味の主要成分として知られ、茶をはじめとする食品の香味成分として重要な物質である。テアニンの製造法としては、茶葉から抽出する方法、有機合成反応させてテアニンを得る方法(Chem.Pharm.Bull.,19(7)1301−1307(1971))、グルタミンとエチルアミンの混合物にグルタミナーゼを作用させてテアニンを得る方法(特公平7−55154号)、エチルアミンを含有する培地で茶の培養細胞群を培養し、培養細胞群中のテアニン蓄積量を増加させつつ培養細胞群の増殖促進を図る方法(特開平5−123166号)、また、特公平7−55154号、開平5−123166号におけるエチルアミンをエチルアミン塩酸塩等のエチルアミン誘導体に置き換えてテアニンを得る方法、茶葉から抽出する方法等がありいずれの方法でもよい。ここでいう茶葉とは、緑茶、ウーロン茶、紅茶等が挙げられる。このような方法により得られたテアニンは、L−体、D−体、DL−体いずれも使用可能であるが、中でもL−体は、食品添加物にも認められており、経済的にも利用しやすいため、本発明においては、L−体が好ましい。また、本発明に用いるテアニンは、精製品(テアニン含量98%以上)、粗精製品(テアニン含量50〜98%)、抽出エキス(テアニン含量10〜50%)等でいずれの形状でもよい。また、市販されているサンテアニン(太陽化学株式会社製)を用いてもよい。
本発明で使用するツバキ科植物由来のポリフェノール類とは、特に茶葉に含まれているポリフェノール類のことをいい、具体的には、(+)−カテキン、(+)−ガロカテキン、(+)−ガロカテキンガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキン及び(−)−エピガロカテキンガレートの7種類のポリフェノール類縁体のことを指す。以下、これらの物質を総称して単に「カテキン」と記載する。
カテキンに代表される上記ポリフェノール化合物は、茶の水あるいはアルコール抽出物の限外濾過膜及び逆浸透膜処理により得ることができるが、酢酸エチル可溶画分あるいは他の原料起源のもの及び化学合成品でも差支えない。
ポリフェノール化合物の調製法を例示すると次のようになる。まず、茶を充分量の水あるいはアルコールで室温抽出する。抽出後、公知の方法にて残渣を分離し抽出液を得る。抽出液から溶媒を除去し、その残留物に水を加え溶解後、分画分子量60000〜10000の限外濾過膜を通過させる。限外濾過膜通過液からは、通常の濃縮、乾燥方法にて溶媒を除去することにより、目的とする純度30%以上のポリフェノール類精製粉末を得ることができる。さらに純度を高めるためには、ポリフェノール類を選択的に吸着する吸着剤を用いる。通常の吸着分離方法、例えば、吸着剤としては有機系吸着剤、無機系吸着剤、活性炭、陰イオン交換樹脂、炭水化物系凝集剤、蛋白質系凝集剤、疎水系樹脂等を用いる方法により、容易に純度70%以上まで高めることができる。
または、茶を充分量の水あるいはアルコールで室温抽出する。抽出後、公知の方法にて残渣を分離し抽出液を得る。抽出液から溶媒を除去しその残留物に水を加え溶解後、ヘキサン、クロロホルム及び酢酸エチルを順次用いて分配を行い、ヘキサン可溶画分、クロロホルム可溶画分及び酢酸エチル可溶画分を得る。本操作におけるヘキサン及びクロロホルムによる分配は、水あるいはアルコール抽出物の着色度及び粘度等の状況により省略することができるが、酢酸エチル可溶画分の純度を上げるためには、ヘキサン及びクロロホルムによる分配の実施が望ましい。抽出に用いるアルコールはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコールが操作性、抽出効率の点から好ましい。
さらに、吸着分離方法で得られた画分あるいは酢酸エチル可溶画分をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム−メチルアルコール(20:1,V/V)及びクロロホルム−メチルアルコール(10:1,V/V)の溶媒にて順次溶出することにより、上記7種の化合物を得ることができる。また必要に応じてさらにセファデックスLH−20に付し適当な溶媒、例えばメチルアルコールにて溶出することにより、あるいはリサイクルHPLC(日本分析工業製、LC−908、GS−320カラム、溶媒メチルアルコール)を用いることにより、より高純度の7種の化合物を得ることができる。
以上示した茶葉からのポリフェノール化合物の調製は、特に限定されるものではないが、食品に用いる本発明においては前者の調製方法が好ましい。得られたこれらのポリフェノール化合物を本発明に用いる場合は単独で、あるいは2種以上の混合物として、さらにはポリフェノールを含む粗抽出物としても使用することができる。
アムラ抽出物とは、エンブリカ・オフィシナリス(Emblica Officinalis)、または、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus emblica)という学名をもつ植物としての「アムラ」から得た抽出物のことを指す。「アムラ」は、トウダイグサ科コミカンソウ属に属する落葉の亜高木であり、インドからマレーシア地域及び中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。また、アムラは、各地方または言語により各々固有の名称を有しており、例えば、余柑子、油甘、奄摩勒、エンブリック・ミロバラン、アーマラキー、マラッカノキ、マラッカツリー、インディアングーズベリー、アロンラ、アミラ、アミラキ、アミラキャトラ、ネリカイ、ネルリ、タシャ、カユラカ、ケムラカ、ナックホンポン等とも称されている。
本発明において使用されるアムラの部位としては特に限定されないが、果実が好ましく用いられる。アムラ果実の形態は、特に限定するものではなく、未熟果実、完熟果実、乾燥果実等のいずれでもよい。なお、果実を絞って得られる果汁の使用も同様に好ましい。果汁の形態は、特に限定するものではなく、液状、粉末状のいずれでもよい。生果実を使用する場合には、あらかじめ種子を除去した後、必要に応じて水を添加したうえで、抽出を行う。なお、抽出効率を高めるために、ミキサー等により破砕、均質化したものを抽出原料として使用することが好ましい。乾燥果実を使用する場合についても基本的には同様のことがいえるが、抽出効率を高めるために、40メッシュ以下の粒度になるように粉砕しておくことが好ましい。なお、果汁も抽出原料として好適に使用される。
抽出に使用する溶媒や温度条件等については、特に限定されるものではなく、任意に選択、設定することができる。抽出溶媒としては、水、塩基、酸等といった非有機溶媒や、親水性溶媒、アセトン等といった有機溶媒を選択することができる。親水性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールからなる低級アルコール群から選択される1種類以上が、操作性、抽出効率の点から好ましい。ただし、有機溶媒による抽出よりもむしろ非有機溶媒による抽出が好ましく、なかでも水、塩基及び酸のいずれかを選択することがよい。
酸または塩基を抽出溶媒に使用する場合、抽出物を中和させることが好ましい。中和反応によって生成された塩は、透析法やゲル濾過等、公知の方法により、取り除くことができる。ただし、水を抽出溶媒として用いた場合には、上記のような中和反応は必要なく、生成された塩を取り除く必要もない。よって、工数減及び低コスト化の観点から、水を用いることが最も好ましい。
このとき使用する酸としては、特に限定するものではなく、大部分の酸を使うことができる。ただし、入手のしやすさ及び操作性の観点から、塩酸または硫酸の使用、あるいは塩酸及び硫酸の併用が好ましい。また、塩基としては、特に限定するものではなく、大部分の塩基を使うことができる。ただし、入手のしやすさ及び操作性の観点から、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの使用、あるいは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの併用が好ましい。
抽出に使用される酸または塩基の濃度は、抽出物を酵素処理する前であっても後であっても特に限定するものではない。酸または塩基の強さによって変化するが、操作性及び抽出効率の観点から、0.01モル濃度〜0.5モル濃度の酸または塩基を使用することが好ましい。
上記の抽出においては酵素処理を併用してもよく、この処理によれば収率や風味を改善することができる。なお、酵素処理は抽出前に行ってもよく、抽出時に行ってもよい。酵素処理をするときのpHは、使用する酵素の至適pH及びpH安定性を指標にして、適宜設定することができる。また、酵素処理をするときの温度に関しても、使用する酵素の至適温度及び温度安定性を指標にして、適宜設定することができる。
酵素処理に用いる酵素は、特に限定されるべきではないが、食品工業分野でよく用いられる加水分解酵素であることが好ましい。この種の酵素は使用実績があり、安全性等の観点からも好ましいからである。上記酵素の具体例としては、例えば、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、タンナーゼ、デキストラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、トリプシン、パパイン等の加水分解酵素が挙げられる。これらのなかでも好ましくは、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、タンナーゼ、セルラーゼから選択される1種類を使用する、または2種類以上を組み合わせて使用することである。これによれば抽出効率をさらに向上させることが可能となる。
さらに、上記の抽出において、抽出残渣に対して再度抽出工程を1回またはそれ以上繰り返すことが好ましく、この方法によれば抽出効率を向上させることができる。この場合の抽出に用いる溶媒は、同じものであっても異なるものであってもよい。なお、上記の抽出物は、そのままでも使用できるが、濾過、遠心分離及び分留といった処理を行って、不溶性物質及び溶媒を取り除くことがより好ましい。
本発明の内臓知覚過敏改善食品において、グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物(便宜上「成分A」とする)と、グルタミン誘導体、ツバキ科植物由来のポリフェノール類及びアムラ抽出物から選択される少なくとも1種(便宜上「成分B」とする)との含有比(重量比)は特に限定されないが、成分Bよりも成分Aのほうが多く含有されていることが好ましい。即ち、成分Aを主成分とし、成分Bを副成分としていることが好ましい。具体的には、成分Aの重量比:成分Bの重量比(ただし、成分Bが2種以上の物質からなる場合にはそれらの合計の重量比)が、200:1〜5:1の範囲内であることがよく、さらには100:1〜10:1の範囲内であることがよりよい。成分Aの比率が大きすぎると成分Bの添加量が少なすぎて所望とする併用効果が十分に得られなくなるおそれがあり、逆に、成分Bの比率が大きすぎると苦味や酸味が強くなったり色が着いたりすることで、食品としての用途に適さなくなるおそれがあるからである。
本発明の内臓知覚過敏改善食品の形態としては特に限定されず、溶液、懸濁物、粉末、顆粒、固体成形物のいずれでもよく、経口摂取可能な形態であればよい。食物の具体例としては、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等を挙げることができる。
以下、本発明の実施形態をより具体化したいくつかの実施例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]:グアー種子由来の多糖類画分の調製
ここでは、小麦粉、小麦ふすま、コーンスターチ、デキストリン及びガラクトマンナンを含む液体培地中でAspergillus nigerを所定期間培養し、ガラクトマンナンの加水分解反応に用いる酵素群をあらかじめ採取しておいた。このようにして採取したAspergillus niger由来の酵素群は、β−ガラクトマンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、酸性プロテアーゼ及びβ−マンノシダーゼの混合物であり、その比活性は1250:1:3.5:30であった。
次に、水900部に塩酸を加えてpHを4.5に調整した後、その水に上記の酵素群0.2部とグアー豆(Cyamopsis tetragonolobus)の胚乳100部とを添加混合し、55℃〜65℃で24時間酵素を作用させた。その結果、グアー豆に含まれるガラクトマンナンを酵素的に加水分解した(第1工程、図1のS10参照)。
次に、反応液を90℃,30分間加熱することにより酵素を失活させ、加水分解反応を停止させた(第2工程、図1のS20参照)。
次に、加水分解物を含む反応液を遠心分離装置(石川島播磨重工業社製、商品名HS−50L)で3000rpm,供給量6m/hで遠心分離処理し、反応液を未反応物と清澄液とに分離させるとともに、清澄液のみを採取した(第3工程における遠心分離処理、図1のS30参照)。
次に、採取した溶液(清澄液)に珪藻土系濾過助剤及び活性炭を添加して60分間攪拌した後、第1濾過手段である濾過装置(昭和製作所社製、商品名202B、濾過圧:250kg/cm)を用いて濾過する粗精製を行った。その結果、前記溶液中に含まれる不純物をある程度吸着除去した。さらに、粗精製された前記溶液に珪藻土系濾過助剤のみを添加して60分間攪拌した後、第1濾過手段よりも目の細かい第2濾過手段である精密濾過装置(中央製作所社製、商品名FS−50B、流量:300L/h)を用いて濾過する本精製を行った。その結果、前記溶液中に含まれる不純物をほぼ完全に吸着除去し、ガラクトマンナン酵素分解物を含有する無色透明で臭いのない溶液を得た(第3工程における精製処理、図1のS40参照)。
次に、UHT殺菌装置(日阪製作所社製、商品名FX−05)を用いて、前記溶液をUHT殺菌処理しかつ直ちに強制冷却した(第3工程における加熱殺菌処理及び冷却処理、図1のS50参照)。なお、この処理では、入り口温度を140℃に設定し、出口温度を4℃に設定し、殺菌時間を4秒に設定した。
次に、第1工程以降、pHが酸性域に保持されていた溶液をNaOHで中和してpH=約7.0にする(第3工程における中和処理、図1のS60参照)。
さらに、得られた中性の溶液を遠心式薄膜濃縮装置(アルファ・ラバル社製、商品名CT−6)を用いて固形分として20%になるように所定時間減圧濃縮した(第4工程、図1のS70参照)。
その後、噴霧乾燥装置(大川原化工機社製、商品名OC−35)を用いて90分間噴霧乾燥を行い、グアー種子由来の多糖類画分であるガラクトマンナン酵素分解物の白色粉末70部を得た(第5工程、図1のS80参照) (本発明品1)。
そして、得られた粉末状のガラクトマンナン酵素分解物をサンプルとして下記の測定を行った。具体的には、カラムにG3000PW(東ソー株式会社製)を充填したものを固定相として用い、高速液体クロマトグラフィーを行った。このような測定の結果、ポリガラクトマンナンの糖鎖の80%以上はマンノースの重合度が30〜40単位の範囲内に包含されていた。なお、このとき糖鎖単位の標準試薬として、グルコース重合度が既知の直鎖デキストリン(グルコースの重合度:50,100,150)を用いた。
本実施例のガラクトマンナン酵素分解物の平均分子量、食物繊維含量及び5%溶液の粘度を測定したところ、平均分子量が20000、食物繊維含量が82%、粘度が8mPa・sであった。そして、このように得られたものを粉末状とし、比較例の内臓知覚過敏改善食品とした。
[実施例2]:ツバキ科植物由来のポリフェノール類の調製
緑茶6kgに約90リットルの水を加え撹拌しながら加熱し、80℃で3時間抽出した。濾過により得られる抽出液を噴霧乾燥し、純度25%のポリフェノール化合物2.2kgを得た。これに水10リットルを加えて溶解させた後、酢酸エチルで分配し、酢酸エチル可溶画分であるツバキ科植物由来のポリフェノール類0.8kgを得た。
得られたポリフェノール化合物の成分組成は、(+)−カテキン0.9重量%、(+)−ガロカテキン9.9重量%、(+)−ガロカテキンガレート4.9重量%、(−)−エピカテキン5.4重量%、(−)−エピカテキンガレート7.5重量%、(−)−エピガロカテキン9.9重量%及び(−)−エピガロカテキンガレート25.8重量%であった。
[実施例3]: グルタミン誘導体の調製
0.3Mグルタミン及び1.5M塩酸エチルアミンを0.05Mホウ酸緩衝液(pH11)中、0.3Uグルタミナーゼ(市販品)存在下にて、30℃、22時間反応させ、225nmolのL−テアニンを得た。次いで、反応液をDowex 50×8、Dowex 1×2カラムクロマトグラフィー(共に室町化学工業(株)製)にかけ、これをエタノール処理することにより、反応液から目的物質を単離した。
この単離物質をアミノ酸アナライザー(日立製作所株式会社製)、及びペーパークロマトグラフィーにかけ、標準物質と同じ挙動を示すことにより、L−テアニンであることを確認した。塩酸またはグルタミナーゼで加水分解処理を行うと、1:1の割合で、グルタミン酸とエチルアミンを生じた。このように、単離物質がグルタミナーゼによって加水分解されたことから、エチルアミンがグルタミン酸のγ位に結合していたことが示された。また、加水分解で生じたグルタミン酸がL体であることは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼにより確認した。以上より、8.5gのグルタミン誘導体であるL−テアニンが得られた。
[実施例4]:アムラ抽出物の調製
アムラ乾燥果実を粉砕後篩別して40メッシュ以下にし、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出を行った。その後、抽出液を遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出液と残渣とを分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出を行い、それぞれの抽出液を合わせた後、凍結乾燥し、アムラ抽出物35.0gを得た。収率は43.8%であった。
[実施例5]:本発明品1の作製
実施例1で調製したグアー種子由来の多糖類画分50重量部と、実施例2で調製したツバキ科植物由来のポリフェノール類4重量部とを混合して、本発明品1である粉末状の内臓知覚過敏改善食品を54部得た。
[実施例6]:本発明品2の作製
実施例1で調製したグアー種子由来の多糖類画分50重量部と、実施例3で調製したグルタミン誘導体4重量部とを混合して、本発明品2である粉末状の内臓知覚過敏改善食品を54部得た。
[実施例7]:本発明品3の作製
実施例1で調製したグアー種子由来の多糖類画分50重量部と,実施例4で調製したアムラ抽出物4重量部とを混合して、本発明品3である粉末状の内臓知覚過敏改善食品を54部得た。
[実施例8]:本発明品1〜3及び比較例を用いた試験例
(1)試験例1
比較例の内臓知覚過敏改善食品をそれぞれ1日5gずつ4週間、ローマ−IIIの基準で過敏性腸症候群(IBS)と診断された男性5名、女性5名(平均年齢35±7才)に投与する試験を実施した。摂取前及び摂取4週間目に、健康関連QOLをSF−36(36−Item Short Form)、胃腸症状をGSRS(Gastrointestinal symptom Rating Scale)、不安・鬱をHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)により、それぞれ評価した。その結果を表1〜3に示す。
Figure 2010057483

Figure 2010057483

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表1〜3に示したように、比較例の内臓知覚過敏改善食品を摂取させることにより、健康関連QOL、胃腸症状および不安・鬱の評価項目が改善され、IBS等に代表される内臓知覚過敏を改善することがわかった。
(2)試験例2
本発明品1を、それぞれ1日3gずつ2週間、ローマ−IIIの基準でIBSと診断された男性4名、女性6名(平均年齢38±7才)に投与する試験を実施した。摂取前及び摂取2週間目に、健康関連QOLをSF−36(36−Item Short Form)、胃腸症状をGSRS(Gastrointestinal symptom Rating Scale)、不安・鬱をHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)により、それぞれ評価した。その結果を表4〜6に示す。
Figure 2010057483

Figure 2010057483

Figure 2010057483
表4〜6に示したように、本発明品1を摂取させることにより、健康関連QOL、胃腸症状及び不安・鬱の評価項目が改善され、IBS等に代表される内臓知覚過敏を改善することがわかった。
(3)試験例3
本発明品2を1日3gずつ4週間、ローマ−IIIの基準で過敏性腸症候群(IBS)と診断された男性6名、女性4名(平均年齢33±2才)に投与する試験を実施した。摂取前及び摂取4週間目に、健康関連QOLをSF−36(36−Item Short Form)、胃腸症状をGSRS(Gastrointestinal symptom Rating Scale)、不安・鬱をHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)により、それぞれ評価した。その結果を表7〜9に示す。
Figure 2010057483

Figure 2010057483

Figure 2010057483
表7〜9に示したように、本発明品2を摂取させることにより、健康関連QOL、胃腸症状及び不安・鬱の評価項目が有意に改善され、IBS等に代表される内臓知覚過敏を改善することがわかった。
(4)試験例4
本発明品3を1日5gずつ2週間、ローマ−IIIの基準で過敏性腸症候群(IBS)と診断された男性5名、女性3名(平均年齢31±4才)に投与する試験を実施した。摂取前及び摂取2週間目に、健康関連QOLをSF−36(36−Item Short Form)、胃腸症状をGSRS(Gastrointestinal symptom Rating Scale)、不安・鬱をHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)により、それぞれ評価した。その結果を表10〜12に示す。
Figure 2010057483

Figure 2010057483

Figure 2010057483
表10〜12に示したように、本発明品3を摂取させることにより、健康関連QOL、胃腸症状及び不安・鬱の評価項目が有意に改善され、IBS等に代表される内臓知覚過敏を改善することがわかった。
[実施例9]
実施例1で調製したグアー種子由来の多糖類画分100重量部と、実施例2で調製したツバキ科植物由来のポリフェノール類1重量部とを混合して、本発明品4である粉末状の内臓知覚過敏改善食品を101部得た。
[実施例10]
実施例1で調製したグアー種子由来の多糖類画分100重量部と、実施例3で調製したグルタミン誘導体1重量部とを混合して、本発明品5である粉末状の内臓知覚過敏改善食品を101部得た。
[実施例11]
実施例1で調製したグアー種子由来の多糖類画分100重量部と、実施例4で調製したアムラ抽出物1重量部とを混合して、本発明品6である粉末状の内臓知覚過敏改善食品を101部得た。
[実施例12]:本発明品4〜6及び比較例を用いた試験例
機能性腸障害のうち、ローマ−IIIの基準で機能性下痢症と診断された男性10名、女性10名(平均年齢35±5才)を5名ずつ4グループに分けた。グループ1(G1)には、比較例を1日5g、4週間摂取させた。グループ2(G2)には、本発明品4を1日2.5g、4週間摂取させた。グループ3(G3)には、本発明品5を1日2.5g、4週間摂取させた。グループ4(G4)には、本発明品6を1日2.5g、4週間摂取させた。摂取前日、摂取2週間後及び摂取4週間後の1日の排便回数を調べた。その結果を表13に示す。
Figure 2010057483
表13に示したように、比較例の食品を摂取したG1は、摂取4週間で1日の排便回数が危険率5%で有意に低下し、機能性下痢症が改善された。また、本発明品4〜6を摂取させたG2〜G4は、摂取4週間で1日の排便回数が危険率5%で有意に低下し、機能性下痢症が改善された。また、本発明品4〜6の飲みやすさを被験者に確認したところ、比較例と比較して本発明品4〜6は摂取量が少ないことから、摂取しやすいとの感想を得た。
以上のように、本発明品4〜6は、副作用などの問題がないため安全性が高く、しかも比較的少量の使用でも早期に改善効果が現れる、優れた内臓知覚過敏改善食品であることが証明された。
[実施例13]本発明品7の作製
グアー種子由来の多糖類画分50重量部とツバキ科植物由来のポリフェノール類4重量部との混合物である実施例5の組成物30g(即ち本発明品1;30g)及び精白米(商品名:三重コシヒカリ、松阪米穀株式会社製)800gに水1200gを添加したものを、電気式炊飯器(三洋電気株式会社製)で炊飯し、本発明品7の固形状の内臓知覚過敏改善食品である、炊飯米を得た。
[実施例14]本発明品8の作製
グアー種子由来の多糖類画分50重量部とグルタミン誘導体4重量部との混合物である実施例6の組成物100g(即ち本発明品2;100g)にアップルフレーバー2g及び水を加えて、全容2リットルの液体とした。この液体を滅菌済褐色ビン(110ミリリットル)に100ミリリットルずつ充填し、アルミキャップで密封した。その後、120℃、30分間殺菌し、本発明品8の液体状の内臓知覚過敏改善食品である、りんご風味飲料20本を得た。
[実施例15]本発明品9の作製
グアー種子由来の多糖類画分50重量部とアムラ抽出物4重量部との混合物である実施例7の組成物550g(即ち本発明品3;550g)、ブドウ糖528g、果糖85.4g、粉末クエン酸15.8g、クエン酸ナトリウム11.2g、乳酸カルシウム1.3g、塩化マグネシウム1.3g、粉末天然香料13.2g及びビタミンCに水を加えて、11リットルの液体とした。この液体を乾熱減菌済110ミリリットル褐色ビンに100ミリリットルずつ充填し、アルミキャップで密封した。その後、120℃、30分間殺菌し、本発明品9の液体状の内臓知覚過敏改善食品である、ドリンク剤100本を得た。
[実施例16]本発明品10の作製
グアー種子由来の多糖類画分50重量部とツバキ科植物由来のポリフェノール類1重量部とグルタミン誘導体1重量部とアムラ抽出物1重量部との混合物である組成物550g、ブドウ糖528g、果糖85.4g、粉末クエン酸15.8g、クエン酸ナトリウム11.2g、乳酸カルシウム1.3g、塩化マグネシウム1.3g、粉末天然香料13.2g及びビタミンCに水を加えて、11リットルの液体とした。この液体を乾熱減菌済110ミリリットル褐色ビンに100ミリリットルずつ充填し、アルミキャップで密封した。その後、120℃、30分間殺菌し、本発明品10の液体状の内臓知覚過敏改善食品である、ドリンク剤100本を得た。
[実施例17]本発明品11の作製
グアー種子由来の多糖類画分50重量部とツバキ科植物由来のポリフェノール類4重量部との混合物である実施例5の組成物1%(即ち本発明品1;1%)、ガムベース20.0%、砂糖60.0%、結晶ブドウ糖18.9%、香料1.0%を混合してガム用原料を作製した。この原料を用いて、常法により圧延、切り出し工程等を行うことにより、本発明品11の固形状の内臓知覚過敏改善食品である、チューインガムを製造した。
[実施例18]本発明品12の作製
グアー種子由来の多糖類画分50重量部とグルタミン誘導体4重量部との混合物である実施例6の組成物1.5%(即ち本発明品2;1.5%)、アラビアガム6.0%、ブドウ糖72.0%、モノフルオロリン酸ナトリウム0.7%、ゼラチン1.0%、乳糖19.0%、香料1.0%、ステアリン酸マグネシウム適量を混合して、トローチ用原料を作製した。この原料を用いて、常法により成形工程等を行うことにより、本発明品12の内臓知覚過敏改善食品である、チュアブルのトローチを製造した。
[実施例19]本発明品8を用いた試験例
りんご風味飲料とした液体状の内臓知覚過敏改善食品である本発明品8を、それぞれ1日100mLずつ2週間、ローマ−IIIの基準でIBSと診断された男性6名、女性4名(平均年齢41±6才)に投与する試験を実施した。摂取前及び摂取2週間目に、健康関連QOLをSF−36(36−Item Short Form)、胃腸症状をGSRS(Gastrointestinal symptom Rating Scale)、不安・鬱をHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)により、それぞれ評価した。その結果を表14〜16に示す。
Figure 2010057483

Figure 2010057483

Figure 2010057483
表14〜16に示したように、本発明品8を摂取させることにより、健康関連QOL、胃腸症状及び不安・鬱の評価項目が改善され、IBS等に代表される内臓知覚過敏を改善することがわかった。

Claims (3)

  1. グアー種子由来の多糖類画分の酵素分解物と、グルタミン誘導体、ツバキ科植物由来のポリフェノール類及びアムラ抽出物から選択される少なくとも1種とを含有する内臓知覚過敏改善食品。
  2. 前記グルタミン誘導体がテアニンであることを特徴とする請求項1に記載の内臓知覚過敏改善食品。
  3. 前記ツバキ科植物由来のポリフェノール類がカテキンであることを特徴とする請求項1または2に記載の内臓知覚過敏改善食品。
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