JP2010053446A - 化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Siを0.6%以上含有しても、良好な化成処理性を有する高Si冷延鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】C:0.05〜0.3質量%、Si:0.6〜3質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.1質量%以下、S:0.05質量%以下、Al:0.01〜1質量%、N:0.01質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する冷延鋼板を連続焼鈍する際に、昇温時に鋼板温度が少なくとも550℃以上で空気比0.95以上の直火バーナを用いて鋼板を加熱し、鋼板温度が650℃を超えるまで昇温し、その後、露点−25℃以下の、1〜10体積%H+残部Nガス雰囲気の炉で均熱焼鈍する。
【選択図】なし

Description

本発明は、リン酸塩処理等の化成処理を施したのち塗装をして使用される自動車用高Si冷延鋼板の製造方法に関する。特にSiの強化能を利用した引張強度590MPa以上で、TS×Elが18000MPa・%以上で加工性に優れた高Si高強度冷延鋼板の製造に好適である。
近年自動車の軽量化の観点から、引張強度590MPa以上の高い強度を有する冷延鋼板の需要が高まっている。自動車用冷延鋼板は塗装をして使用されており、その塗装の前処理として、リン酸塩処理と呼ばれる化成処理が施される。冷延鋼板の化成処理は塗装後の耐食性を確保するための重要な処理のひとつである。
冷延鋼板の強度を高めるためには、Siの添加が有効である。しかし、連続焼鈍の際にSiは、Feの酸化が起こらない(Fe酸化物を還元する)還元性のN+Hガス雰囲気でも酸化し、鋼板最表面にSi酸化物(SiO)の薄膜を形成する。それが化成処理中の化成皮膜の生成反応を阻害するため、化成皮膜が生成されないミクロな領域(スケ)ができ、化成処理性が低下する。
高Si冷延鋼板の化成処理性を改善する従来技術として、特許文献1には、酸化性雰囲気中で鋼板温度を350〜650℃に到達せしめて鋼板表面に酸化膜を形成させ、しかる後還元性雰囲気中で再結晶温度まで加熱し冷却する方法が記載されている。
また、特許文献2には、質量%で、Siを0.1%以上、及び/又は、Mnを1.0%以上含有する冷延鋼板について、鋼板温度400℃以上で鉄の酸化雰囲気下で鋼板表面に酸化膜を形成させ、その後、鉄の還元雰囲気下で前記鋼板表面の酸化膜を還元する方法が記載されている。
さらに、特許文献3には、Siを0.1wt%以上3.0wt%以下含有する高強度冷延鋼板表層の結晶粒界及び/又は結晶粒内に、化成処理性等の改良に有効な酸化物を有することを特徴とする高強度冷延鋼板が、特許文献4には、鋼板表面と直交する方向の断面を電子顕微鏡にて倍率50000倍以上で観察したときに、鋼板表面長さ10μmに占めるSi含有酸化物の割合が、任意に選択される5箇所の平均で80%以下となるようにするリン酸塩処理性に優れた鋼板が、特許文献5には、mass%で、C:0.1%超、Si:0.4%以上を含み、Si含有量(mass%)/Mn含有量(mass%)が0.4以上であり、引張強さが700MPa以上であって、鋼板表面におけるSiを主成分とするSi基酸化物の表面被覆率が20面積%以下で、かつ前記Si基酸化物の被覆領域において当該領域内に内接される最大円の直径が5μm以下とされた化成処理性に優れる高強度冷延鋼板が、特許文献6には、質量%で、C:0.01〜0.3%、Si:0.2〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%、Al:0.01〜2.0%を含有し、引張強度が500MPa以上の高張力鋼板において、該鋼板表面の結晶粒の平均粒径が0.5μm以下であり、かつ該鋼板表面の幅10μm以上の観察領域を断面TEM観察用に薄片加工し、該薄片試料を10nm以下の酸化物が観察できる条件でTEM観察により測定した、酸化シリコンおよびマンガンシリケートの1種または2種をこれらの合計量で70質量%以上含有する酸化物種が、上記断面からみた粒界領域表面に対して30%以下存在し、該鋼板表面からの深さで0.1〜1.0μmの範囲内に存在する上記酸化物種の粒径が0.1μm以下であることを特徴とする化成処理性に優れた高張力鋼板が、記載されている。
特開昭55−145122号公報 特開2006−45615号公報 特許第3386657号公報 特許第3840392号公報 特開2004−323969号公報 特開2008−69445号公報
特許文献1の製造方法では、酸化する方法により鋼板表面に形成される酸化膜の厚みに差があり、十分に酸化が起こらなかったり、酸化膜が厚くなりすぎて、あとの還元性雰囲気中での焼鈍において酸化膜の残留またははく離を生じ、表面性状が悪化する場合があった。実施例では、大気中で酸化する技術が記載されているが、大気中での酸化は酸化物が厚く生成してその後の還元が困難である、あるいは高水素濃度の還元雰囲気が必要である等の問題がある。
特許文献2の製造方法は、400℃以上で空気比0.93以上1.10以下の直火バーナを用いて鋼板表面のFeを酸化したのち、Fe酸化物を還元するN+Hガス雰囲気で焼鈍することにより、化成処理性を低下させるSiOの最表面での酸化を抑制し、最表面にFeの還元層を形成させる方法である。特許文献2には、直火バーナでの加熱温度が具体的に記されていないが、Siを多く(0.6%以上)含有する場合には、Feより酸化しやすいSiの酸化量が多くなってFeの酸化が抑制されたり、Feの酸化そのものが少なすぎたりする。その結果、還元後の表面Fe還元層の形成が不十分であり、還元後の鋼板表面にSiOが存在し、化成皮膜のスケが発生する場合があった。
特許文献3の鋼板は、Si酸化物を鋼板の内部に形成させ、表面のSi酸化物を無くすことにより、化成処理性を改善する鋼板である。製造方法は、鋼板を冷間圧延する前段階の熱間圧延時に、高温(実施例では620℃以上が良好)で巻き取り、その熱を利用しSi酸化物を鋼板の内部に形成させるものであるが、巻き取られたコイルは外側の冷却速度は速く、内側の冷却速度は遅いため、鋼板長手方向の温度ムラが大きく、コイル全長で均一な表面品質を得るのが難しいという問題があった。
特許文献4、5、6は、規定の仕方は異なるが、表面を覆うSi酸化物量の上限を規定した鋼板である。製造方法としては、連続焼鈍の昇温中または均熱中に還元性であるN+Hガス雰囲気の露点(あるいは水蒸気水素分圧比)をある範囲に制御し、Siを鋼板内部に酸化させるものである。その露点範囲は特許文献4では−25℃以上、特許文献5では−20℃から0℃と記載されている。特許文献6では予熱、昇温、再結晶化のそれぞれの工程で水蒸気水素分圧比の範囲を規制する方法を採っている。これらの方法では、一般的には露点が−25℃以下になるN+Hガス雰囲気の露点を、水蒸気や空気を導入すること等により高めに制御する必要があり、操業制御性の観点から問題があり、その結果、良好な化成処理性が安定して得られなかった。また、露点を高く(あるいは水蒸気水素分圧比を高く)することは、雰囲気の酸化性を高めるため、炉壁や炉内のロールの劣化を速めたり、ピックアップと呼ばれるスケール疵を鋼板表面に発生させる場合があった。
本発明は、前記課題を解決した、均熱炉の還元性雰囲気の露点あるいは水蒸気水素分圧比を制御することなく、かつ、Siを0.6%以上含有しても、良好な化成処理性を有する高Si冷延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の手段は、下記の通りである。
(1)第1発明は、
C:0.05〜0.3質量%、
Si:0.6〜3質量%、
Mn:1.0〜3.0質量%、
P:0.1質量%以下、
S:0.05質量%以下、
Al:0.01〜1質量%、
N:0.01質量%以下、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する冷延鋼板を連続焼鈍する際に、昇温時に鋼板温度が少なくとも550℃以上で空気比0.95以上の直火バーナを用いて鋼板を加熱し、鋼板温度が650℃を超えるまで昇温し、その後、露点−25℃以下の、1〜10体積%H+残部Nガス雰囲気の炉で均熱焼鈍することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(2)第2発明は、
C:0.05〜0.3質量%、
Si:0.6〜3質量%、
Mn:1.0〜3.0質量%、
P:0.1質量%以下、
S:0.05質量%以下、
Al:0.01〜1質量%、
N:0.01質量%以下、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する冷延鋼板を連続焼鈍する際に、昇温時に鋼板温度が少なくとも550℃以上で空気比0.95以上の直火バーナを用いて鋼板を加熱し、その後空気比0.89以下の直火バーナを用いて鋼板を加熱して鋼板温度が700℃以上になるまで昇温した後、露点が−25℃以下の、1〜10体積%H+残部Nガス雰囲気の炉で均熱焼鈍することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(3)第3発明は、第1発明または第2発明において、さらに、鋼板がCr、Mo、Ni、Cuの1種または2種以上を各々0.01〜1質量%含有することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(4)第4発明は、第1発明〜第3発明のいずれかの発明において、さらに、鋼板がTi、Nb、Vの1種又は2種以上を各々0.001〜0.1質量%含有することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(5)第5発明は、第1発明〜第4発明のいずれかの発明において、さらに、鋼板がBを0.0003〜0.005質量%含有することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(6)第6発明は、第1発明、第3発明〜第5発明のいずれかの発明において、空気比0.95以上の直火バーナを用いて鋼板温度が700℃以上になるまで昇温することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(7)第7発明は、第1発明、第3発明〜第6発明のいずれかの発明において、空気比0.95以上の直火バーナを用いた加熱は鋼板温度が800℃以下で行うことを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(8)第8発明は、第2発明〜第5発明のいずれかの発明において、空気比0.95以上の直火バーナによる鋼板加熱時間は、空気比0.89以下の直火バーナによる鋼板加熱時間以上であることを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
(9)第9発明は、第2〜第5発明、第8発明のいずれかの発明において、空気比0.89以下の直火バーナを用いた加熱は鋼板温度が800℃以下で行うことを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法である。
本発明によれば、直火バーナを用いた鋼板表面でのFeの酸化と、その後の還元を利用してSiを鋼板内部に酸化させることで、Siを0.6%以上含有する高Si冷延鋼板について、化成処理性を改善するとともに、引張強度590MPa以上で、TS×Elが18000MPa・%以上で加工性の優れた高Si冷延鋼板を製造することが出来る。また、焼鈍雰囲気の制御(特に露点を高く制御すること)が不要であるので、操業制御性の点で有利であり、また炉壁や炉内のロールの劣化を早めたり、ピックアップと呼ばれるスケール疵を鋼板表面に発生させたりする問題も改善することができる。
本発明が対象とする鋼板の化学成分の限定理由を説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味する。
Siは鋼板の加工性を低下させずに強度を上げる元素であり、0.6%未満では加工性すなわち、TS×Elが劣化する。さらに、好ましくは1.10%を超えて含有させる。ただし3%を超えると鋼板の脆化が著しく、加工性が劣化し、また化成処理性が劣化するため、上限を3%とする。
鋼板の化学成分は、Siの他に、金属組織をフェライト−マルテンサイト、TRIPなどに制御し、所望する材質を得るために、固溶強化能およびマルテンサイト生成能を有するC、Mnを、Cを0.05%以上、好ましくは0.10%以上を含有し、またMnを1.0%以上含有する。一方C、Mnを過度に添加すると、鋼板の加工性が著しく低下することから、Cを0.3%以下、Mnを3.0%以下とする。
Alは脱酸材として添加される。0.01%未満では、その効果が不十分である。一方、1%を超えると、その効果が飽和し、不経済となる。したがって、Al量は0.01〜1%とする。
その他、不可避的不純物としてP、S、Nが含有される。Pは0.1%以下、好ましくは0.015%以下である。Sは0.05%以下、好ましくは0.003%以下である。Nは0.01%以下である。
また、材質および金属組織の制御のために、Cr、Mo、Ni、Cuの1種または2種以上を各々0.01〜1%含有してもよい。鋼板の強度を上げるため、Ti、Nb、Vの1種または2種以上を各々0.001〜0.1%含有してもよい。素材の強度および塗装焼付け後の強度を上げるため、Bを0.0003〜0.005%含有させても良い。
次に製造方法について説明する。
上記成分組成の鋼を熱間圧延し、引き続き酸洗した後、冷間圧延を施し、その後連続焼鈍ラインで連続焼鈍する。連続焼鈍前までの冷延鋼板の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。
連続焼鈍ラインでは、昇温、均熱、冷却の連続する3工程が行われる。一般的な連続焼鈍ラインは、鋼板を加熱昇温する加熱炉、均熱する均熱炉、冷却炉を備える。あるいは加熱炉の前にさらに予熱炉を備える。
昇温時には、空気比を0.95以上に調整した直火バーナを用いた加熱炉で、鋼板温度550℃以上で加熱し、鋼板温度が650℃を超えるまで昇温する。これにより、鋼板表面にFe酸化物が形成される。鋼板温度550℃超の温度から空気比を0.95以上に調整した直火バーナを用いて鋼板を加熱しても十分なFe酸化量は得られない。
鋼板温度550℃未満から空気比を0.95以上に調整した直火バーナで加熱しても問題はないが、550℃未満の温度域では十分なFe酸化量は得られない。Fe酸化物形成の観点からは、できるだけ高い温度まで到達させた方が良く、好ましくは鋼板温度が700℃以上、より好ましくは750℃以上になるまで昇温する。しかし、過度に酸化させると、次の還元性雰囲気炉でFe酸化物が剥離し、ピックアップの原因となるので、空気比を0.95以上に調整した直火バーナを用いた加熱は鋼板温度が800℃以下で行うことが好ましい。
ここで、直火バーナとは、製鉄所の副生ガスであるコークス炉ガス(COG)等の燃料と空気を混ぜて燃焼させたバーナ火炎を直接鋼板表面に当てて鋼板を加熱するものである。直火バーナは、輻射方式の加熱よりも鋼板の昇温速度が速いため、加熱炉の炉長を短くしたり、ラインスピードを速く出来る利点がある。さらに、直火バーナは空気比を0.95以上とし、燃料に対する空気の割合を多くすると、未燃の酸素が火炎中に残存し、その酸素で鋼板の酸化を促進することが可能となる。空気比が高い方が酸化性が強くなるため、Fe酸化物形成の観点からは、空気比はできるだけ高い方が良く、空気比は1.10以上が好ましい。しかし、過度に酸化させると、次の還元性雰囲気の均熱炉でFe酸化物が剥離し、ピックアップの原因となるので、1.30以下とすることが好ましい。
直火バーナの燃料は、COG、液化天然ガス(LNG)等を使用できる。
加熱炉の前に予熱炉を備える場合、予熱炉の雰囲気は特に限定されない。通常行われている条件でよい。例えば、直火バーナを備えた加熱炉の高温の燃焼ガスを予熱炉に導入しても良い。また、予熱炉に、空気比0.7〜1.3の直火バーナを用いることも出来る。
直火バーナを備える加熱炉では、Feの過度の酸化を防止する点から、加熱炉前段は空気比0.95以上の直火バーナを使用し、加熱炉後段は空気比0.89以下の直火バーナ使用してもよい。この場合、加熱炉前段で空気比0.95以上の直火バーナを少なくとも鋼板温度550℃以上で使用し、加熱炉出側で鋼板温度を700℃以上にすれば、十分なFe酸化量を得ることが可能である。Fe酸化物形成の観点からは、できるだけ高い温度まで到達させた方が良く、好ましくは鋼板温度が750℃以上になるまで昇温する。また、前記効果を得るには、空気比0.95以上の直火バーナによる鋼板加熱時間は、空気比0.89以下の直火バーナによる鋼板加熱時間以上とすることが好ましい。また加熱炉後段の直火バーナの空気比は燃焼効率の点から0.7以上が好ましい。また、空気比0.89以下の直火バーナを用いた加熱雰囲気はFe還元性であり、過度に高温まで加熱すると、次の均熱炉に入る前にFe酸化物が還元されてしまい、均熱炉でのFe酸化物の還元によるSiの内部酸化の生成が少なくなることから、空気比0.89以下の直火バーナを用いた加熱は鋼板温度が800℃以下で行うことが好ましい。
直火バーナを用いて鋼板を上記のように加熱昇温した後、ラジアントチューブバーナを備えた均熱炉で均熱焼鈍する。均熱炉に導入する雰囲気ガスは、1〜10体積%H+残りNである。雰囲気ガスのH%を1〜10体積%に限定したのは、1体積%未満では
連続的に通板される鋼板表面のFe酸化物を還元するのにHが不足し、10体積%を超えてもFe酸化物の還元は飽和するため、過分のHが無駄になる。露点が−25℃超になると炉内のHOの酸素による酸化が著しくなりSiの内部酸化が過度に起こるため、露点は−25℃以下に限定する。これにより、均熱炉内は、Feの還元性雰囲気となり、加熱炉で生成したFe酸化物の還元が起こる。このとき、還元によりFeと分離された酸素が、一部鋼板内部に拡散し、Siと反応することにより、SiOの内部酸化が起こる。Siが鋼板内部で酸化し、化成処理反応が起こる鋼板最表面のSi酸化物が減少するため、鋼板最表面の化成処理性は良好となる。
均熱焼鈍は、材質調整の観点から、鋼板温度が750℃から900℃の範囲内で行われる。均熱時間は20秒から180秒が好ましい。均熱焼鈍後の工程は、品種によって様々であるが、本発明はその工程は特に限定されない。例えば、均熱焼鈍後、ガス、気水、水等により冷却され、必要に応じ、150℃から400℃の焼き戻しを施す。冷却後、あるいは焼き戻し後に、表面性状を調整するために、塩酸や硫酸などを用いた酸洗を行ってもよい。また、化成処理時の化成結晶の生成を促進し、化成処理性を向上させるために、鋼板表面にNi付着量5〜100mg/mのNiめっきを施してもいい。
表1に示す化学成分を有する鋼A〜Nを公知の方法により熱間圧延、酸洗、冷間圧延して厚さ1.5mmの鋼板を製造した。この鋼板を、直火バーナを備える加熱炉、ラジアントチューブタイプの均熱炉、冷却炉を備える連続焼鈍ラインに通して加熱焼鈍して高強度冷延鋼板を得た。直火バーナは燃料にCOGを使用し、空気比を種々変更した。均熱後の冷却は表2に示すとおり、水、気水またはガスで冷却した。その際、水冷却の場合は水温まで冷却後、一部は表2記載の保持温度まで再加熱し、保持した。気水、ガス冷却の場合は、表2に保持温度が記載されているものはその温度まで冷却し、そのまま表2記載の時間保持し、その後室温まで冷却した。表2に保持温度が記載されていないものは、室温まで冷却を行った。さらに、表2記載の酸で酸洗し、または、そのまま製品とした。
酸洗条件は下記である。
塩酸酸洗:酸濃度1〜20%、液温度30〜90℃、酸洗時間5〜30sec
硫酸酸洗:酸濃度1〜20%、液温度30〜90℃、酸洗時間5〜30sec
得られた高強度冷延鋼板の機械的特性および化成処理性を評価した。
機械的特性はJIS5号試験片(JISZ2201)を圧延方向と直角方向から採取し、JISZ2241に準拠して試験した。塗装焼付け処理後の強度として、5%予歪後、170℃で20分間保持した後、再引張における引張強さ(TSBH)を調査し、初期引張強さ(TS)と比較し、その差をΔTS(TSBH−TS)と定義した。加工性は引張強さ(TS)×伸び(El)の値で評価した。
化成処理性の評価方法を以下に記載する。
化成処理液は、日本パーカライジング社製の化成処理液(パルボンドL3080(登録商標))を用い、下記方法で化成処理を施した。
日本パーカライジング社製の脱脂液ファインクリーナ(登録商標)で脱脂したのち、水洗し、次に日本パーカライジング社製の表面調整液プレパレンZ(登録商標)で30秒表面調整行い、43℃の化成処理液(パルボンドL3080)に120秒浸漬した後、水洗し、温風で乾燥した。
化成皮膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で、倍率500倍で無作為に5視野を観察し、化成皮膜のスケ面積率を画像処理により測定し、スケ面積率によって以下の評価をした。○、◎が合格レベルである。
◎:5%以下
○:5%超10%以下
×:10%超え
本実施例に供した鋼、連続焼鈍ラインの製造条件および評価結果を表2に示した。
Figure 2010053446
Figure 2010053446
本発明例では、引張強さ(TS)590MPa以上、TS×El:18000MPa・%以上の良好な加工性と、良好な化成処理性が得られ、比較例は加工性、化成処理性のいずれかが劣る。
表1に示す化学成分を有する鋼A〜Fを公知の方法により熱間圧延、酸洗、冷間圧延を行い厚さ1.5mmの鋼板を製造した。この鋼板を、予熱炉、直火バーナを備える加熱炉、ラジアントチューブタイプの均熱炉、冷却炉を備える連続焼鈍ラインに通して加熱焼鈍して高強度冷延鋼板を得た。直火バーナは燃料にCOGを使用し、空気比を種々変更した。均熱後の冷却は表3に示すとおり、水、気水またはガスで冷却した。その際、水冷却の場合は水温まで冷却後、一部は表3記載の保持温度まで再加熱し、保持した。気水、ガス冷却の場合は、表3に保持温度が記載されているものはその温度まで冷却し、そのまま表3記載の時間保持し、その後室温まで冷却した。表3に保持温度が記載されていないものは、室温まで冷却を行った。さらに、表3記載の酸で酸洗し、または、そのまま製品とした。
得られた高強度冷延鋼板の機械的特性と化成処理性を評価した。機械的特性と化成処理性の評価は実施例1に記載した方法で評価した。
本実施例に供した鋼、連続焼鈍ラインの製造条件および評価結果を表3に示した。
Figure 2010053446
本発明例では、引張強さ(TS)590MPa以上、TS×El:18000MPa・%以上の良好な加工性と、良好な化成処理性が得られ、比較例は加工性、化成処理性のいずれかが劣る。
表1に示す化学成分を有する鋼A〜Nを公知の方法により熱間圧延、酸洗、冷間圧延して厚さ1.5mmの鋼板を製造した。この鋼板を、予熱炉、直火バーナを備える加熱炉、ラジアントチューブタイプの均熱炉、冷却炉を備える連続焼鈍ラインに通して加熱焼鈍して高強度冷延鋼板を得た。直火バーナを備える加熱炉は4ゾーンに分かれ、各ゾーン長は同じである。直火バーナは燃料にCOGを使用し、加熱炉の前段(3ゾーン)と後段(1ゾーン)の空気比を種々変更した。均熱後の冷却は表4に示すとおり、水、気水またはガスで冷却した。その際、水冷却の場合は水温まで冷却後、一部は表4記載の保持温度まで再加熱し、保持した。気水、ガス冷却の場合は、表4に保持温度が記載されているものはその温度まで冷却し、そのまま表4記載の時間保持し、その後室温まで冷却した。表4に保持温度が記載されていないものは、室温まで冷却を行った。さらに、表4記載の酸で酸洗し、または、そのまま製品とした。
得られた高強度冷延鋼板の機械的特性と化成処理性を評価した。機械的特性と化成処理性の評価は実施例1に記載した方法で行った。
本実施例に供した鋼、連続焼鈍ラインの製造条件および評価結果を表4に示した。
Figure 2010053446
本発明例では、引張強さ(TS)590MPa以上、TS×El:18000MPa・%以上の良好な加工性と、良好な化成処理性が得られ、比較例は、加工性、化成処理性のいずれかが劣る。
本発明は、良好な化成処理性を有する高Si含有の高強度冷延鋼板の製造方法として利用することができる。

Claims (9)

  1. C:0.05〜0.3質量%、
    Si:0.6〜3質量%、
    Mn:1.0〜3.0質量%、
    P:0.1質量%以下、
    S:0.05質量%以下、
    Al:0.01〜1質量%
    N:0.01質量%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する冷延鋼板を連続焼鈍する際に、昇温時に鋼板温度が少なくとも550℃以上で空気比0.95以上の直火バーナを用いて鋼板を加熱し、鋼板温度が650℃を超えるまで昇温し、その後、露点−25℃以下の、1〜10体積%H+残部Nガス雰囲気の炉で均熱焼鈍することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  2. C:0.05〜0.3質量%、
    Si:0.6〜3質量%、
    Mn:1.0〜3.0質量%、
    P:0.1質量%以下、
    S:0.05質量%以下、
    Al:0.01〜1質量%
    N:0.01質量%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する冷延鋼板を連続焼鈍する際に、昇温時に鋼板温度が少なくとも550℃以上で空気比0.95以上の直火バーナを用いて鋼板を加熱し、その後空気比0.89以下の直火バーナを用いて鋼板を加熱して鋼板温度が700℃以上になるまで昇温した後、露点が−25℃以下の、1〜10体積%H+残部Nガス雰囲気の炉で均熱焼鈍することを特徴とする化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  3. さらに、鋼板がCr、Mo、Ni、Cuの1種または2種以上を各々0.01〜1質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  4. さらに、鋼板がTi、Nb、Vの1種又は2種以上を各々0.001〜0.1質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  5. さらに、鋼板がBを0.0003〜0.005質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  6. 空気比0.95以上の直火バーナを用いて鋼板温度が700℃以上になるまで昇温することを特徴とする請求項1または3〜5記載の化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  7. 空気比0.95以上の直火バーナを用いた加熱は鋼板温度が800℃以下で行うことを特徴とする請求項1、3〜6のいずれかの項に記載の化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  8. 空気比0.95以上の直火バーナによる鋼板加熱時間は、空気比0.89以下の直火バーナによる鋼板加熱時間以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかの項に記載の化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
  9. 空気比0.89以下の直火バーナを用いた加熱は鋼板温度が800℃以下で行うことを特徴とする請求項2〜5、8のいずれかの項に記載の化成処理性に優れた高Si冷延鋼板の製造方法。
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