本発明の偏光板の製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に接着剤層を介して酢酸セルロース系樹脂フィルムを、他方の面に接着剤層を介してアクリル系樹脂フィルムを積層して偏光板を製造する方法であることを前提とする。
本発明の製造方法に用いられる偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、たとえばアルデヒド類で変性されたポリビニルポリマール、ポリビニルアセタールなども使用し得る。また、偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、通常1000〜10000、好ましくは1500〜5000である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂をフィルム状に製膜したもの(ポリビニルアルコール系樹脂フィルム)が、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの膜厚は特に限定されないが、たとえば10〜150μmである。
偏光フィルムは通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、製造される。
一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色と同時に行ってもよいし、染色の後に行ってもよい。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。勿論、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行うなどの乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。
延伸倍率は、通常3〜8倍である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、たとえば二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬すればよい。二色性色素として具体的には、ヨウ素、二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5〜20重量部である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1800秒である。
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1800秒である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常0.1〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60〜1200秒、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、たとえば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃であり、浸漬時間は、通常1〜120秒である。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は通常、熱風乾燥機、遠赤外線ヒータを用いて行われる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒であり、好ましくは120〜600秒である。
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色およびホウ酸処理が施されて、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、通常5〜40μmの範囲内、好ましくは10〜35μmの範囲内である。本発明の偏光板の製造方法では、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に接着剤層を介して酢酸セルロース系樹脂フィルムを、他方の面に接着剤層を介してアクリル系樹脂フィルムを積層して偏光板を製造する。
本発明の製造方法に用いられるアクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂からなるフィルムであり、アクリル系樹脂とは、メタクリル樹脂および必要に応じて添加される添加剤などを混合し、溶融混練して得られた材料のことを意味する。
上記メタクリル樹脂とは、メタクリル酸エステルを主体とする重合体である。メタクリル樹脂は、1種類のメタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステルと他のメタクリル酸エステルやアクリル酸エステルなどとの共重合体であってもよい。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜4程度である。また、メタクリル酸エステルと共重合し得るアクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルが好ましく、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8程度である。これらの他、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有する化合物であるスチレンのような芳香族ビニル化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などを共重合体中に含んでいてもよい。
アクリル樹脂は、アクリルゴム粒子を含有するのが、フィルムの耐衝撃性や製膜性の点で好ましい。アクリル樹脂に含まれうるアクリルゴム粒子の量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。アクリルゴム粒子の量の上限は臨界的では無いが、アクリルゴム粒子の量があまり多いと、フィルムの表面硬度が低下し、またフィルムに表面処理を施す場合、表面処理剤中の有機溶剤に対する耐溶剤性が低下する。したがって、アクリル樹脂に含まれるアクリルゴム粒子の量は、80重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。
このようなアクリルゴム粒子は、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものであってもよいし、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものであってもよい。この弾性重合体として、具体的には、アクリル酸アルキル50.0〜99.9重量%と、これと共重合可能な他のビニル系単量体を少なくとも1種類0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10.0重量%とからなる単量体の重合により得られる架橋弾性共重合体が、好ましく用いられる。ここで、アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシルなどが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8程度である。また、アクリル酸アルキル以外の単官能単量体は、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であり、例えば、メタクリル酸メチルのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などが挙げられる。また、多官能単量体は、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物であり、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートやブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸メタリルのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとはメタクリレート又はアクリレートをいい、(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸又はアクリル酸をいう。
アクリル系樹脂フィルムに耐衝撃性や製膜性を付与するため、フィルムを1軸好ましくは2軸方向に延伸してもよい。この場合には、必ずしもアクリルゴム粒子を含有させる必要は無い。延伸倍率は、通常、1.1倍から10倍、好ましくは1.1倍から5倍程度が選択される。
ここで、アクリル系樹脂には、通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有させてもよい。中でも紫外線吸収剤は、耐候性を高めるうえで好ましく用いられる。紫外線吸収剤の例としては、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールのようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンのような2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルのようなサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。アクリル樹脂に紫外線吸収剤が含まれる場合、その量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上であり、また好ましくは2.0重量%以下である。
アクリル系樹脂フィルムに耐熱性を付与するために、ラクトン環含有重合体を含有してもよい。好ましい例としては、特開2007−127892号公報に記載された例が挙げられる。
アクリル系樹脂フィルムには防眩性が付与されてもよい。防眩性を付与する方法としては、アクリル系樹脂フィルムと、該アクリル系樹脂フィルム表面上に積層された、微細な凹凸表面を有するハードコート層とを備えており、かつ内部散乱機能をアクリル系樹脂フィルムに持たせる一方、ハードコート層から内部散乱機能を無くすかまたはほぼ無くし、主に表面反射特性のみを付与した構成である事が好ましい。かかる構成により、内部散乱特性と反射特性とを独立に制御することが可能となり、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、また、高精細の画像表示装置の表面に配置したときに、ギラツキを発生させずに高いコントラストを発現する防眩フィルムを容易に得ることができる。
アクリル系樹脂フィルムは、透明アクリル系樹脂からなる少なくとも1つの透明アクリル系樹脂層と、透明アクリル樹脂とは異なる屈折率を有する微粒子を含有する少なくとも1つの光拡散層とを含む多層構造を有しており、その内部ヘイズは5%以上30%以下とされる。ここで、アクリル系樹脂フィルムの「内部ヘイズ」とは、アクリル系樹脂フィルムを光学的に透明な粘着剤を用いてガラス基板に貼合し、該ガラス基板に貼合されたアクリル系樹脂フィルムについて、JIS K 7136に示される方法に準拠して測定されたヘイズと定義される。このように、ガラス基板に貼合することにより、アクリル系樹脂フィルムの反りが防止されるとともに、アクリル系樹脂フィルム表面形状に起因するヘイズが考慮されなくなるため、アクリル系樹脂フィルムの内部ヘイズが測定されることとなる。なお、通常、アクリル系樹脂フィルム表面は、ヘイズ値に大きく影響を与えるような凹凸形状を有していないことから、アクリル系樹脂フィルム表面形状に起因するヘイズは無視できる程度である。
アクリル系樹脂フィルムの内部ヘイズは、5%以上であり、好ましくは10%以上である。内部ヘイズを5%以上にすることにより、ギラツキを解消することができ、10%以上とすることにより、より効果的にギラツキを解消することができる。また、アクリル系樹脂フィルムの内部ヘイズは30%以下である。アクリル系樹脂フィルムのヘイズが30%を上回ると、画像表示装置に適用したときに、結果として画面が暗くなり、視認性が損なわれる傾向にある。十分な明るさを確保するためには、内部ヘイズを20%以下とすることが好ましい。なお、散乱によるギラツキ防止能をアクリル系樹脂フィルムに持たせる場合、微細凹凸形状を有するハードコート層の内部ヘイズは、本質的には不必要であり、内部散乱特性と反射特性とを独立に制御するためには、実質的にゼロとすることが好ましい。
光拡散層に分散される微粒子は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの無機粒子、およびこれら無機粒子に脂肪酸などで表面処理を施したものなどの無機系粒子であってもよいが、無機系粒子は、一般的に粒度分布が大きく、アクリル系樹脂中で十分に分散しにくく、また、アクリル系樹脂との屈折率差が大きいため光透過性を低下させやすい傾向にあることから、樹脂粒子を用いることが好ましい。当該微粒子の屈折率は、光拡散機能を付与するために、アクリル系樹脂の屈折率とは異なる値を有していることが必要であり、両者の屈折率差は、0.01以上であるのが好ましい。また、適当な内部ヘイズ値を確保するためには、この屈折率差をあまり大きくしない方が好ましく、たとえば、両者の屈折率差は、0.02未満であるのが好ましい。微粒子の屈折率は、用いられるアクリル系樹脂の種類などを考慮して適宜選択されるが、上記したようなアクリル系樹脂を用いる場合、アクリル系樹脂の屈折率が一般的に1.49程度であることから、微粒子の屈折率は、1.47〜1.51程度の範囲から、上記の条件を満たすように選択することが好ましい。
上記微粒子は、散乱の等方性、均一性を考慮すると、球形またはほぼ球形であることが好ましい。また、表面に微細な凹凸があるような形状および無定形である粒子は、粒径より小さい表面の微細凹凸などの構造に起因して予期せぬ散乱が発生する可能性があるため、好ましくない。微粒子の重量平均粒子径は、4μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上12μm以下である。微粒子の重量平均粒子径が4μmを下回る場合には、広角側の散乱光強度が上昇し、結果として、画像表示装置に適用したときにコントラストを低下させる傾向にある。また、その重量平均粒子径が20μmを上回る場合には、要求する散乱効果が得られない場合があり、あるいは要求する散乱効果を得るためには樹脂基材フィルムを厚くする必要が生じ得る。
好ましく用いられる微粒子の具体的な例を挙げれば、球形またはほぼ球形の樹脂ビーズであり、かかる好適な樹脂ビーズとしては、たとえば、メラミンビーズ(屈折率:1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率:1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率:1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率:1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率:1.53)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率:1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率:1.46)などを挙げることができる。
光拡散層において上記微粒子は、アクリル系樹脂100重量部に対して、5重量部以上20重量部以下含有されることが好ましい。微粒子の含有量が5重量部未満であると、均一で十分な内部散乱が得られず、画像表示装置に適用したときにギラツキが発生する傾向にある。また、微粒子の含有量が20重量部を超えると、内部散乱が大きくなり、結果としてヘイズが高くなって、画像表示装置に適用したときに画面が暗くなり、視認性が損なわれる上に、広角側の散乱光強度も上昇し、画像表示装置に適用したときにコントラストを低下させる傾向にある。
アクリル系樹脂フィルムの厚みは10μm以上250μm以下であることが好ましく、より好ましくは、20μm以上100μm以下である。30μm以下の薄いフィルムとする場合には、フィルム剛性を付与するため1軸好ましくは2軸延伸フィルムとした方がよい。アクリル系樹脂フィルムの厚みが10μm未満である場合には、フィルムの剛性が著しく低下しハンドリングが困難となる傾向にある。
一方、十分な散乱特性を得る場合には、30μm以上が好ましい。また、アクリル系樹脂フィルムの厚みが250μmを上回ることは最近の画像表示装置の薄型化への要求およびコストなどの観点から好ましくない。アクリル系樹脂フィルム全体の厚みを薄くする観点からは、150μm以下、さらには120μm以下とするのがより好ましい。
透明アクリル樹脂層の厚みは、特に制限されないが、たとえば10μm以上50μm以下とすることができ、好ましくは15μm以上40μm以下である。また、光拡散層の厚みは、特に制限されないが、たとえば10μm以上150μm以下とすることができ、好ましくは30μm以上90μm以下である。
光拡散層を形成するために用いられる樹脂組成物は、上記アクリル系樹脂と上記微粒子とを混合し、溶融混練することにより得ることができる。
透明アクリル系樹脂層を構成する透明アクリル系樹脂および光拡散層を構成する上記微粒子を含有する樹脂組成物から、本発明に用いる樹脂基材フィルムを得るための方法としては、たとえば、フィードブロックを用いる方法、マルチマニホールドダイを用いる方法など、一般に知られる種々の方法を用いることができる。中でも、たとえばフィードブロックを介して積層し、Tダイから多層溶融押出成形し、得られる積層フィルム状物の少なくとも片面をロールまたはベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。とりわけ、アクリル系樹脂フィルムの表面平滑性および表面光沢性を向上させる観点からは、上記多層溶融押出成形して得られる積層フィルム状物の両面をロール表面またはベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトにおいて、透明樹脂層を構成する透明樹脂と接するロール表面またはベルト表面は、フィルム表面への平滑性付与のために、その表面が鏡面となっているものが好ましい。
アクリル系樹脂フィルムは、2つの透明アクリル系樹脂層によって光拡散層が狭持された3層構造とすることができ、あるいは、透明アクリル系樹脂層とその上に積層された光拡散層とからなる2層構造とすることもできる。これらのなかでは3層構造とすることが好ましい。2層構造である場合には、樹脂基材フィルムのいずれかの面に光拡散層表面が露出することになり、表面の平滑性が悪化し、ハードコート層の微細凹凸形状に予期せぬ影響を与えたり、または、画像表示装置に貼り合わせて使用する際に貼合気泡などの不都合が発生したりする可能性があるためである。また、光拡散層の表面が露出しないように、透明アクリル系樹脂層と光拡散層とを交互に配置して3層以上の積層体からなる樹脂基材フィルムを得ることも可能であるが、コストなどに鑑みると、3層構造とすることが好ましい。
(ハードコート層)
アクリル系樹脂フィルムに用いられる、表面に微細凹凸形状を有するハードコート層は、上記アクリル系樹脂フィルム表面上に積層されるものであり、その表面ヘイズが0.5%以上15%以下、内部ヘイズが2%以下である。ここで、ハードコート層の表面ヘイズおよび内部ヘイズは、次のようにして測定される。すなわち、まず、該ハードコート層をヘイズがほぼ0%であるトリアセチルセルロースフィルム上に形成した後、トリアセチルセルロースフィルム側が接合面となるように、該積層フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。当該ヘイズは、ハードコート層全体のヘイズに相当する。次に、ハードコート層の凹凸表面に、ヘイズがほぼ0であるトリアセチルセルロースフィルムをグリセリンを用いて貼合し、再度JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。当該ヘイズは、表面凹凸に起因する表面ヘイズが表面凹凸上に貼合されたトリアセチルセルロースフィルムによってほぼ打ち消されていることから、ハードコート層の「内部ヘイズ」とみなすことができる。したがって、ハードコート層の「表面ヘイズ」は、下記式(1)より求められる。
表面ヘイズ=全体のヘイズ−内部ヘイズ (1)
上記したように、内部散乱特性と反射特性とを独立に制御するために、内部散乱特性が主にアクリル系樹脂フィルムに付与されることから、ハードコート層の内部ヘイズは2%以下であり、好ましくは実質的に0%である。ハードコート層の内部ヘイズが実質的に0%である場合、ハードコート層のヘイズは実質、表面ヘイズのみからなる。ハードコート層の表面ヘイズは、白ちゃけを抑制する観点から、15%以下とされ、より効果的に白ちゃけを抑えるためには5%以下であることが好ましい。ただし、ハードコート層の表面ヘイズが0.5%を下回る場合には十分な防眩性を示さないことから好ましくない。
上記した光学特性を満たす表面凹凸が付与されたハードコート層の作製方法としては、特に制限されず、たとえば、フィラーを分散させた樹脂溶液を樹脂基材フィルム上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸を形成する方法や特開2006−53371号公報に記載されたようなエンボス法などを挙げることができる。
フィラーを分散させた樹脂溶液を樹脂基材フィルム上に塗布することによってハードコート層を形成する場合には、ハードコート層の内部ヘイズを2.0%以下、好ましくはほぼ0%とするために、フィラーの屈折率とハードコート層の基材となる樹脂(ハードコート樹脂)の屈折率の比をほぼ1とするか、可視光の波長よりも小さい(100nm以下程度)無定形シリカ一次粒子からなる多孔質シリカ二次粒子をハードコート樹脂中に分散させることによって表面凹凸を形成すればよい。前者の方法を用いる場合には、ハードコート樹脂が1.50前後の屈折率を示すことが多いので、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率:1.49)もしくはメタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率:1.50〜1.59)、ポリエチレンビーズ(屈折率:1.53)などを適宜選択して用いればよい。
フィラーを分散させる樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができるが、生産性、硬度などの観点から紫外線硬化性樹脂が好ましく使用される。紫外線硬化性樹脂としては、市販されているものを用いることができる。たとえば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートの単独または2種以上と、イルガキュアー 907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー 184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリン TPO(BASF社製)などの光重合開始剤との混合物を、紫外線硬化性樹脂とすることができる。たとえば紫外線硬化性樹脂を用いた場合においては、紫外線硬化性樹脂にフィラーを分散した後、該樹脂組成物を樹脂基材フィルムに塗布し、紫外線を照射することにより、ハードコート樹脂中にフィラーが分散された、ハードコート層を形成することができる。
エンボス法により微細凹凸形状を有するハードコート層を形成する場合には、特開2006−53371号公報などに開示されているように、微細凹凸形状が形成された金型を用いて、金型の形状を透明樹脂フィルムに転写すればよい。金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行なうことが好ましく、エンボスとしては、紫外線硬化性樹脂を用いるUVエンボス法が好ましい。
UVエンボス法では、樹脂基材フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂層を形成し、その紫外線硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が紫外線硬化性樹脂層に転写される。具体的には、アクリル系樹脂フィルム上に紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化性樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で、アクリル系樹脂フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、次に、硬化後の紫外線硬化性樹脂層が形成されたアクリル系樹脂フィルムを金型から剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化性樹脂に転写する。紫外線硬化性樹脂の種類は特に制限されない。また、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光開始剤を適宜選定することにより、紫外線より波長の長い可視光で硬化が可能な可視光硬化性樹脂を用いてもよい。
ハードコート層の厚みは特に制限されないが、2μm以上20μm以下であることが好ましい。ハードコート層の厚みが2μm未満であると、十分な硬度が得られず、傷付きやすくなる傾向にあり、また、20μmより厚くなると、割れやすくなったり、ハードコート層の硬化収縮によりフィルムがカールして生産性が低下したりする傾向がある。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、その最表面、すなわちハードコート層の凹凸面側に低反射膜を有していてもよい。低反射膜がない状態でも十分な防眩機能を発揮するが、最表面に低反射膜を設けることにより、防眩性をさらに向上させることができる。低反射膜は、ハードコート層の上に、それよりも屈折率の低い低屈折率材料の層を設けることで形成できる。そのような低屈折率材料として、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、氷晶石(3NaF・AlF3またはNa3AlF6)などの無機材料微粒子を、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂などに含有させた無機系低反射材料;フッ素系またはシリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などの有機低反射材料が挙げられる。
アクリル系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光フィルムと接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を行うのが好ましい。また、表面に易接着層をコーティング処理により形成する場合もある。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理、コロナ処理が好適である。
また本発明の製造方法に用いられる酢酸セルロース系樹脂フィルムは、セルロースの部分または完全エステル化物のフィルムであって、たとえば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどからなるフィルムを挙げることができる。より具体的には、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルムなどが挙げられる。このような酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、たとえばフジタックTD80(富士フィルム(株)製)、フジタックTD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタックTD80UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC8UY(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に接着剤層を介して酢酸セルロース系樹脂フィルムを、他方の面に接着剤層を介してアクリル系樹脂フィルムを積層してなるが、酢酸セルロース系樹脂フィルムは、液晶パネルと貼着ざれる側に設置される。このため、酢酸セルロース系樹脂フィルムに光学補償性能を付与する事が好ましい。たとえば、酢酸セルロース系樹脂フィルムに位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロース系フィルム表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布したフィルム、セルロース系フィルムを一軸延伸または二軸延伸して得られるフィルムなどが挙げられる。市販のセルロース系の光学補償フィルムとしては例えば、WVフィルム(Wide View film) WV BZ 438(富士フィルム(株)製)、WVフィルム(Wide View film) WV EA(富士フィルム(株)製)、KC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4HR−1(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UEW(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面には、用途に応じて、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理などの表面処理が施されてもよい。
酢酸セルロース系樹脂フィルムは、ロール状態にあると、フィルム同士が接着してブロッキングを生じ易い傾向にあるので、通常は、ロール端部に凹凸加工を施したり、端部にリボンを挿入したりしてロール巻きとされる。また、この酢酸セルロース系樹脂フィルムには、偏光フィルムとの接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
本発明の製造方法に用いられるアクリル系樹脂フィルムおよび酢酸セルロース系樹脂フィルムの厚みは、薄い方が好ましいが、薄すぎると、強度が低下し、加工性に劣るものとなり、一方で厚すぎると、透明性が低下したり偏光板の重量が大きくなったりするなどの問題が生じる。そこで、これらのフィルムの適当な厚みは、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。
アクリル系樹脂フィルムおよび酢酸セルロース系樹脂フィルムの厚み差が大きいと、偏光フィルムと貼合し偏光板となった際に偏光板のカールが生じ易い傾向にある。これは偏光フィルムに対して非対称構造となるために生じると考えられる。アクリル系樹脂フィルムおよび酢酸セルロース系樹脂フィルムの厚み差は2.5倍以下、好ましくは2倍以下、より好ましくは1.5倍以下であり、1倍に近いもの程よい。
本発明の製造方法において、偏光フィルムとアクリル系樹脂フィルムとの接着に用いる接着剤、偏光フィルムと酢酸セルロース系樹脂フィルムとの接着に用いる接着剤は、アクリル系樹脂フィルムおよび酢酸セルロース系樹脂フィルムの接着性を考慮して、それぞれ異なる種類のものを用いることもできる。ただし、施工の容易性なども考慮すると、アクリル系樹脂フィルムおよび酢酸セルロース系樹脂フィルムが共に偏光フィルムに接着するようであれば、両面とも同じ接着剤を用いるのが有利である。
接着剤は、接着剤層を薄くする観点から、水系のもの、すなわち、接着剤成分を水に溶解したものまたは水に分散させたものが好ましい。たとえば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂などを用い、接着性を向上させるために、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物などを配合した組成物とするのが一般的である。このような水系の接着剤を用いた場合、接着剤層の厚みは、通常1μm以下となり、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂を用いてもよい。このようなポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を接着剤として用いる。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤には、上述したように接着性を向上させるために、エポキシ化合物、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などを配合することができる。エポキシ化合物は、たとえば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸などのジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られる、水溶性のポリアミドエポキシ樹脂を用いることができる。このようなポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、スミレーズレジン650(住化ケムテックス(株)製)、スミレーズレジン675(住化ケムテックス(株)製)、WS−525(日本PMC(株)製)などが挙げられる。エポキシ化合物を配合する場合、その添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。
また、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤には金属化合物コロイドを含有してもよい。金属化合物コロイドとしては、アルミナコロイド、シリカコロイド、ジルコニアコロイド、チタニアコロイドおよび酸化スズコロイドなどが挙げられる。金属コロイドは平均粒子径は1〜100nm、好ましくは1〜50nmである。金属化合物コロイドの添加量は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、200重量部以下、好ましくは20〜140重量部であるのが好ましい。金属化合物コロイドの配合割合が、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、200重量部を超えると、接着剤中における、ポリビニルアルコール系樹脂の割合が小さくなり、接着性が劣る傾向にある。
ここで、図1は、本発明の偏光板の製造方法における偏光フィルムと、酢酸セルロース系樹脂フィルムおよびアクリル系樹脂フィルムとの積層を模式的に示す斜視図である。本発明の偏光板の製造方法では、図1に示すように、接着剤を塗布後、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム1の一方の面に接着剤層を介して酢酸セルロース系樹脂フィルム2を、他方の面に接着剤層を介してアクリル系樹脂フィルム3を積層し、ニップロール5a,5bなどで挟んで貼り合わせて偏光板4を作製する。なお、この積層は、図1に示すように搬送方向Aに偏光フィルム1、酢酸セルロース系樹脂フィルム2およびアクリル系樹脂フィルム3を搬送しながら、連続的に行うことができる。
接着剤の塗布方法は、通常一般的に知られているものでよく、たとえば流延法、マイヤー法、バーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、接着剤を一方もしくは両方のフィルムの接着面、または接着されるべき2枚のフィルムの間に塗布する方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物である偏光フィルムまたは保護フィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、または両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
本発明の偏光板の製造方法は、酢酸セルロース系樹脂フィルム2およびアクリル系樹脂フィルム3が積層される直前の偏光フィルム1の水分率を8重量%以上に維持することを特徴の1つとする。前記積層される直前の偏光フィルム1の水分率が8重量%未満である場合には、得られた偏光板4において凹み状の欠陥が発生しやすくなる。これは、次の理由によるものと考えられる。すなわち、凹み状の欠陥は、フィルムがロールに接触する際に発生する歪みがそのまま残って顕在化したものと推定しているところ、偏光フィルム1の水分率が低いと、偏光フィルムが硬くなりすぎて、発生した歪みを緩和しにくくなる結果、凹み状の欠陥が残りやすくなるものと考えられる。一方、前記積層される直前の偏光フィルム1の水分率が高すぎる場合には、偏光フィルム1の乾燥が不十分で、保護フィルム積層後の乾燥によって偏光フィルム1が収縮し、得られた偏光板4にムラ状の欠陥が発生し易い傾向にある。そのため、前記水分率は20重量%以下であることが好ましい。さらには、前記水分率は8〜12重量%の範囲内であることが好ましい。
前記水分率は、たとえば、酢酸セルロース系樹脂フィルム2およびアクリル系樹脂フィルム3が積層される直前の偏光フィルム1を、105℃のオーブンで1時間乾燥させ、下記式によってその前後の重量から算出することができる。
水分率=〔1−(乾燥後重量)/(乾燥前重量)〕×100(%)
なお、酢酸セルロース系樹脂フィルム2およびアクリル系樹脂フィルム3が積層される直前の偏光フィルム1の水分率を8重量%以上に維持するためには、具体的には、上述のように洗浄した後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる際の温度と時間を適宜調整すればよい。具体的には、乾燥炉が1個だけであれば、そこでの温度と滞留時間を適宜調整することにより、偏光フィルム1の水分率が調整できる。また、乾燥炉を2個またはそれ以上の多段で設け、各乾燥炉の温度、各乾燥炉での滞留時間を調整する方法も有効である。
また本発明の偏光板の製造方法は、偏光フィルム1に酢酸セルロース系樹脂フィルム2およびアクリル系樹脂フィルム3を積層した後の延伸方向の張力を600N/m以下とすることも特徴の1つとする。ここでいう張力は、偏光フィルム1の延伸方向、すなわち長手方向にかかる力である。前記張力が600N/mを超える場合には、得られた偏光板において凹み欠陥が発生し易くなる。これは、延伸方向の張力が大きいほど、フィルムがロールに接触する際に発生する歪みが大きくなるという理由によるものと推定している。一方、前記張力が低すぎる場合には、得られた偏光板にうねりが生じ易いため、前記張力は100N/m以上であることが好ましい。さらには、前記張力は、300〜500N/mの範囲内であることが一層好ましい。なお、偏光フィルム1に酢酸セルロース系樹脂フィルム2およびアクリル系樹脂フィルム3を積層した後の前記張力は、たとえば図1に示す例のように、これらを挟み込むニップロール5a,5bと、それより下流側に設けられる別のニップロール(図示せず)との間の引っ張り力により調整することができる。
本発明の偏光板の製造方法では、上述したように偏光フィルム1の一方の面に酢酸セルロース系樹脂フィルム2、他方の面にアクリル系樹脂フィルム3を積層した後、延伸方向の張力を600N/m以下に保持しながら乾燥処理を施すことが好ましい。積層フィルムに発生する延伸方向の張力は、上述の如く、図1に示す挟み込み用のニップロール5a,5bと、それより下流側に設けられる別のニップロール(図示せず)との間の引っ張り力により調整できるが、下流側のニップロールは、乾燥炉の下流側(たとえば、乾燥炉の出口付近)に設けられることが多いので、保護フィルムを積層した直後の延伸方向の張力をそのまま保って乾燥処理を行う方が、装置上好都合である。したがって、乾燥処理の際の前記張力も、保護フィルム積層直後の張力と同様、100〜600N/m、さらには300〜500N/mの範囲内であることが好ましい。
乾燥処理は、たとえば、熱風を吹き付けることにより行われるが、そのときの温度は、通常40〜100℃、好ましくは60〜100℃の範囲から適宜選択される。乾燥時間は、通常20〜1200秒である。乾燥後はさらに、室温(20℃)またはそれよりやや高い温度、たとえば20〜50℃の温度で12〜600時間養生するのが好ましい。養生の際の温度は、乾燥時に採用した温度よりも低く設定されるのが一般的である。
このようにして本発明の製造方法で得られた偏光板は、通常、その片面または両面に粘着剤層が形成される。片面のみに粘着剤層を設ける場合には、当該偏光板を液晶表示装置に適用する場合は、酢酸セルロース系樹脂フィルムが積層された側を液晶セルに向けるため、酢酸セルロース系樹脂フィルムが積層された側に粘着剤層を形成する。
粘着剤層の厚みは、通常5〜100μm、好ましくは5〜40μmである。粘着剤層が薄すぎると粘着性が低下し、厚すぎると粘着剤がはみ出すなどの不具合を生じ易くなる。
粘着剤層を形成するための粘着剤は、通常、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベース樹脂とし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などから選ばれる架橋剤、さらにはシランカップリング剤などを加えた組成からなる。
形成された粘着剤層の表面は通常、離型処理が施されたセパレータフィルムで保護されている。セパレータフィルムは、液晶セルなどへ偏光板を貼合する前に剥がされる。
粘着剤層付きの偏光板は、通常、形状の大きなロール材料、シート材料の形態を有しており、所望の形状と透過軸を有する偏光板を得るためには、鋭利な刃を持った切断工具により切断(チップカット)される。このため、切断して得られる偏光板チップには、外周端部において偏光フィルムが外部へ露出した状態が生じてしまう。この状態の偏光板チップを、たとえばヒートショック試験などの耐久性試験にかけると、一般的に使用されている偏光板(たとえば偏光フィルムの両面に酢酸セルロース系樹脂フィルムを積層した偏光板)と比較して、剥離、クラックなどといった不具合が生じ易い傾向にある。このため、本発明の製造方法で得られた偏光板の偏光板チップには、外周端部をフライカット法などで連続的に切削する方が好ましい。
本発明の偏光板には、アクリル系樹脂フィルムを用いているので、偏光フィルムの保護フィルムとして酢酸セルロース系樹脂フィルムのみを使用する場合と比較して、偏光板を液晶セルに貼合する際、静電気が発生易い傾向にある。このため、帯電防止対策を行う事が望ましい。帯電防止対策は、偏光フィルム表面に帯電防止層をコーティングするする方法、保護フィルムに帯電防止性能を付与する方法、粘着剤層に帯電防止性能を付与する方法などが挙げられる。なかでも粘着剤層に帯電防止性能を付与する方法が簡便であり好ましい。
粘着剤層に帯電防止性能を付与する方法としては、電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物及びアクリル系共重合体を含む組成物を用いる方法(特許第3012860号公報)、有機塩系の帯電防止剤を配合する方法(特表2004−536940号公報)、総炭素数が4〜20の4級アンモニウムカチオンとフッ素原子含有アニオンとからなる塩を含有させる方法(特開2004−114665号公報)などが挙げられる。