JP2010049019A - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】屈折率の異なる複数層からなり、層硬度の低下を抑制し、均一な反射防止効果を得ることが可能な有機反射防止膜を備えるプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチック基材上にハードコート層を形成する工程と、ハードコート層の上面に第1の有機反射防止膜を形成するための第1のコーティング液を塗工する工程と、第1のコーティング液を熱硬化して塗工膜を半硬化する工程と、半硬化状態の塗工膜上に、第2の有機反射防止膜を形成するための第2のコーティング液を塗工する工程と、第2のコーティング液を熱硬化して第2の有機反射防止膜を形成する工程とにより、プラスチックレンズを製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数層の有機反射防止膜を備えるプラスチックレンズの製造方法に係わる。
プラスチック基材の表面に、単層構造の有機反射防止膜が形成されたプラスチックレンズが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
単層構造の有機反射防止膜が形成されたプラスチックレンズでは、高屈折率のプラスチック基材に、中空シリカが分散されている有機ケイ素化合物によって、単層の有機反射防止膜が形成されている。また、有機反射防止膜を単層で形成することにより、一度の熱硬化処理工程で有機反射防止膜を形成することができる。
しかし、有機反射層を単層構造とする構成では、すべての屈折率のプラスチックレンズに適用できるわけではない。例えば、低屈折率のプラスチック基材について、単層構造で良好な反射防止膜を形成するためには、低屈折率のプラスチック基材よりもさらに低屈折率な反射防止膜が必要となる。しかし、単層構造の有機反射防止膜では、広範囲の屈折率を実現することができないため、適用できるプラスチック基材の屈折率が限定される。
このため、あらゆる屈折率のプラスチック基材に適用可能な有機反射防止膜として、三層構造の有機反射防止膜が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
この三層構造の有機反射防止膜では、プラスチック基材を基準にして外側へ順に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層が形成されている。
三層構造の有機反射防止膜は、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層を形成するためのコーティング液を、三層連続でスピンコーティングにより塗工した後、熱硬化させて形成している。このように、有機反射防止膜の屈折率の異なる各層を重ねて塗工した後、一括して熱処理することにより密着性を向上させている。
特開2006−139259号公報 特開2007−102096号公報 特開2006−39239号公報
しかしながら、屈折率の異なる各層を連続して塗工する際、湿潤状態の下層の塗工膜上に、上層のコーティング液を塗工すると、上層のコーティング液が下層の塗工膜に浸潤してしまう。そして、プラスチック基材に残らない余分な上層のコーティング液と共に湿潤状態である下層が脱落する場合がある。例えば、スピンコート法により上層を塗工する場合、塗工時の回転によって振り切られるコーティング液と共に浸潤状態である下層が脱落する場合がある。この上層のコーティング液の浸潤による下層の塗工膜の脱落量は、安定して制御することが難しい。このため、多層膜の有機反射防止膜を形成した際に、下層の塗工量が安定せず、所望の反射防止効果を安定して得ることができない。
また、下層の塗工膜の脱落を防ぐためには、コーティング液を塗工する工程と、コーティング液を熱硬化する工程とを、各層毎に行わなければならない。
しかし、下層に形成される有機反射防止膜を完全に熱硬化した場合、下層のコーティング液に含まれている、膜厚調製や乾燥性の制御のための成分が熱硬化中に下層の表層に向かって移動する。これらの成分は、上層に形成される有機反射防止膜用のコーティング液の濡れ性を低下させる原因となることがある。この場合、有機反射防止膜の下層と上層との密着性が低下し、有機反射防止膜全体としての膜硬度が低下する恐れがある。
上述した問題の解決のため、本発明においては、屈折率の異なる複数層からなり、層硬度の低下を抑制し、均一な反射防止効果を得ることが可能な有機反射防止膜を備えるプラスチックレンズの製造方法を提供するものである。
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、プラスチック基材上にハードコート層を形成する工程と、ハードコート層の上面に第1の有機反射防止膜を形成するための第1のコーティング液を塗工する工程と、第1のコーティング液を熱硬化して塗工膜を半硬化する工程と、半硬化状態の塗工膜上に、第2の有機反射防止膜を形成するための第2のコーティング液を塗工する工程と、第2のコーティング液を熱硬化して第2の有機反射防止膜を形成する工程とを備えることを特徴とする。
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、プラスチック基材上に、第1の有機反射防止膜を形成するための第1のコーティング液を半硬化状態まで熱硬化し、その後、第2の有機反射防止膜を形成するための第2のコーティング液を、塗工及び熱硬化する。
第1の有機反射防止膜は、半硬化状態であるため、第2の有機反射防止膜を形成する際の熱硬化により、硬化がすすむ。半硬化状態であると、第1の有機反射防止膜の表層に移動している、コーティング液に含まれている膜厚調製や乾燥性の制御のための成分が少なく、第2層の有機反射防止膜用のコーティング液の濡れ性を確保することができる。
また、上記の製造方法を用いて、第1の有機反射防止膜を半硬化状態とすることにより、第2の有機反射防止膜用のコーティング液を塗工するときの、第1の有機反射防止膜の塗工膜の脱落量の安定した制御が可能となる。このため、有機反射防止膜を備えるプラスチックレンズにおいて、均一で、且つ安定的に反射防止効果を得ることが可能である。また、プラスチックレンズの有機反射防止膜の膜硬度の低下を抑制することができる。
本発明によれば、広範囲の屈折率のプラスチック基材に適用可能であり、均一な反射防止効果を得ることが可能な有機反射防止膜を備えるプラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
(半硬化状態の説明)
まず、本発明の具体的な実施の形態の説明の前に、本発明における有機反射防止膜を製造する際の、有機反射防止膜を形成するための第1のコーティング液の塗工膜の半硬化状態について説明する。
本発明において、有機反射防止膜を形成する第1のコーティング液の半硬化状態とは、ハードコート層上に塗工した第1のコーティング液の熱硬化処理において、塗工膜の表面では熱硬化が行われているが、塗工膜全体では熱硬化が完全に行われていない状態である。
また、上述の半硬化状態において、塗工膜の表面の硬化状態は、この塗工膜上に新たに第2のコーティング液を塗布した際に、下層の塗工膜と上層とが混合しない程度、あるいは、下層の塗工膜に第2のコーティング液が浸潤しない程度に硬化(実質的に硬化)していればよい。
半硬化状態であれば、硬化膜全体としてはまだ完全に硬化していない状態であり、この半硬化状態の塗膜をさらに熱硬化して、塗膜を完全に硬化させる必要がある。このため、この半硬化状態の塗工膜を下層とし、この下層の塗工膜上に新たに上層の有機反射防止膜を形成して熱硬化することにより、上層の塗工膜の熱硬化処理と下層の塗工膜の熱硬化処理を共通に行うことができる。そして、半硬化状態の下層を完全に熱硬化することができる。
この工程では、便宜上コーティング液に導入されている膜厚調製や乾燥性調製等のための成分が熱硬化中に下層の塗工膜の表層に現れる量を、下層が完全に熱硬化された後に上層を熱硬化して有機反射防止膜を形成した場合に比べて抑制することができる。よって、下層の有機反射防止膜となる塗工膜に、重ねて熱硬化処理工程を行った場合にも、上層のコーティング液の良好な濡れ性を確保することができ、多層構造の有機反射防止膜の膜硬度の低下を防ぐことができる。従って、有機反射防止膜の膜硬度の低下を防ぐことができる。
また、半硬化状態の下層の塗工膜の表面が実質的に硬化しているため、上層に形成する有機反射防止膜の第2のコーティング液とほとんど混合しない。このため、下層の塗工膜と、上層の塗工膜との混合を防ぐことができる。また、下層の塗工膜の表面が実質的に硬化している状態であれば、第2のコーティング液が下層の塗工膜に浸潤する現象を確実に抑制することができる。このため、下層の塗工膜の脱落も確実に抑制することができる。
このように、有機反射防止膜の多層構造において、各層の境界が不明確になる事態や、下層の塗工膜が脱落する現象を防ぐことにより、多層構造の有機反射防止膜の所望の反射防止特性を安定的して得ることができる。
上述の熱硬化による塗工膜の硬化状態は、熱硬化処理を行った塗工膜の水接触角を調べることにより、確認することができる。
図1は、塗工膜の熱硬化処理を一定時間行った場合の熱硬化処理の温度(℃)と、塗工膜の水接触角(°)との関係の一例を示すグラフである。
図1では、プラスチック基材上に、有機反射防止膜となる有機ケイ素化合物を用いたコーティング液を塗布し、各熱硬化処理温度の条件によって塗工膜の熱硬化を行った後、塗工膜表面の水接触角を測定している。
図1に示す熱硬化処理の温度と水接触角との関係において、水接触角の熱硬化処理温度依存を見ると、40℃よりも低い温度では水接触角が約27°であり、低い値となっている。そして、熱硬化処理温度が約40℃〜80℃付近までは、熱硬化処理温度の上昇と共に、水接触角が約27°〜約34°まで上昇する。さらに、熱硬化処理温度が100℃を超えると、水接触角が約34°で一定になる。
つまり、図1に示す熱硬化処理温度と水接触角との関係から、80℃より低い温度では、塗工膜表面の熱硬化処理が充分に行われず、100℃を超えると塗工膜表面が完全に熱硬化されることがわかる。また、約80℃〜約100℃付近では、塗工膜表面の熱硬化が行われているものの、表面が完全に硬化するまで熱硬化が進んでいない状態である。そして、約80℃〜約100℃付近では、この状態から更に熱硬化処理を行うことにより、塗工膜を完全に熱硬化させることができる状態である。
上述のように、処理時間が一定の条件下において、有機ケイ素化合物を用いて形成する有機反射防止膜では、塗工膜の熱硬化が進む程、塗工膜への水接触角が大きくなる。
このような水接触角の変化は、塗工膜の熱硬化が進むことにより、加水分解された有機ケイ素化合物の末端のヒドロキシル基(Si−OH)が、熱硬化処理によって脱水縮合又は分解されることにより、塗工膜表面と水との親和性が低下するためと考えられる。あるいは、下層のコーティング液中に膜厚調製や乾燥性調製等のために便宜上含まれている成分が表層にあらわれることにより、水との親和性が低下するためと考えられる。
従って、図1から、熱硬化処理温度が約40℃より低いと、塗工膜を形成する有機ケイ素化合物の末端のヒドロキシル基の密度が高く、塗工膜表面において熱硬化がほとんど行われていない状態である。このため、この状態の塗工膜上に、上層の有機反射防止膜となる第2のコーティング液を塗工した場合には、上層と下層が混合してしまう。また、既に塗工されている下層の塗工膜の熱硬化が充分でないため、上層のコーティング液を塗工した際に、下層の塗工膜の一部が余分な上層のコーティング液と共に脱落してしまい、下層の塗工膜の膜厚が薄くなってしまう。
また、熱硬化処理温度が、約40℃〜80℃より低い場合にも、塗工膜表面の熱硬化が充分ではなく、この状態の塗工膜上に、上層の有機反射防止膜となる第2のコーティング液を塗工した場合は、第2のコーティング液と下層の塗工膜とが部分的に混合してしまう。従って、下層の塗工膜の一部が上層のコーティング液を塗工する際に脱落し、下層の塗工膜の膜厚が薄くなってしまう。
上述の下層の塗工膜の脱落による膜厚の低下では、その低下量を制御することが難しい。
そして、下層の熱硬化処理温度が100℃を超えると、下層のコーティング液中に含まれる膜厚調製や乾燥性調製等のための成分が塗工膜の表層に現れる。そして、この塗工膜上に上層の有機反射防止膜となる第2のコーティング液を塗工した場合に、第2のコーティング液の濡れ性が低下してしまう。このため、有機反射防止膜の下層と上層との密着性が低下し、有機反射防止膜の膜硬度が低下してしまう。
従って、熱硬化処理温度を約80℃〜約100℃とすることにより、上層の有機反射防止膜となる第2のコーティング液と混合しない程度に塗工膜表面が熱硬化され、さらに、完全に熱硬化していないため、過剰な熱履歴による有機反射防止膜の膜硬度の低下を防ぐことができる。
本発明では、上述の熱硬化処理温度を約80℃〜約100℃としたときの塗工膜の状態を、半硬化状態とする。そして、下層の有機反射防止膜を半硬化状態として、上層となる有機反射防止膜を形成する第2のコーティング液を塗工することにより、それぞれの層を形成するための第1のコーティング液と第2のコーティング液との混合や下層の塗工膜への第2のコーティング液の浸潤を防ぐことができる。このため、熱硬化処理を行った後の、積層構造を有する有機反射防止膜の、屈折率の異なる各層が、部分的に一体化せず、各層の境界が明確になる。また、有機反射防止膜の下層が脱落する現象が抑制される。
このため、プラスチック基材の広い範囲での屈折率に対して適用可能な、多層構造の有機反射防止膜を提供することが可能になる。
また、下層の塗工膜が半硬化状態であり、この半硬化状態の塗工膜を完全に硬化するためには、さらに熱硬化処理を行う必要がある。本発明によれば、この下層の塗工膜を完全に硬化させるための熱硬化処理と、上層の塗工膜を熱硬化するための熱硬化処理を同時に行うことが可能となる。このため、下層の塗工膜を完全に熱硬化させてから、上層の塗工膜を形成して熱硬化させる場合に比べ、上層のコーティング液の濡れ性が阻害されないため、有機反射防止膜の下層と上層との密着性が低下しない。従って、良好な膜硬度を有する有機反射防止膜を得ることができる。
以下、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
図2に示す実施の形態のプラスチックレンズ10は、レンズの基材となるプラスチック基材1と、このプラスチック基材1上に積層される、ハードコート層2、及び、屈折率の異なる複数の層からなる積層構造の第1の有機反射防止膜3、第2の有機反射防止膜4を備える。また、第2の有機反射防止膜4の上面に、さらに、撥水性や防汚性を向上させる撥水層5が設けられている。
また、図3に示す実施の形態のプラスチックレンズ20は、プラスチック基材1とハードコート層2との間に、プラスチック基材1とハードコート層2との密着性を向上させるプライマー層6を設けられている。そして、ハードコート層2上に、第1の有機反射防止膜3、第2の有機反射防止膜4を形成する。さらに、第2の有機反射防止膜4上に、撥水層5を設けることができる。
(プラスチック基材)
プラスチック基材1に適用する材料としては、通常のプラスチックレンズに適用可能な樹脂組成物であれば特に限定されずに使用することができる。プラスチックレンズ10,20に適用可能な樹脂組成物としては、例えば、アリルジグリコールカーボネート(例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、及び、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体)、ポリメチルメタクリレート、ジアリルカーボネート、メタクリレート、ウレタンメタクリレート、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステルメタクリレート、チオウレタン系樹脂、エピスルフィド系樹脂が挙げられる。
(ハードコート層)
ハードコート層2は、例えば、有機ケイ素化合物と無機微粒子とから形成される。
ハードコート層2では、干渉縞の発生を抑えるために、上述のプラスチック基材1と同程度の屈折率を備えることが必要である。このため、プラスチック基材1に高屈折率の素材を用いた場合には、ハードコート層2にも高屈折率の材料を用いることが要求される。
ハードコート層2において高屈折率を得るためには、高屈折率を有する無機微粒子が適宜選択して添加される。
ハードコート層2を形成する無機微粒子としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化タングステン、または、これらの複合体等が挙げられ、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズが好ましい。
また、ハードコート層2の屈折率を調整するために、無機微粒子表面を他の無機化合物よって改質及び結合させた複合無機微粒子を使用しても良い。例えば、溶媒に分散させた酸化チタン微粒子にテトラアルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン)を添加し、所定の温度と時間で撹拌し、酸化チタン微粒子表面を酸化ケイ素によって改質及び酸化ケイ素微粒子を結合させることができる。また、屈折率は酸化チタン微粒子表面の酸化ケイ素による改質量及び酸化ケイ素微粒子の結合量で調整することができる。
ハードコート層2において、有機ケイ素化合物と無機微粒子との混合比は、ハードコート層2の硬度や、屈折率により決定される。例えば、ハードコート層2中の無機微粒子の配合量は、5〜80質量%であることが好ましい。
ハードコート層2への無機微粒子の配合量が少ないと、ハードコート層2の耐摩耗性が低下する。また、ハードコート層2への無機微粒子の配合量が多いと、ハードコート層2にクラックを生じることがある。
ハードコート層2を形成する有機ケイ素化合物は、ハードコート層2において無機微粒子のバインダとして用いられる。この有機ケイ素化合物としては、例えば、各種アルコキシシランが挙げられる。好ましいアルコキシシランとして、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシランが挙げられる。有機ケイ素化合物は単体で、又は、二種以上を混合した状態で、用いられる。例えば、プラスチック基材との接着性が要求されるときには、アルコキシシランにエポキシ基(グリシドキシ基、グリシジル基を含む)を導入したものを含有させてもよい。
また、上述のハードコート層2は、有機ケイ素化合物及び無機微粒子の他に、必要に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び光安定剤等を、ハードコート層2の物性に影響を与えない限度において添加することができる。
また、ハードコート層2の形成では、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、又は、フローコート法を用いて、上述のハードコート組成物の溶液を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥することにより、ハードコート被膜を形成することができる。
なお、ハードコート層2の層厚は、0.05〜30μmであることが好ましい。層厚が0.05μm未満では、プラスチックレンズ10,20の硬度や耐擦過性等が低下する。また、層厚が30μmを越えると表面の平滑性が損なわれる場合や、光学歪みが発生してしまう場合がある。
(有機反射防止膜)
有機反射防止膜は、上述のハードコート層2上に形成される。また、有機反射防止膜は、折率の異なる複数の層から形成される積層構造であり、ハードコート層2の直上に形成される第1の有機反射防止層3と、第1の有機反射防止膜3上に形成される第2の有機反射防止膜4とから構成される。
第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4は、有機ケイ素化合物と、無機微粒子とから構成される。
上述の有機ケイ素化合物は、シランカップリング剤から形成される。
シランカップリング剤としては、トリアルコキシシランやテトラアルコキシシランが好ましい。シランカップリング剤は、単体で、又は、二種以上混合した状態で用いることができる。
トリアルコキシシランは、例えば、炭素数1〜8のアルコキシ基を有し、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基を有する。
また、トリアルコキシシランにおいてケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜8のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等炭素数6〜10のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基、ハロゲン原子、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基等を用いることができる。また、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、グリシドキシ基、アミノ基である。
また、これらの炭化水素基には官能基が導入されていてもよい。導入される官能基としては、例えば、ハロゲン原子、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、シアノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が好ましい。
上述のトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(2,3−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、好ましくはメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、であり、特に好ましくは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランである。
(無機微粒子)
また、第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4の屈折率を調整するために、微粒子状の無機微粒子が添加される。無機微粒子の成分は所望の屈折率が安定して得られる透明の材質であれば特に限定されない。具体的には、酸化物や窒化物やハロゲン化物等が挙げられる。
第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4に使用する無機微粒子としては、上述のハードコート層2に用いられる無機微粒子と同じものが使用でき、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化タングステン、フッ化マグネシウム、又は、これらの複合体等が使用できる。また、特に、屈折率、透明性、分散安定性等から、低屈折率の層を形成するには、酸化ケイ素を主体とする微粒子が好ましく、高屈折率の層を形成するには、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズを主体とする無機酸化微粒子が好ましい。
なお、第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4の屈折率の調整は、微粒子の形状を工夫することで行うことができる。例えば、微粒子を中空状にすることで、膜全体の屈折率を低下させることができる。
第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4に添加される無機微粒子の粒径としては、通常20〜200nmであり、20〜60nmが好ましい。
また、第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4の屈折率を調整するため、上述のハードコート層2と同様に、無機微粒子表面を他の金属酸化物及びその微粒子によって改質及び結合させた複合微粒子状金属酸化物を使用しても良い。
例えば、酸化チタン微粒子表面を、酸化ケイ素によって改質、及び、酸化ケイ素微粒子を結合させたものが挙げられる。
有機反射防止膜は、屈折率の異なる第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4が積層されることにより多層反射防止膜を構成する。
多層反射防止膜では、最外層が低屈折率層となるように高屈折率層と低屈折率層を交互に積層させればよい。各層の具体的な層厚は、レンズ基板の屈折率、及び、反射防止膜とハードコート層の屈折率により適宜調製される。例えば、nλ/4ごとの光学膜厚を微調整することで各層の膜厚を制御して、膜の構成を決定することができる。なお、上記nは整数である。また、λは波長であり、例えば、500〜550nmである。
また、2層構造の有機反射防止膜において、反射防止膜は、基板側から高屈折率層(第1の有機反射防止膜3)、低屈折率層(第2の有機反射防止膜4)で構成することができる。このとき、高屈折率層及び低屈折率層の屈折率は、特に限定されない。
また、低反射率を付与する観点から、低屈折率層と高屈折率層との屈折率の差が、例えば、0.15〜0.4の範囲であることが好ましい。さらに、0.2〜0.4の範囲が好ましく、特に0.22〜0.38の範囲であることが好ましい。
各層の好ましい屈折率の範囲は、低屈折率層の屈折率が1.30〜1.55、より好ましくは、1.40〜1.50である。また、高屈折率層の屈折率が1.48〜1.88、より好ましくは、1.60〜1.85である。
高屈折率層及び低屈折率層は、上述の材料を適宜選択することにより形成することができる。
また、2層構造の有機反射防止膜では、高屈折率層(第1の有機反射防止膜3)における無機微粒子の含有量は、有機ケイ素化合物の合計100質量部に対し400〜900質量部であることが好ましく、450〜650質量部であることがより好ましい。400質量部以下になると、有機ケイ素化合物の成分が過多になり、有機反射防止膜としての膜質が柔らかくなり、耐摩耗性が得られにくくなる。また、900質量部以上であると、無機微粒子が過多になり、有機反射防止膜の膜質が脆くなる。
また、低屈折率層(第2の有機反射防止膜4)における無機微粒子の含有量は、有機ケイ素化合物の合計100質量部に対し100〜400質量部であることが好ましく、150〜230質量部であることがより好ましい。第2の反射防止層における無機微粒子の含有量が100質量部以下になると、有機ケイ素化合物の成分が過多になり、有機反射防止膜としての膜質が柔らかくなり、耐摩耗性が得られにくくなる。また、400質量部以上であると、無機微粒子が過多になり、有機反射防止膜の膜質が脆くなる。
このように、第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4における無機微粒子の含有量が、上記の範囲を外れると、硬い膜質の有機反射防止膜を得難くなる。
(硬化剤)
また、第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4においてシランカップリング剤を含有するコーティング液には、必要に応じて反応を促進するための硬化剤を含有させることができる。また、溶液の塗布時における濡れ性を向上させ、反射防止膜の平滑性を向上させる目的で界面活性剤等を含有させることができる。さらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等も硬化膜の物性に影響を与えない限り添加することができる。
硬化剤としては、例えば、アリルアミン、エチルアミンなどのアミン類、またルイス酸やルイス塩基を含む各種酸や塩基、例えば有機カルボン酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、過塩素酸、臭素酸、亜セレン酸、チオ硫酸、オルトケイ酸、チオシアン酸、亜硝酸、アルミン酸、炭酸などを有する塩又は金属塩、さらにアルミニウム、ジルコニウム、チタニウムを有する金属アルコキシド又はこれらの金属キレート化合物などが挙げられる。
硬化剤としては、特に耐擦傷性の観点か、アセチルアセトネート金属塩が好ましい。アセチルアセトネート金属塩としては、例えば、下記一般式(A)に表わされる金属塩が挙げられる。
(CHCOCHCOCHn1(ORn2 (A)
(式中、MはAl(III)、Zn(II)、Ti(IV)、Co(II)、Fe(II)、Cr(III)、Mn(II)、V(III)、V(IV)、Ca(II)、Co(III)、Cu(II)、Mg(II)又はNi(II)、Rは炭素数1〜8の炭化水素基、n1+n2はMの価数に相当する数字で2,3又は4であり、n2は0,1又は2である。)
第1の有機反射防止膜3及び第2の有機反射防止膜4における硬化剤の含有量としては、組成物固形分を基準として、シランカップリング剤100質量部に対し0.1〜3質量部であると好ましく、0.1〜1質量部であるとさらに好ましい。
(撥水層)
また、本実施の形態のプラスチックレンズ10,20の表面には、フッ素含有アルコキシシラン化合物を含有する溶液を用いた、撥水層5を形成することができる。
(プライマー層)
また、本実施の形態のプラスチックレンズ20では、必要に応じてプライマー層6が形成される。プライマー層6は、上述のプラスチック基材1の表面と、上述のハードコート層2の双方の界面に形成される。そして、プラスチック基材1とハードコート層2双方への密着性を向上させることができる。また、プライマー層6を形成することにより、プラスチック基材1の表面処理膜の耐久性を向上させることができる。さらに、プライマー層6が外部からの衝撃吸収層として作用し、プラスチックレンズ20の耐衝撃性を向上させることができる。
プライマー層6を構成する材料は特に限定されず、レンズ基板1の材質や、ハードコート層2の材質により適宜選択することができる。
例えば、プライマー層6を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、又は、ポリウレタンアクリレート樹脂を用いることができる。好ましいプライマーの材料としては、成膜時にポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとイソシアネートを反応重合させたポリウレタン樹脂が挙げられる。また、基板やハードコートとの屈折率差をなくすために、プライマー層は、上記ポリマー成分中に、金属酸化物等の無機微粒子を分散させた構成とすることができる。
(プラスチックレンズの製造方法)
図1に示す構成のプラスチックレンズ10は、例えば、以下のようにして、製造することができる。
まず、プラスチック基材1の上にハードコート層2用のコーティング液の塗工膜を形成する。そして、塗工膜の熱硬化処理を行うことにより、ハードコート層2を形成する。
次に、ハードコート層2の直上に第1の有機反射防止膜3用の第1のコーティング液の塗工膜を形成する。そして熱硬化処理を行うことにより、塗工膜を上述の半硬化状態にする。
次に、第1の有機反射防止膜3を形成するための半硬化状態の塗工膜の直上に、第2の有機反射防止膜4用の第2のコーティング液により塗工膜を形成する。そして、第1の有機反射防止膜3となる半硬化状態の塗工膜、及び、第2の有機反射防止膜4となる塗工膜の熱硬化処理を行う。これにより、第1の有機反射防止膜3と、第2の有機反射防止膜4を形成する。
さらに、第2の有機反射防止膜4の直上に、撥水層5用のコーティング液を塗工し、撥水層5を形成する。
ハードコート層2用のコーティング液には、従来公知のハードコート層用のコーティング液の材料を使用することが可能である。
なお、基材1のプラスチックを低い屈折率(例えば、1.50)とする場合には、ハードコート層2の屈折率も低くすることが望ましい。そのためには、ハードコート層2用のコーティング液に、比較的屈折率の低い無機微粒子ゾルを使用する。
第1の有機反射防止膜3用の第1のコーティング液には、高屈折率が得られるように、TiO等の金属酸化物ゾルが含まれることが望ましい。さらに、耐候性向上のために、TiO等の金属酸化物ゾルをSiO等で被覆してもよい。
また、この第1の有機反射防止膜3用の第1のコーティング液には、良好な硬化膜が得られるように、シラン化合物を含有させる。
代表的なシラン化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
第2の有機反射防止膜4用の第2のコーティング液には、低屈折率が得られるように、SiO等の酸化物ゾルを使用する。
さらなる低屈折率化のために、中空シリカゾルを導入しても良いし、パーフルオロアルキル基を導入しても良い。
また、この第2の有機反射防止膜4用の第2のコーティング液には、良好な膜硬度が得られるように、シラン化合物を含有させる。
代表的なシラン化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
そして、さらなる低屈折率化のために、パーフルオロアルキル基を含むシランカップリング剤を導入しても良い。
撥水層5用のコーティング液には、従来公知の撥水層用のコーティング液の材料を使用することが可能である。
また、図2に示すプラスチックレンズ20は、プラスチック基材1とハードコート層2との間に、プライマー層6を設けることにより製造することができる。
プライマー層6には、従来公知のプライマー層と同様の材料、例えば前述した材料(ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、又は、ポリウレタンアクリレート樹脂等)を使用することができる。
そして、プライマー層6用のコーティング液を調整して、基材1上にプライマー層6用のコーティング液の塗工膜を形成する。そして、塗工膜の熱硬化処理を行いプライマー層6を形成することができる。
(実験例)
以下、本発明の実施の形態について、実験例を用いて具体的に説明する。
なお、以下の実験例では、上述の実施の形態のプラスチックレンズの構成とは異なり、プラスチック基材上に直接第1の有機反射防止膜を形成し、ハードコート層を省略している。
(実験例1)
(1)プラスチック基材
プラスチック基材として、屈折率1.50、中心厚2.0mm、レンズ度数0.00のジエチレングリコールビスアリルカーボネートを用いた。
(2)有機反射防止膜の形成
〔第1の有機反射防止膜用の第1のコーティング液の調製〕
ガラス容器に、ジアセトンアルコール30.0質量部、有機ケイ素化合物として、シランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403、信越化学(株)製)138.7質量部を加えて混合した。これに0.01mol/Lの濃度の塩酸を撹拌しながら滴下し、70℃環境下で5時間撹拌しながら放置した。
以上の方法により、有機ケイ素化合物の加水分解物を得た。
次に、酸化チタンを主成分とする微粒子のメタノールゾル(オプトレイク1120Z:商品名、触媒化成工業(株)製、固形分濃度20質量%)270質量部を撹拌しながら、ジアセトンアルコールを主体とする溶媒950質量部を混合した。
次に、調製した有機ケイ素化合物の加水分解物70質量部を滴下し、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトネート5質量部を添加した。
以上の方法により、有機ケイ素化合物と無機微粒子との和算割合が、2.5質量%の第1の有機反射防止膜用の第1のコーティング液を作製した。
〔第2の有機反射防止膜用の第2のコーティング液の調製〕
ガラス容器に、有機ケイ素化合物として、シランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403、信越化学(株)製)を60質量部、酸化ケイ素を主成分とする微粒子のメタノールゾル(スノーテックス−40:商品名、日産化学(株)製、固形分濃度30質量%)を160質量部、反応調整用にエタノールを260質量部入れ、一時間撹拌した。その後、撹拌しながら、0.01mol/Lの塩酸30質量部を滴下し、50℃の環境下に5時間撹拌しながら放置した。これにより、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を含む溶液を得た。
次に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を含む溶液に、硬化剤であるアルミニウムアセチルアセトネート2.5質量部を添加した。その後、ジアセトンアルコールを主成分とする溶媒と混合し、有機ケイ素化合物(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物)と無機微粒子との和算割合が、2.5質量%の第2の有機反射防止膜用の第2のコーティング液を作製した。
〔有機反射防止膜の成膜〕
次に、プラスチック基材上に、上述の第1の有機反射防止膜用の第1のコーティング液をスピンコーティングして塗工膜を形成した。そして、この塗工膜を50℃で5分間熱硬化処理を行い、第1の有機反射防止膜となる塗工膜を作製した。
次に、第1の有機反射防止膜となる塗工膜の表面に、上述の第2の有機反射防止膜用の第2のコーティング液をスピンコーティングして塗工膜を形成し、120℃で15分間熱硬化処理を行った。第2の有機反射防止膜の熱硬化と同時に、第1の有機反射防止膜となる塗工膜の熱硬化を行った。
以上の工程により、第1の有機反射防止膜と第2の有機反射防止膜を備える実験例1のプラスチックレンズを作製した。
(実験例2〜8)
実験例1のプラスチックレンズを作製した条件から、第1の有機反射防止膜及び第2の有機反射防止膜を形成するための熱硬化処理温度と処理時間を、下記表1に示したように変更し、実験例2〜8のプラスチックレンズを作製した。
Figure 2010049019
次に、作製した実験例1〜8において得られたプラスチックレンズの有機反射防止膜の膜硬度の評価を以下のようにして行い、結果を表2に示す。
〔膜硬度〕
日本スチールウール社製のボンスター#0000を15mm角に切り取り、プラスチックレンズの表面に置く。そして、1kgの加重をかけ、スチールウールの繊維方向と垂直な方向に3〜4cmの間隔でプラスチックレンズの表面を20往復摩擦し、傷の付いた程度を目視により次の段階に分けて評価した。
UA:傷がほとんどない。
A :浅い傷が数本、又は、細く深い傷が2本程度。
B :浅い傷が20本程度、又は、細く深い傷が10本程度、又は、太く深い傷が5本程度。
C :深い傷が多数発生し、曇りに近い状態、又は、傷は浅いが有機反射防止膜が剥離した状態。
Figure 2010049019
また、実験例1〜8において、第1の有機反射防止膜となる塗工膜を熱硬化処理した後、この塗膜の水接触角を測定した。
測定した塗工膜の熱硬化処理温度(℃)と、塗工膜の水接触角(°)との関係を図4に示す。また、図4には、実験例1〜8と同じ熱硬化処理時間とし、熱硬化処理温度を0℃、30℃、40℃、130℃、140℃とした場合の、第1の有機反射防止膜となる塗工膜の水接触角度を測定した結果を合わせて示している。
図4に示した結果から、実験例のプラスチックレンズでは、第1の有機反射防止膜は、熱硬化処理温度が40℃よりも低い場合には、水接触角が約10°で一定の値を示した。これは、40℃よりも低い温度では、第1の有機反射防止膜の熱硬化が行われなかったことを示している。
また、熱硬化処理温度が40℃〜70℃程度までは、熱硬化処理温度の上昇と共に、水接触角が約10°〜約45°まで上昇する。これは、熱硬化処理温度が高くなることにより、第1の有機反射防止膜の熱硬化が進んだことを示す。
また、熱硬化処理温度が80℃を超えると水接触角が約50°で一定となる。
従って、図4に示す結果から、実験例の構成では、80℃前後の温度で熱硬化処理することにより、塗工膜の表面がほぼ硬化しているが、塗工膜全体が完全に硬化する前の状態、つまり、第1の有機反射防止膜となる塗工膜の半硬化状態を形成することができた。
また、表2に示した結果から実験例4がもっとも膜硬度が高いという結果が得られた。実験例4の熱硬化処理温度は80℃であり、図4に示した水接触角の結果から得られる半硬化状態の温度と一致した。
従って、第1の有機反射防止膜となる塗工膜を半硬化状態とし、この塗工膜上に第2の有機反射防止膜となる第2のコーティング液の塗工し、熱硬化処理を行うことにより、膜硬度に優れた有機反射防止膜を形成することができる。
また、実験例1〜2では、熱硬化処理温度が低すぎ、第1の有機反射防止膜の熱硬化が充分に行われなかったために、膜硬度が低くなったと考えられる。
実験例3では、実験例1〜2よりも第1の有機反射防止膜となる塗工膜の熱硬化が行われているものの、膜硬化が充分ではなかったため、膜硬度が低くなったと考えられる。
実験例5〜8では、膜硬化温度が高いため、第1の有機反射防止膜となる塗工膜の熱硬化が充分に行われたため、実験例1〜3に比べて高い膜硬度が得られたと考えられる。しかし、充分に硬化した状態の第1の有機反射防止膜上に、第2の有機反射防止膜となる第2のコーティング液の塗工したため、第2のコーティング液の第1の有機反射防止膜への濡れ性が確保できず、第1の有機反射防止膜と第2の有機反射防止膜との密着性が低下し、実験例4よりも膜硬度が低下したものと考えられる。
なお、図4に示した熱硬化温度と水接触角との関係では、第1の有機反射防止膜用のコーティング剤に使用される材料や各材料の配合量等によって、水接触角の変化する熱硬化処理温度が変ることがある。
熱硬化温度と水接触角との関係を測定することにより、コーティング液の材料や配合量が変化した場合にも、半硬化状態とする熱硬化処理条件がわかる。
本発明は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
有機反射防止膜の熱硬化処理温度と、水接触角との関係を示す図である。 本発明の実施の形態のプラスチックレンズの構成を示す図である。 本発明の実施の形態のプラスチックレンズの構成を示す図である。 本発明の実験例における第1の有機反射防止膜の熱硬化処理温度と、水接触角との関係を示す図である。
符号の説明
1 プラスチック基材、2 ハードコート層、3 第1の有機反射防止膜、4 第2の有機反射防止膜、5 撥水層、6 プライマー層

Claims (4)

  1. プラスチック基材上にハードコート層を形成する工程と、
    前記ハードコート層の上面に第1の有機反射防止膜を形成するための第1のコーティング液を塗工する工程と、
    前記第1のコーティング液を熱硬化して塗工膜を半硬化する工程と、
    前記半硬化状態の塗工膜上に、第2の有機反射防止膜を形成するための第2のコーティング液を塗工する工程と、
    前記第2のコーティング液を熱硬化して第2の有機反射防止膜を形成する工程と、を備える、
    ことを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  2. 前記第1のコーティング液を塗工する工程において、有機ケイ素化合物と無機微粒子とを含む前記第1のコーティング液を塗布することを特徴とする請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  3. 前記プラスチック基材上にプライマー層を形成する工程と、前記プライマー層上に前記ハードコート層を形成する工程とを備えることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  4. 前記第2の有機反射防止膜上に、撥水層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法。
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