JP2010048783A - 測位システム - Google Patents
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Abstract
【課題】新たな無線機を別途設けることなく電波伝搬環境に対応した補正を行い、測位精度を向上する。
【解決手段】社員P1〜4に関連づけられ移動局10A〜Dと、複数の基地局12A〜Dと、移動局10の測位処理を行う測位サーバ14とを有する。測位サーバ14は、測位処理による移動局10A〜Dの位置データの時間的蓄積に応じて、測位処理結果を補正するための補正値を算出し、その補正値の算出後、当該補正値に基づき、新たに測位された移動局10A〜Dの位置データの補正を行う。
【選択図】図16
【解決手段】社員P1〜4に関連づけられ移動局10A〜Dと、複数の基地局12A〜Dと、移動局10の測位処理を行う測位サーバ14とを有する。測位サーバ14は、測位処理による移動局10A〜Dの位置データの時間的蓄積に応じて、測位処理結果を補正するための補正値を算出し、その補正値の算出後、当該補正値に基づき、新たに測位された移動局10A〜Dの位置データの補正を行う。
【選択図】図16
Description
本発明は、移動局から送信され基地局で受信した電波信号に基づき、移動局の測位処理を行う測位システムに関するものである。
移動局と基地局との間の無線通信の結果に基づいて、移動局の測位を行う測位システムが既に提唱されている。その手法としては、例えば、TOA(Time of Arrival)方式や、TDOA(Time Difference of Arrival)方式等がある。TOA方式は、ある移動局における電波の送信時刻と複数の基地局における電波の受信時刻とに基づいて算出した、電波の伝搬時間に基づいて移動局と複数の基地局との間の距離をそれぞれ算出し移動局の測位を行う方式である。TDOA方式は、複数の基地局それぞれの受信時刻の相対受信時刻を用いて、移動局と複数の基地局との間の距離をそれぞれ算出し、移動局の測位を行う方式である。
ここで、無線通信を用いたこのような測位システムでは、通常、電波伝搬環境により、測位処理結果にある程度の変動が生じるのは避けられない。そこで、このような変動を補正することで変動の影響を軽減し、測位精度を向上するための従来技術として、例えば特許文献1記載のものが知られている。
この従来技術においては、予め定められた測位範囲内の既知の位置に複数の基準無線機が設置される。移動局(個人用無線機)は、例えば人体に装着される。個人用無線機や基準無線機から発信される電波信号は複数の受信局で受信され、そのときの受信時刻差によって個人用無線機や基準無線機の測位が行われる。このとき、既知の位置にある基準無線機の測位結果によって予め電波伝搬環境の乱れが検知されており、個人用無線機の測位時には上記検知した電波伝搬環境の乱れに応じて測位結果の補正を行う。
特開平5−346457号公報
しかしながら、上記従来技術では、本来の測位対象である移動局と、測位を行うための基地局以外に、電波伝搬環境の乱れを検知するためだけに用いる基準無線機が別途必要になるという問題があった。
本発明の目的は、新たな無線機を別途設けることなく電波伝搬環境に対応した補正を行い、測位精度を向上することができる測位システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、第1の発明は、電波信号を送信する送信部を備えた移動局と、前記送信部から送信された前記電波信号を受信する受信部を備えた複数の基地局と、前記受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局の測位処理を行う測位処理手段と、前記測位処理手段による前記移動局の位置データの時間的蓄積に応じて、前記測位処理結果を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、前記補正値算出手段が前記補正値を算出した後、当該補正値に基づき、新たに前記測位処理手段で取得された前記移動局の位置データの補正を行う位置補正手段とを有することを特徴とする。
移動局の送信部から電波信号が送信されると、その信号が基地局の受信部にて受信される。そして、その受信された信号に基づき、測位処理手段が、移動局の測位処理を行う。
ここで、無線通信を用いたこのような測位システムでは、通常、電波伝搬環境により、測位処理結果にある程度のばらつきや偏差が生じるのは避けられない。ばらつきについては、複数回の測位結果の平均を採る等の手段により容易に対応できるが、偏差については何らかの補正手段が必要である。本願第1発明においては、測位処理手段により求まる上記位置データを時間の経過と共に蓄積し、補正値算出手段が、その蓄積に応じて、測位処理結果を補正するための補正値を算出する。
このようにして補正値を算出した後は、その補正値に基づき、位置補正手段が測位処理手段で取得した位置データの補正を行う。これにより、上記のようなシステムに不可避の偏差の影響を軽減し、測位精度を向上することができる。また、測位処理結果の蓄積に応じて自動的に補正値が決まり補正が実行されるので、補正用に別途の無線機等を設ける必要がない。また、測位を行いながら補正値を算出するので、測位に先立って補正値を事前に取得しておく等の手間も生じない。
第2発明は、上記第1発明において、前記補正値算出手段は、前記蓄積された移動局の位置データより、移動局が、既知の基準位置から所定の第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていたと判定された場合に、記第1範囲内に留まっていた際の位置データに対し所定の演算処理を行い、前記補正値を算出するデータ演算手段とを備えることを特徴とする。
本願第2発明においては、予め別途の手段で位置を特定した基準位置を設定する。そして、その基準位置から第1範囲内に所定時間連続して留まっていた位置データに対し、データ演算手段が所定の演算処理を行って補正値を算出する。このように、測位処理手段により取得された位置データのうち補正値算出用に用いるものの範囲を絞り込み、その絞り込んだ位置データに数学的演算を施して補正値を算出する。これにより、円滑かつ迅速に補正値を算出し、位置補正を実行することができる。
第3発明は、上記第2発明において、前記データ演算手段は、前記第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データの平均値と前記基準位置との偏差を前記補正値とすることを特徴とする。
偏差を求めるためのデータとして第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データの平均値を用いることにより、各位置データのばらつきの影響をまんべんなく全て加味した補正を行うことができる。この結果、確実に良好な位置補正を行うことができる。
第4発明は、上記第2発明において、前記データ演算手段は、前記第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データのうち大小の並び順に沿って中央値の位置データと前記基準位置との偏差を前記補正値とすることを特徴とする。
本願第4発明においては、大きな値から小さい値までばらついた、第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データを順番に並べ、その中央値を用いる。これにより、大きすぎず小さすぎない、ほどよい量の補正値とすることができるので、確実に良好な位置補正を行うことができる。
第5発明は、上記第2発明において、前記データ演算手段は、前記第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データのうち最高頻度の位置データと前記基準位置との偏差を前記補正値とすることを特徴とする。
本願第4発明においては、大きな値から小さい値までばらついた、第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データのうち、最も頻度の高かった位置データを用いる。このように、高頻度で真の値に最も近いであろうデータを用いることで、信頼性の高い補正値を得ることができるので、確実に良好な位置補正を行うことができる。
第6発明は、上記第2乃至第5発明のいずれかにおいて、前記データ演算手段で算出した前記補正値を、対応する前記基準位置と関連づけて記憶する第1記憶手段を有し、前記位置補正手段は、前記新たに取得された位置データが、前記基準位置から所定の第2範囲内に位置する場合、前記第1記憶手段に記憶された前記補正値に基づき、前記新たな位置データの補正を行うことを特徴とする。
測位処理結果で生じる偏差において、例えばマルチパス環境等の影響により、ある位置では比較的大きな偏差がある一方で別の位置では比較的小さな偏差にとどまる等、一定の位置依存性が存在することがある。
そこで本願第6発明においては、データ演算手段で算出した補正値を、補正値算出時に使用した基準位置と関連づけた形で第1記憶手段に記憶する。また、各補正値による補正を実行するかどうかの第2範囲を、対応する基準位置ごとに設定しておく。そして、新たに取得された位置データが基準位置から第2範囲内にあった場合には、当該基準位置に関連づけられた補正値を用いて、その位置データの補正を行うようにする。このように、位置データの近傍の基準位置に対応した補正値を用いることで、上記のような位置依存性にも対応した、良好な補正を確実に行うことができる。
第7発明は、上記第2乃至第6発明のいずれかにおいて、前記所定の第1範囲は、測位エリア環境に対応した偏差量に基づいて設定されていることを特徴とする。
測位エリアに対応した偏差量に基づいて前記第1範囲を設定することにより、偏差量を算出するための滞留判定を的確に行うことができ、良好な位置補正を行うことができる。
第8発明は、上記第6又は第7発明において、前記第1記憶手段に記憶された前記補正値に対し、前記新たに取得された位置データの前記基準位置からの距離に応じた重み付け処理を行う重み付け処理手段を有し、前記位置補正手段は、前記新たに取得された位置データが前記第2範囲内に位置する場合に、前記重み付け処理手段で重み付け処理された補正値を用いて前記新たな位置データの補正を行うことを特徴とする。
取得された位置データが基準位置に近いほど当該基準位置と同様の測定誤差が生じている可能性が高く、基準位置から離れるほど当該基準位置と同様の測定誤差である程度が低くなっていく。本願第8発明ではこれに対応し、基準位置からの距離に応じて、重み付け処理手段が、対応する補正値の重み付け処理を行う。これにより、さらにきめの細かい高精度な補正を実行することができる。
第9発明は、上記第2乃至第5発明のいずれかにおいて、前記データ演算手段で算出した前記補正値を、補正値算出時の測位に対応する複数の前記基地局の組合せと関連づけて記憶する第2記憶手段を有し、前記位置補正手段は、前記新たに取得された位置データの取得時に使用した前記複数の基地局の組合せに対応する、前記第2記憶手段に記憶された前記補正値に基づき、前記新たな位置データの補正を行うことを特徴とする。
測位処理結果で生じる偏差において、例えば移動局と各基地局との位置関係やマルチパス環境等の影響により、ある基地局同士の組合せでは比較的大きな偏差がある一方で別の基地局同士の組合せでは比較的小さな偏差にとどまる等、基地局の組合せによる依存性が存在することがある。
そこで本願第9発明においては、データ演算手段で算出した補正値を、その補正値算出に係わる測位時に電波信号を受信した複数の基地局の組合せと関連づけた形で第2記憶手段に記憶する。そして、新たに位置データが取得された場合に、そのときに用いた基準局の組合せに対応づけられた補正値を用いて、その位置データの補正を行うようにする。このように、測位時の基地局の組合せに対応した補正値を用いることで、上記のような基地局の組合せによる依存性にも対応した、良好な補正を確実に行うことができる。
本発明によれば、新たな無線機を別途設けることなく電波伝搬環境に対応した補正を行い、測位精度を向上することができる。また、測位に先立って、補正値を算出しておくといった事前処理を行うことなく、動的に補正値を算出することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態では、前述のTDOA方式により測距を行う場合を例にとって説明する。
(A)測位システムの基本構成
図1は、本実施形態の測位システムの構成の一例を表す説明図である。
図1は、本実施形態の測位システムの構成の一例を表す説明図である。
図1において、平面上の任意の形状(この例では縦20(m)、横30(m)の長方形状)を備えた移動可能領域50が設けられる。この移動可能領域50には、3つの移動局10A,10B,10Cと、4つの基地局12(第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12D)と、測位サーバ14とが設けられている。
移動局10A〜10Cは、移動可能領域50内を移動可能に配置されている。第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、及び第4基地局12Dは、長方形の移動可能領域50の既知の位置に(この例では4隅それぞれに1つずつ)固定的に配置されている。
測位サーバ14は、例えばLANケーブル等の有線ケーブル52により各基地局12A〜12Dと接続され、互いに情報通信可能となっている。そして、測位サーバ14は、移動局10によって送信された電波(=測距用電波信号。詳細は後述)が上記基地局12A〜12Dによって受信されるときの受信時刻情報に基づき(詳細には後述のように各基地局12A〜12Dにおける測距用電波信号の受信時刻の時間差に基づき)、移動可能領域50内における移動局10の位置を算出する(=測位)。
図2は、上記位置算出のために、移動可能領域50において便宜上設定される座標系を表す説明図である。
図2において、x軸及びy軸を備えた座標系が定義されており、移動可能領域50上の点はこれらxy座標系において座標が規定される。この例では、(理解の容易のため)x座標y座標の値は、原点(0,0)からの距離[m]に対応させてある。すなわち、第1基地局12Aは座標(0,20)に配置され、第2基地局12Bは座標(0,0)に配置され、第3基地局12Cは座標(30,0)に配置され、第4基地局12Dは座標(30,20)に配置されている。
図3は、移動局10の機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。
図3において、移動局10は、電波を送受信するために用いるアンテナ部20と、平衡不平衡変換器22と、送受信切換部24と、送信アンプ部26と、無線部28と、制御部32と、電池40と、増幅率一定の低雑音増幅器27とを有する。なお、時計41についてはTDOA方式を行う本実施形態では必ずしも必要ない(後述の(5)の変形例を参照)。
平衡不平衡変換器22は、例えばバラン(Balun)で構成される。この平衡不平衡変換器22は、送受信切換部24の不平衡線路をアンテナ部20に適合するように平衡線路に変換する。
送受信切換部24は、移動局10の送信状態と受信状態とを切り換える。すなわち、送受信切換部24が移動局10を送信状態に切り換えると、移動局10は送信機として機能し、送受信切換部24が移動局10を受信状態に切り換えると、移動局10は受信機として機能する。
無線部28は、移動局10が送信機として機能する場合には、制御部32によって生成される信号を無線通信を行うための形式に変換する。移動局10が受信機として機能する場合には、アンテナ部20によって受信された受信波から制御部32によって処理されるための信号に変換する。この無線部28は、この例では、PLL回路(phase lock loop)回路29、VCO(voltage controlled oscillator)回路31、及びデジタル変調復調部30などを備えたIC等によって実装される。
PLL回路29は、制御部32からの指令により所定の周波数の搬送波を発生させるものである。デジタル変調復調部30は、制御部32によって生成される信号をデジタル変調する。またデジタル変調復調部30は、受信された受信信号の復調を行い、生成されたデジタルデータを制御部32に出力する。これにより、移動局10と基地局12との間の無線通信がデジタル通信によって実行される。
送信アンプ部26は、移動局10が送信機として機能する場合に、上記無線部28によって生成された信号波を増幅する。
制御部32は、移動局10の各部の制御を行う。例えば、PLL回路29に送受信の周波数設定を行なったり、送受信切換部24を制御して送信状態と受信状態の切換えを行う。また、送受信信号を処理する信号処理部35を有する。制御部32は、例えば、ゲートアレイやマイコンなどによって実装される。
信号処理部35は、基地局12で到来時刻検出を行うために、予め記憶しておいた拡散符号を読みだし、無線部28に入力し、基地局に送信する。この拡散符号の第1条件は、自己相関関数に高いピークを持つ符号であることである。すなわち、位相差がゼロである場合において自己相関が大きな値となる一方、位相差がゼロでない場合には自己相関が十分に小さいような符号が用いられる。発生させる拡散符号の第2条件は、相互相関が小さい符号であることである。すなわち、符号間における相関が全ての位相差において十分小さい符号列が用いられる。これら2つの条件を満たす符号としては、例えば、M系列符号や、GPSにおいても使用されているGold系列符号等を用いることができる。このGold系列符号は疑似雑音符号(pseudo−noise code;PN信号)とも呼ばれる。また、信号処理部35は、基地局12から送信され、無線部28で復調されたベースバンド信号を解析する。解析された内容に従って、制御部32が移動局の各部を制御して動作させる。
このような拡散符号を送信することで、基地局12での正確な受信タイミングの検出が可能になり、時計と合わせて受信時刻の判定を行うことができるのである。
電池40は、上述した送信アンプ26、無線部28、制御部32、時計41等の各機能部に対し、必要な電力を供給する。
なお、上記アンテナ部20、平衡不平衡切換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、制御部32等の、電波の送信及び受信のための機能部が各請求項記載の送信部及び受信部に相当する。
図4は、基地局12A〜12Dの機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。図3と同等の部分については同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図4において、基地局12A〜12Dは、移動局10に備えられたものと共通の機能である、アンテナ部20、平衡不平衡変換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、低雑音増幅器27、時計41、電池40等を有する。また、移動局10の制御部32に対応した制御部33を備えている。すなわち、基地局12A〜12Dも、上述の移動局10と同様、送信機(送信部)及び受信機(受信部)としての両方の機能を有する。
制御部33は、ベースバンド信号生成復元部36を備えている。このベースバンド信号生成復元部36は、基地局12が送信機として機能する場合には、伝送したい情報を符号化しベースバンド信号を生成する。またベースバンド信号生成復元部36は、基地局12が受信機として機能する場合には、移動局10から送信され、無線部28で復調されたベースバンド信号から、伝送された情報を取りだす。
時計41は、制御部33ほかの各機能部の動作時や、電波の送信・受信時において参照可能な時刻情報を供給する。この時計41は、例えばリファレンスクロック等により構成される。
また基地局12A〜12Dは、上記以外に、到来時刻検出部42と、測位サーバ14との通信を行うための有線通信部43と、記憶部(メモリ)45と、RSSI部47とを有する。
到来時刻検出部42は、移動局10から送信された上記電波(測距用電波信号)が基地局12A〜12Dで受信された時刻を検出する。この到来時刻検出部42は例えばマッチドフィルタを含んで構成され、この例では、レプリカ符号発生部44と、遅延回路46と、相関計算部50とを備えている。
レプリカ符号発生部44は、レプリカ符号を発生する。このレプリカ符号は、移動局10の上記信号処理部35で用いられた拡散符号と同一の符号である。
遅延回路46は、例えば周知のシフトレジスタにより構成される。この遅延回路46は、移動局10から送信され基地局12A〜12Dで受信された電波に含まれる信号波を入力し、その信号波を予め定められた所定の時間間隔ごとにサンプリングして遅延させる。
RSSI部47は、受信信号の信号強度を検出する。
相関計算部50は、遅延回路46によって遅延された受信波とレプリカ符号との相関値を算出する。そして、算出された相関値が最大となった際の時刻を、移動局10からの電波(測距用電波信号)の到来時刻(=受信時刻)とする。
有線通信部43は、例えばLANケーブルなどの有線ケーブル52によって測位サーバ14と接続されている。これにより、基地局12は、有線通信部43を介し、到来時刻検出部42によって測定された上記測距用電波信号の受信時刻情報や、基地局12各部の動作に関する情報などを、測距サーバ14と送受信可能となっている。
図5は、測位サーバ14の機能的構成を表す機能ブロック図である。
測位サーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたいわゆるコンピュータにより構成されている。これにより、測位サーバ14は、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムにしたがって信号処理を行い、移動局10の位置の算出(=測位)を実行する。この測位サーバ14は、機能的構成として、インターフェース部82と、測位部84と、記憶部(メモリ)86と、補正処理部88とを備えている。
インターフェース部82は、通信ケーブル52を介し接続された基地局12との間で必要となる情報を入出力する。例えば測位サーバ14は、基地局12の作動を指令するコマンド等を上記インターフェース部82を介し出力し、基地局12の到来時刻検出部42で検出された上記受信時刻情報をインターフェース部82を介し入力する。
記憶部86は、いわゆるメモリなどの記憶手段であり、測位部84、補正処理部88等における処理を実行する際に必要となる情報や、インターフェース部82を介して基地局12などから得られた情報を読み出し可能に記憶する。例えば、基地局12の位置に関する情報や、基地局12から取得した受信時刻情報等が記憶される。
測位部84は、各基地局12で取得した前述の受信時刻情報に基づき、移動可能領域50中の移動局10と各基地局12との距離を算出(=測距)し、最終的に移動局10の位置の検出(測位)を行う。
補正処理部88は、測位部84で算出した前述の測位結果に基づき、測位結果の補正値の算出や、移動局10の位置補正等を行う(詳しくは後述する)。
なお、図5においては、本実施形態の測位に関する制御作動に直接関係のない機能についてはその記載が省略されている。例えば測位サーバ14には、図示しない電源が設けられ、各機能部に対して必要となる電力が供給されている。
(B)移動局の位置検出の手法原理
図6は、上記測位部84による位置を検出する方法の原理の手法を説明するための説明図である。なお、図6中においては、図示の煩雑を避けるために第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cの3つを用いる場合を例にとって説明する。
図6は、上記測位部84による位置を検出する方法の原理の手法を説明するための説明図である。なお、図6中においては、図示の煩雑を避けるために第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cの3つを用いる場合を例にとって説明する。
図6において、移動局10は前述したようにxy座標系が設定されている移動可能領域50内を自由な座標位置に移動できるのに対し、3つの基地局12A,12B,12Cは同じ移動可能領域50内でそれぞれ既知の設置位置に固定的に配置されている。そして各基地局12A,12B,12Cは有線ケーブル52を介して測位サーバ14に情報を送受可能に接続されている。
この構成において、各基地局12A,12B,12Cでの移動局10からの測距用電波信号の受信時刻差に基づき、測位サーバ14は、各基地局12A,12B,12Cから移動局10までの距離をそれぞれ測定検出する。つまり、移動局10が測距用電波信号を各基地局12A,12B,12Cに向けて送信する。このとき、移動局10が測距用電波信号が送信してから基地局12において受信されるまでの時間(到来時間)は、基地局12と移動局10との空間的な距離に比例する。各基地局12A,12B,12Cから移動局10までの距離が異なる場合には、上記到来時間は、各基地局12A,12B,12Cごとに異なる値となって時間差が生じる。測位サーバ14は、その時間差に基づいて移動局10の位置を算出することができる。
例えば移動局10の座標を(x,y)、基地局12A、12B、12Cの座標をそれぞれ、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)とする。そして、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cそれぞれにおいて、移動局10から時刻T0で送信された測距用電波信号を受信した受信時刻をT1,T2,T3とする。
以上のような条件においては、図6において、
c×(T1−T0)=√{(x−x1)2+(y−y1)2} ・・(1A)
c×(T2−T0)=√{(x−x2)2+(y−y2)2} ・・(1B)
c×(T3−T0)=√{(x−x3)2+(y−y3)2} ・・(1C)
が成り立つ。
c×(T1−T0)=√{(x−x1)2+(y−y1)2} ・・(1A)
c×(T2−T0)=√{(x−x2)2+(y−y2)2} ・・(1B)
c×(T3−T0)=√{(x−x3)2+(y−y3)2} ・・(1C)
が成り立つ。
すると、式(1A)から式(1B)を減じることで、
√{(x−x1)2+(y−y1)2}−√{(x−x2)2+(y−y2)2}=c×(T1-T2) …(1D)
また、式(1A)から式(1C)を減じることで、
√{(x−x1)2+(y−y1)2}−√{(x−x3)2+(y−y3)2}=c×(T1-T3) …(1E)
で表される関係が成り立つ。なお、cは電波速度(光速:約3.0×108[m/s])である。
√{(x−x1)2+(y−y1)2}−√{(x−x2)2+(y−y2)2}=c×(T1-T2) …(1D)
また、式(1A)から式(1C)を減じることで、
√{(x−x1)2+(y−y1)2}−√{(x−x3)2+(y−y3)2}=c×(T1-T3) …(1E)
で表される関係が成り立つ。なお、cは電波速度(光速:約3.0×108[m/s])である。
このとき、(受信時刻T1,T2,T3は測定値として既知であり)変数はx、yの2つのみであるから、上記(1D)(1E)の2つの式を例えばニュートンラプソン法などにより解くことにより、移動局10の位置のx,y座標(x,y)を特定することができる。なお、本実施形態のように4つの基地局12A、12B、12C、12Dを設けることで、さらに精度のよい位置検出を行うことができる。
なお、上記の例では、各基地局12A,12B,12Cは測距用電波信号の受信時刻を検出し測位サーバ14に送信するのみであり、測位処理(基地局12A,12B,12Cから移動局10までの距離の算出)は測位サーバ14が行うが、これに限られない。すなわち、各基地局12A,12B,12Cのうちの1つの制御部33が他の受信時刻情報を収集し、測位するようにしてもよい。
(C)電波伝搬環境の影響
ところで、一般に、無線通信を用いた測位システムでの電波信号の送受信においては、通常、電波伝搬環境により、測位結果にある程度の偏差が生じるのは避けられない。上記測位システム8においても、移動局10からの信号(上記測距用電波信号等)を基地局12A〜12Dで受信する際、上記電波伝搬環境が測位に影響を与える場合がある。
ところで、一般に、無線通信を用いた測位システムでの電波信号の送受信においては、通常、電波伝搬環境により、測位結果にある程度の偏差が生じるのは避けられない。上記測位システム8においても、移動局10からの信号(上記測距用電波信号等)を基地局12A〜12Dで受信する際、上記電波伝搬環境が測位に影響を与える場合がある。
測位精度へ影響を与える電波伝搬環境の一例としては、壁、障害物等により電波信号が複数の経路(例えば、直接波、反射波、透過波、回折波等)によって伝搬するマルチパス(多重波伝送路)や、障害物等により、直接波が伝搬しないシャドウイング等がある。
図7は、このような電波伝搬環境による測位精度への影響を説明するための説明図である。図7において、移動局10は座標(2.1,2)に位置しているとする。この場合、上記のような電波伝搬環境による測位精度への影響がなければ、移動局10の測位結果は、座標(2.1,2)となるはずである。なお、座標の単位は例えば「メートル」である。
しかしながら、図7のように、移動局10と基地局12Bとの間に障害物が存在する場合は、基地局12Bには移動局10からの直接波が到来せず、何らかの反射波が到来することになり、到達時刻は実際よりも遅く測定される。これにより、基地局12Bと移動局10の距離は実際よりも長く算出され、移動局10の位置はある偏差をもって算出される。このように、測位精度が低下する結果、正確に移動局10を測位することは難しい。
(D)移動局の位置補正
(D−1)基準位置データベース
本実施形態は、上記に鑑み、偏差が生じている移動局10の測位結果を是正するために、補正値を用いて位置補正を行う。また、そのときの補正値の算出のために、移動局10の滞留判定を行う。そして、上記滞留判定を行うにあたり、各移動局10にそれぞれ基準となる位置(基準位置)を設ける(詳しくは後述)。
(D−1)基準位置データベース
本実施形態は、上記に鑑み、偏差が生じている移動局10の測位結果を是正するために、補正値を用いて位置補正を行う。また、そのときの補正値の算出のために、移動局10の滞留判定を行う。そして、上記滞留判定を行うにあたり、各移動局10にそれぞれ基準となる位置(基準位置)を設ける(詳しくは後述)。
以下、本実施形態の測位システムを、建造物のフロア(この例では会社の居室K)に適用し、各移動局10を所持(又は付随等。以下同様)する各社員PのイスCHを上記の基準位置として設定した場合を例にとって説明する。
図8は、上記フロアにおける配置状態を表しており、居室Kには、適宜に配列された4つのデスクDKと、イスCH1〜CH4(後述する人物としての社員P1〜P4用)とが設けられ、居室Kの既知の位置(この例では4隅それぞれに1つずつ)に4つの基地局12A〜12Dが固定的に配置されている。
イスCH1は、移動局10Aを所持した社員P1用のイスであり、社員P1の補正処理に関する判断基準とするための第1基準位置SP1は、このイスCH1の設置位置である座標(2,2)に設定されている。
同様に、イスCH2は、移動局10Bを所持した社員P2(煩雑防止のため図示省略)用であり、第2基準位置SP2は、イスCH2の設置位置である座標(3,2)に設定されている。また、イスCH3は、移動局10Cを所持した社員P3(煩雑防止のため図示省略)用であり、第3基準位置SP3は、イスCH3の設置位置である座標(2,0.5)に設定されている。また、イスCH4は、移動局10Dを所持した社員P4(煩雑防止のため図示省略)用であり、第4基準位置SP4は、イスCH4の設置位置である座標(3,0.5)に設定されている。
そして、測位サーバ14は、上記の配置を地図情報として記憶部86に記憶している。すなわち、図8に示すような平面座標系において、居室Kが占有する座標領域、各基地局12A〜12Dの設置位置、予め別途の手段で位置を特定した上記第1〜第4基準位置SP1〜SP4等が記憶されている。
図9は、測位サーバ14の記憶部86に記憶されている記憶内容のうち、基準位置の名称、基準位置に対応する移動局のID(移動局10A〜10Dに各々割り当てられたID)、x座標y座標の位置の関係を含む基準位置データベースを表す図である。図9において、前述したように、第1基準位置SP1の座標位置は(Xa,Yb)であり、第2基準位置SP2の座標位置は(Xb,Yb)であり、第3基準位置SP3の座標位置は(Xa,Ya)であり、第4基準位置SP4の座標位置は(Xb,Ya)である。
したがって、検出された移動局10A〜10Dの座標と上記第1〜第4基準位置SP1〜SP4の座標位置とを比較することで、移動局10A〜10Dが対応する第1〜第4基準位置SP1〜SP4から所定の範囲(位置補正エリア。詳細は後述)内にあるのか判定できるようになっている。
(D−2)滞留判定
次に、図10〜図13を用いて、本実施形態で実行する滞留判定の手法について説明する。滞留とは、本来、その場に、滞って移動しないことであり、一定時間、同一の座標に位置することである。しかしながら、前述したように電波伝搬環境の影響がある場合には、移動局10が滞留している状態であっても、測位結果は同一の座標とならず、ある程度のばらつきが生じてしまう。また、上記ばらつきは測位システム固有のものであり、システムのハードウェア構成により決まる。
次に、図10〜図13を用いて、本実施形態で実行する滞留判定の手法について説明する。滞留とは、本来、その場に、滞って移動しないことであり、一定時間、同一の座標に位置することである。しかしながら、前述したように電波伝搬環境の影響がある場合には、移動局10が滞留している状態であっても、測位結果は同一の座標とならず、ある程度のばらつきが生じてしまう。また、上記ばらつきは測位システム固有のものであり、システムのハードウェア構成により決まる。
そこで、本実施形態では、経時的に蓄積されていく上記移動局10A〜Dの測位結果が、それぞれ対応する上記第1〜第4基準位置から所定の範囲(位置補正エリア。第1範囲)内に連続して所定の個数(この例では、11個)蓄積(時間的蓄積)したら、当該移動局10は滞留状態であると判定する。そして、本来固定的に存在しているはずの基準位置の座標と、滞留状態にある移動局10の測位結果との偏差を求めることで、その偏差を、測位結果を補正する補正値とするのである。
図10は、上記位置補正エリアを説明する説明図である。
例えば、社員P1の位置データの検出結果において、マルチパス環境等の影響により、ある位置では比較的大きな偏差がある一方で、別の位置では比較的小さな偏差にとどまる等、一定の位置依存性が存在することがある。本実施形態では、この観点に基づき、4つの基準位置SP1〜SP4に4つの位置補正エリアAA1〜AA4をそれぞれ設定し、各位置補正エリアAA1〜AA4ごとに適用すべき補正値をそれぞれ決定する。
図10において、上記第1〜第4基準位置SP1〜SP4には、それぞれ対応する第1位置補正エリアAA1、第2位置補正エリアAA2、第3位置補正エリアAA3、第4位置補正エリアAA4が設定される。各位置補正エリアAA1〜AA4は半径ARの範囲(破線で示す円内)で設定されており、この半径ARは電波環境による偏差量が同じとみなされる範囲であり、例えば、測位対象エリアに存在する障害物のサイズによって決定される。一例としては、測位対象エリアがオフィスである場合、オフィスに存在する柱のサイズより、半径ARは1mと設定される。
図11は、測位サーバ14の記憶部86に記憶されている、上記社員P1に係わる移動局10Aの位置データを表す図である。図11において、この移動局10Aの位置データでは、所定間隔(この例では1分間隔)の各検出時刻における移動局10Aの測位座標(x座標、y座標)が記憶されている。この例では、○○年△月×日9時51分00秒から10時10分00秒までの19分間の区間における、移動局10Aの測位座標の例を示している。測位サーバ14は、この位置データにより移動局10Aの測位履歴を取得することができる。
図11に示す例では、移動局10A(言い換えれば社員P1)における、○○年△月×日9時51分00秒の測位結果は、位置A1(2.4,2.8)となる。以下同様に測位結果は、○○年△月×日9時52分00秒では、位置A2(2.4,2.2)となり、○○年△月×日9時53分00秒では、位置A3(2.1,2.7)となり、○○年△月×日9時54分00秒では、位置A4(1.3,1.3)となり、○○年△月×日9時55分00秒では、位置A5(2.0,2.6)となり、○○年△月×日9時56分00秒では、位置A6(2.6,2.5)となり、○○年△月×日9時57分00秒では、位置A7(1.4,2.0)となり、○○年△月×日9時58分00秒では、位置A8(1.3,2.1)となり、○○年△月×日9時59分00秒では、位置A9(1.1,2.0)となり、○○年△月×日10時00分00秒では、位置A10(1.7,2.1)となり、○○年△月×日10時01分00秒では、位置A11(1.8,1.9)となり、○○年△月×日10時02分00秒では、位置A12(1.6,2.1)となり、○○年△月×日10時03分00秒では、位置A13(2.0,2.4)となり、○○年△月×日10時04分00秒では、位置A14(1.7,2.3)となり、○○年△月×日10時05分00秒では、位置A15(2.2,1.9)となり、○○年△月×日10時06分00秒では、位置A16(1.8,2.2)となり、○○年△月×日10時07分00秒では、位置A171.6,2.0となり、○○年△月×日10時08分00秒では、位置A18(2.0,1.8)となり、○○年△月×日10時09分00秒では、位置A19(2.2,2.3)となり、○○年△月×日10時10分00秒では、位置A20(1.8,2.1)となる。
図12は、上記社員P1の○○年△月×日9時51分00秒から10時10分00秒までの19分間の区間における、上記位置A1〜A20までの測位結果の挙動を示す図であり、前述の図10の部分拡大図にほぼ相当する図である。
図12に示すように、○○年△月×日9時51分00秒から10時10分00秒までの19分間の区間では、位置A1が第1位置補正エリアAA1外で、位置A2が第1位置補正エリアAA1内になったものの、位置A3〜A9で再び第1位置補正エリアAA1外となり、位置A10で再び第1位置補正エリアAA1内に入った後、以降、位置A11〜A20の間、そのまま第1位置補正エリアAA1内となっている。この結果、第1位置補正エリアAA1内に、上記位置A10〜位置A20まで連続で11個位置データ(図13に示す○○年△月×日10時00分00秒から10時10分00秒までの位置データ)が蓄積した時点で、社員P1は滞留していると判定される。
(D−3)補正値の算出
前述したように、本実施形態では、4つの位置補正エリアAA1〜AA4ごとに適用すべき補正値をそれぞれ決定する。以下、それらのうち、第1位置補正エリアAA1で適用する補正値の算出を例にとって説明する。図14は、前述の○○年△月×日9時51分00秒から10時10分00秒までの19分間の区間のうち、上記第1位置補正エリアAA1内に位置する11個の位置データ(x座標、y座標)を表した図である。
前述したように、本実施形態では、4つの位置補正エリアAA1〜AA4ごとに適用すべき補正値をそれぞれ決定する。以下、それらのうち、第1位置補正エリアAA1で適用する補正値の算出を例にとって説明する。図14は、前述の○○年△月×日9時51分00秒から10時10分00秒までの19分間の区間のうち、上記第1位置補正エリアAA1内に位置する11個の位置データ(x座標、y座標)を表した図である。
図14において、この例では、上記11個の位置データの平均値と、対応する上記第1基準位置SP1との偏差を用いて、補正値を算出する。まず、上記11個の位置データのx座標の平均値は、
(1.7+1.8+1.6+2.0+1.7+2.2+1.8+1.6+2.0+2.2+1.8)/11=1.85
となる。
一方、11個の位置データのy座標の平均値は、
(2.1+1.9+2.1+2.4+2.3+1.9+2.2+2.0+1.8+2.3+2.1)/11=2.1
となる。したがって、第1位置補正エリアAA1内の上記11個の位置データのx座標、y座標の平均値は、(1.85,2.1)となる。
(1.7+1.8+1.6+2.0+1.7+2.2+1.8+1.6+2.0+2.2+1.8)/11=1.85
となる。
一方、11個の位置データのy座標の平均値は、
(2.1+1.9+2.1+2.4+2.3+1.9+2.2+2.0+1.8+2.3+2.1)/11=2.1
となる。したがって、第1位置補正エリアAA1内の上記11個の位置データのx座標、y座標の平均値は、(1.85,2.1)となる。
ここで、上記平均値は、本来、第1基準位置SP1(2,2)に固定的に位置しているはずの、移動局10Aの測位結果のばらつきの平均値である。すなわち、第1基準位置SP1周辺で測位を行うときの偏差を概略的に代表していると言える。したがって、本実施形態においては、第1基準位置SP1に関する補正値として、上記平均値(1.85,2.1)と、第1基準位置SP1の座標(2,2)との偏差、すなわち、(0.15,−0.1)を、第1基準位置SP1周辺で測位を行うときに用いるべき(第1基準位置SP1に関する)補正値とする。
なお、上記は、4つの位置補正エリアAA1〜AA4のうち、第1位置補正エリアAA1で適用する補正値の算出を例にとって説明したが、他の第2〜第4位置補正エリアAA2〜AA4についても、同様の手法で補正値を算出する。すなわち、社員P2の滞留によって第2位置補正エリアAA2の補正値、社員P3の滞留によって第3位置補正エリアAA3の補正値、社員P4の滞留によって第4位置補正エリアAA4の補正値を算出する。そして、このようにして各位置補正エリアAA1〜AA4ごとに算出した補正値を、対応する第1〜第4基準位置SP1〜SP4と関連づけた形で測位サーバ14の記憶部86に記憶(保管)する。
図15は、測位サーバ14の記憶部86に記憶された、第1〜第4基準位置SP1〜SP4と対応する補正値とを含む基準位置−補正値データベース(第1記憶手段)の一例を表す図である。
図15において、第1基準位置SP1(座標(2,2))に対応する補正値は、上記(D−3)で算出したように、(0.15,−0.1)である。以下同様の手法により、この例では、第2基準位置SP2(座標(3,2))に対応する補正値は(0.2,−0.3)であり、第3基準位置SP3(座標(2,0.5))に対応する補正値は(0.05,0.2)であり、第4基準位置SP4(座標(3,0.5))に対応する補正値は、実質的に補正を行わないことに相当する(0,0)である。なお、これら補正値は、移動局10の位置データの蓄積と共に、順次更新されうるものである(後述の図19のステップSS380参照)。
(D−4)位置データの補正
本実施形態では、上記(D−3)の手法により各基準位置SP1〜SP4ごとに対応づけて算出され基準位置−補正値データベースに格納された補正値を用いて、各基準位置SP1〜SP4ごとに位置データの補正を行う。
本実施形態では、上記(D−3)の手法により各基準位置SP1〜SP4ごとに対応づけて算出され基準位置−補正値データベースに格納された補正値を用いて、各基準位置SP1〜SP4ごとに位置データの補正を行う。
このとき、各第1〜第4基準位置SP1〜SP4の補正値による補正を実行するかどうかの範囲(第2範囲)である、第1オフセットエリアOA1、第2オフセットエリアOA2、第3オフセットエリアOA3、第4オフセットエリアOA4(後述の図16参照)を、対応する第1〜第4基準位置SP1〜SP4ごとに予め設定しておく。なお、各基準位置SP1〜SP4からの各オフセットエリアOA1〜OA4の半径FR(後述の図16参照)は、測位対象エリアに存在する障害物のサイズによって予め設定される。そして、新たに取得された社員P1の位置データが最寄りの基準位置SP1〜SP4から上記オフセットエリア内OA1〜OA4にあった場合には、当該基準位置SP1〜SP4に関連づけられた補正値を用いて、その位置データの補正を行うようにする。以下、その詳細を図16により説明する。
図16は、位置補正の手法の一例を説明するための説明図である。図16において、この例では、社員P1が自席のイスCH1の近傍に位置している場合を例にとって説明する。図16において、社員P1に係わる移動局10Aの測位結果が、座標(1.6,2.5)であった(見かけの社員P1の位置。点線で示した社員P1)とする。この場合は、最寄りの基準位置は、第1基準位置SP1となる。この場合、上述したように、みかけの社員P1の位置は、第1基準位置SP1に係わる予め設定した上記第1オフセットエリアOA1(破線で示した半径FRの円)内にあるので、位置補正を行う。
なお、図16では、図示の煩雑を避けるため、第1基準位置SP1に係わる第1オフセットエリアOA1のみ示してあるが、第2〜第4基準位置SP2〜SP4においても同様に、第2〜第4基準位置SP2〜SP4にそれぞれ係わる第2〜第4オフセットエリアOA2〜OA4が予め設定されている。
ここで、社員P1から最寄りの基準位置(この例では、第1基準位置SP1)に関連づけられた補正値は、前述のように(0.15,−0.1)である。したがって、上記見かけの社員P1の位置に関して位置補正を行うと、位置補正後の社員P1の位置は、実線で示す座標(1.75,2.4)となる。また、他の社員に係わる別の移動局についても、オフセットエリアOA1内にあると判定された場合は同様の補正を行う。
(E)制御シーケンス
図17は、本実施形態において、測位サーバ14、基地局12A〜12D、移動局10の間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。前述したように、測位サーバ14と基地局12A〜12Dとの間は有線ケーブル52を介した信号の送受である。また、基地局12A〜12Dと移動局10との間は、無線通信を介した信号の送受となっている。
図17は、本実施形態において、測位サーバ14、基地局12A〜12D、移動局10の間で送受される各種信号の送受と制御動作の一例を表すシーケンス図である。前述したように、測位サーバ14と基地局12A〜12Dとの間は有線ケーブル52を介した信号の送受である。また、基地局12A〜12Dと移動局10との間は、無線通信を介した信号の送受となっている。
まず最初に、ステップST10において、移動局10の無線部28が、アンテナ部20を介し電波信号を送信する。各基地局12A〜12Dの無線部28は、ステップSR10で、アンテナ部20を介しそれぞれの電波信号を受信する。そして、到来時刻検出部42がそのときの受信時刻情報を検出し、制御部33がその受信時刻情報を有線ケーブル52を介して測位サーバ14に出力する。
そして測位サーバ14の測位部84が、ステップSS10において、各基地局12A〜12Dから入力した受信時刻の差(=到来時刻の差)に基づき、移動局10の位置データを、図6を用いて前述した手法により算出する(測位処理手段)。
次にステップSS20で、測位サーバSの測位部84が、上記ステップSS10で算出した、移動局10の位置データ及び位置検出時刻を測位サーバ14の記憶部86に格納し、ステップSS200に移る。なお、記憶部86には、このようにして格納される位置データが適宜の個数(前述の例では11個よりもある程度大きな個数。例えば数十個)だけ順次蓄積される。そして、記憶部86は、上記のようにして順次蓄積される位置データが当該適宜の個数を超えた場合は、最も古いデータが消去されるとともに最新のデータが新たに格納される、いわゆるバッファとしての機能を果たすようになっている。
ステップSS200では、測位サーバ14の補正処理部88が位置補正処理(詳細は後述)を実行して、上記ステップSS100で算出した移動局10の位置データに、後述するステップSS300で算出する補正値を適応し、位置補正を行う(位置補正手段)。なお、実質的には位置補正を行わない場合もある。その後、ステップSS300に移る。
ステップSS300では、測位サーバ14の補正処理部88が補正値算出処理(詳細は後述)を実行して、上記ステップSS100で算出した特定の移動局10A〜10Dの位置データに基づき、対応する補正値を算出する(補正値算出手段)。なお、実質的には補正値を算出しない場合もある。その後、ステップSS400に移る。
そして、ステップSS400に移り、例えば、(測位サーバ14の操作権限がある)管理者等により、測位サーバ14の図示していない操作部により測位終了の旨の操作が行われたかどうかを判定する。管理者等が測位終了操作を行うまでステップSS400の判定が満たされずステップSS10に戻って同様の手順を繰り返す。管理者が測位終了操作を行ったらステップSS400の判定が満たされて、このフローを終了する。
図18は、上記図17において測位サーバ14の補正処理部88が実行するステップSS200の詳細手順を表すフローチャートである。
図18において、まずステップSS210では、記憶部86にアクセスし、前述した基準位置データベースに第1〜第4基準位置SP1〜SP4のいずれかが格納されているかどうかを判定する。前述したように基準位置データベースに第1〜第4基準位置SP1〜SP4が設定され格納されている場合には、判定が満たされ、ステップSS220に移る。なお、第1〜第4基準位置SP1〜SP4のいずれも設定・格納されていない場合は、判定は満たされずこのルーチンを終了する。
ステップSS220では、上記ステップSS100で算出した移動局10の位置データと、上記ステップS210で取得した基準位置SPの座標とを比較する。そして、移動局10と各基準位置SP1〜SP4との距離をそれぞれ算出し、移動局10の位置から最も近い、すなわち最寄りの基準位置SPを選択する。その後、ステップSS230に移る。
ステップSS230では、上記ステップSS100で算出した移動局10の位置データが、上記ステップSS220で選択した(最寄りの)基準位置SPに係わる前述したオフセットエリアOA内であるかどうかを判定する。オフセットエリアOA内でなければ、判定は満たされずこのルーチンを終了する。上記移動局10の位置データが上記ステップSS220で選択した基準位置SPに係わるオフセットエリアOA内であれば、ステップSS230の判定が満たされステップSS240に移る。
ステップSS240では、記憶部86にアクセスし、前述した基準位置−補正値データベースに基づき、上記ステップSS220で選択した基準位置SPに関連づけられた補正値を取得し、ステップSS250に移る。測位が始まってまだ時間が経過しておらず、補正値が設定されていない場合は、補正値は(0,0)として取得される。
ステップSS250では、ステップSS240で取得した補正値を用いて、前述の(D−4)の手法により、上記ステップSS100で算出した移動局10の位置データの補正を行い、このルーチンを終了する。
図19は、上記図17において測位サーバ14の補正処理部88が実行するステップSS300の詳細手順を表すフローチャートである。
図19において、まずステップSS310では、記憶部86にアクセスし、上記ステップSS100で位置データを取得した移動局10の移動局IDをキーとして上記基準位置データベースを検索し、対応する基準位置SP1〜SP4の座標を取得する。
次に、ステップSS320では、上記ステップSS100で位置データを取得した移動局10の位置データ(又は、上記ステップSS200において位置データの補正が行われている場合は、補正後の位置データ。以下同様)が、上記ステップSS310で取得した基準位置SP1〜SP4に対応する位置補正エリアAA1〜AA4内にあるかどうかを判定する。対応する位置補正エリアAA内になければ、ステップSS320の判定が満たされず、ステップSS325で移動局カウントの個数NをN=0にしてこのルーチンを終了する。上記移動局10の位置データが対応する基準位置SPの位置補正エリアAA内にあれば、ステップSS320の判定が満たされ、ステップSS330に移る。
ステップSS330では、上記ステップSS320で判定した移動局10の位置データの前回(1回前の測位結果、つまり経時的に行われる測位順に沿って1個前の位置データ)の移動局10の位置データが、前述した第1〜第4基準位置SP1〜SP4に対応する第1〜第4位置補正エリアAA1〜AA4内であったかどうかを判定する。位置補正エリアAA内でなければ、判定は満たされず、ステップSS335で移動局カウントの個数NをN=1にしてこのルーチンを終了する。前回の移動局10の位置データが対応する位置補正エリアAA内にあれば、ステップSS330の判定が満たされ、ステップSS340に移る。
ステップSS340では、上記移動局カウントの個数Nに1を加える。これにより、上記ステップSS330の判定が満たされる、すなわち移動局10の位置データが対応する位置補正エリアAAに連続して存在している間は、上記ステップS330からこのステップSS340を経るたびに、カウントNが1ずつ増大していくことになる。このステップS340の後は、ステップSS360に移る。
ステップSS360では、上記移動局カウントの個数Nが、所定の数(前述の例ではN=11)に達したかどうか(言い換えれば、位置補正エリアAAに連続して存在している移動局10の位置データの数が11個蓄積されたかどうか)を判定(=移動局10の滞留判定)する。N=11に達していなければ、判定は満たされず、このルーチンを終了する。N=11に達したら、ステップSS360の判定が満たされ、ステップSS370に移る。
ステップSS370では、上記11個蓄積した位置補正エリアAA内にある移動局10の位置データに基づき、前述の(D−3)の手法により、補正値を算出する(データ演算手段、補正値演算手段)。その後、ステップSS380に移る。
ステップSS380では、記憶部86にアクセスし、上記ステップSS370で算出した補正値を、対応する第1〜第4基準位置SP1〜SP4と関連づけた形で、上記基準位置−補正値データベースに格納(更新)し、このルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施形態の測位システム8においては、移動局10の無線部28から電波信号が送信されると、その電波信号が各基地局12A〜12Dの無線部28にて受信され、このときの電波信号の受信時刻が到来時刻検出部42で検出される。これにより、測位サーバ14が、各基地局12A〜12Dの受信時刻差に基づき移動局10の位置データの算出(測位)を行う(ステップSSS10)。そして、求まった位置データを時間の経過と共に蓄積し、その位置データの蓄積に応じて、位置データを補正するための補正値を算出する(ステップSS370)。
このようにして補正値を算出した後は、その補正値に基づき、新たに取得した位置データの補正を行う(ステップSS250)。これにより、測位システムに不可避の偏差の影響を軽減し、測位精度を向上することができる。また、位置データの蓄積に応じて自動的に補正値が決まり補正が実行されるので、補正用に別途の無線機等を設ける必要がない。
また、本実施形態では特に、予め別途の手段で位置を特定した社員P1〜P4に係わる第1〜第4基準位置SP1〜SP4を設定し、基準位置データベースに格納する。そして、その第1〜第4基準位置SP1〜SP4から対応する第1〜第4位置補正エリアAA1〜AA4内となる位置データを、予め定めた所定個数(前述の例では11個)だけ蓄積し、それらの所定個数の位置データに対し、所定の演算処理を行って補正値を算出する。このように、取得された位置データのうち補正値算出用に用いる位置データの範囲を絞り込み、その絞り込んだ位置データに数学的演算を施して補正値を算出する。これにより、円滑かつ迅速に補正値を算出し、位置補正を実行することができる。
また特に、上記補正値を算出する際、偏差を求めるためのデータとして所定個数の位置データの平均値を用いることにより、各位置データのばらつきの影響をまんべんなく全て加味した補正を行うことができる。この結果、確実に良好な位置補正を行うことができる。
また、本実施形態では特に、所定の演算処理により算出した補正値を、補正値算出時に使用した第1〜第4基準位置SP1〜SP4と関連づけた形で基準位置−補正値データベースに格納し記憶する。また、各補正値による補正を実行するかどうかの第1〜第4オフセットエリアOA1〜OA4を、対応する第1〜第4基準位置SP1〜SP4ごとに設定しておく。そして、新たに取得された位置データが上記第1〜第4オフセットエリアOA1〜OA4内にあった場合には、当該第1〜第4基準位置SP1〜SP4に関連づけられた補正値を用いて、その位置データの補正を行うようにする。このように、位置データの最寄り(近傍)の第1〜第4基準位置SP1〜SP4に対応した補正値を用いることで、前述したような位置依存性にも対応した、良好な補正を確実に行うことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
(1)基準位置からの距離に応じた重み付けを行う場合
上記実施形態においては、社員P1〜P4の位置データから最寄りの基準位置SP1〜SP4に関連づけられた補正値をそのまま用いて位置データの補正を行っていたが、これに限られない。すなわち、社員P1〜P4の位置データと最寄りの基準位置SP1〜SP4との距離に応じて、対応する補正値の重み付けを行うようにしてもよい。
上記実施形態においては、社員P1〜P4の位置データから最寄りの基準位置SP1〜SP4に関連づけられた補正値をそのまま用いて位置データの補正を行っていたが、これに限られない。すなわち、社員P1〜P4の位置データと最寄りの基準位置SP1〜SP4との距離に応じて、対応する補正値の重み付けを行うようにしてもよい。
例えば社員P1に関し、取得された位置データが最寄りの基準位置SP1に近いほど、当該社員P1の位置では当該基準位置SP1と同様の測定誤差が生じている可能性が高く、位置データが最寄りの基準位置SP1から離れるほど、当該社員P1の位置において当該基準位置SP1と同様の測定誤差である程度は低くなっていく。
そこで、本変形例では、社員P1〜P4に係わる移動局10A〜10Dと最寄りの基準位置SP1〜SP4との距離dをそれぞれ算出し、その距離dの大きさに応じて上記補正値に重み付けを行う(重み付け係数Mを乗じる)ようにする。以下、社員P1の場合を例にとって、その詳細を図20及び図21により説明する。
図20及び図21は、本変形例における上記補正値の重み付けの手法を説明する説明図である。本変形例では、社員P1に係わる移動局10Aの位置データが
最寄りの基準位置SP1に係わるオフセットエリアOA1内にあるかどうかに応じて、重み付けの態様を異ならせている。
最寄りの基準位置SP1に係わるオフセットエリアOA1内にあるかどうかに応じて、重み付けの態様を異ならせている。
すなわち、図20に示すように、位置データがオフセットエリアOA1内の場合は、重み付け係数Mの値を1≧M≧0の範囲で可変としている。この重み付け係数Mは、移動局10Aの位置データが基準位置SP1と同位置であるときM=1であり、移動局10Aの位置データが基準位置から離れるほどMの値が小さくなり、移動局10Aの位置データがオフセットエリアOA1の境界上(基準位置SP1から距離d)になるとM=0となるように設定される(後述の図23参照)。
一方、図21に示すように、位置データがオフセットエリアOA1外の場合は、重み付け係数Mの値をM=0としている。すなわち、実質的に補正を行わないようにしている。
図22は、上記図20及び図21を用いて説明した制御態様を実行するために本変形例の測位サーバ14の補正処理部88が実行する、上記実施形態の図17におけるステップSS200の位置補正処理の詳細手順を表すフローチャートである。この図22は、上記実施形態の図18に対応する図であり、図18と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図22に示すフローでは、図18のステップSS230を削除するとともに、ステップSS240とステップSS250との間に新たにステップSS245を設けている。すなわち、上記ステップSS240において、上記したように、記憶部86にアクセスして基準位置SPに関連づけられた補正値を取得した後、新たに設けたステップSS245に移る。
ステップSS245では、上述した重み付け係数Mを乗じる重み付け処理(詳細は後述)を実行して、上記ステップSS240で取得した補正値に重み付けを行い、ステップSS250に移る。ステップSS250以降は、図18と同様であるので説明を省略する。
図23は、上記図22において測位サーバ14の補正処理部88が実行するステップSS245の重み付け処理の詳細手順を表すフローチャートである。
図23において、まずステップSS246では、社員P1〜P4と、前述のステップSS220で選択した、対応する(最寄りの)基準位置SPとの距離dを算出する。
その後、ステップSS247で、上記ステップSS246で算出した距離dが、対応する第1〜第4オフセットエリアOA1〜OA4の半径FR以下(0≦d≦FR)であるかどうかを判定する。
0≦d≦FRでなければ(言い換えれば、FR<dであれば)判定は満たされず、ステップSS249に移り、重み付け係数M=0とする。つまり、この場合、上記ステップSS250における位置データの補正を実質的に行わないようにする。その後、ステップSS244に移る。
一方、上記ステップSS246で算出した距離dが0≦d≦FRであれば、ステップSS247の判定が満たされ、ステップSS248に移る。
ステップSS248では、重み付け係数Mの値を、
M=1−d/FR
とする。これにより、前述したような位置データが基準位置SPと同位置であるときM=1となり、位置データが基準位置から離れるほどMの値が小さくなるように、Mの値が設定される。その後、ステップSS244に移る。
M=1−d/FR
とする。これにより、前述したような位置データが基準位置SPと同位置であるときM=1となり、位置データが基準位置から離れるほどMの値が小さくなるように、Mの値が設定される。その後、ステップSS244に移る。
なお、上記のステップSS248及びステップSS249が、各請求項記載の重み付け処理手段を構成する。
そして、ステップSS244では、上記ステップSS248又はステップSS249で値を設定した重み付け係数Mを、上記ステップSS245で取得した補正値に乗じ、このルーチンを終了する。
本変形例によれば、基準位置SPからの距離に応じ、移動局10の位置データに対応する補正値に重み付けを行うことにより、さらにきめの細かい高精度な補正を実行することができる。
(2)基地局の組合せごとに補正値を設定する場合
上記実施形態では、位置データの補正を行うための補正値を、社員P1〜P4の位置データから最寄りの基準位置SP1〜SP4にのみ関連づけて設定していたが、これに限られない。すなわち、補正値を、測位に使用した複数の基地局12A〜12Dの組合せにも関連づけて設定するようにしてもよい。
上記実施形態では、位置データの補正を行うための補正値を、社員P1〜P4の位置データから最寄りの基準位置SP1〜SP4にのみ関連づけて設定していたが、これに限られない。すなわち、補正値を、測位に使用した複数の基地局12A〜12Dの組合せにも関連づけて設定するようにしてもよい。
すなわち例えば、測位結果において、移動局10と各基地局12A〜12Dとの位置関係やマルチパス環境等の影響により、ある基地局12A〜12D同士の組合せでは比較的大きな偏差がある一方で別の基地局12A〜12D同士の組合せでは比較的小さな偏差にとどまる等、基地局12A〜12Dの組合せによる依存性が存在することがある。
そこで、本変形例では、前述の手法により算出した補正値を、そのときに移動局10から送信された電波信号を受信した複数(この例では3つ)の基地局12A〜12Dの組合せ(測位時に使用した全基地局の組合せでもよいし、使用した基地局の中から抜粋されたものの組合せでもよい)と関連づけた形で記憶(保管)する。そして、位置データを取得した際に使用した基地局組合せが、記憶された基地局組合せと一致した場合に、関連づけられた補正値を用いて、その位置データの補正を行う。以下、その詳細を図24及び図25により説明する。
図24は、測位サーバ14の記憶部86に記憶されている、基地局12A〜12Dの組合せ、基地局12A〜12Dの組合せに対応するオフセットエリア、基地局12A〜12Dの組合せに関連づけられた補正値の関係を含む補正値−基地局の組合せデータベース(第2記憶手段)の一例を表す図である。図24は、上記実施形態の図15にほぼ対応する図である。図24に示す補正値−基地局の組合せデータベースでは、前述したように、補正値は、補正値算出の際に使用した基地局12A〜12Dの組合せ(この例では3つの基地局の組合せ)と関連づけられた形で記憶されている。
すなわち、図24に示す例では、基地局12A、基地局12B、及び基地局12Cの組合せに関連づけて、補正値(0.1,0.2)が記憶されている。
同様に、基地局12A、基地局12B、及び基地局12Dの組合せに関連づけて、補正値(0.15,−0.1)が記憶されている。また、基地局12A、基地局12C、及び基地局12Dの組合せに関連づけて、補正値(0,0)が記憶されている(補正不要であるか、前述の手法による補正値の算出が行われていない初期状態)。また、基地局12B、基地局12C、基地局12Dの組合せに関連づけて、補正値(−0.04,0.08)が記憶されている。
次に、図25を用いて、社員P1の位置データに補正を行う場合を例にとってその手法を説明する。この例では、基地局12A、基地局12B、及び基地局12Dを用いて社員P1に係わる移動局10Aの測位を行い、その測位結果が、座標(1.6,2.5)であった(見かけの社員P1の位置。点線で示した社員P1)とする。このように、基地局12A、基地局12B、及び基地局12Dの組合せを用いて測位を行った場合について、位置データの補正値は、図24に示すように、(0.15,−0.1)に設定されている。したがって、上記見かけの社員P1の位置(1.6,2.5)に関して上記補正値を用いて位置補正を行うことで、位置補正後の社員P1の位置は(1.75,2.4)となる(実線で示した社員P1)。
図26は、本変形例における測位サーバ14の補正処理部88が実行する、上記実施形態の図17におけるステップSS200の詳細手順を表すフローチャートであり、上記実施形態の図18、上記(1)の変形例の図22に対応する図である。図18と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図26に示すフローでは、図18のステップSS210、ステップSS220、ステップSS230を削除し、ステップSS240に代えてステップSS240′を設けている。
すなわち、新たに設けたステップSS240′では、記憶部86にアクセスし、測位に用いた(言い換えれば図17のステップSS10で受信時刻を入力した)複数の基地局12の識別情報(基地局名称や基地局ID等)をキーとして上記基地局組合せ−補正値データベースを検索し、当該基地局12の組合せに対し設定されている補正値を取得する。その後のステップSS250は、図18と同様であるので説明を省略する。
図27は、本変形例における測位サーバ14の補正処理部88が実行する、上記実施形態の図17におけるステップSS300の詳細手順を表すフローチャートであり、上記実施形態の図19に対応する図である。図19と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
図27では、ステップSS380に代えてステップSS380′を設けた点が図18と異なる。すなわち、上記ステップSS370において前述の手法により補正値を算出した後、新たに設けたステップSS380′に移る。
ステップSS380′では、記憶部86にアクセスし、上記ステップSS370で算出した補正値を、対応する基地局12A〜12Dの組合せに関連づけた形で基地局組合せ−補正値データベースに格納(更新)し、このルーチンを終了する。なお、このとき、測位時において、例えば4つの基地局12A〜12Dのうち、位置データの検出時において受信電力値(RSSI部47で検出)が大きい順に3つの基地局12が選択され(言い換えれば受信電力値が最小の1つが除外され)て、その選択された基地局12のデータにより測位が行われる。したがって、上記の「補正値に対応する基地局」としては、その測位時に選択された3つの基地局とすればよい。さらに、前述のようにして位置データを11個蓄積するとき、11個の各データごとに上記受信電力値に基づき3つの基地局を選択して測位を行うようにしておき、その中から(延べ11×3=33個の基地局の登場回数の中から)頻度が高い順に3つの基地局12を上記の「補正値に対応する基地局」としてもよい。
本変形例によれば、移動局10から送信された電波信号の受信時の基地局12A〜12Dの組合せに対応した補正値を用いることで、上記のような基地局12A〜12Dの組合せによる依存性にも対応した、良好な補正を確実に行うことができる。
(3)位置データの中心値を用いて補正値を算出する場合
以上においては、図14を用いて前述したように、補正値の算出の際には、補正エリアAA内でばらついた所定の個数の位置データの平均値を求め、その平均値と、対応する基準位置SPとの偏差を補正値とした。しかしながら、補正値算出の手法はこれに限られるものではなく、他の手法でもよい。例えば、補正エリアAA内でばらついた所定の個数の位置データの大小の並び順に沿って中央値(中央の順番)の位置データと、対応する基準位置SPとの偏差により補正値を算出するようにしてもよい。
以上においては、図14を用いて前述したように、補正値の算出の際には、補正エリアAA内でばらついた所定の個数の位置データの平均値を求め、その平均値と、対応する基準位置SPとの偏差を補正値とした。しかしながら、補正値算出の手法はこれに限られるものではなく、他の手法でもよい。例えば、補正エリアAA内でばらついた所定の個数の位置データの大小の並び順に沿って中央値(中央の順番)の位置データと、対応する基準位置SPとの偏差により補正値を算出するようにしてもよい。
図28は、前述の図11で示した、第1基準位置SP1に滞留していると判定された、○○年△月×日10時00分00秒から10時10分00秒までの10分間の区間の上記第1位置補正エリアAA1内の11個の位置データ(x座標、y座標)を、数値の小さい値から大きい値に順番に並び替えた図であり、図14に対応する図である。
図28において、図示したように、上記11個の位置データ(x座標、y座標)の中央値の位置データは、(1.8,2.1)となる(破線楕円で囲んだ値)。したがってこの変形例では、前述した第1基準位置SP1の座標(2,2)から、上記11個の中央順番の位置データ(1.8,2.1)を引いた(0.2,−0.1)を、第1基準位置SP1に関する補正値とする。
本変形例によれば、位置データの中央値を用い、この中央値と基準位置SPとの偏差をとって補正値を算出することにより、大きすぎず、小さすぎない、ほどよい量の補正値とすることができ、確実に良好な位置補正を行うことができる。
(4)位置データの最多値を用いて補正値を算出する場合
さらに、補正エリアAA内でばらついた所定の個数の位置データのうち、最高頻度の位置データと、対応する基準位置SPとの偏差により、補正値を算出するようにしてもよい。
さらに、補正エリアAA内でばらついた所定の個数の位置データのうち、最高頻度の位置データと、対応する基準位置SPとの偏差により、補正値を算出するようにしてもよい。
図29は、前述の図11で示した、第1基準位置SP1に滞留していると判定された、○○年△月×日10時00分00秒から10時10分00秒までの10分間の区間の上記第1位置補正エリアAA1内の11個の位置データ(x座標、y座標)を表した図であり、上記図14、図28に対応する図である。
図29において、上記11個の位置データのx座標は、1.6が2回、1.7が2回、1.8が3回、2.0が2回、2.2が2回である。一方、上記11個の位置データのy座標は、1.8が1回、1.9が2回、2.0が1回、2.1が3回、2.2が1回、2.3が2回、2.4が1回である。以上の結果、11個の位置データのうち最高頻度の位置データx座標は1.8となり、最高頻度の位置データy座標は、2.1となる(破線楕円で囲んだ各値)。
したがってこの変形例では、前述した第1基準位置SP1の座標(2,2)から、上記最高頻度の数値を用いた位置データ(1.8,2.1)を引いた(0.2,−0.1)を、第1基準位置SP1に関する補正値とする。
本変形例によっても、高頻度で真の値に最も近いであろう数値を用いた座標と基準位置SPとの偏差をとって補正値を算出することにより、信頼性の高い補正値を得ることができるので、確実に良好な位置補正を行うことができる。
(5)TOA方式で測位を行う場合
なお、以上においては、移動局Tからの距離検出用の電波信号に対する各基地局Rの受信時刻差により測距処理を行う、いわゆるTDOA(Time Difference of Arrival)方式を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、RSSI(受信信号強度)を用いる方式やTOA(Time of Arrival)方式を用いて測距処理を行うようにしてもよい。RSSI方式の場合は、基地局のRSSI部47にて移動局信号の受信強度を取得し、これに基づき、測位を行うことができる。また、TOA方式の場合は図3に示した移動局10の時計41が必須の構成となる。そしてこの移動局10の時計41と各基地局12A〜12Dの時計41との時刻合わせが行われる。そして、移動局10での送信時刻と基地局12A〜12Dでの受信時刻とにより、移動局10から基地局12A〜12Dまでの到来時間(伝搬時間)を算出し、これに基づき、測位を行うことができる。
なお、以上においては、移動局Tからの距離検出用の電波信号に対する各基地局Rの受信時刻差により測距処理を行う、いわゆるTDOA(Time Difference of Arrival)方式を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、RSSI(受信信号強度)を用いる方式やTOA(Time of Arrival)方式を用いて測距処理を行うようにしてもよい。RSSI方式の場合は、基地局のRSSI部47にて移動局信号の受信強度を取得し、これに基づき、測位を行うことができる。また、TOA方式の場合は図3に示した移動局10の時計41が必須の構成となる。そしてこの移動局10の時計41と各基地局12A〜12Dの時計41との時刻合わせが行われる。そして、移動局10での送信時刻と基地局12A〜12Dでの受信時刻とにより、移動局10から基地局12A〜12Dまでの到来時間(伝搬時間)を算出し、これに基づき、測位を行うことができる。
本変形例によっても、上記実施形態や各変形例と同様の効果を得る。
(6)その他
上記においては、被測位局として移動可能な移動局10が設けられる場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、上記基地局12のように固定的に配置されるものに対し無線通信を介して測位を行う場合であっても、本発明を適用して、測位結果の補正を行うことができる。この場合も、上記同様、電波伝搬環境により生じる偏差を是正して、測位精度を向上することができる。
上記においては、被測位局として移動可能な移動局10が設けられる場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、上記基地局12のように固定的に配置されるものに対し無線通信を介して測位を行う場合であっても、本発明を適用して、測位結果の補正を行うことができる。この場合も、上記同様、電波伝搬環境により生じる偏差を是正して、測位精度を向上することができる。
また、図17〜図19、図22、図23、図26、図27に示すシーケンスやフローは本発明を図示する手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
10A〜D 移動局(被測位局)
12A〜D 基地局(測位局)
14 測位サーバ
P1〜4 社員(人物)
12A〜D 基地局(測位局)
14 測位サーバ
P1〜4 社員(人物)
Claims (9)
- 電波信号を送信する送信部を備えた移動局と、
前記送信部から送信された前記電波信号を受信する受信部を備えた複数の基地局と、
前記受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局の測位処理を行う測位処理手段と、
前記測位処理手段による前記移動局の位置データの時間的蓄積に応じて、前記測位処理結果を補正するための補正値を算出する補正値算出手段と、
前記補正値算出手段が前記補正値を算出した後、当該補正値に基づき、新たに前記測位処理手段で取得された前記移動局の位置データの補正を行う位置補正手段と
を有することを特徴とする測位システム。 - 前記補正値算出手段は、
前記蓄積された移動局の位置データより、移動局が、既知の基準位置から所定の第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていたと判定された場合に、
前記第1範囲内に留まっていた際の位置データに対し所定の演算処理を行い、前記補正値を算出するデータ演算手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の測位システム。 - 前記データ演算手段は、
前記第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データの平均値と前記基準位置との偏差を前記補正値とする
ことを特徴とする請求項2記載の測位システム。 - 前記データ演算手段は、
前記第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データのうち大小の並び順に沿って中央値の位置データと前記基準位置との偏差を前記補正値とする
ことを特徴とする請求項2記載の測位システム。 - 前記データ演算手段は、
前記第1範囲内に所定時間以上連続して留まっていた際の位置データのうち最高頻度の位置データと前記基準位置との偏差を前記補正値とする
ことを特徴とする請求項2記載の測位システム。 - 前記データ演算手段で算出した前記補正値を、対応する前記基準位置と関連づけて記憶する第1記憶手段を有し、
前記位置補正手段は、
前記新たに取得された位置データが、前記基準位置から所定の第2範囲内に位置する場合、前記第1記憶手段に記憶された前記補正値に基づき、前記新たな位置データの補正を行う
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載の測位システム。 - 前記所定の第1範囲は、
測位エリア環境に対応する偏差に基づいて設定されている
ことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の測位システム。 - 前記第1記憶手段に記憶された前記補正値に対し、前記新たに取得された位置データの前記基準位置からの距離に応じた重み付け処理を行う重み付け処理手段を有し、
前記位置補正手段は、
前記新たに取得された位置データが前記第2範囲内に位置する場合に、前記重み付け処理手段で重み付け処理された補正値を用いて前記新たな位置データの補正を行う
ことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の測位システム。 - 前記データ演算手段で算出した前記補正値を、補正値算出時の測位に対応する複数の前記基地局の組合せと関連づけて記憶する第2記憶手段を有し、
前記位置補正手段は、
前記新たに取得された位置データの取得時に使用した前記複数の基地局の組合せに対応する、前記第2記憶手段に記憶された前記補正値に基づき、前記新たな位置データの補正を行う
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載の測位システム。
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