以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態では、デジタルコンテンツの一例としてビデオコンテンツを用いた場合を想定する。ここで、ビデオコンテンツには、ビデオコンテンツとそれに同期再生されるオーディオコンテンツの双方が含まれるものとする。
≪第1の実施の形態≫
以下の第1の実施の形態では、記録媒体に記録されたビデオコンテンツの再生や他の記録媒体に転送することが可能な再生機器の一例として、デジタル放送の受信および録画が可能なビデオレコーダを挙げ、このビデオレコーダに対して本発明を適用した場合について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るビデオレコーダの構成を示すブロック図である。
図1に示すビデオレコーダ1は、チューナ部11、エンコーダ/デコーダ12、グラフィックインタフェース(I/F)13、オーディオI/F14、CPU(Central Processing Unit)15、ROM(Read Only Memory)16、RAM(Random Access Memory)17、不揮発性メモリ18、HDD19、光ディスクドライブ20、メモリカードI/F21、入力I/F22,および暗号処理回路23を具備する。このビデオレコーダ1は、CPU15が内部バス24を介して装置内の各コンポーネントに接続して、これらに対する統括的な制御を実行する構成となっている。
チューナ部11は、外部のアンテナにより受信された放送電波の入力を受けて、CPU15からの指示に従って所定の搬送周波数の信号を選択し、選択した受信信号に対してQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)復調および誤り訂正処理を施す。そして、処理後のトランスポートストリームからビデオストリームおよびオーディオストリームを分離して、CPU15の指示に従ってエンコーダ/デコーダ12やHDD19などに転送する。また、トランスポートストリームからはさらにEPG(Electronic Program Guide)などのデータ放送用の付加情報、コピー制御情報、暗号化のための鍵データなどのライセンス情報などを分離して、これらはCPU15に転送する。
エンコーダ/デコーダ12は、MPEG(Moving Picture Experts Group)方式に従ってビデオおよびオーディオのデータの圧縮符号化および伸張復号化処理を行う。例えば、チューナ部11やHDD19、光ディスクドライブ20、メモリカードI/F21などから供給されたビデオ,オーディオの各符号化データをデコードし、処理後のビデオ,オーディオのデータをそれぞれグラフィックI/F13およびオーディオI/F14に出力する。なお、実際にはHDD19や光ディスクドライブ20、メモリカードI/F21からのビデオデータ,オーディオデータは、暗号処理回路23を介してエンコーダ/デコーダ12に供給される。また、HDD19や光ディスクドライブ20から供給されたビデオ,オーディオの符号化データを、解像度やビットレートなどを変更して再エンコードし、暗号処理回路23を通じてメモリカードI/F21などに出力することもできる。
グラフィックI/F13は、エンコーダ/デコーダ12でデコード処理されたビデオデータを例えばアナログ信号に変換し、外部のテレビジョン受像機などに出力する。このとき、デコード処理されたビデオデータに、CPU15の処理により生成されたGUI画像などのOSD(On Screen Display)画像データを合成可能としてもよい。オーディオI/F14は、エンコーダ/デコーダ12でデコード処理されたオーディオデータを例えばアナログ信号に変換して、テレビジョン受像機やオーディオ機器などに出力する。
CPU15は、ROM16などに格納されたプログラムを実行することにより、ビデオレコーダ1内の各部を統括的に制御する。ROM16には、OS(Operating System)やBIOS(Basic Input/Output System)、アプリケーションプログラム、その他の各種データがあらかじめ格納される。RAM17は、CPU15に実行させるプログラムの少なくとも一部や、このプログラムによる処理に必要な各種データを一時的に記憶する。
不揮発性メモリ18は、例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)などからなり、CPU15に実行させるプログラムや、暗号化・復号などの処理に必要なデータがあらかじめ記録される。本実施の形態では特に、後述するように、ビデオコンテンツをムーブする際に必要とされるライセンス情報を管理する再生管理情報が記録され、ビデオコンテンツの記録時やムーブ処理時などに必要に応じて書き換えられるようになっている。
HDD19は、長時間のビデオコンテンツのデータを記録することが可能な、例えば100GByteといった比較的大容量の記憶装置であり、CPU15により指定されるコマンドやアドレス情報に基づいてデータの書き込みおよび読み出しの動作を行う。HDD19には、ビデオコンテンツのデータや、データ放送用の付加情報などが記録される。また、HDD19には、CPU15により実行されるプログラムや実行に必要なデータなどが記憶されてもよい。
光ディスクドライブ20には、DVDなどの光ディスク20aが装着され、光ディスクドライブ20は、この光ディスク20aを用いてデータの読み取り・書き込みを行う。光ディスク20aには、このビデオレコーダ1、あるいは他の装置において受信された放送コンテンツのデータなどが記録される。
メモリカードI/F21には、フラッシュメモリを内蔵するメモリカード21aが装着され、メモリカードI/F21は、このメモリカード21aを用いてデータの読み取り・書き込みを行う。メモリカード21aには、例えばHDD19などからコピーあるいはムーブされたビデオコンテンツのデータなどが記録される。
入力I/F22は、例えば、図示しないリモートコントローラからの赤外線信号を受信する受信回路や、ユーザが操作するための操作キーなどを具備し、ユーザの入力操作に応じた制御信号をCPU15に対して供給する。
暗号処理回路23は、著作権保護されたビデオコンテンツをムーブする際などに必要となる暗号化,復号の処理を実行する。例えば、HDD19や光ディスク20a、メモリカード21aにビデオコンテンツのデータを記録する際の暗号化処理や、これらからデータを読み出す際の復号処理を実行する。
ここで、このビデオレコーダ1における基本的な動作について説明する。
ユーザがデジタル放送の放送コンテンツを視聴する際には、CPU15は、入力I/F22からの制御信号に基づいて選局情報をチューナ部11に出力し、チューナ部11は、入力された選局情報に応じた搬送周波数の受信信号を選局して、復調および誤り訂正処理を施し、処理後のトランスポートストリームからビデオストリームやオーディオストリーム、データ放送用の付加情報、コピー制御情報、ライセンス情報などを分離する。
分離されたビデオストリームおよびオーディオストリームはエンコーダ/デコーダ12によりデコードされ、デコード後のビデオデータおよびオーディオデータはそれぞれグラフィックI/F13およびオーディオI/F14に供給される。これにより、選局された放送コンテンツが、外部の図示しないテレビジョン受像機などにおいて再生出力される。
また、チューナ部11から出力されたデータ放送用の付加情報は、入力I/F22を通じたユーザからの操作入力に応じて、CPU15の処理により生成される所定のOSD画像データとともにグラフィックI/F13に供給され、動画像とともに表示される。
さらに、受信した放送コンテンツのデータを例えばHDD19に記録する場合には、チューナ部11において分離されたコピー制御情報をCPU15が参照し、コピー可能なコンテンツと判定した場合のみ、チューナ部11で分離されたビデオストリームおよびオーディオストリームがHDD19に供給され、記録される。このとき、各ストリームのデータは、必要に応じて暗号処理回路23の処理により暗号化されて、HDD19に供給される。なお、放送コンテンツを光ディスク20aに直接記録する場合には、同様にコピー可能なコンテンツである場合のみ、チューナ部11からのビデオストリームおよびオーディオストリームが、必要に応じて暗号化されて光ディスクドライブ20に供給され、光ディスク20aに記録される。
また、HDD19に記録されたビデオコンテンツを再生する場合には、HDD19からビデオコンテンツを構成するビデオストリームおよびオーディオストリームが読み出されて、エンコーダ/デコーダ12においてデコードされて、デコード後のデータがグラフィックI/F13およびオーディオI/F14に供給され、ビデオ信号およびオーディオ信号が外部に出力される。また、HDD19に記録されたビデオコンテンツのデータが暗号化されている場合は、このデータは暗号処理回路23の処理により復号された後、エンコーダ/デコーダ12に供給される。なお、光ディスク20aやメモリカード21aに記録されたビデオコンテンツを再生する場合にも、同様な処理が行われる。
次に、ビデオコンテンツのムーブについて説明する。
例えば放送コンテンツなどとして供給される著作権保護されたビデオコンテンツには、1回のみの記録を許可する“コピーワンス”というコピー制御情報が付加されたものがある。このような“コピーワンス”のビデオコンテンツを記録媒体に一旦記録すると、その後に他の記録媒体に記録する際には、元の記録媒体上のデータを消去する“ムーブ”という動作しか許されない。
本実施の形態では、ムーブの際に、元の記録媒体上のコンテンツのデータを消去せずにそのまま残し、そのコンテンツに対応するライセンス情報のみを消去して、ムーブ先の記録媒体や外部機器などに移動させる。ここで、ライセンス情報は、対応するコンテンツを再生するための許諾を与える情報であり、ライセンス情報が消去されることにより、元の記録媒体上のコンテンツが再生不能状態になる(無効化)。また、一度他の記録媒体にムーブしたコンテンツが元の記録媒体にムーブにより戻される場合には、コンテンツのデータそのものを転送させずに対応するライセンス情報のみを取得し、元の記録媒体上の無効化されたコンテンツを再び再生可能なようにする。このような動作により、元の記録媒体上のコンテンツのデータを消去したり改変したりすることなく著作権が安全に保護される、仮想的なムーブを実現する。
このような動作を可能にするために、本実施の形態では、ビデオレコーダ1内において、“コピーワンス”のビデオコンテンツについては、コンテンツのデータ自体と、それに対応するライセンス情報とを分離し、ライセンス情報を不揮発性メモリ18内の「再生管理情報」に格納して管理する。
図2は、再生管理情報のデータ構造を示す図である。
図2(A)に示すように、再生管理情報181は、再生許可領域181aと再生不可領域181bとを備えている。再生許可領域181aには、HDD19に記録されたビデオコンテンツのうち、再生が許可されている状態のもののライセンス情報が格納される。具体的には、HDD19内の各ビデオコンテンツに固有に割り当てられたコンテンツIDと、そのビデオコンテンツの再生に必要なライセンス情報とが対応付けて格納される。例えば、図2(A)では、“ビデオA”というコンテンツIDに“ライセンス情報A”が対応付けられ、“ビデオB”というコンテンツIDに“ライセンス情報B”が対応付けられている。
また、再生不可領域181bは、HDD19内に記録されていながら、ムーブにより無効化されているビデオコンテンツのコンテンツIDが格納される。図2(B)に示すように、HDD19内のビデオコンテンツがムーブされる際には、対応するライセンス情報が再生許可領域181aから取り出されてムーブ先に送信されるとともに、そのビデオコンテンツのコンテンツIDが再生不可領域181bに記録される。図2(B)の例では、“ビデオC”というコンテンツIDで識別されるビデオコンテンツのムーブが行われ、これに対応する“ライセンス情報C”がメモリカード21aに転送されて、再生許可領域181aの対応する情報が消去されるとともに、“ビデオC”というコンテンツIDが再生不可領域181bに記録される。これにより、“ビデオC”で識別されるビデオコンテンツが、仮想的にムーブされた状態となる。
さらに、再生不可領域181bに記録されたコンテンツIDに対応するビデオコンテンツが、他の記録媒体からHDD19に再びムーブされる場合には、このビデオコンテンツのライセンス情報が再び再生許可領域181aに記録され、再生不可領域181bの対応するコンテンツIDが消去される。これにより、HDD19内の無効化されていたビデオコンテンツのデータが、再び再生可能な状態となる。
なお、ライセンス情報としては、例えば、ビデオコンテンツを他の記録媒体にムーブする際の暗号化処理に用いられる鍵データ、この鍵データを構成するデータの一部や鍵データを生成するための情報、視聴を許可することを示す情報、視聴時間を制限する情報、再生可能な機器や転送可能な記録媒体などを制限するための再生制御情報、再生を可能にするための秘匿情報(パスワードなど)などのうち、1つまたは複数の情報を適用することが可能である。
以下、例としてHDD19とメモリカード21aとの間のムーブについて説明する。ここでは特に、メモリカード21aに記録したビデオコンテンツを携帯端末で再生することを想定する。
図3は、ビデオレコーダと携帯端末との間のムーブ動作の概要を示す図である。
まず、ビデオレコーダ1では、著作権保護されたビデオコンテンツのデータ(コンテンツデータ191)がHDD19に記録され、このとき、対応するライセンス情報が、不揮発性メモリ18内の再生管理情報181にコンテンツIDとともに記録されている。この状態から、ビデオコンテンツをメモリカード21aにムーブする場合を考える。
ここで、メモリカード21aの記憶容量はHDD19と比較してはるかに小さく、また携帯端末2の表示画面の解像度はビデオレコーダ1に接続されるテレビジョン機器より低いため、通常、HDD19のビデオコンテンツは、画像解像度を低下させるなどにより低ビットレート化してデータ容量を小さくした後、メモリカード21aに記録される。ムーブ動作が開始されると、HDD19内のコンテンツデータ191が、エンコーダ/デコーダ12において一旦デコードされた後、低ビットレート化するように再エンコードされ、再エンコードされたビデオコンテンツのデータがメモリカード21aに記録される。
これとともに、再生管理情報181内の対応するライセンス情報およびコンテンツIDとがメモリカード21aに記録される(図中ステップS11)。また、再生管理情報181の再生許可領域181a内の対応するライセンス情報は消去され、ムーブされたビデオコンテンツのコンテンツIDが再生不可領域181bに記録される(ステップS12)。これにより、HDD19内のコンテンツデータ191は再生不可能となり、このビデオコンテンツが仮想的にムーブされた状態となる。
一方、メモリカード21aが例えば携帯端末2に装着されることで、低ビットレート化されたビデオコンテンツのデータ、コンテンツIDおよびライセンス情報が携帯端末2に引き渡されることになり、携帯端末2では、低ビットレート化されたビデオコンテンツをライセンス情報を用いて再生することが可能となる。
また、図3(B)に示すように、ムーブされたビデオコンテンツが、携帯端末2からビデオレコーダ1のHDD19に再びムーブされる場合には、低ビットレート化されたビデオコンテンツのデータやライセンス情報が記録されたメモリカード21aが再びビデオレコーダ1に装着される。このとき、ビデオレコーダ1側では、メモリカード21a内のビデオコンテンツのコンテンツIDが、再生管理情報181内の再生不可領域181bに記録されていることから、それと同じコンテンツIDを持つコンテンツデータ191が無効化された状態でHDD19に記録されていることを判別することができる。
従って、ビデオレコーダ1は、メモリカード21aからコンテンツIDとライセンス情報のみを読み出し(ステップS21)、このライセンス情報を再生管理情報181内の再生許可領域181aに書き込み、対応するコンテンツIDを再生不可領域181bから消去する(ステップS22)。なお、このときメモリカード21a内のライセンス情報は消去される。また、低ビットレート化されたビデオコンテンツのデータも消去してもよい。
以上の処理により、HDD19内のコンテンツデータ191が再生可能な状態となる。このコンテンツデータ191は、メモリカード21aへの記録のために低ビットレート化する前のオリジナルのデータであるので、一度ムーブを行った後でもそのビデオコンテンツの品質を落とさずに、ビデオレコーダ1で再生することが可能となる。また、例えばビデオレコーダ1から携帯端末2にビデオコンテンツがムーブされた後、さらに別の機器や記録媒体に複数段階に亘ってムーブが行われて、ビデオレコーダ1に戻された場合にも、同様に元の品質のビデオコンテンツを再生することが可能となる。さらに、一度ムーブしたビデオコンテンツをビデオレコーダ1に戻す場合には、ビデオコンテンツのデータ自体を転送する必要がないので、ムーブに要する時間が短縮される。
次に、ビデオコンテンツの記録およびムーブ時のビデオレコーダ1における処理について、さらに詳しく説明する。
まず、図4は、例として放送により受信したビデオコンテンツをHDD19に記録する場合の処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS101〕チューナ部11において放送コンテンツが順次受信され、CPU15は、チューナ部11の出力するデータを順次受け取る。
〔ステップS102〕受信データからコピー制御情報を抽出して、1回の記録のみが許可されたデータである場合はステップS104に進み、記録を許可されないデータであった場合はステップS103に進む。
〔ステップS103〕受信したビデオコンテンツのデータをエンコーダ/デコーダ12に供給してデコードさせ、コンテンツを再生出力させる。このとき、コンテンツのデータは記録媒体に記録しない。
〔ステップS104〕チューナ部11からのデータが記録対象のビデオコンテンツのデータである場合はステップS105に進み、そうでない場合(ここではライセンス情報である場合)はステップS106に進む。
〔ステップS105〕HDD19にビデオコンテンツのデータを記録する。なお、実際には、ビデオコンテンツのデータは暗号処理回路23により暗号化された後、HDD19に対して記録される。このときの暗号鍵データとしては、例えばHDD19に固有に割り当てられたデバイスIDなどが用いられる。
〔ステップS106〕不揮発性メモリ18内の再生管理情報181の再生許可領域181aに、ライセンス情報とコンテンツIDとを対応付けて記録する。なお、記録したビデオコンテンツにコンテンツIDがあらかじめ付加されていない場合には、ユニークなコンテンツIDを生成して記録する。また、ライセンス情報は、暗号処理回路23により暗号化された後に再生管理情報181に登録されてもよい。
〔ステップS107〕記録処理を終了するか否かを判定し、終了しない場合にはステップS104に戻る。
以上の処理により、ムーブが可能なビデオコンテンツについては、そのコンテンツIDとライセンス情報とが、再生管理情報181の再生許可領域181aに登録される。また、ライセンス情報をビデオコンテンツのデータから分離して管理することにより、この後に他の記録媒体へムーブするときや、さらに他の記録媒体から再びムーブされて戻されるときに、その都度ビデオコンテンツのデータに対して分離や結合を行う必要がなくなり、処理を効率化することができる。
次に、図5は、HDD19内のビデオコンテンツをメモリカード21aにムーブする場合の処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS201〕CPU15は、入力I/F22を通じたユーザの操作入力などにより、HDD19内のビデオコンテンツをメモリカード21aへムーブするように指示されると、まず、メモリカードI/F21に装着されているメモリカード21aに記録された環境情報を取得する。この環境情報としては、例えば、メモリカード21aの記憶容量や空き容量、再生に使用されるアプリケーションプログラムの種別、再生される機器の種別やこの機器で再生可能なデータフォーマット,画像解像度などが用いられる。
〔ステップS202〕HDD19内のムーブ対象のビデオコンテンツに付与されたコピー制御情報を抽出して、ムーブが許可されたデータか否かを判定する。許可されている場合はステップS203に進み、許可されていない場合は処理を終了する。
〔ステップS203〕ステップS201で取得した環境情報に基づき、ムーブ対象のビデオコンテンツのビットレートやデータ容量などの品質が、メモリカード21aへの記録に対して適しているか否かを判定する。適していない場合はステップS204に進み、適している場合はステップS205に進む。
〔ステップS204〕ムーブ対象のビデオコンテンツを、メモリカード21aへの記録用に最適化する。具体的には、CPU15の制御の下で、HDD19から読み出されたビデオコンテンツのデータは、暗号処理回路23により復号された後、エンコーダ/デコーダ12において一旦デコードされ、さらに低ビットレート化するように再エンコードされる。
〔ステップS205〕HDD19内のビデオコンテンツのデータ(または再エンコードされたデータ)を、メモリカード21aに転送する。このとき、実際には暗号処理回路23で暗号化された後、メモリカード21aに記録される。このときの暗号鍵としては、メモリカード21aに固有に割り当てられたIDなどが用いられる。また、暗号鍵の一部として、またはこれを生成するデータとして、このビデオコンテンツに対応するライセンス情報またはその一部が用いられてもよい。
〔ステップS206〕ビデオコンテンツのデータの転送が完了したか否かを判定し、完了していない場合はステップS205に戻り、完了した場合にはステップS207に進む。
〔ステップS207〕不揮発性メモリ18の再生管理情報181を参照し、再生許可領域181a内の対応するライセンス情報を読み出して、メモリカード21aに転送する。なお、このとき、ビデオコンテンツのデータと同様に、ライセンス情報も暗号処理回路23で暗号化した後にメモリカード21aに記録してもよい。
〔ステップS208〕ライセンス情報の転送が完了したか否かを判定し、完了していない場合はステップS207に戻り、完了した場合にはステップS209に進む。
〔ステップS209〕再生管理情報181内の再生許可領域181aに記録された対応するライセンス情報を消去し、また、再生不可領域181bに、ムーブしたビデオコンテンツのコンテンツIDを登録する。
以上の処理により、HDD19内のビデオコンテンツはそのデータが消去されることなく、メモリカード21aに仮想的にムーブされる。
なお、上記の処理において、ビデオコンテンツのデータをメモリカード21aに転送する前に、メモリカード21a内の同一のコンテンツIDを持つビデオコンテンツのデータがすでに記録されているか否かを問い合わせ、記録されていた場合にはライセンス情報のみを転送するようにしてもよい。これにより、例えば過去にメモリカード21aに対して仮想的なムーブを行った後に、さらにHDD19に仮想的に戻した(すなわち、メモリカード21a内のビデオコンテンツのデータを消去せずにライセンス情報のみ移動させた)ことのあるビデオコンテンツが存在する場合に、このビデオコンテンツのデータを再度メモリカード21aに転送する必要がなくなる。
次に、図6は、過去にムーブしたビデオコンテンツをメモリカード21aからHDD19に再びムーブする場合の処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS301〕CPU15は、入力I/F22を通じたユーザの操作入力などにより、メモリカード21aの所定のビデオコンテンツをHDD19へムーブするように指示されると、まず、指定されたビデオコンテンツのコンテンツIDをメモリカード21aから取得する。
〔ステップS302〕ムーブ対象のビデオコンテンツのデータがHDD19内に存在するか否かを判定する。具体的には、不揮発性メモリ18の再生管理情報181を参照し、ステップS301で取得したコンテンツIDが再生不可領域181bに存在するか否かを判定する。存在する場合にはステップS305に進み、存在しない場合にはステップS303に進む。
〔ステップS303〕ムーブ対象のビデオコンテンツのデータをメモリカード21aから読み出し、HDD19に転送する。実際には、メモリカード21a内に記録されているライセンス情報やメモリカード21aに固有のIDなどを復号鍵としてデータを復号し、さらにライセンス情報やHDD19に固有のデバイスIDなどを暗号鍵としてデータを暗号化した後、HDD19に記録する。
〔ステップS304〕ビデオコンテンツのデータの転送が完了したか否かを判定し、完了していない場合はステップS303に戻り、完了した場合にはステップS305に進む。
〔ステップS305〕ムーブ対象のビデオコンテンツに対応するライセンス情報をメモリカード21aから読み出して不揮発性メモリ18に転送し、再生管理情報181の再生許可領域181aに、コンテンツIDとともに登録する。なお、メモリカード21a内のライセンス情報が暗号化されていた場合には、これを復号し、さらにビデオコンテンツのデータと同様に暗号化してから再生管理情報181に登録してもよい。
〔ステップS306〕ライセンス情報の転送が完了したか否かを判定し、完了していない場合はステップS305に戻り、完了した場合にはステップS307に進む。
〔ステップS307〕再生管理情報181内の再生不可領域181bに、ムーブ対象のビデオコンテンツを示すコンテンツIDが存在していた場合(すなわち、ステップS302で“Yes”と判定した場合)には、そのコンテンツIDを消去する。
〔ステップS308〕転送が完了したメモリカード21a内のライセンス情報を消去する。また、メモリカード21a内のムーブ対象とされたビデオコンテンツのデータも消去してもよい。
以上の処理により、メモリカード21aに仮想的にムーブされていたビデオコンテンツが戻される場合には、再生管理情報181内の再生不可領域181bのコンテンツIDに基づいてその旨を判断し、対応するライセンス情報のみをHDD19に転送することでムーブ動作が完了する。そしてこの場合には、ムーブに要する時間が短縮されてユーザの利便性が高まるとともに、ムーブを行ったことによるビデオコンテンツの品質低下を回避することができる。
なお、以上のような処理は、上記のビデオレコーダ1において、例えば、光ディスク20aとメモリカード21aとの間のムーブ、あるいはHDD19と光ディスク20aとの間のムーブでも同様に実行することが可能である。また、HDD19と光ディスク20aとの間のムーブ時にも、エンコーダ/デコーダ12による再エンコード(ビットレートの変更)を行うことも可能であり、この場合にもムーブによるビデオコンテンツの品質低下を回避することができる。
また、上記のような処理は、ビデオレコーダ1から有線あるいは無線の通信I/Fを通じて他の機器にムーブする場合にも適用することが可能である。さらに、このような場合、接続される双方の機器に、上記のような再生管理情報を用いたムーブ動作の制御機能を設けるようにしてもよい。
例えば、図3において、ビデオレコーダ1と携帯端末2がUSB(Universal Serial Bus)方式などの通信I/Fを通じて接続され、上記のような再生管理情報を用いたムーブ動作の制御機能を双方の機器が具備している場合には、図3(A)のように、ビデオレコーダ1内のビデオコンテンツを携帯端末2にムーブすると、携帯端末2内の再生管理情報にムーブされたライセンス情報が登録される。そして、図3(B)のように、携帯端末2からビデオレコーダ1にそのビデオコンテンツがムーブされる場合には、携帯端末2ではビデオコンテンツのデータ自体が消去されずに、仮想的なムーブが行われる。
従って、この後に同じビデオコンテンツがビデオレコーダ1と携帯端末2との間でムーブされる際には、ビデオコンテンツのデータ自体は転送されず、ライセンス情報(とコンテンツID)のみが移動される。例えば、ムーブ元の機器では、ムーブ対象のビデオコンテンツがムーブを許可されたものであると判別すると(図5のステップS202に対応)、そのビデオコンテンツのコンテンツIDをムーブ先の機器に通知して、対応するデータがムーブ先の機器に記録されているか否かを問い合わせる。ムーブ先の機器ではこの問い合わせに応じて図6に相当する処理が開始され、対応するデータを具備する場合(図6のステップS302に対応)にはその旨をムーブ元の機器に通知する。これによりムーブ元の機器は、ライセンス情報のみを転送(図5のステップS207に対応)すればよく、データ転送時間が短縮されてユーザの利便性が高まる。
また、このとき各機器では、自機に対してビットレートが最適化されたビデオコンテンツが記録されているので、オリジナルのデータの品質を保持するという効果に加えて、各機器において最適化されたデータをライセンス情報の移動のみで容易に再生可能とすることができるという効果も生まれる。
なお、メモリカードにはメモリに対する制御回路が組み込まれていることから、この制御回路に、上記のような再生管理情報を用いたムーブ動作の制御機能を付加することも可能である。
≪第2の実施の形態≫
ところで、上述したように、デジタルコンテンツのムーブ動作については、そのデジタルコンテンツのデータ自体を移動せずにライセンス情報のみ移動させることで、デジタルコンテンツのデータ品質を落とすことなく、ユーザの利便性をある程度向上させることが可能となる。しかし、デジタルコンテンツを再生しようとしたときに、その再生機器に記録されたデジタルコンテンツのデータが現在再生可能であるか、あるいは無効化された状態であるかについて、ユーザが常に把握していなければならない。
特に、携帯型プレーヤなど、個人が多数の再生機器を用いてデジタルコンテンツを再生する状況では、上記のような仮想的なムーブ動作を実現する機能を各機器が具備していた場合に、現在どの再生機器において所望のデジタルコンテンツが再生可能な状態にあるのかをユーザが常に把握しておくことは容易でなく、不便をきたすことが問題となる。
そこで、以下の第2の実施の形態では、あるデジタルコンテンツを仮想的なムーブ動作を可能とするために再生不能状態としたときに、そのデジタルコンテンツの再生許諾を1つの再生機器のみに対して一時的に与えるように、外部の管理モジュールで管理する。そして、各再生機器から管理モジュールにアクセスする、あるいは管理モジュール側から再生機器にアクセスすることでその再生機器でのデジタルコンテンツの再生が可能となる。
従って、例えば各再生機器と管理モジュールとが近距離無線通信を行う場合には、再生機器から無線通信が可能な範囲に管理モジュールを配置し、また、有線ケーブルを通じて通信する場合には、再生機器と管理モジュールとを通信ケーブルやコネクタなどにより接続することで、デジタルコンテンツを再生することが可能となる。このように、使用する再生機器の近傍に管理モジュールを配置して、現在再生可能なデジタルコンテンツを管理モジュールにより管理することで、上記の問題を解決する。
図7は、本実施の形態に係るコンテンツ再生システムの構成を示す図である。
図7に示すコンテンツ再生システムは、ビデオコンテンツの再生機器の例としてのビデオレコーダ3および携帯型プレーヤ4と、これらの再生機器におけるビデオコンテンツの再生状態を管理するIDモジュール5とを有している。ビデオレコーダ3は、上述した第1の実施の形態で示したビデオレコーダ1と同様に、デジタル放送を通じて受信した放送コンテンツを記録・再生する機能や、記録した放送コンテンツをメモリカード6にコピー(あるいはムーブ)する機能を具備している。また、携帯型プレーヤ4は、記録媒体としてメモリカード6を用い、このメモリカード6に記録されたビデオコンテンツを再生する機能を具備している。
さらに、本実施の形態では例として、IDモジュール5は、ビデオレコーダ3および携帯型プレーヤ4との間で、近距離無線通信方式(例えば、Bluetooth(登録商標)など)を用いた無線通信を行うことが可能となっているが、これらの各機器は、例えばUSBなどの通信方式に従って有線通信を行うようにしてもよい。
ビデオレコーダ3は、チューナ部31、システム制御部32、HDD33、記録再生エンジンチップ34、メモリカードI/F35、および入力部36が、内部バス37を通じて相互に接続された構成を有している。また、記録再生エンジンチップ34には、無線I/F38が接続されている。
チューナ部31は、デジタル放送を受信して、システム制御部32により指定された番組の放送コンテンツのデータや、コピー制御情報、データ放送などの付加データを内部バス37上に出力する。システム制御部32は、CPU、ROM、RAMなどからなり、ビデオレコーダ3の各部を統括的に制御する。HDD33には、ビデオコンテンツのデータやその他の各種プログラム、データなどが記録される。また、チューナ部31で受信された放送コンテンツや各種データ、メモリカード6からメモリカードI/F35を通じて読み出されたビデオコンテンツなどを記録することもできる。
記録再生エンジンチップ34は、ビデオコンテンツの記録・再生時やコピー,ムーブ時における処理の一部を実行する処理ブロックであり、その内部にはビデオデータおよびオーディオデータのエンコーダ/デコーダ341と、記録再生時、ムーブ時などの暗号処理を実行する暗号処理回路342などを具備している。また、図示しないが、無線I/F38を通じてIDモジュール5との間で通信する際の制御機能を具備してもよい。
メモリカードI/F35は、メモリカード6を用いたデータの書き込み/読み出しを行う。入力部36は、リモートコントローラからの赤外線信号の受光部や、各種操作キーおよびこれらとのI/F回路などを含み、ユーザによる入力操作に応じた制御信号を内部バス37上に出力する。
無線I/F38は、IDモジュール5との間で無線通信するための処理ブロックで、データの変復調やパケット生成・分離処理、通信相手との間の相互認証処理などを行う処理回路などを含んでいる。
このようなビデオレコーダ3は、例えば、チューナ部31により受信された放送コンテンツ(ビデオコンテンツ)のデータを、HDD33に記録することが可能である。また、HDD33やメモリカード6に記録されたビデオコンテンツのデータを、エンコーダ/デコーダ341によりデコードし、さらに出力用の信号に変換したビデオ信号、オーディオ信号に変換して外部のテレビジョン受信機などに出力することにより、ビデオコンテンツを再生することも可能である。
さらに、著作権保護されたビデオコンテンツ(コピー制御情報が“コピーワンス”とされたもの)については、HDD33とメモリカード6との間でムーブすることができる。この際には、後述する処理により、元のビデオコンテンツのデータを消去することなく、仮想的にムーブさせることが可能となっている。また、仮想的なムーブ状態とされたビデオコンテンツを再生する場合には、IDモジュール5との間で無線I/F38を通じて無線通信することが必要となる。
また、携帯型プレーヤ4は、システム制御部41、メモリカードI/F42、再生エンジンチップ43、および入力部44が、内部バス45により相互に接続された構成を有している。また、再生エンジンチップ43には、無線I/F46、表示部47および音声出力部48が接続されている。
システム制御部41は、CPU、ROM、RAMなどからなり、携帯型プレーヤ4の各部を統括的に制御する。メモリカードI/F42は、メモリカード6を用いたデータの書き込み/読み出しを行う。再生エンジンチップ43は、ビデオデータおよびオーディオデータのデコーダ431、再生時、ムーブ時などの暗号処理を実行する暗号処理回路432などを含み、ビデオコンテンツの再生時やコピー,ムーブ時における処理の一部を実行する。また、図示しないが、無線I/F46を通じてIDモジュール5との間で通信する際の制御機能を具備してもよい。
入力部44は、各種操作キーおよびこれらとのI/F回路などを含み、ユーザによる入力操作に応じた制御信号を内部バス45上に出力する。
無線I/F46は、IDモジュール5との間で無線通信するための処理ブロックで、データの変復調やパケット生成・分離処理、通信相手との間の相互認証処理などを行う処理回路などを含んでいる。
表示部47は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスや表示処理回路などからなり、デコーダ431においてデコードされたビデオデータを受けて、表示デバイスにビデオコンテンツを再生表示する。音声出力部48は、スピーカあるいはイヤホン出力端子、アンプなどの音声処理回路などからなり、デコーダ431によりデコードされたオーディオデータを受けて、このデータに基づく再生音声を出力する。
このような携帯型プレーヤ4は、メモリカード6に記録されたビデオコンテンツのデータをデコーダ431によりデコードし、表示部47や音声出力部48にデコード後のデータを供給することで、ビデオコンテンツを再生することができる。また、仮想的にムーブ状態とされたビデオコンテンツも再生することができ、その際にはIDモジュール5との間で無線I/F46を通じて無線通信することが必要となる。
なお、以上のような再生機器において、著作権保護されたビデオコンテンツは、HDD33やメモリカード6への記録の際に暗号化される。ビデオレコーダ3では、このときの暗号化の処理は暗号処理回路342により実行され、再生時にはこれらの記録媒体からの読み出し後に暗号処理回路342により復号される。また、携帯型プレーヤ4では、メモリカード6内のビデオコンテンツは、暗号処理回路432により復号されることで再生可能となる。また、各機器において、暗号処理回路342および432はともに、ビデオコンテンツに付加されるライセンス情報などの暗号処理や、IDモジュール5との間で送受信されるデータの暗号処理も実行する。
また、IDモジュール5は、制御部51、無線I/F52、入力部53、表示部54、および不揮発性メモリ55を具備している。制御部51は、CPU、ROM、RAMや暗号処理回路などからなり、IDモジュール5内の各部を統括的に制御する。無線I/F52は、ビデオレコーダ3や携帯型プレーヤ4などの再生機器との間で無線通信するための処理ブロックであり、データの変復調やパケット生成・分離処理、通信相手との間の相互認証処理などを行う処理回路などを含んでいる。
入力部53は、各種操作キーやそれらとのI/F回路などを含み、ユーザによる入力操作に応じた制御信号を制御部51に供給する。表示部54は、例えばLCDなどの表示デバイスや表示処理回路などからなり、制御部51により生成された画像信号に基づいて画像を表示する。不揮発性メモリ55は、例えばEEPROMなどからなり、後述するように、再生機器上において仮想的なムーブ状態とされたビデオコンテンツの現在の再生状態を管理するためのリスト情報が記憶される。
このコンテンツ再生システムでは、ビデオレコーダ3あるいは携帯型プレーヤ4などの再生機器内のビデオコンテンツを、IDモジュール5から一時的な再生許諾を受けない限り再生できない状態とする。以後、このような再生不能状態となったビデオコンテンツを“仮想ムーブ対象”と呼称する。IDモジュール5は、仮想ムーブ対象とするための登録や解除の要求、再生の開始/終了要求などを、無線I/F52を通じて再生機器から受け付け、これらの要求に応じて不揮発性メモリ55に記録されたリスト情報を更新することで、その再生状態を管理する。ここで、IDモジュール5のリスト情報に基づいて、仮想ムーブ対象となったビデオコンテンツを他の再生機器にコピーしたときでも、ただ一つの再生機器にしか再生許諾を与えないようにすることで、各再生機器内のビデオコンテンツのデータを消去することなく、実質的にムーブと同等な著作権保護効果が得られるようにする。
以下、このような構成のコンテンツ再生システムにおいて、仮想的なムーブ動作を実現するための2通りの処理例について説明する。
<第1の処理例>
図8は、第1の処理例を適用した場合のコンテンツ再生システムにおけるムーブ時の動作の概要を示す図である。
第1の処理例では、再生機器内のビデオコンテンツを仮想ムーブ対象とした際に、そのビデオコンテンツを識別するコンテンツIDをIDモジュール5に対して登録する。これにより、IDモジュール5内のコンテンツIDを消去することで、そのビデオコンテンツを仮想ムーブ対象の状態から容易に解除することが可能となる。
図8に示すように、このコンテンツ再生システムにおいて仮想的なムーブ動作を行うためには、まず、ビデオレコーダ3内のビデオコンテンツを仮想ムーブ対象として登録する手順(ステップS30)を行うことで、各再生機器(ここではビデオレコーダ3および携帯型プレーヤ4)において、IDモジュール5から一時的な再生許諾を取得して仮想ムーブ対象を再生する(ステップS40およびS50)ことが可能となる。さらに、図示しないが、この後に、ビデオコンテンツを仮想ムーブ対象から解除して元の状態に戻すことも可能となっている。
IDモジュール5の不揮発性メモリ55には、再生機器において仮想ムーブ対象とされたビデオコンテンツの再生状態を管理するための再生状態管理リスト551が記録される。再生状態管理リスト551には、ユーザを識別するためのユーザIDに対して、仮想ムーブ対象とされているビデオコンテンツを識別するためのコンテンツIDと、そのビデオコンテンツが現在一つの再生機器において再生されているか否かを示す再生状態フラグとが関連づけられている。
ここで、ユーザIDは、IDモジュール5ごとにあらかじめ付与されていてもよい。この場合、ユーザIDはIDモジュール5を識別するモジュールIDと同等となる。例えば、ビデオコンテンツをムーブさせる必要のあるユーザが個々に自分用のIDモジュール5を使用する場合などは、このようなユーザIDの割り当てを行っておくとわかりやすい。逆に、例えば1つのIDモジュール5を複数のユーザにより使用する場合には、ユーザIDを仮想ムーブ対象の登録動作ごとに生成すればよい。さらに、これらのいずれの場合でも、1つのユーザIDに対して複数のコンテンツIDを登録してもよく、その場合にはコンテンツIDのそれぞれに対して再生状態フラグが個別に設けられてもよい。
まず、ビデオレコーダ3において、放送を通じて受信されたビデオコンテンツのデータ(コンテンツデータ331a)がHDD33に記録された場合を考えたとき、このコンテンツデータ331aを仮想ムーブ対象として登録するための手順は、図8のように、主に、IDモジュール5から与えられたユーザIDを、仮想ムーブ対象とするコンテンツデータ331aに対応する再生管理情報332に付加する手順(ステップS31)と、仮想ムーブ対象とするコンテンツデータ331aを示すコンテンツIDを、IDモジュール5の再生状態管理リスト551に登録する手順(ステップS32)とから構成される。
ここで、再生管理情報332は、対応するコンテンツデータ331aがIDモジュール5からの一時的な再生許諾を得られない場合には再生不能であるという再生上の条件を付加するための情報であり、再生時に正しいIDモジュール5と接続するためにユーザIDが記録される。この再生管理情報332は、例えば、コンテンツデータ331aの再生を許諾するためのライセンス情報の一部として実現される。また、仮想ムーブ対象の登録時にコンテンツデータ331aを暗号化する際の暗号鍵あるいはその一部として、ユーザIDあるいはその関連情報が用いられてもよい。
なお、本実施の形態では、再生管理情報332はビデオコンテンツごとに設けられ、そのデータ内に一体に付加されるが、例えば、記録媒体内の複数のビデオコンテンツについて1つの再生管理情報により一括して管理するようにしてもよい。
仮想ムーブ対象の登録は、ビデオレコーダ3側あるいはIDモジュール5側のいずれかでのユーザによる操作入力に応じて実行されればよい。以下の図9では、例としてビデオレコーダ3側での操作入力に応じて実行される場合の処理について示す。
図9は、仮想ムーブ対象の登録時におけるビデオレコーダ3の処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS401〕入力部36からのユーザの入力操作により、HDD33に記録されたビデオコンテンツのうち、仮想ムーブ対象とするものの選択を受け、登録処理を開始するための指示入力を受ける。システム制御部32は、このような入力に応じて、仮想ムーブ対象の登録のためのプログラムを起動し、以下の処理を実行する。
〔ステップS402〕無線I/F38を通じて接続可能な距離内に存在するIDモジュール5を検索し、検索されたIDモジュール5に対して接続を要求する。
〔ステップS403〕無線I/F38は、接続相手のIDモジュール5との間で相互認証処理を行う。
〔ステップS404〕正しく相互認証が行われたときは、IDモジュール5との間で無線通信リンクを確立し、次にユーザIDの送信を要求して、これを受信する。
〔ステップS405〕ステップS401で選択したビデオコンテンツに対応する再生管理情報332に、IDモジュール5から受信したユーザIDを付加し、この再生管理情報332に対して、IDモジュール5からの再生許諾を受けない限り再生不能であることを示す再生条件を書き込む。これにより、ユーザIDが付加されたビデオコンテンツは仮想ムーブ対象とされる。
なお、このとき、ユーザIDやそれに関連する情報を暗号鍵またはその一部として組み込み、ビデオコンテンツのデータを暗号化してもよい。また、ビデオコンテンツのデータが例えばHDD33のデバイスIDなどですでに暗号化されていた場合には、暗号処理回路342の処理により一旦復号した後、ユーザIDなどを鍵情報として用いて再び暗号化すればよい。
〔ステップS406〕ユーザIDを付加したビデオコンテンツのコンテンツIDを、IDモジュール5に送信する。IDモジュール5は、ビデオレコーダ3からコンテンツIDを受信すると、そのIDを再生状態管理リスト551内の対応するユーザIDに対応づけて登録する。また、このとき対応する再生状態フラグを“0”とし、その後にビデオレコーダ3に対して、登録が完了したことを通知する。
〔ステップS407〕IDモジュール5からの登録完了通知を受信し、仮想ムーブ対象の登録処理が終了する。
なお、仮想ムーブ対象としたビデオコンテンツを再生不能とするために、ステップS405においてこのビデオコンテンツのデータを暗号化した際の鍵情報またはその一部を、IDモジュール5の再生状態管理リスト551にのみ記録するようにしてもよい。これにより、仮想ムーブ対象となったビデオコンテンツの秘匿性が向上する。
また、ステップS402で複数のIDモジュールが検索された場合には、ビデオレコーダ3では検索された各IDモジュールを示すアイコンを表示させて、ユーザに選択させるようにしてもよい。また、この場合にステップS403で正しく認証されなかった場合には、検索されたもののうち他のIDモジュールに自動的にアクセスして、再び認証処理を行うようにしてもよい。
ここで、図8に戻って説明すると、以上の図9の手順により仮想ムーブ対象となったコンテンツデータ331aは、それに付加された再生管理情報332とともに(すなわち、コンテンツデータ331aにユーザIDが付加された状態で)、他の記録媒体に自由にコピーすることが可能となる。これは、このコンテンツデータ331aがIDモジュール5から再生許諾を与えられない限り再生不能であるからである。図8では、このコンテンツデータ331aおよび再生管理情報332をメモリカード6にコピーし、このメモリカード6を携帯型プレーヤ4に装着することでビデオコンテンツを再生可能にするようにしている。また、コンテンツデータ331aおよび再生管理情報332は、ユーザが特に操作することなく、ビデオレコーダ1から他の記録媒体に自動的にコピーさせておくことも可能であり、この場合はユーザにとっての利便性がさらに向上する。
なお、通常、ビデオレコーダ3のHDD33内のコンテンツデータ331aをメモリカード6に記録する場合には、エンコーダ/デコーダ341の処理により画像解像度を低下させるなどしてコンテンツデータ331aを低ビットレート化・低容量化してメモリカード6に記録する(図8では、低ビットレート化したものをコンテンツデータ331bとしている)。
また、ビデオレコーダ3や携帯型プレーヤ4では、ユーザIDを装置内部の不揮発性メモリなどに別に記録するようにしてもよい。この方法は、特定の再生装置を一人のユーザが占有する場合などに好適である。この場合、特定の再生装置で再生するビデオコンテンツはすべて同じIDモジュール5を用いて仮想ムーブ対象とされたものとなり、例えば、取り外しできないHDDなどをビデオコンテンツ用の記録媒体として具備する携帯型プレーヤなどに適用可能である。
この方法によれば、仮想ムーブ対象としたビデオコンテンツを上記不揮発性メモリを具備する携帯型プレーヤにコピーする際に、間違って異なるユーザIDが付加されたビデオコンテンツをコピーしてしまうことが防止される。また、携帯型プレーヤが、他の記録媒体(あるいは再生機器)に記録されている仮想ムーブ対象とされたビデオコンテンツの中から、ターゲットのユーザIDが付加されているものだけを自動的にコピーするといった機能を実現することもできる。
次に、ビデオレコーダ3内のコンテンツデータ331aを再生する場合(ステップS40)には、ビデオレコーダ3とIDモジュール5との間で無線通信チャネルを確立した後、IDモジュール5が保持するユーザIDと、コンテンツデータ331aに対応する再生管理情報332に記録されたユーザIDとが照合される(ステップS41)。
そして、これらのユーザIDが一致した場合には、ビデオレコーダ3はコンテンツデータ331aのコンテンツIDをIDモジュール5に送信する(ステップS42)。IDモジュール5は、再生状態管理リスト551を参照して、受信したコンテンツIDに対応する再生状態フラグが“0”である場合に、ビデオレコーダ3に対して一時的な再生許諾を与える(ステップS43)。またこのとき、再生状態管理リスト551の対応する再生状態フラグを“1”にする。
以上の手順により、再生許諾を与えられたビデオレコーダ3は、コンテンツデータ331aを再生することが可能となる。また、再生許諾は一時的に与えられるもので、ビデオレコーダ3では、例えばIDモジュール5からその後に一定時間ごとに再生許諾を受けることなどにより、再生を継続することができる。
一方、携帯型プレーヤ4においてメモリカード6内のコンテンツデータ331bを再生する場合(ステップS50)も、同様の手順が行われる。すなわち、IDモジュール5の保持するユーザIDと再生管理情報332に記録されたユーザIDとが照合され(ステップS51)、ユーザIDが一致した場合には、コンテンツIDがIDモジュール5に送信される(ステップS52)。IDモジュール5では、受信したコンテンツIDに対応する再生状態フラグが“0”である場合のみ、携帯型プレーヤ4に対して一時的な再生許諾を与える(ステップS53)。
ここで、IDモジュール5では、再生状態管理リスト551の再生状態フラグを用いて、ただ一つの再生機器でのみコンテンツデータの再生を許諾することにより、ムーブ動作が仮想的に実現される。また、ビデオレコーダ3では、仮想ムーブ対象としたビデオコンテンツをメモリカード6にコピーした後でも、HDD33内には低ビットレート化する前のオリジナルのコンテンツデータ331aを再生することができるので、ムーブ動作の実行によるビデオコンテンツの品質低下が防止される。
なお、例えばビデオレコーダ3に記録したコンテンツを携帯型プレーヤ4にムーブして再生した後、再びビデオレコーダ3で再生可能にするという状況は、従来ではコンテンツデータを複数回ムーブすることで実現されるものであった。本実施の形態のコンテンツ再生システムでは、実際のコンテンツデータの1回のムーブとIDモジュール5による再生許諾の管理により、上記のような実質的な複数回のムーブが実現されることになり、従来であればこのようにムーブを繰り返すことで必ず発生していたコンテンツデータの品質劣化という事態を回避できるという利点がある。
以下、仮想ムーブ対象の再生時の処理について、より具体的に説明する。
図10は、ビデオレコーダ3側でのユーザ操作に応じて仮想ムーブ対象が再生される際のビデオレコーダ3の処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS501〕入力部36を通じたユーザの操作入力により、再生するビデオコンテンツの選択入力を受け付ける。
〔ステップS502〕選択されたビデオコンテンツに対応する再生管理情報332に記述された再生条件を参照して、IDモジュール5からの再生許諾が必要か否かを判定する。必要な場合はステップS503に進み、必要でない場合はステップS512に進む。
〔ステップS503〕選択されたビデオコンテンツに対応する再生管理情報332から、ユーザIDを読み出す。
〔ステップS504〕無線I/F38を通じて接続可能な距離内に存在するIDモジュール5を検索し、検索されたIDモジュール5に対して接続を要求する。
〔ステップS505〕無線I/F38は、接続相手のIDモジュール5との間で相互認証処理を行う。
〔ステップS506〕正しく相互認証が行われたときは、IDモジュール5との間で無線通信リンクを確立し、次にユーザIDの送信を要求して、これを受信する。
〔ステップS507〕受信したユーザIDと、ステップS503で読み出したユーザIDとを照合し、これらが一致した場合はステップS508に進む。また、一致しなかった場合はステップS513に進む。
〔ステップS508〕ユーザIDが一致したビデオコンテンツのコンテンツIDを読み取り、IDモジュール5に送信する。
〔ステップS509〕IDモジュール5からの応答を監視し、ステップS508で送信したコンテンツIDに対応するビデオコンテンツが他の再生機器で再生中であることを通知された場合にはステップS514に進み、そうでない場合はステップS510に進む。
〔ステップS510〕IDモジュール5から一時的な再生許諾が受信した場合にはステップS511に進み、そうでない場合はステップS509に戻ってIDモジュール5からの応答を監視する。
〔ステップS511〕IDモジュール5からの再生許諾に応じて、例えばビデオコンテンツを暗号処理回路342により復号するなどした後、エンコーダ/デコーダ341によりデコードしてビデオコンテンツの再生処理を開始し、以後、再生許諾を継続して受信することで再生を継続する。なお、このステップS511については、後の図12において説明する。
〔ステップS512〕IDモジュール5からの再生許諾が必要でないビデオコンテンツについては、そのまま再生処理を行う。例えば、再生管理情報332内の鍵情報を用いてビデオコンテンツを復号するなどした後、さらにエンコーダ/デコーダ341によりデコードする。この後、図示しないが、ユーザの操作入力により再生中止が指示されるまで、再生が継続される。
〔ステップS513〕ユーザIDによる照合に失敗した場合には、その旨をIDモジュール5に対して通知して、ステップS514に進む。
〔ステップS514〕接続されたテレビジョン機器の表示画面に、再生不能である旨を表示してユーザに通知し、処理を終了する。この場合、ユーザは例えば他のIDモジュールに無線接続して再度再生許諾を要求してもよい。
なお、携帯型プレーヤ4でも、同様の処理によりメモリカード6内のビデオコンテンツを再生することが可能である。
一方、図11は、ビデオレコーダ3側でのユーザ操作に応じて仮想ムーブ対象が再生される際のIDモジュール5の処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS601〕無線I/F52を通じて、再生機器(ここでは例としてビデオレコーダ3とするが、携帯型プレーヤ4の場合でも同様である)からのアクセスを受ける。
〔ステップS602〕無線I/F52は、アクセスを受けたビデオレコーダ3との間で相互認証処理を行う。
〔ステップS603〕正しく相互認証が行われると、ビデオレコーダ3からの情報を監視し、ユーザIDの送信要求を受けると、再生状態管理リスト551に記録されているユーザIDを返信する。なお、複数のユーザIDが記録されている場合には、それらをすべてビデオレコーダ3に送信し、ビデオレコーダ3側においてユーザの操作入力により選択させてもよい。
〔ステップS604〕ステップS603で返信したユーザIDを用いて、ビデオレコーダ3では照合処理(図10のステップS507に対応)が実行され、IDモジュール5では、照合結果に基づいて発行される情報を監視する。照合に失敗した場合にはその旨が通知され(図10のステップS513に対応)、IDモジュール5ではその通知を受けると、処理を終了する。また、通知を受けない場合はステップS605に進む。
〔ステップS605〕照合に成功した場合には、登録対象のビデオコンテンツのコンテンツIDが送信され(図10のステップS508に対応)、IDモジュール5では、コンテンツIDを受信した場合にはステップS606に進み、受信しない場合はステップS604に戻って、ビデオレコーダ3からの情報を監視する。
〔ステップS606〕再生状態管理リスト551を参照して、ステップS605で受信したコンテンツIDに対応する再生状態フラグが“0”である場合はステップS607に進み、“1”である場合はステップS610に進む。
〔ステップS607〕再生状態フラグを、再生中を示す“1”に変更する。
〔ステップS608〕受信したコンテンツIDに対応するビデオコンテンツの一時的な再生許諾を送信する。これにより、登録を要求したビデオコンテンツについて、通信相手のビデオレコーダ3において再生が開始される。
〔ステップS609〕再生を許諾したビデオコンテンツがその後再生され続けるか否かを継続的に監視する処理を行う。この処理については、後の図13において説明する。
〔ステップS610〕再生状態フラグ“1”の場合、登録を要求されたビデオコンテンツが他の再生機器において現在再生中であるので、再生中である旨を再生機器に通知する。この通知を受信したビデオレコーダ3では、再生不能である旨を表示する(図10のステップS514)。
以上の図10および図11の処理により、ビデオレコーダ3では仮想ムーブ対象とされたビデオコンテンツの再生を開始することができる。その後、再生を継続する間、ビデオレコーダ3とIDモジュール5との間の通信は続行され、以下の図12および図13の処理が行われる。一方、現在再生中のビデオコンテンツの再生が要求された場合には、IDモジュール5によって拒否され、ビデオコンテンツの著作権が確実に保護される。これとともに、ユーザは、現在再生可能なビデオコンテンツを普段から特に把握している必要がなく、単にビデオレコーダ3から再生開始を要求すればよいので、利便性の高い仮想的なムーブ動作が実現される。
図12は、ビデオレコーダ3における再生許諾継続受信処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS701〕再生が許諾されたビデオコンテンツのデータがエンコーダ/デコーダ341によりデコードされ、再生信号が順次出力される。
〔ステップS702〕一定時間(例えば10秒)の経過を監視する。ここで、その時間が経過した場合にはステップS703に進む。
〔ステップS703〕再生中のビデオコンテンツのコンテンツIDをIDモジュール5に送信し、再生中である旨を通知する。
〔ステップS704〕IDモジュール5から、再生継続許諾を受信する。これにより、さらに一定時間経過後まで再生を継続することが可能となる。
〔ステップS705〕ステップS702での一定時間経過までの間に、ユーザの操作入力により再生を中止するように指示された場合はステップS706に進み、指示のない場合にはステップS701に戻って、再生処理を継続する。
〔ステップS706〕再生の中止を指示された場合には、再生を中止する旨をIDモジュール5に対して通知し、処理を終了する。
図13は、IDモジュール5における継続再生監視処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS801〕無線I/F52を通じて、再生機器(ここではビデオレコーダ3)からの情報を監視し、再生中であることの通知を受けた場合(図12のステップS703に対応)はステップS802に進む。このとき同時に、再生中のビデオコンテンツを示すコンテンツIDも受信する。また、そのような通知を受けていない場合はステップS804に進む。
〔ステップS802〕再生状態管理リスト551を参照して、受信したコンテンツIDが存在し、かつ再生状態フラグが“1”であることを確認する。
〔ステップS803〕通信先のビデオレコーダ3に対して再生継続許諾を送信する。この再生継続許諾を受信したビデオレコーダ3では、その後に再び再生継続許諾を要求するまでの間、対応するビデオコンテンツの再生を継続することが可能となる(図12のステップS704に対応)。
〔ステップS804〕ビデオレコーダ3から、再生中止の通知を受信した場合にはステップS806に進み、そうでない場合はステップS805に進む。
〔ステップS805〕一定時間の経過を監視し、その時間が経過したときにビデオレコーダ3から何の情報も受信しなかった場合には、再生が中止された(あるいはビデオレコーダ3とIDモジュール5との距離が離れた)と判断されるので、ステップS806に進む。また、そうでない場合はステップS801に戻って、ビデオレコーダ3からの情報を監視する。
〔ステップS806〕再生中とされていたコンテンツIDに対応する再生状態フラグを“0”に戻す。
以上の図12および図13の処理により、ビデオレコーダ3は一定時間間隔でIDモジュール5から再生継続許諾を受信することにより、仮想ムーブ対象のビデオコンテンツの再生を継続することができる。また、再生が継続される間、IDモジュール5の再生状態管理リスト551では、対応する再生状態フラグが“1”とされて他の再生機器による再生要求が拒否され、仮想的なムーブ動作が実現されることになる。
なお、上記の図12および図13では、IDモジュール5が再生機器での再生動作を常時監視していたが、この他に、仮想ムーブ対象の再生許諾を最初に要求されたときに、そのビデオコンテンツの再生時間と同等またはそれより長い時間だけ再生を許諾し、その間は他の再生機器に対して再生許諾を与えないようにしてもよい。
ところで、上記の図10および図11では、ビデオレコーダ3側でのユーザ操作に応じて仮想ムーブ対象が再生される際の処理について説明したが、再生のための操作入力はIDモジュール5において行われてもよい。
図14は、IDモジュール5側でのユーザ操作に応じて仮想ムーブ対象が再生される場合のIDモジュール5の処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS901〕入力部53を通じたユーザの操作入力により仮想ムーブ対象の再生要求が行われると、制御部51は、無線I/F52を通じて接続可能な距離内に存在する再生機器を検索し、検索された再生機器に対して接続を要求する。なお、複数の再生機器が検索された場合には、接続可能な再生機器の一覧を表示部54に表示し、ユーザによる選択入力を受け付けるようにすればよい。
〔ステップS902〕無線I/F52は、接続相手の再生機器との間で相互認証処理を行う。
〔ステップS903〕相互認証が正しく行われた場合には、接続相手の再生機器に記録されたビデオコンテンツの一覧を示すコンテンツIDのリストを要求する。要求を受けた再生機器は、自身の記録媒体に記録されたビデオコンテンツを検索して、それらのコンテンツIDのリストを返信する。IDモジュール5は、そのリストを受信する。
〔ステップS904〕受信したコンテンツIDのうち、再生状態管理リスト551に存在し、かつ、再生状態フラグが“0”であるもののビデオコンテンツ名を、表示部54に一覧表示する。
〔ステップS905〕表示されたビデオコンテンツの中から再生させるものを選択するためのユーザによる選択入力を、入力部53を通じて受け付ける。
〔ステップS906〕選択入力に応じたコンテンツIDと、対応するユーザIDとを再生機器に送信する。これらの情報を受信した再生機器は、コンテンツIDに対応するビデオコンテンツの再生管理情報332からユーザIDを読み出し、受信したユーザIDと照合して、照合結果をIDモジュール5に返信する。
〔ステップS907〕再生機器からの照合結果を受信し、照合に成功していた場合はステップS908に進み、失敗していた場合にはステップS911に進む。
〔ステップS908〕照合に成功していた場合、ステップS906で送信したコンテンツIDに対応する再生状態フラグを“1”に変更する。
〔ステップS909〕再生機器に対して再生許諾を送信する。これにより、ユーザが指定したビデオコンテンツが再生機器において再生される。
〔ステップS910〕図13で示した処理と同様の継続再生監視処理が実行され、これにより再生機器でのビデオコンテンツの再生が継続される。
〔ステップS911〕ステップS907で照合に失敗していた場合には、指定されたビデオコンテンツが再生不能である旨を表示部54に表示して、ユーザに通知する。
〔ステップS912〕ユーザからの操作入力に応じて、他のビデオコンテンツの再生を開始するための処理を継続するか否かを判断し、継続する場合はステップS904に戻り、継続しない場合は処理を終了する。
以上のように、IDモジュール5側でのユーザ操作により、無線接続された再生機器上の仮想ムーブ対象を再生させることが可能となる。ユーザは例えば、IDモジュール5の表示部54において、再生させることが可能なビデオコンテンツを選択することが可能であるので、再生可能なビデオコンテンツを普段は特に把握している必要がなく、利便性が高められる。
次に、再生装置内のビデオコンテンツを仮想ムーブ対象から復帰させるための処理について説明する。
図15は、仮想ムーブ対象から復帰させる際のビデオレコーダ3における処理の流れを示すフローチャートである。
〔ステップS1001〕入力部36からのユーザの入力操作により、HDD33内の仮想ムーブ対象とされたビデオコンテンツのうち、仮想ムーブ対象から復帰させるものの選択を受け、登録解除処理を開始するための指示入力を受ける。
〔ステップS1002〕選択されたビデオコンテンツの再生管理情報332に付加されたユーザIDを読み出す。
〔ステップS1003〕無線I/F38を通じて接続可能な距離内に存在するIDモジュール5を検索し、検索されたIDモジュール5に対して接続を要求する。
〔ステップS1004〕無線I/F38は、接続相手のIDモジュール5との間で相互認証処理を行う。
〔ステップS1005〕正しく相互認証が行われたときは、IDモジュール5との間で無線通信リンクを確立し、次にユーザIDの送信を要求して、これを受信する。
〔ステップS1006〕受信したユーザIDと、ステップS1002で読み出したユーザIDとを照合し、これらが一致した場合はステップS1007に進む。また、一致しなかった場合はステップS1010に進む。
〔ステップS1007〕照合が成功したことの通知と、登録解除を要求するコンテンツIDをIDモジュール5に送信する。
IDモジュール5は、再生状態管理リスト551を参照し、受信したコンテンツIDに対応する再生状態フラグが“0”である場合に登録解除が可能と判断し、当該コンテンツIDを消去して登録を解除し、登録解除許諾をビデオレコーダ3に送信する。また、再生状態フラグが“1”である場合には、このビデオコンテンツが現在他の再生機器で再生中であるので、登録解除が不能であることをビデオレコーダ3に通知する。
〔ステップS1008〕ビデオレコーダ3は、IDモジュール5から登録解除の許諾を受けた場合には、ステップS1009に進む。また、登録解除が不能である旨を通知された場合には、ステップS1011に進む。
〔ステップS1009〕登録解除の許諾を受けた場合は、IDモジュール5からの恒久的な再生許諾が得られたことになり、解除する対象として選択されたビデオコンテンツの再生管理情報332からユーザIDを消去し、IDモジュール5から再生許諾を受けることなく再生が可能となるように、仮想ムーブ対象から復帰させる。例えば、再生許諾なしで再生が可能となるように再生管理情報332内の再生条件を書き換える。また、IDモジュールから鍵情報またはその一部を受信して、当該ビデオコンテンツのデータを一旦復号し、HDD33のデバイスIDなど、IDモジュール5と関係のない情報を鍵情報として用いて再び暗号化してもよい。
〔ステップS1010〕ユーザIDの照合に失敗した場合には、その旨をIDモジュール1010に通知し、ステップS1011に進む。
〔ステップS1011〕登録の解除が不能であることを表示させ、ユーザに通知した後、処理を終了する。
なお、以上の処理では、再生機器側でのユーザの操作入力に応じて、仮想ムーブ対象から復帰する処理が実行された場合について示したが、IDモジュール5側でのユーザの操作入力に応じて復帰させることも可能である。
ここで、図8に戻って、仮想ムーブ対象から復帰させたときの効果について説明する。上述したように、仮想ムーブ対象とされたコンテンツデータ331aは、例えばメモリカード6などの記録容量の小さい記録媒体にコピーされる際には、低ビットレート化されたコンテンツデータ331bがコピーされる。しかし、ビットレート変換が行われていないオリジナルのコンテンツデータ331aも元の再生機器(ビデオレコーダ3)から消去されず、この後に上述した復帰処理を行うことで、元のようにIDモジュール5からの再生許諾を受けることなく再生可能な状態に戻すことができる。従って、仮想的なムーブを行った後でも、復帰時にはオリジナルの品質低下のないデータを元通り再生することが可能となる。また、復帰時はビデオコンテンツのデータ自体の転送が行われないため、その処理時間も短くて済む。
以上説明したように、本実施の形態(第1の処理例)では、ムーブ動作に伴うデータ転送時間の長さや品質低下という問題が改善されるとともに、再生可能なコンテンツの管理を特にユーザが認識する必要がなくなるため、ユーザにとって利便性の高いムーブ動作が実現される。
<第2の処理例>
図16は、第2の処理例を適用した場合のコンテンツ再生システムにおけるムーブ時の動作の概要を示す図である。
図16に示す第2の処理例では、図8に示した第1の処理例と同様に、仮想的なムーブ動作を行うためには、まず、ビデオレコーダ3内のビデオコンテンツを仮想ムーブ対象として登録する手順(ステップS60)を行い、その後に各再生機器(ここではビデオレコーダ3および携帯型プレーヤ4)においてIDモジュール5から一時的な再生許諾を取得して仮想ムーブ対象を再生する(ステップS70およびS80)。
ここで、第1の処理例との違いは、仮想ムーブ対象の登録時には、コンテンツデータ331aの再生管理情報332にユーザIDを付加する(ステップS61)だけで、コンテンツIDをIDモジュール5に登録しない点である。そのため、IDモジュール5が不揮発性メモリ55内に保持する再生状態管理リスト552には、ユーザIDに対して再生状態フラグのみが対応づけられている。
このような登録方法は、再生機器がHDDのように取り外し不能な記録媒体を備え、その記録媒体内のすべてのデジタルコンテンツを1つのユーザIDを用いて仮想ムーブ対象とする場合などに適用されるもので、コンテンツごとの再生状態の管理を行わずに再生機器ごとの管理に特化することで、管理のための処理を簡略化することができる。また、上記のような再生状態管理リスト552を用いて、各再生機器のデジタルコンテンツを管理した場合には、一度仮想ムーブ対象として登録したデジタルコンテンツは、復帰させることができない。
ただし、この後に復帰の要求があったデジタルコンテンツのコンテンツIDをIDモジュール5において保持し続けることで、復帰を可能にすることができる。ここで、復帰したデジタルコンテンツのコンテンツIDは、IDモジュール5の不揮発性メモリ55内において、復帰コンテンツリスト553に管理される。
すなわち、再生機器は、IDモジュール5との間でユーザIDの照合が成功した後、仮想ムーブ対象から復帰させるデジタルコンテンツのコンテンツIDをIDモジュール5に通知する。IDモジュール5は、再生状態管理フラグに基づいて、このデジタルコンテンツが再生中でない場合には、コンテンツIDを復帰コンテンツリスト553に記録して、再生機器に対して登録解除を許諾する。これにより、デジタルコンテンツは、IDモジュール5からの再生許諾を受けなくても再生可能な状態に復帰する。また、復帰コンテンツリスト553内のコンテンツIDは、以後、それに対応するデジタルコンテンツが再度仮想ムーブ対象として登録されるまで、常に記録されていなければならない。
また、図16を参照して、このような管理方法が採られた場合の再生時の動作について説明すると、ビデオレコーダ3内の仮想ムーブ対象とされたコンテンツデータ331aを再生する場合には、ビデオレコーダ3とIDモジュール5との間で無線通信チャネルを確立した後、IDモジュール5が保持するユーザIDと、コンテンツデータ331aに対応する再生管理情報332に記録されたユーザIDとが照合される(ステップS71)。
そして、これらのユーザIDが一致した場合には、ビデオレコーダ3はコンテンツデータ331aのコンテンツIDをIDモジュール5に送信する(ステップS72)。IDモジュール5は、復帰コンテンツリスト553を参照して、受信したコンテンツIDがその中に記録されておらず、かつ、再生状態管理リスト552内の対応する再生状態フラグが“0”である場合に、ビデオレコーダ3に対して一時的な再生許諾を与える(ステップS73)。またこのとき、再生状態管理リスト552の対応する再生状態フラグを“1”にする。これにより、ビデオレコーダ3内のコンテンツデータ331aが再生されるとともに、他の再生機器では同じデジタルコンテンツを再生することが不可能となる。
なお、携帯型プレーヤ4においても同様な処理(ステップS81〜S83)が行われることで、メモリカード6内のコンテンツデータ331bを再生することが可能となる。
以上の第2の処理例では、デジタルコンテンツの仮想的なムーブ動作を再生機器単位で管理する場合に好適であり、第1の処理例の場合と同様に、ムーブ動作に伴う問題点が解消され、ユーザにとって利便性の高いムーブ動作が実現される。
なお、以上の第2の実施の形態においては、仮想ムーブ対象のIDモジュールへの登録時に、IDモジュール側が保持する鍵情報によりビデオコンテンツを暗号化した場合には、このビデオコンテンツをメモリカードなどの他の記録媒体にコピーする際に、このままでは低ビットレート化のための再エンコードをすることができない。このため、このような場合にもビデオレコーダをIDモジュールに一旦接続し、許諾を受けるようにすればよい。
具体的には、ビデオレコーダに接続してユーザIDの照合に成功した場合、または、照合後にさらに対象となるコンテンツIDをIDモジュール5に送信して再生中と判定されなかった場合に、IDモジュール5から許諾を受けるとともに、復号鍵を取得してビデオコンテンツのデータを復号する。さらに、デコーダにより伸張復号化した後、所定のビットレートとなるように圧縮符号化し、IDモジュールからの暗号鍵などで暗号化してから、メモリカードなどに転送する。このとき、暗号化されたビデオコンテンツには、元のビデオコンテンツに付加されていたユーザIDが付加される。これにより、ビデオコンテンツをコピーしたメモリカードを、ビデオレコーダと同様な仮想的なムーブ制御機能を具備する他のプレーヤに装着し、IDモジュールと接続してメモリカード内のビデオコンテンツを再生することが可能となる。
また、以上の各実施の形態では、記録媒体に記録されたビデオコンテンツの再生や他の記録媒体に転送することが可能な再生機器の一例として、デジタル放送の受信および録画が可能なビデオプレーヤに対して本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、デジタルコンテンツの記録再生機器および再生機器のすべてに適用することが可能である。また、デジタルコンテンツとして、ビデオコンテンツだけでなく、オーディオコンテンツ、テキストコンテンツなど、様々なものが考えられる。さらに、デジタルコンテンツのデータのコピーや、装着された可般型の記録媒体に対するものだけでなく、通信I/Fを通じて接続された他の再生機器の記録媒体に対して行うことも可能である。