請求項1に記載の冷蔵庫の発明は、断熱区画された貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、前記貯蔵室内へ食品を出し入れするための扉と、前記扉を開放する際に、前記貯蔵室の外郭より延出する容器と、前記容器に取り付けられた蓄冷材とを備えた冷蔵庫であるので、食品の収納性を維持しながら、扉を開放による容器の外出時に、蓄冷材により容器の低温が保たれて貯蔵されている食品の温度上昇が抑制できるとともに、投入された食品や流入した外気の熱負荷は蓄冷材で吸熱し冷却されるので食品を短時間に冷却することが可能となる。
請求項2に記載の冷蔵庫の発明は、請求項1に記載の冷蔵庫において、前記蓄冷材は前記容器の前記扉側に取り付けられたものであるので、食品の収納性を維持しながら、貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能なことに加えて、扉を開放する場合に最も早く外気にさらされ、扉を閉める場合に最も遅くまで外気にさらされることから、最も外気の影響を受けやすく熱負荷が多い扉側に蓄冷材が取り付けられているので、より貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。さらに、蓄冷材が手前に位置しているので、容器の全てを外郭へ外出せずに食品を蓄冷材近傍に収納でき急冷できるので、容器への外気の流入が抑制できるとともに、食品の収納が容易に可能である。
請求項3に記載の冷蔵庫の発明は、請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫において、前記蓄冷材は着脱可能な構造であるので、食品の収納性を維持しながら、貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能なことに加えて、清掃がし易く、他への流用が可能である。また、蓄冷材がマイナス温度で使用する場合は、濡れた手などによる食品収納時に万が一に手が接触して蓄冷材にひっついた場合でも蓄冷材ごと取り外れて加熱するなどして蓄冷材から手を離す処理が容易に可能である。
請求項4に記載の冷蔵庫の発明は、請求項3に記載の冷蔵庫において、前記蓄冷材を備えた容器の少なくとも一部が前記冷蔵庫本体の設置面からの高さが600mmから1200mmに位置するので、使用者にとって最も食品の出し入れが行いやすい高さである設置面からの高さが600mmから1200mmに位置する貯蔵室であるために頻繁に開閉が行われる可能性が高い貯蔵室においても、食品の収納性を維持しながら、扉の開閉後における貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能なことで、より食品の保鮮性を向上させることができる。
加えて、多くの人が手の届きやすい高さに蓄冷材が位置しているので、蓄冷材の着脱が容易に可能となり、蓄冷材に手が付いて離れなくなった場合に多くの人が簡便に処置できる。
請求項5に記載の冷蔵庫の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、前記蓄冷材は前記容器の底部の上面に位置するので、食品との接触により食品を冷却できることから、食品の収納性を維持しながら、より貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。
請求項6に記載の冷蔵庫の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の冷蔵庫において、前記蓄冷材を固定する固定手段と、前記食品が前記食品設置面以外の箇所へ移動しないための食品保持手段とを備えた冷蔵庫であるので、従来の食品の収納性を維持しながら、扉を開放による容器の外出時に、蓄冷材により容器の低温が保たれて貯蔵されている食品の温度上昇が抑制できるとともに、投入された食品や流入した外気の熱負荷は蓄冷材で吸熱し冷却されるので食品を短時間に冷却することが可能となる。さらに、扉開閉が乱雑または頻繁に行われることで繰り返しもしくは比較的速いスピードで扉開閉が行われても、蓄冷材が容器内で移動することがないので、食品の熱は蓄冷材で吸熱され、より貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。
請求項7に記載の冷蔵庫の発明は、請求項6に記載の冷蔵庫において、固定手段は容器の構成要素の一部で構成されたものであるので、従来の食品の収納性を維持しながら、貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能なことに加えて、固定手段と食品保持手段を簡単な構成で実現した上で別体で形成されたものに比べて剛性を高めた固定手段もしくは食品保持手段を備えることが可能である。
請求項8に記載の冷蔵庫の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明において、前記蓄冷材は主として蓄熱材料が存在し前記食品を設置するための食品設置面と、前記蓄熱材料の相変化にともなう体積変化を吸収する吸収部とを有する冷蔵庫であるので、扉を開放した場合、外気流入による熱負荷を蓄冷材で吸熱するので容器内が低温に保たれ貯蔵されている食品の温度上昇が抑制でき品質劣化の抑制が可能である。また、食品が投入されると扉を閉める前であっても、外気流入による熱負荷と投入食品の熱負荷を蓄冷材が吸熱するので、食品が冷却されるとともに貯蔵室内が従来に比して低温で保たれ、食品を短時間に冷却でき保鮮性の向上が可能となる。さらに、伝熱阻害となる体積変化吸収用の空間がなく円滑に熱が伝わる。また、食品設置面は、蓄熱材料の相変化による体積変化の影響を受けにくいので、体積変化にともなう形状変化が低減され食品との接触が保たれる。これにより、より食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。
請求項9に記載の冷蔵庫の発明は、請求項8に記載の冷蔵庫において、吸収部は食品設置面より上方へ突出したものであるので、貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能なことに加えて、貯蔵食品が扉開閉動作による反動で滑り食品設置面から外れることを抑制でき、より貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来と同一構成及び差異がない部分については、詳細な説明を省略する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1、図2は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の要部の側断面図である。
図1、図2に示すように、蓄冷機能を有する蓄冷部材である蓄冷材150は引き出し式の貯蔵室である冷凍室108の2段で構成された上段に位置する容器127の内側底部で扉121側に設けられた蓄冷材を固定する固定手段として機能する窪み部分に載せられており、扉121の開閉時に容器127が前後方向に比較的速いスピードで移動することに伴って発生する慣性によって容器127内の後方に容易に移動しないような構成となっている。すなわち、蓄冷材150が備えられた貯蔵室である冷凍室108の容器内においては、扉121側に位置する前面側の区画が蓄冷材150を備えた収納領域として使用され、背面側に位置する区画は蓄冷材150が備えられていない一般的な冷凍領域である保存部として使い分けて使用することが可能なものである。
また、冷凍室108に有する蓄冷材150の上面は、断熱箱体101の下面に備えられた冷蔵庫本体102を容易に移動可能にするためのキャスター151および冷凍室108の下方に設置された貯蔵室である野菜室109により、設置面152からの高さが800mmの位置に備えられた冷凍室108の上段側の扉121に備えられた扉121を開放する際に外郭より延出する容器127に設置されている。すなわち、容器127は引き出し式さらに、蓄冷材150の潜熱は一般的な冷凍する食品の凍結温度より低く、かつ最大氷結晶生成帯の温度より低いものが望ましく、このように蓄冷材150の凍結点温度を設定すると蓄冷材150に食品が載置された場合の冷却スピードを最大限に高めることが可能となる。しかし、あまり低く設定しすぎると、十分に蓄冷材150を凍結させることができなくなり、仮に蓄冷材150に備えられた蓄冷材料が固体ではなく液体となった場合にはその冷却能力は大幅に低下してしまうので、冷凍室108で蓄冷材が十分に凍結するよう一般的な家庭用冷蔵庫における冷凍室108の温度より高い温度である−15℃に潜熱を有する材料からなるようしている。また、この蓄冷材150は幅300mm、奥行き300mm、高さとなる厚みが20mmとした。このような外形寸法すなわち蓄冷材150内の充填量を決める際には、想定される食品の保有している熱量を考慮して最適な量を設定している。蓄冷材150内の充填量は上面に設置される食品体積に相当する量の外気温度、例えば30℃相当から−10℃までの潜熱量と顕熱量の総和に相当する潜熱量を有する熱量を保有したものとすることが望ましく、これによって、蓄冷材150が凍結している場合は一般的な食品投入時に完全に融解することは無いすなわち、外部から温度の高い食品を蓄冷材150と接して載置した場合であっても、蓄冷材150が融解せずに凍結していることによって急速な冷却がなされるものである。
冷凍室吐出口153は冷凍室108を冷却するための冷気が吐出する吐出口であり、冷凍室排出口154は冷凍室108を冷却した後の冷気が冷凍室108から蒸発器113に戻る排出口である。供給ダクト155は冷蔵室107を冷却するための冷気が通風するダクトである。
蓄冷材150を備えた容器127保存されている食品は、既に保存されている冷凍食品157と新たに蓄冷材150上に投入された投入食品158である。
また、冷蔵室107および野菜室109の冷却のための冷気供給および循環は図示していない。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
蓄冷材150および冷凍食品157は、冷凍室108の所定温度である−20℃まで冷却され凍結されている。図1に示すように、扉121を開けて投入食品158を蓄冷材150の上面に置いた場合、投入直後から投入食品158は−20℃に凍結された蓄冷材150から熱が奪われて冷却が開始される。さらに、食品の投入に伴う扉開閉によって容器127に流入した外気も蓄冷材150で冷却され容器127内の空気は従来に比して低温が保持され、その低温空気でも投入食品158が冷却される。
また、扉121を開けた場合で蓄冷材150のと隣接した背面側の区画に先に保存済みの冷凍食品157がある場合、蓄冷材150が容器127内に流入する外気を冷却するので、冷凍食品157の周囲は従来に比して低温に保たれる。さらに、比較的温度の高い投入食品158が同じ容器127内にある場合でも投入食品158からの熱干渉による昇温も従来に比して抑制される。
このように、蓄冷材150が備えられた貯蔵室である冷凍室108の容器内においては、扉121側に位置する前面側の区画が蓄冷材150を備えた収納領域として使用され、背面側に位置する区画は蓄冷材150が備えられていない一般的な冷凍領域である保存部として使い分けて使用することが可能とすることで、使用者にとっても温かい食品を投入する場合に投入食品を保存する領域がより明確となり、投入食品158から予め保存されていた冷凍食品157への熱影響を低減することが可能とすることができる。
その後、図2に示すように、扉121を閉めると、図示しない検知手段で扉121が閉められたと判断し、冷凍サイクル(図示せず)の運転が開始され蒸発器113に冷媒が流通して冷気が生成されると同時に送風機114が運転して冷気が循環することで冷却が開始される。冷気は冷凍室吐出口153から冷凍室108に供給され、冷凍食品157および投入食品158を冷却する。このとき、冷凍食品157は周囲を通風する冷気による間接的な冷却と、下面の蓄冷材150からの直接的な冷却との両方の手段で冷却される。
この時、投入食品158を冷却すると同時に冷気の少量は蓄冷材150の冷却にも使用される。しかし、冷凍室8の冷却は所定温度である−20℃より高い場合に冷却されるので、蓄冷材150の潜熱温度−15℃との温度差が小さく、冷気は主に食品の冷却に使用される。また、冷凍室吐出口153から冷凍室108に供給された冷気は容器127内に通風する。このとき、冷凍室吐出口153から吐出された低温冷気の風路上において上流側に位置している冷凍食品157および、下流側に位置している蓄冷材150の上面に載置されている投入食品158が冷却される。ここで、冷凍食品157と投入食品158が蓄冷材150の潜熱温度である−15℃に近づけば近づくほど、冷凍食品157および投入食品158と冷気との温度差が冷気と蓄冷材150の温度差に近くなることから、冷気が蓄冷材150の冷却に使われるウエイトが多くなる。しかし、例えば、冷凍食品157および投入食品158が魚や肉の場合は、ミネラルやアミノ酸などが含まれるため最大氷結晶生成帯が0℃から−10℃までにあるものが多く、この温度帯では主として冷気の大部分が冷凍食品157および投入食品158を冷却することになる。この冷気による冷却に加えて蓄冷材150からの冷却により最大氷結晶生成帯が迅速に通過する。
このようにして、扉121を開放した場合の容器127の外出時に、蓄冷材150により容器127内が冷却されて貯蔵されている冷凍食品157の温度上昇が抑制できるとともに、投入された投入食品158や流入した外気は蓄冷材150で冷却されるので短時間に凍結することが可能となる。
さらに、扉121を開放する場合に最も早く外気にさらされ、扉121を閉める場合に最も遅くまで外気にさらされる部分の蓄冷材150が設置されていることから、より冷凍食品157の昇温抑制と投入食品158の冷却時間短縮が可能である。
さらに、蓄冷材150は、容器127に容易に着脱可能な構造であるので、清掃がし易く、他への流用が可能である。また、濡れた手で投入食品158を収納する時に万が一に手が接触して蓄冷材150にひっついた場合でも蓄冷材150ごと取り外れて加熱するなどして蓄冷材150から手を離す処理が容易に可能である。
さらに、蓄冷材150を備えた容器の少なくとも一部が一般的な身長の女性が屈まなくても手が届く高さであるために、より多くの人が手の届きやすいと想定できる設置面からの高さが800mm前後に位置しており、同様に蓄冷材150が設置面からの高さが800mmに位置しているので、蓄冷材150の着脱が容易に可能となり、蓄冷材150に手が付いて離れなくなった場合に簡便に処置できる。なお、本実施の形態では蓄冷材150を備えた容器の少なくとも一部が高さ800mmとしたが、600mm〜1200mmの間が一般的に最も使いやすい位置とされているので、その範囲内に位置させることが望ましい。
さらに、蓄冷材150は幅と奥行き300mmであるのに対して高さ寸法が20mm小さいので、内部の蓄冷剤量が同等でも食品の設置面積が増加し、蓄冷材内部の蓄冷剤量が同じでも食品と接触可能な面積が増加し、食品の収納性を維持しながら、より貯蔵食品の昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能であることに加え、多くの冷凍食品157や投入食品158を収納することが可能であることや、大きな冷凍食品157や投入食品158を収納することが可能である。また、冷凍食品157や投入食品158と蓄冷材150との接触面積を広くとれるので、より昇温抑制や冷却時間短縮が可能である。
なお、本実施の形態では蓄冷機能を有する蓄冷部材として蓄冷材を用いたが、例えば金属性で厚みが5mm以上あるような蓄冷プレートであっても、蓄冷機能を備えるものであれば適用することが可能である。
さらに、扉121は引き出し式であるので、回転式扉に比して温度の低い冷気が容器の上面から逃げにくいものであり、冷凍食品157の昇温抑制と投入食品158の冷却時間短縮が可能である。
(実施の形態2)
図3Aは本発明の実施の形態2における冷蔵庫の要部の側断面図であり、図3Bは本発明の実施の形態2における蓄冷材を備える容器の斜視図であり、図3Cは本発明の実施の形態2における蓄冷材の斜視図、図3Dは本発明の実施の形態2における蓄冷材のA−A´方向における断面図、図4は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の要部の側断面図である。
なお、本実施の形態においては、実施の形態1で説明した構成および技術思想と同一の部分については詳細な説明を省略し、上記実施の形態で記載した内容と同様の技術思想が適用できる構成については上記実施の形態で記載した技術内容および構成と組合せた構成を実現することが可能である。
図に示すように、蓄冷機能を有する蓄冷部材である蓄冷材150は貯蔵室である冷凍室108の2段で構成された上段に位置する容器127の内側底部すなわち底面側に載置されており、かつ扉121側に設けられている。
また蓄冷材159の移動を抑制する固定手段は窪み部160であり、この窪み部160は、容器127の構成要素である樹脂部材の一部で容器127と一体に構成されている。
このように、容器127の前方側である扉121側に設置されている蓄冷材150が、扉121の開閉動作による慣性により後方へ移動しないように蓄冷材150の後方部に設置されている。
食品保持手段161は、蓄冷材150の上面の食品を設置する食品設置面162に設けられ、蓄冷材150の後方である扉121側の反対側に食品設置面162より上方に突出した形状である。これにより、蓄冷材150の食品設置面162の上に置かれた投入食品158が扉121の開閉動作により蓄冷材150のより後方の収納部となる保存部163へ移動することを抑制している。
また、食品保持手段161は食品設置面162を囲うように4辺すべてに設置されており、本実施の形態では食品保持手段161は食品設置面162の外周に渡って連続的に備えられている。
このように、蓄冷材150が備えられた貯蔵室である冷凍室108の容器27内においては、扉121側に位置する前面側の区画が蓄冷材150を備えた収納領域として区画して使用され、収納領域より後方側(背面側)に位置する区画は、蓄冷材150が備えられていない一般的な領域である保存部163として使い分けて使用することができる。
また、蓄冷材を備えた収納領域に備えられた食品保持手段161と、蓄冷材を備えない一般の冷凍領域との境界部127aは傾斜部127bを介して滑らかに形成されている。
蓄冷材150は着脱可能になっており、窪み部160に蓄冷材150を着脱する際に使用者の指が入るように凹部で形成された着脱補助部170を備えており、この着脱補助部170と対向する側の容器に凹部で形成された着脱保持部171を備えている。これらがそれぞれ蓄冷材150に備えられた凹部で形成された蓄冷材着脱補助部172および凸部で形成された蓄冷材着脱保持部173に係合する。
本実施の形態では、この蓄冷材着脱補助部172を蓄冷材の外郭容器内に蓄冷液を注入する際に用いる注入部で形成している。
また、この蓄冷材着脱補助部172と蓄冷材着脱保持部173を結ぶ線A−A´は蓄冷材の左右方向における中心線を通っている。
また、冷凍室108に有する蓄冷材150の上面は、断熱箱体101の下面に備えられた冷蔵庫本体102を容易に移動可能にするためのキャスター151および冷凍室108の下方に設置された貯蔵室である野菜室109により、地上面152からの高さが800mmの位置に設置されている。
さらに、蓄冷材150は一般的な冷凍する食品の凍結温度より低めで最大氷結晶生成帯の温度より低く、冷凍室108の温度より高い温度である−15℃に潜熱を有する材料からなり、幅300mm、奥行き300mm、高さとなる厚みが20mmである。蓄冷材150内の充填量は上面に設置される食品体積に相当する量の外気温度、例えば30℃相当から−10℃までの潜熱量と顕熱量の総和に相当する潜熱量を有する熱量を保有したものである。つまり、蓄冷材150が凍結している場合は通常使用における一般的な食品投入時に完全に融解することは無い。
冷凍室吐出口153は冷凍室108を冷却するための冷気が吐出する吐出口であり、冷凍室排出口154は冷凍室108を冷却した後の冷気が冷凍室108から蒸発器113に戻る排出口である。供給ダクト155は冷蔵室7を冷却するための冷気が通風するダクトである。
容器27内には既に保存されている冷凍食品157と蓄冷材150の上面に保存されている新たに投入された投入食品158が収納されている。
また、容器27内の冷凍食品157が収納される冷凍領域の保存部163の水平高さ163aに対して、投入食品158が収納される収納領域の食品載置部162の水平高さ162aの方が高い位置に配置している。
また、冷蔵室107および野菜室109の冷却のための冷気供給および循環は図示していないが、冷凍室を冷却する冷却風路とは別の冷却風路によって冷気供給および循環が行われている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
蓄冷材150および冷凍食品157は、冷凍室8の所定温度である−20℃まで冷却され凍結されている。図に示すように、扉121を開けて投入食品158を蓄冷材150の食品設置面162の上に置いた場合、投入直後から投入食品158は−20℃に凍結された蓄冷材150から熱が奪われて冷却が開始される。さらに、容器127に流入した外気も蓄冷材150で冷却され容器127内の空気は従来に比して低温が保持され、その低温空気でも投入食品158が冷却される。
また、扉121を開けた場合で蓄冷材150の食品設置面162に先に保存済みの冷凍食品157がある場合、蓄冷材150により冷凍食品157は冷却されるとともに、蓄冷材150が容器127内に流入する外気を冷却し、冷凍食品157の周囲は従来に比して低温に保たれる。さらに、投入食品158からの熱干渉による昇温も従来に比して抑制される。
その後、図に示すように、扉121を閉めると、図示しない検知手段で扉121が閉められたと判断し、図示しない冷凍サイクルの運転が開始され蒸発器113に冷媒が流通して冷気が生成されると同時に送風機114が運転して冷気が循環することで冷却が開始される。冷気は冷凍室吐出口153から冷凍室108に供給され、冷凍食品157および投入食品158を冷却する。このとき、冷凍食品157と投入食品158は通風する冷気と、下面の蓄冷材150からの冷却とで冷却される。冷気の少量は蓄冷材150の冷却にも使用される。しかし、冷凍室108の冷却は所定温度である−20℃より高い場合に冷却されるので、蓄冷材150の潜熱温度−15℃との温度差が小さく、冷気は主に食品の冷却に使用される。また、冷気の通風は図示しない通風構成により容器127内に通風する。このとき、蓄冷材150の食品設置面162は冷凍食品157と投入食品158が置かれて覆われているので主として冷凍食品157と投入食品158が冷却される。ここで、冷凍食品157と投入食品158が蓄冷材150の潜熱温度である−15℃に近づけば近づくほど冷気が蓄冷材150の冷却に使われるウエイトが多くなるが、例えば、冷凍食品157および投入食品158が魚や肉の場合は凍結温度が0℃付近であり、最大氷結晶生成帯が−10℃までにあるものが多いので、この温度帯では主として冷気の大部分が冷凍食品157および投入食品158を冷却する。この冷気による冷却に加えて蓄冷材150からの冷却により最大氷結晶生成帯が迅速に通過する。
このようにして、扉121を開放した場合のように容器127が冷蔵庫本体102より外出され蓄冷材150が外気に暴露されるとき、蓄冷材150により容器127内が冷却されて貯蔵されている冷凍食品157の温度上昇が抑制できるとともに、投入された投入食品158や流入した外気は蓄冷材150で冷却されるので短時間に凍結することが可能となる。
また、蓄冷材150は熱容量が大きいため、扉121の開閉の外気流入に伴う外気中の湿分の一部は蓄冷材150に結露または着霜する。次の扉121の開閉までの時間が長い場合は冷却運転で循環する冷却空気で昇華または蒸発されて蓄冷材150の表面から取り除かれ、高湿空気は蒸発器113で着霜し、除湿された低温空気が再度循環して蓄冷材150周辺を流通し、蓄冷材150の水分を取り除くといった冷却運転中の冷却空気の循環により蓄冷材150の表面に付着した水分や霜は取り除かれる。しかし、次の扉121の開閉が短時間で行われた場合、つまり、蓄冷材150に前回の扉121の開閉で付着した水分や霜が残留した状態で、扉121を開けて食品が投入された場合で、特に投入された食品が比較的に低温である場合は、投入食品158を投入して扉121を閉める時に、その反動で投入食品158が蓄冷材150上を滑りやすくなる。また、その後、その食品と蓄冷材150との間に存在する水分、つまり、霜や氷は冷却空気が流通しにくいので昇華や蒸発が行われ難く残存しやすくなり、残存した状態で再度、扉121を開けると、その反動でも食品が滑る可能性がある。このように、扉121の開閉が乱雑または頻繁に行われた動作により万が一に、蓄冷材150や冷凍食品157や投入食品158が容器127の後方へ滑って移動する力が生じても蓄冷材150は固定手段160にあたり、冷凍食品157や投入食品158は食品保持手段161にあたるので、蓄冷材150は固定手段160により後方収納部163への移動が防止され、冷凍食品157や投入食品158は食品保持手段161により蓄冷材150の食品設置面162から後方収納部163への移動が防止できて食品設置面162の上の位置で止まる。また、蓄冷材150や冷凍食品157および投入食品158の前方への移動は容器127の前方壁により何れも移動が防止される。
このため、蓄冷材150の移動にともなう投入食品158の食品設置面162からの逸脱を抑制できることに加えて、投入食品158の自体の滑りによる移動が抑制でき、扉121の開閉などによる反動があっても冷凍食品157や投入食品158の熱は効率的に蓄冷材150で吸熱され、昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。
上記のように本実施の携帯では、食品保持手段161は、蓄冷材150の上面の食品を設置する食品設置面162に設けられ、蓄冷材150の後方である扉121側の反対側に食品設置面162より上方に突出した形状である。これにより、蓄冷材150の食品設置面162の上に置かれた投入食品158が扉121の開閉動作により蓄冷材150のより後方の収納部となる保存部163へ移動することを抑制している。
また、食品保持手段161は食品設置面162を囲うように4辺すべてに設置されており、本実施の形態では食品保持手段161は食品設置面162の外周に渡って連続的に備えられているので、本実施の形態のように特に樹脂で外郭を形成しているために食品載置部の摩擦係数が低く食品が滑り易い構成であった場合に仮に食品が引き出しの開閉に伴って多方向へ滑った場合でも食品載置部の4辺すべてに食品保持手段161が形成されているので、投入食品158の自体の滑りによる移動が抑制でき、扉121の開閉などによる反動があっても投入食品158の熱は効率的に蓄冷材150で吸熱され、昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。
なお、扉121が引出式扉で容器127が冷蔵庫外部に引き出されるような構造では、容器127に設置された蓄冷材150は外気に暴露されやすく、蓄冷材150への結露や着霜が多くなり食品の滑りの可能性が高くなるので、本実施の形態の固定手段160や食品保持手段191の食品の滑り抑制効果は特に有効である。
また、蓄冷材を備えた収納領域に備えられた食品保持手段161と、蓄冷材を備えない一般の冷凍領域との境界部127aは傾斜部127bを介して滑らかに形成されており、言い換えると一般の冷凍領域部に直角の段差を形成することがないので、より背面側からの冷気の流れ方向において風路抵抗を減らして、冷気をスムーズに下流である蓄冷材150が備えられた収納領域へと流すことが可能となり、段差部等の後方から前方への冷気の流れを変えるような構造を備えないために例えば、冷気の流れに渦等が発生して温かいものを収納する収納区画からの冷気が逆流して冷凍領域である保存部163へと流れること抑制し、さらに冷却効率を高めることが可能となる。
また、容器27内の冷凍食品157が収納される冷凍領域の保存部163の収納面の水平高さ163aに対して、投入食品158が収納される収納領域の食品載置部162の収納面の水平高さ162aの方が高い位置に配置している。これによって、仮に食品載置部に投入される投入食品158が比較的温度の高い食品であった場合でも、温かい空気は下方へは流れずに上方へと流れることから、食品載置部上に温かい空気が発生した場合には、保存部163の少なくとも収納面の水平高さ163aへ暖気が流入するのを防ぐことをでき、より冷凍領域である保存部163に収納された冷凍食品157への投入食品158からの熱影響を抑制することが可能となる。
また、蓄冷材150は着脱可能になっており、窪み部160に蓄冷材150を着脱する際に使用者の指が入るように凹部で形成された着脱補助部170を備えており、この着脱補助部170と対向する側の容器に凹部で形成された着脱保持部171を備えている。これらがそれぞれ蓄冷材150に備えられた凹部で形成された蓄冷材着脱補助部172および凸部で形成された蓄冷材着脱保持部173と係合することによって、着脱の際の使用感が良く、さらに装着時における位置決めが確実にできる。すなわち、蓄冷材150を窪み部160に装着している状態において、容器127側の着脱補助部170と蓄冷材着脱補助部172がそれぞれ凹部構成によって連通していることで使用者の指を入れることが可能となり、着脱の際の使い勝手を向上させており、さらに容器127側に形成された着脱保持部171内に蓄冷材着脱保持部173が挿入されていることで、蓄冷材を装着する場合には確実な位置決めが可能であるとともに、蓄冷材を取り外す場合にもこれらの着脱保持部が支点となって容易に蓄冷材を取り外すことができるので、より使用者の使い勝手を向上させることが可能である。
本実施の形態では、この蓄冷材着脱補助部172を蓄冷材の外郭容器内に蓄冷液を注入する際に用いる注入部で形成したので、より合理的な構成で蓄冷材着脱補助部172を形成している。
また、この蓄冷材着脱補助部172と蓄冷材着脱保持部173を結ぶ線A−A´は蓄冷材の左右方向における中心線を通っているので、ほぼ蓄冷材の重さが左右に偏ることなく着脱することができるので、よりスムーズな着脱感を使用者に与えることが可能となる。
また、本実施の形態のように、扉121の容器127に設置された蓄冷材150の設置高さが800mmであるので、扉121の位置も800mm付近となり、扉121は一般的な人間が比較的に操作しやすい高さである500mmから1200mmに位置するので、人力がかかりやすく扉121の開閉に伴う反動も大きくなる可能性が高いので、実施の形態の固定手段160や食品保持手段161の食品の滑り抑制効果は特に有効となる。
なお、本実施の形態においては、蓄冷材150を着脱する際に使用者が指を入れるための補助構造として着脱補助部170と蓄冷材着脱補助部172を形成し、さらに着脱をよりスムーズにかつ確実にするための保持構造として着脱保持部171内に蓄冷材着脱保持部173を設けたが、これらは必ずしも両方を備える必要はなく、使用者のニーズおよび貯蔵室や蓄冷材150の構造に応じて例えば、指を入れるための補助構造である着脱補助部170と蓄冷材着脱補助部172のみを形成することのみを適用することや、着脱をよりスムーズにかつ確実にするための保持構造として着脱保持部171内に蓄冷材着脱保持部173を設けることのみを適用することも可能である。
また、蓄冷材の指を入れる構造として、本実施の形態においては容器127側の着脱補助部170と蓄冷材150側の蓄冷材着脱補助部172との組合せで形成したが、例えば蓄冷材150のみに指が引っかかりやすいような着脱補助構造を備えることで着脱をスムーズにすることも考えられる。
同様に、着脱をよりスムーズにかつ確実にするための保持構造として容器127側を凹部構造とした着脱保持部171内に蓄冷材側を凸部構造とした蓄冷材着脱保持部173を設けたが、これらも凹凸勘合であればこの組合せに限定するものではない。
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における要部の側断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施の形態においては、実施の形態1および2で説明した構成および技術思想と同一の部分については詳細な説明を省略し、同様の技術思想が適用できる構成については上記実施の形態で記載した技術内容および構成と組合せた構成を実現することが可能なものである。
また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
図において、固定手段である窪み部160の蓄冷材150の背面側すなわち蓄冷材150が備えられない冷凍領域側の高さは蓄冷材150の食品設置面162より高い位置で構成されており、固定手段としての機能に加えて、蓄冷材150上に載置した食品の移動を抑制する食品保持手段161の機能を兼ねている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
冷凍食品157や投入食品158が扉121の開閉動作により後方への滑りが生じた場合、冷凍食品157や投入食品158は食品設置面162より上方に突出している固定手段160の一部にあたり、後方収納部163へ移動せずに食品設置面162に残存する。
これにより、扉121の開閉などによる振動があっても冷凍食品157や投入食品158は蓄冷材150の熱は効率的に奪われ冷却されるので、昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。さらに、固定手段160は容器127の樹脂の底面の一部が上方へ突出したものであるため、例えば、容器127の樹脂成型時に一体で成型できるためより簡単な構成でかつ一体成型によってより高い剛性を備えた固定手段および食品保持手段を備えることが可能である。
(実施の形態4)
図6Aは本発明の実施の形態4における冷蔵庫の要部の側断面図であり、図6Bは本発明の実施の形態4における蓄冷材を備える容器の斜視図であり、図6Cは本発明の実施の形態4における蓄冷材の斜視図、図6Dは本発明の実施の形態4における蓄冷材のB−B´方向における断面図、図7は本実施の形態4における冷蔵庫の要部の側断面図、図8は本実施の形態4における要部の側断面図である。
なお、本実施の形態においては、実施の形態1から3で説明した構成および技術思想と同一の部分については詳細な説明を省略し、同様の技術思想が適用できる構成については上記実施の形態で記載した技術内容および構成と組合せた構成を実現することが可能なものである。
図に示すように、蓄冷機能を有する部材である蓄冷材150は冷凍室108の2段で構成された上段に位置する容器127の内側底部で扉121側に設けられている。また、蓄冷材150が扉の開閉に伴って移動することを防ぐ固定手段である突出部156が備えられており、突出部156は扉121の開閉方向である前後方向への移動を阻止することを目的としているので扉121の開閉方向に対して直角方向である左右方向が長手方向となるように形成されている。
また、蓄冷材150の樹脂ケースは上面に食品を設置する比較的フラットな食品設置面259と、その食品設置面259の周辺に食品設置面259を囲む形で上方に突出した吸収部260が設けられており、この吸収部260が蓄冷材150上に載置された食品の移動を抑制する食品保持手段の機能を有するものである。また、食品載置面には食品載置の際の載置部分の中央としての目印259aを備えており、目印259aは食品載置面の引き出しの開閉方向である前後方向における中心線B−B´よりも後方側に目印259aの中心部分である目印中心259bが位置している。
また、目印259aと対向する壁面には赤外線センサ等の非接触検知手段280が備えられており、この非接触検知手段は食品載置面に対向した位置に備えられている。すなわち、目印259aは食品載置面の引き出しの開閉方向である前後方向における中心線B−B´の上の後方側に備えられており、この中心線B−B´の上下方向の投影面上に非接触検知手段280が位置していることとなる。すなわち、上述の目印259aの中心部分である目印中心259bと非接触検知手段280は上下方向の投影線上においては一致している。
食品保持手段である吸収部260の内部空間は、上方にガス258が存在し、蓄冷材150が5°傾斜した場合でもガス258の大部分が吸収部260の内部に貯留できる容量である。これにより、蓄冷材150を水平方向に対して5°以内の傾斜で水平に設置した場合、食品設置面259の下にはガス258は存在せず大部分が蓄熱材料257で満たされている。
このように、本実施の形態では食品保持手段を形成する際に蓄冷材150の内部にできるガス258の部分を上手に利用して食品保持手段を形成した合理的な構成としている。
また、蓄冷材150は着脱可能になっており、蓄冷材150を着脱する際に使用者の指が入るように凹部で形成された着脱補助部170を備えており、この着脱補助部170と対向する側の容器に凹部で形成された着脱保持部171を備えている。これらがそれぞれ蓄冷材150に備えられた凹部で形成された蓄冷材着脱補助部172および凸部で形成された蓄冷材着脱保持部173と係合することによって、着脱の際の使用感が良く、さらに装着時における位置決めが確実にできる。すなわち、蓄冷材150を窪み部160に装着している状態において、容器127側の着脱補助部170と蓄冷材着脱補助部172がそれぞれ凹部構成によって連通していることで使用者の指を入れることが可能となり、着脱の際の使い勝手を向上させており、さらに容器127側に形成された着脱保持部171内に蓄冷材着脱保持部173が挿入されていることで、蓄冷材を装着する場合には確実な位置決めが可能であるとともに、蓄冷材を取り外す場合にもこれらの着脱保持部が支点となって容易に蓄冷材を取り外すことができるので、より使用者の使い勝手を向上させることが可能である。
また、本実施の形態ではこの使用者の指が入る部分である着脱補助部170および蓄冷材着脱補助部172が、使用者が蓄冷材150を備えた貯蔵室を開けた場合に右側に位置するように設置した。すなわち、着脱補助部170および蓄冷材着脱補助部172を貯蔵室の右側に形成しているので、一般的な右効きの使用者が蓄冷材150を着脱する際の動作がよりスムーズとなり取り出し易い構成となっている。
さらに、蓄冷機能を有する蓄冷部材である蓄冷材150の外郭を樹脂とすることで、着脱に伴って使用者の指が蓄冷部材にひっつくことがなく、蓄冷材150を着脱する際の動作がより安全でかつスムーズとなり取り出し易い構成となっている。
さらに本実施の形態では、この蓄冷材着脱補助部172を蓄冷材の外郭容器内に蓄冷液を注入する際に用いる注入部で形成したので、より合理的な構成で蓄冷材着脱補助部172を形成している。
また、この蓄冷材着脱補助部172と蓄冷材着脱保持部173を結ぶ線A−A´は蓄冷材の左右方向における中心線を通っているので、ほぼ蓄冷材の重さが左右に偏ることなく着脱することができるので、よりスムーズな着脱感を使用者に与えることが可能となる。
また、冷凍室108に有する蓄冷材150の上端面までの高さ寸法は、断熱箱体101の下面に備えられた冷蔵庫本体102を容易に移動可能にするためのキャスター151および冷凍室108の下方に設置された野菜室109により、地上面152から800mm上方に設置されている。
冷凍室吐出口153は冷凍室108を冷却するための冷気が吐出する吐出口であり、冷凍室排出口154は冷凍室108を冷却した後の冷気が冷凍室108から蒸発器113に戻る排出口である。供給ダクト155は冷蔵室107を冷却するための冷気が通風するダクトである。
蓄冷材150は容器127の底に設置されており、蓄冷材150の前面は容器127の扉121側となる前方の内面に接するように配置され、蓄冷材150の後面は容器127の底部から突出した突出部256の前面に接するように配置されることで前後方向に移動しないように固定されている。
また、蓄冷材150は密閉された樹脂ケース内に蓄熱材料257とガス258が存在している。ガス258は空気である。樹脂ケースは外形寸法が幅300mm、奥行き300mm、高さが20mmで、厚み1.5mmのポリエチレン樹脂のブロー成型品である。蓄熱材料257は一般的な冷凍する食品の凍結温度より低めで最大氷結晶生成帯の温度より低く、冷凍室108の温度より高い温度である−15℃に潜熱を有する材料であり、充填量は上面に設置される食品体積に相当する量、例えば30℃相当から−10℃までの潜熱量と顕熱量の総和に相当する潜熱量を有する熱量を保有したものである。つまり、蓄冷材150が凍結している場合は通常使用における一般的な食品投入時に完全に融解することは無い。
容器127は、突出部256の後方に通常の保存空間すなわち冷凍領域である保存部263を有する。
容器内127には、既に保存されていた冷凍食品157と新たに投入された投入食品158が置かれている。
また、冷蔵室107および野菜室109の冷却のための冷気供給および循環は図示していないが、蓄冷材を備えて冷凍温度帯に設定可能な貯蔵室を冷却する冷気供給風路とは独立した別の風路を構成している。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
蓄冷材150および冷凍食品157は、冷凍室108の所定温度である−20℃まで冷却され凍結されている。図1に示すように、扉121を開けて冷蔵温度相当の5℃の投入食品158を蓄冷材150の食品設置面259の上に置いた場合、投入直後から投入食品158は−20℃に凍結された蓄冷材150から熱が奪われて冷却が開始される。このとき、蓄冷材150は吸熱により顕熱域である−20℃から−15℃へ昇温し、潜熱域の−15℃で投入食品158と温度差を保ちつつ一部が融解していく。さらに、容器127に流入した外気も蓄冷材150で冷却され容器127内の空気は従来に比して低温が保持され、その低温空気でも投入食品158が冷却される。このとき、蓄冷材150の蓄熱材料257は吸熱により顕熱域である−20℃から−15℃へ昇温し、潜熱域の−15℃で投入食品158や流入する外気と熱交換するための適度な温度差を保ちつつ一部が融解していく。潜熱型の蓄冷材でない場合は、投入食品158の冷却により低温化に加えて蓄冷材の昇温で熱交換が進むにつれて温度差が小さくなり、投入食品158を所定温度まで冷却するのに時間を要すが、本実施の形態では潜熱温度−15℃の蓄冷材150であるので、投入食品158の凍結品質に関わる最大氷結晶生成帯となる約−10℃までに熱交換する際に大きな温度差が確保でき最大氷結晶生成帯を迅速に通過できる。さらに、潜熱温度が冷凍室温度−20℃より高いので蓄冷材150を凍結するために必要な熱交換温度差が確保できる。
また、扉121を開けた場合、先に保存済みの冷凍食品157がある場合、蓄冷材150が容器127内に流入する外気を冷却し、冷凍食品157の周囲は従来に比して低温に保たれる。さらに、投入食品158からの熱干渉による昇温も従来に比して抑制される。
その後、図に示すように、扉121を閉めると、赤外線センサ等の非接触検知手段280で投入食品158の温度を検知し、ある一定温度以上であると急速冷凍を行うと判断し、冷凍サイクル(図示せず)の運転が開始され蒸発器113に冷媒が流通して冷気が生成されると同時に送風機114が運転して冷気が循環することで冷却が開始される。このように、本実施の形態では、投入食品158の温度を非接触検知手段280で検知して一定の温度以上である場合には、自動で急速冷凍運転が開始するものである。
これによって、冷気は冷凍室吐出口153から冷凍室108に供給され、冷凍食品157および投入食品158を急速に冷却する。このとき、投入食品158は通風する冷気と食品設置面259の蓄冷材150からの冷却との両方の手段で冷却される。これによって、比較的温度の高い投入食品158が投入された場合に、自動で速やかに急速冷凍運転を行うことで、周囲の予め保存されていた冷凍食品157への温度影響を防ぐことができ、結果的に冷凍室の容器27全体の温度が他の部分へ影響することを防ぐので、温度の高い投入食品158を集中して蓄冷材150と低温冷気との両方で冷却することで冷蔵庫全体の冷凍負荷を速やかに減少させ省エネルギーで高品質の冷凍保存を実現することが可能となる。
また、冷気の少量は蓄冷材150の冷却にも使用される。しかし、冷凍室108の冷却は所定温度である−20℃より高い場合に冷却されるので、蓄冷材150の潜熱温度−15℃との温度差が小さく、冷気は主に食品の冷却に使用される。また、冷気の通風は図示しない通風構成により容器27内に通風する。このとき、蓄冷材150の食品設置面259は冷凍食品157と投入食品158が置かれて覆われているので主として冷凍食品157と投入食品158が冷却される。ここで、冷凍食品157と投入食品158が蓄冷材150の潜熱温度である−15℃に近づけば近づくほど冷気が蓄冷材150の冷却に使われるウエイトが多くなるが、例えば、冷凍食品157および投入食品158が魚や肉の場合は凍結温度が0℃付近であり、最大氷結晶生成帯が−10℃までにあるものが多いので、この温度帯では主として冷気の大部分が冷凍食品157および投入食品158を冷却する。この冷気による冷却に加えて蓄冷材150からの冷却により最大氷結晶生成帯が迅速に通過する。
また、扉121を開放した場合のように容器127が冷蔵庫本体102より外出され蓄冷材150が外気に暴露されるとき、蓄冷材150により容器127内が冷却されて貯蔵されている冷凍食品157の温度上昇が抑制され、投入された投入食品158や流入した外気は蓄冷材150で冷却されて短時間に凍結する。
また、扉121の開閉の外気流入に伴う外気中の湿分の一部は蓄冷材150に結露または着霜する。次の扉121の開閉までの時間が長い場合は冷却運転で循環する冷却空気で昇華または蒸発されて蓄冷材150の表面から取り除かれ、高湿空気は蒸発器113で着霜し、除湿された低温空気が再度循環して蓄冷材150周辺を流通し、蓄冷材150の水分を取り除くといった冷却運転中の冷却空気の循環により蓄冷材150の表面に付着した水分や霜は取り除かれる。しかし、次の扉121の開閉が短時間で行われた場合、つまり、蓄冷材150に前回の扉121の開閉で付着した水分や霜が残留した状態で、扉121を開けて食品が投入された場合で、特に投入された食品が比較的に低温である場合は、投入食品158を投入して扉121を閉める時に、その反動で投入食品158が食品設置面259上を滑りやすくなる。また、その後、その食品と蓄冷材150との間に存在する水分、つまり、霜や氷は冷却空気が流通しにくいので昇華や蒸発が行われ難く残存しやすくなり、残存した状態で再度、扉121を開けると、その反動でも食品が滑る可能性がある。このように、1扉21の開閉が乱雑または頻繁に行われた動作により万が一に、蓄冷材150や冷凍食品157や投入食品158が容器127の後方へ滑って移動する力が生じても蓄冷材150は固定手段である容器127の突出部156で固定されているため移動することはない。また、蓄冷材150が扉の開閉に伴って移動することを防ぐ固定手段である突出部156は扉121の開閉方向である前後方向への移動を阻止することを目的としているので扉121の開閉方向に対して直角方向である左右方向が長手方向となるように形成されているので、より扉121の開閉に伴う蓄冷材150の移動を確実に抑制することができる。
また、冷凍食品157や投入食品158は蓄冷材150の突出した吸収部260にあたるので、食品設置面259から後方の保存部263への移動が防止できて食品設置面259の上で円滑に冷却される。
また、食品載置面には食品載置の際の載置部分の中央としての目印259aを備えており、目印259aは食品載置面の引き出しの開閉方向である前後方向における中心線B−B´よりも後方側に目印259aの中心部分である目印中心259bが位置しているので、仮に引き出しの閉塞に伴う慣性力によって投入食品158が移動した場合でも目印中心259b付近にあった投入食品158が移動しても、食品載置面内に投入食品158が位置することを促進する。
このように、蓄冷材150や冷凍食品157および投入食品158の前方への移動は容器127の前方壁により何れも移動が防止される。このため、冷凍食品157や投入食品158の滑りによる移動が抑制でき、扉121の開閉などによる反動があっても冷凍食品157や投入食品158の熱は効率的に蓄冷材50で吸熱され、昇温抑制と食品投入時の冷却時間短縮が可能である。
また、本実施の形態ではこの使用者の指が入る部分である着脱補助部170および蓄冷材着脱補助部172が、使用者が蓄冷材150を備えた貯蔵室を開けた場合に右側に位置するように設置した。すなわち、着脱補助部170および蓄冷材着脱補助部172を貯蔵室の右側に形成しているので、一般的な右効きの使用者が蓄冷材150を着脱する際の動作がよりスムーズとなり取り出し易い構成となっており、より使用者の使い勝手を考慮したユニバーサルデザインを実現した着脱可能な蓄冷材150を備えることができる。
さらに、本実施の形態においては、比較的温度の高い投入食品158が投入された場合に、自動で速やかに急速冷凍運転を行うことで、周囲の予め保存されていた冷凍食品157への温度影響を防ぐことができ、結果的に冷凍室の容器27全体の温度が他の部分へ影響することを防ぐので、温度の高い投入食品158を集中して蓄冷材150と低温冷気との両方で冷却することで冷蔵庫全体の冷凍負荷を速やかに減少させ省エネルギーで高品質の冷凍保存を実現することが可能となる。
また、購入時や長期電源停止などで蓄冷材150の蓄熱材料257が完全に融解している状態では、液面が食品設置面259の上方に位置する吸収部260に位置している。その後、冷却により蓄熱材料257は体積膨張しながら凍結していく。その体積膨張は吸収部260内のガス258で吸収され液面が上昇しながら凍結するので、食品設置面259に熱伝導の阻害となる膨張吸収用のガス258が存在しにくく、さらに、凍結膨張による食品設置面259の反りが低減されるので冷凍食品157や投入食品158との接触が円滑に保たれる。これにより、冷凍食品157や投入食品158は効率よく冷却される。
なお、扉121が引出式扉で容器127が冷蔵庫外部に引き出されるような構造では、容器127に設置された蓄冷材150は外気に暴露されやすく、蓄冷材150への結露や着霜が多くなり食品の滑りの可能性が高くなるので、本実施の形態の吸収部260における食品の滑り抑制効果は特に有効である。
また、本実施の形態のように、扉121の容器127に設置された蓄冷材150の設置高さが800mmであるので、扉121の位置も800mm付近となり、扉121は一般的な人間が比較的に操作しやすい高さである500mmから1200mmに位置するので、人力がかかりやすく扉121の開閉に伴う反動も大きくなる可能性が高いので、実施の形態の吸収部260における食品の滑り抑制効果は特に有効となる。
なお、本実施の形態では目印259aと対向する位置に非接触検知手段280が位置しているが、仮に一致していない場合でも中心線B−B´の上下方向の投影面上のいずれかに非接触検知手段280が位置していれば、扉を開閉した場合に食品が移動した場合でも非接触検知手段280によって確実に検知することが可能である。望ましくは、非接触検知手段は食品載置面の中央部分に備え、目印259aは食品載置部の後方側に備えることで、扉を閉めた状態で目印259aの中心部分259bよりも前後方向において前方側に非接触検知手段280が位置しているので、仮に引き出しの閉塞に伴う慣性力によって投入食品158が移動した場合でも目印中心259b付近にあった投入食品158がより前方側に移動することを想定しているため、非接触検知手段280の正確な検知範囲内に投入食品158が位置することとなり、より精度良く投入食品158の温度検知を行うことが可能となるので、こういった構成でも良い。