JP2010040324A - 電池モジュールの充電状態推定方法およびこれを利用した充電方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】充電時の電池の内部圧力および電池温度を測定し、その測定値を利用することにより充電状態を高精度で推定する方法を提供する。
【解決手段】二次電池として構成された複数の単位電池を、互いに電気的に接続し、かつ、その内部を、連通部材を介して互いに連通させてなる電池積層体と、前記電池積層体の内部圧力を測定する圧力測定装置と、前記電池積層体の電池温度を測定する温度測定装置とを備える電池モジュールを所定の電気的充電条件によって充電する際の、前記電池積層体の内部圧力および電池温度と充電状態との相関特性を予め用意しておき、前記圧力測定装置によって測定した内部圧力測定値および前記温度測定装置によって測定した電池温度測定値を、前記相関特性と比較して充電状態を算出する。
【選択図】図1
【解決手段】二次電池として構成された複数の単位電池を、互いに電気的に接続し、かつ、その内部を、連通部材を介して互いに連通させてなる電池積層体と、前記電池積層体の内部圧力を測定する圧力測定装置と、前記電池積層体の電池温度を測定する温度測定装置とを備える電池モジュールを所定の電気的充電条件によって充電する際の、前記電池積層体の内部圧力および電池温度と充電状態との相関特性を予め用意しておき、前記圧力測定装置によって測定した内部圧力測定値および前記温度測定装置によって測定した電池温度測定値を、前記相関特性と比較して充電状態を算出する。
【選択図】図1
Description
本発明は、二次電池モジュールの充電状態、特には所定の条件で運転される電車のような車両に搭載される大型の二次電池モジュールの充電状態を、電池の内部圧力に基づいて推定する方法に関する。
従来、主として携帯機器用の電源として使用する充放電可能な種々の二次電池が提案されてきた。さらには、近年、環境への配慮から、自動車や電車などの車両に充放電可能な二次電池を搭載したものが開発されている。車両に二次電池を搭載した場合には、ブレーキ時に生じる回生電力をこの搭載電池に蓄えておき、車両の動力源として使用することができるので、車両のエネルギー効率を高めることができる。このように車両に搭載する二次電池としては、エネルギー密度、負荷変動追従性、耐久性、製造コストなどの諸条件から、例えばニッケル水素二次電池が適しているとされる(特許文献1)。
このような車両、特に、所定の区間を走行する電車のような車両に電池を搭載する場合には、走行区間の途中で停止することのないよう、電池の充電状態(SOC:State of Charge)、つまり電池の残容量を正確に推定する必要がある。
従来、二次電池のSOCを推定する方法として、充放電の電流値を積算し、この積算値に基づいて推定する技術が知られている。しかしながら、この方法では、長期間運用すると電流値の検出誤差が蓄積されて、SOCの推定精度が次第に低下していくという問題がある。
また、SOCを推定する別の方法として、電池電圧とSOCの相関関係に基づいて推定する技術も知られている。しかしながら、特にニッケル水素二次電池では、SOCに対する電圧変化が小さい領域が存在し、SOCを精度よく推定することが困難である。この傾向は、電車のような車両に搭載される電池で一般に使用されるSOCの中間領域(例えば20〜80%程度)において特に顕著である。
さらには、電車のような車両に搭載される大型のニッケル水素二次電池では、電極の反応面積が大きく、かつ、電極体の中心部と外周部との温度差も大きいので、電極全体の反応が不均一になりやすい。このため、電池電圧や電池の外表面温度の監視のみによる充電制御では、充電末期に局所的な過充電が起こりやすく、内部圧力上昇による安全弁の作動や充放電サイクル寿命の低下を防ぐことが困難であるという課題があった。
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、充電時の電池の内部圧力および電池温度を測定し、その測定値を利用することにより充電状態を高精度で推定する方法、および、当該推定方法を利用することにより、確実に過充電を防止するとともに、電池が搭載される車両が走行区間の途中で停止するのを防止することができる充電方法を提供することである。
前記した目的を達成するために、本発明に係る電池モジュールの充電状態推定方法は、二次電池として構成された複数の単位電池を、互いに電気的に接続し、かつ、その内部を、連通部材を介して互いに連通させてなる電池積層体と、前記電池積層体の内部圧力を測定する圧力測定装置と、前記電池積層体の電池温度を測定する温度測定装置とを備える電池モジュールを所定の電気的充電条件によって充電する際の、該電池モジュールの充電状態を推定する方法であって、前記所定の電気的充電条件における、前記電池積層体の内部圧力および電池温度と充電状態との相関特性を予め用意しておき、前記圧力測定装置によって測定した内部圧力測定値および前記温度測定装置によって測定した電池温度測定値を、前記相関特性と比較して充電状態を算出する。なお、本明細書において「電池積層体の内部圧力」とは、電池積層体を構成する各単位電池が連通した状態での内部圧力を意味する。また、「所定の電気的充電条件」とは、定電流や定電圧などの充電制御方式、および、各制御方式における電流、電圧の各設定値を意味する。
この構成によれば、電圧変動の比較的小さいSOC領域(20〜80%程度)においても、充電に伴って発生するガスに起因する、電池の内部圧力上昇に基づいてSOCを推定するので、精度の高いSOC推定を行うことができるとともに、大型の電池であっても、電極内の局所的な過充電を防止して、電池性能の劣化を防止することができる。また、SOCを正確に推定することができるので、電池を搭載した電車のような車両が走行区間の途中で停止することを回避できる。
本発明に係る充電状態推定方法において、前記所定の電気的充電条件が定電流充電を含み、前記定電流制御の充電電流値が、0.1〜10時間率の範囲内にあるものとしてもよい。ここで、充電電流の時間率(C)とは、所定の容量を有する電池を1時間で満充電にするために必要な電流値のことであり、例えば、1Ahの電池では1C=1Aである。充電電流値をこのように低率の値に設定することにより、充電による電池温度の変化が小さく抑えられるので、より高い精度で充電状態を推定することができる。
本発明に係る上記の充電状態推定方法において、隣接する前記単位電池間に放熱板を介在させ、該放熱板の内部に前記温度測定装置の温度検知部を配置することが好ましい。このように構成することにより、環境温度や冷媒温度の影響を最小限に抑えて、正確かつ安定的に電池温度を検出することができるので、電池温度の影響を受け易い内部圧力値を用いても、高い精度で充電状態を推定することができる。
また、本発明の充電状態推定方法は、例えば、前記単位電池としてニッケル水素二次電池をすることができる。ニッケル水素二次電池は、充電時のSOC中間領域における電圧の平坦性が顕著である一方、充電時にガス発生によって内部圧力が上昇するので、内部圧力値を利用して高精度な充電状態の推定をするのに特に適している。
また、本発明の充電状態推定方法は、例えば、所定の条件に従って運転される車両に使用される電池モジュールに適用することができる。このような車両、すなわち、例えば所定の区間を所定の時間で走行する電車においては、通常、区間の途中で走行が停止することを防止するために、SOCの中間領域で充放電を行うが、このような使用条件であっても、内部圧力値を用いて精度の高いSOC推定を行うことができる。しかも、このような電車においては、ブレーキをかけるパターンもほぼ一定であるので、ブレーキ時に行われる回生充電のような間欠的な充電に対しても、精度の高いSOC推定を行うことが可能となる。
本発明に係る電池モジュールの充電方法は、上記の充電状態推定方法によって算出した充電状態の推定値に基づいて充電を停止することを含んでいる。充電時のガス発生に起因する内部圧力値を用いて算出したSOC推定値によって充電の停止制御を行うことにより、確実に過充電を防止して、電池の性能劣化を防止し、安全性を確保することができる。
上記の充電方法は、さらに、前記内部圧力測定値から算出した内部圧力の変化率の値に基づいて充電を停止することを含んでいてもよい。このように構成することにより、内部圧力の測定値に基づいて、過充電をより確実に防止する適切な充電制御を行うことができる。
以上のように、本発明に係る電池モジュールの充電状態推定方法およびこの推定方法を利用した充電方法によれば、充電時の電池の内部圧力および電池温度を測定し、その測定値を利用することにより、充電状態を高精度で推定することができるとともに、当該推定方法を利用することにより、確実に過充電を防止して電池性能の向上を図り、かつ安全性を確保することができる。さらには、正確に充電状態を推定することにより、電池が搭載される車両が走行区間の途中で停止するのを防止することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るSOC推定システムを含む、電池モジュールおよび充電制御システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る電池モジュールBは、電池積層体1、連通部材3、圧力測定装置5、温度測定装置7を主要な構成要素としている。一方、充電制御システムCHは、電池モジュールBで測定された各種パラメータを基に電池モジュールBのSOCを算出するSOC算出手段11、および電池モジュールBに充電電流を供給する充電手段13を主要な構成要素としている。
図2は、本実施形態に係る電池モジュールBを示す概略構成図である。この電池モジュールBは、例えば、電車に搭載されるものであって、二次電池として構成された単位電池Cを、単位電池Cの厚み方向に複数個(本実施形態では30個)積層した電池積層体1、単位電池Cの内部を連通させる連通部材3、電池積層体1の内部圧力を測定する圧力測定装置5、および電池積層体1の電池温度を測定する温度測定装置7を主要な構成要素として備えている。
図3は、図2の単位電池Cの構造の一例を示す断面図である。単位電池Cは、セパレータ21と、正極23および負極25を含む電極体27と、電極体27を電解液とともに収容する角形形状のケーシング29とを備えている。ケーシング29は、絶縁素材からなる矩形の枠形部材31と、枠形部材31の二つの開口をそれぞれ覆う、導電素材からなる第1蓋部材33および第2蓋部材35とから構成されている。ケーシング29の枠形部材31の外面には、単位電池Cの内部と外部を連通させる連通口37が設けられている。連通口37は、連通口37が設けられている枠形部材31の一辺にほぼ平行に、枠形部材31の中央に向かって突出する二又の連通部37aを有しており、後述するように、電池モジュールBの内部圧力測定系統30の一部を構成している。なお、本実施形態における単位電池Cは、水酸化ニッケルを主要な正極活物質とし、水素吸蔵合金を主要な負極活物質とし、アルカリ系水溶液を電解液とする、繰り返し充放電が可能なニッケル水素二次電池として構成している。
電極体27の構造は、特に限定されないが、例えば、複数の正極23と複数の負極25とが、プリーツ状に折り曲げられたセパレータ21を介して所定の方向に交互に積層されて対向する積層構造を有している。ケーシング29の第1蓋部材33および第2蓋部材35は、ニッケルめっきを施した鋼板で形成されており、正極23は第1蓋部材33に、負極25は第2蓋部材35に、それぞれ電気的に接続されている。つまり、第1および第2蓋部材33,25は、それぞれ、単位電池Cの正極集電体および負極集電体を兼ねている。
電池モジュールBの内部圧力測定系統30は、以下のように構成されている。図2に示すように、各単位電池Cに設けられた各連通口37の二又の連通部37aのそれぞれが、隣接する単位電池Cの連通口37の連通部37aの一方と、内圧測定連通路PMの一部分を形成する、連通部材3である可撓性の連結チューブ51を介して順次接続されており、末端の単位電池Cの一方の連通部37aが、内圧測定連通路PMの一部分を形成する、連通部材3である導出チューブ52に設けられた圧力測定装置5に接続されている。先端の単位電池Cの一方の連通部37aは、盲栓により閉塞する。これら連通口37、連結チューブ51、導出チューブ52および圧力測定装置5が、電池モジュールBの内部圧力測定系統30を構成している。
なお、内圧測定連通路PMの、圧力測定装置5に接続する部分から分岐した端部には、安全弁として動作する圧力調整弁53が接続されている。圧力調整弁53としては、例えば、ポペット弁にスプリングを組み合わせたもののほか、一般に用いられている任意の機構を使用することができる。
また、電池モジュールBの電池積層体1においては、図2に示すように、隣接する単位電池Cの間に介在して、放熱板41,41Aが積層されている。単位電池Cは、隣接する単位電池Cの一方の第1蓋部材33と、他方の第2蓋部材35とが互いに対向する方向に積層されており、さらに、2つの単位電池Cに1つの割合で、放熱板41(41A)が介在している。
図4(a)に示すように、第1の放熱板41は、積層方向Xに直交する方向に延びる直線状の貫通孔として形成された、冷却用の空気を通すための複数の通風孔41aを有している。図2に示すように、この第1放熱板41が、電池モジュールBにおいて、隣接する単位セルCの一方の第1蓋部材33と他方の第2蓋部材35との間に介在するように積層されている。放熱板41は、これら2つの単位電池Cを電気的に接続するべく、電気導電性を有する物質、例えば、ニッケルメッキを施したアルミニウム素材で形成されている。なお、図示しないが、電池モジュールBには、冷却用の送風装置である電動ファンが設置されており、この電動ファンから放熱板41の通風孔41aに冷却空気が送られる。このように単位電池Cに隣接させて放熱板41を設けることにより、電池積層体1の温度上昇が抑制され、温度上昇に伴う電池性能の低下を防ぐことができる。
さらに、電池積層体1の積層方向Xの中央付近には、第1放熱板41に代えて図4(b)に示す第2放熱板41Aが配置されており、この第2放熱板41Aの内部に、本実施形態における温度測定装置7である熱電対の温度検知部7aを配置している。具体的には、第2放熱板41Aには、第1放熱板41の複数の通風孔41aの1つの孔の下側開口を塞いで形成した温度検知穴41Aaが設けられており、この温度検知穴41Aa内の底部付近に、温度検知部7aが配置されている。電池温度を精度よくかつ遅れなく検出するために、温度検知部7aは、第2放熱板41Aに接触した状態、例えば、温度検知穴41Aaの周壁面に接触した状態で配置されていることが好ましい。なお、本実施形態においては、温度検知部7aの取り付けの便宜を考慮して、温度検知孔41Aaを、第2放熱板41Aの幅方向中央から外側にずれた位置に設けているが、第2放熱板41Aの幅方向中央付近に設けてもよい。
次に、本発明の一実施形態に係るSOC推定方法について説明する。このSOC推定方法は、上記で説明した電池モジュールBのSOCを推定する方法であり、実際の使用環境における電池モジュールの充電条件を模擬した所定の電気的充電条件における、電池積層体1の内部圧力および電池温度と充電状態との相関特性を予め用意したうえで、実際に測定された内部圧力および電池温度の各測定値を上記相関特性と比較してSOC推定値Eを算出するものであり、図5のフロー図に示すように、主に以下のステップ(1)〜(5)で構成されている。
(1)準備段階として、実験などによって、電池モジュールBの使用環境に応じた充電条件における、電池積層体1(図1)の内部圧力Pおよび電池温度tと充電状態とを測定して、これらの相関特性St(P)を用意するステップ。
(2)電池温度測定装置7によって、電池積層体1の電池温度を測定し、温度測定値tiをSOC算出手段11へ出力するステップ。
(3)内部圧力測定装置5によって、充電時の電池積層体1の内部圧力を測定し、内部圧力測定値PiをSOC算出手段11へ出力するステップ。
(4)SOC算出手段11において、温度測定値tiおよび内部圧力測定値Piを、予め用意された内部圧力および電池温度と充電状態との相関特性St(P)と比較して、電池モジュールBのSOC推定値Eを算出するステップ。
(5)SOC算出手段11で算出されたSOC推定値Eを、充電手段13およびSOC表示手段71へ出力するステップ。
(1)準備段階として、実験などによって、電池モジュールBの使用環境に応じた充電条件における、電池積層体1(図1)の内部圧力Pおよび電池温度tと充電状態とを測定して、これらの相関特性St(P)を用意するステップ。
(2)電池温度測定装置7によって、電池積層体1の電池温度を測定し、温度測定値tiをSOC算出手段11へ出力するステップ。
(3)内部圧力測定装置5によって、充電時の電池積層体1の内部圧力を測定し、内部圧力測定値PiをSOC算出手段11へ出力するステップ。
(4)SOC算出手段11において、温度測定値tiおよび内部圧力測定値Piを、予め用意された内部圧力および電池温度と充電状態との相関特性St(P)と比較して、電池モジュールBのSOC推定値Eを算出するステップ。
(5)SOC算出手段11で算出されたSOC推定値Eを、充電手段13およびSOC表示手段71へ出力するステップ。
上記(1)〜(5)の各スッテプについて、以下に具体的に説明する。
本実施形態におけるステップ(1)では、実験により図6に示すような相関特性St(P)を求める。相関特性St(P)の測定は、電池モジュールBの、実際の使用における充電条件や環境温度を考慮して、その条件の範囲で行うことが好ましい。本実施形態では、SOC30〜90%の範囲で、充電電流0.3Cの連続的な定電流充電において、相関特性St(P)を異なる電池温度t1〜t4ごとに求める実験を行った。図6には、このようにして求めた各電池温度t1〜t4における相関特性St1(P)〜St4(P)を示している。この実験におけるSOCの測定は、例えば、充電電流値を計測し、これを積算することにより求めることができる。相関特性St(P)は、テーブル状のマップとして求めてもよく、各測定値から近似的に導き出した数式として求めてもよい。このようにして求めた相関特性St(P)は、SOC算出手段11内の図示しない記憶手段に記憶される。
なお、電池モジュールBの電気的充電条件が、連続的な充電に限られない場合、例えば、車両に搭載されて、ブレーキ作動時に回生充電が間欠的に行われるような場合には、模擬的に作成した回生充電のパターンに従って相関特性St(P)を求めておくことが好ましい。これは、充電時にガスが発生した場合は、充電を停止することにより発生ガスがH2Oに戻って内部圧力が下降するので、内部圧力値に対するSOCにヒステリシスが生じるからである。この点において、本実施形態の電池モジュールBのように、所定の条件、すなわち、所定の区間を所定の時間で走行する電車のような車両に使用される場合には、回生充電の行われるパターンもほぼ一定であるので、そのような条件で求めた相関特性St(P)を用意しておくことにより、精度の高いSOC推定を行うことが可能である。
この場合、図7に示すように、ある電池温度tにおいて、種々の異なるSOCを初期条件として定電流充電を行い、一定間隔の複数のSOCに対するSOCと内部圧力との各相関特性sの集合を実験により求め、これを相関特性St(P)として使用してもよく、さらには、これら複数の相関特性を平滑化した近似曲線Uを算出して、相関特性St(P)として使用してもよい。
次に、本実施形態に係るステップ(2)では、充電開始時点における図1の電池積層体1の電池温度を測定し、その測定値tをSOC算出手段11へ出力する。充電電流値を1C以下、例えば本実施形態のように0.3Cのような低率に設定した場合には、充電中の電池温度の変化が小さいので、充電開始時の電池温度測定値tiを使用することで十分精度の良いSOC測定を行うことができる。また、充電中に電池温度が大きく上昇するような、高率で定電流充電を行うような場合であっても、本実施形態の電池モジュールBのように、所定の区間を運行する電車のような特定の環境下でのみ使用される場合には、同一の電池温度において充電を開始したときの電池温度の上昇の仕方はほぼ一定であり、したがって電池温度の影響を受ける内部圧力変化の仕方もほぼ一定となるので、精度の高いSOC推定を行うことが可能である。
本実施形態におけるステップ(3)では、圧力測定装置5によって測定した電池積層体1の内部圧力測定値Piを、SOC算出手段11に出力する。また、この内部圧力測定値Piは、必要に応じて、同時に、後述の圧力変化率算出手段に出力するようにしてもよい。
本実施形態におけるステップ(4)では、SOC算出手段11が、温度測定値tiおよび内部圧力測定値Piを、上記ステップ(1)で用意した相関特性St(P)と比較することによって、SOCの推定値Eを算出する。このステップ(4)におけるSOC推定値Eの算出手法の最も簡単な例としては、SOC算出手段11は、まず、温度ごとに用意された複数の相関特性St(P)(本実施形態ではSt1(P)〜St4(P))から、温度測定値tiに最も近い温度t2に対応する相関特性St2(P)を選択し、次に、この相関特性St2(P)を利用して、現在の内部圧力測定値Piに対応するSt2(Pi)をSOC推定値Eとして算出する。
SOC算出手段11におけるSOC推定値Eの算出方法としては、SOC推定値Eに要求される精度とSOC算出手段11に許容されるプログラムサイズやコスト等とのバランスを考慮して、上記で説明したほかにも一般的に用いられている種々の手法を採用することができる。例えば、相関特性として用意したうちで温度測定値tiに最も近い温度t2と、温度測定値tiとの差が所定の範囲±Δt2である場合には、相関特性としてこのSt2(Pi)を用いてSOC推定値Eを算出し、最も近い温度t2と、温度測定値tiとの差が所定の範囲±Δt2を超える場合には、温度測定値tiの直近の上下2つの温度t2とt3に対応する各相関特性から求めたSt2(Pi)とSt3(Pi)との平均値をSOC推定値Eとして算出してもよい。また、最も近い温度に対応する相関特性を選択する代わりに、近傍の温度に対応する2つの相関特性から、線形近似により内挿もしくは外挿補間して求めてもよい。さらには、ステップ(1)において用意する相関特性を、実験で得られた実測値から、内部圧力測定値Piおよび温度測定値tiの関数S(t,P)として用意しておいてもよい。
なお、図1に示すSOC算出手段11としては、上記で説明した方法を実行できる装置であれば特に限定されることなく使用することが可能であり、例えば、CPUおよびメモリ等を備えたマイクロコンピュータによって構成することができる。
最後に、ステップ(5)において、SOC推定値EをSOC表示手段および充電手段に出力する。SOC表示手段は、SOCを単にパーセントで表示するものであってもよいが、使用される用途に応じて、他の表示形式とすることもできる。例えば、電池モジュールBが電車に搭載される場合には、電池の残容量を走行可能距離に換算して表示してもよく、到達可能な駅名を表示してもよい。
さらに、本発明の一実施形態に係る充電方法においては、SOC算出手段11で算出したSOC推定値Eに基づいて、つまり、SOC推定値Eが所定の値まで上昇した場合に充電を停止する。具体的には、図1の充電制御手段CHにおける充電手段13は、例えば、図示しない交流電源からの電流を直流電流に変換するAC/DC変換手段や、電気的充電条件を制御する定電流制御装置などの通常の充電装置の構成要素に加えて、SOC算出手段11から入力されたSOC推定値Eを所定値と比較して、SOC推定値Eがこの所定値に達した場合に充電を停止させる比較判定手段を有している。
さらには、充電制御システムCHは、圧力測定手段5が測定した内部圧力測定値Piを利用して内部圧力の変化率を算出する微分器などで構成される圧力変化率算出手段73を備えていてもよい。圧力変化率算出手段73で算出した内部圧力の変化率dP/dtは、電池積層体1の過充電の状態を適切に反映するパラメータであるので、充電を停止するための追加のパラメータとして充電手段13に出力することができる。
また、圧力変化率算出手段73で算出した変化率dP/dtを、SOCを推定するためのパラメータとして利用することもできる。すなわち、上記で説明した相関特性St(P)の代わりに、圧力変化率dP/dtおよび温度tと、SOCとの相関特性St(dP/dt)を予め準備しておき、SOC算出手段11が、圧力変化率算出手段73から出力された算出値dPi/dtおよび温度測定装置5から出力された温度測定値tiを相関特性St(dP/dt)と比較することにより、SOC推定値Eを算出してもよい。
上記実施形態に係る電池モジュールBの充電状態推定方法、およびこの充電状態推定方法を利用した充電方法よれば、以下の効果が得られる。
本実施形態における充電推定方法を適用する電池モジュールBは、互いに電気的に接続された複数の単位電池Cの内部を、連通部材3を介して互いに連通させてなる電池積層体1、電池積層体1の内部圧力を測定する圧力測定装置5、および電池積層体1の電池温度を測定する温度測定装置5を備えているので、充電を行いながら電池積層体1の内部圧力および電池温度を測定することが可能となる。本実施形態に係る充電推定方法では、この電池モジュールBを、所定の電気的充電条件、つまり電池モジュールBが実際に使用される場合の充電条件を模擬した条件における、電池積層体1の内部圧力Pおよび電池温度tと充電状態との相関特性St(P)を予め用意しておき、圧力測定装置5によって測定した内部圧力測定値Piおよび温度測定装置7によって測定した電池温度測定値tiを、相関特性St(P)と比較して充電状態を算出する。
したがって、20〜80%程度の、電圧変動の比較的小さいSOC領域においても、電池の内部圧力値に基づいてSOCを推定するので、精度の高いSOC推定を行うことができるともに、大型の電池であっても、電極内の局所的な過充電を防止して、電池性能の劣化を効果的に防止することができる。
また、本実施形態に係る充電状態推定方法においては、所定の電気的充電条件が連続的または間欠的な定電流充電であって、定電流制御の充電電流値を、0.1〜10時間率という低率に設定しているので、充電中の電池温度の上昇を抑えることができ、より高い精度で充電状態を推定することが可能となる。
さらに、本実施形態に係る上記の充電状態推定方法において、隣接する単位電池C間に介在させた第2放熱板41Aに、単位電池Cの積層方向Xに直交して延びる、下流側開口が塞がれた温度検知穴41Aaを設け、この冷却空気の通らない温度検知穴41Aaの内方の底部に温度測定装置7の温度検知部7aを配置している。すなわち、電池積層体1の表面部ではなく、単位電池間の伝熱部材である第2放熱板41Aの内部に温度検知部7aを配置しているので、冷媒温度の影響を最小限に抑えて安定的かつ適切に電池温度を検出することができる。これにより、電池温度の影響を受け易い内部圧力値を用いても、高い精度で充電状態を推定することが可能となる。
特に、本実施形態の電池モジュールBのような、車両の駆動電源として用いられる大型の電池においては、上述のように、電池積層体1の温度上昇を抑制するために、電動ファンのような冷却装置を設けることが好ましい。この場合、温度検知部7aを電池積層体1の表面に配置したのでは、電動ファンからの冷却空気の影響を受けて、正確な電池温度検知が困難となる。しかしながら、上記のような構造とすることで、正確な電池温度検出が可能となる。
なお、電池温度をより精度よくかつ遅れなく検出するために、温度検知部7aは、第2放熱板41Aに接触した状態で配置されていることが好ましい。この場合、例えば、温度検知穴41Aaにバネのような弾性部材等を充填して、温度検知部7aが第2放熱板41Aに強く接触するようにしてもよい。
また、本発明の充電状態推定方法は、所定の条件に従って運転される車両のような用途に特に適している。このような車両、すなわち、例えば、所定の区間を所定の時間で走行する電車においては、通常、区間の途中で走行が停止することを防止するために、SOCの中間領域で充放電を行うが、このような使用条件であっても、内部圧力値を用いて精度の高いSOC推定を行うことができる。しかも、このような電車においては、ブレーキをかけるパターンもほぼ一定であるので、ブレーキ時に行われる回生充電のような間欠的な充電に対しても、精度の高いSOC推定を行うことが可能となる。
さらに、本実施形態に係る電池モジュールBの充電方法では、充電時のガス発生に起因する内部圧力値を用いて算出したSOC推定値Eによって充電の停止制御を行うので、確実に過充電を防止して、電池の性能劣化を防止し、安全性を確保することができる。また、SOC推定値Eによる充電停止制御に追加して、内部圧力測定値Piから算出した内部圧力の変化率の値dPi/dtに基づいて充電を停止する制御を行う場合には、過充電をより確実に防止することができる。
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
1 電池積層体
3 連通部材
5 圧力測定装置
7 電池温度測定装置
11 SOC算出手段
13 充電手段
51 連結チューブ(連通部材)
52 導出チューブ(連通部材)
C 単位電池
B 電池モジュール
PM 圧力測定通路
St(P) 相関特性
3 連通部材
5 圧力測定装置
7 電池温度測定装置
11 SOC算出手段
13 充電手段
51 連結チューブ(連通部材)
52 導出チューブ(連通部材)
C 単位電池
B 電池モジュール
PM 圧力測定通路
St(P) 相関特性
Claims (7)
- 二次電池として構成された複数の単位電池を、互いに電気的に接続し、かつ、その内部を、連通部材を介して互いに連通させてなる電池積層体と、
前記電池積層体の内部圧力を測定する圧力測定装置と、
前記電池積層体の電池温度を測定する温度測定装置と、
を備える電池モジュールを所定の電気的充電条件によって充電する際の、該電池モジュールの充電状態を推定する方法であって、
前記所定の電気的充電条件における、前記電池積層体の内部圧力および電池温度と充電状態との相関特性を予め用意しておき、
前記圧力測定装置によって測定した内部圧力測定値および前記温度測定装置によって測定した電池温度測定値を、前記相関特性と比較して充電状態を算出する電池モジュールの充電状態推定方法。 - 請求項1において、前記所定の電気的充電条件が定電流充電を含み、前記定電流制御の充電電流値が、0.1〜10時間率の範囲内にある充電状態推定方法。
- 請求項1または2において、隣接する前記単位電池間に放熱板を介在させ、該放熱板の内部に前記温度測定装置の温度検知部を配置する充電状態推定方法。
- 請求項1から3のいずれか一項において、前記単位電池としてニッケル水素二次電池を用いる充電状態推定方法。
- 請求項1から4のいずれか一項において、前記電池モジュールが、所定の条件に従って運転される車両に使用される電池モジュールである充電状態推定方法。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の充電状態測定方法を含む、前記電池モジュールを充電する方法であって、
前記充電状態測定方法によって算出した充電状態の推定値に基づいて充電を停止することを含む電池モジュールの充電方法。 - 請求項6において、さらに、前記内部圧力測定値から算出した内部圧力変化率の値に基づいて充電を停止することを含む電池モジュールの充電方法。
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