JP2010040285A - 燃料電池システム、燃料電池の運転方法、および燃料電池自動車 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池の発電性能を回復させるとともに、燃料電池の耐久性を向上させることができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池システム100は電極触媒として白金を含む燃料電池10を備える。本発明の燃料電池システム100は、低負荷運転されている燃料電池10の発電性能を回復させるために燃料電池10の空気極電位を低下させたのちに空気極電位を上昇させる際の、空気極電位の上昇速度が切換可能に構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の燃料電池システム100は電極触媒として白金を含む燃料電池10を備える。本発明の燃料電池システム100は、低負荷運転されている燃料電池10の発電性能を回復させるために燃料電池10の空気極電位を低下させたのちに空気極電位を上昇させる際の、空気極電位の上昇速度が切換可能に構成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池システム、燃料電池の運転方法、および燃料電池自動車に関する。
近年、環境負荷の少ない電源として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、酸素および水素の供給を受けて電力を発生するものである。燃料電池では、電極触媒として白金または白金合金が用いられている。
電極触媒として白金を含む燃料電池に関する技術としては、白金触媒の酸化にともなう発電性能の低下を抑制する見地から、下記の特許文献1に示すような燃料電池装置が知られている。特許文献1に開示されている燃料電池装置は、燃料電池のカソード電位(空気極電位)を周期的に0.6Vvs.SHE以下に低下させることにより白金酸化物を還元して、燃料電池の性能を回復させるものである。
特表2003−536232号公報
しかしながら、上記燃料電池装置では、白金の酸化および還元が繰り返されることにより白金が溶解して、長期的には燃料電池の性能が低下してしまうという問題がある。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、燃料電池の発電性能を回復させるとともに、燃料電池の耐久性を向上させることができる燃料電池システムおよび燃料電池の運転方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車を提供することである。
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
本発明の燃料電池システムは、電極触媒として白金を含む燃料電池を備える。本発明の燃料電池システムは、低負荷運転されている燃料電池の発電性能を回復させるために当該燃料電池の空気極電位を低下させたのちに前記空気極電位を上昇させる際の、前記空気極電位の上昇速度が切換可能に構成されている。
本発明の燃料電池の運転方法は、電極触媒として白金を含む燃料電池を備える。本発明の燃料電池の運転方法は、低負荷運転されている燃料電池の発電性能を回復させるために当該燃料電池の空気極電位を低下させたのちに、低下された前記空気極電位を切換可能な上昇速度で上昇させる。
本発明の燃料電池自動車は、上記燃料電池システムを駆動用電源として搭載している。
本発明の燃料電池システムおよび燃料電池の運転方法によれば、燃料電池の発電性能を回復させるために低下された空気極電位を上昇させる際の上昇速度が変更されるため、白金酸化物を還元するとともに、白金の溶解を抑制することができる。したがって、燃料電池の発電性能を回復させるとともに、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
本発明の燃料電池自動車によれば、燃料電池の耐久性が向上するため、燃料電池自動車の信頼性が向上する。
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態では、本発明を燃料電池自動車の電源システムに適用した場合を例にとって説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの概略構成を示す図である。本実施の形態の燃料電池システムは、燃料電池の発電性能を回復させるために燃料電池のカソード電位を低下させる処理において、低下されたカソード電位を上昇させる際の上昇速度を切換えることにより、燃料電池の劣化を抑制するものである。
図1は、本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの概略構成を示す図である。本実施の形態の燃料電池システムは、燃料電池の発電性能を回復させるために燃料電池のカソード電位を低下させる処理において、低下されたカソード電位を上昇させる際の上昇速度を切換えることにより、燃料電池の劣化を抑制するものである。
図1に示すとおり、本実施の形態の燃料電池システム100は、燃料電池10、燃料タンク20、コンプレッサ30、電圧検出部40、温度検出部50、抵抗検出部60、負荷器70、電流検出部80、および制御部90を備える。
燃料電池10は、水素および酸素の供給を受けて電力を生成するものである。燃料電池10は、単位電池としての単セルが複数積層されて構成される。各単セルには、電極触媒として白金が用いられている。燃料電池10についての詳細な構成については後述する。
燃料タンク20は、燃料電池10に供給されるアノードガス(水素を含む燃料ガス)を貯蔵するものである。燃料タンク20は、水素供給用配管を通じて、燃料電池10のアノード(燃料極)にアノードガスを供給する。
コンプレッサ30は、燃料電池10にカソードガス(たとえば、空気)を供給するものである。コンプレッサ30は、酸素供給用配管を通じて、燃料電池10のカソード(空気極)にカソードガスを供給する。
電圧検出部40は、燃料電池10のセル電圧を検出するものである。電圧検出部40は、燃料電池10に取り付けられる電圧センサを含み、燃料電池10を構成する複数の単セルのうち一の単セルのセル電圧を検出する。電圧検出部40は、制御部90に電気的に接続されており、電圧検出部40からの信号は、制御部90に送信される。
温度検出部50は、温度検出手段として、燃料電池10の温度を検出するものである。温度検出部50は、温度センサを含み、燃料電池10の温度を検出する。温度検出部50は、制御部90に電気的に接続されており、温度検出部50からの信号は、制御部90に送信される。
抵抗検出部60は、燃料電池10の抵抗値を検出するものである。抵抗検出部60は、燃料電池10に電気的に並列に接続される抵抗計を含み、燃料電池10の電気的な抵抗値を測定する。また、抵抗検出部60は、燃料電池10の含水量を検出する含水量検出手段として機能する。抵抗検出部60は、制御部90に電気的に接続されており、抵抗検出部60からの信号は、制御部90に送信される。
負荷器70は、燃料電池10から電流を取り出すものである。負荷器70は、燃料電池10に電気的に並列に接続されており、燃料電池10で発生される電力を消費または蓄電する。本実施の形態の負荷器70は、燃料電池自動車を駆動させるための駆動モータ、燃料電池10の補機、および二次電池を含む。負荷器70は、制御部90によって制御され、燃料電池10から電流を取り出す。
電流検出部80は、燃料電池10を流れる電流を検出するものである。電流検出部80は、燃料電池10と負荷器70との間に設けられる電流計を含み、燃料電池10と負荷器70との間を流れる電流を検出する。電流検出部80は、制御部90に電気的に接続されており、電流検出部80からの信号は、制御部90に送信される。
制御部90は、燃料電池10のカソード電位を変化させるものである。制御部90は、負荷器70を制御して、燃料電池10のカソード電位を変化させる。制御部90は、電圧検出部40、温度検出部50、抵抗検出部60、および電流検出部80から信号を受信して、負荷器70に指令信号を送信する。また、本実施の形態の負荷器70および制御部90は、燃料電池のセル性能を回復させるために低下されたカソード電位を上昇する際のカソード電位の上昇速度を制御する速度制御手段として機能する。制御部90は、温度検出部50および抵抗検出部60で検出される燃料電池10の温度および含水量に基づいて、燃料電池10のカソード電位の上昇速度を切換えるか否かを判断する判断部(判断手段)として機能する。
次に、図2を参照して、本実施の形態の燃料電池10について詳細に説明する。
図2は、図1に示す燃料電池システムにおける燃料電池のセル構造を示す斜視図である。上述したとおり、本実施の形態の燃料電池10は、アノードガスとカソードガスとの反応により起電力を生じる単位電池としての単セルが複数積層されて構成されている。
図2に示すとおり、燃料電池10を構成する各単セル11は、MEA12と、MEA12の両面にそれぞれ配置されるセパレータ13とから構成される。
MEA12は、固体高分子電解質膜14と、固体高分子電解質膜14を両側から挟み込むアノード15およびカソード16と、を有する。固体高分子電解質膜14は、水素イオンを通す高分子電解質膜から構成される。アノード15は、アノード触媒層15Aおよびガス拡散層15Bから構成され、カソード16は、カソード触媒層16Aおよびガス拡散層16Bから構成される。カソード触媒層16Aは、電極触媒として白金(Pt)を含む。カソード触媒層16Aは、白金の粒子が、たとえば、炭素粉末の担体によって担持されてなる。なお、本実施の形態とは異なり、電極触媒として、Pt−Mo合金、Pt−Fe合金、Pt−Ni合金、およびPt−Co合金などの白金合金が用いられてもよい。
セパレータ13は、導電性を有する材料により形成される。セパレータ13の一方の面の発電に寄与するアクティブ領域には、MEA12にアノードガスを流通させるアノードガス流路17Aをなす溝部17が形成されている。一方、セパレータ13の他方の面のアクティブ領域には、MEA12にカソードガスを流通させるカソードガス流路18Aをなす溝部18が形成されている。アノードガスは、アノードガス導入口より導入されて溝部17を流れ、アノードガス排出口より排出される。カソードガスは、カソードガス導入口より導入されて溝部18を流れ、カソードガス排出口より排出される。
アノードガス流路17Aおよびカソードガス流路18Aにアノードガスおよびカソードガスをそれぞれ流通させると、水素はアノード触媒層15Aの触媒作用で水素イオンに変わり電子を放出する。電子を放出した水素イオンは固体高分子電解質膜14を通過する。カソード触媒層16Aでは固体高分子電解質膜14を通過してきた水素イオンと外部回路(不図示)を経由してきた電子がカソードガス中に含まれる酸素と反応して水を生成する。この作用によってアノード15がマイナスに、カソード16がプラスになり、図2に示すとおり、アノード15とカソード16との間で直流電圧が発生する。本実施の形態では、この直流電圧を電圧検出部40によって検出する。なお、通電していない状態では、この直流電圧は、理想的には1.23Vである。しかしながら、燃料電池には内部抵抗が存在するため、電圧検出部40によって検出される電圧は、理想的な電圧よりも低い値を示す。
以上のとおり構成される本実施の形態の燃料電池システム100によれば、燃料電池10の発電性能を回復させるためにカソード電位を低下させる処理において、低下されたカソード電位を上昇させる際の上昇速度が燃料電池10の状態に応じて切換えられる。以下、図3〜図7を参照して、本実施の形態の燃料電池システム100における燃料電池の運転方法について説明する。
図3は、本実施の形態の燃料電池システムによる燃料電池の運転方法を説明するためのフローチャートである。
図3に示すとおり、本実施の形態における燃料電池の運転方法では、まず、白金触媒が酸化される酸化領域において、燃料電池10の運転が継続されていることが検知される(ステップS101)。具体的には、たとえば、燃料電池10のセル電圧(またはカソード電位)が0.8V以上の値を維持している状態が所定時間以上継続しているか否かを判定することによって、酸化領域における燃料電池10の運転の継続が検知される。なお、酸化領域における燃料電池の運転が継続されている状態とは、たとえば、渋滞時に、燃料電池自動車が長時間アイドリング運転されている状態である。このような低負荷運転状態では、白金の酸化が進行して、セル電圧がゆっくりと低下する。
次に、燃料電池10の発電性能を回復させるために低下されるカソード電位を上昇させる際に、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される(ステップS102)。本実施の形態では、後続する処理において所定の回復電位(第1の電位)まで一時的に低下される燃料電池10のカソード電位を上昇させる際に、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される。カソード電位の上昇速度を切換えるか否かを判断する処理の詳細については後述する。
次に、カソード電位を低下させるために、燃料電池10から電流が取り出される(ステップS103)。本実施の形態では、制御部90が、負荷器70に指令信号を送信して負荷器70を作動させ、燃料電池10から電流を取り出させる。電流が取り出されることにより、燃料電池10のカソード電位が低下する。
次に、カソード電位がモニタリングされる(ステップS104)。本実施の形態では、燃料電池10の発電性能を回復するための電位として予め設定される回復電位(たとえば、0.6Vvs.RHE)まで、カソード電位が低下したことを検知するために、セル電圧からカソード電位が算出されてモニタリングされる。本実施の形態では、セル電圧からカソード電位を算出して直接的にモニタリングすることにより、燃料電池10のカソード電位を正確に制御する。ここで、セル電圧とカソード電位とは、次のような関係にある。
セル電圧=カソード電位−アノード電位−(電流i×内部抵抗R)
一般的に、アノード側の過電圧は無視できるほど小さいので、燃料電池10に電流が流れない状態であれば、カソード電位は、セル電圧と同じ値を示す。一方、燃料電池10に電流が流れる場合、電流検出部80によって電流iが検出され、抵抗検出部60で検出される燃料電池10の抵抗値を単セル11の積層数で割ることにより、一の単セル11の内部抵抗Rが算出される。そして、これらの値に基づいて、セル電圧からカソード電位が算出される。
一般的に、アノード側の過電圧は無視できるほど小さいので、燃料電池10に電流が流れない状態であれば、カソード電位は、セル電圧と同じ値を示す。一方、燃料電池10に電流が流れる場合、電流検出部80によって電流iが検出され、抵抗検出部60で検出される燃料電池10の抵抗値を単セル11の積層数で割ることにより、一の単セル11の内部抵抗Rが算出される。そして、これらの値に基づいて、セル電圧からカソード電位が算出される。
次に、回復電位までカソード電位が低下したか否かが判断される(ステップS105)。カソード電位が回復電位まで低下しない場合(ステップS105:NO)、カソード電位が回復電位に低下するまで待機する。カソード電位が回復電位まで低下されることにより、白金酸化物が還元されて、燃料電池10の発電性能が回復される。
一方、カソード電位が回復電位まで低下した場合(ステップS105:YES)、燃料電池10からの電流の取り出しが停止される(ステップS106)。本実施の形態では、制御部90が、負荷器70に指令信号を送信して負荷器70の作動を停止させることにより、燃料電池10からの電流の取り出しが停止される。電流の取り出しが停止されることにより、カソード電位は上昇する。
次に、ステップS102の処理結果にしたがって、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される(ステップS107)。カソード電位の上昇速度を切換えないと判断される場合(ステップS107:NO)、電流の取り出しが停止されたまま処理が終了される。その結果、カソード電位は、回復電位から目標電位(第2の電位)まで、当初の上昇速度(以下、第1の上昇速度と称する)で上昇する。
一方、カソード電位の上昇速度を切換えると判断される場合(ステップS107:YES)、カソード電位がモニタリングされる(ステップS108)。本実施の形態では、カソード電位の上昇速度を切換える時点を示す切換電位(第3の電位)までカソード電位が到達したことを検知するために、カソード電位が算出されてモニタリングされる。なお、カソード電位を算出する方法は、ステップS104に示す処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
次に、カソード電位が切換電位(たとえば、0.9Vvs.RHE)まで到達したか否かが判断される(ステップS109)。カソード電位が切換電位まで到達しない場合(ステップS109:NO)、カソード電位が切換電位に到達するまで待機する。一方、カソード電位が切換電位まで到達した場合(ステップS109:YES)、カソード電位の上昇速度が切換えられる(ステップS110)。本実施の形態では、制御部90が、負荷器70に指令信号を送信して、燃料電池10が負荷器70を作動させることにより、カソード電位の上昇速度を切換える。より具体的には、カソード電位が切換電位に到達した時点で燃料電池10から電流が取り出されることにより、カソード電位の上昇速度が第1の上昇速度から当該第1の上昇速度よりも遅い第2の上昇速度に切換えられる。
以上のとおり、図3に示すフローチャートの処理によれば、まず、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される。そして、判断結果に基づいてカソード電位が切換えられる。具体的には、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断される場合には、回復電位から目標電位まで第1の上昇速度でカソード電位が上昇される。一方、カソード電位の上昇速度を切換えると判断される場合には、カソード電位が切換電位まで第1の上昇速度で上昇されたのち、第1の上昇速度よりも遅い第2の上昇速度で上昇される。
次に、図4を参照して、図3のステップS102に示す切換判断処理について詳細に説明する。図4は、本実施の形態における切換判断処理を説明するためのフローチャートである。
図4に示すとおり、本実施の形態の切換判断処理では、まず、燃料電池10の温度が検出される(ステップS201)。本実施の形態では、温度検出部50によって燃料電池10の温度が検出される。温度検出部50は、たとえば、燃料電池10のガス排出口近傍に配置される単セル11の温度を検出する。また、温度検出部50は、セパレータとガス拡散層との間の温度、または、ガス拡散層と触媒層との間の温度を検出する。
次に、燃料電池10の含水量が検出される(ステップS202)。本実施の形態では、抵抗検出部60により燃料電池10の抵抗値が検出されて含水量が算出される。より具体的には、燃料電池10の抵抗値と含水量との関係を示す抵抗値−含水量変換テーブルが予め定められており、抵抗検出部60により検出される抵抗値に基づいて燃料電池10の含水量が算出される。なお、含水量が少ないほど、燃料電池10の抵抗値は大きくなる。
次に、燃料電池10が高温・高含水量状態であるか否かが判断される(ステップS203)。本実施の形態では、図5に示すような予め設定されている変換テーブルに基づいて、ステップS201,S202に示す処理で検出された温度および含水量から、燃料電池10が高温・高含水量状態であるか否かが判断される。
燃料電池10が高温・高含水量状態ではないと判断される場合(ステップS203:NO)、燃料電池10は劣化しにくい状態(第1の状態)であるとして、燃料電池10の発電性能が迅速に回復するように、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断される。一方、燃料電池10が高温・高含水量状態であると判断される場合(ステップS203:YES)、燃料電池10が劣化しやすい状態(第2の状態)であるとして、燃料電池の劣化抑制を優先しつつ発電性能が回復するように、上昇速度を切換えると判断される。
以上のとおり、図4に示すフローチャートの処理によれば、燃料電池10の温度および含水量に基づいて、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される。具体的には、燃料電池10が高温・高含水量状態にある場合には、燃料電池が劣化しやすい状態にあるとして、カソード電位の上昇速度を切換えると判断される。一方、燃料電池10が高温・高含水量状態にない場合には、燃料電池が劣化しにくい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断される。
そして、このように構成される本実施の形態における燃料電池の運転方法によれば、燃料電池10が高温・高含水量状態にない場合には、燃料電池10の発電性能が迅速に回復するように、カソード電位の上昇速度が切換えられることなく上昇される。一方、燃料電池10が高温・高含水量状態である場合には、燃料電池の劣化抑制を優先しつつ発電性能が回復するように、カソード電位が目標電位に到達するまでの時間が長くなるように上昇速度が切換えられる。
次に、図6を参照して、本実施の形態におけるカソード電位の変化について説明する。図6は、本実施の形態の燃料電池の発電性回復処理におけるカソード電位の時間変化を示す図である。図6の縦軸はカソード電位であり、横軸は時間である。
図6の実線は、カソード電位の上昇速度を切換える場合のカソード電位の変化を示し、破線は、カソード電位の上昇速度を切換えない場合のカソード電位の変化を示す。
図6の破線で示すとおり、カソード電位の上昇速度を切換えない場合、発電性能を回復させるために、回復電位(0.6Vvs.RHE)まで低下されたカソード電位は、第1の上昇速度で目標電位(0.95Vvs.RHE)まで上昇される。
一方、実線で示すとおり、カソード電位の上昇速度を切換える場合、カソード電位は、回復電位から切換電位(0.9Vvs.RHE)まで第1の上昇速度で上昇され、切換電位に到達した時点で上昇速度が切換えられ、目標電位まで第2の上昇速度で上昇される。
そして、このような構成によれば、燃料電池が劣化しやすい場合には、カソード電位が目標電位まで到達する時間が長くなるように、カソード電位の上昇速度を遅くすることにより、燃料電池の劣化が抑制される。
次に、図7を参照して、本実施の形態における燃料電池の運転方法による燃料電池の発電性能の回復および劣化抑制のメカニズムについて説明する。
図7は、本実施の形態における燃料電池の運転方法における白金の状態変化を説明するための図である。なお、図7では、燃料電池のカソード電位の上昇速度を切換えることなく目標電位まで上昇させる場合を比較例として示している。
図7(B)に示すとおり、比較例では、燃料電池の発電性能を回復させるために、燃料電池のカソード電位を0.6Vvs.RHE未満の電位まで低下させ、第1の上昇速度で目標電位まで上昇させる。この場合、白金酸化物(PtOx)が白金(Pt)に還元される現象に加えて、白金が白金イオン(Ptn+)にイオン化される現象が発生するものと考えられる。したがって、比較例では、触媒活性が回復されて燃料電池の発電性能が回復する一方で、白金の溶解および再凝集が促進され、触媒表面積が減少する。加えて、溶解した白金が電解質膜の内部で再析出することにより、電解質膜の劣化が引き起こされる。その結果、比較例では、燃料電池の発電性能が一時的に回復するものの、長期的には燃料電池の性能が低下する。
一方、図7(A)に示すとおり、本実施の形態における燃料電池の運転方法では、燃料電池のカソード電位を0.6Vvs.RHEまで低下させ、第1の上昇速度で切換電位まで上昇させたのち、第2の上昇速度で目標電位まで上昇させる。この場合、白金酸化物の一部が還元されるとともに、残りの白金酸化物(PtOx)が状態変化を起こし、白金表面に保護被膜として残留するものと考えられる。そして、状態変化を起こした白金酸化物(PtOx)によって、白金の溶解が抑制され、燃料電池の劣化が抑制されると考えられる。
以上のとおり、本実施の形態における燃料電池の運転方法によれば、燃料電池が劣化しやすい状態にある場合には、カソード電位が目標電位まで到達する時間が長くなるように、カソード電位の上昇速度が切換えられ、白金の溶解が抑制される。一方、燃料電池が劣化しにくい状態にある場合には、カソード電位が目標電位まで切換えられることなく上昇される。その結果、燃料電池の発電性能を回復するとともに、燃料電池の耐久性を向上することができる。
なお、上述した実施の形態では、燃料電池の温度および含水量に基づいて、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断された。しかしながら、燃料電池の温度のみからカソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断されてもよく、あるいは、燃料電池の含水量のみからカソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断されてもよい。
次に、図8を参照して、本実施の形態における燃料電池システム100を搭載した燃料電池自動車について説明する。
図8は、本実施の形態における燃料電池システムが搭載された燃料電池自動車を説明する図である。本実施の形態における燃料電池自動車200は、燃料電池システム100を駆動用電源として搭載している。燃料電池10によって生成される電力により自動車200のモータが駆動され、自動車200が走行する。上述したとおり、燃料電池自動車200が渋滞に巻き込まれ、燃料電池10の低負荷運転が長期間継続される場合であっても、上述した処理により燃料電池10の発電性能は維持される。そして、本実施の形態の燃料電池自動車200によれば、燃料電池10の耐久性が向上されるため、自動車200の信頼性が向上する。
以上のとおり、説明した本実施の形態は、以下の効果を奏する。
(a)本実施の形態の燃料電池システムは、低負荷運転されている燃料電池の発電性能を回復させるために燃料電池のカソード電位を低下させたのちにカソード電位を上昇させる際の、カソード電位の上昇速度が切換可能に構成されている。したがって、燃料電池の発電性能を回復させるために低下されたカソード電位を上昇させる際の上昇速度が変更されるため、白金酸化物を還元するとともに、白金の溶解を抑制ことができる。その結果、燃料電池の発電性能を回復させるとともに、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
(b)本実施の形態の燃料電池システムは、温度検出部、抵抗検出部、負荷器、および制御部を有する。温度検出部および抵抗検出部は、燃料電池の状態を検出する。制御部は、検出された燃料電池の状態に基づいて、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かを判断する。負荷器および制御部は、上昇速度を切換えないと判断される場合には、前記空気極電位を回復電位から目標電位まで第1の上昇速度で上昇させる一方で、上昇速度を切換えると判断される場合には、カソード電位を回復電位から切換電位まで第1の上昇速度で上昇させたのち、切換電位から目標電位まで第1の上昇速度よりも遅い第2の上昇速度で上昇させる。したがって、燃料電池の状態に応じてカソード電位が目標電位まで到達する時間を長くすることができるため、白金の溶解を確実に抑制することができる。
(c)燃料電池の状態は、第1の状態と、第1の状態よりも燃料電池が劣化しやすい第2の状態とに分類され、制御部は、燃料電池が第2の状態である場合、カソード電位の上昇速度を切換えると判断する。したがって、燃料電池が劣化しやすい状態である場合、燃料電池の劣化抑制を優先して発電性能が回復されるため、燃料電池の耐久性を確実に向上させることができる。
(d)制御部は、燃料電池の温度が所定温度以上の場合、燃料電池が劣化しやすい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えると判断する。したがって、燃料電池の温度を検出することにより、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
(e)制御部は、燃料電池の含水量が所定含水量以上の場合、燃料電池が劣化しやすい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えると判断する。したがって、燃料電池の含水量を検出することにより、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
(f)本実施の形態の燃料電池自動車は、上記燃料電池システムを駆動用電源として搭載している。したがって、燃料電池の耐久性が向上するため、燃料電池自動車の信頼性が向上する。
(g)本実施の形態における燃料電池の運転方法は、低負荷運転されている燃料電池の発電性能を回復させるために燃料電池のカソード電位を低下させたのちにカソード電位を上昇させる際の、カソード電位の上昇速度を切換えることができる。したがって、燃料電池の発電性能を回復させるために低下されたカソード電位を上昇させる際の上昇速度が変更されるため、白金酸化物を還元するとともに、白金の溶解を抑制ことができる。その結果、燃料電池の発電性能を回復させるとともに、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、燃料電池の温度および含水量からカソード電位の上昇速度を切換えるか否かを判断した。本実施の形態は、燃料電池のカソード電位の履歴から上昇速度を切換えるか否かを判断する。
第1の実施の形態では、燃料電池の温度および含水量からカソード電位の上昇速度を切換えるか否かを判断した。本実施の形態は、燃料電池のカソード電位の履歴から上昇速度を切換えるか否かを判断する。
図9は、本発明の第2の実施の形態における切換判断処理を説明するためのフローチャートである。なお、切換判断処理を除いては、本実施の形態の燃料電池システムの構成は、第1の実施の形態における構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図9に示すとおり、本実施の形態の切換判断処理では、まず、燃料電池10のカソード電位の履歴が取得される(ステップS301)。本実施の形態では、燃料電池10のカソード電位の履歴が記憶部(不図示)に記憶されており、処理開始時点から所定時間前までのカソード電位の履歴データが取得される。
次に、カソード電位の履歴データにおいて、カソード電位が所定値以下になった期間があるか否かが判断される(ステップS302)。ここで、所定値とは、燃料電池10が高負荷運転状態であることを判定するための電位である。カソード電位が所定値以下になった期間がない場合(ステップS302:NO)、ステップS305以下の処理に移行する。一方、カソード電位が所定値以下になった期間がある場合(ステップS302:YES)、カソード電位が所定値以下になった期間が所定時間以上であるか否かが判断される(ステップS303)。
カソード電位が所定値以下になった期間が所定時間未満の場合(ステップS303:NO)、ステップS305以下の処理に移行する。一方、カソード電位が所定値以下になった期間が所定時間以上の場合(ステップS303:YES)、燃料電池10は劣化しやすい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えると判断され(ステップS304)、処理が終了される。
一方、カソード電位が所定値以下になった期間がない場合(ステップS302:NO)、または所定値以下になった期間が所定時間(たとえば、1時間)未満の場合(ステップS303:NO)、カソード電位が所定の電位幅以上変動した箇所があるか否かが判断される(ステップS305)。ここで、所定の電位幅とは、燃料電池の運転状態が高負荷運転状態から低負荷運転状態まで、または低負荷運転状態から高負荷運転状態まで大きく変化したことを判定するための電位幅である。カソード電位が所定の電位幅以上変動した箇所がない場合(ステップS305:NO)、燃料電池10は劣化しにくい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断され(ステップS306)、処理が終了される。
一方、カソード電位が所定の電位幅以上変動した箇所がある場合(ステップS305:YES)、カソード電位の履歴データにおいて、カソード電位が所定の電位幅以上変動した箇所の数が所定数以上か否かが判断される(ステップS307)。カソード電位が所定の電位幅以上変動した箇所の数が所定数以上の場合(ステップS307:YES)、燃料電池10は劣化しやすい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えると判断され(ステップS304)、処理が終了される。一方、カソード電位が所定の電位幅以上変動した箇所の数が所定数未満の場合(ステップS307:NO)、燃料電池10は劣化しにくい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断され(ステップS306)、処理が終了される。
以上のとおり、図9に示すフローチャートの処理によれば、燃料電池10のカソード電位の履歴に基づいて、燃料電池のカソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される。具体的には、燃料電池のカソード電位が所定電位以下である期間が所定時間未満の場合、またはカソード電位の所定の電位幅以上の変動回数が所定回数未満の場合、燃料電池の発電性能が迅速に回復するように、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断される。一方、燃料電池のカソード電位が所定値以下である期間が所定時間以上の場合、またはカソード電位の所定の電位幅以上の変動回数が所定回数以上の場合、燃料電池の劣化抑制を優先しつつ燃料電池の発電性能が回復するように、カソード電位の上昇速度を切換えると判断される。
以上のとおり、説明した本実施の形態は、第1の実施の形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(h)制御部は、燃料電池のカソード電位が所定電位以下である期間が所定期間以上の場合、またはカソード電位の所定電位幅以上の変動回数が所定回数以上の場合、燃料電池が劣化しやすいであるとして、カソード電位の上昇速度を切換えると判断する。したがって、燃料電池のカソード電位の履歴を検出することにより、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、燃料電池が搭載された燃料電池自動車のアクセル開度の履歴からカソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される実施の形態である。
本実施の形態は、燃料電池が搭載された燃料電池自動車のアクセル開度の履歴からカソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される実施の形態である。
図10は、本発明の第3の実施の形態における切換判断処理を説明するためのフローチャートである。なお、切換判断処理を除いては、本実施の形態の燃料電池システムの構成は、第1の実施の形態における構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図10に示すとおり、本実施の形態の切換判断処理では、まず、燃料電池自動車200のアクセル開度の履歴が取得される(ステップS401)。本実施の形態では、燃料電池自動車200のアクセル開度の履歴が記憶部(不図示)に記憶されており、処理開始時点から所定時間前までのアクセル開度の履歴データが取得される。
次に、アクセル開度の履歴データにおいて、アクセル開度が所定値以上になった期間があるか否かが判断される(ステップS402)。ここで、所定値とは、燃料電池が高負荷運転状態であることを判定するためのアクセル開度である。アクセル開度が所定値以上になった期間がない場合(ステップS402:NO)、燃料電池10は劣化しにくい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断され(ステップS403)、処理が終了される。
一方、アクセル開度が所定値以上になった期間がある場合(ステップS402:YES)、アクセル開度が所定値以上になった期間が所定時間以上か否かが判断される(ステップS404)。アクセル開度が所定値以上になった期間が所定時間未満である場合(ステップS404:NO)、燃料電池10は劣化しにくい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断され(ステップS403)、処理が終了される。
アクセル開度が所定値以上になった期間が所定時間以上の場合(ステップS404:YES)、燃料電池10が劣化しやすい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断され(ステップS405)、処理が終了される。
以上のとおり、図10に示すフローチャートの処理によれば、燃料電池10を搭載する燃料電池自動車200のアクセル開度に基づいて、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かが判断される。より具体的には、燃料電池のアクセル開度が所定値以上である期間が所定時間未満の場合、燃料電池の発電性能が迅速に回復するように、カソード電位の上昇速度を切換えないと判断される。一方、燃料電池のアクセル開度が所定値以上である期間が所定時間以上の場合、燃料電池の劣化抑制を優先しつつ燃料電池の発電性能が回復するように、カソード電位の上昇速度を切換えると判断される。そして、このような構成の燃料電池の運転方法によれば、燃料電池の状態に応じてカソード電位の上昇速度が切換えられることにより、燃料電池の発電性能を回復させるとともに、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
以上のとおり、説明した本実施の形態は、第1および第2の実施の形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(i)制御部は、アクセル開度が所定値以上である期間が所定期間以上の場合、燃料電池が劣化しやすい状態であるとして、カソード電位の上昇速度を切換えると判断する。したがって、燃料電池自動車のアクセル開度の履歴を検出することにより、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
以上のとおり、説明した第1〜第3の実施の形態において、本発明の燃料電池システム、燃料電池の運転方法、および燃料電池自動車を説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
たとえば、上述した第1〜第3の実施の形態では、燃料電池の状態に基づいて、カソード電位の上昇速度を切換えるか否かを判断した。しかしながら、カソード電位の上昇速度を切換える判断は、切換えるか否かに限定されることなく、燃料電池の状態に応じて切換電位が変更されてもよい。この場合、燃料電池が劣化しやすい状態であるほど、切換電位が低くなるように変更される。
また、上述した第1〜第3の実施の形態では、燃料電池から電流を取り出すことにより、燃料電池のカソード電位を目標電位まで低下させた。しかしながら、燃料電池のカソード電位を低下させる手法としては、カソードガスの供給停止、フラッディング(Flooding)、還元剤の供給、アノードとカソードとの短絡、またはカソードガスの減圧などの種々の方法を用いることができる。フラッディング処理では、燃料電池の温度を低下させたり、高加湿ガスを供給したり、液水を供給したりすることによりガスが流れない状態を作り出し、カソード電位を低下させる。還元剤の供給処理では、水素、過酸化水素、ヒドラジン、アスコルビン酸、クエン酸などの酸化剤を含むガスを燃料電池に供給することによりカソード電位を低下させる。
以下、実施例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、本実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、本発明の燃料電池の運転方法による燃料電池の耐久性向上効果を調べるために、カソード電位の上昇速度を切換えつつカソード電位を繰り返し変化させ、時間の経過にともなう触媒表面積(Normalized ECA)の変化を測定した。
(比較例)
比較例では、燃料電池のカソード電位を0.95Vvs.RHEから0.6Vvs.RHEまで低下させ、上昇速度を切換えることなくカソード電位を0.6Vvs.RHEから0.9Vvs.RHEまで第1の上昇速度で上昇させる処理を繰り返した。
比較例では、燃料電池のカソード電位を0.95Vvs.RHEから0.6Vvs.RHEまで低下させ、上昇速度を切換えることなくカソード電位を0.6Vvs.RHEから0.9Vvs.RHEまで第1の上昇速度で上昇させる処理を繰り返した。
(実施例)
実施例では、図11に示すとおり、燃料電池のカソード電位を0.9Vvs.RHEから0.6Vvs.RHEまで低下させ、0.6Vvs.RHEから0.9Vvs.RHEまで上昇させる処理において、種々の切換電位でカソード電位の上昇速度を切換えた。具体的には、切替電位を0.6Vvs.RHE、0.75Vvs.RHE、0.8Vvs.RHE、0.85Vvs.RHE、および0.9Vvs.RHEに設定し、各切換電位においてカソード電位の第1の上昇速度から第2の上昇速度に切換える処理を繰り返した。測定結果を図12に示す。
実施例では、図11に示すとおり、燃料電池のカソード電位を0.9Vvs.RHEから0.6Vvs.RHEまで低下させ、0.6Vvs.RHEから0.9Vvs.RHEまで上昇させる処理において、種々の切換電位でカソード電位の上昇速度を切換えた。具体的には、切替電位を0.6Vvs.RHE、0.75Vvs.RHE、0.8Vvs.RHE、0.85Vvs.RHE、および0.9Vvs.RHEに設定し、各切換電位においてカソード電位の第1の上昇速度から第2の上昇速度に切換える処理を繰り返した。測定結果を図12に示す。
図12(A)は、カソード電位の上昇速度の切替電位と燃料電池の触媒表面積との関係を示す図であり、図12(B)は、図12(A)に示される上昇速度の各切換電位に対して、触媒表面積の減少割合の係数値をプロットした図である。図12(A)の縦軸は触媒表面積であり、横軸はサイクル数である。図12(B)の縦軸は速度係数であり、横軸は切換電位である。
図12(A)を参照すれば、カソード電位を変化させる処理が繰り返されることにより、時間の経過にともなって触媒表面積が減少することが分かる。
また、図12(A)および図12(B)を参照すれば、カソード電位の上昇速度を切換えない比較例(図12の△)の方が、カソード電位の上昇速度を種々の切換電位で切換える実施例と比較して、触媒表面積の減少が大きいことが分かる。言い換えれば、0.6Vvs.RHEから0.95Vvs.RHEまでカソード電位を上昇させる時間が長くなるように、カソード電位の上昇速度を切換えることにより、燃料電池の劣化が抑制されることが分かる。たとえば、カソード電位の上昇速度を0.9Vvs.RHEで切換える場合には、カソード電位の上昇速度を切換えない場合よりも触媒表面積の減少が10%程度抑制されることが分かる。
したがって、燃料電池の発電性能を回復させる処理において低下されたカソード電位の上昇速度を切換えることにより、燃料電池の耐久性が向上されることが確認された。
10 燃料電池、
20 燃料タンク、
30 コンプレッサ、
40 電圧検出部、
50 温度検出部(状態検出手段)、
60 抵抗検出部(状態検出手段)、
70 負荷器(速度制御手段)、
80 電流検出部、
90 制御部(判断手段および速度制御手段)、
100 燃料電池システム、
200 燃料電池自動車。
20 燃料タンク、
30 コンプレッサ、
40 電圧検出部、
50 温度検出部(状態検出手段)、
60 抵抗検出部(状態検出手段)、
70 負荷器(速度制御手段)、
80 電流検出部、
90 制御部(判断手段および速度制御手段)、
100 燃料電池システム、
200 燃料電池自動車。
Claims (9)
- 電極触媒として白金を含む燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
低負荷運転されている燃料電池の発電性能を回復させるために当該燃料電池の空気極電位を低下させたのちに前記空気極電位を上昇させる際の、前記空気極電位の上昇速度が切換可能に構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 前記燃料電池システムは、
前記燃料電池の状態を検出する状態検出手段と、
前記検出された燃料電池の状態に基づいて、前記空気極電位の上昇速度を切換えるか否かを判断する判断手段と、
前記上昇速度を切換えないと判断される場合には、前記空気極電位を第1の電位から第2の電位まで第1の上昇速度で上昇させる一方で、前記上昇速度を切換えると判断される場合には、前記空気極電位を前記第1の電位から第3の電位まで前記第1の上昇速度で上昇させたのち、前記第3の電位から前記第2の電位まで前記第1の上昇速度よりも遅い第2の上昇速度で上昇させる速度制御手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池の状態は、第1の状態と、前記第1の状態よりも燃料電池が劣化しやすい第2の状態とに分類され、
前記判断手段は、前記燃料電池が第2の状態である場合、前記空気極電位の上昇速度を切換えると判断することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。 - 前記状態検出手段は、前記燃料電池の温度を検出する温度検出手段を有し、
前記判断手段は、前記燃料電池の温度が所定温度以上の場合、前記燃料電池が前記第2の状態であるとして、前記空気極電位の上昇速度を切換えると判断することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。 - 前記状態検出手段は、前記燃料電池の含水量を検出する含水量検出手段を有し、
前記判断手段は、前記燃料電池の含水量が所定含水量以上の場合、前記燃料電池が前記第2の状態であるとして、前記空気極電位の上昇速度を切換えると判断することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。 - 前記状態検出手段は、前記燃料電池の空気極電位の履歴を検出する電位履歴検出手段を有し、
前記判断手段は、前記燃料電池の空気極電位が所定電位以下である期間が所定期間以上の場合、または前記空気極電位の所定電位幅以上の変動回数が所定回数以上の場合、前記燃料電池が前記第2の状態であるとして、前記空気極電位の上昇速度を切換えると判断することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。 - 前記状態検出手段は、前記燃料電池が搭載された燃料電池自動車のアクセル開度の履歴を検出するアクセル開度履歴検出手段を有し、
前記判断手段は、前記アクセル開度が所定値以上である期間が所定期間以上の場合、前記燃料電池が前記第2の状態であるとして、前記空気極電位の上昇速度を切換えると判断することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池システムを駆動用電源として搭載したことを特徴とする燃料電池自動車。
- 電極触媒として白金を含む燃料電池の運転方法であって、
低負荷運転されている燃料電池の発電性能を回復させるために当該燃料電池の空気極電位を低下させたのちに、低下された前記空気極電位を切換可能な上昇速度で上昇させることを特徴とする燃料電池の運転方法。
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JP2008200631A JP2010040285A (ja) | 2008-08-04 | 2008-08-04 | 燃料電池システム、燃料電池の運転方法、および燃料電池自動車 |
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JP2008200631A JP2010040285A (ja) | 2008-08-04 | 2008-08-04 | 燃料電池システム、燃料電池の運転方法、および燃料電池自動車 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2008
- 2008-08-04 JP JP2008200631A patent/JP2010040285A/ja active Pending
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