JP2010034489A - 膜状太陽電池及び太陽電池パネル - Google Patents

膜状太陽電池及び太陽電池パネル Download PDF

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Abstract

【課題】建材用途に使用できる新たな薄膜太陽電池を提供する。
【解決手段】第一金属シート2と、第一金属シート2の表面に直接形成された第一電極層3と、光を受けて発電する発電層4と、第二電極層5とをこの順に設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、膜状の太陽電池及びそれを備えた太陽電池パネルに関するものである。
近年、電力用太陽電池の開発が進み、住宅等の屋根に太陽電池を取り付けて電力をまかなう技術が普及してきている。また、太陽電池の他の用途として、ビル、公共施設等へ太陽電池を適用し、太陽光発電を行う試みも活発になっている。
このような用途に用いる建材として、特許文献1には、アルミ積層板の上に薄膜太陽電池を積層した技術が記載されている。
特開2002−151718号公報
しかしながら、特許文献1記載のような従来の技術では、軽量化及びデザイン性などの観点で改良の余地があった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、建材用途に使用できる新たな膜状太陽電池及び太陽電池パネルを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、第二金属シートと、芯材層と、第一金属シートと、第一電極層と、発電層と、第二電極層とをこの順に備えた太陽電池パネルにおいて、第一金属シートと第一電極層とを直に接するように形成するか、第一金属シートと第一電極層との間に真空中で形成しうる中間層を設けることにより、建材用途に使用できる新たな太陽電池パネルを提供できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、第一金属シートと、該第一金属シートの表面に直接形成された第一電極層と、光を受けて発電する発電層と、第二電極層とをこの順に備えることを特徴とする膜状太陽電池に存する(請求項1)。
本発明の別の要旨は、第一金属シートと、真空中で形成しうる中間層と、第一電極層と、光を受けて発電する発電層と、第二電極層とをこの順に備えることを特徴とする膜状太陽電池に存する(請求項2)。
このとき、該中間層は無機層であることが好ましい(請求項3)。
また、該第二電極上には保護フィルム層を備えることが好ましい(請求項4)。
本発明の更に別の要旨は、第二金属シートと、樹脂を含んでなる芯材層と、本発明の膜状太陽電池とを、該第二金属シート、該芯材層、該第一金属シート、該第一電極層、該発電層及び該第二電極層がこの順になるように備えることを特徴とする太陽電池パネルに存する(請求項5)。
本発明の膜状太陽電池によれば、本発明の太陽電池パネルを容易に製造できる。
本発明の太陽電池パネルによれば、建材用途に使用できる新たな太陽電池パネルを提供することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[I.第一実施形態]
[1.膜状太陽電池]
図1は本発明の第一実施形態に係る膜状太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の膜状太陽電池1は、少なくとも、第一金属シート2と、第一金属シート2の表面に直接形成された第一電極層3と、光を受けて発電する発電層4と、第二電極層5とをこの順に備える。この場合、第一電極層3、発電層4及び第二電極層5が太陽電池素子6を構成することになる。また、通常は膜状太陽電池1には保護フィルム層7が設けられる。
[1−1.第一金属シート2]
第一金属シート2は、金属で形成されたシートである。第一金属シート2は、1種の金属から形成される純金属シートであってもよく、2種以上の金属の合金から形成される合金シートであってもよい。
第一金属シート2の材料となる金属の種類に制限は無いが、軽量化が容易であり、延性及び展性が高いため強度が高く、更に耐食性に優れている点から、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
また、第一金属シート2をアルミニウム又はアルミニウム合金で形成する場合には、第一金属シート2の表面に酸化被膜を形成されてもよい。これにより、耐食性を向上させることができる。
第一金属シート2の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上であり、また、通常1.0mm以下、好ましくは0.8mm以下である。厚さが薄すぎると強度が低くなりすぎる可能性があり、厚すぎると重量が大きくなりすぎる可能性がある。
[1−2.第一電極層3]
第一電極層3は、第一金属シート2の表面に直接形成された電極層である。即ち、第一金属シート2と第一電極層3とは、間に他の層を介することなく直に接して形成されている。この際、第一金属シート2と第一電極層3との間には部分的であれば他の層が形成されていてもよいが、そのような他の層は形成されていない方が好ましい。
このように第一金属シート2の表面に直接に第一電極層3を形成することで、膜状太陽電池1の厚さを薄くすることができ、ひいては膜状太陽電池1及び後述する太陽電池パネル8の軽量化を更に進めることができる。
第一電極層3は、導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。第一電極層3の材料の例を挙げると、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。
なお、第一電極層3の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
中でも、第一電極層3の材料としては銀又はアルミニウムが好ましい。銀及びアルミニウムは光を高い反射率で反射できるので、第一電極層3を反射層として機能させることができるからである。これにより、発電層4で吸収されずに透過して第一電極層3まで到達した光を反射層4に向けて反射させ、この光を発電層4で再度吸収される機会を作ることができ、発電効率を高めることが可能となるからである。
また、第一電極層3を可視光が透過しうるよう、第一電極層3を透明な材料で形成することも好ましい。これにより、図1中上方から見た観察者が第一金属シート2を視認できるようになり、デザイン性を高めることが可能となるからである。このような透明の材料の例を挙げると、ITO、SnO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物などが挙げられる。また、他の材料であっても、非常に薄く形成すれば第一電極層3を可視光が透過することは可能である。なお、第一電極層3を透明にした場合には発電層4で吸収されずに透過した光は第一電極層3をも透過する可能性があるが、本実施形態では第一電極層3の下層として第一金属シート2が形成されているため、第一金属シート2が反射層として機能し発電効率が低下することを防止できる。
第一電極層3は光吸収により生じた正孔及び/又は電子を捕集する機能を有するものである。したがって、この観点からは、第一電極層3には正孔及び/又は電子を捕集するのに適した電極材料を用いることが好ましい。正孔の捕集に適した電極の材料の例を挙げるとAu、ITO等の高い仕事関数を有する材料が挙げられる。一方、電子の捕集に適した電極の材料の例を挙げるとAlのような低い仕事関数を有する材料が挙げられる。
第一電極層3の厚さは、通常0.6μm以上、好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1μm以上である。第一電極層3の厚さが薄すぎるとクラックが生じる可能性がある。
なお、第一電極層3の形成方法に制限はない。例えば、真空蒸着、スパッタリング等のドライプロセスにより形成することができる。また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。
また、第一電極層3は、表面処理により特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
[1−3.発電層4]
発電層4は、光を受けて発電する層である。即ち、発電層4では照射された光を吸収して正孔及び/又は電子を生成し、この正孔及び/又は電子を第一電極層3及び第二電極層5から取り出すことで太陽電池素子6が機能するようになっている。
発電層4の構成に制限はなく、太陽電池素子6から電気を取り出すことができれば任意の層を適用できる。また、発電層4は1層のみからなる単層構造としてもよく、2層以上の層を備える積層構造としてもよい。
発電層4の例としては、多結晶シリコン系発電層、アモルファスシリコン系発電層などが挙げられる。発電層4として多結晶シリコン系発電層を形成すれば太陽電池素子6は多結晶シリコン太陽電池素子として機能し、発電層4としてアモルファスシリコン系発電層を形成すれば太陽電池素子6はアモルファスシリコン系太陽電池素子として機能する。また、発電層4として例えば酸化チタン層及び電解質層などからなる色素増感型発電層を形成し、太陽電池素子6を色素増感型太陽電池素子として機能させるようにしてもよい。
しかし、多結晶シリコン太陽電池素子は間接光学遷移を利用したタイプの太陽電池素子
である。このため多結晶シリコン太陽電池素子では発電層4の表面に凸凹構造を形成する等、十分な光閉じ込め構造を設けて光吸収を増加させることが要求される。さらに、多結晶シリコン太陽電池素子においては、高品質薄膜作製プロセスを低温化させることも要求される。このため、多結晶シリコン太陽電池素子はコストが高くなる傾向がある。
また、アモルファスシリコン系太陽電池素子は、結晶シリコンにおける間接光学遷移が構造乱れのために直接遷移となったものであり、可視域での光学吸収係数が大きく、厚さ1μm程度の薄膜でも太陽光を十分に吸収できる長所を有する。しかし、アモルファスシリコン系太陽電池素子は光吸収により発生した電子、正孔等のキャリアの移動度が構造乱れのために低い。また、シリコンの未結合手はキャリアの再結合中心となるが、アモルファスシリコン系太陽電池素子では未結合手欠陥の密度が高いため、キャリアの寿命が短い。さらに、アモルファスシリコン系太陽電池素子は長期間の光照射により劣化する可能性がある。具体的には、アモルファスシリコン系太陽電池素子は光照射により前記欠陥の密度がさらに増加する現象(即ち、光劣化現象)を示すため、初期光電変換効率が10%程度と単結晶シリコン太陽電池の効率を下回るとともに、光照射により(飽和はするものの)光電変換効率が8%程度まで低下する傾向がある。
さらに、色素増感型太陽電池素子は、液漏れ及び光照射により劣化する可能性がある。
そこで、本実施形態の膜状太陽電池1においては、発電層4として、化合物半導体系発電層;有機発電層などを形成することが好ましい。また、化合物半導体発電層のなかでも例えばS、Se、Teなどカルコゲン元素を含むカルコゲナイド系発電層が好ましく、なかでもI−III−VI族半導体系(カルコパイライト系)発電層が好ましく、特にI族元素としてCuを用いたCu−III−VI族半導体系発電層が、Si結晶型太陽電池より理論的に高い光電変換効率を有し好ましい。発電層4として化合物半導体系発電層を形成すれば太陽電池素子6は化合物半導体系太陽電池素子として機能し、発電層4としてカルコゲナイド系発電層を形成すれば太陽電池素子6はカルコゲナイド系太陽電池素子として機能し、発電層4としてI−III−VI族半導体系(カルコパイライト系)発電層を形成すれば太陽電池素子6はI−III−VI族半導体系(カルコパイライト系)太陽電池素子として機能し、発電層4としてCu−III−VI族半導体系発電層を形成すれば太陽電池素子6はCu−III−VI族半導体系太陽電池素子として機能し、発電層4として有機発電層を形成すれば太陽電池素子6は有機太陽電池素子として機能する。
〔Cu−III−VI族半導体系発電層〕
Cu−III−VI族半導体系発電層は、構成材料としてCu−III−VI族半導体を有する発電層をいう。Cu−III−VI族半導体とは、CuとIII族元素とVI族元素が1:1:2の割合で含まれる化合物からなる半導体を言い、例えばCuInSe、CuGaSe、Cu(In1−xGa)Se、CuInS、CuGaS、Cu(In1−xGa)S、CuInTe、CuGaTe、Cu(In1−xGa)Teなどが挙げられる。なお、これらは1種で用いてもよく、2種以上の混合物であってもよい。中でも特に、CIS系発電層及びCIGS系発電層が好ましい。
CIS系発電層とは、構成材料としてCIS系半導体を有する発電層をいい、CIS系半導体とは、CuIn(Se1−yのことをいう。なお、yは0以上1以下の数を表す。すなわち、CuInSe、CuInS、又はこれらが混合状態にあるもののことをいう。Seに代えてSを用いると安全性が高まり好ましい。
また、CIGS系発電層とは、構成材料としてCIGS系半導体を有する発電層をいう。ここでCIGS系半導体とは、Cu(In1−xGa)(Se1−yのことをいう。なお、xは0より大きく1未満の数を、yは0以上1以下の数をそれぞれ表す。またCu(In1−xGa)Seは、通常、CuInSeとCuGaSeとの混晶となっている。尚、xの範囲は、通常は0より大きく、好ましくは0.05より大きく
、より好ましくは0.1より大きく、また、通常0.8未満、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4未満である。
前記のCu−III−VI族半導体は通常はp型半導体として機能する。ここでp型及びn型の半導体について説明する。半導体においては、電荷を輸送するキャリアは電子と正孔の2種類存在し、その密度の大きいほうが多数キャリアと呼ばれる。多数キャリアは、通常は半導体の種類やドーピング状態によって決定される。また、半導体のタイプとしては、多数キャリアが、電子であるものはn型、正孔であるものはp型、つり合っているものはi型と呼ばれる。
ただし、p型、n型は半導体の種類により絶対的に決まるものではない。例えば、同じ型の半導体を組み合わせても、そのエネルギー準位(HOMO準位、LUMO準位、フェルミ準位)やドーピング状態の関係で、一方がp型、もう一方がn型として動作することもある。
Cu−III−VI族半導体が示す半導体特性の程度は、キャリア移動度の値では、通常10−7cm/Vs以上、好ましくは10−5cm/Vs以上である。電気伝導度はキャリア移動度×キャリア密度で定義されるため、ある程度の大きさのキャリア移動度を有する材料であれば、例えば熱、ドーピング、電極からの注入などによりキャリアが当該材料内に存在すれば、その材料は電荷を輸送することができるのである。なお、半導体のキャリア移動度は大きいほど望ましい。
Cu−III−VI族半導体系発電層は、通常、少なくとも光吸収層とバッファ層とを備えて構成される。このような構成の太陽電池素子では、光吸収層において光が吸収されて電気が発生し、発生した電気が電極から取り出されるようになっている。
・光吸収層
光吸収層は、上述したCu−III−VI族半導体を含有する層である。通常、Cu−III−VI族半導体はp型半導体として機能するため、後述するバッファ層をn型半導体で形成することにより、光を吸収して電気を発生させることが可能となっている。なお、Cu−III−VI族半導体は1種で形成してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、CIS系半導体とCIGS系半導体とを組み合わせても良い。
通常は光吸収層はCu−III−VI族半導体のみにより形成するが、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分を含有していても良い。例えば、Ag等の添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は1種を含んでいてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含んでいても良い。
光吸収層の形成方法に制限は無い。例えば、真空蒸着、スパッタリング等により形成することができる。
さらに、光吸収層は通常1層のみを形成するが、2層以上積層してもよい。
・バッファ層
バッファ層は、光吸収層と接するように積層される層であり、光吸収層が有する半導体がp型であればn型半導体により形成され、光吸収層が有する半導体がn型であればp型半導体により形成される。通常、Cu−III−VI族半導体はp型半導体であるので、Cu−III−VI族半導体系太陽電池素子においてバッファ層はn型半導体により形成される。
バッファ層を形成する半導体の具体例を挙げると、CdS、Zn1−xMgO(0<x<0.8)、ZnS(O,OH)、InSなどが挙げられる。また、前述のCuInS
は作製条件により化学量論比からずれた組成とすることでn型半導体層としても形成可能であるため、これをバッファ層としてもよい。なお、バッファ層を形成する半導体は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、通常はバッファ層は半導体のみにより形成するが、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分を含有していても良い。なお、その他の成分は1種を含んでいてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含んでいても良い。
バッファ層の形成方法に制限は無い。例えば、真空蒸着、スパッタリング等により形成することができる。
さらに、バッファ層は通常1層のみを形成するが、2層以上積層してもよい。
〔有機発電層〕
有機発電層は、構成材料として有機半導体を有する発電層である。この際、有機発電層に含まれる半導体のうち少なくとも1種、好ましくは全てとして有機半導体を用いる。このような構成の太陽電池素子では、有機発電層において光が吸収されて電気が発生し、発生した電気が第一電極層3及び第二電極層5から取り出されるようになっている。
有機半導体としては、例えば、ナフタレン(或いはペリレン)テトラカルボン酸ジイミド、フラーレン(C60)およびその誘導体等が挙げられる。
また、例えば、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリアニリン等の共役高分子;アルキル置換されたオリゴチオフェン等の高分子半導体も挙げられる。これらは、有機溶媒に可溶な半導体であり、有機太陽電池素子の製造プロセスにおいて塗布法を使用できるため、好ましい。
さらに、例えば、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の、芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;銅フタロシアニン、パーフルオロ銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物、テトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属塩等の大環状化合物なども挙げられる。その他、国際公開第2007/126102号パンフレットに記載のものも使用できる。
なお、有機半導体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
少なくともp型の半導体及びn型の半導体が含有されていれば、有機発電層の具体的な構成は任意である。例えば、n型の半導体とp型の半導体とを別々の層に含有させるようにしても良く、n型の半導体とp型の半導体とを同じ層に含有させても良い。また、n型の半導体及びp型の半導体は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
有機半導体は種類や使用状態に応じてp型、n型、i型のいずれかとして機能する。ただし、p型、n型は有機半導体の種類により絶対的に決まるものではない。上述のように、例えば、同じ型の半導体を組み合わせても、そのエネルギー準位(HOMO準位、LUMO準位、フェルミ準位)やドーピング状態の関係で、一方がp型、もう一方がn型として動作することもある。
なお、有機半導体が示す半導体特性の程度は、Cu−III−VI族半導体と同じ程度であることが好ましい。
有機半導体は、通常、粒子状、ファイバー状等の凝集状態で存在する。この際、半導体の粒径は、通常2nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。有機発電層においてはこのような小粒径の粒子を層内で良好に分散させることが可能であり、特に、国際公開第2007/126102号パンフレット等に記載されたように、潜在顔料を用いて製造する場合においては特に良好に分散させることが可能である。
潜在顔料とは、顔料の化学構造の異なる前駆体のことをいう。潜在顔料に対して例えば加熱や光照射等の外的な刺激を与えることにより、潜在顔料の化学構造は変化し、顔料に変換されるものである。
また、潜在顔料は、成膜性に優れるものが好ましい。成膜性が良好でない顔料であっても、潜在顔料の状態で成膜してから顔料に変換することにより、成膜時のコストを抑制することができるからである。特に、塗布プロセスを適用できるようにするためには、当該潜在顔料自体が液状で塗布可能であるか、当該潜在顔料が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲を挙げると、潜在顔料の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
さらに、潜在顔料は、容易に顔料に変換できることが好ましい。潜在顔料から顔料への変換工程において、どのような外的な刺激を潜在顔料に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理、光照射などを行なう。
また、潜在顔料は、変換工程を経て、高い収率で顔料に変換されることが好ましい。この際、潜在顔料から変換して得られる顔料の収率は有機光電変換素子の性能を著しく損なわない限り任意である。収率の好適な範囲を挙げると、潜在顔料から得られる顔料の収率は高いほど好ましく、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。
潜在顔料を変換して得られる有機半導体は、通常、一般的な溶媒への溶解度は小さい化合物である。ここで、一般的な溶媒への溶解度が小さいとは、例えば、トルエンに対する溶解度が、通常1%以下、好ましくは0.1%以下であることをいう。
さらに、通常は有機発電層は半導体のみにより形成するが、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分を含有していても良い。なお、その他の成分は1種を含んでいてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含んでいても良い。
有機発電層においては、p型半導体とn型半導体とが相分離して、有機発電層が相分離構造を有していることが好ましい。有機発電層が相分離構造を有している場合には、光照射によりキャリア分離が起こり、正孔と電子とが生じた後で、それらが再結合することなく電極にたどりつく確率を高くすることが期待できるからである。このような相分離構造は、半導体として有機半導体と無機半導体とを組み合わせて用いた場合に好適に実現できる。
なお、相分離構造とは、相を構成する材料(例えば、半導体等)が分子レベルで均一に混合しておらず、それぞれの材料が凝集状態をとっている構造であり、その凝集状態の間に界面を有するものである。この相分離構造は、光学顕微鏡、あるいは電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)等の局所的な構造を調べる手法で観察したり、X線回折で、凝集部分に由来する回折を観察したりして確認することができる。
有機発電層の具体的な構成は、そのタイプにより様々である。有機発電層の構成の例を挙げると、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型などが挙げられる。
バルクヘテロ接合型は、単一の有機発電層内に、p型の半導体とn型の半導体とを含んで構成されている。そして、p型の半導体とn型の半導体とが相分離した相分離構造となっていて、当該相の界面でキャリア分離が起こり、各相において正電荷(正孔)と負電荷(電子)とが分離、輸送されるものである。
バルクヘテロ接合型の有機発電層において、その相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の解離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程などに対する影響がある。したがって、相分離構造を最適化することにより、良好な光電変換効率を実現することができるものと考えられる。
積層型(ヘテロpn接合型)は、有機発電層が2以上の層から構成されていて、少なくとも一つの層がp型の半導体を含有して形成され、他の層がn型の半導体を含有して形成されているものである。そして、当該p型の半導体を含有する層とn型の半導体を含有する層との境界にはp型の半導体とn型の半導体との相界面が形成されて、当該相界面でキャリア分離が起こるようになっている。
また、バルクヘテロ接合型と積層型とを組み合わせることも可能である。例えば、有機発電層を2以上の層から構成すると共に、それらの層の少なくとも一つにp型及びn型の両方の半導体を含有させるとともに、p型の半導体とn型の半導体とが相分離するように構成するのである。この場合、積層した層間に形成される相界面、及び、p型及びn型の両方の半導体を含有した層内におけるp型の半導体とn型の半導体との相界面の両方でキャリア分離が生じるようになっている。或いは、この場合、例えば積層した層間において一方のキャリアをブロックして、電気取り出し効率を向上させることも期待されている。
ショットキー型は、電極近傍にショットキー障壁が形成され、この部分の内部電場でキャリア分離を行なうものである。電極としてショットキー障壁を形成するものを用いればその活性層の構成に制限は無い。ショットキー型における活性層の具体的な構成は、前記のバルクヘテロ接合型、積層型及び両者を組み合わせた型のいずれを採用することも可能であり、特に高い特性(例えば、変換効率など)が期待できる。
なお有機発電層においては、活性層に少なくとも1種の有機半導体を用いるが、この他に無機物質を含んでいてもよい(以下、これをハイブリッド型と称する)。
ハイブリッド型は、有機発電層が無機物質及び有機物質を共に含有して形成されるものである。この際、少なくとも1種の有機半導体を含有する以外は、ハイブリッド型の有機発電層が含有する無機物質及び有機物質は半導体特性を有していないものでもよいが、半導体特性を有しているもの(即ち、無機半導体及び有機半導体)を使用することが好ましい。例えば、無機半導体としてはチタニア、酸化亜鉛等が挙げられ、有機半導体としてはペリレン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。
ハイブリッド型の有機発電層の層構成の具体例を挙げると、バルクヘテロ接合型の有機発電層において、p型及びn型の半導体の一方として無機物質を使用すると共に他方として有機物質を使用した場合、p型及びn型の半導体の一方又は両方として無機物質及び有機物質を使用した場合などが挙げられる。これにより、有機発電層は、無機半導体と有機半導体との混合層として構成され、発電効率の向上が期待できる。
〔発電層の厚さ〕
発電層4の厚さは、第一電極層3、発電層4及び第二電極層5の厚さの合計が、通常200nm以上、好ましくは500nm以上、より好ましくは700nm以上、また、通常2000nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下となる範囲にする。発電層4が薄すぎると欠陥が発生する可能性があり、厚すぎると電気抵抗が大きくなる可能性がある。
[1−4.第二電極層5]
第二電極層5は発電層4で生じた電気を取り出すものであり、第一電極層3と同様の材料により同様の方法で形成できる。
ただし、本実施形態では発電層4が吸収する光は、外部から第二電極層5を透過して発電層4に入射するようになっている。したがって、発電層4が吸収できる波長の光が第二電極層5を透過できるようにする。通常、発電層4は可視領域の波長の光(可視光)を吸収するため、第二電極層5は可視光を透過させる層として形成する。
また、第二電極層5は発電層4の表面(図中上側の面)全体に形成されていることが好ましいが、必ずしも発電層4の表面全体に形成されていなくても良い。例えば、第二電極層5を発電層4の表面に線状又はメッシュ状に形成し、この線部分又はメッシュ部分を通じて発電層4から電気を取り出すようにしても良い。この場合、例えば銅やアルミ等の高い電気伝導性を有する金属により第二電極層5を形成すれば電気の取り出しを効率的に行うことができると共に、第二電極層5が形成されず発電層4が露出した部分では第二電極層5による減衰が生じることなく発電層4に光を取り込むことが可能となる。
第二電極層5の厚さは、通常20nm以上、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上であり、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下である。第二電極層5の厚さが薄すぎると欠陥が発生する可能性があり、厚すぎると電気抵抗が大きくなる可能性がある。
[1−5.保護フィルム層7]
必要に応じて、第二電極層5上には保護フィルム層7を形成する。保護フィルム層7は、水分、紫外線、埃等から第一電極層3、発電層4及び第二電極層5を保護する層である。保護フィルム層7は1層からなる単層構造により構成してもよいが、通常は、各機能に対応した層を2層以上設けた積層構造で構成する。
以下、保護フィルム層7を構成する層の例について説明する。
・防湿フィルム層
保護フィルム層7を構成する層の例を挙げると、防湿フィルム層が挙げられる。防湿フィルム層は水の透過を防止するフィルム層である。
太陽電池素子6は湿気に弱い傾向があり、特に、ZnO:Al等の透明電極が水分により劣化することがある。そこで、防湿フィルム層で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6を水から保護し、発電能力を高く維持することが好ましい。
防湿フィルム層に要求される防湿能力の程度は、単位面積(1m)の1日あたりの水の透過量が10−3g/m/day以下であることが好ましく、10−4g/m/day以下であることがより好ましい。従来はこのように高い防湿能力を有する防湿フィルム層の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子などの優れた太陽電池素子を実現することが困難であったが、このような防湿フィルム層を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子の優れた性質を活かした膜状太陽電池1の実施が容易となる。
また、防湿フィルム層は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。
防湿フィルム層を構成する材料は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意であるが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの基材フィルムの表面にシリカを均一に真空蒸着したフィルムなどが挙げられる。その具体例としては、テックバリア(三菱樹脂製)などが挙げられる。
なお、防湿フィルム層は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、防湿フィルム層は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
・ガスバリアフィルム層
ガスバリアフィルム層は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。上記のように太陽電池素子6は湿気に弱い傾向があり、さらに、酸素に弱い傾向もある。特に、ZnO:Al等の透明電極や、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、ガスバリアフィルム層で太陽電池素子6を被覆することにより、太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。なお、前記の防湿フィルム層とガスバリアフィルム層とは両方を設けるようにしてもよいが一方のみを設けるようにしてもよく、中でもガスバリアフィルム層を設ければ湿気及び酸素の両方の透過を防止できるため好ましい。
ガスバリアフィルム層に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子6の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。また、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
ガスバリアフィルム層に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。また、例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の酸化による劣化が抑えられる。
従来はこのように高い防湿及び酸素遮断能力を有するガスバリアフィルム層の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなガスバリアフィ
ルム層を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子等の優れた性質を活かした膜状太陽電池1の実施が容易となる。
また、ガスバリアフィルム層は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、膜状太陽電池1は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム層も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム層の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで膜状太陽電池1の使用時にガスバリアフィルム層が融解・劣化する可能性を低減できる。
ガスバリアフィルム層の具体的な構成は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム層を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
以下、ガスバリアフィルム層の構成について、例を挙げて説明する。
ガスバリアフィルム層の構成として好ましいものは2例が挙げられる。
一つ目の例は、プラスチックフィルム基材に無機バリア層を配置したフィルムである。この際、無機バリア層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
二つ目の例は、プラスチックフィルム基材に、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層が形成されたフィルムである。この際、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層を1単位として、このユニット層が1単位(無機バリア層1層とポリマー層1層を合わせて1単位の意味)のみを形成しても良いが、2単位以上形成しても良い。例えば2〜5単位、積層してもよい。
ユニット層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層及びポリマー層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。また、プラスチックフィルム基材上にユニット層を形成する場合、無機バリア層を形成してからその上にポリマー層を形成してもよいし、ポリマー層を形成してから無機バリア層を形成してもよい。
(プラスチックフィルム基材)
ガスバリアフィルム層に使用されるプラスチックフィルム基材は、上記の無機バリア層及びポリマー層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリアフィルム層の使用目的等から適宜選択することができる。
プラスチックフィルム基材の材料の例を挙げると、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
これら樹脂のうち、好ましい例としては、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物が挙げられる。また、スピロビインダン、スピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。ポリエステル樹脂の中でも、二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET)、同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は、熱的寸度安定性に優れるため、本発明においてプラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。
なおプラスチックフィルム基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
プラスチックフィルム基材の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
プラスチックフィルム基材は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
プラスチックフィルム基材には、無機バリア層との密着性向上のため、アンカーコート剤の層(アンカーコート層)を形成してもよい。通常、アンカーコート層はアンカーコート剤を塗布して形成される。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体などが挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種類以上と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂の1種類以上とを組み合わせたものが好ましい。なお、アンカーコート剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アンカーコート層の厚さは、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。この範囲の上限値以下の厚さであれば滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力によるプラスチックフィルム基材からの剥離もほとんどない。また、この範囲の下限値以上の厚さであれば、均一な厚さを保つことができ好ましい。
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に、プラスチックフィルム基材に通常の化学処理、放電処理などの表面処理を施してもよい。
(無機バリア層)
無機バリア層は通常は金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物により形成される層であ
る。なお、無機バリア層を形成する金属酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金属酸化物としては、例えば、Si、Al、Mg、In、Ni、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などが挙げられる。中でも、高いバリア性と高透明性とを両立させるために、酸化アルミニウムまたは酸化珪素を含むことが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性の観点から、酸化珪素を含むことが好ましい。
各々の金属原子と酸素原子との比率も任意であるが、無機バリア層の透明度を向上させ着色を防ぐためには、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少なくないことが望ましい。一方、無機バリア層の緻密性を向上させバリア性を高くするためには、酸素原子を少なくすることが望ましい。この観点から、例えば金属酸化物としてSiOを用いる場合には前記xの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、例えば金属酸化物としてAlOを用いる場合には前記xの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
また、2種以上の金属酸化物より無機バリア層を構成する場合、金属酸化物としては酸化アルミニウムおよび酸化珪素を含むことが望ましい。中でも無機バリア層が酸化アルミニウムおよび酸化珪素からなる場合、無機バリア層中のアルミニウムとケイ素との比率は任意に設定することができるが、Si/Alの比率は、通常1/9以上、好ましくは2/8以上であり、また、通常9/1以下、好ましくは8/2以下である。
無機バリア層の厚みを厚くするとバリア性が高まる傾向にあるが、曲げた際にクラックを生じにくくし割れを防ぐためには、厚みを薄くすることが望ましい。そこで無機バリア層の適正な厚みとしては、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは200nm以下である。
無機バリア層の成膜方法に制限は無いが、一般的にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などで行うことができる。例えばスパッタリング法では1種類のあるいは複数の金属ターゲットと酸素ガスを原料とし、プラズマを用いた反応性スパッタ方式で形成することができる。
(ポリマー層)
ポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができ、例えば真空チャンバー内で成膜できるものも用いることができる。なお、ポリマー層を構成するポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
前記ポリマーを与える化合物としては多種多様なものを用いることができるが、例えば以下の(i)〜(vii)のようなものが例示される。なお、モノマーは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(i)例えばヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンが挙げられる。ヘキサメチルジシロキサンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを蒸気として導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、プラスチックフィルム基材上に堆積させることでポリマー層をポリシロキサン薄膜として形成できる。
(ii)例えばジパラキシリレン等のパラキシリレンが挙げられる。ジパラキシリレンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、まず高真空中でジパラキシリレンの蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。そして、そのラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導いて、プラスチックフィルム基材への吸
着をさせると同時にラジカル重合反応を進行させてポリパラキシリレンを堆積させることでポリマー層を形成できる。
(iii)例えば二種のモノマーを交互に繰り返し付加重合させることができるモノマーが挙げられる。これにより得られるポリマーは重付加ポリマーである。重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)、ポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)などが挙げられる。
(iv)例えばアクリレートモノマーが挙げられる。アクリレートモノマーには単官能、2官能、多官能のアクリレートモノマーがあるが、いずれを用いてもよい。ただし、適切な蒸発速度、硬化度、硬化速度等を得るために、前記のアクリレートモノマーを2種以上組み合わせて併用することが好ましい。
また、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば脂肪族アクリレートモノマー、脂環式アクリレートモノマー、エーテル系アクリレートモノマー、環状エーテル系アクリレートモノマー、芳香族系アクリレートモノマー、水酸基含有アクリレートモノマー、カルボキシ基含有アクリレートモノマー等があるが、いずれも用いることができる。
(v)例えばエポキシ系やオキセタン系等の、光カチオン硬化ポリマーが得られるモノマーが挙げられる。エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環式エポキシ系モノマー、2官能性モノマー、多官能性オリゴマーなどが挙げられる。また、オキセタン系モノマーとしては、例えば、単官能オキセタン、2官能オキセタン、シルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が挙げられる。
(vi)例えば酢酸ビニルが挙げられる。モノマーとして酢酸ビニルを用いると、その重合体をケン化することでポリビニルアルコールが得られ、このポリビニルアルコールをポリマーとして使用できる。
(vii)例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは、エチレンとの共重合体を構成させ、この共重合体をポリマーとして使用できる。さらに、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を混合した混合物、さらにはエポキシ化合物との混合物もポリマーとして用いることができる。
前記のモノマーを重合してポリマーを生成させる際、モノマーの重合方法に制限は無い。ただし、通常は、モノマーを含む組成物を塗布または蒸着して成膜した後で重合を行うようにする。重合方法の例を挙げると、熱重合開始剤を用いたときはヒーター等による接触加熱;赤外線、マイクロ波等の放射加熱;などにより重合を開始させる。また、光重合開始剤を用いたときは活性エネルギー線を照射して重合を開始させる。活性エネルギー線を照射する場合には様々な光源を使用することができ、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステンーハロゲン輻射ランプおよび日光による照射光などを用いることができる。また、電子線照射や大気圧プラズマ処理を行うこともできる。
ポリマー層の形成方法は、例えば、塗布法、真空成膜法等が挙げられる。
塗布法でポリマー層を形成する場合、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート等の方法
を用いることができる。また、ポリマー層形成用の塗布液をミスト状で塗布するようにしてもよい。この場合の液滴の平均粒径は適切な範囲に調整すればよく、例えば重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状でプラスチックフィルム基材上に成膜して形成する場合には、液滴の平均粒径は通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。
他方、真空成膜法でポリマー層を形成する場合、例えば、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が挙げられる。
ポリマー層の厚みについては特に限定はないが、通常10nm以上であり、また、通常5000nm以下、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。ポリマー層の厚みを厚くすることで、厚みの均一性が得やすくなり無機バリア層の構造欠陥を効率よくポリマー層で埋めることができ、バリア性が向上する傾向にある。また、ポリマー層の厚みを薄くする事で、曲げ等の外力によりポリマー層自身がクラックを発生しにくくなるためバリア性が向上しうる。
中でも好適なガスバリアフィルム層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOを真空蒸着したフィルムなどが挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム層は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ガスバリアフィルム層は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム層の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることでガスバリア性が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
ガスバリアフィルム層は、太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図1では上側の面)を覆うことが好ましい。膜状太陽電池1においてはその正面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。なお、背面(受光面とは反対側の面。図1では下側の面)には第一金属シート2が形成され、この第一金属シート2がガスの遮断を行うようになっているため、太陽電池素子6の背面側には必ずしもガスバリアフィルム層は形成しなくてもよい。
・紫外線カットフィルム層
保護フィルム層7を構成する層の例を挙げると、紫外線カットフィルム層が挙げられる。紫外線カットフィルム層は紫外線の透過を防止するフィルム層である。
太陽電池素子6の構成部品のなかには紫外線により劣化するものがある。また、防湿フィルム層などは種類によっては紫外線により劣化するものがある。そこで、紫外線カットフィルム層で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6及び必要に応じて防湿フィルム層等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
紫外線カットフィルム層に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、その使用環境などに応じて適切な範囲に設定すればよいが、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に好ましくは10%以下である。
また、紫外線カットフィルム層は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好まし
くは95%以上である。
さらに、膜状太陽電池1は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム層も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム層の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点が低すぎると膜状太陽電池1の使用時に紫外線カットフィルム層が融解する可能性がある。
また、紫外線カットフィルム層は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム層を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルムなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いても良い。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾル系、シアノアクリレート系のものを用いることができる。中でもベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系が好ましい。この例としては、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の種々の芳香族系有機化合物などが挙げられる。
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の例を挙げると、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾフェノン)メタンなどが挙げられる。
また、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の例を挙げると、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}などが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記したように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコ
ート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法などが挙げられる。また、これらの方法は1種を単独で行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行うこともできる。
塗布液に用いる溶剤は、紫外線吸収剤を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されない。例えば液状の樹脂を溶剤として用いることができ、その例を挙げると、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリスチレン系などの各種合成樹脂などが挙げられる。また、例えば、ゼラチン、セルロース誘導体などの天然高分子;水、水とエタノール等のアルコール混合溶液なども溶剤として用いることができる。
さらに、溶剤として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤を使用すれば、色素や樹脂を溶解または分散させることが可能となり、塗工性を向上させることが可能となる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類などが挙げられる。
なお、溶剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
塗布液にはさらに界面活性剤も含有させてもよい。界面活性剤の使用により、紫外線吸収色素の樹脂への分散性が向上する。これにより、紫外線吸収層において、微小な泡によるヌケ、異物などの付着による凹み、乾燥工程でのハジキなどの発生が抑制される。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。中でも、シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が好ましい。その具体例を挙げると、シリコン系界面活性剤としては、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン等のシラン化合物;ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン等のシロキサン化合物;などが挙げられる。一方、フッ素系界面活性剤としては、例えば4フッ化エチレン;パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド等のパーフルオロアルキル化合物などが挙げられる。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
なお、塗布液を基材フィルムに塗布した後の乾燥は、例えば熱風乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥など、公知の乾燥方法が採用できる。中でも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。
紫外線カットフィルム層の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)などが挙げられる。
また、例えば、ケムテックフィルムなども挙げられる。
なお、紫外線カットフィルム層は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、紫外線カットフィルム層は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
紫外線カットフィルム層の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで紫外線の吸収が高まる傾向にあり、薄くすることで可視光の透過率を増加させられる傾向にある。
紫外線カットフィルム層は、太陽電池素子6の受光面の少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子6の受光面の全てを覆う位置に設ける。ただし、太陽電池素子6の受光面を覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
・ゲッター材フィルム層
保護フィルム層7を構成する層の例を挙げると、ゲッター材フィルム層が挙げられる。ゲッター材フィルム層は水分及び/又は酸素を吸収するフィルム層である。
太陽電池素子6の構成部品のなかには前記のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルム層で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
ここで、ゲッター材フィルム層は前記のような防湿フィルム層とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、防湿フィルム層又はガスバリアフィルム層等で太陽電池素子6を被覆した場合に、防湿フィルム層又はガスバリアフィルム層内の空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム層が捕捉して水分による太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム層の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上、好ましくは0.5mg/cm以上、より好ましくは1mg/cm以上である。この数値が高いほど水分吸収能力が高く太陽電池素子6の劣化を抑制しうる。また、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。
また、ゲッター材フィルム層が酸素を吸収することにより、防湿フィルム層又はガスバリアフィルム層等で太陽電池素子6を被覆した場合に、防湿フィルム層内の空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム層が捕捉して酸素による太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム層は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、膜状太陽電池1は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム層も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム層の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで膜状太陽電池1の使用時にゲッター材フィルム層が融解・劣化する可能性を低減できる。
ゲッター材フィルム層を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル等の硫酸塩、アルミニウム金属錯体、アルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物などが挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO、B
aO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOや、アルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム、酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩、塩化物塩、硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム層は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ゲッター材フィルム層は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム層の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
ゲッター材フィルム層は、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図1では上側の面)を覆うことが好ましい。膜状太陽電池1においてはその正面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。
ゲッター材フィルム層の製造方法に制限はなく、吸水剤又は乾燥剤の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば、吸水剤又は乾燥剤を分散したフィルムを粘着剤で添付する方法、吸水剤又は乾燥剤の溶液をスピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等で塗布する方法などを用いることができる。また真空蒸着法、スパッタリング法などの成膜法を使用してもよい。
吸水剤又は乾燥剤のためのフイルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。中でも、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のフィルムが好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
・耐候性保護フィルム
保護フィルム層7を構成する層の例を挙げると、耐候性保護フィルム層が挙げられる。耐候性保護フィルム層は天候変化から太陽電池素子6を保護するフィルムである。
太陽電池素子6の構成部品のなかには、温度変化、湿度変化、自然光、風雨による侵食などにより劣化するものがある。そこで、耐候性保護フィルム層で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を天候変化などから保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
耐候性保護フィルム層は通常は膜状太陽電池1の最表層に位置するため、耐候性保護フィルム層には耐久性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性、機械強度などの、膜状太陽電池1の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。耐候性保護フィルム層が劣化すると太陽電池の性能が低下する可能性がある。
また、耐候性保護フィルム層は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましく
は95%以上である。
さらに、膜状太陽電池1は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム層も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム層の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで膜状太陽電池1の使用時に耐候性保護フィルム層が融解・劣化する可能性を低減できる。
耐候性保護フィルム層を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
中でも好ましくはフッ素系樹脂が挙げられ、その具体例を挙げるとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム層は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、耐候性保護フィルム層は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
また耐候性保護フィルム層には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
また、耐候性保護フィルム層は、保護フィルム層7の中でもできるだけ外側に設けることが好ましく最も外側に設けることがより好ましい。太陽電池を保護するためである。
上述した保護フィルム層7の具体例を挙げると、特許第3076895号公報、特許第3293391号公報、特許第3326638号公報、特許第3978911号公報、特許第3978912号公報などに記載のフィルムが挙げられる。また、PET系樹脂フィルム層も、透明で耐候性及び耐久性に優れるため、好適に用いられる。
耐候性保護フィルム層の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
[1−6.その他の層及び部材]
膜状太陽電池1には、本発明の要旨を逸脱しない限り、必要に応じて上述した以外にその他の層及び部材を任意の位置に設けてもよい。さらに、その他の層及び部材の数は、1でもよく、2以上でもよい。また、その他の層及び部材を形成する位置は太陽電池素子6の発電を阻害しない限り任意である。
・電極界面層
その他の層の例を挙げると、電極界面層(図示せず)などが挙げられる。電極界面層は、第一電極層3と発電層4との間、及び/又は、発電層4と第二電極層5との間に、電気
特性の改良のために設けられる層である。通常は、正孔を捕集する電極層と発電層4との間には電子をブロックして正孔のみ伝導する層(p型半導体層)を形成し、電子を捕集する電極層と発電層4との間には正孔をブロックして電子のみ伝導する層(n型半導体層)を形成する。
p型半導体層の材料(p型半導体)としては、発電層4で生成した正孔を効率よく正極へ輸送できるものが好ましい。そのためには、p型半導体は、正孔移動度が高いこと、導電率が高いこと、正極との間の正孔注入障壁が小さいこと、発電層4からp型半導体層への正孔注入障壁が小さいこと、などの性質を有することが好ましい。
さらに、p型半導体層を通して発電層4に光を取り込む場合には、p型半導体として透明な材料を用いることが好ましい。通常は光のうちでも可視光を発電層4に取り込むことになるため、透明なp型半導体としては、当該p型半導体層を透過する可視光の透過率が、通常60%以上、中でも80%以上となるものを用いることが好ましい。これを実現するためには、可視光の吸収のない材料を用いるか、吸収があっても前記透過率を満たす程度に薄い薄膜としてp型半導体層を形成すればよい。
さらに、製造コストの抑制、大面積化などを実現するためには、p型半導体として有機半導体を用い、p型半導体層をp型有機半導体層として形成することが好ましい。
このような観点から、p型半導体の好適な例を挙げると、ポルフィリン化合物又はフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は、中心金属を有していてもよいし、無金属のものでもよい。その具体例を挙げると、29H,31H−フタロシアニン、銅(II)フタロシアニン、亜鉛(II)フタロシアニン、チタンフタロシアニンオキシド、銅(II)4,4’,4'',4'''−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;などが挙げられる。
また、ポルフィリン化合物及びフタロシアニン化合物以外の好ましいp型半導体の例としては、正孔輸送性高分子にドーパントを混合した系が挙げられる。この場合、正孔輸送性高分子の例としては、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられる。一方、ドーパントの例としては、ヨウ素;ポリ(スチレンスルホン酸)、カンファースルホン酸等の酸;PF、AsF、FeCl等のルイス酸;などが挙げられる。なお、p型半導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、ここで例示した半導体は、発電層4に含有させることも可能である。
p型半導体層の厚さに制限はないが、例えば有機太陽電池素子では、通常3nm以上、中でも10nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。p型半導体層を厚くすることで膜の均一性が高まる傾向にあり、p型半導体層を薄くすることで透過率が向上しまた直列抵抗が低下する傾向にある。
また、例えばCu−III−VI族半導体系太陽電池素子では、通常0.5μm以上、中でも1μm以上、また、通常10μm以下、中でも5μm以下とすることが好ましい。p型半導体層を薄くすると発電効率が低下する傾向にあり、厚くすること曲げた時に亀裂が入りやすくなったり、Mo層と乖離が生じ易くなる。
一方、n型半導体層に求められる役割は、発電層4から分離された正孔をブロックし、電子のみを負極に輸送するものである。n型半導体層の材料(n型半導体)としては、発電層4で生成した電子を効率よく負極へ輸送できるものが好ましい。そのためには、n型半導体は、電子移動度が高いこと、導電率が高いこと、負極との間の電子注入障壁が小さいこと、発電層4からn型半導体への電子注入壁が小さいこと、などの性質を有することが好ましい。
さらに、n型半導体層を通して発電層4に光を取り込む場合には、n型半導体として透明な材料を用いることが好ましい。通常は光のうちでも可視光を発電層4に取り込むことになるため、透明なn型半導体としては、当該n型半導体層を透過する可視光の透過率が、通常60%以上、中でも80%以上となるものを用いることが好ましい。これを実現するためには、可視光の吸収のない材料を用いるか、吸収があっても前記透過率を満たす程度に薄い薄膜としてn型半導体層を形成すればよい。
また、n型半導体層に求められる役割は、発電層4で光を吸収して生成する励起子(エキシトン)が負極により消光されるのを防ぐことにもある。そのためには、電子供与体及び電子受容体が有する光学的ギャップより大きい光学的ギャップを、n型半導体が有することが好ましい。
このような観点から、n型半導体の好適な例を挙げると、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体等の電子輸送性を示す有機化合物;TiO等の無機半導体などが挙げられる。なお、n型半導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、ここで例示した半導体は、発電層4に含有させることも可能である。
n型半導体層の厚さに制限はないが、通常2nm以上、中でも5nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。n型半導体層をこのような範囲の厚さに形成することにより、例えば正極より入射した光が発電層4で吸収されずに透過した場合、負極で反射されて再び発電層4に戻ることによる光干渉効果を活用することが可能である。
なお、電極界面層を発電層4と第二電極層5との間に設ける場合、この電極界面層は、第二電極層5が成膜される際に発電層4を保護する役目も奏しうるものである。
・封止材
その他の層の例を挙げると、封止材が挙げられる。封止材は、太陽電池素子6を封止して補強するフィルムである。太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては膜状太陽電池1の強度が弱くなる傾向があるが、封止材により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材は、膜状太陽電池1の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。
具体的強度については、封止材以外の耐候性保護フィルム層やバックシートの強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、膜状太陽電池1全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、膜状太陽電池1は光を受けて熱せられることが多いため、封止材も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで膜状太陽電池1の使用時に封止材が融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また、通常700μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。厚みを厚くすることで膜状太陽電池1全体の強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
封止材を構成する材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物をフィルムにしたもの(EVAフィルム)などを用いることができる。EVAフィルムには通常は耐候性の向上のために架橋剤を配合して架橋構造を構成させる。この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。このような有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;3−ジ−t−ブチルパーオキサイド等を用いることができる。これらの有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下であり、通常1重量部以上である。なお、架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
このEVA樹脂組成物には、接着力向上の目的で、シランカップリング剤を含有させてもよい。この目的に供されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下であり、通常0.1重量部以上である。なお、シランカップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するために、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。この目的に供される架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤等の単官能の架橋助剤等が挙げられる。これらの架橋助剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下であり、また、通常1重量部以上である。なお、架橋助剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的で、EVA樹脂組成物に、例えばハイドロキノン;ハイドロキノンモノメチルエーテル;p−ベンゾキノン;メチルハイドロキノンなどを含有させてもよい。これらの配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下である。
しかし、EVA樹脂の架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、膜状太陽電池1の生産速度および生産効率を低下させる原因となる場合がある。また、長期間使用の際には、EVA樹脂組成物の分解ガス(酢酸ガス)またはEVA樹脂自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子6に悪影響を与えて発電効率が低下させる場合がある。そこで、封止材としては、EVAフィルムの他に、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体のフィルムを用いることもできる。この共重合体としては、例えば、下記成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
・成分1:プロピレン系重合体が、通常0重量部以上、好ましくは10重量部以上であり、また、通常70重量部以下、好ましくは50重量部以下。
・成分2:軟質プロピレン系共重合体が、30重量部以上、好ましくは50重量部以上であり、また、通常100重量部以下、好ましくは90重量部以下。
なお、成分1および成分2の合計量は100重量部である。上記のように、成分1および成分2が好ましい範囲にあると、封止材のシートへの成形性が良好であるとともに、得られる封止材の耐熱性、透明性および柔軟性が良好となり、膜状太陽電池1に好適である。
以下、成分1及び成分2について詳しく説明する。
〔成分1〕
成分1はプロピレン系重合体であり、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体;などが挙げられる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。中でも、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。なお、α−オレフィンは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位の存在割合は、ポリプロピレン中に通常35モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
成分1は、ASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が、通常0.01g/10分以上、好ましくは0.05g/10分以上であり、通常1000g/10分以下、好ましくは100g/10分以下である。
成分1の示差走査熱量計で観測される融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上であり、また、通常160℃以下、好ましくは150℃以下である。
成分1はアイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のどちらも用いることができるが、アイソタクチック構造の方が耐熱性などの点で好ましい。
また、成分1としては必要に応じて複数のプロピレン系重合体を併用することができ、例えば融点や剛性の異なる2種類以上の成分を用いることもできる。
〔成分2〕
成分2は軟質プロピレン系共重合体であり、例えば、プロピレンと、少なくとも1種のプロピレン以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
また、成分2は、ショアーA硬度が、通常30以上、好ましくは35以上であり、また、通常80以下、好ましくは70以下である。
さらに、成分2の示差走査熱量計DSCで観測される融点は、100℃未満か、または融点が観測されない。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。
成分2において、コモノマーとして用いられるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンが好ましい。なお、α−オレフィンは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
成分2は、プロピレン由来の単位を通常45モル%以上、好ましくは56モル%以上、また、通常92モル%以下、好ましくは90モル%以下含み、コモノマーとして用いられるα−オレフィン由来の単位を通常8モル%以上、好ましくは10モル%以上、また、通
常55モル%以下、好ましくは44モル%以下含む。
成分2は、ASTM D 1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が、通常0.01g/10分以上、好ましくは0.05g/10分以上であり、また、通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下である。
成分2は、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで、23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が、通常4MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下である。軟質プロピレン系共重合体がこのような範囲にあると柔軟性、透明性、ゴム弾性に優れる。
成分2は、X線回折で測定した結晶化度が、通常20%以下、好ましくは15%以下であり、また、通常0%以上である。
また、成分2は単一のガラス転移温度Tgを有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常−10℃以下、好ましくは−15℃以下の範囲にあることが望ましい。成分2のガラス転移温度Tgが前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
成分2のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
また、成分2は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、通常、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつC3(プロピレン)含量(mol%)と融解熱量ΔH(J/g)の関係において以下の関係式が成り立つことが好ましい。
ΔH<345Ln(C3含量mol%)−1492
(ただしこの場合、76≦C3含量(mol%)≦90)
成分2の好ましい具体例として、以下のプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を挙げることができる。このようなプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いることで、柔軟性、耐熱性、機械強度、太陽電池封止性および透明性が良好な封止材が得られる。ここで、太陽電池封止性とは、良好な柔軟性により、太陽電池素子6を充填する際の素子の割れ率を低減できることをいう。
プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体としては、プロピレン由来の構成単位を通常45モル%以上、好ましくは56モル%以上、より好ましくは61モル%以上、また、通常92モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは86モル%以下含み、さらにエチレン由来の構成単位を通常5モル%以上、好ましくは8モル%以上、また、通常25モル%以下、好ましくは14モル%以下含み、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を通常3モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは6モル%以上、また、通常30モル%以下、好ましくは25モル%以下含むものが好ましい。α−オレフィンに関しては、1−ブテンが特に好ましい。
プロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、および炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を上記の量で含有するプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(成分2)は、プロピレン系重合体(成分1)との相溶性が良好となり、得られる封止材は、充分な透明性、柔軟性、耐熱性および耐傷付性を発揮する。
上記の成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が、通常0.0001g/10分以上であり、また、通常1000g/10分以下、好ましくは900g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下である。
成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上であり、通常140℃以下、好ましくは135℃以下である。
また成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。
この封止材においては、上記成分1および成分2に、プラスチックなどに対する接着促進剤としてカップリング剤を配合することが可能である。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なお、カップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、これらは熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を通常0.1重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下含むことが望ましい。
また、上記カップリング剤は、有機過酸化物を用いて、当該熱可塑性樹脂組成物にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、上記カップリング剤を0.1〜5重量部含むことが望ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物を用いても、ガラス、プラスチックに対して、シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。
有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物は、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
有機過酸化物としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、などが挙げられる。なお、有機過酸化物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、封止材としてエチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体を用いることもできる。この共重合体としては、下記に示す成分Aおよび成分Bからなる封止材用樹脂組成物と基材とを積層してなる、ホットタック性が5〜25℃のラミネートフィルムが例示される。
・成分A:エチレン系樹脂。
・成分B:以下の(a)〜(d)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体。
(a)密度が0.86〜0.935g/cm
(b)メルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分。
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が100℃以下である。
(d)温度上昇溶離分別(TREF)による積分溶出量が、90℃のとき90%以上である。
(A)成分A(エチレン系樹脂)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン系樹脂の例としては、いわゆるラジカル重合法で製造される高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・フッ化ビニル共重合体などが挙げられる。また、イオン重合法で製造される、いわゆる線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどエチレンを主成分とする重合体または共重合体も挙げられる。中でも好ましくは、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高圧法低密度ポリエチレンである。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン系樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合体である場合、下記の性状を有するものが好適である。
(i)メルトフローレート(MFR)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン・酢酸ビニル共重合体のJIS
K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow rate:溶融流量)は、通常1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、また、通常50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。MFRを高くすることで、成分Bとブレンドした際の透明性が高まる傾向があり、MFRを低くする事で、成形が容易となる傾向がある。
(ii)酢酸ビニル含量
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は、通常3重量%以上、好ましくは4重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、また、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。酢酸ビニル含量を多くすることでヒートシール性が高まる傾向にあり、酢酸ビニル含量を少なくすることで封止材のべたつきを抑えることができる。
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしてのエチレン系樹脂が高圧法低密度ポリエチレンである場合は、下記の性状を有するものが好適である。
(i)メルトフローレート(MFR)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしての高圧法低密度ポリエチレンのJIS K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow rate:溶融流量)は、通常1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、また、通常50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。MFRを高くすることで押出が容易となる傾向にあり、MFRを低くすることで柔らかくなりすぎず垂れなどが起こりにくく成形性が高まる。
(ii)密度
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしての高圧法低密度ポリエチレンのJIS K7112による密度は、通常0.915g/cm以上、好ましくは0.916g/cm以上、より好ましくは0.917g/cm以上であり、また、通常0.93g/cm以下、好ましくは0.925g/cm以下、より好ましくは0.923g/cm以下である。密度を高くすることで封止材のべたつきが抑制される傾向にあり、密度を低くすることでヒートシール性が高まる傾向にある。
封止材用樹脂組成物を構成する成分Aとしての高圧法低密度ポリエチレンは、市販品の中から上記物性を示すものを適宜選択して使用することが出来る。
(B)成分B(エチレン・α−オレフィン共重合体)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Bは、上記成分A以外のエチレン・α−オレフィン共重合体である。成分Bは、下記の性状を有するものが好ましい。
(i)密度
封止材用樹脂組成物を構成する成分Bとしてのエチレン・α−オレフィン共重合体のJlS K7112による密度は、通常0.86g/cm以上、好ましくは0.87g/cm以上、より好ましくは0.88g/cm以上であり、また、通常0.935g/cm以下、好ましくは0.915g/cm以下、より好ましくは0.91g/cm以下である。密度を高くすることでフィルムとしたときのべたつきが抑制される傾向にあり、密度を低くすることでヒートシール性が高まる傾向にある。
(ii)メルトフローレート(MFR)
封止材用樹脂組成物を構成する成分Bとしてのエチレン・α−オレフィン共重合体のJlS K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow rate:溶融流量)は、通常1g/10分以上、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは3g/10分以上であり、また、通常50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。MFRを高くすることで押出が容易となる傾向にあり、MFRを低くすることで柔らかくなりすぎず垂れなどが起こりにくく成形性が高まる。
ここでα−オレフィンとしては、炭素数4〜40のα−オレフィンが好ましい。中でも、α−オレフィンの中でも、炭素数が通常4以上、好ましくは6以上であり、通常12以下、好ましくは10以下のものが望ましい。その例を挙げると、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−へプテン、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等が挙げられる。なお、α−オレフィンは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
α−オレフィンとエチレンとの比率は、α−オレフィンを通常2重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、また、通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下とし、エチレンを通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、また、通常98重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下とすることが望ましい。
成分Aと成分Bとの配合割合(成分A/成分B)は、重量比で、通常50/50以上、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上であり、また、通常99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。成分Bの配合量を多くすることで透明性やヒートシール性が高まる傾向にあり、成分Bの配合量を少なくすることでフィルムの作業性が高まる傾向にある。
成分Aと成分Bを配合して生成される封止材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、通常50g/10分以下、好ましくは40g/10分以下である。なおMFRの測定と評価は、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠する方法によって実施することができる。
封止材用樹脂組成物の融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であ
り、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。融点を高くすることで膜状太陽電池1の使用時に融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材用樹脂組成物の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、また、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた封止材において、前記プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合と同様に、カップリング剤を用いることが可能である。
上述した封止材は、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子6への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)および透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時および膜状太陽電池1の製造時間が大きく短縮できるとともに、使用後の膜状太陽電池1のリサイクルも容易となる。
なお、封止材は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、封止材は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
封止材の厚みは、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた光線透過率が高まる傾向にある。
封止材を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子6を挟み込むように設ける。太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子6の正面(図中上側の面)及び背面(図中下側の面)にそれぞれ封止材を設けることが好ましい。
・シール材
その他の部材の例としては、シール材が挙げられる。シール材は、上述した第一金属シート2及び保護層7並びに必要に応じて用いられるその他の層等の縁部をシールして、これらのフィルムで被覆された空間内に湿気及び酸素が浸入しないようにシールする部材である。
シール材に要求される防湿能力の程度は、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることが好ましく、0.05g/m/day以下であることがより好ましい。従来はこのように高い防湿能力を有するシール材の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなシール材を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子の優れた性質を活かした膜状太陽電池1の実施が容易となる。
さらに、膜状太陽電池1は光を受けて熱せされることが多いため、シール材も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、シール材の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。融点が低す
ぎると膜状太陽電池1の使用時にシール材が融解する可能性がある。
シール材を構成する材料としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂等のポリマーが挙げられる。
なお、シール材は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。
このシール材を形成する方法に制限は無いが、例えば、材料を第一金属シート2と保護フィルム層7との間に注入することにより形成できる。形成方法の具体例を挙げると、以下の方法が挙げられる。
即ち、例えば封止材の硬化が進行する途中で、半硬化状態の膜状太陽電池1を前記ラミネート装置から取り出し、太陽電池素子6の外周部であって第一金属シート2と保護層7との間の部分に液状のポリマーを注入し、このポリマーを封止材と共に硬化させればよい。また、封止材の硬化が終了した後にラミネート装置から取り出して単独で硬化させてもよい。なお、前記のポリマーを架橋・硬化させるための温度範囲は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。
[I−7.太陽電池素子同士の接続]
太陽電池素子6は、膜状太陽電池1の1個あたり1個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子6を設ける。具体的な太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子6を複数設ける場合、太陽電池素子6は第一金属シート2上にアレイ状に並べて設けられていることが多い。
太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように太陽電池素子6同士を接続する場合には、太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子6と太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、膜状太陽電池1の発電量を増加させるためである。
[I−8.膜状太陽電池の製造方法]
本実施形態の膜状太陽電池1の製造方法に制限は無い。通常は、第一金属シート2に第一電極層3、発電層4、第二電極層5及び保護フィルム層7を順に積層して形成すればよい。
[2.太陽電池パネル8]
図2は本発明の第一実施形態に係る太陽電池パネルの構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の太陽電池パネル8は、少なくとも、第二金属シート9と、芯材層10と、第一金属シート2と、第一電極層3と、発電層4と、第二電極層5とをこの順に備えている。即ち、太陽電池パネル8は、第二金属シート9、芯材層10及び第一金属シート2をこの順で備える支持体11上に、直接に太陽電池素子6を設けた構成を有している。また、膜状太陽電池1との関係で言えば、太陽電池パネル8は、第二金属シート9、芯材層10及び膜状太陽電池1をこの順で備えている。さらに、通常、太陽電池パネル8は保護フィルム層7を備える。
第一金属シート2、第一電極層3、発電層4、第二電極層5及び保護フィルム層7については、上述したとおりであるので、以下、第二金属シート9及び芯材層10について説明する。
[2−1.第二金属シート9]
第二金属シート9は、第一金属シート2と同様の材料により、同様の寸法で形成できる。そして、本実施形態では、第二金属シート9と第一金属シート2との間に後述する芯材層10が設けられるようになっている。
[2−2.芯材層]
芯材層10は樹脂を含んでなる層である。
芯材層10を構成する樹脂の例を挙げると、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機粉状物などが挙げられる。その具体例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;などが挙げられる。この中でも、成形性、軽量性の観点からポリオレフィン樹脂が好ましい。
なお、樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、芯材層10は樹脂だけで構成されていてもよいが、樹脂以外の成分を含有していてもよい。樹脂以外の成分の例を挙げると、金属水酸化物等の無機フィラーが挙げられる。無機フィラーを含有させることにより、難燃化させることが可能となる。
さらに、樹脂以外の成分の例としては、結合材、強化繊維等などが挙げられる。
なお、樹脂以外の成分は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
芯材層10の厚さは、通常2mm以上、好ましくは3mm以上であり、また、通常20mm以下、好ましくは15mm以下である。芯材層10が薄すぎると太陽電池パネル8の強度が弱くなりすぎる可能性があり、また、厚すぎると重量が重くなりすぎて実用的でなくなる可能性がある。
芯材層10の形成方法に制限はない。
例えば、芯材層10を構成する樹脂又は当該樹脂を含む組成物を、流動性のある状態で第二金属シート9の表面に成膜し、その後硬化させて形成すればよい。この際、成膜は塗布法が簡単で好ましい。さらに、塗布法の中でもダイコート法を用いれば、膜厚を容易に均一にできるため、特に好ましい。
また、例えば、予め板状に形成した芯材層10を第二金属シート9に接着剤等で張り合わせてもよい。
本実施形態の太陽電池パネル8では、この芯材層10と金属シート2,9とにより支持体11が構成される。この支持体11は、金属シート2,9の間に樹脂を含む芯材層10が挟み込まれた構成を有しており、従来の金属板よりも軽量且つ高剛性の優れた物性を有している。この支持体11の具体例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂株式会社製)などが挙げられる。
[2−3.その他の層]
太陽電池パネル8には、本発明の要旨を逸脱しない限り、必要に応じて上述した以外にその他の層を任意の位置に設けてもよい。さらに、その他の層の数は、1層でもよく、2層以上でもよい。
その例を挙げると、第二金属シート9の表面(図中下側の面)に樹脂等をコーティングして保護層を形成してもよい。
[2−4.製造方法]
本実施形態の太陽電池パネル8の製造方法に制限は無い。例えば、第二金属シート9及び芯材層10を一体化したパネルと膜状太陽電池1とを用意し、両者を張り合わせて太陽
電池パネル8を製造してもよい。また、例えば、膜状太陽電池1の第一金属シート2の表面(図中下側の面)にダイコート等で芯材層10を形成し、その後、芯材層10に第二金属シート9を張り合わせて太陽電池パネル8を製造してもよい。
[3.利点]
本実施形態の膜状太陽電池1及び太陽電池パネル8は上述したように構成されているため、図1,2中上側の面に光が照射されると、この光は発電層4に入射し、発電層4で吸収されて電気が発生するようになっている。
また、膜状太陽電池1及び太陽電池パネル8は、例えば、建造物の内装材、外装材並びに看板の材料などの建材として、広い用途に多様にデザインして適用することができる。特に膜状太陽電池1によれば、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。また、薄くて軽いため輸送や保管など流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
本実施形態の太陽電池パネル8によれば、大面積化、軽量化、フレキシブル性、施工の自由度に優れた光発電機能を有する建材を製造することができる。特に、第一金属シート2と第一電極層3とが間に別の層を介在させることなく直に接するようにしているため、軽量化の点で顕著な効果を奏する。また、更に、意匠性を有する金属シート2,9を備えるため、その建築物の外観にアクセントを持たせたデザインをすることが自在となる。
また、本実施形態の膜状太陽電池1によれば、上述したように様々な利点を有する太陽電池パネル8を簡単に製造できる。
[II.第二実施形態]
[1.膜状太陽電池]
図3は本発明の第二実施形態に係る膜状太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。なお、図3において、図1,2で示したのと同様の部位は、図1,2と同様の符号を用いて示す。
図3に示すように、本実施形態の膜状太陽電池12は、少なくとも、第一金属シート2と、真空中で形成しうる中間層13と、第一電極層3と、発電層4と、第二電極層5とをこの順に備える。この場合、第一電極層3、発電層4及び第二電極層5が太陽電池素子6を構成することになる。また、通常は膜状太陽電池12には保護フィルム層7が設けられる。
本実施形態の膜状太陽電池12は、第一金属シート2と第一電極層3とが直に接するのではなく、第一金属シート2と第一電極層3との間に中間層13を備えること以外は、第一実施形態で説明した膜状太陽電池1と同様である。
第一金属シート2、第一電極層3、発電層4、第二電極層5及び保護フィルム層7は第一実施形態において説明したので、以下、中間層13について説明する。
[1−1.中間層13]
中間層13は、第一金属シート2と第一電極層3との間に形成される層である。本実施形態の膜状太陽電池12は中間層13として、真空中で形成しうる層を備える。
真空中で層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法などが挙げられる。
例えば真空蒸着法で中間層13を形成する場合、中間層13の材料としては、金属、合金、塩などの無機物質が挙げられる。また、フラーレン等の有機物質(好ましくは低分子量の有機物質)も、真空蒸着法により形成できる。このような無機物質により形成される中間層13は無機層となり、低分子量の有機物質により形成される中間層13は低分子量有機層となる。
なお、中間層13を形成する材料は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中間層13の厚さは、その用途に応じて適切な範囲に設定すればよい。
中間層13の形成方法としては、真空中での形成方法を採用する。具体的には、上述したように真空蒸着法等などにより形成すればよい。この際、形成時の使用装置、温度条件などの成膜条件は、形成しようとする中間層13の組成及び寸法等に応じて適切に設定すればよい。ただし、形成時の圧力は、真空条件とする。
[1−2.その他の層及び部材]
膜状太陽電池12には、本発明の要旨を逸脱しない限り、必要に応じて上述した以外にその他の層及び部材を任意の位置に設けてもよい。さらに、その他の層及び部材の数は、1でもよく、2以上でもよい。
その例を挙げると、第一実施形態と同様の層が挙げられる。
[1−3.膜状太陽電池の製造方法]
本実施形態の膜状太陽電池12の製造方法に制限は無い。通常は、第一金属シート2に中間層13、第一電極層3、発電層4、第二電極層5及び保護フィルム層7を順に積層して形成すればよい。
また、第二電極層5と保護フィルム層7との間には、例えば、架橋EVA(エチレン・ビニル・アセチレート、厚さ0.4〜1.0mm)フィルム(例えば、三井化学ファブロ製 ソーラーエバ)をはさみ、ラミネート(条件:150℃、133Pa、30分)してもよい。
[2.太陽電池パネル14]
図4は本発明の第二実施形態に係る太陽電池パネルの構成を模式的に示す断面図である。図4に示すように、本実施形態の太陽電池パネル14は、少なくとも、第二金属シート9と、芯材層10と、第一金属シート2と、中間層13と、第一電極層3と、発電層4と、第二電極層5とをこの順に備えている。即ち、太陽電池パネル14は、第二金属シート9、芯材層10及び第一金属シート2をこの順で備える支持体11上に、中間層13を介して太陽電池素子6を設けた構成を有している。また、膜状太陽電池12との関係で言えば、太陽電池パネル14は、第二金属シート9、芯材層10及び膜状太陽電池12をこの順で備えている。さらに、通常、太陽電池パネル14は保護フィルム層7を備える。
第一金属シート2、第一電極層3、発電層4、第二電極層5、第二金属シート9及び芯材層10については第一実施形態と同様である。また、中間層13については上述したとおりである。
さらに、太陽電池パネル14には、本発明の要旨を逸脱しない限り、必要に応じて上述した以外にその他の層を任意の位置に設けてもよい。さらに、その他の層の数は、1層でもよく、2層以上でもよい。その例を挙げると、第一実施形態と同様の層が挙げられる。
本実施形態の太陽電池パネル14の製造方法に制限は無い。例えば、第二金属シート9及び芯材層10を一体化したパネルと膜状太陽電池12とを用意し、両者を張り合わせて太陽電池パネル14を製造してもよい。また、例えば、膜状太陽電池12の第一金属シート2の表面(図中下側の面)にダイコート等で芯材層10を形成し、その後、芯材層10に第二金属シート9を張り合わせて太陽電池パネル14を製造してもよい。
[3.利点]
本実施形態の膜状太陽電池12及び太陽電池パネル14は上述したように構成されてい
るため、図3,4中上側の面に光が照射されると、この光は発電層4に入射し、発電層4で吸収されて電気が発生するようになっている。
また、膜状太陽電池12及び太陽電池パネル14は、例えば、建造物の内装材、外装材並びに看板の材料などの建材として、広い用途に多様にデザインして適用することができる。特に膜状太陽電池12によれば、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。また、薄くて軽いため輸送や保管など流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
本実施形態の太陽電池パネル14によれば、大面積化、軽量化、フレキシブル性、施工の自由度に優れた光発電機能を有する建材を製造することができる。特に、中間層13を真空中で形成するようにしたため、第一金属シート2と中間層13との間にガスが侵入して気泡等が残留することが無く、第一金属シート2と中間層13との密着性を高め、両層2,13間の剥離を確実に防止できる。また、更に、意匠性を有する金属シート2,9を備えるため、その建築物の外観にアクセントを持たせたデザインをすることが自在となる。
また、本実施形態の膜状太陽電池12によれば、上述したように様々な利点を有する太陽電池パネル14を簡単に製造できる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[実施例1]
厚さ0.5mmのアルミ(A3105P合金、古河スカイ製)に、スパッターで1.2μmの厚さになるように銀を成膜する。その表面にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)でアモルファスシリコンを、p型半導体層50nm、i型半導体層500nm及びn型半導体層150nmとなるように成膜する。50nmのITO膜を、スパッターによりPET系バリアフィルムに成膜しパターニングした後、n型半導体層の上からラミネートする。
このように作製したアモルファス太陽電池を、ポリエチレンシート(厚さ3.0mm)を芯材層にして厚さ0.5mmのアルミニウムシートとラミネートして積層化し、アモルファスシリコン太陽電池パネルを作製する。このアモルファスシリコン太陽電池パネルは建造物の構成部材となる。
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは任意の用途において電源として使用可能である。また、この場合でも膜状太陽電池又は太陽電池パネルのみを電源として使用することの他、外部電源と組み合わせたり、蓄電池と組み合わせたりして使用することも可能である。
以下、好適な用途の例を説明するが、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルの用途は以下の例示に限定されるものではない。
1.建築用途
本発明は、例えば建材用途に使用できる。特に、例えば、家屋、店舗、ビル等の建造物の外装材及び内装材;トンネル、橋等の内装材;看板、標識などに用いて好適である。以下、代表的な例を示す。
1−1.ハウス屋根材
例えば太陽電池パネルをハウスの屋根の上に設置し、ハウス屋根材として使用できる。また、例えば瓦に装着して用いることもできる。この場合、本発明の膜状太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、瓦の曲線に密着させることができるので好適である。
1−2.屋上
例えば太陽電池パネルをビルや工場の屋上に取り付けることもできる。この時、防水シートを併用し、防水作用を有するのが望ましい。さらに、本発明の膜状太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、平面ではない屋根、例えば折半屋根に密着させることもできる。この場合も防水シートを併用するのが望ましい。
1−3.トップライト
例えばエントランスや吹き抜け部分に外装として本発明の膜状太陽電池を用いることもできる。何らかのデザイン処理を施されたエントランス等は曲線が用いられている場合が多く、そのような場合において本発明の膜状太陽電池の柔軟性が生かされる。またエントランス等ではシースルーである場合があり、このような場合には、有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1−4.壁
例えば太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用することができる。また、カーテンウオールに設置することもできる。その他、スパンドレルや方立等への取り付けも可能である。
この場合、パネルの形状に制限はないが、通常は板材として形成する。
1−5.窓
また、シースルーの窓に使用することもできる。例えば、ガラス板上に設けたり一対のガラス板間に挟み込んだりして膜状太陽電池又は太陽電池パネルを一定間隔を空けて並置すれば、膜状太陽電池同士又は太陽電池パネル同士の間を通じてガラス板の反対側を見通せるようになり、シースルーを実現できる。このようなシースルーの窓に膜状太陽電池又は太陽電池パネルを適用した場合、特に有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1−6.他の建築用途
その他建築の外装としてひさし、ルーバー、手摺、モニュメント等にも使用できる。このような場合においても、本発明の膜状太陽電池の柔軟性が、これら用途にとり好適である。
また、太陽電池パネルを、例えば、看板、標識板として用いることも可能である。
なお、上述した建築用途において、膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、既存設備の改修の際に設けることも可能である。
2.内装用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、建物の内装用に用いることも可能である。例えば、本発明の膜状太陽電池をブラインドのスラットやシャッター等に取り付けたり、太陽電池パネルでブラインド及びシャッターを形成したりすることもできる。本発明の
膜状太陽電池は軽量であり、柔軟性に富むことから、このような用途が可能となる。また、シースルーに構成するのであれば、内装用の窓としても使用できる。さらに、例えば扇風機及び換気扇等に膜状太陽電池及び太陽電池パネルを適用し、膜状太陽電池又は太陽電池パネルをこれらの機器の電源として用いることも可能である。
3.野菜工場用途
蛍光灯などの照明光を活用する植物工場の設置件数は増えているが、照明に掛かる電気代や光源の交換費用などによって栽培コストを引き下げにくいというのが現状である。そこで本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルを野菜工場に設置し、LEDまたは蛍光灯と組み合わせた照明システムを作製することができる。
このとき蛍光灯よりも寿命が長いLEDと本発明の膜状太陽電池を組み合わせた照明システムを用いることで、照明に要するコストを現状に比べて30%程度減らせることができるので好適である。
また、野菜等を一定温度で輸送するリーファー・コンテナ(reefer container)の屋根や側壁に本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルを用いることもできる。
4.道路資材・土木用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、駐車場及び駐輪場等の外壁及び屋根;バス停の屋根及び停留所標識;高速道路等の遮音壁;浄水場及び下水処理場等の水処理施設の外壁及び覆蓋等にも用いることができる。
5.輸送機器用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、電車、自動車等の車両;船舶;航空機;宇宙機等の輸送機器の部材として用いることもできる。この際、通常は本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルはこれらの輸送機器の外装材として使用する。
例えば自動車用の構成部材として使用する場合、自動車のボンネット、ルーフ、トランクリッド、ドア、フロントフェンダー、リアフェンダー、ピラー、バンパー、バックミラーなどの表面に用いることができる。得られた電力は走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーのいずれに供給することができる。更に、太陽電池パネルにおける発電状況と該走行用モータ、該モータ駆動用バッテリー、該電装品及び該電装品用バッテリーにおける電力使用状況とに合わせて選択する制御手段とを備えることで、得られた電力が適正にかつ効率的に使用することができる
6.防犯・防災用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、防犯ユニット;個人用防犯キット;監視カメラ;防犯用赤外ライト;センサライト;人感センサ及びそのワイヤレス受信機;等に適用してもよい。
7.教材玩具・ホビー用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、風車模型、模型飛行機、模型ヘリコプター、オルゴール、バイザー、フラッシングライト、点滅灯、自転車灯、サーチライト、警告灯、腕時計、ラジオライト、携帯型蛍光灯、充電器、切替式バッテリーセーバー、自動車用バッテリーセーバー、ディスプレイ、噴水、ターンテーブル、水やり時期報知器等に適用してもよい。
8.交通標識用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、海上ブイ等の灯浮標;標識灯;内照タイプ及び外周発光タイプ等の道路標示灯;信号機などに適用してもよい。
さらに、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば地表埋込ガイドシステムに適用することも可能である。具体例を挙げると、路面にLED等の光源を備えた道路鋲
、工事保安灯等を埋設すると共に本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルを設け、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルで生じる電力を前記光源に供給して、夜間等において光源を発光させるようにすることができる。この際、人感センサ等を組み合わせ、より的確に注意喚起または情報提供できるようにしてもよい。ただし、前記の道路鋲、工事保安灯等は車両や歩行者の通行により大きな荷重がかかることが予想されるため、荷重に耐えうる構成にすることが好ましい。
9.農事用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、堆肥舎等の農業施設の屋根等に設け、その施設に設置された照明等の設備の電源として用いてもよい。
また、例えば給餌機、捕虫器、虫の誘殺灯等に適用してもよい。
10.その他の用途
本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、庭園、公園等のタイル;公園等のベンチなどに設け、公園・庭園施設の電源として使用することも可能である。
また、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、パトライト等の流動表示灯、階段の安全灯、水浄化装置、照度計、電卓、庭園灯(ガーデニングライト)、時計、アドサイン、噴水などに適用してもよい。
また、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、踏切に適用してもよい。その際の構成例を挙げると、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルを踏切に設けるとともに踏切のバーにLED等の光源を取り付け、膜状太陽電池又は太陽電池パネルの電力により踏切のバーに取り付けた光源を点灯又は点滅させるようにすれば、通行者への注意喚起をより確実に行うことができる。
さらに、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、危険地帯警告ユニットに適用してもよい。その際の構成例を挙げると、杭や安全柵等に本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルを設けるとともに杭や安全柵等にLED等の光源を取り付け、膜状太陽電池又は太陽電池パネルの電力により杭や安全柵等に取り付けた光源を点灯又は点滅させるようにすれば、通行者への注意喚起をより確実に行うことができる。
また、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、野外のスイッチ用の照明に適用することもできる。野外の暗所においてはスイッチを見つけるのに苦労することがあるが、当該スイッチを照らす照明を設けると共にこの照明の電源として本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルを設けるようにすれば、夜間においてもスイッチを容易に見つけ出すことができるようになる。
さらに、本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルは、例えば、目的地案内機能付案内マップ等に適用することもできる。目的地探索機能付案内マップは、操作者がマップに取り付けられたボタン等を操作することにより道順等の情報を表示する機能を有するが、この表示機能を実現する機器のための電源として本発明の膜状太陽電池及び太陽電池パネルを設けるようにしてもよい。
本発明の第一実施形態に係る膜状太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の第一実施形態に係る太陽電池パネルの構成を模式的に示す断面図である。 本発明の第二実施形態に係る膜状太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の第二実施形態に係る太陽電池パネルの構成を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1,12 膜状太陽電池
2 第一金属シート
3 第一電極層
4 発電層
5 第二電極層
6 太陽電池素子
7 保護フィルム層
8,14 太陽電池パネル
9 第二金属シート
10 芯材層
11 支持体
13 中間層

Claims (5)

  1. 第一金属シートと、該第一金属シートの表面に直接形成された第一電極層と、光を受けて発電する発電層と、第二電極層とをこの順に備えることを特徴とする膜状太陽電池。
  2. 第一金属シートと、真空中で形成しうる中間層と、第一電極層と、光を受けて発電する発電層と、第二電極層とをこの順に備えることを特徴とする膜状太陽電池。
  3. 該中間層が無機層であることを特徴とする、請求項2記載の膜状太陽電池。
  4. 該第二電極上に保護フィルム層を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜状太陽電池。
  5. 第二金属シートと、樹脂を含んでなる芯材層と、請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜状太陽電池とを、該第二金属シート、該芯材層、該第一金属シート、該第一電極層、該発電層及び該第二電極層がこの順になるように備えることを特徴とする太陽電池パネル。
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