JP2010031416A - アルミナ質繊維集合体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】化学組成がアルミナ成分とシリカ成分の質量比で72〜100/28〜0であり、平均繊維径が3〜8μmで、融着繊維の含有率が本数基準で12%以下であるアルミナ質繊維集合体。回転円盤で紡糸原液を紡糸して繊維を製造する方法において、紡糸原液を乾燥させるために回転円盤に供給する高速気流を、回転円盤の回転方向と逆方向に旋回させ、融着繊維の発生を防止する前記アルミナ質繊維集合体の製造方法。回転円盤に供給する高速気流を回転円盤の回転方向と逆方向に旋回させる整流装置において、整流板と配管内面との接線によって形成される取り付け角度を5〜30°とすることや、紡糸原液を吐出する回転円盤の孔の間隔が1.5〜5.0mmとすることが好ましい。
【選択図】図1
Description
断熱材の分野では、昨今の省エネルギーの流れもありさらなる断熱性能の向上が求められている。断熱性をさらに高める方策として空気層をより多く含んだカサ密度の小さい成形物が求められているが、カサ密度を小さくするには断熱材中の繊維の長さを保ったまま成型する必要がある。成型方法の一つに、繊維を水中で解綿してから成型する湿式法があるが、繊維強度が低いと必然的に繊維が短くなるため、より強度が高い繊維が求められていた。また、把持材は、高い温度環境下で連続使用された場合、徐々に反発力が低下する傾向がある。反発力の低下を少なくするために圧縮荷重に対して強い繊維が求められていた。さらに、健康への配慮から、人体に吸入されやすいと言われている直径の小さい繊維を含まない繊維径の大きい繊維集合体が開発されている(特許文献2)。しかしながら、繊維径が大きくなることで繊維が剛直となるため折れやすくなり、同じ重量で比較した場合、繊維の本数が少なくなるため、所定の厚みや反発力を確保することが難しい場合があった。このため、更なる繊維強度の向上が求められていた。
本発明者らはこれら融着繊維に着目して鋭意検討した結果、融着繊維の含有量を低減することにより、アルミナ質繊維集合体の性能を最大限に引き出し、従来からの課題を解決できることを見出して本発明を完成させるに至った。なお融着繊維の定量は、以下のように実施する。
110℃で1時間乾燥処理したアルミナ質繊維集合体100gを計量する。内径80mmの底付シリンダーに計量した繊維を充填し、2058N/cm2の圧力で圧縮する。一旦圧力を開放してシリンダ内の繊維をほぐした後、再び同じ圧力で圧縮する。圧縮した試料10gをJIS Z 8801の呼び寸法212μmの篩に移し、流水によって篩上と篩下に分離する。分離された篩下のサンプルをろ紙で回収したのち乾燥させ融着繊維を定量するための試料とする。
アルミナ質繊維集合体を上記の方法で圧縮しショットを取り除いた繊維25mgを計量してエタノール20mlに充分分散させ、スポイトなどで吸い上げガラス板上に塗布し乾燥させる。表面を白金−パラジウムなどで蒸着処理を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、KEYENCE製「VE8800」)で観察を行う。倍率は200〜1000倍で撮影し、任意に選ばれた繊維1000本について、融着繊維であるか判別する(図6)。なお、繊維がクロスしているものは融着しているのか、単に重なっているだけなのか判別が難しいため、このような繊維が写っている視野は測定の対象としなかった。計数された融着繊維の本数を観察した本数で割って融着繊維の含有率(本数%)を算出する。融着繊維は1本とカウントする。なお、同一試料であっても試料の粉砕度合いによって融着繊維の含有率は変化する場合があるため、融着繊維であるか否かの判別とともに繊維長も測定する。平均繊維長は20〜50μmであることが好ましく、20μm未満では融着繊維が少なく定量される場合があり、50μmを超えると多く定量される場合がある。このため、繊維の種類によっては粉砕条件を適宜調整する必要がある。なお、ここでいう繊維長とは繊維の最大長を指す。
本発明では、オキシ塩化アルミニウム水溶液等のアルミナ源と、例えば、シリカゾル等のシリカ源を所望の化学組成のアルミナ成分とシリカ成分の比に混合し、さらに、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール等の紡糸助剤を配合してから減圧濃縮して、例えば、粘度が500〜4000mPa・sの粘調な紡糸原液を調製し、それを繊維状に乾燥固化して製造されたものが使用される。紡糸助剤の種類、濃度と紡糸原液の調製方法が非常に重要である。
例えば、紡糸助剤がポリビニルアルコールの場合、その重合度は1700程度が好ましく、その濃度はアルミナ成分とシリカ成分の固形分の合計に対して6〜10質量%が好ましい。6質量%未満では所定粘度まで濃縮を行なっても曳糸性が不十分なため融着繊維が多くなる場合があり、10質量%を超えると紡糸原液の粘度が高くなりやすいため充分に濃縮することができず曳糸性の良い紡糸原液を調製することができない場合がある。
本願発明の融着繊維が少なく繊維強度が高いアルミナ質繊維集合体を製造する第二のポイントは、高速気流の向きを円盤の回転と逆方向に調整し、適度に旋回させることである。円盤から吐出された紡糸液は高速気流によって引き伸ばされるが、円盤が常に回転しているため繊維は図1に示すように螺旋を描いて落下することになる。本願発明者らは鋭意検討を行なった結果、回転円盤の周端部の周速や高速気流の風量に応じて高速気流の方向を調整することによって、繊維同士が融着する割合を大幅に低減できることを見出した。
高速気流の方向は整流板の大きさ、枚数、取り付け角度によって変化するが、主に取り付け角度(θ)によって調節することが好ましい(図3、4、5)。この取り付け角度θとは、高速気流が通過する配管の内面において、整流板と配管内面との接線と高速気流の進行方向によって求められる角度であって、0°の場合には高速気流の方向が変わることがなく、角度をつけると進行方向が変化する。特に限定されるわけではないが、本願発明での好ましい条件を例示すると、回転円盤の周速度が30〜50m/sec、高速気流の風量が10〜30m/secの場合には、整流板の枚数は16枚、取り付け角度は20°前後が好ましい。5°未満や30°を超えると融着繊維の割合が増える場合がある。回転円盤は周速30〜80m/secで回転させることが好ましく、紡糸原液の吐出量は1孔あたり8〜20ml/hrが好ましい。
整流板の大きさは、回転円盤の大きさや高速気流が通過する配管の内径によって適宜変化するため特に限定されるものではないが、一例を示すと図2のαで示される気流と垂直方向の整流板長さは、図2のβで示される回転円盤と高速気流配管のクリアランスの70〜95%が好ましい。95%を超えると整流板と回転円盤が接触する恐れがあり、70%を下回ると整流効果が得られない場合がある。また、図3のγで示される気流進行方向の整流板長さは、気流と垂直方向の長さの3〜10倍が好ましい。
化学組成は、蛍光X線分析、化学分析等の常法によって定量することができる。また、鉱物組成については粉末X線分析によって同定定量することができる。なお、定量が可能なほどX線回折のピークは強くないがピークとして認められる場合には、検出と表記する。なお、本願発明の効果を阻害しない範囲で数質量%程度の不純物を含有しても構わない。
繊維径は、試料を倍率2000倍で撮影し、任意に選ばれた繊維1000本の繊維径を、市販器具(例えばミツトヨ社製デジタルノギス)を用いて測定した。なお、繊維径および繊維長は国際的な標準サンプル(日立サイエンスシステムズ社製、日立標準メゾスケールHMS-2000)で補正する。その補正方法は、まず寸法校正用パターンピッチを試料測定の条件と同一条件で観察し、任意の長さのパターンピッチを10回繰り返して測定しその平均値を算出する。この平均値と標準サンプルに明記された平均値を用い、式、校正係数=(標準サンプルの試験報告書に記載される平均値)/(10回繰り返して測定されたパターンピッチの平均値)、を用いて校正係数を算出する。この校正係数を実際に測定した値にかけることにより補正された値が得られる。
底面積50cm2、質量5gとなるように繊維を円柱状にカットし、円柱上面から荷重3250N、圧力65N/cm2で5分間圧縮する。圧縮した試料を500mlの水中に入れ、繊維が破壊しないようにガラス棒で軽く攪拌して繊維を分散させスラリーとした後、1000mlのメスシリンダーにスラリーを移し変えて、さらに水を500ml加えて1000mlとする。その後、メスシリンダーを10回反転させ、30分間静置したときの繊維スラリー層の容積を水中かさ高さと定義する。強度の小さい繊維を圧縮すると繊維が折れて粉化するため、水中に分散させてからメスシリンダーに移した後の繊維スラリー層の容積は小さくなる。一方、強度の大きい繊維は圧縮しても繊維が折れずに長い状態が保たれるため、繊維スラリー層の容積は大きくなる。つまり、水中かさ高さが大きいほど繊維が折れにくいことを示しており、圧縮荷重に対して強い繊維と言える。
アルミナ成分が97質量%、シリカ成分が3質量%となるように、アルミナ固形分濃度が20.0質量%のオキシ塩化アルミニウム水溶液5000gと、シリカ濃度が20.0質量%のコロイダルシリカ155gとを混合し、さらに、アルミナ成分とシリカ成分の固形分の合計に対して8%となるように重合度1700、固形分濃度10質量%の部分ケン化ポリビニルアルコール水溶液825gを混合してから減圧脱水濃縮を行い、粘度2000mPa・sの紡糸原液を調製した。
この紡糸原液を、円周面に直径0.5mmの孔が孔と孔の間隔1.5mmとなるように複数個設けた直径150mmの中空円盤内に、1孔あたりのフィード量が10mL/hとなるように供給し、この円盤を周速度40m/secで回転させることによって孔から液を糸状に飛び出させた(図1、2)。この紡糸原液を乾燥させるために20m/secの高速気流を内径180mmの円形配管を用いて導入し、図3、4、5に示すように整流装置を用いて高速気流の向きを円盤の回転と逆方向になるように調整した。
また、整流板の枚数は16枚、気流と垂直方向の整流板長さ(α)を10mm、回転円盤と高速気流配管のクリアランス(β)を15mm、気流進行方向の整流板長さ(γ)を50mm、取り付け角度(θ)は表1に示すように変化させた。
その後、乾燥固化された前駆体繊維をコンベア上に積層させトンネル炉を用い昇温速度8℃/分、最高温度1250℃で焼成しアルミナ質繊維集合体を製造した。得られた集合体は表2に示すような物性を有していた。なお、融着繊維の定量に用いたサンプルの平均繊維長はいずれも20〜50μmの範囲であった。
整流板の取り付け角度(θ)を20°に固定し、回転円盤に設ける孔の間隔と紡糸原液のフィード量を表3に示すように変化させたこと以外は実施例1と同様に行なった。また、比較のため、整流板を取り付けなかった場合についても試験を行なった。結果を表4に示す。
整流板の取り付け角度(θ)を20°に固定し、紡糸原液のフィード量を表5に示すように変化させ、アルミナ質繊維集合体の化学組成と有機重合体の添加量が表5に示す割合となるようにしたこと以外は実施例1と同様に行なった。結果を表6に示す。
市販されている既存繊維について、平均繊維径、繊維径分布、融着繊維の含有率、ショット量、水中かさ高さを測定した。結果を表7、8に示す。
2:円盤回転軸
3:整流装置
4:整流板
5:紡糸装置側板
6:前駆体繊維
7:高速気流
8:融着繊維
α:整流板長さ(気流垂直方向)
β:回転円盤と高速気流配管のクリアランス
γ:整流板長さ(気流進行方向)
θ:整流板取り付け角度
Claims (4)
- 化学組成がアルミナ成分とシリカ成分の質量比で72〜100/28〜0であり、平均繊維径が3〜8μmで、融着繊維の含有率が本数基準で12%以下であることを特徴とするアルミナ質繊維集合体。
- 回転円盤で紡糸原液を紡糸して繊維を製造する方法において、紡糸原液を乾燥させるために回転円盤に供給する高速気流を、回転円盤の回転方向と逆方向に旋回させ、融着繊維の発生を防止することを特徴とする請求項1に記載のアルミナ質繊維集合体の製造方法。
- 回転円盤に供給する高速気流を回転円盤の回転方向と逆方向に旋回させる整流装置において、整流板と配管内面との接線によって形成される取り付け角度を5〜30°とすることを特徴とする請求項2に記載のアルミナ質繊維集合体の製造方法。
- 紡糸原液を吐出する回転円盤の孔の間隔が1.5〜5.0mmであることを特徴とする請求項2または3に記載のアルミナ質繊維集合体の製造方法。
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