JP5324355B2 - ハニカム構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルター等の集塵用フィルターとして好適に使用されるハニカム構造体に関する。
排ガス用の捕集フィルター、例えば、ディーゼルエンジン等からの排ガスに含まれているスート等の粒子状物質(パティキュレートマター(PM))を捕捉して除去するためのディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)として、ハニカム構造体が広く使用されている。
このようなハニカム構造体(フィルター)を長期間継続して使用するためには、定期的にフィルターに再生処理を施す必要がある。すなわち、フィルター内部に経時的に堆積したPMにより増大した圧力損失を低減させてフィルター性能を初期状態に戻すため、フィルター内部に堆積したPMを燃焼させて除去する必要がある。このフィルター再生時には、フィルター内部に堆積したPMが流体(排ガス)の入口側から順に燃焼するため、出口側に近い部位ほど、前方で発生した熱とその場でPMが燃焼した熱とによる温度上昇が激しくなる。そのため、フィルター各部の温度上昇が不均一になりやすく、熱応力によってクラック等の欠陥を発生させるという問題があった。
このような問題に対し、ハニカム構造体を複数のハニカム形状のセグメント(ハニカムセグメント)から構成し、各ハニカムセグメント間を弾性質素材からなる接合材で接合一体化した構造とすることにより、ハニカム構造体に作用する熱応力を分散、緩和する方法が提案され(例えば、特許文献1参照)、それによって耐熱衝撃性をある程度改善できるようになったが、近年のフィルターの大型化に伴う熱応力の増大により、この方法だけでは十分な効果が得られにくくなってきている。
すなわち、複数のハニカムセグメントを接合材で接合してハニカム構造体を構成した場合、フィルター再生時に、隣接するセグメント間に温度差が生じて、当該温度差に起因する内部せん断応力が発生し、この内部せん断応力をセグメント間に存在する接合材で十分に緩和できないときは、接合部(主にセグメントと接合材との界面)で破断が生じる。
このフィルター再生時の接合部における破断防止対策としては、先ず、セグメント間の接合部のせん断強度を高めて、より高い内部せん断応力に耐えられるようにすることが考えられる。しかしながら、セグメント間の熱伝達が悪いために、セグメント間の温度差が大きくなって、当該温度差に起因する内部せん断応力が高まりすぎる場合には、接合部のせん断強度を高めても、接合部が破断する恐れがある。
また、他の対策として、隣接するセグメント間の熱伝達を良くして、セグメント間の温度差を小さくし、セグメント間の温度差に起因する内部せん断応力自体を小さく抑えることが考えられる。しかしながら、接合部のせん断強度が低すぎる場合には、発生する内部せん断応力自体が小さくても、接合部が破断する恐れがある。
特開2000−279729号公報
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、DPFに用いた場合において、フィルター再生時に隣接するセグメント間の接合部の破断が生じにくい、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のハニカム構造体が提供される。
[1] 流体の入口側となる入口側端面と、流体の出口側となる出口側端面と、当該2つの端面の外周部を繋ぐ外壁と、当該外壁の内側において前記2つの端面間に多孔質体の隔壁によって区画形成された、流体の流路となる複数のセルとを有し、所定の前記セルの開口部を前記入口側端面で目封止するとともに、残余の前記セルの開口部を前記出口側端面で目封止する目封止部を備えたハニカム形状のセグメントの複数個が、無機粒子を含む接合材にて前記外壁同士が接合されることにより一体化されてなるハニカム構造体であって、前記ハニカム構造体より、隣接する2本のセグメントを接合材で接合された状態のまま切り出してせん断強度測定用の試料とし、当該試料の一方のセグメントを固定し、もう一方のセグメントに対してセルの貫通方向から荷重をかけることにより測定されたせん断強度をP(単位:kPa)とし、前記ハニカム構造体より、接合材とそれにより接合されている隣接するセグメントの外壁部分とを接合された状態のまま切り出して熱拡散率測定用の試料とし、当該試料についてレーザーフラッシュ法により測定された熱拡散率をα(単位:cm/s)としたとき、Pとαとが下式(1)の関係を満たすハニカム構造体。
α>−8.08×10−6×P+0.0159 (1)
[2] 前記入口側端面の開口率が、前記出口側端面の開口率より大きい[1]に記載のハニカム構造体。
[3] 前記隔壁に触媒成分が担持された[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
本発明のハニカム構造体は、セグメント間のせん断強度とセグメント間の熱伝達に関する物性値である熱拡散率とを関連付けて、両物性値が所定の関係を満たすようにしたことにより、DPFに用いた場合において、フィルター再生時に隣接するセグメント間の接合部の破断が生じにくく、優れた耐熱衝撃性を発揮する。
本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の他の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の更に他の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の更に他の一例を模式的に示す概略断面図である。 本発明のハニカム構造体の基本構造の一例を示す概略斜視図である。 本発明のハニカム構造体を構成するハニカムセグメントの他の一例を示す概略斜視図である。 入口側端面と出口側端面とで開口率が異なるハニカム構造体の実施形態の一例を示す入口側端面の部分拡大図である。 入口側端面と出口側端面とで開口率が異なるハニカム構造体の実施形態の一例を示す出口側端面の部分拡大図である。 ハニカムセグメントの外壁表面の表面粗さや局部山頂の間隔が、ハニカムセグメントの外壁と接合材に含まれる無機粒子との接合状態に与える影響を模式的に示した説明図である。 ハニカムセグメントの外壁表面の表面粗さや局部山頂の間隔が、ハニカムセグメントの外壁と接合材に含まれる無機粒子との接合状態に与える影響を模式的に示した説明図である。 ハニカムセグメントの外壁表面の表面粗さや局部山頂の間隔が、ハニカムセグメントの外壁と接合材に含まれる無機粒子との接合状態に与える影響を模式的に示した説明図である。 ハニカムセグメントの外壁表面の表面粗さや局部山頂の間隔が、ハニカムセグメントの外壁と接合材に含まれる無機粒子との接合状態に与える影響を模式的に示した説明図である。 熱拡散率測定用の試料の概略図である。 実施例1〜5及び比較例1〜8の結果を示すグラフである。 実施例6〜10及び比較例9〜14の結果を示すグラフである。 実施例11〜14及び比較例15〜22の結果を示すグラフである。 実施例15〜21及び比較例23〜30の結果を示すグラフである。 実施例22及び23並びに比較例31及び32の結果を示すグラフである。 図14〜18を1つにまとめて表したグラフである。
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
本発明のハニカム構造体は、ハニカム形状のセグメント(ハニカムセグメント)の複数個が、接合材にて一体化されてなるものである。図5は本発明に係るハニカム構造体の基本構造の一例を示す概略斜視図であり、図6は本発明に係るハニカム構造体を構成するハニカムセグメントの一例を示す概略斜視図である。
図6に示すように、ハニカムセグメント2は、流体の入口側となる入口側端面10と流体の出口側となる出口側端面11とを有している。この2つの端面の外周部は外壁8により繋がれ、外壁8の内側において、流体の流路となる複数のセル(貫通孔)5が多孔質の隔壁3によって区画形成されている。なお、DPFのようなフィルターとして使用する場合には、所定セルの開口部を入口側端面で目封止するとともに、残余のセルの開口部を出口側端面で目封止する目封止部を配設するのが一般的であり、通常は、一方の端面が目封止部9により市松模様を呈するよう目封止し、他方の端面が目封止部により、これと相補的な市松模様を呈するよう目封止する。すなわち、隣接するセルの開口部が互いに反対側の端面にて目封止されるように目封止部を形成する。
このように目封止が施されたハニカムセグメントから構成されるハニカム構造体の一端面(入口側端面)よりスート等のPMを含む流体を通気させると、流体は、当該一端面側において開口部が目封止さていないセルよりハニカム構造体の内部に流入し、濾過能を有する多孔質の隔壁を通過して、他端面(出口側端面)側が目封止されていない他の流通孔に入る。そして、この隔壁を通過する際に流体中のPMが隔壁に補足され、PMが除去された浄化後の流体が他端面より排出される。
図5のように、本発明のハニカム構造体は、ハニカムセグメント2の複数個を、それらの外壁同士を接合することにより一体化して構成される。ハニカムセグメント2の接合には接合材が使用される。この接合材は、無機粒子を含むものであり、その他の成分として、無機繊維、コロイド状酸化物を含むことが好ましい。ハニカムセグメントの接合時には、これらの成分に加え、必要に応じて、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の有機バインダー、分散剤、水等を加え、それをミキサー等の混練機を使用して混合、混練してペースト状にしたものが好適に使用できる。
接合材に含まれる無機粒子の構成材料としては、例えば、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、アルミニウムチタネート、チタニア及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるセラミックス、Fe−Cr−Al系金属、ニッケル系金属、珪素−炭化珪素系複合材料等を好適に用いることができる。
無機繊維としては、アルミノシリケート、炭化珪素等のセラミックファイバー、銅、鉄等のメタルファイバー等を好適に用いることができる。コロイド状酸化物としては、シリカゾル、アルミナゾル等が好適なものとして挙げられる。コロイド状酸化物は、接合材に適度な接着力を付与するために好適であり、また、乾燥・脱水することによって無機繊維及び無機粒子と結合し、乾燥後の接合材を、耐熱性等に優れた強固なものとすることができる。
このような接合材をハニカムセグメントの被接合面となる外壁表面に所定の厚さで塗布して複数個のハニカムセグメントを組み合わせた後、接合材を乾燥硬化させることにより、複数個のハニカムセグメントが一体化されたハニカム構造体とする。その後、必要に応じ、外周部を研削加工するなどして、円柱状等の所望形状に加工してもよい。なお、この場合、加工により外壁が除去され、内部の隔壁とセルが露出した状態となるので、露出面をコーティング材で被覆するなどして外壁を再形成することが好ましい。
本発明のハニカム構造体に使用されるハニカムセグメントは、基本的には、ハニカム形状で多孔質の基材(ベース基材)のみからなるものであるが、このようなベース基材の一部に、ベース基材の平均細孔径より小さい粒子を含むスラリーを含浸後、熱処理することによって、修飾部(緻密化部)を形成したものであってもよい。このような修飾部を有するハニカムセグメントは、本発明のハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメントに用いられていても良いし、本発明のハニカム構造体を構成するハニカムセグメントの内の一部のハニカムセグメントに用いられていても良い。例えば、ハニカム構造体の外周部に位置する外周セグメントは、ベース基材のみからなり、残余のセグメント、すなわち外周セグメントの内側に位置する中央セグメントは、ベース基材の一部に修飾部が形成されたものとすることができる。
修飾部は、ハニカム構造体をDPFに用いた場合において、フィルター再生時に過剰に昇温しやすい出口側端面付近の熱容量及び熱伝導率を増加させて昇温を適度に抑制し、耐熱衝撃性を向上させる目的で形成されるものであるが、本発明のハニカム構造体では、この修飾部の形成によって圧力損失が上昇し過ぎないように、その形成範囲を限定することが好ましい。修飾部の具体的な形成範囲は、ハニカムセグメントの出口側端面から、セルの軸方向に沿って、ハニカムセグメント全長の1/10〜1/2の長さまでの範囲とすることが好ましい。修飾部の形成範囲がハニカムセグメント全長の1/10に満たないと、フィルター再生時における出口側端面付近の過剰な昇温を効果的に抑制するだけの熱容量を確保することが困難となる場合があり、ハニカムセグメント全長の1/2を超えると、修飾部によって圧力損失が上昇してしまうため、エンジン出力を低下させ、実用性に問題が生じる場合がある。
修飾部の形成範囲を前記のように限定することにより、フィルター再生時の出口側付近の温度上昇が適度に抑えられるとともに、圧力損失の過度な上昇も抑えられ、フィルターとしてのバランスに優れたハニカム構造体となる。また、前記のように、修飾部を形成するハニカムセグメントを、中央セグメントのみに限定すれば、修飾部の形成による圧力損失の上昇がより抑えやすくなる。
本発明のハニカム構造体は、当該ハニカム構造体より、隣接する2本のハニカムセグメントを接合材で接合された状態のまま切り出してせん断強度測定用の試料とし、当該試料の一方のハニカムセグメントを固定し、もう一方のハニカムセグメントに対してセルの貫通方向から荷重をかけることにより測定されたせん断強度をP(単位:kPa)とし、また、当該ハニカム構造体より、接合材とそれにより接合されている隣接するハニカムセグメントの外壁部分とを接合された状態のまま切り出して熱拡散率測定用の試料とし、当該試料についてレーザーフラッシュ法により測定された熱拡散率をα(単位:cm/s)としたとき、Pとαとが下式(1)の関係を満たすことを、その主要な特徴とするものである。
α>−8.08×10−6×P+0.0159 (1)
本発明において、レーザーフラッシュ法による熱拡散率の測定は、JIS R 1611−1997に準拠して行うものとする。なお、通常、熱拡散率は単一物質について測定される物性値であるが、本発明においては、図13に示すように、接合材17とそれにより接合されている隣接するハニカムセグメントの外壁8部分とを積層状態のまま切り出したものを熱拡散率測定用の試料19としている。ここで、切り出された試料19におけるハニカムセグメントの外壁8部分の厚さは0.5mm、接合材17の厚さは1mmである。なお、外壁8に対し垂直に形成されていた隔壁部分は削り落としてある。
前記のようにして測定された接合部のせん断強度Pとハニカムセグメント間の温度差とには、マクロ的に見て以下のようなメカニズムが存在する。すなわち、ハニカム構造体をDPFに用いた場合において、その内部に不均一に堆積したスス(カーボン)を燃焼させてフィルター機能を再生するときの各セグメント間の燃焼温度差から発生する隣接するセグメント間の熱膨張差に着目すると、セグメント間の温度差が小さければ発生する熱膨張差に起因する内部せん断応力も小さいものとなり、ある程度せん断強度が低くとも破壊に至らず形状を保持し得る。また、ハニカムセグメント間の温度差が大きいためセグメント間の熱膨張差が大きくなり、それによって内部せん断応力が大きくなろうとも、セグメント間のせん断強度が十分に大きければ、これも破壊に至らず形状を保持し得る。
このようなメカニズムに基づいて、本発明者が検討した結果、前記のようにして測定された熱拡散率αとせん断強度Pとが上式(1)の関係を満たしていれば、フィルター再生時に接合部が破断に至らず、良好な耐熱衝撃性を発揮することがわかった。熱拡散率αは、物質内部を温度変化が伝わっていく速さを表す物性値であり、本発明のハニカム構造体をDPFに用いる場合においては、フィルター再生時に隣接するハニカムセグメント間に生じる温度差の大きさを決定付ける要因となる。
なお、従来は、新規な開気孔率や平均気孔径等の仕様を持ったハニカム構造体を製造する場合や、新規の材料、 例えば、セグメントの材質と接合材の材質との新規組合せ等を開発するに当たって、それら新規な仕様や材料を持ったハニカム構造体が良好な耐熱衝撃性を発揮するものであるかを調べるには、長時間の耐久試験を必要としたが、せん断強度と熱拡散率とを求めて 上式(1)の関係式を満足するか否かを判断することにより、簡便・迅速に新たな仕様、材料、製造条件等を見出すことができる。すなわち、上式(1)を用いることにより、良好な耐熱衝撃性を有するハニカム構造体の新たな仕様、材料、製造条件を求めることができる。
熱拡散率αの値は、ハニカムセグメント外壁表面と接合材に含まれる無機粒子との接触面積によって大きく左右され、この接触面積が大きい程、ハニカムセグメントと接合材との間の熱の授受がスムーズになって、熱拡散率αの値が高くなる。また、せん断強度Pは、ハニカムセグメントの外壁表面の凹凸に、接合材に含まれる無機粒子が食い込むことにより生ずる効果(アンカー効果)によって発現する。
図9〜図12は、ハニカムセグメントの外壁表面の表面粗さや局部山頂の間隔が、ハニカムセグメントの外壁と接合材に含まれる無機粒子との接合状態に与える影響を示したものであり、この内、図9と図11との比較より、ハニカムセグメントの外壁8表面の表面粗さや接合材に含まれる無機粒子15の粒子径が同程度の場合には、局部山頂の間隔が広い方が無機粒子15がハニカムセグメント外壁8表面の谷(凹部)に入り込みやすく、外壁8表面と無機粒子15により囲まれた空隙が生じる現象(いわゆるブリッジ)が起こりにくくなって、ハニカムセグメントと接合材との接触面積が増大すると考えられる。また、その一方で、局部山頂の間隔が広くなるにつれて、外壁表面上の同一の長さにおける凹凸の数は減少するので、アンカー効果は低減する。
このようにハニカムセグメント外壁表面の局部山頂の間隔が、ハニカムセグメントと接合材との接触面積やアンカー効果に及ぼす影響に着目すると、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメントが、修飾部を有さず、ベース基材のみからなるものである場合は、ハニカムセグメントの外壁表面の局部山頂の平均間隔Sを10〜140μm、より好ましくは15〜100μmとし、接合材に含まれる無機粒子の平均粒子径を0.5〜30μm、より好ましくは1.0〜15μmとしたときに、十分なアンカー効果を確保でき、ハニカムセグメントと接合材との間の良好なせん断強度Pが得られるとともに、ハニカムセグメント外壁表面と無機粒子との接触面積を大きく保つことができ、ハニカムセグメントと接合材との間の熱の授受がスムーズになって、高い熱拡散率αが得られる。なお、本願明細書において、「局部山頂の平均間隔S」とは、JIS B 0601−1994に規定された値であって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分において隣り合う局部山頂間に対応する平均線の長さ(局部山頂の間隔)を求め、この多数の局部山頂の間隔の算術平均値を示したものである。
この局部山頂の平均間隔Sが10μm未満では、ハニカムセグメントと接合材との接触面積が減少し、両者間の熱の授受がスムーズに行えなくなって、熱拡散率αの値が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。一方、平均間隔Sが140μmを超えると、十分なアンカー効果が得られず、せん断強度が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。
同様に、ハニカムセグメント外壁表面の局部山頂の間隔が、ハニカムセグメントと接合材との接触面積やアンカー効果に及ぼす影響に着目すると、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメント又は中央セグメントのような一部のハニカムセグメントが、ベース基材の一部に修飾部を形成したものである場合は、修飾部の形成部位を除いたベース基材の外壁表面の局部山頂の平均間隔Sを10〜125μm、より好ましくは15〜100μmとし、接合材に含まれる無機粒子の平均粒子径を0.5〜30μm、より好ましくは1.0〜15μmとしたときに、十分なアンカー効果を確保でき、ハニカムセグメントと接合材との間の良好なせん断強度Pが得られるとともに、ハニカムセグメント外壁表面と無機粒子との接触面積を大きく保つことができ、ハニカムセグメントと接合材との間の熱の授受がスムーズになって、高い熱拡散率αが得られる。
この局部山頂の平均間隔Sが10μm未満では、ハニカムセグメントと接合材との接触面積が減少し、両者間の熱の授受がスムーズに行えなくなって、熱拡散率αの値が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。一方、平均間隔Sが125μmを超えると、十分なアンカー効果が得られず、せん断強度が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。
また、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメント又は中央セグメントのような一部のハニカムセグメントが、ベース基材の一部に修飾部を形成したものである場合は、修飾部の外壁表面の局部山頂の平均間隔Sを、修飾部の形成部位を除いた前記ベース基材の外壁表面の局部山頂の平均間隔Sより0.1〜70μm大きくすることが好ましく、1〜50μm大きくすることがより好ましい。修飾部の外壁表面の局部山頂の平均間隔Sをこのような範囲とすることにより、ベース基材の修飾部を形成していない部位と修飾部との境界において、外壁表面と接合材との間で良好な接合強度が得られ、ベース基材の修飾部を形成していない部位と修飾部との境界でセグメントと接合材の剥離が生じ難くなる。
図9と図10との比較より、外壁8表面の局部山頂の間隔や接合材に含まれる無機粒子15の粒子径が同程度の場合には、外壁8表面の表面粗さが大きい(粗い)方が無機粒子15がハニカムセグメント外壁8表面の谷(凹部)に入り込みにくく、いわゆるブリッジが起こりやすくなって、ハニカムセグメントと接合材との接触面積が減少すると考えられる。また、その一方で、外壁8表面の表面粗さが小さくなるにつれて、アンカー効果は低減する。
このようにハニカムセグメント外壁表面の表面粗さが、ハニカムセグメントと接合材との接触面積やアンカー効果に及ぼす影響に着目すると、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメントが、修飾部を有さず、ベース基材のみからなるものである場合は、ハニカムセグメントの外壁表面の算術平均表面粗さRaを0.4〜23.5μm、より好ましくは1〜17.5μmとし、接合材に含まれる無機粒子の平均粒子径を0.5〜30μm、より好ましくは1.0〜15μmとしたときに、ハニカムセグメントと接合材との間の接合強度と熱の授受とのバランスがより良好になることがわかった。なお、本願明細書において、「平均表面粗さRa」とは、JIS B 0601−1994に規定された値であって、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値を示したものである。
この算術平均表面粗さRaが0.4μm未満では、十分なアンカー効果が得られず、せん断強度が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。一方、Raが23.5μmを超えると、無機粒子がハニカムセグメント外壁表面の谷(凹部)まで入りきらず、接合材の乾燥時に、ハニカムセグメントと接合材との界面にクラックが生じやすくなり、また、ハニカムセグメントと接合材との接触面積が減少し、両者間の熱の授受がスムーズに行えなくなって、熱拡散率αの値が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。
また、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメントが、修飾部を有さず、ベース基材のみからなるものである場合は、同様にハニカムセグメントと接合材との間の接合強度と熱の授受とのバランスをより良好にする観点から、ハニカムセグメント外壁表面の局部山頂の平均間隔Sと算術平均表面粗さRaとの比(S/Ra)を1.8〜37.5とすることが好ましく、4〜27.5とすることがより好ましい。
S/Raが1.8未満では、ハニカムセグメントと接合材との間の熱の授受がスムーズに行えなくなって、熱拡散率αの値が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。一方、S/Raが37.5を超えると、せん断強度が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。
同様に、ハニカムセグメント外壁表面の表面粗さが、ハニカムセグメントと接合材との接触面積やアンカー効果に及ぼす影響に着目すると、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメント又は外周セグメントのような一部のハニカムセグメントが、ベース基材の一部に修飾部を形成したものである場合は、修飾部の形成部位を除いたベース基材の外壁表面の算術平均表面粗さRaを0.4〜20μm、より好ましくは1〜15μmとし、接合材に含まれる無機粒子の平均粒子径を0.5〜30μm、より好ましくは1.0〜15μmとしたときに、ハニカムセグメントと接合材との間の接合強度と熱の授受とのバランスがより良好になることがわかった。
この算術平均表面粗さRaが0.4μm未満では、十分なアンカー効果が得られず、せん断強度が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。一方、Raが20μmを超えると、無機粒子がハニカムセグメント外壁表面の谷(凹部)まで入りきらず、接合材の乾燥時に、ハニカムセグメントと接合材との界面にクラックが生じやすくなり、また、ハニカムセグメントと接合材との接触面積が減少し、両者間の熱の授受がスムーズに行えなくなって、熱拡散率αの値が低くなる傾向にあるため、上式(1)を満たすハニカム構造体が得られ難い。
また、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメント又は中央セグメントのような一部のハニカムセグメントが、ベース基材の一部に修飾部を形成したものである場合は、修飾部の外壁表面の算術平均表面粗さRaを、修飾部の形成部位を除いたベース基材の外壁表面の算術平均表面粗さRaより0.01〜7.5μm大きくすることが好ましく、0.05〜5μm大きくすることがより好ましい。修飾部の外壁表面の算術平均表面粗さRaをこのような範囲とすることにより、ベース基材の修飾部を形成していない部位と修飾部との境界において、外壁表面と接合材との間で良好な接合強度が得られ、ベース基材の修飾部を形成していない部位と修飾部との境界でセグメントと接合材の剥離が生じ難くなる。
また、本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメント又は中央セグメントのような一部のハニカムセグメントが、ベース基材の一部に修飾部を形成したものである場合は、ハニカムセグメントと接合材との間の接合強度と熱の授受とのバランスをより良好にする観点から、修飾部の形成部位を除いたベース基材の外壁表面の局部山頂の平均間隔Sと算術平均表面粗さRaとの比(S/Ra)を1〜35とすることが好ましく、3〜25とすることがより好ましい。また、修飾部の外壁表面の局部山頂の平均間隔Sと算術平均表面粗さRaとの比(S/Ra)を4〜40とすることが好ましく、7〜30とすることがより好ましい。
ハニカムセグメントの内、修飾部の形成される出口側の部位は、DPFの再生時に高温化しやすい部位であるため、接合強度よりもハニカムセグメントと接合材との間の熱の授受のスムーズさが特性として優先される。一方、修飾部の形成部位を除いた入口側の部位については、修飾部に比して高温に晒され難いので、熱の授受のスムーズさよりも接合材との間の接合強度が特性として優先される。修飾部のS/Raと、修飾部の形成部位を除いたベース基材のS/Raとを、それぞれ前記好適範囲とすることで、各々の部位において優先される特性が発揮されやすくなり、各々の部位の役割分担により、ハニカムセグメントと接合材との間の良好な接合強度とスムーズな熱の授受とを同時に達成することが容易となる。
外壁表面の局部山頂の平均間隔Sや算術平均表面粗さRaは、ベース基材の製造に用いる原料粒子や修飾部の形成に用いるスラリー中の粒子の粒子径分布、焼成条件等を制御することによって、所定の範囲となるよう調節することが可能である。また、外壁表面の局部山頂の平均間隔Sや算術平均表面粗さRaは、一旦ハニカムセグメントを作製した後、その外壁にセラミック粒子等の粒子を含む下地材を塗布することにより変化させることができ、この下地材中の粒子の粒子径分布を調節することによって、局部山頂の平均間隔Sや算術平均表面粗さRaを所定の範囲となるよう調節することも可能である。
本発明のハニカム構造体においては、ハニカムセグメントと接合材との間の接合強度と熱の授受とのバランスを良好にする観点から、接合材に含まれる無機粒子の平均粒子径を0.5〜30μmとすることが好ましく、1.0〜15μmとすることがより好ましい。なお、本願明細書において、「平均粒子径」とは、JIS R1629に準拠して測定した50%粒子径の値を意味するものとする。この平均粒子径を測定するための計測装置としては、例えば、(株)堀場製作所製のLA−920(商品名)を使用することができる。
接合材に含まれる無機粒子の平均粒子径が0.5μm未満では無機粒子がハニカムセグメントの内部まで侵入してしまい、それにより接合材の材料比が変化して接合強度が減少する場合があり、30μmを超えるとハニカムセグメント外壁表面の凹部に無機粒子が入り込みにくくなって十分なアンカー効果が得られなくなったり、ハニカムセグメント外壁表面と無機粒子との接触面積が減少して、ハニカムセグメントと接合材との間の熱の授受に支障をきたしたりする場合がある。接合材に含まれる無機粒子の平均粒子径を前記範囲内とすることは、ハニカムセグメントと接合材との間の必要な接合強度の確保しやすくするという点、及びそれらの間の熱の授受をスムーズにするという点との双方において効果的である。なお、無機粒子の平均粒子径が前記範囲内である場合、接合材にてハニカムセグメントを接合する際のハニカムセグメント外壁表面に対する無機粒子の挙動はほぼ同一である。
本発明のハニカム構造体におけるハニカムセグメント(ベース基材)の気孔率は、30〜80%であることが好ましく、45〜80%であることがより好ましい。気孔率が30%未満では本発明のハニカム構造体をDPF等のフィルターに用いる場合に圧力損失が大きすぎ、80%を超えるとフィルター再生時の最高温度が上昇しすぎて、実用上問題が生じる場合がある。また、発明のハニカム構造体におけるハニカムセグメント(ベース基材)の平均細孔径は、5〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。平均細孔径が5μm未満では、本発明のハニカム構造体をDPF等のフィルターに用いる場合に圧力損失が大きすぎ、40μmを超えるとPMを捕集するフィルター機能が低下しすぎて、実用上問題が生じる場合がある。
本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメント又は中央セグメントのような一部のハニカムセグメントが、ベース基材の一部に修飾部を形成したものである場合、修飾部の気孔率は、ベース基材の気孔率より2〜20%低い気孔率(ベース基材の気孔率から2〜20%差し引いた値)であることが好ましく、3〜12%低い気孔率であることがより好ましい。ベース基材の気孔率に対する修飾部の気孔率の減少量が2%未満では、修飾部の形成による効果、すなわちフィルター再生時における出口側端面付近の過剰な昇温を抑制する効果が十分に得られない場合があり、20%を超えると圧力損失が大きくなり過ぎる場合がある。また、修飾部の平均細孔径は、ベース基材の平均細孔径より0.1〜10μm小さい平均細孔径であることが好ましく、0.1〜5μm小さい平均細孔径であることがより好ましい。ベース基材の平均細孔径に対する修飾部の平均細孔径の減少量が0.1μm未満では、修飾部の形成による効果が十分に得られない場合があり、10μmを超えると、圧力損失が大きくなり過ぎる場合がある。
なお、本発明のハニカム構造体における「気孔率」は、ハニカムセグメントから隔壁厚みの平板を試験片として切り出し、アルキメデス法で測定したものであり、「平均細孔径」は、ハニカムセグメントから所定形状(□5×15mm)の試験片を切り出し、水銀ポロシメーターで測定したものである。
本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメントが、ベース基材の一部に修飾部を形成したものである場合、修飾部の長さ、気孔率及び平均細孔径は、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメントにおいて同一であっても良いし、前記限定範囲内であれば、ハニカム構造体を構成するセグメントの内、ハニカム構造体の外周部に位置する外周セグメントと、その内側に位置する中央セグメントとで、修飾部の気孔率、平均細孔径及び長さの何れか1つ以上が異なっていても良い。
図1は、本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の一例を模式的に示す概略断面図である。この実施形態では、ハニカム構造体1の外周部に位置する外周セグメント2aの修飾部7aと、外周セグメント2aの内側に位置する中央セグメント2bの修飾部7bとの長さが同一であり、これら修飾部7a、7bの気孔率と平均細孔径も同一である。
図2は、本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の他の一例を模式的に示す概略断面図である。この実施形態では、ハニカム構造体1の外周部に位置する外周セグメント2aの修飾部7aと、外周セグメント2aの内側に位置する中央セグメント2bの修飾部7bとの長さが同一であるが、中央セグメント2bの修飾部7bの方が外周セグメント2aの修飾部7aよりも気孔率と平均細孔径が低く(小さく)なるような構成としている。フィルターの再生時には出口側端面付近が温度上昇しやすいが、更にこの出口側端面付近においても、特に径方向の断面中央部は外部に熱が逃げにくく、外周部より温度上昇しやすい傾向にあるので、このように中央セグメント2bの修飾部7bをより緻密化して熱容量と熱伝導率を高め、温度分布の不均一による熱応力の発生を緩和することが好ましい。
図3は、本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の更に他の一例を模式的に示す概略断面図である。この実施形態では、ハニカム構造体1の外周部に位置する外周セグメント2aの修飾部7aと、外周セグメント2aの内側に位置する中央セグメント2bの修飾部7bとの気孔率及び平均細孔径は同一であるが、中央セグメント2bの修飾部7bの方が外周セグメント2aの修飾部7aより長さが長くなるような構成としている。先述のとおり、出口側端面付近でも、特に径方向の断面中央部は外部に熱が逃げにくく、外周部より温度上昇しやすい傾向にあるので、このように中央セグメント2bの修飾部7bをより長くして熱容量と熱伝導率を高め、温度分布の不均一による熱応力の発生を緩和することが好ましい。
図4は、本発明のハニカム構造体における修飾部の形成状態の更に他の一例を模式的に示す概略断面図である。この実施形態では、ハニカム構造体1の外周部に位置する外周セグメント2aには修飾部が形成されておらず、外周セグメント2aの内側に位置する中央セグメント2bにのみ修飾部7bが形成された構成としている。先述のとおり、出口側端面付近でも、特に径方向の断面中央部は外部に熱が逃げにくく、外周部より温度上昇しやすい傾向にあるので、このように中央セグメント2bにのみ修飾部7bを形成して熱容量と熱伝導率を高め、温度分布の不均一による熱応力の発生を緩和するのも好ましい形態である。
なお、本発明のハニカム構造体においては、ハニカム構造体の外周部を形成するのに必要な個数である限り、外周セグメントの個数は特に限定されず、また、外周セグメントの内側に存在する限り、中央セグメントの個数も特に限定されない。
本発明のハニカム構造体におけるハニカムセグメント(ベース基材)の構成材料としては、強度、耐熱性等の観点から、炭化珪素、炭化珪素を骨材とし珪素を結合材として形成された珪素−炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、Fe−Cr−Al系金属からなる群より選択される少なくとも一種の材料を好適なものとして挙げることができる。また、目封止部の構成材料には、ハニカムセグメントとの熱膨張差を小さくするため、ハニカムセグメントと同じ材料を用いることが好ましい。
本発明のハニカム構造体におけるハニカムセグメント(ベース基材)の製造方法には、従来公知の方法を用いることができる。具体的な方法の一例としては、前記のような材料に、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等のバインダー、造孔材、界面活性剤、溶媒としての水等を添加して、可塑性の坏土とし、この坏土を所定のハニカム形状となるように押出成形し、次いで、マイクロ波、熱風等によって乾燥した後、焼成する。焼成は、セルに目封止部を形成する前に行っても良いし、セルに目封止部を形成した後で、目封止部の焼成と一緒に行うようにしても良い。
セルを目封止する方法にも、従来公知の方法を用いることができる。具体的な方法の一例としては、ハニカムセグメントの端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止しようとするセルに対応した位置に穴を開け、このシートを貼り付けたままの状態で、目封止部の構成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカムセグメントの端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填し、それを乾燥及び/又は焼成して硬化させる。
本発明のハニカム構造体におけるハニカムセグメント(ベース基材)の気孔率や平均細孔径は、材料の粒径、造孔材の粒径や添加量、焼成条件などによって調節することができる。
DPFに使用されるハニカム構造体は、全てのセルが同形状(通常は四角形)で同じ開口面積を持ち、それらが入口側端面と出口側端面とで市松模様を呈するよう交互に目封止され、入口側端面と出口側端面の開口率が同等であるのが一般的であるが、最近は、スート捕集後の圧力損失の上昇抑制等を目的として、入口側端面の開口率を出口側端面の開口率よりも大きくしたハニカム構造体も提案されており、本発明のハニカム構造体にも、このような構造を適用することができる。
図7及び図8は、入口側端面と出口側端面とで開口率が異なる目封止ハニカム構造体の実施形態の一例を示しており、図7は入口側端面の部分拡大図、図8は出口側端面の部分拡大図である。これらの図に示すように、この実施形態においては、四角形セル5aとそれよりも開口面積の大きい八角形セル5bとが、各端面上の直交する二方向において交互に配列されており、四角形セル5aについては入口側端面にて目封止部9による目封止が施され、八角形セル5bについては出口側端面にて目封止部9による目封止が施された状態になっている。このように入口側端面では開口面積の大きい八角形セル5bを開口させ、出口側端面では開口面積の小さい四角形セル5aを開口させることで、入口側端面の開口率を出口側端面の開口率よりも大きくすることができる。
本発明のハニカム構造体において、ハニカム構造体を構成する全てのハニカムセグメント又は中央セグメントのような一部のハニカムセグメントを、ベース基材の一部に修飾部が形成されたものとする場合、その修飾部の形成は、例えば、ベース基材の平均細孔径より小さい粒子を含む修飾用スラリーを調製し、このスラリーにベース基材の一端面側から、修飾部を形成しようとする所定の長さまで浸漬して、スラリーを含浸、すなわちベース基材の隔壁の細孔内にスラリー中の粒子を充填させ、その後、熱処理を施すという方法より行うことができる。
修飾用スラリーには、最終的に隔壁に残存する成分であり、化学的に又は物理的に変化するものも、除去されるものでなければ含まれ得る。修飾用スラリーには、緻密化するための粒子として、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、アルミニウムチタネート、チタニア、及びこれらの組合せよりなる群から選ばれるセラミックス、Fe−Cr−Al系金属、ニッケル系金属、又は金属SiとSiC等の無機粉体を含むことが好ましい。更に、γアルミナ、セリア、ジルコニア、セリア系複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物等のような、ハニカム構造体に触媒成分を担持させる際のウォッシュコートに含まれる粒子を用いることもできる。
また、この粒子の粒径は、ベース基材の平均細孔径の2〜60%の大きさであることが好ましい。この粒子の平均粒子径が、ベース基材の平均細孔径の2%未満であると、隔壁の細孔内に充填されるべき粒子が細孔径に対し小さすぎる結果、細孔内に充分に充填することができないおそれがある。すなわち、細孔内に保持出来ず、素通りしてしまうことがあり、好ましくない。一方、ベース基材の平均細孔径の60%を超えると、隔壁の細孔内に充填されるべき粒子が細孔径に対し大きすぎるので、細孔内に充填することができない(細孔内に入らない)おそれがあり、好ましくない。
修飾用スラリーは、このような粒子の他、粒子を細孔内面に結合させることが可能な結合材を含み、それらを水に希釈したものであることが好まく、更に、分散剤、消泡剤を適宜、含ませても良い。結合材としては、シリカゾル又はアルミナゾル等のコロイダルゾルや膨潤して結合性を示す層状化合物等が好適に使用できる。修飾スラリー含浸後の熱処理の条件は、修飾スラリーの組成によって、適宜、定めればよい。ベース基材と同じ組成の修飾スラリーで修飾を行う場合は、結合性を付与するため、ベース基材の焼成条件と同じ条件での熱処理が必要となる。コロイダルシリカ等の700〜800℃で強度が発現する材料を組み合わせると、低い温度での熱処理が可能となる。
ベース基材の気孔率に対する修飾部の気孔率の減少量や、ベース基材の平均細孔径に対する修飾部の平均細孔径の減少量は、修飾用スラリーに含まれる粒子の粒径や含有量、修飾用スラリーを含浸する回数などによって調節することができる。
本発明のハニカム構造体において、ハニカムセグメントの隔壁の厚さは、178〜508μm(7〜20mil)であることが好ましく、203〜406μm(8〜16mil)であることがより好ましく、254〜305μm(10〜12mil)であることが更に好ましい。隔壁の厚さが178μm未満では強度が不足して耐熱衝撃性が低下する場合があり、一方、隔壁の厚さが508μmを超えると圧力損失が大きくなり過ぎる場合がある。
セル密度は、140〜350セル/in(cpsi)であることが好ましく、160〜320cpsiであることがより好ましく、200〜300cpsiであることが更に好ましい。セル密度が140cpsi未満では濾過面積が不十分で、スート(スス)の堆積により圧力損失が増大し過ぎる場合があり、一方、セル密度が350cpsiを超えると初期圧力損失が増大し過ぎる場合がある。なお、「cpsi」は「cells per square inch」の略であり、1平方インチ当りのセル数を表す単位である。例えば10cpsiは、約1.55セル/cmである。
セル形状(セル断面の形状)については、特に限定されることはなく、例えば、四角形、三角形、六角形、八角形等の多角形でも、丸形であっても良く、また、前記のように異なる形状のセルが組み合わされて配列されていても良い。
また、本発明のハニカム構造体においては、フィルター再生時のPMの燃焼を促進させたり、排ガス中の有害物質を浄化したりする目的で、隔壁に触媒成分を担持させるようにしても良い。隔壁に触媒成分を担持する方法としては、例えば、触媒成分を含む溶液を、アルミナ粉末のような高比表面積の耐熱性無機酸化物からなる粉末を含浸させた後、乾燥、焼成して、触媒成分を含有する粉末を得、この粉末にアルミナゾルや水などを加えて触媒スラリーを調製し、これにハニカムセグメント又はハニカム構造体を浸漬させて、スラリーをコートしてから、乾燥、焼成するといった方法を用いることができる。
触媒成分としては、Pt、Rh、Pdからなる群より選択される一種以上の貴金属を用いることが好ましい。これら貴金属の担持量は、ハニカム構造体単位体積当たり、0.3〜3.5g/Lとすることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5及び比較例1〜8)
SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これに造孔材、有機バインダー、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を得た。この坏土を押出成形し、乾燥させてハニカム状成形体を得た。このハニカム状成形体に対し、その両端面が相補的な市松模様を呈するように、各セルの一端部に目封止部を形成した。すなわち、隣接するセルが、互いに反対側の端部で封じられるように目封止部の形成を行った。目封止部の材料には、ハニカム状成形体と同じ材料を用いた。こうして目封止部を形成し、乾燥させた後、ハニカム状成形体を、大気雰囲気中、約400℃で脱脂し、更に、Ar雰囲気において約1450℃で焼成して、成形体中のSiC粒子をSiで結合させることにより、ハニカム状焼成体を得た。
次いで、このハニカム状焼成体の外壁に下地材を塗布して、自然乾燥させ、隔壁の厚さが12mil(305μm)、セル形状が正方形、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、断面形状が一辺35mmの正方形、軸方向の長さが152mmである四角柱状のハニカムセグメントを得た。下地材は、SiC粉末、シリカゾル水溶液及び水を混合したものであり、これを塗布し、自然乾燥させた後の外壁表面の局部山頂の平均間隔Sと算術平均表面粗さRaとが、表1に示す値となるように、下地材中のSiC粉末の粒子径分布等を調節した。例えば、実施例2では、平均粒径1.5μmのSiC粉末を37質量%、SiOの平均粒径が20nmのシリカゾル水溶液を37質量%、水を26質量%の割合で混合して下地材となし、3.1μmのRaと、46μmのSを得た。また、実施例5では、平均粒径3.0μmのSiC粉末を37質量%、SiOの平均粒径が50nmのシリカゾル水溶液を37質量%、水を26質量%の割合で混合して下地材となし、18.5μmのRaと、99μmのSを得た。
続いて、無機粒子として表1に示す平均粒子径のSiC粉末を用い、これにアルミノシリケート質繊維、シリカゾル水溶液及び粘土を混合したものに、更に水を加え、ミキサーを用いて30分間混練を行い、ペースト状の接合材を得た。この接合材を、前記ハニカムセグメントの外壁表面に、厚さ約1mmとなるように塗布して接合材層を形成し、その上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、4個×4個に組み合わされた合計16個のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント積層体を作製した。そして、適宜、外部より圧力を加えるなどして全体を接合させた後、120℃で2時間乾燥させてハニカムセグメント接合体を得た。このハニカムセグメント接合体の外形が円柱状になるように、その外周を研削加工した後、その加工面に接合材と同じ組成のコーティング材を塗布して外壁を再形成し、700℃で2時間乾燥硬化させ、実施例1〜5及び比較例1〜8のハニカム構造体を得た。こうして作製された実施例1〜5及び比較例1〜8のハニカム構造体について、次の方法で接合部のせん断強度及び熱拡散率を求めるとともに、接合部の観察を行った。その結果を表1に示す。
[せん断強度]
ハニカム構造体より、隣接する2本のハニカムセグメントを接合材で接合された状態のまま切り出して(ハニカムセグメントの長さはそのまま)、せん断強度測定用の試料とし、当該試料の一方のハニカムセグメントを固定し、もう一方のハニカムセグメントに対して、排ガスの流れ方向であるセルの貫通方向から荷重Fをかけることによりせん断強度を測定した。なお、当該測定において、試料は何れも接合材部分でせん断破壊した。
[熱拡散率]
ハニカム構造体より、接合材とそれにより接合されている隣接するハニカムセグメントの外壁部分とを接合された状態のまま切り出して熱拡散率測定用の試料とし、当該試料について、JIS R 1611−1997に準拠して、レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定した。
[接合部の観察]
各実施例及び比較例毎にハニカム構造体を5個ずつ作製し、それら5個のハニカム構造体を室温(炉外)で10分間キープしてから、1200℃の炉内で20分間キープするという工程を1サイクルとして、本サイクルを200サイクル繰り返した後、当該ハニカム構造体の接合部を、まず、目視により観察して接合材の破断やセグメント外壁からの剥離の有無を調べ、目視では破断や剥離が確認されなかったものについては、更にCTスキャンによる接合部の観察を行って、表面から目視では確認できない内部の破断や剥離の有無を調べた。具体的には、ハニカム構造体の入口端面から出口端面に向かって1mm間隔でスキャンして得た撮影データを用いて、接合材の内部の破断や剥離の有無を確認した。そして、5個のハニカム構造体すべてについて、目視及びCTスキャンの何れによる観察においても接合材の破断や剥離が確認されなかったものを「○」とし、何れかの観察において5個中1個でも接合材の破断や剥離が確認されたものを「×」とした。
Figure 0005324355
(考察)
図14に示すように、表1に示す結果に基づいて、実施例1〜5及び比較例1〜8を、横軸にせん断強度、縦軸に熱拡散率を取ったグラフに表すとともに、このグラフ上に、接合部の観察結果が「○」であったもの(実施例1〜5)と、「×」であったもの(比較例1〜8)とを区分するような直線を引いた。そして、せん断強度をP、熱拡散率をαとして、この直線を表す方程式を求めたところ、当該方程式は、α=−8.08×10−6×P+0.0159となり、前記直線にて区分された領域の内、接合部の観察結果が「○」であったものが存在する方の領域は、α>−8.08×10−6×P+0.0159で表される領域であった。これより、Pとαとがα>−8.08×10−6×P+0.0159の関係を満たすハニカム構造体は、隣接するセグメント間の接合部の破断や剥離が生じにくく、優れた耐熱衝撃性を発揮すると推定される。
(実施例6〜10及び比較例9〜14)
SiC粉末及び金属Si粉末を所定の質量割合で混合し、これに造孔材、有機バインダー、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を得た。この坏土を押出成形し、乾燥させてハニカム状成形体を得た。このハニカム状成形体に対し、その両端面が相補的な市松模様を呈するように、各セルの一端部に目封止部を形成した。すなわち、隣接するセルが、互いに反対側の端部で封じられるように目封止部の形成を行った。目封止部の材料には、ハニカム状成形体と同じ材料を用いた。こうして目封止部を形成し、乾燥させた後、ハニカム状成形体を、大気雰囲気中、約400℃で脱脂し、更に、Ar雰囲気において約1450℃で焼成して、成形体中のSiC粒子をSiで結合させることにより、表2に示すような気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa及びS/Raを有し、隔壁の厚さが12mil(305μm)、セル形状が正方形、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、断面形状が一辺35mmの正方形、軸方向の長さが152mmである四角柱状のハニカムセグメントを得た。なお、気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa、S/Raの値の調節は、主に坏土の原料に用いたSiC粉末、金属Si粉末及び造孔材の粒子径分布及び量を調節することにより行った。例えば、実施例8では、平均粒径20μmのSiC粉末を65質量%、平均粒径6μmの金属Si粉末を16質量%、平均粒径30μmの造孔材を19質量%の割合で混合し、5.4μmのRaと、60μmのSを得た。また、実施例10では、平均粒径60μmのSiC粉末を65質量%、平均粒径6μmの金属Si粉末を16%、平均粒径50μmの造孔材を19質量%の割合で混合し、12.5μmのRaと、71μmのSを得た。
次いで、無機粒子として表2に示す平均粒子径のSiC粉末を用い、これにアルミノシリケート質繊維、シリカゾル水溶液及び粘土を混合したものに、更に水を加え、ミキサーを用いて30分間混練を行い、ペースト状の接合材を得た。この接合材を、前記ハニカムセグメントの外壁表面に、厚さ約1mmとなるように塗布して接合材層を形成し、その上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、4個×4個に組み合わされた合計16個のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント積層体を作製した。そして、適宜、外部より圧力を加えるなどして全体を接合させた後、120℃で2時間乾燥させてハニカムセグメント接合体を得た。このハニカムセグメント接合体の外形が円柱状になるように、その外周を研削加工した後、その加工面に接合材と同じ組成のコーティング材を塗布して外壁を再形成し、700℃で2時間乾燥硬化させ、実施例6〜10及び比較例9〜14のハニカム構造体を得た。こうして作製された実施例6〜10及び比較例9〜14のハニカム構造体について、前述の方法で接合部のせん断強度及び熱拡散率を求めるとともに、接合部の観察を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0005324355
(考察)
図15に示すように、表2に示す結果に基づいて、実施例6〜10及び比較例9〜14を、横軸にせん断強度、縦軸に熱拡散率を取ったグラフに表したところ、接合部の観察結果が「○」であったもの(実施例6〜10)と、「×」であったもの(比較例9〜14)とは、前記実施例1〜5及び比較例1〜8と同様に、前記グラフ上において、α=−8.08×10−6×P+0.0159で表される直線によって区分することができ、前記直線にて区分された領域の内、接合部の観察結果が「○」であったものが存在する方の領域は、α>−8.08×10−6×P+0.0159で表される領域であった。
(実施例11〜14及び比較例15〜22)
SiC粉末及び金属Si粉末を所定の質量割合で混合し、これに造孔材、有機バインダー、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を得た。この坏土を押出成形し、乾燥させてハニカム状成形体を得た。このハニカム状成形体に対し、その両端面が相補的な市松模様を呈するように、各セルの一端部に目封止部を形成した。すなわち、隣接するセルが、互いに反対側の端部で封じられるように目封止部の形成を行った。目封止部の材料には、ハニカム状成形体と同じ材料を用いた。こうして目封止部を形成し、乾燥させた後、ハニカム状成形体を、大気雰囲気中、約400℃で脱脂し、更に、Ar雰囲気において約1450℃で焼成して、成形体中のSiC粒子をSiで結合させることにより、表3に示すような外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa及びS/Raを有し、隔壁の厚さが12mil(305μm)、セル形状が正方形、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、断面が一辺35mmの正方形、軸方向の長さが152mmである四角柱状のハニカムセグメントのベース基材を得た。なお、ベース基材の外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa、S/Raの値の調節は、主に坏土の原料に用いたSiC粉末、金属Si粉末及び造孔材の粒子径分布及び量を調節することにより行った。例えば、実施例11では、平均粒径15μmのSiC粉末を65質量%、平均粒径6μmの金属Si粉末を16質量%、平均粒径25μmの造孔材を19質量%の割合で混合し、3.0μmのRaと、34μmのSを得た。また、実施例14では、平均粒径70μmのSiC粉末を65質量%、平均粒径6μmの金属Si粉末を16質量%、平均粒径50μmの造孔材を19質量%の割合で混合し、18.0μmのRaと、101μmのSを得た。
次に、所定のSiC粒子150質量部に、コロイダルシリカ(固形分40%の溶液)150質量部と、水200質量部とを加え、よく撹拌して、修飾用スラリーを調製した。なお、この調製に際し、分散剤、消泡剤を適宜加えた。こうして得られた修飾用スラリーに、前記ベース基材を、一方の端面からベース基材全長の1/2の長さまで浸漬させ、その後、エアーブローによって過剰なスラリーを除去した。次いで、スラリーを乾燥させた後、700℃で熱処理を施し、ベース基材の全長に対して1/2の長さを持つとともに、表3に示すような外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa及びS/Raを有する修飾部を形成して、ハニカムセグメントを作製した。なお、修飾部の外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa、S/Raの値の調節は、主に修飾用スラリーの原料に用いたSiC粉末の粒子径分布を調節することにより行った。例えば、実施例11では、平均粒径0.4μmのSiC粉末を使用し、3.9μmのRaと、42μmのSを得た。また、実施例14では、平均粒径0.8μmのSiC粉末を使用し、19.5μmのRaと、121μmのSを得た。
次いで、無機粒子として表3に示す平均粒子径のSiC粉末を用い、これにアルミノシリケート質繊維、シリカゾル水溶液及び粘土を混合したものに、更に水を加え、ミキサーを用いて30分間混練を行い、ペースト状の接合材を得た。この接合材を、前記ハニカムセグメントの外周面に、厚さ約1mmとなるように塗布して接合材層を形成し、その上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、4個×4個に組み合わされた合計16個のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント積層体を作製した。そして、適宜、外部より圧力を加えるなどして全体を接合させた後、120℃で2時間乾燥させてハニカムセグメント接合体を得た。このハニカムセグメント接合体の外形が円柱状になるように、その外周を研削加工した後、その加工面に接合材と同じ組成のコーティング材を塗布して外周壁を再形成し、700℃で2時間乾燥硬化させ、実施例11〜14及び比較例15〜22のハニカム構造体を得た。こうして作製された実施例11〜14及び比較例15〜22のハニカム構造体について、前述の方法で接合部のせん断強度及び熱拡散率を求めるとともに、接合部の観察を行った。その結果を表3に示す。
Figure 0005324355
(考察)
図16に示すように、表3に示す結果に基づいて、実施例11〜14及び比較例15〜22を、横軸にせん断強度、縦軸に熱拡散率を取ったグラフに表したところ、接合部の観察結果が「○」であったもの(実施例11〜14)と、「×」であったもの(比較例15〜22)とは、前記実施例1〜5及び比較例1〜8と同様に、前記グラフ上において、α=−8.08×10−6×P+0.0159で表される直線によって区分することができ、前記直線にて区分された領域の内、接合部の観察結果が「○」であったものが存在する方の領域は、α>−8.08×10−6×P+0.0159で表される領域であった。
(実施例15〜21及び比較例23〜30)
SiC粉末及び金属Si粉末を所定の質量割合で混合し、これに造孔材、有機バインダー、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を得た。この坏土を押出成形し、乾燥させてハニカム状成形体を得た。このハニカム状成形体に対し、その両端面が相補的な市松模様を呈するように、各セルの一端部に目封止部を形成した。すなわち、隣接するセルが、互いに反対側の端部で封じられるように目封止部の形成を行った。目封止部の材料には、ハニカム状成形体と同じ材料を用いた。こうして目封止部を形成し、乾燥させた後、ハニカム状成形体を、大気雰囲気中、約400℃で脱脂し、更に、Ar雰囲気において約1450℃で焼成して、成形体中のSiC粒子をSiで結合させることにより、表4に示すような気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa及びS/Raを有し、隔壁の厚さが12mil(305μm)、セル形状が正方形、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、断面が一辺35mmの正方形、軸方向の長さが152mmである四角柱状のハニカムセグメントのベース基材を得た。なお、ベース基材の気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa、S/Raの値の調節は、主に坏土の原料に用いたSiC粉末、金属Si粉末及び造孔材の粒子径分布及び量を調節することにより行った。具体的には、平均粒径15μmのSiC粉末を65質量%、平均粒径6μmの金属Si粉末を16質量%、平均粒径30μmの造孔材を19質量%の割合で混合し、3.1μmのRaと、49μmのSを得た。
次に、所定のSiC粒子150質量部に、コロイダルシリカ(固形分40%の溶液)150質量部と、水200質量部とを加え、よく撹拌して、修飾用スラリーを調製した。なお、この調製に際し、分散剤、消泡剤を適宜加えた。こうして得られた修飾用スラリーに、前記ベース基材を、一方の端面からベース基材全長の1/2の長さまで浸漬させ、その後、エアーブローによって過剰なスラリーを除去した。次いで、スラリーを乾燥させた後、700℃で熱処理を施し、ベース基材の全長に対して1/2の長さを持つとともに、表4に示すような気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa及びS/Raを有する修飾部を形成して、ハニカムセグメントを作製した。なお、修飾部の外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa、S/Raの値の調節は、主に修飾用スラリーの原料に用いたSiC粉末の粒子径分布を調節することにより行った。例えば、実施例15では、平均粒径0.8μmのSiC粉末を使用し、4.7μmのRaと、70μmのSを得た。また、実施例18では、平均粒径2μmのSiC粉末を使用し、7.3μmのRaと、95μmのSを得た。
次いで、無機粒子として表4に示す平均粒子径のSiC粉末を用い、これにアルミノシリケート質繊維、シリカゾル水溶液及び粘土を混合したものに、更に水を加え、ミキサーを用いて30分間混練を行い、ペースト状の接合材を得た。この接合材を、前記ハニカムセグメントの外周面に、厚さ約1mmとなるように塗布して接合材層を形成し、その上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、4個×4個に組み合わされた合計16個のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント積層体を作製した。そして、適宜、外部より圧力を加えるなどして全体を接合させた後、120℃で2時間乾燥させてハニカムセグメント接合体を得た。このハニカムセグメント接合体の外形が円柱状になるように、その外周を研削加工した後、その加工面に接合材と同じ組成のコーティング材を塗布して外周壁を再形成し、700℃で2時間乾燥硬化させ、実施例15〜21及び比較例16〜23のハニカム構造体を得た。こうして作製された実施例15〜21及び比較例23〜30のハニカム構造体について、前述の方法で接合部のせん断強度及び熱拡散率を求めるとともに、接合部の観察を行った。その結果を表4に示す。
Figure 0005324355
(考察)
図17に示すように、表4に示す結果に基づいて、実施例15〜21及び比較例23〜30を、横軸にせん断強度、縦軸に熱拡散率を取ったグラフに表したところ、接合部の観察結果が「○」であったもの(実施例15〜21)と、「×」であったもの(比較例23〜30)とは、前記実施例1〜5及び比較例1〜8と同様に、前記グラフ上において、α=−8.08×10−6×P+0.0159で表される直線によって区分することができ、前記直線にて区分された領域の内、接合部の観察結果が「○」であったものが存在する方の領域は、α>−8.08×10−6×P+0.0159で表される領域であった。
(実施例22及び23並びに比較例31及び32)
SiC粉末及び金属Si粉末を所定の質量割合で混合し、これに造孔材、有機バインダー、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を得た。この坏土を押出成形し、乾燥させてハニカム状成形体を得た。このハニカム状成形体に対し、その両端面が相補的な市松模様を呈するように、各セルの一端部に目封止部を形成した。すなわち、隣接するセルが、互いに反対側の端部で封じられるように目封止部の形成を行った。目封止部の材料には、ハニカム状成形体と同じ材料を用いた。こうして目封止部を形成し、乾燥させた後、ハニカム状成形体を、大気雰囲気中、約400℃で脱脂し、更に、Ar雰囲気において約1450℃で焼成して、成形体中のSiC粒子をSiで結合させることにより、表5に示すような気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa及びS/Raを有し、隔壁の厚さが12mil(305μm)、セル形状が正方形、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、断面が一辺35mmの正方形、軸方向の長さが152mmである四角柱状のハニカムセグメントのベース基材を得た。なお、ベース基材の気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa、S/Raの値の調節は、主に坏土の原料に用いたSiC粉末、金属Si粉末及び造孔材の粒子径分布及び量を調節することにより行った。具体的には、平均粒径15μmのSiC粉末を63質量%、平均粒径6μmの金属Si粉末を16質量%、平均粒径50μmの造孔材を21質量%の割合で混合し、8μmのRaと、100μmのSを得た。
次に、所定のSiC粒子150質量部に、コロイダルシリカ(固形分40%の溶液)150質量部と、水200質量部とを加え、よく撹拌して、修飾用スラリーを調製した。なお、この調製に際し、分散剤、消泡剤を適宜加えた。こうして得られた修飾用スラリーに、前記ベース基材を、一方の端面からベース基材全長の1/2の長さまで浸漬させ、その後、エアーブローによって過剰なスラリーを除去した。次いで、スラリーを乾燥させた後、700℃で熱処理を施し、ベース基材の全長に対して1/2の長さを持つとともに、表5に示すような気孔率、平均細孔径、外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa及びS/Raを有する修飾部を形成して、ハニカムセグメントを作製した。なお、修飾部の外壁表面の局部山頂の平均間隔S、算術平均表面粗さRa、S/Raの値の調節は、主に修飾用スラリーの原料に用いたSiC粉末の粒子径分布を調節することにより行った。具体的には、平均粒径2μmのSiC粉末を70質量%、平均粒径4.3μmのSiC粉末を30質量%の割合で混合し、5.2μmのRaと、207μmのSを得た。
次いで、無機粒子として表5に示す平均粒子径のSiC粉末を用い、これにアルミノシリケート質繊維、シリカゾル水溶液及び粘土を混合したものに、更に水を加え、ミキサーを用いて30分間混練を行い、ペースト状の接合材を得た。この接合材を、前記ハニカムセグメントの外周面に、厚さ約1mmとなるように塗布して接合材層を形成し、その上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、4個×4個に組み合わされた合計16個のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント積層体を作製した。そして、適宜、外部より圧力を加えるなどして全体を接合させた後、120℃で2時間乾燥させてハニカムセグメント接合体を得た。このハニカムセグメント接合体の外形が円柱状になるように、その外周を研削加工した後、その加工面に接合材と同じ組成のコーティング材を塗布して外周壁を再形成し、700℃で2時間乾燥硬化させ、実施例22及び23並びに比較例31及び32のハニカム構造体を得た。こうして作製された実施例22及び23並びに比較例31及び32のハニカム構造体について、前述の方法で接合部のせん断強度及び熱拡散率を求めるとともに、接合部の観察を行った。その結果を表5に示す。
Figure 0005324355
(考察)
図18に示すように、表5に示す結果に基づいて、実施例22及び23並びに比較例31及び32を、横軸にせん断強度、縦軸に熱拡散率を取ったグラフに表したところ、接合部の観察結果が「○」であったもの(実施例22及び23)と、「×」であったもの(比較例31及び32)とは、前記実施例1〜5及び比較例1〜8と同様に、前記グラフ上において、α=−8.08×10−6×P+0.0159で表される直線によって区分することができ、前記直線にて区分された領域の内、接合部の観察結果が「○」であったものが存在する方の領域は、α>−8.08×10−6×P+0.0159で表される領域であった。
(まとめ)
図19は、図14〜18をまとめて1つのグラフ上に表したものであり、この図より、α=−8.08×10−6×P+0.0159で表される直線を境界線として、この直線より上側にあるもの、すなわち、Pとαとがα>−8.08×10−6×P+0.0159の関係を満たすハニカム構造体は、隣接するセグメント間の接合部の破断や剥離が生じにくく、優れた耐熱衝撃性を発揮することがわかる。
本発明は、DPF等の集塵用フィルターとして好適に使用することができる。
1:ハニカム構造体、2:ハニカムセグメント、2a:外周セグメント、2b:中央セグメント、3:隔壁、5:セル、5a:四角形セル、5b:八角形セル、7:修飾部、7a:修飾部、7b:修飾部、8:外壁、9:目封止部、10:入口側端面、11:出口側端面、15:無機粒子、17:接合材、19:熱拡散率測定用の試料。

Claims (3)

  1. 流体の入口側となる入口側端面と、流体の出口側となる出口側端面と、当該2つの端面の外周部を繋ぐ外壁と、当該外壁の内側において前記2つの端面間に多孔質体の隔壁によって区画形成された、流体の流路となる複数のセルとを有し、所定の前記セルの開口部を前記入口側端面で目封止するとともに、残余の前記セルの開口部を前記出口側端面で目封止する目封止部を備えたハニカム形状のセグメントの複数個が、無機粒子を含む接合材にて前記外壁同士が接合されることにより一体化されてなるハニカム構造体であって、
    前記ハニカム構造体より、隣接する2本のセグメントを接合材で接合された状態のまま切り出してせん断強度測定用の試料とし、当該試料の一方のセグメントを固定し、もう一方のセグメントに対してセルの貫通方向から荷重をかけることにより測定されたせん断強度をP(単位:kPa)とし、
    前記ハニカム構造体より、接合材とそれにより接合されている隣接するセグメントの外壁部分とを接合された状態のまま切り出して熱拡散率測定用の試料とし、当該試料についてレーザーフラッシュ法により測定された熱拡散率をα(単位:cm/s)としたとき、
    Pとαとが下式(1)の関係を満たすハニカム構造体。
    α>−8.08×10−6×P+0.0159 (1)
  2. 前記入口側端面の開口率が、前記出口側端面の開口率より大きい請求項1に記載のハニカム構造体。
  3. 前記隔壁に触媒成分が担持された請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
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