JP2010030380A - 軸箱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】特に高速走行時に、かく拌熱による潤滑油の温度上昇を抑制して、前記温度上昇に伴う潤滑油自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材の劣化が早期に発生するのを防止できる軸箱装置を提供すること。
【解決手段】軸箱装置1は、車軸の軸端部を支持する転がり軸受、および前記軸端部を収容するハウジングの内部に、仕切板6によって区画された、転がり軸受側の第1油溜と、軸端部側の第2油溜とを設けた。また、仕切板6の油面54より上方に、転がり軸受の回転によって第1油溜から溢れる潤滑油を第2油溜に流出させる複数の流出用通孔55を形成し、油面54より下方に、潤滑油を第2油溜から第1油溜に流入させる複数の流入用通孔を形成すると共に、流入用通孔56の開口率を流出用通孔55の開口率より小さくした。
【選択図】図2
【解決手段】軸箱装置1は、車軸の軸端部を支持する転がり軸受、および前記軸端部を収容するハウジングの内部に、仕切板6によって区画された、転がり軸受側の第1油溜と、軸端部側の第2油溜とを設けた。また、仕切板6の油面54より上方に、転がり軸受の回転によって第1油溜から溢れる潤滑油を第2油溜に流出させる複数の流出用通孔55を形成し、油面54より下方に、潤滑油を第2油溜から第1油溜に流入させる複数の流入用通孔を形成すると共に、流入用通孔56の開口率を流出用通孔55の開口率より小さくした。
【選択図】図2
Description
この発明は、鉄道車両の車軸の軸端部を回転可能に支持するための軸箱装置に関するものである。
新幹線等の高速鉄道システムを走行する鉄道車両においては、車軸の軸端部を転がり軸受によって回転可能に支持する軸箱装置として、前記転がり軸受の外輪を保持すると共に、転がり軸受および車軸の軸端部を収容するハウジング内の、軸端部より下方に油溜を設け、前記油溜に溜めた潤滑油に転がり軸受を浸漬して潤滑する、いわゆる油浴式と呼ばれる方式のものが一般化しつつある(特許文献1、2等)。
ところが近年の、高速鉄道システムにおける運転速度のさらなる高速化に伴って、前記油浴式の軸箱装置において、潤滑油の温度上昇と、それに伴う潤滑油自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材(オイルシール材等)の劣化が比較的早期に発生するという問題が取り沙汰されるようになってきた。潤滑油の温度上昇は、転がり軸受の回転によって油溜に溜めた潤滑油がかく拌されることで発生するかく拌熱が主たる原因であることが知られている。
特開平9−177797号公報
特開2006−83945号公報
そこで、この発明の目的は、特に高速走行時に、かく拌熱による潤滑油の温度上昇を抑制して、前記温度上昇に伴う潤滑油自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材の劣化が早期に発生するのを防止できる軸箱装置を提供することである。
前記目的を達成するための、請求項1記載の発明は、鉄道車両の車軸(2)の軸端部(3)に外嵌される内輪(11)、および複数の転動体(7)を介して前記内輪に回転自在に嵌合された外輪(27)を含む転がり軸受(4)と、前記転がり軸受の外輪を保持し、前記転がり軸受および車軸の軸端部を内部に収容するハウジング(5)とを備え、前記ハウジングの内部には、前記内部を、転がり軸受側とそれより軸端側に区画する仕切板(6)が設けられて、前記仕切板より転がり軸受側には転がり軸受の転動体を浸漬する潤滑油(8)を溜める第1油溜(9)、仕切板より軸端側には第2油溜(10)が設けられていると共に、前記仕切板には、前記第1および第2油溜に溜められる転がり軸受の停止時の潤滑油の油面(54)より上方に、車軸および転がり軸受の回転によってかく拌されて第1油溜から溢れる潤滑油を第2油溜に流出させる複数の流出用通孔(55)が形成され、前記油面より下方に、前記潤滑油を第2油溜から第1油溜に流入させる複数の流入用通孔(56)が形成され、前記流入用通孔の単位面積あたりの開口率が、前記流出用通孔の単位面積あたりの開口率より小さくされていることを特徴とする軸箱装置(1)である。
この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものである。なお、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
この発明によれば、鉄道車両の走行時に、車軸および転がり軸受の回転によってかく拌され、前記転がり軸受の転動体等によるポンプ作用によって第1油溜から溢れた潤滑油の一部は、流出用通孔を通して第2油溜に流出する。またこの流出と同時に、前記第2油溜内の潤滑油の一部は、流入用通孔を通して第1油溜に流入する。しかし流出用通孔および流入用通孔は、前記流入用通孔の単位面積あたりの開口率が流出用通孔の単位面積あたりの開口率より小さくされているため、転がり軸受が回転して転動体等によるポンプ作用が発生している間は、前者の流出量が後者の流入量より多くなり、第1油溜内の潤滑油の量が、第2油溜内の潤滑油の量よりも少なくなる。
この発明によれば、鉄道車両の走行時に、車軸および転がり軸受の回転によってかく拌され、前記転がり軸受の転動体等によるポンプ作用によって第1油溜から溢れた潤滑油の一部は、流出用通孔を通して第2油溜に流出する。またこの流出と同時に、前記第2油溜内の潤滑油の一部は、流入用通孔を通して第1油溜に流入する。しかし流出用通孔および流入用通孔は、前記流入用通孔の単位面積あたりの開口率が流出用通孔の単位面積あたりの開口率より小さくされているため、転がり軸受が回転して転動体等によるポンプ作用が発生している間は、前者の流出量が後者の流入量より多くなり、第1油溜内の潤滑油の量が、第2油溜内の潤滑油の量よりも少なくなる。
また、この流出量と流入量の差と、それに基づく両油溜内の潤滑油の量の差は、転がり軸受の回転速度に比例して増減する。すなわち、第1油溜内の潤滑油の量は、走行速度が高くなって転がり軸受の回転速度が高くなるほど少なくなり、走行速度が低くなって転がり軸受の回転速度が低くなるにつれて多くなる。
そのため高速走行時には、かく拌によって温度上昇する第1油溜内の潤滑油の量が相対的に少なくなるため、前記かく拌による温度上昇が抑制される。また低速走行時には、前記第1油溜内の潤滑油の量が相対的に多くなるため、十分な量の潤滑油で転がり軸受が潤滑されて、温度上昇が抑制される。したがってこの発明によれば、温度上昇に伴う潤滑油自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材の劣化が早期に発生するのを防止することができる。また転がり軸受は、高速走行時には高速回転に必要な最小限の量の潤滑油で潤滑され、低速走行時には十分な量の潤滑油で潤滑されるため、いずれの場合にも回転トルクを低減することもできる。
そのため高速走行時には、かく拌によって温度上昇する第1油溜内の潤滑油の量が相対的に少なくなるため、前記かく拌による温度上昇が抑制される。また低速走行時には、前記第1油溜内の潤滑油の量が相対的に多くなるため、十分な量の潤滑油で転がり軸受が潤滑されて、温度上昇が抑制される。したがってこの発明によれば、温度上昇に伴う潤滑油自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材の劣化が早期に発生するのを防止することができる。また転がり軸受は、高速走行時には高速回転に必要な最小限の量の潤滑油で潤滑され、低速走行時には十分な量の潤滑油で潤滑されるため、いずれの場合にも回転トルクを低減することもできる。
請求項2記載の発明は、仕切板は、車軸の軸端部が挿通される通孔を有し、かつハウジングの内周の全周を仕切る略円環状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸箱装置である。
この発明によれば、仕切板が略円環状に形成されるため加工やハウジングへの取付が容易である。
この発明によれば、仕切板が略円環状に形成されるため加工やハウジングへの取付が容易である。
請求項3記載の発明は、仕切板は、車軸の軸端部より下側を仕切る略半円環状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸箱装置である。
この発明によれば、ハウジングの内部の、車軸の軸端部より上側は仕切板によって仕切られず連通されているため、転がり軸受の回転によって発生する熱をハウジング内で流通させて、温度上昇に伴う潤滑油自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材の劣化が早期に発生するのをさらに確実に防止できる。
この発明によれば、ハウジングの内部の、車軸の軸端部より上側は仕切板によって仕切られず連通されているため、転がり軸受の回転によって発生する熱をハウジング内で流通させて、温度上昇に伴う潤滑油自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材の劣化が早期に発生するのをさらに確実に防止できる。
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る軸箱装置1の概略構成を示す図解的な縦断面図である。
図1を参照して、軸箱装置1は、鉄道車両の車軸2の軸端部3を回転自在に支持する転がり軸受4と、前記転がり軸受4を保持すると共に軸端部3および転がり軸受4を内部に収容した状態で、軸ばね等を介して台車枠(いずれも図示せず)に取り付けられるハウジング5とを備えている。前記ハウジング5内の内部には、前記内部を、転がり軸受側とそれより軸端側に区画する仕切板6が設けられ、前記仕切板6より転がり軸受4側で、かつ軸端部3より下方側に転がり軸受4の転動体としてのころ7を浸漬する潤滑油8が溜められる第1油溜9、仕切板6より軸端側で、かつ軸端部3より下方側に第2油溜10が設けられている。
図1は、本発明の一実施形態に係る軸箱装置1の概略構成を示す図解的な縦断面図である。
図1を参照して、軸箱装置1は、鉄道車両の車軸2の軸端部3を回転自在に支持する転がり軸受4と、前記転がり軸受4を保持すると共に軸端部3および転がり軸受4を内部に収容した状態で、軸ばね等を介して台車枠(いずれも図示せず)に取り付けられるハウジング5とを備えている。前記ハウジング5内の内部には、前記内部を、転がり軸受側とそれより軸端側に区画する仕切板6が設けられ、前記仕切板6より転がり軸受4側で、かつ軸端部3より下方側に転がり軸受4の転動体としてのころ7を浸漬する潤滑油8が溜められる第1油溜9、仕切板6より軸端側で、かつ軸端部3より下方側に第2油溜10が設けられている。
車軸2は、この実施形態では円筒状をなしている。車軸2は、転がり軸受4を構成する内輪11が外嵌される円筒状のジャーナル12と、前記ジャーナル12より軸端側(図において左側)に設けられた円筒状の軸先部13と、ジャーナル12より車輪側(図において右側)に円筒状の中間軸部14を介して設けられた、車輪(図示せず)が圧入嵌合される円筒状の輪座15とを有している。
軸先部13はジャーナル12より小径とされ、中間軸部14はジャーナル12より大径で、かつ輪座15より小径とされている。軸先部13、ジャーナル12、中間軸部14および輪座15は、それぞれが同軸となるように一体形成されている。図示していないが、車軸2の反対側の軸端部3にも輪座15、中間軸部14、ジャーナル12、および軸先部13が、この順に同軸となるように一体形成されている。
ジャーナル12と軸先部13との接続部の外周にはねじ溝16が形成されてナット17が螺合されている。またナット17の周方向の複数箇所にはねじ穴18が形成され、軸端部3に外挿された円環状の緩み止めリング19が、前記ねじ穴18に螺合されたボルト20によってナット17に固定されている(図ではねじ穴18およびボルト20を2箇所のみ示している)。
前記接続部の、ねじ溝16を設けた外周には、軸端側の端部から車軸2の軸方向に沿ってジャーナル12側に延びるキー溝21が設けられている。また緩み止めリング19の内周面には、前記キー溝21に嵌合される突起が設けられている(図示せず)。
これにより、ねじ溝16にナット17を螺合して所定の締め付けトルクで締め付けたのち、キー溝21に突起を嵌合しながら軸端部3に緩み止めリング19を外挿し、ボルト20によって前記ナット17に固定することで、前記キー溝21と突起の嵌め合わせによってナット17の回転が規制されて、前記ナット17がねじ溝16に対して緩み止めされている。
これにより、ねじ溝16にナット17を螺合して所定の締め付けトルクで締め付けたのち、キー溝21に突起を嵌合しながら軸端部3に緩み止めリング19を外挿し、ボルト20によって前記ナット17に固定することで、前記キー溝21と突起の嵌め合わせによってナット17の回転が規制されて、前記ナット17がねじ溝16に対して緩み止めされている。
ジャーナル12と中間軸部14との接続部の外周面は略円錐面とされ、中間軸部14と輪座15との接続部には段差面22が設けられている。前記ジャーナル12から段差面22までの外周には略円錐筒状の油切23が外嵌されている。油切23の車輪側の端面は段差面22に当接され、軸端側の端面は内輪11の、車輪側の側端面に当接されている。油切23の外周には、ハウジング5を構成する後蓋24との間でラビリンスシール25を構成する円環状の嵌合部26が一体形成されている。
転がり軸受4は、一対の外輪27を有し、複列円筒ころ軸受として機能するように構成されている。複数のころ7は、それぞれ環状をなす2つの列を構成している。一方の列を構成する複数のころ7は、一方の外輪27と内輪11との間で保持され、他方の列を構成する複数のころ7は、他方の外輪27と前記内輪11との間で保持されている。
内輪11は、外周面が円筒周面とされている。前記円筒周面には環状の軌道面28が設けられ、前記軌道面28の周囲に、前記2列を構成する複数のころ7が配置されている。各列を構成する複数のころ7は、内輪11と外輪27との間に介挿した保持器29によって、前記軌道面28の周囲に等間隔に配置されている。
内輪11は、外周面が円筒周面とされている。前記円筒周面には環状の軌道面28が設けられ、前記軌道面28の周囲に、前記2列を構成する複数のころ7が配置されている。各列を構成する複数のころ7は、内輪11と外輪27との間に介挿した保持器29によって、前記軌道面28の周囲に等間隔に配置されている。
内輪11の車輪側の側端面は、先に説明したように油切23の端面に当接されている。また内輪11の軸端側の側端面にはジャーナル12に外嵌されたリング30を介してねじ溝16に螺合されたナット17が当接され、前記ナット17が所定の締め付けトルクで締め付けられて内輪11がジャーナル12に固定されている。
ハウジング5は、軸端側および車輪側で開口された軸箱31と、前記軸箱31の軸端側の開口を閉じる前蓋32と、前記軸箱31の車輪側の開口を閉じる後蓋24とを含んでいる。
ハウジング5は、軸端側および車輪側で開口された軸箱31と、前記軸箱31の軸端側の開口を閉じる前蓋32と、前記軸箱31の車輪側の開口を閉じる後蓋24とを含んでいる。
後蓋24は円筒状をなしている。後蓋24は、円環状をなす鍔部33と、筒状部34と、円環状をなし、油切23の嵌合部26との間でラビリンスシール25を構成する嵌合部35とを有している。前記鍔部33、筒状部34および嵌合部35は、それぞれが同軸となるように一体形成されている。
鍔部33は、筒状部34の一端部(図では右端部)の周囲に配置されている。鍔部33は、筒状部34の外周から径方向の外方へ伸びている。また嵌合部35は、筒状部34よりも車輪側に配置されている。嵌合部35は、筒状部34の一端部から車輪側に突出している。
鍔部33は、筒状部34の一端部(図では右端部)の周囲に配置されている。鍔部33は、筒状部34の外周から径方向の外方へ伸びている。また嵌合部35は、筒状部34よりも車輪側に配置されている。嵌合部35は、筒状部34の一端部から車輪側に突出している。
軸箱31の、車輪側の開口36は円形とされ、その内径は筒状部34の外径と略一致している。また軸箱31内の、車軸2の軸端部3より上方には、前記開口36と連続する外輪27の収容部37が形成されている。収容部37の断面は、下方が第1油溜9と連通させるために開放された円形とされている。円形部の内径は開口36の内径より大きく、かつ外輪27の外径と略一致している。一対の外輪27は、互いに対向する側端面間に円環状の間座38を介在させた状態で、前記収容部37に収容されている。開口36と収容部37の円形部とは同軸となるように設けられている。開口36と収容部37の接続部には段差面39が設けられている。
前記開口36に筒状部34を嵌め合わせ、軸箱31の車輪側の端面を鍔部33の軸端側の端面に当接させた状態で、ボルト(図示せず)によって締結されて、軸箱31の車輪側の開口36が後蓋24によって閉じられている。また、筒状部34と開口36との間は環状のシール材としてのOリング40によってシールされている。
後蓋24と、車軸2に外嵌した油切23との間には一対のシールリング41が配置されている。またシールリング41より車輪側には、先に説明した嵌合部26、35の嵌合によってラビリンスシール25が構成されている。さらに軸箱31の開口36の、シールリング41より軸端側の内周には仕切42が一体形成されている。仕切42は、開口36の内周から径方向の内方へ延びている。
後蓋24と、車軸2に外嵌した油切23との間には一対のシールリング41が配置されている。またシールリング41より車輪側には、先に説明した嵌合部26、35の嵌合によってラビリンスシール25が構成されている。さらに軸箱31の開口36の、シールリング41より軸端側の内周には仕切42が一体形成されている。仕切42は、開口36の内周から径方向の内方へ延びている。
これらの部材により、軸箱装置1の内部に異物(例えば水や埃、金属粉など)が侵入することが防止されると共に、第1油溜9の潤滑油8が漏出することが防止されている。シールリング41は後蓋24によって保持されており、車軸2が軸箱装置1に対して回転すると、油切23に対して摺動するようになっている。
軸箱31の軸端側には、円筒状の突き当て部43が一体形成されている。突き当て部43は、軸箱31の一端部(図では左端部)から軸端側に突出している。
軸箱31の軸端側には、円筒状の突き当て部43が一体形成されている。突き当て部43は、軸箱31の一端部(図では左端部)から軸端側に突出している。
前蓋32は、カップ状をなしている。前記前蓋32は、筒状部44と、前記筒状部44の軸端側を閉じる鏡板45と、筒状部44の一端部(図では右端部)から車輪側に突出する嵌合部46とを有している。嵌合部46は円筒状をなしている。筒状部44、鏡板45および嵌合部46は、同軸となるように一体形成されている。嵌合部46の外径は、筒状部44の外径より小径とされ、両者の接続部には段差面47が設けられている。
嵌合部46の外径は突き当て部43の内径と略一致している。前記突き当て部43に嵌合部46を嵌め合わせ、突き当て部43の軸端側の端面を段差面47に当接させた状態で、ボルト(図示せず)によって締結されて、軸箱31の軸端側の開口が前蓋32によって閉じられている。
またこの状態において、車輪側の外輪27の車輪側の側端面が段差面39と当接され、軸端側の外輪27の軸端側の側端面が前蓋32の嵌合部46の車輪側の先端面と当接されることで、前記一対の外輪27が収容部37に固定されている。突き当て部43と嵌合部46との間は環状のシール材としてのOリング48によってシールされている。
またこの状態において、車輪側の外輪27の車輪側の側端面が段差面39と当接され、軸端側の外輪27の軸端側の側端面が前蓋32の嵌合部46の車輪側の先端面と当接されることで、前記一対の外輪27が収容部37に固定されている。突き当て部43と嵌合部46との間は環状のシール材としてのOリング48によってシールされている。
鏡板45には、車軸2の軸先部13に外挿される筒状部49が一体形成されている。筒状部49の、軸端側の開口はキャップ50によって閉じられている。
軸箱31の下端中央には、第1油溜9内の油を抜き出す排油口として機能するねじ孔51が形成され、前記ねじ孔51を閉じる栓体としてのボルト52が螺合されている。
図2は、第1油溜9と第2油溜10とを仕切る仕切板6の図解的な正面図である。図1、2を参照して、仕切板6は略円環状をなしている。かかる略円環状の仕切板6は、加工や嵌合部46への取付が容易である。
軸箱31の下端中央には、第1油溜9内の油を抜き出す排油口として機能するねじ孔51が形成され、前記ねじ孔51を閉じる栓体としてのボルト52が螺合されている。
図2は、第1油溜9と第2油溜10とを仕切る仕切板6の図解的な正面図である。図1、2を参照して、仕切板6は略円環状をなしている。かかる略円環状の仕切板6は、加工や嵌合部46への取付が容易である。
仕切板6は外周が円形に形成されている。仕切板6の外径は、前蓋32の嵌合部46の内径と略一致している。仕切板6は、前記嵌合部46の、車輪側の端部の近傍の内周面に嵌め合わされている。
仕切板6の径方向内方には、車軸2の軸端部3のうちリング30が外嵌された部分が挿通される円形の通孔53が形成されている。通孔53の内径は、リング30の外径よりわずかに大径とされている。
仕切板6の径方向内方には、車軸2の軸端部3のうちリング30が外嵌された部分が挿通される円形の通孔53が形成されている。通孔53の内径は、リング30の外径よりわずかに大径とされている。
通孔53に挿通される車軸2の中心軸(図2中のC1)は、前蓋32の中心軸(図2中のC2)より上方に偏らせて設けられており、これにより、前記前蓋32および軸箱31によって構成されるハウジング5の内部空間のうち、車軸2の軸端部3より下方側に設けられる第1および第2油溜9、10の容積が確保されている。
仕切板6には、第1および第2油溜9、10に溜められる転がり軸受4の停止時の潤滑油8の油面54より上方に、車軸2および転がり軸受4の回転によってかく拌されて第1油溜9から溢れる潤滑油8を第2油溜10に流出させるための流出用通孔55が形成されている。流出用通孔55は円形をなしている。
仕切板6には、第1および第2油溜9、10に溜められる転がり軸受4の停止時の潤滑油8の油面54より上方に、車軸2および転がり軸受4の回転によってかく拌されて第1油溜9から溢れる潤滑油8を第2油溜10に流出させるための流出用通孔55が形成されている。流出用通孔55は円形をなしている。
流出用通孔55は、実施形態の場合、仕切板6の油面54より上方で、かつ通孔53を挟む左右の領域のうち中心軸C2より下の範囲に、それぞれ8個が、4個ずつ2列に配列されている。一方の列の4個の流出用通孔55は仕切板6の外周縁に沿って配列され、他方の列の4個の流出用通孔55は通孔53の内周縁に沿って配列されている。
また仕切板6には、前記油面54より下方に、潤滑油8を第2油溜10から第1油溜9に流入させる複数の流入用通孔56が形成されている。流入用通孔56は円形をなしている。流入用通孔56は、実施形態の場合、仕切板6の油面54の直下に、前記油面54と平行に5個が配列され、それより下に、前記5個と平行に4個が配列され、それより下で、かつ仕切板6の外周縁の近傍に1個が設けられている。
また仕切板6には、前記油面54より下方に、潤滑油8を第2油溜10から第1油溜9に流入させる複数の流入用通孔56が形成されている。流入用通孔56は円形をなしている。流入用通孔56は、実施形態の場合、仕切板6の油面54の直下に、前記油面54と平行に5個が配列され、それより下に、前記5個と平行に4個が配列され、それより下で、かつ仕切板6の外周縁の近傍に1個が設けられている。
流出用通孔55および流入用通孔56は、前記流入用通孔56の単位面積あたりの開口率が、流出用通孔55の単位面積あたりの開口率より小さくされている。実施形態では、流入用通孔56の円の内径を流出用通孔55の円の内径より小さくし、かつ流入用通孔56の単位面積あたりの個数を流出用通孔55の単位面積あたりの個数より少なくすることで、前者の開口率が後者の開口率より小さくされている。
車軸2の回転に伴って、転がり軸受4のうちころ7および保持器29が回転すると、前記ころ7および保持器29の間の潤滑油8が、前記回転に伴って第1油溜9から溢れる現象が発生する。この現象は、転がり軸受4のころ7や保持器29によるポンプ作用と呼ばれている。
ポンプ作用によって第1油溜9の油面54より上方に溢れた潤滑油8の一部は、流出用通孔55を通して第2油溜10に流出する。またこの流出と同時に、前記第2油溜10内の潤滑油8の一部は、流入用通孔56を通して第1油溜9に流入する。
ポンプ作用によって第1油溜9の油面54より上方に溢れた潤滑油8の一部は、流出用通孔55を通して第2油溜10に流出する。またこの流出と同時に、前記第2油溜10内の潤滑油8の一部は、流入用通孔56を通して第1油溜9に流入する。
ところが、前記のように流入用通孔56の単位面積あたりの開口率は、流出用通孔55の単位面積あたりの開口率より小さくされているため、前記ポンプ作用が発生している間は、前者の流出量が後者の流入量より多くなり、第1油溜9内の潤滑油8の量が、第2油溜10内の潤滑油8の量よりも少なくなる。
また前記流出量と流入量の差と、それに基づく両油溜9、10内の潤滑油8の量の差は、転がり軸受4の回転速度に比例して増減する。すなわち、第1油溜9内の潤滑油8の量は、走行速度が高くなって転がり軸受4の回転速度が高くなるほど少なくなり、走行速度が低くなって転がり軸受4の回転速度が低くなるにつれて多くなる。
また前記流出量と流入量の差と、それに基づく両油溜9、10内の潤滑油8の量の差は、転がり軸受4の回転速度に比例して増減する。すなわち、第1油溜9内の潤滑油8の量は、走行速度が高くなって転がり軸受4の回転速度が高くなるほど少なくなり、走行速度が低くなって転がり軸受4の回転速度が低くなるにつれて多くなる。
そのため高速走行時には、かく拌によって温度上昇する第1油溜9内の潤滑油8の量が相対的に少なくなるため、前記かく拌による温度上昇が抑制される。また低速走行時には、前記第1油溜9内の潤滑油8の量が相対的に多くなるため、十分な量の潤滑油8で転がり軸受4が潤滑されて、温度上昇が抑制される。
したがって、温度上昇に伴う潤滑油8自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材(例えばOリング40、48、シールリング41等)の劣化が早期に発生するのを防止することができる。
したがって、温度上昇に伴う潤滑油8自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材(例えばOリング40、48、シールリング41等)の劣化が早期に発生するのを防止することができる。
また転がり軸受4は、高速走行時には高速回転に必要な最小限の量の潤滑油で潤滑され、低速走行時には十分な量の潤滑油で潤滑されるため、いずれの場合にも回転トルクを低減することもできる。
鉄道車両の走行時に、第1油溜9内の潤滑油8の量をどの程度少なくするかは特に限定されない。しかし、例えば停車時の油面54の高さが、転がり軸受4の最下部に位置するころ7の中心程度に設定される通常の油浴式の軸箱装置1の場合、鉄道車両の走行速度が300km/hを超える高速走行時に、第1油溜9内の油面54の高さを停車時より1cm程度、つまりころ7の半径分程度下げるのが、温度上昇を抑制し、かつ回転トルクを低減する上で好ましいと考えられる。
鉄道車両の走行時に、第1油溜9内の潤滑油8の量をどの程度少なくするかは特に限定されない。しかし、例えば停車時の油面54の高さが、転がり軸受4の最下部に位置するころ7の中心程度に設定される通常の油浴式の軸箱装置1の場合、鉄道車両の走行速度が300km/hを超える高速走行時に、第1油溜9内の油面54の高さを停車時より1cm程度、つまりころ7の半径分程度下げるのが、温度上昇を抑制し、かつ回転トルクを低減する上で好ましいと考えられる。
高速走行時に油面54を低下させる量を調整するためには、先に説明した、流出用通孔55および流入用通孔56の単位面積あたりの開口率の差、すなわち両通孔55、56の内径および個数等を適宜調整すればよい。
なお、流出用通孔55を中心軸C2より下の範囲にのみ形成しているのは、先に説明したように停車時の油面54の高さが、転がり軸受4の最下部に位置するころ7の中心程度に設定される通常の油浴式の軸箱装置1の場合、この範囲に流出用通孔55を形成しておけば、たとえ鉄道車両の走行速度が300km/hを超える高速走行時であっても、ポンプ作用によって第1油溜9の油面54より上方に溢れた潤滑油8を、前記流出用通孔55を通して第2油溜10に確実に流出させることができるためである。
なお、流出用通孔55を中心軸C2より下の範囲にのみ形成しているのは、先に説明したように停車時の油面54の高さが、転がり軸受4の最下部に位置するころ7の中心程度に設定される通常の油浴式の軸箱装置1の場合、この範囲に流出用通孔55を形成しておけば、たとえ鉄道車両の走行速度が300km/hを超える高速走行時であっても、ポンプ作用によって第1油溜9の油面54より上方に溢れた潤滑油8を、前記流出用通孔55を通して第2油溜10に確実に流出させることができるためである。
潤滑油8としては、従来同様に、例えばタービン油に極圧添加剤等の添加剤を任意の割合で配合したものを用いることができる。
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば流出用通孔55を長孔状として、図3の一点鎖線より左側に示すように、前記長孔状の流出用通孔55を、長さ方向が油面54と平行となるように配列したり、前記一点鎖線より右側に示すように、長さ方向が仕切板6の外周面および通孔53の内周面に沿うように周方向に配列したりしてもよい。また図示していないが、長孔状の流出用通孔55を、長さ方向が中心軸C1、C2と交差するように放射状に配列してもよい。
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば流出用通孔55を長孔状として、図3の一点鎖線より左側に示すように、前記長孔状の流出用通孔55を、長さ方向が油面54と平行となるように配列したり、前記一点鎖線より右側に示すように、長さ方向が仕切板6の外周面および通孔53の内周面に沿うように周方向に配列したりしてもよい。また図示していないが、長孔状の流出用通孔55を、長さ方向が中心軸C1、C2と交差するように放射状に配列してもよい。
また流入用通孔56を長孔状として、図3の一点鎖線より左側に示すように、前記長孔状の流入用通孔56を、長さ方向が中心軸C1、C2と交差するように放射状に配列したり、前記一点鎖線より右側に示すように、長さ方向が油面54と平行となるように配列したりしてもよい。また図示していないが、長孔状の流入用通孔56を、長さ方向が仕切板6の外周面および通孔53の内周面に沿うように周方向に配列してもよい。
なお図2、3の実施形態では、いずれも流出用通孔55を仕切板6の中心軸C2より下の領域にのみ形成していたが、前記流出用通孔55は、仕切板6の油面54より上の全域に形成してもよい。また仕切板6は略円環状ではなく、車軸2の軸端部3より下側のみを仕切る略半円環状に形成してもよい。
例えば図4では、仕切板6は、ハウジング5の内部の、車軸2の中心軸C1より下側のみを仕切る略半円環状に形成されている。
例えば図4では、仕切板6は、ハウジング5の内部の、車軸2の中心軸C1より下側のみを仕切る略半円環状に形成されている。
仕切板6を略半円環状に形成すると、ハウジング5の内部の、車軸2の軸端部3より上側を連通できるため、転がり軸受4の回転によって発生する熱をハウジング5内で流通させて、温度上昇に伴う潤滑油8自体の劣化や、あるいはプラスチック、ゴム等からなる部材の劣化が早期に発生するのをさらに確実に防止できる。
また実施形態では、転がり軸受4を、複列円筒ころ軸受として機能するように構成していたが、他の形式、例えば複列円錐ころ軸受として機能するように構成してもよい。
また実施形態では、転がり軸受4を、複列円筒ころ軸受として機能するように構成していたが、他の形式、例えば複列円錐ころ軸受として機能するように構成してもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことができる。
1・・・軸箱装置、2・・・車軸、3・・・軸端部、4・・・転がり軸受、5・・・ハウジング、6・・・仕切板、7・・・ころ(転動体)、8・・・潤滑油、9・・・第1油溜、10・・・第2油溜、11・・・内輪、27・・・外輪、54・・・油面、55・・・流出用通孔、56・・・流入用通孔
Claims (3)
- 鉄道車両の車軸の軸端部に外嵌される内輪、および複数の転動体を介して前記内輪に回転自在に嵌合された外輪を含む転がり軸受と、
前記転がり軸受の外輪を保持し、前記転がり軸受および車軸の軸端部を内部に収容するハウジングとを備え、
前記ハウジングの内部には、
前記内部を、転がり軸受側とそれより軸端側に区画する仕切板が設けられて、
前記仕切板より転がり軸受側には転がり軸受の転動体を浸漬する潤滑油を溜める第1油溜、仕切板より軸端側には第2油溜が設けられていると共に、
前記仕切板には、
前記第1および第2油溜に溜められる転がり軸受の停止時の潤滑油の油面より上方に、車軸および転がり軸受の回転によってかく拌されて第1油溜から溢れる潤滑油を第2油溜に流出させる複数の流出用通孔が形成され、
前記油面より下方に、前記潤滑油を第2油溜から第1油溜に流入させる複数の流入用通孔が形成され、
前記流入用通孔の単位面積あたりの開口率が、前記流出用通孔の単位面積あたりの開口率より小さくされていることを特徴とする軸箱装置。 - 仕切板は、車軸の軸端部が挿通される通孔を有し、かつハウジングの内周の全周を仕切る略円環状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸箱装置。
- 仕切板は、ハウジングの、車軸の軸端部より下側を仕切る略半円環状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸箱装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008193240A JP2010030380A (ja) | 2008-07-28 | 2008-07-28 | 軸箱装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2008
- 2008-07-28 JP JP2008193240A patent/JP2010030380A/ja active Pending
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