JP2010027280A - 拡散層基材にペーストを塗工する方法、および、燃料電池用触媒層の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイコート法で使用されるダイコータの構成に簡易な変更を加えることにより、塗工工程の際に生じ得る拡散層基材の毛羽立ちを効果的に抑止することのできる、拡散層基材にペーストを塗工する方法と、この塗工方法に特徴を有する燃料電池用触媒層の形成方法を提供する。
【解決手段】ダイコート法を適用するに際して使用されるダイコータ10として、拡散層基材Kに対向する底面12と、該底面12から立ち上がる側面11を備え、該側面11において、拡散層基材Kの広がり面に平行もしくは略平行に延びるスリットノズル14が設けられたダイコータ10を用意する第1の工程と、ダイコータ10に対して拡散層基材Kを相対移動させながらスリットノズル14を介して該拡散層基材Kにペーストを塗布する第2の工程と、からなる、拡散層基材にペーストを塗工する方法である。
【選択図】図1
【解決手段】ダイコート法を適用するに際して使用されるダイコータ10として、拡散層基材Kに対向する底面12と、該底面12から立ち上がる側面11を備え、該側面11において、拡散層基材Kの広がり面に平行もしくは略平行に延びるスリットノズル14が設けられたダイコータ10を用意する第1の工程と、ダイコータ10に対して拡散層基材Kを相対移動させながらスリットノズル14を介して該拡散層基材Kにペーストを塗布する第2の工程と、からなる、拡散層基材にペーストを塗工する方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池セルのガス拡散層を形成する拡散層基材に触媒インクや撥水性カーボンペースト等のペーストを塗工する方法と、この方法に特徴を有する燃料電池用触媒層の形成方法に関するものである。
固体高分子型燃料電池の燃料電池セルは、イオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側およびカソード側の触媒層(電極層)とからなる膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、該膜電極接合体に燃料ガスもしくは酸化剤ガスを提供するとともに電気化学反応によって生じた電気を集電するためのガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)と、セパレータを少なくとも備えている。なお、このセパレータは、各燃料電池セルを画成するとともにガス流路層となるものであり、このガス流路層がセパレータから分離した、いわゆるフラットタイプのセパレータも存在する。燃料電池スタックは、所要電力に応じてこの燃料電池セルを所定数だけ積層することによって形成されている。
上記する燃料電池では、アノード電極に燃料ガスとして水素ガス等が提供され、カソード電極には酸化剤ガスとして酸素や空気が提供され、各電極では固有のガス流路層(またはセパレータのガス流路溝)にて面内方向にガスが流れ、次いでガス拡散層にて拡散されたガスが電極触媒層に導かれて電気化学反応がおこなわれるものである。
上記するガス拡散層の形態として、拡散層基材と集電層(MPL:Micro Porous Layer)とから構成されるものは一般に知られるところである。一般には、触媒層は電解質膜よりも狭小な平面積(小さな平面積)を有しており、電解質膜が触媒層にて被覆されていない領域であって該触媒層の周縁には、ポリマー素材の保護フィルムが配設されており、触媒層および保護フィルムと集電層が当接する姿勢でガス拡散層が配設された構造が一般的である。保護フィルムを触媒層の周縁の領域で集電層と膜電極接合体の間に介在させておくことにより、触媒層を有する電解質膜とガス拡散層をたとえば100〜130℃程度の高温雰囲気下、1〜3MPa程度の圧縮力で熱圧着する際に、拡散層基材の毛羽が電解質膜に突き刺さることを抑止することができる。熱圧着時に拡散層基材の毛羽が電解質膜に突き刺さると、この突き刺さり箇所がガスのクロスリークを助長することとなり、燃料電池のクロスリーク耐久性が低下し、発電性能の低下に直結することから、この問題を解消するために保護フィルムを配設するものである。
ところで、上記する拡散層基材は、触媒層からガス流路層もしくはセパレータへの排水性を良好とするべく、たとえばカーボン繊維からなる拡散層基材に撥水性材料のペーストが塗布されるのが一般的であり、この塗布方法には、ダイコータを使用したダイコート法やスクリーン印刷法などが用いられている。
また、電解質膜やテフロンシート(テフロン:登録商標、デュポン社)等の支持フィルムのほか、拡散層基材に対して、触媒を担持した導電性担体、電解質、分散溶媒を含んだ触媒インクを直接的に塗布(塗工)し、これを乾燥させて触媒層を形成する方法も一般に適用されている。この塗工作業においても、ダイコータを使用したダイコート法が一般に用いられている。
上記するダイコート法を用いて、拡散層基材に触媒インクや撥水性ペーストなどのペーストを塗布する方法を図5を参照して説明すると、拡散層基材Kに対向する底面D1に所定幅のスリットノズルD3を備え、中空部D2内に触媒インクSIが注入されているダイコータDを使用して、たとえば、拡散層基材Kをローラ20の回転によって(X1方向)水平方向に移動させ(X2方向)、ダイコータDに対して拡散層基材Kを相対移動させながらスリットノズルD3から触媒インクSIを吐出するものである。
ここで、スリットノズルD3から触媒インクSIが拡散層基材Kに吐出される際に(鉛直方向:Z方向)、該拡散層基材Kには触媒インクSIによる吐出圧が作用してこれがせん断力となり、このせん断力によって繊維質の拡散層基材K中の繊維の一部が遊離して表面に巻き上げられ、これが上記する毛羽を立たせる大きな要因となっていた。
さらに、燃料電池の大量生産に際し、拡散層基材Kを高速搬送しながら触媒インクSIを塗工しようとすると、スリットノズルD3からの単位時間当たりの触媒インク吐出量も多くなり、この単位時間当たりの吐出量の増大に伴って上記せん断力も大きくなり、上記毛羽立ちは一層顕著なものとなる。
従来のダイコータの形態は、図5のごとくその底面D1にスリットノズルD3が設けられ、このスリットノズルD3からペーストが吐出される構成となっているが、ペーストの吐出効率や塗布効率等の観点からかかる構成が望ましいことは理解に易い。なお、このようなダイコータを備えた塗布装置や塗布方法に関する従来技術として、特許文献1,2を挙げることができるが、図5で示すダイコータと同様の構成であることから、これらのダイコータでも、上記するせん断力による拡散層基材の毛羽立ちの問題を解消することはできない。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、ダイコート法を用いて燃料電池セルのガス拡散層を構成する拡散層基材に触媒インクや撥水性カーボンペースト等のペーストを塗工する方法に関し、ダイコート法で使用されるダイコータに簡易な構造変更を加えることにより、塗工工程の際に生じ得る拡散層基材の毛羽立ちを効果的に抑止することのできる、拡散層基材にペーストを塗工する方法と、この塗工方法に特徴を有する燃料電池用触媒層の形成方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による拡散層基材にペーストを塗工する方法は、ダイコート法を用いて、触媒インクや撥水性ペーストを含むペーストを、燃料電池セルを形成する拡散層基材に塗工する方法であって、前記ダイコート法を適用するに際して使用されるダイコータとして、前記拡散層基材に対向する底面と、該底面から立ち上がる側面を備え、該側面において、拡散層基材の広がり面に平行もしくは略平行に延びるスリットノズルが設けられたダイコータを用意する第1の工程と、ダイコータに対して拡散層基材を相対移動させながら、前記スリットノズルを介して該拡散層基材にペーストを塗布する第2の工程と、からなるものである。
本発明のペースト塗工方法は、その被塗工対象が燃料電池を構成する拡散層基材であり、ダイコート法を適用して触媒インクや撥水性ペーストを含むペーストを拡散層基材に塗布するものである。ここで、使用されるダイコータは、拡散層基材に対向する底面と、該底面から立ち上がる側面を備えており、拡散層基材の広がり面に平行もしくは略平行に延びるスリットノズルがこの側面に設けられていることで、拡散層基材にペーストが塗布される際の圧力が、従来構造のダイコータを使用する場合に比して格段に低減された塗工方法である。
すなわち、従来構造のダイコータを使用する場合には、その底面にスリットノズルが設けられていたことから、撥水性のカーボンペーストや触媒インク等のペーストが拡散層基材に対してその垂線方向に直接的に提供されることとなり、この際に大きなせん断力が該拡散層基材に生じていた。燃料電池の大量生産を図るべく、拡散層基材を高速搬送させながらペーストを塗布する際には、単位時間当たりの吐出量が増大することから、より一層大きなせん断力が生じることになる。これらのせん断力に起因して拡散層基材の一部が遊離して毛羽立ちを発生させ、これが電解質膜に突き刺さることで燃料電池セルのガスクロスリーク耐久性能の低下に直結していた。
これに対して、本発明の塗工方法で使用されるダイコータによれば、ペーストはその側面のスリットノズルから提供されるため、ペーストの吐出圧が拡散層基材に直接的に作用することがなくなり、したがって吐出されたペーストから受ける圧力が格段に低減され、該圧力に起因するせん断力も同様に低減される。よって、従来問題となっていた塗工工程における拡散層基材の毛羽立ちの発生を、効果的に解消することができるものである。なお、拡散層基材の高速搬送に際してペースト吐出量を増大させた場合でも、ペーストの吐出圧が拡散層基材に直接的に作用しないことから、拡散層基材の毛羽立ちの発生が抑止されることは同様である。
ここで、上記するガス拡散層は、拡散層基材と、これよりも狭小な面積で触媒層に密着する集電層(MPL層)から構成されている。ここで、拡散層基材としては、電気抵抗が低く、集電を行えるものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、導電性無機物質を主とするものを挙げることができ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材やこれらのナノカーボン材料、ステンレススチール、モリブデン、チタン等を挙げることができる。また、拡散層基材の導電性無機物質の形態は特に限定されるものではないが、ガス透過性の点から繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)であって、特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた拡散層基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造のものも使用することができ、カーボンペーパーやカーボンクロスなどを挙げることができる。また、集電層はアノード側、カソード側の触媒層から電子を集める電極の役割を果たすものであり、導電性材料である、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、銅及びこれらの化合物または合金、導電性炭素材料などから形成できる。
また、上記するペーストの一種である触媒インクは、たとえば、白金や白金合金等の触媒が担持された導電性担体(粒子状のカーボン担体など)と、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)等の電解質と、エタノール、プロピレングリコール、イソプロパノールなどの分散溶媒(有機溶媒)と、から生成される。
また、上記するペーストの一種である撥水性ペーストに使用される材料としては、フルオロカーボン誘導体、フルオロアルキルアクリレートポリマー、フルオロオレフィンビニールエーテル共合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系化合物や、オルガノポリシロキサン、シリコーンオイルなどの有機ケイ素系化合物、撥水性を有する高分子化合物、たとえば、主鎖骨格中にフッ素を含む高分子化合物や主鎖骨格中にケイ素を含む高分子化合物などを挙げることができる。
上記する本発明のダイコート法を用いた拡散層基材にペーストを塗工する方法によれば、簡易な構造変更が成されたダイコータを使用して従来の塗工方法と同様の方法でペーストを塗布するだけで、拡散層基材の毛羽立ちを効果的に抑止でき、したがって、この拡散層基材を備えたガス拡散層と電解質膜を熱圧着する際に、該毛羽が集電層を介して電解質膜に突き刺さるといった問題を効果的に解消することができる。また、このダイコート法を用いた塗工方法は、簡易な構造変更を加えたダイコータを使用するものであり、製造コストを何等高騰させるものとはならない。
さらには、拡散層基材の毛羽立ちが効果的に抑止されることにより、従来の燃料電池セルにて使用されていた拡散層基材の周縁と電解質膜の周縁の間に介層される保護フィルムを不要とすることもできる。なお、この保護フィルムとして、ポリテトラフルオロエチレン、PVDF(二フッ化ポリビニル)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、シリコンゴム、シリコンベースのエラストマなどが使用されている。
さらに、本発明による燃料電池用触媒層の形成方法は、前記拡散層基材にペーストを塗工する方法の第2の工程において、拡散層基材に触媒インクが塗布されて層状の塗膜が形成され、次いで、塗膜を乾燥させて触媒層が形成されるものである。
毛羽立ちを防止しながら拡散層基材に触媒インクを塗布した後に、たとえば、拡散層基材をベルトコンベア等で自動搬送させて乾燥炉に送り、該乾燥炉にて温風乾燥することによって触媒インク塗膜を乾燥させる。
その表面に触媒層が形成された拡散層基材(ガス拡散層)と電解質膜を熱圧着することにより、電解質膜への毛羽の突き刺さりが効果的に抑止された電極体(MEGA)を製造することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の拡散層基材にペーストを塗工する方法によれば、ダイコート法で使用されるダイコータに構成に簡易な変更を加えることにより、製造コストを高騰させることなく、塗工の際に生じ得る拡散層基材の毛羽立ちを効果的に抑止することができる。したがって、拡散層基材(ガス拡散層)と電解質膜の熱圧着の際に、拡散層基材の毛羽が電解質膜に突き刺さり、これが燃料電池のクロスリーク耐久を低下させていた従来の課題を効果的に解消することに繋がる。また、従来のダイコータを使用する場合に比して、拡散層基材に生じ得るせん断力が格段に低減されるため、拡散層基材の高速搬送とこれに応じた単位時間当たりのペースト吐出量の増加によっても該拡散層基材の毛羽立ちは抑止されるため、品質の確保と高速加工の双方を実現することが可能となる。さらには、拡散層基材の毛羽立ち自体を効果的に抑止できることから、従来の燃料電池セルを構成していた、拡散層基材の周縁と電解質膜の周縁の間に介層される保護フィルムを不要とでき、燃料電池セルの製造コストの低減にも繋がる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例では、ダイコータから触媒インクを吐出させ、拡散層基材に触媒インクの塗膜を形成する実施例を取り上げて説明しているが、ダイコータから吐出されるペーストは、触媒インク以外にも、拡散層基材に撥水性を付与するための撥水性カーボンペーストなどであってもよいことは勿論のことである。
図1は、本発明のペースト塗工方法により、拡散層基材に触媒インクを塗布している状況を説明した模式図であり、図2は、ペースト塗工工程と乾燥工程を説明した模式図である。
まず、不図示の容器にて、白金や白金合金等の触媒が担持された導電性のカーボン担体と、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(Flemion)(登録商標、旭硝子株式会社製)等の電解質と、エタノール、プロピレングリコール、イソプロパノールなどの分散溶媒(有機溶媒)と、を混合して触媒インクSIが生成される。
図1で示すように、本発明の塗工方法で使用されるダイコータ10は、底面12とこれから立ち上がる側面11とを有し、内部に上記する触媒インクSIを収容するための中空部13を備え、かつ、一つの側面11の下方位置に、その下方で移動搬送される拡散層基材Kの広がり面に平行もしくは略平行な細長のスリットノズル14を備えた構造を呈している。
これを、図5で示す従来のダイコータDと比較すると双方の構造の相違が明らかとなるが、従来のダイコータDがその底面D1にスリットノズルD3を備えていたのに対して、図1で示すダイコータ10はその側面11にスリットノズル14を備えており、ここに双方の決定的な相違点がある。
側面11にスリットノズル14を開設したことにより、図1で示すごとく、ダイコータ10の下方でローラ20の回転(X1方向)によって相対的に移動搬送される(X2方向)拡散層基材Kに対して、触媒インクSIはスリットノズル14を介して水平方向に吐出され(Y方向)、その自重によって拡散層基材Kに落ちながらその表面に塗布され、拡散層基材K表面に触媒インクからなる塗膜Tが形成される。
すなわち、図5で示すように、ダイコータDの底面D1に開設されたスリットノズルD3から触媒インクSIが吐出され、この吐出圧をガス拡散層Kが直接的に受けるようになっていないため、拡散層基材Kが触媒インクSIから受ける圧力は極めて小さなものとなる。よって、拡散層基材Kには、触媒インクSIから圧力を受けた際に生じ得るせん断力がほとんど発生せず、このせん断力によって生じていた毛羽立ちは効果的に解消されることとなる。
その表面に触媒インクSIの塗膜Tが形成された拡散層基材Kは、ローラ20の回転によって乾燥炉30に移載され、乾燥炉30内で温風乾燥されて触媒層が形成される。
図示を省略するが、触媒層が形成されたアノード側とカソード側の各拡散層基材(ガス拡散層)を用意し、これらを電解質膜に熱圧着することにより、燃料電池用の電極体(MEGA)が形成される。この電極体では、拡散層基材から電解質膜への毛羽の突き刺さりが抑止されており、クロスリーク耐久性に優れた電極体を具備する燃料電池セルを形成することが可能となる。
図3は、上記する塗工方法にてガス拡散層表面に形成された触媒層を有する、燃料電池セルの縦断面図である。
図3で示す燃料電池セル100の構造は、イオン交換膜である電解質膜1とカソード側およびアノード側の触媒層2,2とからなる膜電極接合体(MEA)と、これを挟持するカソード側およびアノード側のガス拡散層3,3とからなる電極体(MEGA)と、この電極体を挟持するカソード側およびアノード側のガス流路層4,4Aと、このガス流路層4,4Aを挟持する3層構造のセパレータ7,7と、からなり、その周縁にたとえばゴム等の樹脂製のガスケット5が一体に形成されている。
ここで、膜電極接合体を構成する電解質膜1は、スルホン酸基やカルボニル基を持つフッ素系イオン交換膜、置換フェニレンオキサイドやスルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化フェニレンスルファイドなどの非フッ素系のポリマーなどから形成される。
また、ガス拡散層3は、カーボンペーパーやカーボンクロスなどのガス透過性の素材から形成され、ガス流路層4,4Aは、その集電部が多孔質のエキスパンドメタルからなり、ガスケット5は、膜電極接合体3を成形型内に収容し、所望の樹脂を成形型内に射出するインサート成形にて形成することができる。
なお、図示する実施例において、アノード側のガス流路層4Aを形成するエキスパンドメタルは、その端部がカソード側に屈曲し、さらに屈曲してマニホールド6側に延びることでガスケット5の補強材41となっている。ガス流路層4Aが比較的硬質のラスメタルから形成されることにより、かかる補強材としての兼用が可能となっている。
ガスケット5とその補強材41には、冷却水供給用および排水用のマニホールド6,6、燃料ガスや酸化剤ガスを供給するためのマニホールド6と、反応後のガスを排気するためのマニホールド6が穿孔されており、ガスケット5に設けられた無端状のリブ51が各マニホールド6を囲繞することによって流体シールが形成されている。
また、実際の燃料電池においては、所望する発電量に応じて燃料電池セル100が所定段積層されて燃料電池スタックが形成されるものである。さらに、この燃料電池スタックは、最外側にエンドプレート、テンションプレート等を備え、両端のテンションプレート間に圧縮力が加えられて燃料電池が形成される。
電気自動車等に車載される燃料電池システムは、この燃料電池と、燃料ガスや酸化剤ガスを収容する各種タンク、これらのガスを燃料電池に提供するためのブロア、燃料電池を冷却するためのラジエータ、燃料電池で生成された電力を蓄電するバッテリ、この電力で駆動する駆動モータ等から大略構成されるものである。
[本発明のペースト塗工方法(実施例)と、従来のペースト塗工方法(比較例)で、拡散層基材の毛羽の発生数と、双方の方法で製作された拡散層基材を有する燃料電池セルのガスクロスリーク耐久時間と、を比較した実験とその結果]
本発明者等は、図1,2で示すダイコータを使用して撥水性カーボンペーストを拡散層基材に塗布した際の毛羽の発生数と、図5で示す従来のダイコータを使用した際の毛羽の発生数を実測した。さらに、これらの方法で製作されたガス拡散層を備えた燃料電池セルを製作し、各燃料電池セルのガスのクロスリーク耐久時間を計測した。
本発明者等は、図1,2で示すダイコータを使用して撥水性カーボンペーストを拡散層基材に塗布した際の毛羽の発生数と、図5で示す従来のダイコータを使用した際の毛羽の発生数を実測した。さらに、これらの方法で製作されたガス拡散層を備えた燃料電池セルを製作し、各燃料電池セルのガスのクロスリーク耐久時間を計測した。
この実験に際し、図4で示すような、吸引回数と重量変化積算との関係を成す拡散層基材を用意した。これは、吸引仕事率が600Wの掃除機で面積800(mm)×300(mm)の拡散層基材の長手方向に亘って、吸引口面積が300(mm)×100(mm)にて1回/0.5secの速度で吸引した際に、拡散層基材の繊維が吸引され、その重量が図4のごとき曲線を描く拡散層基材である。
上記する拡散層基材に対して、4000mPa・sec(50(1/sec)、25℃)で、降伏値が4PaのPTFEを20wt%含有するカーボンペースト(固形分濃度が20wt%)を吐出速度:30cc/secで拡散層基材に塗工した。さらに、20時間の自然乾燥と、400℃の高温雰囲気で5時間残置させてガス拡散層を製作した。
以下の表1に、実施例、比較例の毛羽の発生数と、ガスのクロスリーク耐久時間の実測結果を示す。
まず、毛羽数に関しては、実施例、比較例ともに、製作された拡散層基材(300mm×300mm)の表面における、長辺1mm以上で一般面との高低差が100μm以上の毛羽数を実測した。
表1より、図1,2で示すダイコータを使用した本発明の塗工方法によれば、拡散層基材に吐出時の圧力がほとんど作用しない結果、拡散層基材内の遊離繊維が表面に巻き上げられることがなく、したがって、毛羽は1本も生じなかった。
実施例に対し、比較例では30本もの毛羽数が実測された。これらの毛羽は、ガス拡散層と電解質膜との熱圧着により、これらが電解質膜に突き刺さることで、燃料電池セルのガスクロスリーク耐久性を低下させる原因となり得る。
また、表1で示すガスのクロスリーク耐久時間は、0.1V〜開回路電圧変動繰り返し試験による結果である。なお、クロスリーク耐久時間を決定する際の基準値は、カソード側の窒素封入において、圧力が0.01MPa降下することによって決定した。
表1より、従来の塗工方法では200時間程度であったクロスリーク耐久時間が、本発明にかかる実施例では1600時間程度となり、およそ8倍程度もクロスリーク耐久時間を長期化できることが特定された。
この実験結果より、拡散層基材からの電解質膜への毛羽の突き刺さりが燃料電池セルのクロスリーク耐久時間を決定する大きな因子となっていることが特定され、この因子を取り除くことにより、クロスリーク耐久時間を格段に長期化できることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…電解質膜、2…触媒層、3…ガス拡散層、4,4A…ガス流路層、41…補強材、5…ガスケット、51…リブ、6…マニホールド、7…セパレータ、71,73…面材、72…スペーサ、10…ダイコータ、11…側面、12…底面、13…中空部、14…スリットノズル、20…ローラ、30…乾燥炉、100…燃料電池セル、K…拡散層基材、SI…触媒インク、T…塗膜
Claims (2)
- ダイコート法を用いて、触媒インクや撥水性ペーストを含むペーストを、燃料電池セルを形成する拡散層基材に塗工する方法であって、
前記ダイコート法を適用するに際して使用されるダイコータとして、前記拡散層基材に対向する底面と、該底面から立ち上がる側面を備え、該側面において、拡散層基材の広がり面に平行もしくは略平行に延びるスリットノズルが設けられたダイコータを用意する第1の工程と、
ダイコータに対して拡散層基材を相対移動させながら、前記スリットノズルを介して該拡散層基材にペーストを塗布する第2の工程と、からなる、拡散層基材にペーストを塗工する方法。 - 請求項1に記載の方法の第2の工程において、拡散層基材に触媒インクが塗布されて層状の塗膜が形成され、
次いで、塗膜を乾燥させて触媒層が形成される、燃料電池用触媒層の形成方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013145640A (ja) * | 2012-01-13 | 2013-07-25 | Toyota Motor Corp | 燃料電池用拡散層の製造方法および燃料電池用拡散層 |
JP2016195058A (ja) * | 2015-04-01 | 2016-11-17 | 三菱レイヨン株式会社 | ガス拡散層、その製造方法、およびガス拡散層ロール状物 |
CN114976050A (zh) * | 2022-05-13 | 2022-08-30 | 上海碳际实业集团有限公司 | 一种燃料电池用气体扩散层及其制备工艺 |
-
2008
- 2008-07-16 JP JP2008184914A patent/JP2010027280A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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