JP2010025511A - 熱伝導率可変板 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱伝導率を変化させることができる熱伝導率可変板を提供する。
【解決手段】熱伝導率可変板1は、熱伝導性素材2と、気体量を制御する機構(気体吸着材4、ヒーター7)とを、ガスバリア製の外被材3で被って密閉してなり、外被材3で形成される閉空間内の気体量に応じて内外圧力差で厚みが変化する板状の熱伝導率可変板1であって、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より少ない場合に熱伝導率可変板1の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間に2つの熱伝導性素材2による伝熱経路ができ、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合に2つの熱伝導性素材2の間に隙間ができて熱伝導率可変板1の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間の2つの熱伝導性素材2による伝熱経路が遮断されるように構成されたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱伝導率を変化させることができる板状の部材に関するものである。
電源の確保が困難な屋外等において、冷蔵庫等を用いる場合、蓄電設備を用いることができるが、蓄電設備を用いても長時間の使用が困難であるという問題がある。
電源の確保が困難な屋外などにおいて使用可能時間を長くするために、蓄電池を用いることの他、蓄冷材を用いて予め冷熱を蓄積して用いる方法が可能である(例えば、特許文献1参照)。
また、急速冷却室送風ダクトを構成する壁面の一部や冷気の経路を構成する壁面の一部に蓄冷材を用いることにより、急冷時にエバポレータによって、同時に発生した冷気のみにより冷却する場合より急速に冷却することができる(例えば特許文献2参照)。
特開2001−330355号公報 特開2008−8565号公報
しかしながら、特許文献1に記載の従来の方法では、冷蔵庫内部と蓄冷材間の熱の伝達が容易であるため、冷蔵庫内部の温度は蓄冷材の温度に強く依存する。このため、蓄冷材に冷気を大量に蓄えるため、蓄冷材の温度を低くすると庫内の温度が低下しすぎる一方、庫内の温度の低下しすぎを避けるため蓄冷材の温度を庫内の適温までしか下げないと、冷気の蓄積量が少なくなるという課題があった。
また、特許文献2に記載の従来の方法では、急速冷却室送風ダクトを構成する壁面の一部や冷気の経路を構成する壁面の一部に蓄冷材を用いているものの、周囲への伝熱による過剰な冷却を防ぐため、予め蓄冷材の温度を急冷する目的の温度より大幅に低くしておくことが困難であった。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、蓄冷材を低温まで冷却して冷気を大量に蓄えた場合であっても庫内温度を適切に制御でき、さらに急速冷却を行う対象の熱容量が大きくても急速冷却を可能とするために蓄冷材と被冷却物との間に設けられる板状の部材であって、熱伝導率を変化させることができる熱伝導率可変板を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の熱伝導率可変板は、熱伝導性素材と、気体量を制御する機構とを、ガスバリア製の外被材で被って密閉してなり、前記外被材で形成される閉空間内の気体量に応じて内外圧力差で厚みが変化する板状の熱伝導率可変板であって、前記外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より少ない場合に前記熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間に前記熱伝導性素材による伝熱経路ができ、前記外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合に前記熱伝導性素材における前記熱伝導率可変板の厚み方向に隙間ができて前記熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間の前記熱伝導性素材による伝熱経路が遮断されるように構成されたものである。
上記構成において、外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より少なく内外圧力差で熱伝導率可変板が厚み方向に圧縮された状態の場合は、熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間に熱伝導性素材による伝熱経路ができ、熱伝導率可変板の熱伝導率は、(外被材が充分に薄い場合は)熱伝導性素材の熱伝導率にほぼ等しくなる。
一方、外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合は、熱伝導性素材における熱伝導率可変板の厚み方向に隙間ができて熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間の熱伝導性素材による伝熱経路が遮断され、この場合の熱伝導率可変板の熱伝導率は、熱伝導性素材の熱伝導率と、閉空間に存在する気体の熱伝導率を合成したものになる。
ここで、気体量を制御する機構としては、気体吸着材による気体の吸脱着を利用したものが適用でき、この場合、稼動部を有する真空ポンプを用いる必要が無く、全体を小型化することができる。
これにより、熱伝導率を変化させることができる熱伝導率可変板を得ることができる。
本発明の熱伝導率可変板は、外被材内部の気体量を制御することにより、金属同等の高熱伝導領域を上限として100倍以上の熱伝導率可変域を得ることができる。
また、本発明の熱伝導率可変板は、閉空間内の気体量の制御を気体吸着材の吸脱着を利用して行う場合は、真空ポンプを用いる必要がなく、全体を小型化することが可能である。
請求項1に記載の熱伝導率可変板の発明は、熱伝導性素材と、気体量を制御する機構とを、ガスバリア製の外被材で被って密閉してなり、前記外被材で形成される閉空間内の気体量に応じて内外圧力差で厚みが変化する板状の熱伝導率可変板であって、前記外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より少ない場合に前記熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間に前記熱伝導性素材による伝熱経路ができ、前記外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合に前記熱伝導性素材における前記熱伝導率可変板の厚み方向に隙間ができて前記熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間の前記熱伝導性素材による伝熱経路が遮断されるように構成されたものである。
上記構成において、外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より少なく内外圧力差で熱伝導率可変板が厚み方向に圧縮された状態の場合は、熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間に熱伝導性素材による伝熱経路ができ、熱伝導率可変板の熱伝導率は、(外被材が充分に薄い場合は)熱伝導性素材の熱伝導率にほぼ等しくなる。
一方、外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合は、熱伝導性素材における熱伝導率可変板の厚み方向に隙間ができて熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間の熱伝導性素材による伝熱経路が遮断され、この場合の熱伝導率可変板の熱伝導率は、熱伝導性素材の熱伝導率と、閉空間に存在する気体の熱伝導率を合成したものになる。
このようにして、外被材内部の気体量を制御することにより、熱伝導率可変板全体の熱伝導率を変化させることができる。気体層が熱伝導性素材に比較して薄い場合であっても、熱伝導率の変化が非常に大きくなる要因を以下に説明する。
熱伝導率は、単位長さあたりの熱抵抗の逆数であり、
熱伝導率=(1/熱抵抗率)
で表される。
伝熱経路が単一の物質からなる場合、熱抵抗は、熱抵抗率と距離の積であり、
熱抵抗=熱抵抗率×伝熱距離
と表される。
伝熱経路が、熱伝導率が異なる2つの材質からなる場合、熱抵抗はそれぞれの物質内の熱抵抗率と距離の積の和であり、
熱抵抗=熱抵抗1×伝熱距離1+熱抵抗2×伝熱距離2
と表される。
伝熱経路が、熱伝導率が著しく異なる二つの物質からなる場合、例えば、熱伝導率が240W/mKのアルミニウムが10mmと、熱伝導率が0.024W/mKの空気層が0.1mmからなる場合、アルミニウムの熱抵抗の大きさは、
(1/240)×10・・・(式1)
であり、空気層の熱抵抗の大きさは、
(1/0.024)×0.1・・・(式2)
となる。
アルミニウムの熱抵抗と空気層の熱抵抗の比は、
(式2)/(式1)=100
である。
従って、アルミニウムに対して空気層の厚さは、
0.1/10=1/100
と非常に薄いにもかかわらず、熱抵抗への寄与は100倍になる。これにより、アルミニウムと空気層からなる伝熱経路の熱抵抗は、アルミニウムの熱抵抗のほぼ100倍になる。
また、伝熱経路の長さに対する空気層の厚さの影響は小さいため、アルミニウムと空気層からなる伝熱経路の長さはアルミニウムの伝熱経路の長さにほぼ等しい。
伝熱経路がほぼ等しいにも関わらず熱抵抗がほぼ100倍になるということは、熱抵抗率が100倍になるということに他ならない。
従って、上記の条件を満たすアルミニウムと空気層からなる熱伝導率可変板の熱伝導率は、アルミニウムの熱伝導率の1/100程度になる。
ここで、熱伝導性素材とは熱を伝導するものであれば何でも良いが、望ましくは熱伝導率が1W/mK以上のものであり、より望ましくは10W/mK以上、さらに望ましくは100W/mK以上のものである。具体的には、鉄、アルミニウム、銅などの金属、ステンレス、真鍮等の合金、ガラス等の無機物等を用いることができるがこれらに指定するものではない。
気体量を制御する機構とは、気体成分の量を調節することができるものであり、ロータリーポンプ、気体吸着材等があるが、これらに限定するものではない。
外被材に使える材料としては、脆性が低く、連続性を保った状態で外力に応じて変形するものである。具体的には、プラスチック、ゴム、金属及びこれらの複合体を用いることができるが、これらに限定するものではない。
外被材とは、熱伝導性素材等を被い、これらが含まれる閉空間と含まれない空間に分けることができるものである。
気体量の気体とは、常温、常圧で気体のものであれば良く、望ましくは熱伝導率が0.05W/mK以下、より望ましくは0.04W/mK、さらに望ましくは、0.03W/mK以下のものである。具体的には窒素、酸素、空気などがあげられるがこれに限定するものではない。
請求項2に記載の熱伝導率可変板の発明は、請求項1に記載の発明において、気体量を制御する機構が、気体吸着材による気体の吸脱着を利用したものである。
閉空間内の気体量の制御を気体吸着材による気体の吸脱着で行うことにより、機械式のポンプを用いなくても良いため、全体を小型化でき、稼動音が抑えられる、コストを低減することができる等の優位性を有する熱伝導率可変板を得ることができる。
ここで、気体吸着材とは、常温において気体である成分を吸着することができるものであり、望ましくは酸素、窒素、空気成分を吸着可能なものである。
請求項3に記載の熱伝導率可変板の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、熱伝導性素材が板状の部材であり、前記板状の部材を外被材で形成される閉空間の厚み方向に少なくとも2枚以上有するものである。
熱伝導性素材と外被材の間に気体層を形成する際、これらの相対位置や外被材の強度などにより局在する可能性があるが、熱伝導性素材からなる部材が平らな板状であると、これらの間に気体層を形成することが可能であるため、均一な厚さの気体層を形成することが容易になる。このようにして、面内における熱伝導率の均一性に優れた熱伝導率可変板を得ることができる。
ここで、板状の部材とは縦、横、高さの3方向のうち、一方向が著しく小さいものであり、最も小さいものが次に小さいものが10倍以上のものであり、例えば、縦100cm、横80cm、厚さ1cmの部材は、この比が80倍であり、板状の部材である。
請求項4に記載の熱伝導率可変板の発明は、請求項3に記載の発明において、板状の部材を互いに離す方向に力を加えるバネを有するものである。
バネにより板状の熱伝導性素材を互いに離す力が加わっているため、板状の熱伝導性素材同士が大気圧により押し付けられていても、バネの力と外被材内部の気体の圧力による力の和が、大気圧による力を上回ることにより、板状の熱伝導性素材の間に空間を生じさせることができる。従って、ポンプまたは気体吸着材の能力が小さく、これにより板状の熱伝導性素材に加えることができる応力が大気圧により板状の熱伝導性素材に加えられる応力に比べて小さい場合であっても、外被材内に気体層を確保でき、低コストで熱伝導率可変板を得ることができる。
また、2枚の熱伝導性素材からなる板状の部材を互いに離す方向に予め力を加えておくことにより、外被材内部の閉空間の気体の量が少なくても、板状の部材間に気体の存在する空間を確保することができる。これにより、気体吸着材の使用量を低減することができ、低コストで熱伝導率可変板を得ることができる。
ここで、バネとは応力を加えると変形し、応力を解除することにより変形が元に戻るものであり、押しバネ、板バネ、皿バネなどがあるが、これらに限定するものではない
請求項5に記載の熱伝導率可変板の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、熱伝導性素材が少なくとも金属を含むものである。
金属は熱伝導性が大きいため、熱伝導性素材の熱伝導率を大きくすることができる。従って、熱伝導率可変板の最大熱伝導率を大きくすることができる。また、金属は加工性に優れているため、所定の形状の熱伝導率可変板を容易に得ることができる。
請求項6に記載の熱伝導率可変板の発明は、請求項5に記載の発明において、金属が銅であるものである。
銅は金属の中でも非常に熱伝導率が大きい。このため、熱伝導性素材の熱伝導率を大きくすることができるため、熱伝導率可変板の熱伝導率の最大値を大きくすることができる。
請求項7に記載の熱伝導率可変板の発明は、請求項5に記載の発明において、金属がアルミニウムであるものである。
アルミニウムは、金属の中でも熱伝導率が大きい。このため、熱伝導性素材の熱伝導率を大きくすることができるため、熱伝導率可変板の熱伝導率の最大値を大きくすることができる。また、アルミニウムは密度が小さいため、熱伝導性素材を軽くすることができる。従って、熱伝導率可変板を軽くすることができる。
請求項8に記載の熱伝導率可変板の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発明において、気体吸着材の少なくとも一部が銅イオン交換されたZSM−5であるものである。
銅イオン交換されたZSM−5は、温度の制御により窒素を吸脱着することができる。従って、温度を制御することにより気体吸着量を制御して、閉空間内の気体量を制御することができる。閉空間内の気体による熱伝導率は気体量に依存するため、容易に熱伝導率を制御できる熱伝導率可変板を得ることができる。
請求項9に記載の冷蔵庫の発明は、外箱と、前記外箱の内側に設けられた断熱材と、前記断熱材の内側に設けられた蓄冷材と、前記蓄冷材と庫内との間に設けられた請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の熱伝導率可変板とからなる断熱箱体を有するものである。
一般に、蓄冷材に蓄えられる冷気の量は、用いる蓄冷材の熱容量が同じ場合、温度が低くなるほど多くなる。しかし、蓄冷材から庫内への冷気の流入は、蓄冷材と庫内の温度差が大きくなるほど多くなるため、蓄冷材の温度を低くしすぎると、これらの温度差が大きくなり、大量の冷気が流入し、庫内の温度が低下しすぎてしまう。
本構成の蓄冷材を低温まで冷却することにより、冷気を大量に蓄えることができる一方で、熱伝導率可変板を蓄冷材と庫内に介在させることで、熱伝導率を小さくすることにより、蓄冷材と庫内の温度差の増大の効果を低減して、冷気の流入を制御して庫内温度の低下しすぎを防ぐことができる。
また、予め蓄冷材の温度を低下させた状態で、熱伝導率可変板の熱伝導率を大きくすることにより、大量に冷気を導入することで急速に冷却を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における熱伝達率が比較的高い状態の熱伝導率可変板の断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における熱伝導率が比較的低い状態の熱伝導率可変板の断面図である。
図1、図2に示すように、熱伝導率可変板1は、2枚の板状の熱伝導性素材2と、気体量を制御する機構としての気体吸着材4及び気体吸着材4を加熱するヒーター7と、熱伝導性素材2の窪み6内に収容されて2枚の熱伝導性素材2を互いに離す方向に力を加えるバネ5とを、銅板2枚を蛇腹状の金属板で接合した構造のガスバリア製の外被材3で被って密閉してなり、外被材3で形成される閉空間内の気体量に応じて内外圧力差で厚みが変化する板状の熱伝導率可変板1である。
2枚の板状の熱伝導性素材2の一方は外被材3の一方の銅板(伝熱面)の内面に固定され、2枚の板状の熱伝導性素材2の他方は外被材3の他方の銅板(伝熱面)の内面に固定され、2枚の板状の熱伝導性素材2の窪み6は、互いに向かい合う面に設けられ、気体吸着材4とヒーター7とバネ5は、2枚の板状の熱伝導性素材2の窪み6か形成する空間に収容されている。また、バネ5の一端は2枚の板状の熱伝導性素材2の一方の窪み6に固定(または保持)され、バネ5の他端は2枚の板状の熱伝導性素材2の他方の窪み6に固定(または保持)されている。
気体吸着材4は予め気体を吸着しており、ヒーター7と接触している。外被材3を構成する銅板と蛇腹状の金属板の接合方法はガス気体の透過を抑制できるものであれば、溶接、ロウ付け等公知の方法を用いることができるが、これらに限定するものではない。
気体吸着材4は、銅イオン交換されたZSM−5である。バネ5は、押しバネである。ここで、押しバネの材質は、熱伝導への寄与を小さくするため、ステンレスなど、バネの材料として熱伝導率が小さいものが望ましい。また、バネ強度が大きいほど、同一の力を発生させるために使用数を低減でき、伝熱の経路となるバネを減らすことができる。従ってバネ強度が大きいものが望ましいが、これらに限定するものではない。窪み6は熱伝導性素材2において材料が欠損している部分である。通常の状態においては、外被材3内部は真空になっている。ヒーター7はリード線(図示せず)により熱伝導率可変板外部の電源(図示せず)に接続されている。
また、熱伝導率可変板1は、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より少ない場合に熱伝導率可変板1の一方の伝熱面(銅板の面)と他方の伝熱面(銅板の面)との間に2つの熱伝導性素材2による伝熱経路ができ、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合に熱伝導性素材2における熱伝導率可変板1の厚み方向(2枚の板状の熱伝導性素材2の間)に隙間ができて熱伝導率可変板1の一方の伝熱面(銅板の面)と他方の伝熱面(銅板の面)との間の熱伝導性素材2による伝熱経路が遮断されるように構成されている。
以上のように構成された本実施の形態の熱伝導率可変板について、以下その動作、作用を説明する。
図1に示すように、熱伝導性素材2の窪み6内のバネ5は、熱伝導性素材2同士を引き離す力を加えている。一方、熱伝導性素材2には外被材3を介して大気圧が加わる。ここで、外被材3内部は真空であるため、熱伝導性素材2は、たがいに近づく方向に力が加えられる。この際、バネ5の力より、大気圧による力が大きいため、熱伝導性素材2同士は接触し、熱伝導性素材2は一体成形されたものと同等の伝熱性を有する。更に、外被材3は金属製であり、熱伝導性素材2と外被材3は大気圧で密着しているため、一体成形したものと同等の熱伝導特性を有する。
以上の結果、熱伝導率可変板1の熱伝導率は、窪み6による熱抵抗以外に熱抵抗の要因となるものは無く、ほぼ熱伝導率可変板1の熱伝導率と同等の熱伝導率を得ることができる。
次に、外被材3内部の圧力が上昇した場合に関して説明する。気体吸着材4は銅イオン交換されたZSM−5であるであるため、温度の上昇に伴い気体を放出する。従って、ヒーター7に通電して気体吸着材4を加熱すると気体を放出し、外被材3内部の圧力が上昇する。気体の圧力はバネ6と同様に2枚の熱伝導性素材2を互いに引き離す力となって作用する。
この結果、バネ5の力と外被材3内部の気体の圧力による力の和が、大気圧による力を上回ることにより、熱伝導性素材2の間に空間(隙間)を生じさせることができる。従って、ポンプまたは気体吸着材4の能力が小さく、これにより板状の部材に加えることができる応力が大気圧により熱伝導性素材2に加えられる応力に比べて小さい場合であっても、外被材3内に気体層を確保できる。
この状態での熱の伝わり方は、例えば熱伝導性素材2が銅の場合は以下の通りである。
静止空気の熱伝導率は0.024W/mKであり、例えば金属として銅の熱伝導率は400W/mKである。従って、これらの熱抵抗の差は約17000倍である。従って、例えば、ここで生じた隙間の厚さが、熱伝導性素材2の厚さの1/170の場合、隙間の熱抵抗は熱伝導性素材2の100倍になる。
一方、熱伝導性素材2と外被材3は、依然として大気圧により押し付けられているため密着し、熱伝導性素材2と外被材3との間に熱抵抗は生じない。熱伝導率可変板1の熱抵抗は、経路の熱抵抗の総和であるため、熱伝導率可変板1の熱抵抗は、100倍になる。従って、熱伝導率は1/100になる。以上の様に、熱伝導性素材2が重ねあわされている場合、僅かな隙間により、大幅に熱伝導率を変化させることができる。
このようにして、外被材3内部の気体量を制御することにより、全体の熱伝導率を変化させることができる。
なお、外被材3内の気体量の制御を吸着材4の温度制御により行ったが、これに限るものでなく、外部と連続したポンプなどによっても良い。外被材3内部の気体量を制御することにより、全体の熱伝導率を変化させることができる。
以上のように本実施の形態の熱伝導率可変板1は、熱伝導性素材2と、気体量を制御する機構(気体吸着材4及びヒーター7)とを、ガスバリア製の外被材3で被って密閉してなり、外被材3で形成される閉空間内の気体量に応じて内外圧力差で厚みが変化する板状の熱伝導率可変板1であって、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より少ない場合に熱伝導率可変板1の一方の伝熱面(銅板の面)と他方の伝熱面(銅板の面)との間に2つの熱伝導性素材2による伝熱経路ができ、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合に熱伝導性素材2における熱伝導率可変板1の厚み方向に(2つの熱伝導性素材2の間に)隙間ができて熱伝導率可変板1の一方の伝熱面(銅板の面)と他方の伝熱面(銅板の面)との間の2つの熱伝導性素材2による伝熱経路が遮断されるように構成されたものである。
上記構成において、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より少なく内外圧力差で熱伝導率可変板1が厚み方向に圧縮された状態の場合は、熱伝導率可変板1の一方の伝熱面(銅板の面)と他方の伝熱面(銅板の面)との間に2つの熱伝導性素材2による伝熱経路ができ、熱伝導率可変板1の熱伝導率は、(外被材が充分に薄い場合は)熱伝導性素材2の熱伝導率にほぼ等しくなる。
一方、外被材3で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合は、熱伝導性素材2における熱伝導率可変板1の厚み方向に(2つの熱伝導性素材2の間に)隙間ができて熱伝導率可変板1の一方の伝熱面(銅板の面)と他方の伝熱面(銅板の面)との間の2つの熱伝導性素材2による伝熱経路が遮断され、この場合の熱伝導率可変板1の熱伝導率は、熱伝導性素材2の熱伝導率と、閉空間に存在する気体の熱伝導率を合成したものになる。
このようにして、外被材3内部の気体量を制御することにより、熱伝導率可変板1全体の熱伝導率を変化させることができる。
また、本実施の形態では、閉空間内の気体量の制御を気体吸着材4による気体の吸脱着で行うことにより、機械式のポンプを用いなくても良いため、全体を小型化でき、稼動音が抑えられる、コストを低減することができる等の優位性を有する熱伝導率可変板1を得ることができる。
また、本実施の形態では、板状の熱伝導性素材2を外被材3で形成される閉空間の厚み方向に少なくとも2枚以上有するものである。熱伝導性素材2と外被材3の間に気体層を形成する際、これらの相対位置や外被材3の強度などにより局在する可能性があるが、熱伝導性素材2からなる部材が平らな板状であると、これらの間に気体層を形成することが可能であるため、均一な厚さの気体層を形成することが容易になる。このようにして、面内における熱伝導率の均一性に優れた熱伝導率可変板を得ることができる。
また、本実施の形態では、板状の熱伝導性素材2を互いに離す方向に力を加えるバネ5を有する。バネ5により板状の熱伝導性素材2を互いに離す力が加わっているため、板状の熱伝導性素材2同士が大気圧により押し付けられていても、バネ5の力と外被材3内部の気体の圧力による力の和が、大気圧による力を上回ることにより、板状の熱伝導性素材2の間に空間を生じさせることができる。従って、ポンプまたは気体吸着材4の能力が小さく、これにより板状の熱伝導性素材2に加えることができる応力が大気圧により板状の熱伝導性素材2に加えられる応力に比べて小さい場合であっても、外被材3内に気体層を確保でき、低コストで熱伝導率可変板1を得ることができる。
また、2枚の熱伝導性素材2を互いに離す方向に予め力を加えておくことにより、外被材3内部の閉空間の気体の量が少なくても、2枚の板状の熱伝導性素材2間に気体の存在する空間を確保することができる。これにより、気体吸着材4の使用量を低減することができ、低コストで熱伝導率可変板1を得ることができる。
また、本実施の形態では、熱伝導性素材2が少なくとも金属を含むものである。金属は熱伝導性が大きいため、熱伝導性素材2の熱伝導率を大きくすることができる。従って、熱伝導率可変板1の最大熱伝導率を大きくすることができる。また、金属は加工性に優れているため、所定の形状の熱伝導率可変板1を容易に得ることができる。
銅は金属の中でも非常に熱伝導率が大きい。このため、熱伝導性素材2に銅を用いると、熱伝導性素材2の熱伝導率を大きくすることができるため、熱伝導率可変板1の熱伝導率の最大値を大きくすることができる。
アルミニウムは、金属の中でも熱伝導率が大きい。このため、熱伝導性素材2にアルミニウムを用いると、熱伝導性素材2の熱伝導率を大きくすることができるため、熱伝導率可変板1の熱伝導率の最大値を大きくすることができる。また、アルミニウムは密度が小さいため、熱伝導性素材2を軽くすることができる。従って、熱伝導率可変板1を軽くすることができる。
また、本実施の形態では、気体吸着材4に銅イオン交換されたZSM−5を用いている。銅イオン交換されたZSM−5は、温度の制御により窒素を吸脱着することができる。従って、温度を制御することにより気体吸着量を制御して、閉空間内の気体量を制御することができる。閉空間内の気体による熱伝導率は気体量に依存するため、容易に熱伝導率を制御できる熱伝導率可変板1を得ることができる。
次に、実施の形態1の熱伝導性素材2が銅の場合の例を実施例1で説明する。
(実施例1)
熱伝導率可変板は、2枚の対になっており、厚さ5mm、一辺200mmの銅板であり、それぞれの表面に窪みが5箇所ある。銅板は窪みを有する面同士で対向しており、この窪みが重なり合うようにして一体化して空間を形成する。この空間に、気体を吸着した気体吸着材である銅イオン交換したZSM−5と、ヒーターと、押しバネが内包されている。更に、熱伝導性素材は、厚さ0.5mmの銅板2枚を、じゃばら状の銅板で接合した外被材内に内包され、真空封止されている。
大気圧により熱伝導性素材板同士は押し付けられ、窪みが重なり合って形成された空間内のバネを押し縮める応力が働く。この反作用として、バネは熱伝導性素材板を押し返し、バネ5本が熱伝導性板を押す力は、大気が熱伝導性板を押す力の99%となるようにバネ定数が適正化されている。
この際の熱伝導率可変板の熱伝導率は370W/mKであった。銅の熱伝導率は400W/mK程度であり、少し相違がある。これは、熱伝導率可変板内のこの窪みが重なり合うようにして一体化して生じた空間は、銅に比較して熱伝導率が小さいためである。
一方、ヒーターにより吸着材を加熱すると、吸着材は気体を放出する。放出された気体は、熱伝導性素材板を離す方向に力を加え、バネの力と外被材内部の気体の圧力による力の和が、大気圧による力を上回ると、熱伝導性素材板の間に隙間が生じる。隙間の熱伝導率は空気の熱伝導率とほぼ同等であるため、隙間は大きな熱抵抗として作用する。この際の隙間の厚さは0.1mmであった。熱伝導率を測定すると、3.5W/mKであった。
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2の冷凍冷蔵庫の概略断面図である。
図3において、冷凍冷蔵庫8は、熱伝導率可変板1を組み合わせて成形した箱の周囲を蓄冷材9、エバポレータ10、断熱材11、外箱12の順に被ったものであり、外箱12と、外箱12の内側に設けられた断熱材11と、断熱材11の内側に設けられた蓄冷材9と、蓄冷材9と庫内との間に設けられた熱伝導率可変板1とからなる断熱箱体を有する。
以上の様に構成された冷凍冷蔵庫について以下その動作、作用を説明する。
蓄冷材9とエバポレータ10は、熱伝導率可変板1と断熱材11に周囲を覆われているため、エバポレータ10により冷却された蓄冷材9から外部への熱損失は小さい。従って、電力需要に余裕がある夜間に蓄冷材9を庫内の温度に比較して低温まで冷却する。この時、熱伝導率可変板1の熱伝導率を低くすることにより、庫内の温度の低下しすぎを防止することができる。
このようにして、夜間電力を有効に使い、電気エネルギーのコストを低減することができる。
一方、予め蓄冷材9を庫内の温度より低温にした状態で、熱伝導率可変板1の熱伝導率を大きくすることにより、蓄冷材9の冷気を大量に庫内へ伝達することにより、急速冷凍が可能になる。
次に、実施の形態2において、熱伝導率可変板1の熱伝導率が小さい場合、蓄冷材9の温度を−40℃とした場合の例を実施例2で説明する。
(実施例2)
実施の形態2において、夜間に熱伝導率可変板の熱伝導率を小さくし、蓄冷材の温度を−40℃とした。この際、庫内の温度は−18℃であった。この状態において、急冷を行うために、熱伝導率可変板の熱伝導率を大きくした。この結果、庫内の温度は−30℃まで低下し、急冷が可能であった。
本発明にかかる熱伝導率可変板は、外被材内部の気体量を制御することにより、金属同等の高熱伝導領域を上限として100倍以上の熱伝導率可変域を得ることができるので、冷凍冷蔵庫に限らず、自動車などエンジン停止時の保温による暖機効率の向上、暖房停止時、システム内に蓄えられた熱の有効利用などに応用できる。
本発明の実施の形態1における熱伝達率が比較的高い状態の熱伝導率可変板の断面図 同実施の形態における熱伝導率が比較的低い状態の熱伝導率可変板の断面図 本発明の実施の形態3の冷凍冷蔵庫の概略断面図
符号の説明
1 熱伝率可変板
2 熱伝導性素材
3 外被材
4 気体吸着材
5 バネ
7 ヒーター
8 冷凍冷蔵庫
9 蓄冷材
11 断熱材
12 外箱

Claims (9)

  1. 熱伝導性素材と、気体量を制御する機構とを、ガスバリア製の外被材で被って密閉してなり、前記外被材で形成される閉空間内の気体量に応じて内外圧力差で厚みが変化する板状の熱伝導率可変板であって、前記外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より少ない場合に前記熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間に前記熱伝導性素材による伝熱経路ができ、前記外被材で形成される閉空間内の気体量が所定量より多い場合に前記熱伝導性素材における前記熱伝導率可変板の厚み方向に隙間ができて前記熱伝導率可変板の一方の伝熱面と他方の伝熱面との間の前記熱伝導性素材による伝熱経路が遮断されるように構成された熱伝導率可変板。
  2. 気体量を制御する機構が、気体吸着材による気体の吸脱着を利用したものである請求項1に記載の熱伝導率可変板。
  3. 熱伝導性素材が板状の部材であり、前記板状の部材を外被材で形成される閉空間の厚み方向に少なくとも2枚以上有する請求項1または請求項2に記載の熱伝導率可変板。
  4. 板状の部材を互いに離す方向に力を加えるバネを有する請求項3に記載の熱伝導率可変板。
  5. 熱伝導性素材が少なくとも金属を含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導率可変板。
  6. 金属が銅である請求項5に記載の熱伝導率可変板。
  7. 金属がアルミニウムである請求項5に記載の熱伝導率可変板。
  8. 気体吸着材の少なくとも一部が銅イオン交換されたZSM−5である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の熱伝導率可変板。
  9. 外箱と、前記外箱の内側に設けられた断熱材と、前記断熱材の内側に設けられた蓄冷材と、前記蓄冷材と庫内との間に設けられた請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の熱伝導率可変板とからなる断熱箱体を有する冷蔵庫。
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