JP2010021072A - 燃料電池の下限電圧設定方法、燃料電池の上限電圧設定方法および燃料電池システム - Google Patents

燃料電池の下限電圧設定方法、燃料電池の上限電圧設定方法および燃料電池システム Download PDF

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Abstract

【課題】この発明は、システム運転中における燃料電池の下限電圧や上限電圧を、電位変動に伴うカーボン担体の劣化の進行を考慮に入れて設定することを目的とする。
【解決手段】カーボンが受ける電位変動の回数と、カーボンの劣化量との関係を示す劣化特性を、電位変動の下限値または/および上限値を相違させた複数の条件について取得する。取得された複数の劣化特性を用いて、これらの複数の劣化特性を複合させて得られる複合劣化特性を得る。複合劣化特性に従って、燃料電池の予定動作時間を複数の区間に区分し各区間に対して劣化特性取得ステップにおける条件で用いられた複数の電位の下限値または/および上限値を割り振ることにより、燃料電池の動作時間に応じた燃料電池の下限電圧の設定値のマップまたは/および上限電圧の設定値のマップを作成する。
【選択図】図5

Description

この発明は、燃料電池の下限電圧設定方法、燃料電池の上限電圧設定方法および燃料電池システムに関する。
従来、特許文献1に開示されているように、担体にカーボンを用いる燃料電池における当該カーボン担体の劣化への対策技術が提案されている。燃料電池の担体のカーボンは、燃料電池内部における反応ガスの部分的欠乏などにより、劣化する。特許文献1では、このような反応ガスの部分的な欠乏への対策を提案している。
特開平4−319263号公報 特開2007−305404号公報
燃料電池システムは、通常発電、間欠運転などの非通常発電、起動および停止といった様々な状態に置かれる。このため、カソードの電極触媒層の電位は常に一定ではなく、ある程度変動せざるを得ない。
燃料電池における触媒層の担体にカーボンが用いられている場合、カーボンは電位の変動を受けることにより劣化する。カーボンの電位変動が繰り返し発生すると、これに応じて、少しずつ、カーボンの劣化が進行していく。システムの使用時間が経過すればするほど、燃料電池のカーボンの劣化が進んでいく。従来、このような電位変動に伴うカーボン劣化を考慮した上で燃料電池システムをどのように運転すべきかという指針が、確立されていなかった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、システム運転中における燃料電池の下限電圧を、電位変動に伴うカーボン担体の劣化の進行を考慮に入れて設定することができる燃料電池の下限電圧設定方法を提供することを目的とする。
また、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、システム運転中における燃料電池の上限電圧を、電位変動に伴うカーボン担体の劣化の進行を考慮に入れて設定することができる燃料電池の上限電圧設定方法を提供することを目的とする。
また、この発明の他の目的は、システム運転中における燃料電池の電圧の制御内容を、カーボン担体の劣化の進行を考慮に入れて設定することができる燃料電池システムを提供することである。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池の下限電圧設定方法であって、
燃料電池の担体に用いるカーボンと同一または同種のカーボンを対象のカーボンにして、該対象のカーボンが受ける電位変動の回数と該対象のカーボンの劣化量との関係を示す劣化特性を、電位変動の下限値を相違させた複数の条件について取得する劣化特性取得ステップと、
前記劣化特性取得ステップにおいて前記複数の条件について取得された複数の劣化特性を用いて、該複数の劣化特性を複合させて得られる複合劣化特性を作成する複合劣化特性作成ステップと、
前記複合劣化特性に従って、前記燃料電池の予定動作時間を複数の区間に区分し各区間に対して前記劣化特性取得ステップにおける条件で用いられた複数の電位の下限値を割り振ることにより、前記燃料電池の動作時間に応じた該燃料電池の下限電圧の設定値の情報である設定値情報を作成する設定値情報作成ステップと、
を有することを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記劣化特性取得ステップが取得する前記劣化特性が、前記対象のカーボンが受ける電位変動の回数と、該対象のカーボンの酸化量との関係を示す酸化特性であることを特徴とする。
また、第3の発明は、燃料電池システムであって、
第1または第2の発明にかかる燃料電池の下限電圧設定方法に従って決定された、燃料電池の下限電圧の設定値情報を記憶する設定値記憶手段と、
カソードに酸素を含むガスの供給を受けて発電し、かつ、該カソードの触媒の担体が、前記設定値記憶手段が記憶する前記設定値情報の作成のための前記劣化特性取得ステップにおいて燃料電池の担体に用いることを前提とされたカーボンである燃料電池と、
少なくとも一部の運転領域において、前記設定値記憶手段が記憶した前記設定値情報に規定された下限電圧を下回らないように前記燃料電池の電圧を制御する電圧制御手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第4の発明は、第3の発明において、
所定のタイミングで、前記燃料電池のカソードの担体のカーボンの劣化状態を検知する劣化状態検知手段と、
前記劣化状態検知手段が検知を行うタイミングまでに前記カソードの担体のカーボンが受けた電位変動の総回数を、直接的または間接的に検知する電位変動回数検知手段と、
前記劣化状態検知手段が検知した劣化状態の情報と前記電位変動回数検知手段が検知した電位変動の総回数とに基づいて、前記カソードの担体のカーボンが受ける電位変動の回数と該カーボンの劣化量との将来の傾向を示す予想劣化特性を作成する劣化特性作成手段と、
前記予想劣化特性に従って、前記設定値記憶手段が記憶する設定値情報を補正する設定値補正手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第5の発明は、第3または第4の発明において、
前記燃料電池のカソードに空気を供給する空気供給機構と、
前記燃料電池システムの運転中に、前記燃料電池スタックの発電を実質的に停止させ或いは該燃料電池スタックを所定の低出力域で発電させ、かつ、前記空気供給機構による空気供給を間欠的に行う運転状態である、間欠運転を行う間欠運転手段と、
を備え、
前記電圧制御手段が、前記間欠運転が行われている期間に、前記設定値記憶手段が記憶した前記設定値情報に規定された下限電圧を下回らないように前記燃料電池の電圧を制御することを特徴とする。
また、第6の発明は、燃料電池システムであって、
カソードの触媒の担体にカーボンが用いられており、該カソードに酸素を含むガスの供給を受けて発電する燃料電池と、
所定のタイミングで、前記燃料電池のカソードの担体のカーボンの劣化状態を検知する劣化状態検知手段と、
前記劣化状態検知手段が検知を行うタイミングまでに前記カソードの担体のカーボンが受けた電位変動の総回数を、直接的または間接的に検知する電位変動回数検知手段と、
前記劣化状態検知手段が検知した劣化状態の情報と前記電位変動回数検知手段が検知した電位変動の総回数とに基づいて、前記カソードの担体のカーボンが受ける電位変動の回数と該カーボンの劣化量との将来の関係を示す予想劣化特性を作成する劣化特性作成手段と、
前記予想劣化特性に基づいて前記燃料電池の下限電圧値または/および上限電圧値を設定する電圧制御値設定手段と、
少なくとも一部の運転領域において、前記電圧制御値設定手段により設定された下限電圧値または/および上限電圧値に基づいて前記燃料電池の電圧を制御する電圧制御手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第7の発明は、第4または第6の発明において、
カーボンの酸化反応に伴う二酸化炭素発生量と、カーボンの酸化反応に伴う発熱量と、カーボンの酸化反応に伴う電流変化量とのうち、少なくとも1つに基づいて、カーボンの劣化状態を検知することを特徴とする。
また、第8の発明は、燃料電池の上限電圧設定方法であって、
燃料電池の担体に用いるカーボンと同一または同種のカーボンを対象のカーボンにして、該対象のカーボンが受ける電位変動の回数と該対象のカーボンの劣化量との関係を示す劣化特性を、電位変動の上限値を相違させた複数の条件について取得する劣化特性取得ステップと、
前記劣化特性取得ステップにおいて前記複数の条件について取得された複数の劣化特性を用いて、該複数の劣化特性を複合させて得られる複合劣化特性を作成する複合劣化特性作成ステップと、
前記複合劣化特性に従って、前記燃料電池の予定動作時間を複数の区間に区分し各区間に対して前記劣化特性取得ステップにおける条件で用いられた複数の電位の上限値を割り振ることにより、前記燃料電池の動作時間に応じた該燃料電池の上限電圧の設定値の情報である設定値情報を作成する設定値情報作成ステップと、
を有することを特徴とする。
第9の発明は、燃料電池システムであって、
第8の発明にかかる燃料電池の上限電圧設定方法に従って決定された、燃料電池の上限電圧の設定値情報を記憶する設定値記憶手段と、
カソードに酸素を含むガスの供給を受けて発電し、かつ、該カソードの触媒の担体が、前記設定値記憶手段が記憶する前記設定値情報の作成のための前記劣化特性取得ステップにおいて燃料電池の担体に用いることを前提とされたカーボンである燃料電池と、
少なくとも一部の運転領域において、前記設定値記憶手段が記憶した前記設定値情報に規定された上限電圧を上回らないように前記燃料電池の電圧を制御する電圧制御手段と、
を備えることを特徴とする。
第1の発明によれば、カーボンの劣化の進行が複合劣化特性に従って進むような、燃料電池の下限電圧設定値情報を作成することができる。すなわち、カーボンの劣化の進み具合は、カーボンに付与される電位変動の挙動に応じて変化する。電位変動幅の上限の電位が同等である状況下では、電位変動幅の下限の電位(以下、単に「下限電位」とも称す)が低いほどカーボンの劣化が進みやすい。第1の発明によれば、このような下限電位の相違によるカーボンの劣化の進行度の違いを考慮して、燃料電池の下限電圧を設定することができる。つまり、先ず、劣化特性取得ステップで得られた複数の劣化特性を所望の特性を示すように複合させて、複合劣化特性を作成することができる。そして、設定値情報作成ステップにより、複合劣化特性に従ってカーボンの劣化の進行が進むような、燃料電池の下限電圧の設定値の情報を作成することができる。
第2の発明によれば、カーボンの酸化特性を、カーボンの劣化特性として取り扱うことができる。
第3の発明によれば、下限電圧の設定値情報に規定された下限電圧を下回らないように、燃料電池の発電状態を制御することができる。下限電圧の設定値情報に従って制御が行われている期間は、複合劣化特性の作成段階で予め予定されたカーボン担体の劣化進行速度と、同じ、或いはそれよりも遅い速度で、担体のカーボンの劣化を進めることができる。
第4の発明によれば、カーボンの現実の劣化状態と、予想した初期の劣化特性との間のずれがあった場合に、下限電圧の設定値情報を補正することができる。
第5の発明によれば、間欠運転時に、下限電圧の設定値情報を活用することができる。これにより、間欠運転時に、燃費向上効果と、担体のカーボンの劣化との両方を考慮して、燃料電池システムを運転することができる。
第6の発明によれば、燃料電池システムの運転時間の経過に伴って、カーボンの劣化状態の将来の状態を示す予想劣化特性を作成することができる。この予想劣化特性に従うことにより、劣化状態の将来の情報に基づいて燃料電池の下限電圧または/および上限電圧を設定することができる。
第7の発明によれば、担体のカーボンの劣化状態を、カーボンの酸化反応の結果生ずる二酸化炭素や、カーボン酸化反応に伴って変化する各種物理量に基づいて、高精度に検知することができる。
第8の発明によれば、カーボンの劣化の進行が複合劣化特性に従って進むような、燃料電池の上限電圧設定値情報を作成することができる。すなわち、カーボンの劣化の進み具合は、カーボンに付与される電位変動の挙動に応じて変化する。電位変動幅の下限の電位が同等である状況下では、電位変動幅の上限の電位(以下、単に「上限電位」とも称す)が高いほどカーボンの劣化が進みやすい。第8の発明によれば、このような上限電位の相違によるカーボンの劣化の進行度の違いを考慮して、燃料電池の上限電圧を設定することができる。つまり、先ず、劣化特性取得ステップで得られた複数の劣化特性を所望の特性を示すように複合させて、複合劣化特性を作成することができる。そして、設定値情報作成ステップにより、複合劣化特性に従ってカーボンの劣化の進行が進むような、燃料電池の上限電圧の設定値の情報を作成することができる。
第9の発明によれば、上限電圧の設定値情報に規定された上限電圧を上回らないように、燃料電池の発電状態を制御することができる。上限電圧の設定値情報に従って制御が行われている期間は、複合劣化特性の作成段階で予め予定されたカーボン担体の劣化進行速度と、同じ、或いはそれよりも遅い速度で、担体のカーボンの劣化を進めることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。以下の説明では、先ず、実施の形態1乃至3で、本発明にかかる燃料電池の下限電圧設定方法およびこれを利用した燃料電池システムの内容を説明する。その後、実施の形態4において、本発明にかかる燃料電池の上限電圧設定方法およびこれを利用した燃料電池システムの内容を説明する。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成を説明するための図である。燃料電池システムは、燃料電池スタック10によって発電してその電力をモータ等の負荷に供給するシステムである。燃料電池スタック10は、複数の単位セルが積層されて構成されたものである。個々の単位セルは、内部に、膜電極接合体を備えている。膜電極接合体は、プロトン伝導性の固体高分子電解質膜の両面に、電極触媒層が設けられたものである。
膜電極接合体の一方の面がアノードとして、膜電極接合体の他方の面がカソードとして、それぞれ機能する。個々の単位セルは、アノードに水素を含む燃料ガスの供給を受け、カソードに酸素を含む酸化ガスの供給を受けて、水素と酸素の電気化学的反応により発電する。複数の単位セルを積層した燃料電池スタックの構成は既に公知であるため、ここではこれ以上の説明は省略する。
実施の形態1の膜電極接合体では、カソード側の電極触媒層の担体がカーボンである。実施の形態1で用いられるカーボンは、後述する下限電圧設定値マップの作成時にマップ作成の対象とされたカーボン(以下、「マップ作成対象カーボン」とも称す)と同一種類である。
実施の形態1の燃料電池システムは、燃料電池スタック10に水素を供給するための構成として、水素タンク20、管路22、バルブ24を備えている。水素タンク20に貯留された高圧の水素ガスが、バルブ24、管路22を介して適宜に燃料電池スタック10内の個々の単位セルに供給される。また、実施の形態1の燃料電池システムは、燃料電池スタック10内のアノードオフガスを抜き出すための管路26を備えている。
実施の形態1の燃料電池システムは、燃料電池スタック10に空気を供給するための構成として、エアコンプレッサ30、管路32を備えている。エアコンプレッサ30によって、空気が燃料電池スタック10内の個々の単位セルに供給される。また、実施の形態1の燃料電池システムは、燃料電池スタック10内のカソードオフガスを抜き出すための管路36を備えている。
実施の形態1の燃料電池システムは、合成エア貯留用のタンク40を備えている。タンク40は、内部に、空気と同じ成分を含み、かつ、COを実質的に含まないガス(つまりCOフリーの合成エア)を貯留している。タンク40は、管路38に接続している。実施の形態1の燃料電池システムは、管路32の途中にバルブ34を備えている。このバルブ34の切り替えによって、燃料電池スタック10の個々の単位セルのカソードに供給するガスを、エアコンプレッサ30が吐出する空気と、タンク40内のガスとの間で、切り換えることができる。また、実施の形態1の燃料電池システムは、管路36に、カソードオフガス中のCO量を分析できる分析計42を備えている。分析計42は、CO濃度を高精度に検知可能な濃度センサの役割を果たす。
なお、図1には示さないが、実施の形態1の燃料電池システムは、燃料電池スタック10の発電した電力を蓄えるバッテリを備えている。また、実施の形態1の燃料電池システムは、燃料電池スタック10の個々の単位セルの電圧を計測するセル電圧モニタ48を備えている。
実施の形態1の燃料電池システムは、制御部であるCPU50を備えている。CPU50により、エアコンプレッサ30、バルブ24、バルブ34が制御される。また、CPU50には、セル電圧モニタ48の出力や、燃料電池システムに対する負荷要求値が入力される。CPU50は、入力された負荷要求値に従って、燃料電池スタック10の発電量を制御する。
CPU50は、記憶装置52と接続する。記憶装置52は、後述する「下限電圧設定値マップ」を記憶している。CPU50は、システム運転中に、現在設定すべき下限電圧の値を下限電圧設定値マップから取得する。その上で、CPU50は、セル電圧モニタ48により計測された個々の単位セルの電圧が、下限電圧設定値マップより求めた下限電圧を下回らないように、燃料電池スタック10の発電状態を制御する。
以下の説明において、「下限電圧」とは、燃料電池システムの運転中における個々の単位セルの電圧の下限を意味する。下限電圧が例えば0.2Vに設定されている場合、実施の形態1の燃料電池システムでは、燃料電池スタック10の単位セルの全てが0.2V以上の電圧を示すように(つまり、全ての単位セルが、0.2Vを下回らないように)、システムが運転される。
また、以下の説明では、便宜上、実施の形態の燃料電池システムを、車両に搭載されるシステムとして説明を進める。そして、現時点までの車両走行距離を把握可能なように、走行距離メータが設けられているものとする。
[実施の形態1の間欠運転]
実施の形態1の燃料電池システムは、現在の負荷要求値が燃料電池システムの補機の動力損失よりも低い場合には、間欠運転を行う。間欠運転とは、補機を停止させて燃料電池スタック10の発電量を零或いは実質的に零にした状態で、バッテリ等の電力供給設備から必要な電力をまかなう運転モードである。これにより、燃費を向上することができる。ここでいう補機とは、燃料電池スタック10の発電を行うために必要な機器を意味し、具体的にはエアコンプレッサ30等を指す。昇圧コンバータ等を含んでシステムを構成した場合には、これも含む。
以下、図2を用いて、実施の形態1の間欠運転を説明する。図2(a)は、燃料電池システムへの要求負荷Preqが時間の経過に応じて変化する様子を、模式的に示している。図2(a)のPreq−thは、要求負荷のしきい値である。Preq−thは、燃料電池システムの補機動力損失に基づいて定められる。要求負荷がPreq−thを下回った場合には、間欠運転が開始される。実施の形態1では、時刻tから、要求負荷が再びPreq−th以上となる時刻tまでの期間、間欠運転が行われる。
図2(b)は、燃料電池スタック10内の単位セルの電圧が時間の経過に応じて変化する様子を、模式的に示している。実施の形態1における間欠運転中は、単位セルの電圧が開放端電圧(Open Circuit Voltage:OCV)付近に制御される。このような状態から、膜電極接合体を介したガスの透過(クロスリーク)に起因して、図2(b)に示すように、単位セルの電圧が低下していく。図2(b)には、下限電圧VMINが示されている。実施の形態1では、間欠運転中に、個々の単位セルの電圧がVMINを下回らないように、定期的に補機の作動を再開して燃料電池スタック10の電圧を上昇させる措置をとる。つまり、実施の形態1では、図2(b)に示すように、時刻tから時間Tが経過したら、補機の作動が再開される。従って、間欠運転中、時間Tが経過するごとに、補機の作動が再開される。
図2(c)は、燃料電池スタック10の発電電力の大きさが時間の経過に応じて変化する様子を、模式的に示している。図2(c)に示すように、間欠運転中には、燃料電池スタック10の出力電力が、実質的に零程度の値をとるように小さくされる。この期間、燃料電池スタック10の発電が実質的に停止され、燃費向上効果を享受できる。なお、燃費向上が見込めるような所定の低出力域を設定しておいて、間欠運転中に燃料電池スタック10の出力電力をその低出力域内に制御してもよい。
[下限電圧、燃費およびカーボン劣化の関係]
図3は、実施の形態1における下限電圧と、燃料電池システムの燃費の関係を説明するための図である。
間欠運転中に単位セルの電圧が低下し始めてから下限電圧に至るまでの時間は、下限電圧が低めに設定されているほど長くなる。つまり、単位セルの電圧が下限電圧まで低下する回数は、同じ時間内では、下限電圧が低めに設定されているほど少なくなる。具体的には、図3に示すように、下限電圧の大きさがVMIN1である場合と、下限電圧の大きさがVMIN2(但し、VMIN2>VMIN1)である場合とを比較してみる。そうすると、時刻tから時刻tまでの間に、相対的に高い電圧値である下限電圧VMIN2の場合には合計で4回、相対的に低い電圧値である下限電圧VMIN1の場合は合計で3回、単位セルの電圧上昇措置がとられることがわかる。
間欠運転中の電圧上昇措置の際には、エアコンプレッサ30等のシステム補機を復帰させる。間欠運転中の電圧上昇措置の回数が多ければ多いほど、システム補機の停止、復帰を何度も繰り返すことになる。このため、燃費向上の観点からは、間欠運転中の電圧上昇措置をできるだけ少ない回数に抑える必要がある。従って、燃費向上の観点からは、下限電圧は、なるべく低めの電圧に設定しておきたい。
しかしながら、その一方で、次のような事項を考慮に入れることが望ましい。単位セル内の膜電極接合体には電極触媒層が設けられており、この電極触媒層内においてカーボンが担体として使用されている。カーボンは電位の変動を受けることにより劣化する。カーボンの電位変動が繰り返し発生すると、これに応じて、少しずつ、カーボンの劣化が進行していく。カーボンの劣化の進み具合は、カーボンに付与される電位変動の挙動に応じて変化する。電位変動幅の上限が同等である状況下では、電位変動幅の下限(以下、単に「下限電位」とも称す)が低いほどカーボンの劣化が早く進む。つまり、図3に示したVMIN1とVMIN2とでは、相対的に低い電位であるVMIN1を下限電位とした電位変動を受ける場合のほうが、カーボンの劣化が進み易い。電位変動に伴うカーボン劣化を考慮に入れると、下限電圧を単純に低めに設定するのではなく、燃費向上とカーボン劣化とのバランスをとりながら下限電圧を設定することが望ましい。
[実施の形態1における下限電圧の設定手法]
そこで、本願発明者は、このような電位変動に伴うカーボン劣化を考慮に入れた、下限電圧の設定方法を見出した。以下、実施の形態1にかかる下限電圧の設定手法を説明する。実施の形態1で用いられる手法は、大きく分けて次の2つである。
・第1の手法は、燃料電池システムの設計段階で、電位変動に伴うカーボン劣化を考慮に入れた下限電圧設定値マップの作成を行うというものである。
・第2の手法は、上記第1の手法で設定した初期の下限電圧設定値マップで想定されているカーボン劣化状態と、システムの運転時間の経過に応じて生ずる現実のカーボン劣化状態との間の乖離を、下限電圧の設定値へと反映させるというものである。
なお、電位変動に伴うカーボンの劣化反応において、COが発生する。そこで、実施の形態1では、CO発生量を指標にして、電位変動に伴うカーボンの劣化量を計測することにした。
以下、第1の手法と、第2の手法とを、個別に説明する。
<第1の手法:初期の下限電圧設定値マップの作成>
図4〜図8を用いて、実施の形態1にかかる、初期の下限電圧設定値マップの作成方法を説明する。概略を示すと、初期の下限電圧設定値マップの作成は、以下の(i)〜(iii)のステップにより行われる。
(i)先ず、図4に示すような、走行距離(電位変動回数)と担体劣化量との相関関係を示す曲線(以下、「劣化特性」とも称す)を、複数の下限電位(実施の形態1では、0.2V、0.4V、0.75V)で計測する。
(ii)図4に示されている、下限電位の異なる複数の劣化特性を用いて、図5(b)に示す複合劣化特性を作成する。
(iii)この複合劣化特性に従って、下限電圧設定値マップを作成する。
以下、個々のステップを詳細に説明する。
(i)劣化特性取得ステップ
このステップでは、異なる下限電位条件下で、カーボンの劣化特性を計測する。先ず、燃料電池スタック10の担体に用いるカーボンと同じカーボンを準備する。このカーボンを以下、「マップ作成対象カーボン」と称す。カーボンにも様々な種類があり、個々のカーボンの劣化特性が同じ特性であるとは限らないので、実施の形態1では、現実に燃料電池スタック10の担体に用いるカーボンと同じカーボンを、マップ作成対象カーボンとして準備する。これにより、下限電圧設定値マップの作成に、材料固有の劣化特性を活用することができる。このマップ作成対象カーボンを担体として用いて、サンプル用に、燃料電池スタック10に用いられるのと同じ構造の膜電極接合体を作成する。
図6は、劣化特性の取得のための計測系を模式的に示す。サンプル60は、上述した、マップ作成対象カーボンを担体として用いた膜電極接合体である。サンプル60の各面には、電源62の端子が接続されている。このサンプル60の各面に水素ガスと窒素ガスとをそれぞれ流しつつ、電源62によってサンプル60に電圧を印加する。図6のサンプル60の面に沿って流れた後の窒素ガスは、図示しないCO分析計に供給される。なお、ここでは、測定に使用する機器として電源62のみを簡略に示したが、計測機器としていわゆるポテンショガルバノスタットを使用することができる。このような計測系を用いて、劣化特性を取得する。
図7は、サンプル60に印加する電圧パターンを示す。実施の形態1では、サンプル60のうち窒素が供給される側の電極触媒層の電位を、図7に示すような三角波形のパターンで変動させる。図7に示すように、時刻tC1から時刻tC2にかけてと、時刻tC2から時刻tC3にかけてと、時刻tC3から時刻tC4にかけて、それぞれ、1回ずつ、サンプル60に三角波が印加される。三角波の周期は一定とし、燃料電池スタック10の間欠運転時の周期T(図2(b)を参照)と同じ長さにする。図7では省略しているが、時刻tC4以降も同様に三角波が繰り返し印加される。
実施の形態1では、電位の変動幅の上限を開放端電圧OCVとする。また、電位の変動幅の下限の電圧値VMIN−CONTは変更可能にしておく。実施の形態1では、先ず、VMIN−CONTを0.2Vに設定して、図7の電圧パターンをサンプル60に印加する。
図8は、サンプル60の面内を流れた後CO分析計内を流れていく窒素ガス中のCO量を、図示しないCO分析計の出力に基づいて記録した場合の内容を、模式的に示す。図8において斜線を付した領域70は、時刻tC1から時刻tC2までにCO分析計が感知したCO量を積算したものである。つまり、領域70は、丸数字の1の三角波の印加を受けて発生したCO量の総和に相当する。同様に、領域72、74は、それぞれ、図7の丸数字の2、3を付した三角波の各々の結果として発生した、CO2の総量に相当する。図8におけるCO発生量を積算していくと、電位変動回数の増加に応じた総CO発生量を取得することができる。
実施の形態1では、CO発生量を、カーボン劣化量としてみなす。この総CO発生量と電位変動回数との関係をグラフに示すと、図4の下限電位0.2Vの曲線が得られる。この曲線を、下限電位0.2Vの条件での、カーボンの劣化特性として取り扱う。
なお、図4の横軸は、走行距離である。既述したように、実施の形態1では、便宜上、燃料電池システムを車両に搭載することを想定している。燃料電池システムが運転時間中にどの程度の頻度で間欠運転に入るかは、統計的に見積もることができる。また、燃料電池システムの寿命をある長さ(例えば10年)に設定すれば、10年相当の車両走行距離も概算できる。したがって、10年相当の走行距離に至るまでに間欠運転が行われる回数を、計算により求めることができる。図4では、このような換算を行って走行距離を電位変動回数に代用した上で、劣化特性を図示している。
同様に、VMIN−CONTを0.4V、0.75Vのそれぞれに設定して、三角波の印加およびCO発生量の分析を行う。これにより、下限電位0.2Vの曲線と同様に、図4に示すような、下限電位0.4Vの曲線と、下限電位0.75Vの曲線とが、それぞれ得られる。これらの曲線を、それぞれ、下限電位0.4V、0.75Vの条件での、カーボンの劣化特性として取り扱う。
なお、実施の形態1では、サンプル60に三角波の電位変動を印加して、CO量分析を行った。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、図2(b)で述べた、間欠運転中の燃料電池スタック10における単位セルの電圧変動を更に精度良く模擬した模擬波形を作成する。この模擬波形の電位変動を、三角波の電位変動に代えて、サンプル60に印加しても良い。また、劣化特性取得のための電位変動の回数は、10万km相当の回数全てを行わなくとも良く、例えば3万km相当の回数まで計測してそれ以降の特性を計算により求めても良い。
(ii)複合劣化特性作成ステップ
以下、図5(a)(b)を用いて、実施の形態1における複合劣化特性の作成方法を説明する。ここで、実施の形態1では、限界劣化量と予定動作時間を、複合劣化特性の作成に利用するために予め決定しておく。ここでいう限界劣化量とは、燃料電池スタック10内で担体として用いるカーボンの劣化量の上限である。また、ここでいう予定動作時間とは、燃料電池スタック10の動作時間の予定の値(言い換えれば、燃料電池スタック10の予定寿命)である。実施の形態1では、予定動作時間を、10年とする。
実施の形態1では、予定動作期間である10年が経過した段階で、燃料電池スタック10内の担体のカーボンが限界劣化量相当になるように、複合劣化特性を作成する。図で説明すると、先ず、図5に示すように、横軸の10年相当走行距離(実施の形態1では10万kmとする)の位置に縦線を引き、縦軸の限界劣化量の位置に横線を引く。図5においてこの縦線と横線の交点(図5中のXlim)を下回るような曲線を、下限電位0.2V、下限電位0.4V、下限電位0.75Vの劣化特性を重ね合わせて作成する。
前述したように、間欠運転の燃費向上の観点からは、燃料電池スタック10の下限電圧は低めに設定したい。しかしながら、その一方で、図4に示すように、電位変動時の下限電位が低いほど(つまり、0.2V、0.4V、0.75Vの順に)、カーボンの劣化の進行ペースは速い。下限電圧を決定するには、これら2点を勘案することが好ましい。
そこで、実施の形態1では、次のような手順で下限電圧を決定する。先ず、実施の形態1では、システム運転開始当初は下限電圧を0.2Vに設定し、燃費向上効果を優先させる。その一方で、寿命が後半に入り走行距離が10万kmに至るまでの期間は、カーボンの劣化を緩やかに進行させるために下限電圧を0.75Vに設定する。そして、下限電圧が0.2Vの期間と、下限電圧が0.75Vの期間との間に、中間的な下限電圧の領域として下限電圧が0.4Vの期間を設ける。
次いで、上記の概略方針のもとで、電位変動に伴うカーボン担体の劣化の進行を考慮に入れるために、複合劣化特性を作成する。先ず、下限電位0.75Vの劣化特性における走行距離10万kmのときの劣化量がちょうど交点Xlimの位置に来るように、下限電位0.75Vの劣化特性を図4の状態から紙面上方へと移動させる。その結果、図5(a)に示すように、下限電位0.75Vの劣化特性が交点Xlimを通るように、劣化特性が書きなおされる。更に、下限電位0.4Vの劣化特性を重ねる。実施の形態1では、走行距離1万kmの位置で、下限電位0.2Vの劣化特性と下限電位0.4Vの劣化特性とを交差させる(交点X)。これに応じて、下限電位0.4Vの劣化特性と下限電位0.75Vの劣化特性とが、走行距離3万kmの位置で交差する(交点X)。
図5(b)は、図5(a)で述べたように重ね合わせた複数の劣化特性を、交点X、Xの位置で切断、結合して得られた複合劣化特性を示す。図5(b)に示すように、下限電位0.2Vの劣化特性、下限電位0.4Vの劣化特性、および下限電位0.75Vの劣化特性が連結し、1つの複合劣化特性を構成している。以上の手順により、複合劣化特性を得る。
(iii)下限電圧設定値マップ作成ステップ
次いで、図5(b)の複合劣化特性に従って、下限電圧設定値マップを作成する。具体的には、図5(b)に示すように、複合劣化特性の各区間の下限電位に従って、下記のように下限電圧設定値マップを作成する。
走行距離0〜1万kmの区間 = 下限電圧0.2V区間
走行距離1万km〜3万kmの区間 = 下限電圧0.4V区間
走行距離3万km〜10万kmの区間 = 下限電圧0.75V区間
この、区間−下限電圧情報を、下限電圧設定値マップとして記憶装置52に記憶する。
実施の形態1の燃料電池システムでは、上記の下限電圧設定値マップに従って、CPU50が、間欠運転時における下限電圧を、現在の走行距離に応じた値に設定する。
以上述べたように、実施の形態1の第1の手法によれば、所望の劣化特性を示すような複合劣化特性を作成することができる。この複合劣化特性は、劣化特性取得ステップで得られた複数の劣化特性を複合させることにより得られる特性である。更に、設定値マップ作成ステップにより、この複合劣化特性に従ってカーボンの劣化の進行が進むような下限電圧設定値マップを作成することができる。この下限電圧設定値マップに従って下限電圧を切り替えていくことにより、電位変動に伴うカーボン担体の劣化の進行を考慮に入れながら、燃料電池システムを運転することができる。
また、間欠運転時に、燃費向上効果と、担体のカーボンの劣化との両方を考慮して、燃料電池システムを運転することができる。
<第2の手法:下限電圧設定値マップの補正>
続いて、実施の形態1にかかる第2の手法を説明する。
現実の使用環境下においては、燃料電池システムは、様々な使われ方をする。具体例として車両搭載型の燃料電池システムを挙げると、個々のドライバの間で個人差があることに起因して、同じ燃料電池システムであっても運転のされ方が異なる。従って、燃料電池スタック10内のカーボン担体の劣化の進行も、当初予定した標準的なペースと比べて、速くなったり遅くなったりする。これに対処すべく、実施の形態1では、これまで述べた第1の手法に加え、更に、以下述べる第2の手法も用いられる。この第2の手法によって、システム運転開始後に、定期的に下限電圧設定値マップが更新される。
図9は、実施の形態1にかかる下限電圧設定値マップの更新のフローチャートを示す。このフローチャートの内容は、以下のようなものである。
〔ステップS100〜S106〕 実施の形態1が備えるCO分析機能を利用して、現在の走行距離における、1周期の電位変動あたりに発生するCO量が実測される。
〔ステップS108〕 実測データを用いて、図10(a)に示す実測予想劣化特性が作成される。
〔ステップS110〕 実測予想劣化特性に従って、下限電圧設定値マップが補正される。
実施の形態1では、図9のフローチャートが、所定の間隔を置いて、繰り返し実行される。以下、個々のステップを詳細に説明する。
〔ステップS100〜S106:劣化状態検知ステップ〕
このステップでは、燃料電池スタック10内の担体のカーボンを対象にして、この対象の劣化状態を検知する処理が実行される。前述したように、電位変動に伴うカーボンの劣化反応において、COが発生する。そこで、実施の形態1の燃料電池システムは、CO量に基づいた劣化状態検知を行う。そのための構成として、タンク40および分析計42が備えられている。また、実施の形態1では、劣化状態検知が、システム運転中に定期的に行われる。具体的には、実施の形態1では、2000km、4000km、6000kmのように、走行距離2000kmごとに、CO量に基づく劣化状態検知ステップが実行される。
劣化状態検知ステップでは、先ずステップS100が実行される。ステップS100において、バルブ34が切り換えられ、燃料電池スタック10に対してタンク40からCOフリーの合成エアが供給される。次いで、ステップS102が実行される。ステップS102では、CPU50が、燃料電池スタック10の電圧が間欠運転中の電圧印加パターン(図2参照)と同じ変動を示すように、燃料電池スタック10の動作点を制御する。もしくは、運転状態を強制的に間欠運転に切り換えて、一時的にバッテリから必要な電力を供給するなどしてもよい。また、電圧印加パターンは、図7に示した三角波にしてもよい。これらのいずれかの状態を実現することにより、燃料電池スタック10の電圧を、間欠運転時と同じように変動させることができる。その結果、COフリーの合成エアが供給されかつ間欠運転時と同じ或いは同等の電圧変動が生じている環境が、実現される。
次いで、ステップS104が実行される。ステップS104では、分析計42が、カソードオフガス中のCO量を分析する。このようにすることで、前述した第1の手法の(i)劣化特性取得ステップにおいてサンプル60へ電圧を印加しながらCO量を分析した状況を、再現できる。電位変動に伴うカーボンの劣化量を測定することができる(ステップS106)。
〔ステップS108:実測予想劣化特性作成ステップ〕
このステップでは、劣化状態検知ステップで検知された劣化状態の情報と、走行距離とに基づいて、電位変動回数とカーボン劣化量との将来の関係を示す予想劣化特性(以下、「実測予想劣化特性」とも称す)が作成される。
実施の形態1では、具体的には、以下の(a)〜(g)の手順により、実測予想劣化特性が作成される。
(a)走行距離が2000kmの時点で、一度、劣化状態検知を行う。そうすると、走行距離2000km時点での、1周期の電位変動に対して発生したCO量が検知される。
(b)実施の形態1では、走行距離0〜2000kmの区間では、平均的に、1回の電位変動あたり、上記検知結果のCO量が発生したものとみなす。よって、上記検知結果のCO量に2000kmまでの電位変動の総回数を乗じることにより、2000kmの時点までに発生した総CO量が算出できる。電位変動の総回数は、第1の手法の(i)劣化特性取得ステップにおいて述べたように、統計的な概算によって算出される。算出した総CO量を、図10に示すように、横軸の2000kmの位置に記録する。
(c)その後、走行距離が4000kmになるまで走行し、走行距離4000kmの時点で再び劣化状態検知を行う。4000km時点の1周期の電位変動あたりのCO量が算出される。
(d)その結果を、2000km〜4000km区間における、1周期の電位変動あたり平均のCO量とみなす。すなわち、2000km〜4000kmの区間では、平均的に、1回の電位変動に対して、このCO量が発生したものとみなす。これにより、2000km〜4000kmの区間で発生した総CO量が算出される。
(e)2000km時点までに発生した総CO量に、2000km〜4000kmの区間で発生した総CO量を加算する。その結果、0〜4000km区間で発生した総CO量が算出できる。算出した総CO量を、図10に示すように、横軸の4000kmの位置に記録する。
(f)その後、走行距離が6000kmになるまで走行し、走行距離6000kmの時点で3回目の劣化状態検知を行う。
(g)検知の結果得られた、6000km時点の1周期の電位変動あたりのCO量を、走行距離4000km〜6000km区間における、1周期の電位変動あたりのCO量とみなす。ここから、上記の(d)(e)と同様にして、0〜6000kmで発生した総CO量を算出し、図10に示すように6000km地点に記録する。
(h)6000km以降も、同様に2000km毎に劣化状態検知を行う。劣化状態検知を行うごとに、上記述べた手順に従って、0kmから各走行距離の時点までに発生した総CO量を算出し、図10に示すように各走行距離に記録する。なお、劣化状態検知のタイミングは2000km毎で一定としても良いし、間隔を延ばしたり縮めたりしてもよい。
(i)上記の(a)〜(h)の手順を踏むことにより、走行距離の増大に伴って、図10中に、白抜き丸で示す実測点が記録されていく。これらの実測点が何点か集まった時点で(たとえば、1万km時点で)、それまでに得られた実測点に基づいて図10(a)に示す実測予想劣化特性の曲線が計算により求められる。
(j)実施の形態1では、上記の手順が継続され、実測点が継続的に追加される。追加された実測点に基づいて、逐次的に、実測予想劣化特性の曲線が最新の状態に更新される。
以上述べたように、このステップでは、燃料電池システムの運転中にカーボンの劣化状態を検知して、この検知により得た実測データに基づく将来の予想劣化特性を作成することができる。
〔ステップS110:下限電圧設定値マップ補正ステップ〕
このステップでは、初期の下限電圧設定値マップで想定されているカーボン劣化状態と、システムの運転時間の経過に応じて生ずる現実のカーボン劣化状態との間の乖離具合に応じて、下限電圧設定値マップの内容を補正する処理が行われる。
実施の形態1では、走行距離1万kmの時点で、それまでの実測点を用いて作成した実測予想劣化特性と、初期の劣化予想特性とが比較される。図10(a)において、1万kmまでの実測予想劣化特性と、初期の劣化予想特性とを比較すると、実測予想劣化特性のほうが、各走行距離における劣化量の値が少ない。つまり、図10(a)のケースでは、燃料電池システムを実際に運転したところ、初期の予想に比べて劣化の進み具合が遅い。
図10(a)の紙面上側には、初期の予想劣化特性に従った下限電圧設定値が記載されている。初期の予想劣化特性に従えば、走行距離が1万kmを超える際に、下限電圧が、0.2Vから0.4Vへと切り換えられる筈である。
しかしながら、初期の予想に比べて劣化の進み具合が遅いので、カーボンの状態には余裕がある。前述したように、燃費向上の観点からは、下限電圧を低めにしておきたい。そこで、実施の形態1では、走行距離が3万kmになるまで下限電圧が0.2V維持されるように、下限電圧設定値マップを書き換える。これにより、図10(b)に矢印100で示すように、0.2V区間を、走行距離3万kmまで拡大する。図10(b)の紙面上側に、このような下限電圧設定マップの補正後の下限電圧設定値が記載されている。なお、ここでは、便宜上、走行距離3万km以降をすべて下限電圧0.4V区間に設定している。
以上述べたように、このステップでは、下限電圧設定値マップを、カーボンの現実の劣化状態に合わせて、更新することができる。
なお、下限電圧設定値マップの補正は、上記の実施の形態1の補正方法に限定されるものではなく、次のように行うことができる。カーボンの劣化の進行が予想よりも遅い場合には、現在の下限電圧が維持される。また、カーボンの劣化の進行が予想よりも速い場合には、下限電圧が相対的に高い期間への移行時期が早められる。これら2つのうち、両方を適用しても良いし、いずれか一方のみを行っても良い。
尚、上述した実施の形態1では、第1の手法における(i)劣化特性取得ステップが、前記第1の発明における「劣化特性取得ステップ」に、第1の手法における(ii)複合劣化特性作成ステップが、前記第1の発明における「複合劣化特性作成ステップ」に、第1の手法における(iii)下限電圧設定値マップ作成ステップが、前記第1の発明における「設定値情報作成ステップ」に、それぞれ相当している。そして、実施の形態1における下限電圧設定値マップが、前記第1の発明における「設定値情報」に、相当している。
また、上述した実施の形態1の燃料電池システムでは、記憶装置52が、前記第3の発明における「設定値記憶手段」に、燃料電池スタック10内の個々の単位セルが、前記第3の発明における「燃料電池」に、それぞれ相当している。また、CPU50により単位セルの電圧が下限電圧を下回らないように燃料電池スタック10の発電状態が制御されることにより、前記第3の発明における「電圧制御手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態1では、図9のフローチャートのステップS100〜S106が実行されることにより、前記第6の発明における「劣化状態検知手段」が、図9のフローチャートのステップS108が実行されることにより、前記第6の発明における「劣化特性作成手段」が、図9のフローチャートのステップS110が実行されることにより、前記第6の発明における「設定値補正手段」が、それぞれ実現されている。また、実施の形態1では、車両の現時点までの走行距離が走行距離メータで検知されることにより、前記第6の発明における「電位変動回数検知手段」が実現されている。
また、実施の形態1では、CPU50が間欠運転を行うことにより、前記第5の発明における「間欠運転手段」が実現されている。
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
実施の形態1では、下限電圧の設定方法として、第1の手法である初期の下限電圧設定値マップの作成と、第2の手法である下限電圧設定値マップの更新と、の両方が用いられている。しかしながら本発明はこれに限られるものではない。
第1の手法である初期の下限電圧設定値マップの作成のみを行っても良い。この場合には、下限電圧設定値マップの更新を行わないので、燃料電池システムがタンク40や分析計42を備えなくともよい。
(第2変形例)
実施の形態1の燃料電池システムは、下限電圧設定値マップの更新のための劣化状態検知ステップのために、タンク40および分析計42を備えている。しかしながら、本発明はこれに限られない。タンク40の代わりに、中空糸フィルタを燃料電池システムに搭載しても良い。この中空糸フィルタを使って大気からCOをフィルタリングし、これにより得られたCOフリーの空気を、燃料電池スタック10に供給してもよい。
また、タンク40の代わりに、図6の測定系を模擬した構成を、燃料電池システムに搭載しても良い。つまり、窒素ガスを貯留した窒素タンクと、ポテンショガルバノスタットを燃料電池システムに搭載して、劣化状態検知ステップにおいて図6を用いて説明したのと同じ測定を行っても良い。
(第3変形例)
実施の形態1では、実施の形態1の燃料電池システムが車両に搭載されることが前提となっている。そして、担体のカーボンが受けた電位変動の回数と走行距離とが関連付けられ、走行距離に従って下限電圧の切り替えが行われている。しかしながら、本発明はこれに限られない。実施の形態1の燃料電池システムを、車両搭載以外の用途として用いても良い。この場合には、実施の形態1の燃料電池システムが実際に間欠運転を行った時間や、間欠運転時の1周期の電圧変動(図2(b)の周期Tの電圧変動)が何回繰り返されたかを、カウントしてもよい。カウントした情報に基づいて担体のカーボンが受けた電位変動の回数を算出し、算出した回数に応じて下限電圧の切り替えを行ってもよい。
また、運転時間の計測や間欠運転中の電圧変動のカウントによる電位変動回数の算出は、燃料電池システムが車両に搭載されていても実行可能である。したがって、実施の形態1の燃料電池システムで、走行距離に代えて(または走行距離とともに)、運転時間の計測や電位変動回数のカウントにより、カーボンが受けた電位変動の回数を算出することができる。
(第4変形例)
実施の形態1では、下限電圧設定値マップに規定された下限電圧が、間欠運転時の下限電圧VMINとして利用される。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。間欠運転時以外の通常発電中にも、個々の単位セルの電圧が下限電圧設定値マップに規定された下限電圧を下回らないように、システムの運転を行っても良い。
(第5変形例)
実施の形態1では、カーボンに与える電位変動の下限電位が、0.2V、0.4V、0.75Vの条件下で、それぞれ劣化特性が取得された。そして、これら3段階の下限電位の劣化特性を用いて、複合劣化特性が作成された。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。これらの下限電位の大きさは、適宜変更されてもよい。また、3段階ではなく、より多数の異なる下限電位について劣化特性を取得したり、あるいはより少ない2段階の下限電位について劣化特性を取得して、複合劣化特性を作成しても良い。例えば、0.2V〜0.75Vまで0.05V刻みで1本ずつ劣化特性を取得してもよい。その結果得られた多数の劣化特性を用いて、実施の形態1で述べたように複合劣化特性を作成しても良い。これにより、より細かく下限電圧を変化させるような下限電圧設定値マップが作成される。また、下限電圧の設定値の情報は、必ずしもマップとして記憶されていなくともよく、関数で表せる場合には関数として記憶してもよい。
なお、実施の形態1では、マップ作成対象カーボンが、燃料電池スタック10内で担体として用いるカーボンと同一のものである。しかしながら、燃料電池スタック10で担体として用いるカーボンと同様の劣化特性を示すものであれば、実際に燃料電池スタック10に用いるカーボンと完全同一でない同種の他のカーボンを、マップ作成対象カーボンとして用いても良い。
実施の形態1では、個々の単位セルの電圧をセル電圧モニタ48でモニタリングし、全ての単位セルが下限電圧を下回らないように燃料電池スタック10の発電状態を制御した。しかしながら、次のような変形が可能である。燃料電池スタック10の電圧は、単位セルの1個当たりの電圧と、単位セルの総積層枚数との積に相当する。従って、例えば単位セル1個当たりの下限電圧が0.2Vであり、かつ、単位セルの総積層枚数が200枚である場合には、燃料電池スタック10の下限電圧を0.2V×200=40Vと設定することができる。これに応じて、燃料電池スタック10の電圧が40Vを下回らないように、システムを制御することもできる。このような下限電圧の制御方法も、本発明に含まれるものとする。
実施の形態2.
実施の形態1では、CO発生量を指標にしてカーボンの劣化状態を検知している。これに対し、実施の形態2では、カーボンの劣化反応に伴って発生する熱を検知し、検知した熱量に基づいてカーボンの劣化状態を検知する。
[実施の形態2の構成]
図11は、本発明の実施の形態2の燃料電池システムの構成図である。図11の燃料電池システムは、タンク40、バルブ34、管路38および分析計42を備えておらず、その代わりに、温度計140を備えている。温度計140は、具体的には、燃料電池スタック10の個々の単位セルのカソード電極触媒層近傍に、微細な熱電対を取り付けることにより構成されている。この点を除き、図11の燃料電池システムは、図1に示した実施の形態1の燃料電池システムと同じである。従って、これ以上の説明は省略する。
前述したように、電位変動を受けるとカーボンは劣化する。この劣化反応に伴って、熱が発生する。劣化反応における、発熱量−カーボン劣化量の相関は、CO発生量−カーボン劣化量の相関と同様である。そこで、実施の形態2では、次のようにしてカーボンの劣化状態を検知する。
図12は、実施の形態2の燃料電池システムで実行されるルーチンのフローチャートである。図12は、ステップS200、S204およびS206を除き、図10のルーチンと同じである。
先ず、エアガス量を絞る処理が実行される(ステップS200)。次いで、図10と同様にステップS102が実行され、燃料電池スタック10の電圧が変化させられる。電圧が変化させられることにより、個々の単位セルの担体のカーボンが電位変動を受ける。この電位変動に伴って、カーボンに劣化反応が起こり、劣化反応に付随して熱が発生する。
次いで、温度測定が行われる(ステップS204)。このステップでは、燃料電池スタック10の温度上昇幅に基づいて、1周期の電位変動に対して発生した熱量が検知される。
次に、検知した熱量を、CO発生量に換算する処理が実行される(ステップS206)。前述したように、発熱量−カーボン劣化量との間には、CO発生量−カーボン劣化量の相関と同様の相関がある。従って、これらの間の係数を予め実験等により決定しておくことにより、検知した熱量を、CO発生量に換算することができる。
その後、実施の形態1と同様に、ステップS108、S110の処理が実行される。以上の処理によれば、カーボンの劣化反応に伴う熱量を検知することにより、カーボンの劣化状態を検知することができる。検知した劣化状態に基づいて、実施の形態1と同様に、下限電圧設定値マップを更新することができる。
実施の形態3.
実施の形態1では、CO発生量を指標にしてカーボンの劣化状態を検知している。また、実施の形態2では、カーボンの劣化反応に伴う発熱量に基づいて、カーボンの劣化状態を検知している。これに対し、実施の形態3では、カーボンの酸化反応に伴う電流(酸化電流)を検知することにより、カーボンの劣化状態を検知する。
[実施の形態3の構成]
図13は、本発明の実施の形態3の燃料電池システムの構成図である。図13の燃料電池システムは、タンク40、バルブ34、管路38および分析計42を備えておらず、その代わりに、電流センサ240を備えている。この点を除き、図11の燃料電池システムは、図1に示した実施の形態1の燃料電池システムと同じである。従って、これ以上の説明は省略する。
劣化反応における、酸化電流量−カーボン劣化量の相関は、CO発生量−カーボン劣化量の相関と同様である。そこで、実施の形態3では、次のようにしてカーボンの劣化状態を検知する。
図14は、実施の形態3の燃料電池システムで実行されるルーチンのフローチャートである。図14は、ステップS304およびS306を除き、図12のルーチンと同じである。
図14のルーチンでは、図12のルーチンと同様に、エアガス量を絞る処理(ステップS200)、燃料電池スタック10の電圧を変化させる処理(ステップS102)が実行される。次いで、電流測定が行われる(ステップS304)。このステップでは、電流センサ240により検知される電流の変化幅に基づいて、1周期の電位変動の結果生じた酸化電流の変化量が検知される。
次に、検知した酸化電流の値を、CO発生量に換算する処理が実行される(ステップS306)。前述したように、酸化電流量−カーボン劣化量との間には、CO発生量−カーボン劣化量の相関と同様の相関がある。従って、これらの間の係数を予め実験等により決定しておくことにより、検知した酸化電流量を、CO発生量に換算することができる。
その後、実施の形態1と同様に、ステップS108、S110の処理が実行される。以上の処理によれば、カーボンの劣化反応に伴う酸化電流を検知することにより、カーボンの劣化状態を検知することができる。検知した劣化状態に基づいて、実施の形態1と同様に、下限電圧設定値マップを更新することができる。
なお、実施の形態1の第1の手法における(i)劣化特性取得ステップでは、図6に示した計測系においてCO発生量を計測することにより初期の劣化特性を取得した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。(i)劣化特性取得ステップにおいて、CO発生量の計測に代えて、実施の形態2で述べたカーボンの反応熱の計測や、実施の形態3で述べたカーボン酸化電流の計測を行うことにより、初期の劣化特性を取得してもよい。得られた劣化特性を用いて、実施の形態1で行ったのと同様に、複合劣化特性の作成および下限電圧設定値マップの作成を行えばよい。
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態4を説明する。実施の形態1乃至3では、カーボンの劣化の進行を考慮に入れて、燃料電池の下限電圧が設定されている。これに対し、実施の形態4では、カーボンの劣化の進行を考慮に入れて、燃料電池の上限電圧が設定される。
実施の形態4にかかる上限電圧の設定方法並びにこれを利用した燃料電池システムは、実施の形態1にかかる下限電圧の設定方法並びにこれを利用した燃料電池システムとの間で、設定する電圧制御値の内容を上限電圧と下限電圧とで交換した関係にある。このため、実施の形態4は、実施の形態1で述べた内容、思想の多くを流用することができる。以下の説明では、主に、実施の形態1に対する相違点を説明し、実施の形態1と重複する点は説明を省略する。
実施の形態4にかかる燃料電池システムは、実施の形態1で述べた燃料電池システムと同じハードウェア構成とする。このため、システムのハードウェア構成の説明は省略する。
[実施の形態4における上限電圧の設定手法]
以下、実施の形態4にかかる上限電圧の設定手法を説明する。実施の形態4で用いられる手法は、大きく分けて次の2つである。
・第1の手法は、燃料電池システムの設計段階で、電位変動に伴うカーボン劣化を考慮に入れた上限電圧設定値マップの作成を行うというものである。
・第2の手法は、上記第1の手法で設定した初期の上限電圧設定値マップで想定されているカーボン劣化状態と、システムの運転時間の経過に応じて生ずる現実のカーボン劣化状態との間の乖離を、上限電圧の設定値へと反映させるというものである。
実施の形態4にかかる上記第1、2の手法は、ともに、下限電圧と上限電圧という相違を除き、実施の形態1の下限電圧の設定手法における第1、2の手法とほぼ同様の内容である。従って、以下の説明では、実施の形態1と異なる点を中心に説明を行う。
<第1の手法:初期の上限電圧設定値マップの作成>
初期の上限電圧設定値マップの作成は、以下の(i)〜(iii)のステップにより行われる。
(i)先ず、走行距離(電位変動回数)と担体劣化量との相関関係を示す曲線(劣化特性)を、複数の上限電位で計測する。複数の上限電位は、例えば、OCVから0.1V減じた電位、OCVから0.2V減じた電位、OCVから0.3V減じた電位とすることができる。サンプルや計測系は、実施の形態1と同様に、図6の計測系(但し上限電位を変更可能にしておく)およびサンプル60を用いることができる。印加する電圧パターンは、例えば図15に示すような模擬波形や、三角波形とすればよい。下限電位をVMINに一定として上限電位を相違させる点以外は、実施の形態1と同じである。
(ii)上記の(i)で得られた、上限電位の異なる複数の劣化特性を用いて、実施の形態1で行ったのと同様に、複合劣化特性を作成する。
(iii)複合劣化特性に従って、実施の形態1と同様に、上限電圧設定値マップを作成する。
上記の(i)〜(iii)のステップで作成された上限電圧設定値マップが、記憶装置52に記憶させられる。CPU50は、実施の形態1で下限電圧の制御を行ったときと同様に、上限電圧設定値マップに従って燃料電池スタック10の電圧制御を行う。この制御が、実施の形態1と同様に、システム通常運転時や間欠運転時に行われる。特に、間欠運転時を含め燃料電池システムの電圧がOCV近傍まで高くなるような高電位運転条件(言い換えれば、燃料電池を開回路状態すなわちOpen Circuit状態に置くような運転条件)のもとでは、通常、OC回避運転と呼ばれる劣化防止用の制御が実行される。このOC回避運転では、OCVから例えば0.1V程度電圧が低下するように、若干の電流を燃料電池から取り出すなどの運転が行われる。このようなOC回避運転時における目標電圧を設定する際に、実施の形態4の上限電位設定値マップに従う上限電位の設定を活用することができる。
<第2の手法:上限電圧設定値マップの補正>
続いて、実施の形態4にかかる第2の手法を説明する。実施の形態4では、実施の形態1と同様の理由により、この第2の手法によってシステム運転開始後に定期的に上限電圧設定値マップが更新される。
図16は、実施の形態1にかかる上限電圧設定値マップの更新のフローチャートを示す。このフローチャートの概略は、以下のようなものである。
〔ステップS400〜S406〕 実施の形態1のステップS100〜S106と同様に、実施の形態4が備えるCO分析機能を利用して、現在の走行距離における、1周期の電位変動あたりに発生するCO量が実測される。
〔ステップS408〕 実施の形態1のステップS108と同様に、実測データを用いて、実測予想劣化特性が作成される。
〔ステップS410〕 実測予想劣化特性に従って、上限電圧設定値マップが補正される。このステップでは、実施の形態1における具体的処理のステップS110と同様に、初期の上限電圧設定値マップと実測予想劣化特性との乖離具合に応じて、上限電圧の切換時期が延長あるいは短縮される。
以上説明したように、実施の形態4によれば、電位変動に伴うカーボンの劣化の進行を考慮に入れて、燃料電池スタック10の上限電圧を設定することができる。
なお、実施の形態1で述べた各種変形例を、実施の形態4に適用してもよい。また、実施の形態4でも、実施の形態2および3のように、カーボンの酸化電流やカーボンの劣化反応熱を用いて、劣化状態を検知してもよい。
実施の形態5.
なお、実施の形態1と実施の形態4とを組み合わせてもよい。つまり、初期の電圧設定値マップを作成する際に、上限電位と下限電位とをともに相違させながら、劣化特性を計測してもよい。この場合、劣化特性のそれぞれについて、上限電位および下限電位の情報が備えられる。従って、複数の劣化特性を用いて複合劣化特性を作成することにより、この複合劣化特性に従って燃料電池スタック10の予定動作区間に対して上限電位と下限電位の組をそれぞれ割り振っていくことができる。
本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成図である。 実施の形態1の間欠運転を説明するための図である。 実施の形態1の間欠運転における下限電圧と燃費の関係を示す図である。 実施の形態1において取得された複数の劣化特性を示す図である。 実施の形態1における複合劣化特性の作成手法を説明するための図である。 劣化特性の取得のための計測系を模式的に示す図である。 サンプル60に印加する電圧パターンを示す図である。 図6の計測形におけるCO量を記録した場合に得られる情報を模式的に示す図である。 実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 実施の形態1における、下限電圧設定値マップの補正手法を説明するための図である。 本発明の実施の形態2の燃料電池システムの構成図である。 実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態3の燃料電池システムの構成図である。 実施の形態3において実行されるルーチンのフローチャートである。 実施の形態4において劣化特性を取得するために用いる電圧パターンの一例を示す図である。 実施の形態4において実行されるルーチンのフローチャートである。
符号の説明
10 燃料電池スタック
20 水素タンク
22 管路
24 バルブ
26 管路
30 エアコンプレッサ
32 管路
34 バルブ
36 管路
38 管路
40 タンク
42 分析計
48 セル電圧モニタ
50 CPU
52 記憶装置
60 サンプル
62 電源
140 温度計
240 電流センサ

Claims (9)

  1. 燃料電池の担体に用いるカーボンと同一または同種のカーボンを対象のカーボンにして、該対象のカーボンが受ける電位変動の回数と該対象のカーボンの劣化量との関係を示す劣化特性を、電位変動の下限値を相違させた複数の条件について取得する劣化特性取得ステップと、
    前記劣化特性取得ステップにおいて前記複数の条件について取得された複数の劣化特性を用いて、該複数の劣化特性を複合させて得られる複合劣化特性を作成する複合劣化特性作成ステップと、
    前記複合劣化特性に従って、前記燃料電池の予定動作時間を複数の区間に区分し各区間に対して前記劣化特性取得ステップにおける条件で用いられた複数の電位の下限値を割り振ることにより、前記燃料電池の動作時間に応じた該燃料電池の下限電圧の設定値の情報である設定値情報を作成する設定値情報作成ステップと、
    を有することを特徴とする燃料電池の下限電圧設定方法。
  2. 前記劣化特性取得ステップが取得する前記劣化特性が、前記対象のカーボンが受ける電位変動の回数と、該対象のカーボンの酸化量との関係を示す酸化特性であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の下限電圧設定方法。
  3. 請求項1または2に記載の燃料電池の下限電圧設定方法に従って決定された、燃料電池の下限電圧の設定値情報を記憶する設定値記憶手段と、
    カソードに酸素を含むガスの供給を受けて発電し、かつ、該カソードの触媒の担体が、前記設定値記憶手段が記憶する前記設定値情報の作成のための前記劣化特性取得ステップにおいて燃料電池の担体に用いることを前提とされたカーボンである燃料電池と、
    少なくとも一部の運転領域において、前記設定値記憶手段が記憶した前記設定値情報に規定された下限電圧を下回らないように前記燃料電池の電圧を制御する電圧制御手段と、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  4. 請求項3に記載の燃料電池システムにおいて、
    所定のタイミングで、前記燃料電池のカソードの担体のカーボンの劣化状態を検知する劣化状態検知手段と、
    前記劣化状態検知手段が検知を行うタイミングまでに前記カソードの担体のカーボンが受けた電位変動の総回数を、直接的または間接的に検知する電位変動回数検知手段と、
    前記劣化状態検知手段が検知した劣化状態の情報と前記電位変動回数検知手段が検知した電位変動の総回数とに基づいて、前記カソードの担体のカーボンが受ける電位変動の回数と該カーボンの劣化量との将来の傾向を示す予想劣化特性を作成する劣化特性作成手段と、
    前記予想劣化特性に従って、前記設定値記憶手段が記憶する設定値情報を補正する設定値補正手段と、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  5. 前記燃料電池のカソードに空気を供給する空気供給機構と、
    前記燃料電池システムの運転中に、前記燃料電池スタックの発電を実質的に停止させ或いは該燃料電池スタックを所定の低出力域で発電させ、かつ、前記空気供給機構による空気供給を間欠的に行う運転状態である、間欠運転を行う間欠運転手段と、
    を備え、
    前記電圧制御手段が、前記間欠運転が行われている期間に、前記設定値記憶手段が記憶した前記設定値情報に規定された下限電圧を下回らないように前記燃料電池の電圧を制御することを特徴とする請求項3または4に記載の燃料電池システム。
  6. カソードの触媒の担体にカーボンが用いられており、該カソードに酸素を含むガスの供給を受けて発電する燃料電池と、
    所定のタイミングで、前記燃料電池のカソードの担体のカーボンの劣化状態を検知する劣化状態検知手段と、
    前記劣化状態検知手段が検知を行うタイミングまでに前記カソードの担体のカーボンが受けた電位変動の総回数を、直接的または間接的に検知する電位変動回数検知手段と、
    前記劣化状態検知手段が検知した劣化状態の情報と前記電位変動回数検知手段が検知した電位変動の総回数とに基づいて、前記カソードの担体のカーボンが受ける電位変動の回数と該カーボンの劣化量との将来の関係を示す予想劣化特性を作成する劣化特性作成手段と、
    前記予想劣化特性に基づいて前記燃料電池の下限電圧値または/および上限電圧値を設定する電圧制御値設定手段と、
    少なくとも一部の運転領域において、前記電圧制御値設定手段により設定された下限電圧値または/および上限電圧値に基づいて前記燃料電池の電圧を制御する電圧制御手段と、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  7. 請求項4または6に記載の燃料電池システムにおいて、
    カーボンの酸化反応に伴う二酸化炭素発生量と、カーボンの酸化反応に伴う発熱量と、カーボンの酸化反応に伴う電流変化量とのうち、少なくとも1つに基づいて、カーボンの劣化状態を検知することを特徴とする燃料電池システム。
  8. 燃料電池の担体に用いるカーボンと同一または同種のカーボンを対象のカーボンにして、該対象のカーボンが受ける電位変動の回数と該対象のカーボンの劣化量との関係を示す劣化特性を、電位変動の上限値を相違させた複数の条件について取得する劣化特性取得ステップと、
    前記劣化特性取得ステップにおいて前記複数の条件について取得された複数の劣化特性を用いて、該複数の劣化特性を複合させて得られる複合劣化特性を作成する複合劣化特性作成ステップと、
    前記複合劣化特性に従って、前記燃料電池の予定動作時間を複数の区間に区分し各区間に対して前記劣化特性取得ステップにおける条件で用いられた複数の電位の上限値を割り振ることにより、前記燃料電池の動作時間に応じた該燃料電池の上限電圧の設定値の情報である設定値情報を作成する設定値情報作成ステップと、
    を有することを特徴とする燃料電池の上限電圧設定方法。
  9. 請求項8に記載の燃料電池の上限電圧設定方法に従って決定された、燃料電池の上限電圧の設定値情報を記憶する設定値記憶手段と、
    カソードに酸素を含むガスの供給を受けて発電し、かつ、該カソードの触媒の担体が、前記設定値記憶手段が記憶する前記設定値情報の作成のための前記劣化特性取得ステップにおいて燃料電池の担体に用いることを前提とされたカーボンである燃料電池と、
    少なくとも一部の運転領域において、前記設定値記憶手段が記憶した前記設定値情報に規定された上限電圧を上回らないように前記燃料電池の電圧を制御する電圧制御手段と、
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
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