JP2010018683A - 射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材とその製造方法および成形品 - Google Patents

射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材とその製造方法および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】 バガス繊維を使って、高剛性で安価な、射出成形が可能な繊維強化ポリプロピレン樹脂材を提供する。また、このバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材を製造する方法と、これを射出成形して得る高性能で安価な成形品を提供する。
【解決手段】 繊維長さが0.5mmから50mmの範囲にあるバガス繊維と、MFR100以上の高流動ポリプロピレンと、無水マレイン酸によりグラフト重合した変性ポリプロピレンを、重量割合でバガス10〜50%、ポリプロピレンが50〜90%、変性ポリプロピレン0〜10%の範囲で配合し、160℃ないし200℃で混練することにより射出成形用バガス繊維強化樹脂材を製造する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、植物繊維であるバガス繊維で強化したポリプロピレン樹脂材料、特に射出成形に適したバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材とその製造方法および成形品に関する。
バガス繊維は、サトウキビからキビ汁を絞りきったカスであって、従来はサトウキビ工場のボイラ燃料として焼却されていたものである。バガス繊維は、ケナフ、竹、麻などの植物繊維と同様、汎用樹脂と比較して高い弾性率を有し強靱なので、樹脂の繊維強化材として利用できる。しかも、ガラス繊維などと比較して、比重が小さく安価である。
特許文献1には、バガスを用いた繊維強化プラスチック材が開示されている。開示発明は、バガス繊維がガラス繊維と類似した形状を呈しガラス繊維と絡みやすい特性を有することに注目して、産業廃棄物のバガスを不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂で形成される繊維強化プラスチックの充填材として再利用したものである。
開示された繊維強化プラスチック材は、バガス繊維が充填材としてガラス繊維の強化繊維と併存するので、炭酸カルシウムを充填材とする従来のガラス繊維強化プラスチック材と比べるとより軽量・安価であり、また強靱である。さらに、射出温度で流動性が高く射出成形に使用することができる。
ところで、従来、四輪車、二輪車等の骨格、ボディパネル、エンジンなど、自動車部品は強度の関係から金属製が主であった。しかし、燃費向上やコスト低減を目的とした軽量化や曲面部品の製造し易さの追及などから、プラスチックの使用割合が増加している。その範囲は、内装部品に限らず、外装部品やエンジンなどのパワートレインにまで及んでいる。特に、高剛性、強度などが要求される場所には、繊維強化樹脂(FRP)が多用されている。
繊維強化樹脂には、不飽和ポリエステル、メラニン、エポキシ等の熱硬化性樹脂、ポリスチレン、ABS、ポリアミド等の熱可塑性樹脂が使用される。ここで、繊維強化樹脂として使用される場合を含み、自動車部品に多用される樹脂に熱可塑性樹脂のポリプロピレン樹脂がある。ポリプロピレン樹脂は、軽量、高融点、かつ耐薬品性の柔軟性に富んだ汎用プラスチックであるが、剛性や強度が低いため、タルクやガラス繊維などを強化材として剛性や強度を向上させて使用することが多い。
特許文献2には、自動車の構造部品に使用できる、ガラス繊維で強化した樹脂製のパネル状成形体が開示されている。開示されたパネル状成形体は、熱可塑性樹脂、発泡剤、ガラス繊維に加えて、熱可塑性エラストマーを含有させたことを特徴とする。熱可塑性樹脂として、成形性、コストなどを考慮して、ポリオレフィン系樹脂のエチレン・ポリプロピレンブロック共重合体が好ましいとされ、開示の成形体は、高精度な寸法安定性と十分な耐衝撃性を有するものとなる。
しかし、ガラス繊維やカーボン繊維などの強化材は、高価で比重が大きいため、繊維強化樹脂製品の原価を押し上げる結果となる。
そこで、ポリプロピレン樹脂の強化繊維としてガラス繊維に代えてバガス繊維を利用することにより、低廉で軽量な材料を提供することが考えられる。
しかし、バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂には次のような問題がある。
a.疎水性であるポリプロピレンと親水性のバガスは相溶性が低く、射出成形品の強度および耐衝撃性が低下する。
b.ポリプロピレンにバガスを配合させて加熱混練すると高粘性になりバガス繊維が破損し樹脂材の機械的物性が低下する。そこで、粘性を下げるため混練温度を上げて200℃以上にすると、バガスが熱分解して物性が低下する。また、射出成形時に発生するガスの影響で射出シリンダー内での計量が不安定になり、キャビティに射出する樹脂量が設定より少なくなり、欠肉等の成形不具合が発生しやすい。
c.バガス繊維は天然由来で繊維形状が大きく分布するため、形状の大きい繊維が押出し混練機を詰まらせ、小さい繊維は樹脂の強化効果を低下させる。また、繊維形状のバラツキのため自動車構成部品としての安定した特性、品質を維持することが難しい。
したがって、従来、特にポリプロピレン樹脂にバガス繊維を配合した繊維強化樹脂材は射出成形用として満足できる性能を持たないので、商業的生産はされなかった。特に、射出成形により、自動車用部品など所定の剛性、強度を要求する成形品を製作することは困難であった。
特開平06−287321号公報 特開2004−352801号公報
そこで、本発明が解決しようとする課題は、バガス繊維を使って、高剛性で安価な、射出成形が可能な繊維強化ポリプロピレン樹脂材を提供することである。また、このバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材を製造する方法と、これを射出成形して得る高性能で安価な成形品を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明のバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材は、ポリプロピレンに、破断することにより長さを調整したバガスを配合したものである。
疎水性のポリプロピレンと親水性のバガスを密着させて樹脂と繊維の剥離による強度および衝撃強度の劣化を防止するために、疎水性であるポリプロピレンに無水マレイン酸による親水機能を持たせた無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含有することが好ましい。
さらに、ポリプロピレンはMFR(melt mass flow rate:JISK7210:1999)が100以上の流動性を有するものであることが好ましい。
本発明のバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材は高流動ポリプロピレンを使用することにより、容易にバガス繊維を混練することができ、またバガス繊維を含有した樹脂材が高粘性になることを抑止し、バガス繊維の破損や劣化を防ぐことができる。さらに、バガス繊維の重量割合が大きい場合も、MFRの低下割合が少ないので、高強度の高濃度バガス繊維含有ポリプロピレン成形品が製造可能である。
また、高流動ポリプロピレンを使うことにより混練温度を低下させてバガスの分解を防止することができる。たとえば、MFR100以上のポリプロピレンを使用すれば、混練温度は200℃以下に低下させて、バガス繊維の熱分解を防止することができる。
本発明の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材は、重量割合がバガス10〜50%、ポリプロピレン50〜90%の範囲で配合したことを特徴とする。さらに変性ポリプロピレンを0〜10%の範囲、さらに好ましくは3〜10%の範囲で加えることが好ましい。
バガスの量が上記範囲より大きいと、繊維強化樹脂が高粘性になりやすく混練時にバガス繊維の破損や劣化が発生する。またバガス量が上記範囲より小さいと、繊維強化樹脂としての剛性が低下し、さらにポリプロピレンの量が大きくなる為に材料原価が高くなる。
本発明により、高剛性で安価なバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂を得ることができる。
変性ポリプロピレンは、無水マレイン酸を0.1〜1.0%グラフト重合したものであることが好ましい。無水マレイン酸を0.4〜0.6%グラフト重合したものであればさらに好ましい。
また、破断によりバガス繊維の長さを適度な範囲に管理することにより、繊維強化機能を保ちながら、押出し混練機における詰まりを防止することができる。特に、繊維長さが0.5mmから50mmの範囲になるようにすることが好ましい。
バガス繊維が50mmより長ければ、ペレット製造機や射出成形機の材料放出口にバガス繊維が詰まって押し出しができなくなる場合が生じる。また、バガス繊維が0.5mmより短ければ、バガス繊維強化樹脂の機械的強度が低下して繊維強化機能が失われることになる。
本願発明の射出成形用バガス繊維強化樹脂材の製造方法は、バガス繊維強化樹脂材の上記組成材料を160℃ないし200℃で混練することにより射出成形用バガス繊維強化樹脂材を製造するものである。
射出成形用ペレットを製造するときに、樹脂温度が200℃以上のところで混練するとバガス繊維が炭化することにより強化繊維の物性が劣化する。一方、混練温度160℃以下になると、ポリプロピレン樹脂が溶融しないため混練が困難になる。
上記温度範囲内で混練することにより、物性劣化を防止しながら十分に混練することができる。
なお、樹脂混練には、ペレタイザー機能を附属するバンバリーミキサーや二軸押出し混練機を使うことができる。
また、本発明の成形品は、上記本発明の射出成形用バガス繊維強化樹脂材を射出温度160℃から200℃の範囲で射出成形して得る成形品である。
射出温度が180℃以上では、バガス繊維が徐々に熱分解してガスを発生する。ガスの発生によりシリンダーの計量機能が不安定となり、樹脂の充填不足が生じやすくなる。
そこで、シリンダーにガスベント機構を設置して、シリンダー内で発生するガスを除去するようにすると成形成功率が大幅に向上する。
一方、射出温度が160℃以下では、ポリプロピレン樹脂が溶融しないため成形が困難になる。
なお、成形品は自動車構成部品として適合する形状に成形することができる。
本発明の射出成形用バガス繊維強化樹脂材は、強化材として、高価なガラス繊維やカーボン繊維あるいは高比重なタルクを使用する代わりに産業廃棄物であったバガス繊維を利用するもので、変性ポリプロピレンによりポリプロピレン樹脂マトリックスと強化繊維の相溶性を向上させて高剛性、高強度で安価な構造部品にすることができる。
したがって自動車構成部品としても十分に利用でき、利用したときは大きな経済上の利益が期待できる。
本願発明の射出成形用バガス繊維強化樹脂材の製造方法により、バガス繊維とポリプロピレンの混練が可能になり、混練樹脂の射出成形が可能となった。また混練した繊維強化樹脂の物性、特に曲げ強度、衝撃値が向上し、バガス繊維を強化材とした繊維強化ポリプロピレン樹脂を得ることができた。
また、本発明の射出成形用バガス繊維強化樹脂材を使用した射出成形により、高剛性の自動車構成部品を安価に製造することができる。
なお、本発明の射出成形用バガス繊維強化樹脂材には、射出成形の妨げにならない限り、他の繊維強化材や充填材を含んでもよい。
以下、図面を用い実施例に基づいて本発明のバガス繊維強化樹脂材およびその製造方法を詳細に説明する。
本実施例の射出成形用バガス繊維強化樹脂材は、高流動ポリプロピレンおよび無水マレイン酸変性ポリプロピレンを所定の温度で溶融して植物繊維であるバガスを混入して適当時間混練し、ペレットに成形し射出成形用樹脂材として供給される。無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、親水性のバガス繊維と疎水性のポリプロピレンとの相溶性を向上させる。
使用した高流動ポリプロピレンはMFRが100以上あることが好ましい。また、バガス繊維は、破断により繊維長さが0.5mmから50mmの範囲になるようにしたものを使用する。
バガスの繊維形状は天然由来であり、繊維長さや太さに大きなバラツキがある。そこで、粉砕機などを使って繊維を破断して所定の範囲内の寸法に揃えることにより寸法を小さくすると共に寸法のバラツキを小さくし、目的の成形品に適合する安定した物性や品質をもたらすことができる。
また、組成の重量割合が、バガス10〜50%、ポリプロピレン50〜90%、変性ポリプロピレン0〜10%の割合で配合する。
上記の通り配合された組成物は、バンバリーミキサーや二軸押出し混練機を使って混練し、ペレット状に成形して射出成形用樹脂材とする。
混練温度は160℃から200℃、望ましくは160℃から180℃の範囲にあることが好ましい。
次に、所望形状のメス型を備えた金型をセットした射出成形機に上記ペレット状の樹脂材を供給し、所定の射出温度下で粘性を適当に維持しながら射出成形して成形品とする。
射出温度は、バガス繊維強化樹脂材のバガス繊維の熱分解が激しくなく、かつ粘度が低く流動性が高いことが望まれ、160℃から200℃の範囲内で選択することが好ましい。
160℃以下では流動性が低く型の隅々まで樹脂が充填されない。また、200℃以上ではバガス繊維の熱分解が激しくなり強化繊維としての性能を発揮することができない。
樹脂材に含まれるバガス繊維は180℃以上で熱分解をしてガスを放出するので、比較的高温で射出成形するときは、射出成形機は射出シリンダー内にガスベントを設けて、バガスから発生した熱分解ガスを逃がすようにすることが好ましい。
ガスベントによって、分解ガスに妨げられる成形機の計量精度を確保し、かつ射出時に金型の隅々まで樹脂を充填することができる。したがって、成形体製作工程の歩留りが著しく向上する。
本実施例の射出成形用バガス繊維強化樹脂材に適用する射出成形法は、射出圧縮、射出プレス、発泡射出、中空射出、多色射出、反応射出成形(RIM)、スタックモールド等、基本的に金型に樹脂を射出する型式のものであればよい。
バガス繊維を融点以上で低粘度である高流動ポリプロピレンと混練することにより、汎用ポリプロピレン樹脂よりも低温で成形が可能となり、成形中におけるバガス繊維の熱分解を著しく抑制することができる。また、粘度が低いため、植物繊維と樹脂を混練するとき、あるいは成形するときにおける繊維折損が減少する。強化繊維の繊維長を長く保つことにより、繊維本来の強化効果を発揮することができる。
混練工程で、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを添加すると、植物繊維と樹脂との相溶性を高めて、強度を強化することができる。
変性ポリプロピレンの添加により、成形体の曲げ強度は40%から60%向上し、衝撃値も30%程度改善された。
また、射出成形機の射出シリンダーや金型等の射出工程設備にガスを逃がすベント機構を設けると、樹脂中にガスが存在することによる障害が抑制されて材料計量がより正確になり、金型内への樹脂充填が安定し、成形体の歩留りが著しく向上する。
こうして射出成形により得られた成形品は、高剛性、高強度、安価なプラスチック部品として利用ができ、たとえば自動車部品として採用すれば、大きな経済的な効果が期待できる。
(試験結果1)
射出成形用樹脂材料について粘度低下の可能性を探ることを目的として、各種材料について、シリンダー温度とMFRの関係を計測した。
対象とした樹脂材は、汎用ポリプロピレン樹脂(PP)、高流動ポリプロピレン樹脂(hfPP)、高密度ポリエチレン樹脂(hdPE)、バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂(BF20−PP、BF30−PP)、バガス繊維強化高流動ポリプロピレン樹脂(BF20−hfPP、BF30−hfPP)である。
バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂については、バガス繊維含有率がそれぞれ20%(BF20−)、30%(BF30−)である汎用ポリプロピレン樹脂と高流動ポリプロピレン樹脂について試験した。
図1は、本実施例に係るバガス繊維強化樹脂材と他の樹脂材におけるMFRとシリンダー温度の関係を示すグラフである。横軸にシリンダー温度をとり、縦軸にMFRをとっている。
MFRは、メルト(マス)フローレートの意味で樹脂の流動性を表し、JISK7210:1999に定めた測定法に従い、シリンダー中で190℃に加熱した樹脂に2160gの荷重をかけたとき、決められた細孔(オリフィス)から10分間に流れ出る流量(g/10min)で表す。
本試験においては、シリンダー温度を変化させる以外はJISに従って、温度に依存する流動性をMFRとして測定した。測定値は、各温度について3度測定した平均値を採用した。
図から分かるように、バガス繊維含有率20%のバガス繊維強化高流動ポリプロピレン樹脂材(BF20−hfPP)が汎用ポリプロピレン樹脂材(PP)とほぼ同等のMFR推移を示した。また、バガス繊維含有率30%のバガス繊維強化高流動ポリプロピレン樹脂材(BF30−hfPP)がバガス繊維含有率20%のバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材(BF20−PP)や高密度ポリエチレン樹脂材(hdPE)とほぼ同等のMFR推移を示した。
これから、バガス繊維強化高流動ポリプロピレン樹脂材(BF−hfPP)は、汎用ポリプロピレンを使ったバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材(BF−PP)と比較して、繊維含有率が高くても高い成形性を維持できることが分かる。なお、単体の高密度ポリエチレン樹脂材(hdPE)は、単体の汎用ポリプロピレン樹脂材(PP)と比較してもMFRが低く、バガス繊維強化樹脂のマトリックスとしては適当でないことが分かった。
(試験結果2)
高流動ポリプロピレンを使うことによりバガス繊維強化樹脂が射出成形用樹脂材として適用性が向上することを確認するため、曲げ弾性率と曲げ強度について、バガス繊維強化高流動ポリプロピレン樹脂材(BF−hfPP)と汎用ポリプロピレンのバガス繊維強化樹脂(BF20−PP)を比較した。
図2は、バガス繊維含有率を20%としたバガス繊維強化高流動ポリプロピレン樹脂材(BF20−hfPP)の射出温度と曲げ弾性率の関係を、同じバガス繊維含有率を持たせた汎用ポリプロピレンのバガス繊維強化樹脂(BF20−PP)の測定結果と比較して示すグラフである。
また、図3は、同じバガス繊維強化高流動ポリプロピレン樹脂材(BF20−hfPP)について射出温度と曲げ強度の関係を、汎用ポリプロピレンのバガス繊維強化樹脂(BF20−PP)と比較して示すグラフである。
図に示された通り、射出温度160℃から240℃の範囲内では、曲げ弾性率と曲げ強度のいずれもBF20−PPよりBF20−hfPPの方が高い。また、BF20−hfPPの曲げ弾性率と曲げ強度がそれぞれ平均2500MPa、49MPaであるのに対して、BF20−PPではそれぞれ平均2000MPaと40MPaになり、高流動ポリプロピレン(hfPP)を使用したことにより曲げ特性は改善される。
なお、特に165℃付近における曲げ弾性率や185℃付近における曲げ強度は、BF20−hfPPの方が著しく高いことが分かる。
高流動ポリプロピレン(hfPP)は、高流動性のためバガスとの混練時間が短いこと、また成形時には粘度が低いために繊維の折損が生じにくいことが、曲げ弾性率と曲げ強度の向上に貢献していると考えることができる。
(試験結果3)
予備実験において、汎用のポリプロピレンを使用したバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂(BF−PP)で作製した射出成形体について精査した結果、バガス繊維含有率40%射出温度185℃において曲げ弾性率2500MPaから3000MPaの性能を獲得できることが明らかとなった。しかしながら、曲げ強度は繊維含有率に関係なく一定の値を示し、また衝撃値は低い水準に留まった。
この原因は親水性である植物繊維と疎水性である樹脂との界面の密着度が低いことにあると判断して、鋭意研究を重ねた。
その結果、発明者らは、無水マレイン酸(MAH)でポリプロピレンのグラフト重合をもたらせて変性させた無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAHPP)を添加することにより、繊維と樹脂の界面密着度を増加させ、曲げ強度と衝撃値の改善を達成することができるとの知見を得るに至った。
図4,5,6はバガス繊維強化樹脂材のMAHPP添加量と曲げ弾性率、曲げ強度、衝撃値の関係をそれぞれ示すグラフである。
グラフから分かるように、曲げ弾性率はMAHPPを添加しても3000MPaから大きく変わらないが、曲げ強度と衝撃値はMAHPPを添加することにより明らかに増大する。MAHPPの添加量が10%程度で最も効果が高く、曲げ強度は45MPaから63MPaへと45%の増加、衝撃値は820から1020へと25%の増加が認められた。
これはMAHPPの添加によってバガス繊維とポリプロピレン樹脂の界面密着性が向上したため繊維の抜けが生じにくくなり、曲げ強度と衝撃値が増加したものと考えられる。
(試験結果4)
成形における歩留りと射出温度の関係を試験により確認した。
本実施例のバガス繊維強化樹脂材を射出成形する実験をすると、射出温度が185℃のときは、ランナー部から金型の先端部分まで樹脂材が行き渡って、欠陥のない成形体を得ることができた。これに対して、射出温度を225℃としたときは、樹脂材料が金型の先端まで充填されずに、無欠陥の成形体を得ることに失敗する例が多く発生した。
そこで、射出温度と歩留りの関係を調べて図7に表した。
図7の横軸は射出温度、縦軸は成形成功率を表す。成形成功率は、成形体10個成功するまでに必要であった成形回数から算出した。
図には、通常の方法で成型したときの成功率を黒丸で表し、ガスベントを使ったときの成功率を白丸で表してある。
ガスベントを使わない通常の方法によるときは、成形温度240℃で成功率が8%、260℃では成功率2%と極めて低い結果となった。
図8は、ガスベントを設置した射出成形機のシリンダーから射出される材料の重量を射出温度ごとに測定した結果を表したグラフである。対象の成形体作製に必要な最低射出重量は4.2gであり、グラフ中に水平線を以て示してある。
射出成形機の射出量はシリンダー移動量で調節できるが、シリンダー移動量を最大にして試験を行っている。グラフから分かるように、最高の射出温度260℃の場合でも、金型内充填に必要な樹脂量は確保されており、高温度射出時に未充填部分が生じるという結果とは一致しない。
ノズル付近を注意深く観察すると、射出温度240℃以上の高温成形をする場合にはガスの噴出音が頻繁に生じていた。バガス繊維含有強化樹脂は樹脂温度が180℃以上になると、バガス繊維が熱分解し始めるためガスが発生する。
従来の成形工程の場合、成形体が金型中で冷却されている間にスクリューが後退しながら材料をシリンダー先端に充填するため、ホットランナ部分は塞がれたままになるので、発生したガスはシリンダー部分に溜まりやすい。
残留ガスが溶融樹脂の流れを遮って、金型末端まで樹脂を充填することを妨げ、欠陥成形品が発生するのである。
そこで、射出成形機にガスベント機構を設けて、成形体を取り出した後でホットランナ部分からシリンダー内のガスを抜いてから次の成形を行うようにした。このときの成形成功率を図7の白丸で表現した。これから、ガス抜きをすると、高温成形時の成功率が飛躍的に向上して、射出温度220℃付近まで100%に近い成功率を示すことが分かる。熱分解が活発に起こる260℃においても、成功率は55%を上回った。このようにして、射出成形機におけるガスベントの重要性が確認できた。
なお、ガスベントは、シリンダー部のバレルベント、スクリューベント、金型内のエアベント方式など、各種のベント機構を用いて実行することができる。
図9は、バガスを含めたいくつかの強化材について特性を評価した表である。図9から、バガス強化材は、他の強化材と比較すると強化材比重、コスト、リサイクル性に優れ、剛性向上も見られて、総合的に有利であることが分かる。
本発明の製造方法により、バガス繊維とポリプロピレンの混練が可能となり、射出成形が可能なバガス繊維強化ポリプロピレン樹脂を低コストで製造することができる。
また、製造された射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材はバガス繊維の強化効果により樹脂物性、特に曲げ強度や弾性率が向上するので、成形品は強度を要求される用途に広く使用することができる。
特に、四輪車や二輪車の自動車部品として高剛性、高強度が要求される部分にも、適度な強度を備え、軽量で安価な構成部品として採用できる成形品を供給することができる。
本発明の1実施例に係るバガス繊維強化樹脂材と他の樹脂材について、MFRとシリンダー温度の関係を示すグラフである。 本実施例のバガス繊維強化樹脂材の射出温度と曲げ弾性率の関係を示すグラフである。 本実施例のバガス繊維強化樹脂材の射出温度と曲げ強度の関係を示すグラフである。 本実施例におけるバガス繊維強化樹脂材の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAHPP)添加量と曲げ弾性率の関係を示すグラフである。 本実施例におけるバガス繊維強化樹脂材のMAHPP添加量と曲げ強度の関係を示すグラフである。 本実施例のバガス繊維強化樹脂材のMAHPP添加量と衝撃値の関係を示すグラフである。 本実施例のバガス繊維強化樹脂材の成形温度と成形成功率の関係を示すグラフである。 本実施例のバガス繊維強化樹脂材の射出成形温度と射出量の関係を示すグラフである。 本実施例のバガス繊維強化樹脂材の利点を他の繊維強化材と比較した表である。

Claims (10)

  1. ポリプロピレンに、長さが調整されたバガス繊維が配合された射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材。
  2. 無水マレイン酸によりグラフト重合した変性ポリプロピレン樹脂材を添加したことを特徴とする請求項1記載の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材。
  3. 前記バガス10〜50%、前記ポリプロピレン50〜90%、前記変性ポリプロピレン樹脂材が0〜10%の範囲で配合されることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材。
  4. 前記バガスは繊維長が0.5mmから50mmの範囲にある繊維状バガスであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材。
  5. 前記ポリプロピレンはMFR100以上の高流動ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材。
  6. 前記変性ポリプロピレンは無水マレイン酸を0.1%から1.0%の範囲でグラフト重合したものであることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材を組成する材料を160℃から200℃で混練することを特徴とする射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材の製造方法。
  8. 請求項1から6のいずれか1項に記載の射出成形用バガス繊維強化ポリプロピレン樹脂材を射出温度160℃から200℃の範囲で射出成形して得る成形品。
  9. 射出成形装置に設置したガスベント機構を使用して射出成形することを特徴とする請求項8記載の成形品。
  10. 自動車構成部品であることを特徴とする請求項8または9記載の成形品。
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