JP2010017014A - 撚り線分離具及び撚り線分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡略な構造ながら素線間への挿入配置で素線間のリークを防止して素線に対する各種作業を安全に行える撚り線分離具及びこれを用いる撚り線分離方法を提供する。
【解決手段】 撚り線の素線51を係合可能な複数の保持部12を所定間隔で配設されてなり、素線51間に挿入して各保持部12に素線51を係合させると、素線51を通電状態の場合でもリークの生じない間隔に適切に分離、離隔させられることから、素線51をリークが生じず危険性の小さい状態に移行させられ、素線51に対する損傷等の改修作業が安全に実行でき、作業現場の区間を停電としなくても安全に作業できる状態を確保でき、改修作業を能率よく行える。また、絶縁材で形成されることで挿入時における短絡の危険性は小さく、作業における危険を回避できる上、活線状態で使用しても、短絡に伴う停電や電圧低下を生じさせることもなく、周囲への悪影響を防止できる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、引込線等をなす撚り線の各素線間に一定の間隔を生じさせて素線に対する各種作業を容易にする撚り線分離具及び撚り線分離方法に関する。
電柱の取替えや移設、需要家の契約容量変更等に伴う引込線の取替えや移し替え作業、あるいは、異物の接触や経年劣化により、引込線そのものに損傷がある場合の改修作業においては、引込線をなす素線の切断や被覆の剥取り、テープの巻付け、工事用ケーブル取付などが必要となる。
特に、引込線が被覆や芯線に損傷を受けている場合、その部分を改修しなければ停電に至ることに加え、仮に損傷を放置して断線に至った場合には、地上に落下した電線に人が接触すると感電事故を招くことから、損傷を発見次第、早急に改修する必要がある。
こうした引込線の取替えや移し替え作業、改修作業においては、撚り線となっている引込線の素線を一線ずつ分離させながら各素線ごとの作業が進められる。
従来における素線の分離にあたっては、分離に係る作業専用の工具がないため、ペンチやドライバー等を使用している。しかしながら、引込線には張力がかかっており、しかも長期間現場に設置されたものは被覆同士が密着していることから、ペンチやドライバー等の一般的な工具では素線同士を分離するのは容易でない上、作業中、素線間に無理やり上記の工具を差込むと、被覆を損傷させる危険性がある。加えて、安全のため保護手袋を装着しての作業となるが、この状態では上記の工具を用いての分離作業はさらに困難になるという課題を有していた。
また、引込線が損傷を受けている場合の改修作業においては、リークの生じている損傷箇所に過度に近付いたり、素線の損傷に気付かずに、損傷箇所近傍にペンチやドライバー等の金属製工具を差込んだりすると、短絡を招きやすく、作業者の火傷に繋がる危険性が高いだけでなく、仮に作業中に短絡した場合、引込線の引込まれた需要家における停電や、現場周辺での供給電圧低下が発生するなど、作業現場以外への悪影響も大きいという課題を有していた。
このように、引込線に対する各素線の分離を伴う作業は、技術と経験を要する危険な作業であることから、作業環境の改善が強く求められており、その一つの方策として、電源側で電路開放状態として作業中の短絡を防ぐことも考えられるが、この場合、作業時間全体で停電となるため、停電時間が長引き、周囲に与える悪影響が大きい点では前記同様であるという課題を有していた。
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、簡略な構造ながら素線間への挿入配置で素線間のリークを防止して素線に対する各種作業を安全に行える撚り線分離具及びこれを用いる撚り線分離方法を提供することを目的とする。
本発明に係る撚り線分離具は、絶縁された素線を複数撚り合わせた撚り線における各素線をそれぞれ係合させる複数の凹状の保持部を互いに所定間隔で離隔させて設けられる絶縁材で形成されてなり、撚り線の素線間に挿入されて、前記各保持部に係合させた各素線同士を少なくとも素線間に空隙及び/又は絶縁物が介在する離隔状態に保持するものである。
このように本発明によれば、撚り線の素線を係合可能な複数の保持部を所定間隔で配設されてなり、素線間に挿入して各保持部に素線を係合させると、素線を通電状態の場合でもリークの生じない間隔に適切に分離、離隔させられることにより、素線をリークが生じず危険性の小さい状態に移行させられ、素線に対する損傷等の改修作業が安全に実行でき、作業現場の区間を停電としなくても安全に作業できる状態を確保でき、改修作業を能率よく行える。また、絶縁材で形成されることで挿入時における短絡の危険性は小さく、作業における危険を回避できる上、活線状態で使用しても、短絡に伴う停電や電圧低下を生じさせることもなく、周囲への悪影響を防止できる。
また、本発明に係る撚り線分離具は必要に応じて、先端部が先細のへら状部材で形成され、側部に前記保持部を所定の基準位置から等間隔で且つ保持部同士も等間隔をなす配置として穿設されるものである。
このように本発明によれば、先端部を先細としたへら状部材とされると共に、側部に保持部を各々等間隔で配設され、素線間に先端部から挿入して各保持部に素線を係合させると、素線をリークの生じない間隔に分離、離隔させられることにより、素線間への挿入から各保持部への素線の係合まで速やかに実行でき、保護手袋を装着していても容易に素線を分離させて素線同士の間隔を確保できる上、素線に対する作業に必要な空間を生じさせて作業が行いやすい状態が得られるなど、作業性が向上することとなり、素線分離以降の各種作業についても作業時間を短縮できる。また、単純な構造により低コストで製造できることに加え、使用も極めて容易であり、複雑な器具操作を覚える必要が無く、操作方法習得の手間を省ける。さらに、素線間を容易に開けることで、撚り合わせ状態で内側に位置して外側から見えない部位の素線被覆劣化などの保全点検作業にも使用できる。
また、本発明に係る撚り線分離具は必要に応じて、前記保持部が複数設けられた側部における一の保持部と他の保持部との中間部分に、先端が先細の第二へら状部が突設配置されるものである。
このように本発明によれば、保持部が二つ設けられた側部における二つの保持部の中間部分に突出する第二へら状部を設け、この第二へら状部でも素線間への挿入を容易化することにより、最初に素線間に分離具を先端部から挿入するのに続いて、各素線を対応する保持部に係合させる際に、二素線間に第二へら状部先端を位置させて分離具全体を回転させ、第二へら状部先端が二素線間に分け入るようにすれば、第二へら状部両側の各保持部に素線をそのまま係合させられ、各素線を対応する保持部に係合させる動作が一動作でスムーズに行え、作業能率が向上する。
また、本発明に係る撚り線分離具は必要に応じて、絶縁性の略板状体で形成され、前記保持部が所定の基準位置から等間隔となる外周位置に穿設配置される複数の保持体と、当該複数の保持体を互いに連結する線状で且つ可撓性を有する連結体と、当該連結体が貫通する管状体で形成されて前記各保持体間に配設される複数のスペーサとを備えるものである。
このように本発明によれば、複数の保持体をその間に所定長さのスペーサを介在させつつ連結体で一体に連結して、所定間隔で保持体を位置させた所定長さの組合せ体とされてなり、各保持体を順次素線間に挿入し、保持体における各保持部に素線を係合させると、分離具の長さ範囲で素線の分離、離隔状態が得られることにより、各保持体間に素線に対する作業に必要な空間を確保できることに加え、ロープ等の引張り具や棒等の押し具により離れた場所から分離具を撚り線に沿う方向に動かすと、保持体間で各素線同士を離隔させた状態のままで分離具全体を移動させられ、分離具が改修対象箇所に到達した後も素線を離隔させた状態を保持でき、素線間でリークの生じない状態としてそのまま素線に対し改修作業を行え、作業の安全性と作業能率を大きく向上させられる。また、分離具を動かすと、撚り合わされ密着した素線の間を移動方向前方側の保持体が適度に広げながら進んで、分離具全体を大きな力をかけずに改修対象箇所へ移動させられ、作業者が改修対象箇所との間に安全な距離を取って離れた状態でも容易に分離具を移動させて作業が行え、作業性と安全性の両立が図れる。
また、本発明に係る撚り線分離具は必要に応じて、前記保持体が、所定の保持部に隣接する二箇所を同方向に所定長さ突出させた形状とされ、前記所定の保持部が突出部分間で突出部分先端側から前記基準位置側に延びる切欠きとして設けられてなり、前記突出部分が、先端部を先細のへら状として形成されるものである。
このように本発明によれば、保持体における所定の保持部を挟んだ両側部分を突出状態とし、突出部分の先端をへら状に形成し、素線間に挿入しやすくすることにより、撚り合さって密着した素線のうち一本の素線を突出部分に挟まれた保持部に入れるようにして素線間に突出部分を挿入すると、他の素線も残りの保持部に速やかに係合させられ、短時間で確実、容易に保持体を素線間に位置させられ、素線間への分離具全体の挿入作業性を向上させられる。また、素線間に挿入しやすい形状とすることで、保護手袋を装着していても取扱いが容易である上、素線間への挿入作業に他の器具を併用せずに済む。
また、本発明に係る撚り線分離具は必要に応じて、絶縁性の細長い部材で形成され、前記保持部が長手方向に溝状に連続して設けられる複数の保護体と、前記撚り線に沿って移動自在に配設され、前記各保護体の一端部に当接して保護体を複数まとめて素線連続方向に進行させる保護体支持部とを備えるものである。
このように本発明によれば、保護体における溝状の保持部に素線を係合させつつ各素線間に保護体を挿入し、素線を分離、離隔状態とする一方、保護体に当接する保護体支持部を撚り線に装着して一組の分離具とし、保護体支持部の移動と共に保護体を移動可能とすることにより、ロープ等の引張り具や棒等の押し具により離れた場所から保護体支持部を撚り線に沿う方向に動かすと、密着した素線同士の間隔を保護体がその厚み分だけ広げて素線を分離しつつ、保護体は素線との係合を維持し且つその係合位置をずらしながら移動することとなり、大きな力をかけず速やかに保護体を改修対象箇所へ移動させられる上、保護体が移動して改修対象箇所に到達した後も、保護体の素線との係合状態は維持され、素線の絶縁された安全な状態を別途追加の作業なしに確保でき、安全性の向上と共に作業の手間軽減が図れる。
また、本発明に係る撚り線分離方法は、複数の凹状の保持部を互いに所定間隔で離隔させて設けられる絶縁性の撚り線分離具を、絶縁された素線を複数撚り合わせた撚り線における改修対象箇所でない位置の素線間に挿入し、前記各保持部に各素線を係合させて各素線同士を前記所定間隔に離隔させた状態に保持し、前記撚り線分離具にあらかじめ取付けた引張り具を用いて撚り線分離具を前方側の離れた位置から引き、又は後方側の離れた位置から撚り線分離具を押し具で押して、前記各保持部に対する各素線の係合位置をそれぞれずらしつつ、撚り線上で撚り線分離具を前記改修対象箇所まで移動させ、改修対象箇所の素線間を撚り線分離具で前記所定間隔に離隔させるものである。
このように本発明によれば、複数の保持部を所定間隔で配設された分離具を撚り線の改修対象箇所でない素線間に挿入し、各保持部に素線を係合させて素線を適切に分離、離隔させた上で、ロープ等の引張り具や棒等の押し具により離れた場所から分離具を素線の改修対象箇所へ保持部と素線の係合関係を維持したまま移動させて、改修対象箇所の素線間を分離具で離隔させ、素線間でリークしない状態を得ることにより、改修対象箇所の素線をリークの生じない危険性の小さい状態に移行させて、改修対象箇所で素線に対する改修作業が安全に実行できると共に、分離具が改修対象箇所に達してリークの生じない状態となるまで、作業者が改修対象箇所との間に安全な距離を維持でき、短絡の危険性も極めて小さく、作業現場の区間を停電としなくても安全に作業できる状態を確保でき、改修作業を能率よく行える。
また、本発明に係る撚り線分離方法は必要に応じて、前記撚り線分離具は、絶縁性の細長い部材で形成され、且つ前記保持部が長手方向に溝状に連続して設けられる前記素線と同じ数の保護体と、前記撚り線に沿って移動自在に配設され、前記各保護体の端部に当接して保護体を複数まとめて素線連続方向に進行させる保護体支持部とを有してなり、前記撚り線分離具の保護体支持部にあらかじめ取付けた引張り具を用いて撚り線分離具全体を前方側の離れた位置から引き、又は後方側の離れた位置から保護体支持部を押し具で押して、撚り線分離具全体を撚り線の改修対象箇所に到達させた後、撚り線から保護体支持部を取外し、保護体のみ撚り線に残すものである。
このように本発明によれば、保護体と保護体支持部からなる分離具のうち、溝状の保持部を備える保護体をその保持部と素線とを係合させつつ素線間に挿入し、素線を分離、離隔状態とする一方、保護体支持部を保護体に当接させつつ撚り線に装着し、離れた場所から保護体支持部ごと保護体を素線の改修対象箇所へ移動させて、改修対象箇所で保護体支持部を取外すと、改修対象箇所の素線間に絶縁材である保護体が介在して、素線間でリークしない状態を保持することにより、素線ごとに保護体が取囲んで確実に絶縁状態で保護でき、別途各素線間の絶縁を確保する作業を行わずに済み、安全性を向上させられると共に作業時間の短縮が図れる。また、分離具の移動に際し、保護体が密着した素線間に入り込みながら素線間を保護体が通るのみの必要最小限の間隔に広げて移動することで、保護体の移動に大きな力をかけずに容易に移動させられ、短時間で改修対象箇所に分離具を到達させられる。
また、本発明に係る撚り線分離方法は必要に応じて、撚り線の改修対象箇所を含む所定長さ区間の区間両端部に所定の可撓性を有する線状体を締結し、前記撚り線分離具を撚り線の改修対象箇所に到達させた状態で、前記線状体の長さを調節して撚り線の前記区間両端部間の直線距離を縮め、前記区間内の撚り線を撓ませるものである。
このように本発明によれば、撚り線の改修対象箇所を含む所定区間の両端部を線状体で締結し、撚り線分離具が改修対象箇所に到達して素線間でリークしない状態となったら、線状体の調節で前記区間内の撚り線を撓ませ、張設され緊張していた撚り線の各素線の緊張を緩めることにより、素線に対する改修作業における素線の取扱いを容易にして、作業能率を高められる。また、線状体を通じても撚り線の前記区間外部分同士の連結が確保され、仮に改修対象箇所で断線が生じた場合でも、線状体により断線部分を挟む両側の素線同士の連結が維持されることとなり、素線断線部の落下を防止できる。
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を図1ないし図4に基づいて説明する。本実施形態においては、撚り線として、電柱等から需要側の建物へ引込まれる電線、すなわち引込線を対象とする撚り線分離具の例について説明する。図1は本実施形態に係る撚り線分離具の概略構成図、図2は本実施形態に係る撚り線分離具の素線間挿入状態説明図、図3は本実施形態に係る撚り線分離具における保持部と各素線との係合状態説明図、図4は本実施形態に係る撚り線分離具の素線間隔保持状態斜視図である。
前記各図において本実施形態に係る撚り線分離具としてのセパレータ1は、絶縁された素線51を複数撚り合わせた前記撚り線としての引込線50における各素線51をそれぞれ係合させる複数の凹状の保持部12を互いに所定間隔で離隔させて設けられる絶縁性の略へら状体で形成されてなり、その先端部が先細形状とされると共に、側部に前記保持部12を所定の基準位置から等間隔で且つ保持部12同士も等間隔をなす配置として穿設される構成である。
前記セパレータ1は、撚り線である引込線50の改修対象箇所又はその近傍部分で先端部11から素線51間に挿入され、各保持部12に各素線51を係合させることで、各素線51同士を、通電状態の素線51間で仮に素線絶縁被覆部分が損傷状態にあってもリークが生じない離隔状態に保持する仕組みである。
このセパレータ1は、板状体の先端部11を薄くした略へら状体として形成されると共に、先端部11を先細形状とされてなり、側部には三つの凹状の保持部12を穿設される。これら保持部12は、セパレータ中央部所定位置を中心とする仮想円上に位置し且つ互いに等間隔をなす配置とされ、これら三つの保持部12に係合された各素線51間の間隔が、素線51間でリークを生じないことに加え、引込線50の改修対象箇所への作業に対応できる間隔となるように設けられる構成である。
詳細には、仮想円上に位置する保持部12同士の間隔が、引込線50における改修対象箇所で行う作業に用いる工具、例えば、圧着ペンチ等を素線51に対し使用しても他の素線51と接触等なく短絡が生じない十分なスペースを確保できる大きさとされるのが望ましい。これら保持部12周囲の角部は、素線51の絶縁被覆に食込まないよう面取りされる。
セパレータ1の材質としては、素線51間に挿入されて素線を保持する状態で変形しない強度並びに十分な絶縁性能を有するものとされていれば、どのような絶縁材を用いてもかまわないが、素線51の絶縁被覆に対する摺動抵抗が小さく、且つ絶縁被覆に対し硬質過ぎず被覆を損傷させない程度の軟質性を備える絶縁素材製とするのが好ましく、特にジュラコン(登録商標)等のポリアセタール製とするのが好ましい。セパレータ1が絶縁性とされることで、短絡の危険性が小さく、電源側で開放しない活線状態で作業が行え、不必要な停電を招かずに作業を進められる。
また、セパレータ1の握り部13は、先端部11に対し厚さが一定の単純な板状とされて形成されているが、この他、握り部13の幅を変えると共に別の保持部をなす複数の凹部分を穿設して、大きさの異なる引込線に対応して素線間の間隔を他の所定値に保持する部分として用いる構成とすることもできる。
次に、前記構成に基づく撚り線分離具を使用した撚り線分離方法に基づく作業について説明する。まず、引込線50における改修対象箇所を確認し、リークが生じている場合はそこから少し離れた(例えば、1m以上離れた)安全に作業を行える位置を、リークが生じていない場合には改修対象箇所を直接、撚り線分離具であるセパレータ1の素線間への挿入箇所に選定する。
引込線50に対する挿入箇所において、所定の二本の素線51間にセパレータ1をその先端部から挿入し、保持部12が素線51に近接する程度まで挿入したら、セパレータ1を回転させて素線51に対し略直角をなすよう起立させ、素線間隔を広げると共に、各素線51を各保持部12に係合させて素線間隔を保持する。この際、セパレータ1側部のうち保持部12が二つある方を二本の素線51に隣接させ、保持部12が一つの側部を一本の素線51に隣接させるようにセパレータ1を回転させる。このセパレータ1を回転させる時点で、保持部12が一つのみある方の側部では、保持部12と素線51の位置を合わせてこれらを係合させながらセパレータ1を回転、起立させるようにするのが望ましい。
セパレータ1を改修対象箇所に挿入した場合は、セパレータ1により素線間隔を広げたら、必要に応じてシート体等の絶縁物を素線周囲に配置した後、バイパス線、圧着ペンチ等で改修作業を実行し、適切に改修作業がなされてリーク等が起こり得ない状態が確保されたら、作業に付随する各種工具や絶縁物を取外し、最後にセパレータ1を取外して作業終了となる。
セパレータ1を改修対象箇所から外れた位置に挿入した場合は、セパレータ1により素線間隔を広げたら、作業者が改修対象箇所から離れたまま、セパレータ1の挿入箇所から他の器具を改修対象箇所に移動させて、改修対象箇所のリークを止める。その後、セパレータ1を取外し、リークが無く安全が確保された改修対象箇所に作業者が移動して、所定の改修作業を実行することとなる。
こうした改修作業の他、セパレータ1を用いると素線51間を容易に開けることで、撚り合わせ状態で内側に位置して外側から見えない部位の素線被覆劣化などの保全点検作業にも使用できる。
このように、本実施形態に係る撚り線分離具としてのセパレータ1においては、先端部を先細としたへら状体として形成されると共に、引込線50の素線51を係合可能な保持部12を所定間隔で配設され、素線51間に先端部11から挿入して各保持部12に素線51を係合させると、素線51をリークの生じない間隔に分離、離隔させられることから、素線51をリークが生じず危険性の小さい状態に移行させられ、素線51に対する改修作業が安全に実行でき、作業現場の区間を停電状態にしなくても安全に作業できる状態を確保でき、改修作業を能率よく行える。また、素線間への挿入から各保持部12への素線51の係合まで速やかに実行でき、容易に素線51を分離させて素線51同士の間隔を確保できると共に、素線51に対する作業に必要な空間を生じさせて作業が行いやすい状態が得られるなど、作業性が向上することとなり、全体の作業時間を短縮できる。さらに、単純な構造により低コストに製造できることに加え、使用も極めて容易であり、複雑な器具操作を覚える必要が無く、操作方法習得の手間を省ける。
なお、前記実施形態に係るセパレータにおいては、先端部11以外がほぼ同じ幅の単純なへら形状とする構成としているが、これに限らず、図5に示すように、保持部12が二つ設けられた側部における一の保持部と他の保持部との中間部分に、先端が先細の第二へら状部14を突設配置する構成とすることもでき、二つの保持部12間に第二へら状部14として素線51間への挿入が容易な部位を設けることで、最初に素線51間に先端部11から挿入するのに続いて、セパレータ1を素線51に対し回転、起立させて各素線51を保持部12に係合させる際に、二本の素線51間に第二へら状部14先端をあててセパレータ1全体を回転させることで第二へら状部14両側の各保持部12に素線51をそのまま係合させられ、各素線51を対応する保持部12に係合させる動作が一動作でスムーズに行え、作業能率が向上する。
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図6ないし図13に基づいて説明する。本実施形態においても、撚り線として引込線を対象とする撚り線分離具の例について説明する。図6は本実施形態に係る撚り線分離具の概略構成図、図7は本実施形態に係る撚り線分離具における保持体の正面図及び底面図、図8は本実施形態に係る撚り線分離具の素線間隔保持状態斜視図、図9は本実施形態に係る撚り線分離具の引込線への取付状態説明図、図10は本実施形態に係る撚り線分離具の改修対象箇所への移動開始状態説明図、図11は本実施形態に係る撚り線分離具の改修対象箇所への到達状態説明図、図12は本実施形態に係る撚り線分離具のある区間の引込線弛緩状態説明図、図13は本実施形態に係る撚り線分離具で離隔させた素線への改修作業状態説明図である。
前記各図において本実施形態に係る撚り線分離具としてのスライダ2は、撚り線である引込線50の各素線51がそれぞれ係合する凹状の保持部21aを複数設けられる絶縁性の二つの保持体21を、同じく絶縁性のロープ22とスペーサ23とを用い一体に連結して形成される構成である。このスライダ2が、引込線50の素線51間に挿入され、二つの保持体21の各保持部21aに各素線51を係合させることで、各素線51同士を、通電状態の素線51間で仮に素線絶縁被覆部分が損傷状態にあってもリークが生じない所定間隔に離隔させた状態に保持する仕組みである。
前記スライダ2は、引込線50の各素線51を係合させる凹状の保持部21aを外周部分に複数配設される二つの保持体21と、この二つの保持体21を互いに連結する前記連結体としてのロープ22と、このロープ22が貫通する管状体で形成されて前記二つの保持体21間に配設される複数のスペーサ23とを備える構成である。
前記保持体21は、素線51間に無理なく挿入配置できる程度の外径とされる絶縁性の略円板状体で形成され、基準位置となる保持体中心から等間隔となる外周位置に保持部21aを四つ穿設され、中心にもロープ22を通す孔21bを穿設されてなる構成である。
各保持部21aは、三つが各保持部21a同士で互いに等間隔をなす配置として保持体外周位置に穿設され、これら三つの保持部21aのいずれかに対しちょうど保持体中心を挟んで対向する箇所に残りの一つが穿設される配置形態とされる(図7参照)。これにより、引込線50の素線51が三本である場合には等間隔をなす三つの保持部21aに素線51を各々係合させ、また、引込線50の素線51が二本である場合には保持体中心を挟んで対向する二つの保持部21aに素線51をそれぞれ係合させることで、いずれの素線数においても、各保持部21aに係合された素線51同士を互いに適切な間隔で離隔させた状態が得られる。
各保持部21aは、周囲の角部を面取りされ、さらに保持体中心に向う穴21cが穿設された状態となっており、保持部21aに素線51を係合させた場合に素線51の保持体21との接触面積を減らして接触に係る抵抗を低減できる仕組みである。
この保持体21は、素線間取付状態で変形しない強度を有するものであれば、どのような絶縁材を用いてもかまわないが、素線の絶縁被覆に対する摺動抵抗の小さい絶縁材とするのが好ましく、特に、ジュラコン(登録商標)等のポリアセタール製とするのが好ましい。また、保持体21は素線51を各保持部21aに係合させた状態で、少なくとも素線51間でリークを生じさせない間隔に素線51同士を離隔させられる大きさで、なるべく小さくするのが、素線51に加わるストレスを小さくできる点で望ましい。
前記スペーサ23は、ロープ22を中心に通せる大きさの管状体として形成され、ロープ22を通された状態で複数個を二つの保持体21の間に配設される構成である。スペーサ23が二つの保持体21間に介在することで、保持体21間の間隔がスペーサ23の合計長さ以下にならないよう保持される仕組みである。このスペーサ23に基づく二つの保持体21同士の間隔を、引込線50における各素線51の撚りの1ピッチより短い所定長さとするように、スペーサ23の長さ及び二つの保持体21間に配置する数が適宜設定される。なお、スペーサ23は、スライダ2全体の素線51間への配置状態で加わる外力によってロープ22貫通方向に変形しない強度を有し、且つ摺動抵抗の小さい絶縁材であれば、可撓性や弾性変形性の有無は問わない。
これら保持体21とスペーサ23が、二つの保持体21間に複数のスペーサ23を配置した状態で、連結体としてのロープ22で一体に連結されてスライダ2を構成する。ロープ22は、二つの保持体21における中心の孔21bとスペーサ23の貫通孔に通され、保持体21の外側で結び目等により保持体21のロープ22に対するずれを防ぐ状態とされて保持体21及びスペーサ23と一体化される。ただし、保持体21とスペーサ23は共通のロープ22を通されて連結しているのみであり、互いに傾動並びに回動自在とされてなる。
ロープ22及びスペーサ23により、二つの保持体21同士の間隔を引込線50における各素線51の撚りの1ピッチより短い所定長さに維持していることで、スライダ2全体を素線間に挿入配置し、各保持体21の保持部21aに素線51を係合させた状態で、保持体21に挟まれた区間で素線51の互いに離隔した状態を常に維持できる。すなわち、保持体21同士の間隔が各素線51の撚りの1ピッチを超えるなど、間隔が長過ぎると、係合している素線51の撚りが戻りやすくなり、撚りが戻って素線51同士が一部で密着するとスライダ2の移動が困難になるといった問題を生じるが、ロープ22及びスペーサ23で二つの保持体21同士の間隔を適切な長さに維持していることで、こうした問題の発生を避けることができる。
また、ロープ22は、少なくとも一方の端部を保持体21の外側に所定長さ延長させた状態とされ、この延長部分については、素線51間への挿入状態でスライダ2全体を改修対象箇所まで移動させるための引張り具として用いることができる。なお、このロープ22とした連結体としては、ロープに限らず、可撓性を有する一定強度の線状体であればいずれのものを用いてもかまわない。
次に、前記構成に基づく撚り線分離具を使用した引込線の改修作業について説明する。まず、引込線50における改修対象箇所52を確認し、そこから少し離れた安全に作業を行える位置を、撚り線分離具であるスライダ2の素線間への挿入箇所に選定する。
引込線50に対する挿入箇所において、素線51間にスライダ2の一方の保持体21を挿入し、保持体21の各保持部21aに素線51を係合させる。素線51間に保持体51を挿入しにくい場合には、前記第1の実施形態のセパレータ1を用いて各素線51間隔を広げた状態に保持した後、広がった素線51間に保持体21を挿入し、各保持部21aに素線51を係合させる。引込線50における撚り合わせた素線51の本数によって、係合に用いる保持部21aを適宜使い分ける。
各素線51を各保持部21aに係合させて保持体21を素線51間の中央に位置させたら、この一方の保持体21の位置を改修対象箇所52側にずらす。そして、二つの保持体21間のスペーサ23部分や保持体21外側に延びたロープ22が素線51と絡まないようにしつつ、前記同様に他方の保持体21を素線51間に挿入し、この保持体外周の保持部21aにも各素線51を係合させて保持体21を素線間の中央に位置させ、スライダ2全体を引込線50に取付けた状態を得る。引込線50においては、二つの保持体21間に挟まれた区間で素線51間の広がった間隔が保持されている。
この状態で、改修対象箇所52側に延長させているロープ22を改修対象箇所52を越えた別の位置から引くか、改修対象箇所52から遠い側の保持体21を後方から棒で押すかにより、スライダ2を改修対象箇所52へ移動させる。この移動に係る作業に先立ち、引込線50の改修対象箇所52とスライダ2の挿入箇所を含む所定長の区間の両端に一本のロープ60をそれぞれ締結しておく(図10参照)。引込線50が作業中に断線した場合でも、ロープ60で断線箇所前後の連結状態をあらかじめ確保していることで、断線した端部の地上への落下を防止可能となる。このロープ60については、端部に係止具61を取付けたり途中に輪を設けることで締結や長さ調整の作業性を高められる。
なお、移動の際にスライダ2は素線51の撚りに従って回転するので、ロープ22で引いて移動させる場合には、このスライダ2の回転でロープ22が引込線50に巻付かないよう、あらかじめロープ22を逆方向に二、三回引込線50に軽く巻付けた状態としておくのが望ましい。
移動に際して、前方側の保持体21が密着した素線51同士の間隔を保持部21a間隔分だけ広げながら進行し、且つ前後の保持体21間では素線51同士の間隔が維持される構造により、保持体21に対し相対移動する各素線51が著しい屈曲や変形を起さずに保持部21aをスムーズに通過する状態が得られ、素線51に与えるストレスは小さく、スライダ2に大きな力を加えずに容易に移動させられ、短時間でスライダ2を改修対象箇所52に到達させることができる。
また、保持体21とスペーサ23はロープ22により連結し、互いに傾動並びに回動自在とされることで、保持体21が素線51の撚りに合わせて適切に動き、各素線51が保持部21aから外れることはなく、各素線51と保持体21の保持部21aとの係合は維持され、スライダ2はその長さ範囲で確実に各素線51を分離、離隔状態で保持したまま改修対象箇所52まで移動できる。
スライダ2は、改修対象箇所52に達した後もスライダ2のある範囲で素線51を分離、離隔させており、スライダ2により素線間隔が広がることで、改修対象箇所のリークが止まる。こうしてリークのなくなった素線51に対し改修作業を行えることで安全性及び作業能率を向上させられる。
改修作業では、まず作業に先立ち、引込線50の改修対象箇所52とスライダ2挿入箇所を含む前記区間の両端に締結していたロープ60を長さ調整により縮め、引込線50の前記区間両端同士を近付けて引込線50を撓ませ、改修作業が行いやすい状態としておく(図12参照)。
その後、作業者は改修対象箇所52に移動して、スライダ2に保持された素線51周囲に必要に応じてシート体等の絶縁物を配置した後、バイパス線、圧着ペンチ等で改修作業を実行する(図13参照)。適切に改修作業がなされて、素線間隔を小さくしてもリーク等の起こり得ない状態が確保されたら、作業に付随する各種工具や絶縁物を取外し、最後にスライダ2及び改修に係る区間を緩めていたロープ60を取外して改修作業終了となる。
このように、本実施形態に係る撚り線分離具としてのスライダ2においては、二つの保持体21をその間に所定長さのスペーサ23を介在させつつロープ22で一体に連結し、両端に保持体21を位置させた所定長さの組合せ体として形成され、両端の保持体21をそれぞれ素線51間に挿入し、保持体21における各保持部21aに素線51を係合させると、保持体21間の所定長さ範囲で素線51の分離、離隔状態が得られることから、保持体21間に素線51に対する作業に必要な空間を安全に確保できることに加え、ロープ等の引張り具や棒等の押し具により離れた場所から引込線50に沿う方向に動かすと、保持体21間で各素線51を離隔させた状態のままでスライダ2を移動させられ、スライダ2が改修対象箇所52に到達した後も素線51を離隔させた状態を保持できることで、素線間でリークの生じない状態としてそのまま素線に対し改修作業を行えることとなり、作業の安全性と作業能率を大きく向上させられる。また、スライダ2を動かすと、撚り合わされ密着した素線51の間を移動方向前方側の保持体21が適度に広げながら進行して、スライダ2を大きな力をかけずに改修対象箇所52へ移動させられ、作業者が改修対象箇所52との間に安全な距離を取って離れた状態でも容易に分離具を移動させて作業が行え、作業性と安全性の両立が図れる。
なお、前記実施形態に係る撚り線分離具において、保持体21における各保持部21aの最内面部は円筒面状として穴21cを穿設する構成としているが、これに限らず、図14に示すように、保持体24における各保持部24aの最内面部をテーパ面状に面取り形成する構成とすることもでき、保持体24を素線51の被覆に食込みにくくして保持体24を移動させる際の素線51との接触抵抗(摺動抵抗)を減らし、保持部24aにおいて素線51をスムーズに通過させられると共に、素線51と保持体24との接触位置関係が適切となって、保持体24の進行に伴う撚り状態の素線51が分離して離隔する際の素線51の広がりをより小さい開き角度に抑えることができ、素線51が分離して離隔する際の素線51に加わるストレスをさらに小さくすることができ、作業中における断線等のトラブルが発生しにくくなる。
また、前記実施形態に係る撚り線分離具においては、保持体21を外周に保持部21aが配置された略円板状に形成する構成としているが、これに限らず、保持体の形状は、使い勝手の他、素線同士の間隔や、素線を分離したい区間の長さとして得たい各寸法値に合わせて任意に設定することができ、例えば、図15に示すように、保持体25における所定の保持部25aを挟む両側部分を突出状態とし、この突出部25bの先端をへら状に形成する構成とすることもでき、撚り合さって密着した複数の素線51のうち一本の素線を突出部25bに挟まれた保持部25aに入れるようにして素線51間に突出部25bを挿入すると、他の素線も残りの保持部25cに速やかに係合させられ、短時間で確実、容易に保持体25を素線51間に位置させられ、素線51間へのスライダ2挿入の作業性を大きく向上させられる。また、素線51間に挿入しやすい形状を採用することで、保護手袋を装着していても取扱いが容易である上、素線間への挿入作業に他の器具を併用せずに済むこととなる。
また、前記実施形態に係る撚り線分離具においては、保持体21を二つ用い、保持体21間にスペーサ23を介在させて保持体21を両端に配置する構成としているが、これに限らず、素線51を分離、離隔させたい長さに応じて、保持体を三つ以上配設すると共に、各保持体間が適切な間隔となるよう所定数のスペーサを適宜配設する構成とすることもできる。
また、前記実施形態に係る撚り線分離具においては、連結体であるロープ22における保持体21の外側に延長させた端部を、素線51間への挿入状態でスライダ2全体を改修対象箇所まで移動させるための引張り具として用いる構成としているが、これに限らず、連結体の両方の端部を保持体21の外側に所定長さ延長させる構成とすることもでき、延長させた連結体両端を引込線50の改修対象箇所を含む所定区間の区間両端部に締結固定することで、連結体を通じても引込線50の前記区間外部分の連結が確保され、仮に改修対象箇所で作業中に断線が生じた場合でも、連結体により断線箇所を挟む両側の素線同士の連結が維持されることとなり、素線断線部の落下を防止できる。加えて、作業中に誤って素線間から外れたスライダ2の落下防止も図れる。
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図16に基づいて説明する。本実施形態においても、撚り線として引込線を対象とする撚り線分離具の例について説明する。図1は本実施形態に係る撚り線分離具における保護体支持部分解斜視図及び保護体端部概略斜視図並びに引込線取付状態の概略構成図である。
前記各図において本実施形態に係る撚り線分離具としてのスライダ3は、絶縁性の細長い部材で形成され、前記保持部31aが長手方向に溝状に連続して設けられる引込線50の素線51と同数の保護体31と、引込線50に沿って移動自在に配設され、前記各保護体31の一端部に当接して保護体31を複数まとめて素線連続方向に進行させる保護体支持部32とを備える構成である。
前記保護体31は、可撓性を有する絶縁性の細長い部材であり、素線51の改修対象箇所より長い所定長さとされ、長手方向全体にわたり溝状の保持部31aを設けられる構成である。この保護体31は、保持部31aに係合させる素線51ごとに保護体長さ寸法をそれぞれ少しずつ異ならせて設定するのが、素線51間での保護体31を含むスライダ3の移動しやすさの点で望ましい。
保護体31における溝状の保持部31aの溝開口部分には、係合可能に凹部31bと凸部31cが長手方向に連続させてそれぞれ設けられており、引込線50の素線51を保持部31aに挿入した後で、凹部31bと凸部31cを係合させれば、保持部31aの溝開口が閉じられて保護体31を管状とすることができる構成である。
前記保護体支持部32は、引込線50を通せる大きさとされる切欠き部33a及びこれより小さい第二切欠き部33b並びに貫通孔33cを穿設される板状の第一支持体33と、同様の切欠き部34aと二つの貫通孔34bを穿設されると共に突起部34cを形成される板状の第二支持体34と、第一支持体33の第二切欠き部33bと貫通孔33c、及び第二支持体34の二つの貫通孔34bにそれぞれ通されて各支持体33、34を一体に保持する略棒状の二つのストッパ35と、このストッパ35に連結される紐状体36とを備える構成である。
保護体支持部32は、第一支持体33の切欠き部33aに引込線50を係合させ、また第二支持体34の切欠き部34aにも引込線50を係合させた状態で、第一支持体33の切欠き部33aに第二支持体34の突起部34cを嵌合させ、且つ各保持体33、34の第二切欠き部33b及び貫通孔33c、34bにストッパ35を挿入して支持体33、34を一体化することで得られる。なお、紐状体36があらかじめ貫通孔33c、34bに通されており、一体化していない分解状態でも各部品が分離、散逸することはない。
一体化した保護体支持部32では、各支持体33、34の切欠き部33a、34a同士が異なる向きで重なり合って一つの孔を形成する状態となり、この孔に通る引込線50から保護体支持部32は離れない状態となる。切欠き部33a、34a同士の重なりで生じた孔の大きさは引込線50の太さとほぼ同じであり、引込線50はこの孔に対し相対移動できるものの、引込線50の各素線51に装着された保護体31はこの孔を通ることができないことから、引込線50に対し保護体支持部32を移動させると、保護体31は保護体支持部32に押されて動くこととなる。また、第一支持体33の切欠き部33aに第二支持体34の突起部34cが嵌合していることで、保護体支持部32として各保護体31に接する面を凹凸のない平面状とすることができ、保護体31をスムーズに移動させられる。
次に、前記構成に基づく撚り線分離具を使用した引込線の改修作業について説明する。まず、引込線50におけるリークの生じた改修対象箇所を確認し、そこから少し離れた安全に作業を行える位置をスライダ3の素線間への挿入箇所に選定する。作業に先立ち、スライダ3の保護体支持部32は、ストッパ35を各支持体33、34の第二切欠き部33bや貫通孔33c、34bから外した分解状態としておく。
引込線50に対する作業場所において、素線51間にスライダ3の各保護体31を挿入し、各保護体31の保持部31aに素線51を係合させる。素線51間に保護体31を挿入しにくい場合は、前記第1の実施形態のセパレータ1を用いて各素線51間隔を広げた状態に保持した後、広がった素線51間に保護体31を挿入し、各保持部31aに素線51を係合させる。スライダ3の移動時のバランスを考慮して、引込線50における損傷していない素線51も含めて全ての素線51に保護体31を取付けるようにするのが望ましい。この際、保護体31の長さが素線51ごとにそれぞれ数cm程度ずつ異なる寸法となるよう調整する。なお、図16(C)中においては、引込線50における各素線51への保護体31取付部分を、図示を簡略化するため直線的に示しているが、実際はこの部分も素線51は撚り合さった状態を維持しており、保護体31も素線51の撚りに合わせてひねられた状態となっている。
素線51を保持部31aに係合させて保護体31を全ての素線51周りに取付けたら、保護体31の取付位置近傍の引込線50に対し、紐状体36が素線51と絡まないようにしつつ、分解状態の保護体支持部32のうち、第一支持体33の切欠き部33aに引込線50を係合させつつ第一支持体33を引込線50周囲に配置し、また、第二支持体34の切欠き部34aに引込線50を係合させつつ第二支持体34を引込線50周囲に配置し、第一支持体33と第二支持体34を重ね合わせ、切欠き部33aに突起部34cを嵌合させる。この状態で各支持体33、34の第二切欠き部33b、貫通孔33c、34bに通った紐状体36を引き、第二切欠き部33b及び各貫通孔33c、34bにストッパ35を挿入して支持体33、34を保護体支持部32として一体化し、同時にこの保護体支持部32を引込線50から離れない状態とする。
一体の保護体支持部32が得られたら、改修対象箇所を越えた別の位置から紐状体36又は紐状体36から延長させたロープ等を引いて、保護体31と保護体支持部32からなるスライダ3を素線51の改修対象箇所へ移動させる。この移動に係る作業に先立ち、引込線50の改修対象箇所とスライダ3の挿入箇所を含む所定長の区間の両端に一本のロープ60をそれぞれ締結し、引込線50が作業中に断線した場合でも、ロープ60で断線箇所前後の連結状態を確保しておくことで、断線した端部の地上への落下を防止可能とする(図10参照)。
保護体31の長さを素線ごとにそれぞれ異ならせていることで、スライダ3の移動に合わせて素線51間に入り込む保護体31は一つずつ増えていく状態となり、素線間の間隔もこの入り込む保護体31の数の増加に合わせて増えていくこととなる。こうして、素線間の間隔変化が徐々に生じ、且つ素線51間に挿入するのを保護体31のみとして素線間の間隔変化の大きさそのものも小さくしていることから、素線が間隔を広げる際に素線に加わる曲げ等の応力は小さくなり、保護体31をはじめとするスライダ3の移動に大きな力をかけずに済むと共に、素線への悪影響も小さく断線等に至る事態を防止できる。
素線51に取付けた保護体31が、密着した素線51間に入り込んで素線間を保護体31が通るのみの必要最小限の間隔に広げながら、引込線50の外側に位置する保護体支持部32で押されて移動することで、保護体31の移動に大きな力をかけずに容易に移動させられ、各素線51を確実に把持したまま各保護体31が確実に素線51同士を分離状態にしながら移動していく。
スライダ3全体が改修対象箇所に達した状態では、保護体31が素線51同士を分離し離隔させた状態を保持できるだけでなく、素線51ごとに保護体31が取囲むことで素線51間を適切に絶縁して保護した状態が得られることとなる。この状態から、保護体31の保持部31a開口部分の凹部31bと凸部31cを係合させて開口を閉じ、保護体31を管状として、より絶縁を確実なものとしたら、正式な改修に先立ってリークを止めればよい仮改修であれば、この段階で十分な絶縁状態が既に得られており、別途各素線間の絶縁を確保する作業を行わずに済むこととなり、改修対象箇所の安全性を確保しつつ作業時間の短縮が図れる。この後は、保護体31を引込線50の各素線51周囲に残した状態のまま、引込線50から保護体支持部32を分解状態として取外し、改修に係る区間を緩めていたロープ60も取外せば、作業終了となる。
一方、素線に対し改修作業を行う場合は、作業に先立ち、引込線50の改修対象箇所とスライダ3挿入箇所を含む前記区間の両端に締結していたロープ60を長さ調整により縮め、引込線50の前記区間両端同士を近付けて引込線50を撓ませ、各素線51にかかる張力を緩和して改修作業が行いやすい状態としておく。そして、改修作業においては、必要に応じて前記第1の実施形態のセパレータ1を用いて素線間の間隔を広げた状態に保持したり、素線51周囲にシート体等の絶縁物を追加配置するなどした上で、作業対象の一素線に係合する保護体のみずらして素線に対する改修作業を順次実施する。作業対象以外の各素線は保護体で保護されたままであるため、安全が確保された状態で容易に作業が行える。
素線の改修を終えたら、絶縁を強固なものにする場合は保護体31を引込線50の各素線51周囲に残した状態のままとし、十分に絶縁がなされて保護体31を外せる場合は保護体31を取外し、続いて、引込線50から保護体支持部32を分解状態として取外し、作業に付随する各種器具や絶縁物、さらに改修に係る区間を緩めていたロープ60も取外せば、作業終了となる。
このように、本実施形態に係る撚り線分離具としてのスライダ3においては、保護体31における溝状の保持部31aに素線51を係合させつつ各素線間に保護体31を挿入し、素線51を分離、離隔状態とする一方、保護体31に当接する保護体支持部32を引込線50に装着して一組のスライダ3とし、保護体支持部32の移動と共に保護体31を移動可能とすることから、ロープ等の引張り具や棒等の押し具により離れた場所から保護体支持部32を引込線50に沿う方向に動かすと、密着した素線同士の間隔をスライダ3の保護体31がその厚み分だけ広げて素線を分離しつつ、保護体31の保持部31aと素線51との係合は維持し、保護体31は素線51との係合位置をずらしながら移動することとなり、保護体31を大きな力をかけず速やかに改修対象箇所へ移動させられる上、保護体31が移動して改修対象箇所に到達した後も、保護体31の素線51との係合状態は維持され、素線51の絶縁された安全な状態を別途追加の作業なしに確保でき、安全性の向上と共に作業の手間軽減が図れる。
なお、前記実施形態に係る撚り線分離具において、保護体支持部32の紐状体36又はこれから延長したロープ等を引き具として用いてスライダ3を移動方向前方側から引いて移動させる構成としているが、これに限らず、保護体支持部でストッパが各保持体から容易に離脱しない構成とすれば、スライダ3の移動に際し、改修対象箇所に向う移動方向について後方側の離れた位置から、保護体支持部を棒等の所定の押し具で押して、改修対象箇所へ向けて移動させることもできる。
本発明の第1の実施形態に係る撚り線分離具の概略構成図である。 本発明の第1の実施形態に係る撚り線分離具の素線間挿入状態説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る撚り線分離具における保持部と各素線との係合状態説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る撚り線分離具の素線間隔保持状態斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る他の撚り線分離具の概略構成図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具の概略構成図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具における保持体の正面図及び底面図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具の素線間隔保持状態斜視図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具の引込線への取付状態説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具の改修対象箇所への移動開始状態説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具の改修対象箇所への到達状態説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具のある区間の引込線弛緩状態説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具で離隔させた素線への改修作業状態説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具における他の保持体の正面図及びA−A断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る撚り線分離具における別の保持体の正面図である。 本発明の第3の実施形態に係る撚り線分離具における保護体支持部分解斜視図及び保護体端部概略斜視図並びに引込線取付状態の概略構成図である。
符号の説明
1 セパレータ
2、3 スライダ
11 先端部
12 保持部
13 握り部
14 第二へら状部
21 保持体
21a 保持部
21b 孔
21c 穴
22 ロープ
23 スペーサ
24、25 保持体
24a 保持部
25a、25c 保持部
25b 突出部
31 保護体
31a 保持部
31b 凹部
31c 凸部
32 保護体支持部
33 第一支持体
33a、34a 切欠き部
33b 第二切欠き部
33c、34b 貫通孔
34 第二支持体
34c 突起部
35 ストッパ
36 紐状体
50 引込線
51 素線
52 改修対象箇所
60 ロープ
61 係止具

Claims (9)

  1. 絶縁された素線を複数撚り合わせた撚り線における各素線をそれぞれ係合させる複数の凹状の保持部を互いに所定間隔で離隔させて設けられる絶縁材で形成されてなり、
    撚り線の素線間に挿入されて、前記各保持部に係合させた各素線同士を少なくとも素線間に空隙及び/又は絶縁物が介在する離隔状態に保持することを
    特徴とする撚り線分離具。
  2. 前記請求項1に記載の撚り線分離具において、
    先端部が先細のへら状部材で形成され、側部に前記保持部を所定の基準位置から等間隔で且つ保持部同士も等間隔をなす配置として穿設されることを
    特徴とする撚り線分離具。
  3. 前記請求項2に記載の撚り線分離具において、
    前記保持部が複数設けられた側部における一の保持部と他の保持部との中間部分に、先端が先細の第二へら状部が突設配置されることを
    特徴とする撚り線分離具。
  4. 前記請求項1に記載の撚り線分離具において、
    絶縁性の略板状体で形成され、前記保持部が所定の基準位置から等間隔となる外周位置に穿設配置される複数の保持体と、
    当該複数の保持体を互いに連結する線状で且つ可撓性を有する連結体と、
    当該連結体が貫通する管状体で形成されて前記各保持体間に配設される複数のスペーサとを備えることを
    特徴とする撚り線分離具。
  5. 前記請求項4に記載の撚り線分離具において、
    前記保持体が、所定の保持部に隣接する二箇所を同方向に所定長さ突出させた形状とされ、前記所定の保持部が突出部分間で突出部分先端側から前記基準位置側に延びる切欠きとして設けられてなり、
    前記突出部分が、先端部を先細のへら状として形成されることを
    特徴とする撚り線分離具。
  6. 前記請求項1に記載の撚り線分離具において、
    絶縁性の細長い部材で形成され、前記保持部が長手方向に溝状に連続して設けられる複数の保護体と、
    前記撚り線に沿って移動自在に配設され、前記各保護体の一端部に当接して保護体を複数まとめて素線連続方向に進行させる保護体支持部とを備えることを
    特徴とする撚り線分離具。
  7. 複数の凹状の保持部を互いに所定間隔で離隔させて設けられる絶縁性の撚り線分離具を、絶縁された素線を複数撚り合わせた撚り線における改修対象箇所でない位置の素線間に挿入し、前記各保持部に各素線を係合させて各素線同士を前記所定間隔に離隔させた状態に保持し、
    前記撚り線分離具にあらかじめ取付けた引張り具を用いて撚り線分離具を前方側の離れた位置から引き、又は後方側の離れた位置から撚り線分離具を押し具で押して、前記各保持部に対する各素線の係合位置をそれぞれずらしつつ、撚り線上で撚り線分離具を前記改修対象箇所まで移動させ、改修対象箇所の素線間を撚り線分離具で前記所定間隔に離隔させることを
    特徴とする撚り線分離方法。
  8. 前記請求項7に記載の撚り線分離方法において、
    前記撚り線分離具は、絶縁性の細長い部材で形成され、且つ前記保持部が長手方向に溝状に連続して設けられる前記素線と同じ数の保護体と、前記撚り線に沿って移動自在に配設され、前記各保護体の端部に当接して保護体を複数まとめて素線連続方向に進行させる保護体支持部とを有してなり、
    前記撚り線分離具の保護体支持部にあらかじめ取付けた引張り具を用いて撚り線分離具全体を前方側の離れた位置から引き、又は後方側の離れた位置から保護体支持部を押し具で押して、撚り線分離具全体を撚り線の改修対象箇所に到達させた後、撚り線から保護体支持部を取外し、保護体のみ撚り線に残すことを
    特徴とする撚り線分離方法。
  9. 前記請求項7又は8に記載の撚り線分離方法において、
    撚り線の改修対象箇所を含む所定長さ区間の区間両端部に所定の可撓性を有する線状体を締結し、前記撚り線分離具を撚り線の改修対象箇所に到達させた状態で、前記線状体の長さを調節して撚り線の前記区間両端部間の直線距離を縮め、前記区間内の撚り線を撓ませることを
    特徴とする撚り線分離方法。
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