JP2010014192A - 密封装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シールリップを有する密封装置において、摺動面における流体膜を厚くすることで流体潤滑にもとづく低トルク化を実現する。
【解決手段】軸等の相手部材の周面に摺動自在に密接するシールリップを有し、シールリップは、密封流体側斜面および反密封流体側斜面ならびに両斜面の間に設けられた中間面を有する。反密封流体側斜面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を押し戻す作用を奏する正ネジ部を設ける。中間面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部を設ける。逆ネジ部は、中間面への流体送り力を強化するクサビ形状またはスロープ形状を有する。
【選択図】図1
【解決手段】軸等の相手部材の周面に摺動自在に密接するシールリップを有し、シールリップは、密封流体側斜面および反密封流体側斜面ならびに両斜面の間に設けられた中間面を有する。反密封流体側斜面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を押し戻す作用を奏する正ネジ部を設ける。中間面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部を設ける。逆ネジ部は、中間面への流体送り力を強化するクサビ形状またはスロープ形状を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、密封装置に係り、更に詳しくは、シールリップを有する密封装置に関するものである。本発明の密封装置は例えば、自動車関連の分野において用いられ、あるいは汎用機械等の分野において用いられる。
シールリップを有する密封装置においては一般に、シールリップの摺動摩耗を抑制すべく低トルク化が求められている。低トルク化の手法としては、シールリップの小断面化などによる緊迫力の低減、材料の変更や表面の改質(例えばフッ素樹脂コーティング)などの低摩擦係数化が検討されているが、更なる低トルク化を実現するため、摺動面における流体膜(油膜)を厚くすることで流体潤滑にもとづく低トルク化を実現することが考えられる。
従来技術としては、図14に示すように、シールリップ51の密封流体側斜面52および反密封流体側斜面53にそれぞれネジ部54,55を設け、このネジ部54,55の奏するポンピング作用によって密封流体を密封流体側へ押し戻す技術が開発されている(特許文献1参照)。
実開平3−29768号公報
しかしながら、この従来技術によると、ネジ部54,55の奏するポンピング作用によって密封流体を密封流体側へ押し戻すことから、密封性能は高められるものの、摺動面における流体膜について云えばその厚さは薄くならざるを得ず、よって流体潤滑にもとづく低トルク化を実現することができない。
また、密封流体側斜面と反密封流体側斜面との間に中間面を設ける技術が下記特許文献2に記載されているが、この先行技術は、中間面にクサビ形状やスロープ形状を有する逆ネジ部を設けるものではない。
特開2003−254439号公報
本発明は以上の点に鑑みて、シールリップを有する密封装置において、上記したように摺動面における流体膜を厚くすることで流体潤滑にもとづく低トルク化を実現することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による密封装置は、軸等の相手部材の周面に摺動自在に密接するシールリップを有し、前記シールリップは、密封流体側斜面および反密封流体側斜面ならびに前記両斜面の間に設けられた中間面を有し、前記反密封流体側斜面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を押し戻す作用を奏する正ネジ部を設け、前記中間面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部を設け、前記逆ネジ部は、前記中間面への流体送り力を強化するクサビ形状を有することを特徴とするものである。
また、本発明の請求項2による密封装置は、軸等の相手部材の周面に摺動自在に密接するシールリップを有し、前記シールリップは、密封流体側斜面および反密封流体側斜面ならびに前記両斜面の間に設けられた中間面を有し、前記反密封流体側斜面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を押し戻す作用を奏する正ネジ部を設け、前記中間面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部を設け、前記逆ネジ部は、前記中間面への流体送り力を強化するスロープ形状を有することを特徴とするものである。
上記構成を有する本発明の密封装置においては、シールリップの密封流体側斜面および反密封流体側斜面の間に中間面が設けられ、中間面に逆ネジ部が設けられ、更に逆ネジ部に、中間面への流体送り力を強化するクサビ形状またはスロープ形状が設けられている。中間面は相手部材の周面に摺動自在に密接して摺動部を形成する。逆ネジ部は、反密封流体側斜面に設けられる正ネジ部とは反対向きのネジであって、正ネジ部が回転時のポンピング作用によって密封流体を押し戻す作用を奏するのに対し、逆ネジ部は回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏するものである。したがってこの逆ネジ部の奏するポンピング作用によって中間面に密封流体が積極的に導入され、厚い流体膜が形成され、中間面を相手部材から浮かす動圧が発生する。
また、逆ネジ部に、中間面への流体送り力を強化するクサビ形状またはスロープ形状が設けられているので、流体膜が一層厚く形成され、動圧が大きくなる。これにより流体膜が薄くなりやすい起動時、停止時および低速回転時においても流体膜および動圧を確保することが可能となり、幅広い回転速度の領域で低トルク化を実現することが可能となる。
したがって、逆ネジ部およびクサビ形状の作用、または逆ネジ部およびスロープ形状の作用が相俟って、流体潤滑にもとづく低トルク化を実現することができる。
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明は、中間面とそこに設ける油側からの吸込み逆向きネジを有するオイルシールの改良発明であり、本発明では、吸込み逆向きネジの替わりに、油側からの吸込み逆向きに三角形状の溝または突起を設ける。
(2)三角形状は、(a)辺が油側斜面と中間面との境界上に設けられる場合と、(b)頂点が油側斜面と中間面との境界上に設けられる場合との2種類がある。シールリップの摺動面は大気側斜面と中間面の間のラインであり(後記する図13(C)の場合)、特に(a)の溝形状では、回転時のノズル作用により最も摺動面近傍へ油を集めることができる。したがって、(b)と比較して従動部の油膜が厚くなり、一層の低トルク化が実現される。尚、溝および突起は直角三角形の場合もある。
(3)各形状において、溝または突起の縁は中間面と大気側斜面との境界部に達しないように設けられ、溝または突起の縁と境界との間に全周に亙って相手部材の周面に密接する溝不存在領域が設定される。
(4)油側からの吸込み逆向き溝または突起のポンピング作用により摺動面油膜を厚くさせ、流体潤滑にもとづく低トルク化を実現することができる。
(2)三角形状は、(a)辺が油側斜面と中間面との境界上に設けられる場合と、(b)頂点が油側斜面と中間面との境界上に設けられる場合との2種類がある。シールリップの摺動面は大気側斜面と中間面の間のラインであり(後記する図13(C)の場合)、特に(a)の溝形状では、回転時のノズル作用により最も摺動面近傍へ油を集めることができる。したがって、(b)と比較して従動部の油膜が厚くなり、一層の低トルク化が実現される。尚、溝および突起は直角三角形の場合もある。
(3)各形状において、溝または突起の縁は中間面と大気側斜面との境界部に達しないように設けられ、溝または突起の縁と境界との間に全周に亙って相手部材の周面に密接する溝不存在領域が設定される。
(4)油側からの吸込み逆向き溝または突起のポンピング作用により摺動面油膜を厚くさせ、流体潤滑にもとづく低トルク化を実現することができる。
(5)本発明は、密封流体側傾斜の中間面とそこに設ける密封流体側からの吸込み逆向きネジを有するオイルシールの改良発明であり、本発明では、逆向きネジ形状を、摺動面方向に向かって徐々に深さが浅くなるようなテーパーを設けた凹形とする。
(6)逆向きネジは、摺動面に複数箇所設けても良く、密封流体の摺動面への送り効果を考えると、シールリップの摺動する面に一様に複数箇所設けることが好ましい。
(7)シールリップの材質としては、PTFEなどの樹脂や、フッ素ゴム、アクリルゴム、二トリルゴムなどの摺動シールとして一般に使用されるゴム材料などが挙げられる。
(8)本発明では、逆向きネジ形状を凹形とし、摺動面方向に向かって徐々に深さが浅くなるようなテーパーを設けることで、摺動面へのポンピング作用が大きくなり、形成される密封流体の膜厚をより厚く形成でき、摺動トルクを低減することができる。
(6)逆向きネジは、摺動面に複数箇所設けても良く、密封流体の摺動面への送り効果を考えると、シールリップの摺動する面に一様に複数箇所設けることが好ましい。
(7)シールリップの材質としては、PTFEなどの樹脂や、フッ素ゴム、アクリルゴム、二トリルゴムなどの摺動シールとして一般に使用されるゴム材料などが挙げられる。
(8)本発明では、逆向きネジ形状を凹形とし、摺動面方向に向かって徐々に深さが浅くなるようなテーパーを設けることで、摺動面へのポンピング作用が大きくなり、形成される密封流体の膜厚をより厚く形成でき、摺動トルクを低減することができる。
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係る密封装置(オイルシール)1の要部断面を示している。図2は図1の一部を拡大して示している。当該実施例に係る密封装置1は、摺動の相手部材である軸が円周上一方向に回転する一方向回転シールであって、以下のように構成されている。
図1は、本発明の第一実施例に係る密封装置(オイルシール)1の要部断面を示している。図2は図1の一部を拡大して示している。当該実施例に係る密封装置1は、摺動の相手部材である軸が円周上一方向に回転する一方向回転シールであって、以下のように構成されている。
すなわち先ず、金属環2に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体3によって外周シール部4およびダストリップ5等とともに、軸(相手部材、図示せず)の周面に摺動自在に密接するシールリップ6が設けられており、このシールリップ6の先端摺動部に密封流体側Aの斜面(密封流体側斜面)7および反密封流体側(大気側)Bの斜面(反密封流体側斜面)8が設けられ、両斜面7,8の間に中間面(フラット面)9が設けられている。中間面9は円筒面状に形成され、軸挿入時、軸の周面と摺動自在に密接する。
反密封流体側斜面8に、軸回転時のポンピング作用によって密封流体を密封流体側Aへ押し戻す作用を奏する正ネジ部10が設けられている。この正ネジ部10は、円周上多数設けられた螺旋状の突起群よりなり、図では断面三角形状の突起を想定して描いているが、その形状は特に限定されるものではない。螺旋の向きはその反密封流体側Bの端部から密封流体側Aの端部へかけて軸の回転方向(摺動方向)Cの前方へ向けて傾斜する向きに設定されている。
中間面9に、軸回転時のポンピング作用によって密封流体を密封流体側Aから吸い込む作用を奏する逆ネジ部11が設けられている。この逆ネジ部11は、円周上多数設けられた螺旋状の溝群よりなり、正ネジ部10と反対向きとされ、すなわち螺旋の向きをその密封流体側Aの端部から反密封流体側Bの端部へかけて軸の回転方向Cの前方へ向けて傾斜する向きに設定されている。
また、逆ネジ部11に、中間面9への流体送り力を強化するクサビ形状12が設定されている。ここにクサビ形状とは、逆ネジ部11の幅寸法が徐々に狭まる平面形状のことを云い、また逆ネジ部11の幅寸法が徐々に狭まって尖端状に終端する平面形状のことを云う。当該実施例では図2に拡大して示すように、逆ネジ部11の平面形状が三角形状とされ、これにより所定の先端角θを有するクサビ形状12が設定されている。三角形の三辺のうち第一辺11aは、中間面9および密封流体側斜面7の境界部13と重なるように配置され、ここで密封流体側Aへの開口部とされている。軸の回転方向Cの前方側に配置された第二辺11bは、その密封流体側Aの端部から反密封流体側Bの端部へかけて軸の回転方向Cの前方へ向けて傾斜するように配置されている。第三辺11cは第一辺11aと第二辺11bを結んでいる。第二辺11bと第三辺11cはそれぞれ底面からの立ち上がり面とされている。そして、第二辺11bと第三辺11cとによってクサビ形状12が形成されている。
尚、第二辺11bと第三辺11cの交点11dは、中間面9および反密封流体側斜面8の境界部14に達していない。したがって逆ネジ部11と境界部14との間には、全周に亙って軸の周面に密接する帯状のネジ不存在領域(全周接触部)15が設けられている。このネジ不存在領域15は、シールダムとして作用するので、軸回転の停止時におけるいわゆる静止漏れが発生するのを防止することができる効果がある。
上記構成の密封装置1においては、シールリップ6の密封流体側斜面7および反密封流体側斜面8の間に所定の軸方向幅をもって軸の周面に摺動自在に密接する中間面9が設けられているために、シールリップ6は摺動摩耗が抑制されて軸への接触状態が安定化する。そしてそのうえで、中間面9に、軸回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部11が設けられているために、この逆ネジ部11の奏するポンピング作用によって中間面9に密封流体が積極的に導入され、厚い流体膜(油膜)が形成され、中間面9を軸の周面から浮かす動圧が発生する。
またこれに加えて、逆ネジ部11に中間面9への流体送り力を強化する上記構成のクサビ形状12が設定されているために、流体膜が一層厚く形成され、発生する動圧が大きくなる。これは図3に示すように、クサビ形状12によって流体が集束され、集束された状態で逆ネジ部11からネジ不存在領域15のほうへ溢出するからである。したがって流体膜が薄くなりやすい状態である軸の起動時、停止時および低速回転時等においても、流体膜および動圧を確保することが可能となり、よって幅広い回転速度の領域で低トルク化を実現することができる。
尚、中間面9から反密封流体側斜面8のほうへ流出する密封流体は、反密封流体側斜面8に設けられた正ネジ部10の奏するポンピング作用によって押し戻されるので、反密封流体側Bへ漏洩することはない。このシール作用を全うするため、正ネジ部10のポンピング力は逆ネジ部11のポンピング力よりも大きく設定されている。
上記第一実施例に係る密封装置1は、その構成を以下のように付加・変更することが考えられる。
上記実施例では、逆ネジ部11の平面形状を三角形状とすることによりクサビ形状12を設定したが、クサビ形状12を設定できるかぎり逆ネジ部11の平面形状は特に限定されない。例えば図4の例では、逆ネジ部11の平面形状は台形状ないし四角形状とされ、これにより所定の先端角θを有するクサビ形状12が設定されている。台形の四辺のうち第一辺(短底辺)11aは、中間面9および密封流体側斜面7の境界部13と重なるように配置され、ここで密封流体側Aへの開口部とされている。軸の回転方向Cの前方側に配置された第二辺11bは、その密封流体側Aの端部から反密封流体側Bの端部へかけて軸の回転方向Cの前方へ向けて傾斜するように配置されている。軸の回転方向Cの後方側に配置された第三辺11cは境界部13,14と直交するように配置されている。第四辺(長底辺)11eは境界部13,14と平行に配置されている。第二辺11b、第三辺11cおよび第四辺11eはそれぞれ底面からの立ち上がり面とされている。そして、第二辺11bと第四辺11eとによってクサビ形状12が形成されている。
また上記実施例では、逆ネジ部11を円周上多数設けられた螺旋状の溝群よりなるものとしたが、これに代えて、逆ネジ部11を正ネジ部10と同様、円周上多数設けられた螺旋状の突起群よりなるものとする。例えば図5の例では、逆ネジ部11は溝ではなく突起とされ、その平面形状は三角形状とされ、これにより所定の先端角θを有するクサビ形状12が設定されている。三角形の三辺のうち第一辺11aは、中間面9および密封流体側斜面7の境界部13と重なるように配置されている。軸の回転方向Cの前方側に配置された第二辺11bは境界部13,14と直交するように配置されている。第三辺11cは第一辺11aと第二辺11bを結び、その密封流体側Aの端部から反密封流体側Bの端部へかけて軸の回転方向Cの前方へ向けて傾斜するように配置されている。三辺11a,11b,11cは何れも中間面9からの立ち上がり面とされている。そして、第二辺11bと第三辺11cとによってクサビ形状12が形成されている。尚、この場合、流体は第三辺11cの斜辺に沿って流れ(矢印D)、これにより集束されることになる。
第二実施例・・・
図6は、本発明の第二実施例に係る密封装置(オイルシール)1の要部断面を示している。図7は図6の一部を拡大して示している。図8は図7におけるE−E線断面図である。図9は同密封装置1の要部斜視図である。当該実施例に係る密封装置1は、摺動の相手部材である軸が円周上一方向に回転する一方向回転シールであって、以下のように構成されている。
図6は、本発明の第二実施例に係る密封装置(オイルシール)1の要部断面を示している。図7は図6の一部を拡大して示している。図8は図7におけるE−E線断面図である。図9は同密封装置1の要部斜視図である。当該実施例に係る密封装置1は、摺動の相手部材である軸が円周上一方向に回転する一方向回転シールであって、以下のように構成されている。
すなわち先ず、金属環2に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体3によって外周シール部4およびダストリップ5等とともに、軸(相手部材、図示せず)の周面に摺動自在に密接するシールリップ6が設けられており、このシールリップ6の先端摺動部に密封流体側Aの斜面(密封流体側斜面)7および反密封流体側(大気側)Bの斜面(反密封流体側斜面)8が設けられ、両斜面7,8の間に中間面(フラット面)9が設けられている。中間面9は円筒面状に形成され、軸挿入時、軸の周面と摺動自在に密接する。
反密封流体側斜面8に、軸回転時のポンピング作用によって密封流体を密封流体側Aへ押し戻す作用を奏する正ネジ部10が設けられている。この正ネジ部10は、円周上多数設けられた螺旋状の突起群よりなり、図では断面三角形状の突起を想定して描いているが、その形状は特に限定されるものではない。螺旋の向きはその反密封流体側Bの端部から密封流体側Aの端部へかけて軸の回転方向(摺動方向)Cの前方へ向けて傾斜する向きに設定されている。
中間面9に、軸回転時のポンピング作用によって密封流体を密封流体側Aから吸い込む作用を奏する逆ネジ部11が設けられている。この逆ネジ部11は、円周上多数設けられた螺旋状の溝群よりなり、正ネジ部10と反対向きとされ、すなわち螺旋の向きをその密封流体側Aの端部から反密封流体側Bの端部へかけて軸の回転方向Cの前方へ向けて傾斜する向きに設定されている。
また、逆ネジ部11に、中間面9への流体送り力を強化するスロープ形状16が設定されている。ここにスロープ形状とは、逆ネジ部11の深さ寸法が徐々に浅くなる形状のことを云い、また逆ネジ部11の深さ寸法が徐々に浅くなって中間面9に連続する形状のことを云う。当該実施例では図8および図9に示すように、逆ネジ部11の深さ寸法がその密封流体側Aの端部から反密封流体側Bの端部へかけて徐々に浅くなる形状とされ、すなわち底面が傾斜面状に形成され、これにより中間面9に連なるスロープ形状16が設定されている。
尚、逆ネジ部11は全長に亙って一定幅とされている。また、逆ネジ部11の密封流体側Aの端部は中間面9および密封流体側斜面7の境界部13に達してここで密封流体側Aへの開口部とされているが、反密封流体側Bの端部は中間面9および反密封流体側斜面8の境界部14に達していない。したがって逆ネジ部11と境界部14との間には、全周に亙って軸の周面に密接する帯状のネジ不存在領域15が設けられている。このネジ不存在領域15は、シールダムとして作用するので、軸回転の停止時おけるいわゆる静止漏れが発生するのを防止することができる効果がある。
上記構成の密封装置1においては、シールリップ6の密封流体側斜面7および反密封流体側斜面8の間に所定の軸方向幅をもって軸の周面に摺動自在に密接する中間面9が設けられているために、シールリップ6は摺動摩耗が抑制されて軸への接触状態が安定化する。そしてそのうえで、中間面9に、軸回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部11が設けられているために、この逆ネジ部11の奏するポンピング作用によって中間面9に密封流体が積極的に導入され、厚い流体膜が形成され、中間面9を軸の周面から浮かす動圧が発生する。
またこれに加えて、逆ネジ部11に、中間面9への流体送り力を強化する上記構成のスロープ形状16が設定されているために、流体膜が一層厚く形成され、発生する動圧が大きくなる。これはスロープ形状16によって流体が集束され、集束された状態で逆ネジ部11からネジ不存在領域15のほうへ溢出するからである。したがって流体膜が薄くなりやすい状態である軸の起動時、停止時および低速回転時等においても、流体膜および動圧を確保することが可能となり、よって幅広い回転速度の領域で低トルク化を実現することができる。
尚、中間面9から反密封流体側斜面8のほうへ流出する密封流体は、反密封流体側斜面8に設けられた正ネジ部10の奏するポンピング作用によって押し戻されるので、反密封流体側Bへ漏洩することはない。このシール作用を全うするため、正ネジ部10のポンピング力は逆ネジ部11のポンピング力よりも大きく設定されている。
上記第二実施例に係る密封装置1は、その構成を以下のように付加・変更することが考えられる。
上記実施例では、逆ネジ部11の底面を全長に亙って傾斜面状に形成することによりスロープ形状16を設定したが、逆ネジ部11の底面の一部を傾斜面状に形成することによりスロープ形状16を設定することにしても良い。例えば図10ないし図12に示す例では、逆ネジ部11の底面のうち反密封流体側Bの部位のみが傾斜面状とされ、密封流体側Aの部位は中間面9と平行なまま(深さ一定)とされている。
尚、上記各実施例に共通するところとして、中間面9は、環状体である密封装置1の中心軸線(図示せず)に対して平行とされ、あるいは密封装置1の中心軸線に対する傾斜角度が密封流体側斜面7および反密封流体側斜面8よりも小さく設定されたものである。したがって中間面9の態様としては、装着状態(軸挿入時)において、
(1)図13(A)に示すように、密封装置1の中心軸線に対して平行な円筒面状のもの、
(2)図13(B)に示すように、反密封流体側Bに角度θ1をもつ傾斜面状(円錐面状)のもの(内径寸法が密封流体側Aから反密封流体側Bへかけて拡大するもの)、
(3)図13(C)に示すように、密封流体側Aに角度θ2をもつ傾斜面状(円錐面状)のもの(内径寸法が反密封流体側Bから密封流体側Aへかけて拡大するもの)
の3種類があり、本発明にはその何れもが含まれる。
(1)図13(A)に示すように、密封装置1の中心軸線に対して平行な円筒面状のもの、
(2)図13(B)に示すように、反密封流体側Bに角度θ1をもつ傾斜面状(円錐面状)のもの(内径寸法が密封流体側Aから反密封流体側Bへかけて拡大するもの)、
(3)図13(C)に示すように、密封流体側Aに角度θ2をもつ傾斜面状(円錐面状)のもの(内径寸法が反密封流体側Bから密封流体側Aへかけて拡大するもの)
の3種類があり、本発明にはその何れもが含まれる。
このうち(3)には、以下の作用効果がある。
すなわち上記(3)では、中間面9が密封流体側Aに角度θ2をもつ傾斜面状とされているので、シールリップ6の摺動が反密封流体側斜面8と中間面9との間のライン(境界部14)近傍で行なわれることになり、その一方で、このラインは、反密封流体側斜面8に設けた正ネジ部10によるポンピング作用と、中間面9に設けた逆ネジ部11によるポンピング作用とによって密封流体が最も集められる部位でもある。したがってシールリップ6の摺動が、密封流体が最も集められる部位で行なわれることから、(1)または(2)と比較して摺動部に形成される流体膜が一層厚くなり、一層の低トルク化が実現される。
装着状態における密封流体側Aへの中間面9の傾斜角度θ2の大きさとしては、0<θ2≦25度が好適であり、0.1≦θ2≦20度が一層好適である。また、装着状態における反密封流体側Bへの中間面9の傾斜角度θ1の大きさについては、0≦θ1≦25度が好適である。
1 密封装置
2 金属環
3 ゴム状弾性体
4 外周シール部
5 ダストリップ
6 シールリップ
7 密封流体側斜面
8 反密封流体側斜面
9 中間面
10 正ネジ部
11 逆ネジ部
12 クサビ形状
13,14 境界部
15 ネジ不存在領域
16 スロープ形状
2 金属環
3 ゴム状弾性体
4 外周シール部
5 ダストリップ
6 シールリップ
7 密封流体側斜面
8 反密封流体側斜面
9 中間面
10 正ネジ部
11 逆ネジ部
12 クサビ形状
13,14 境界部
15 ネジ不存在領域
16 スロープ形状
Claims (2)
- 軸等の相手部材の周面に摺動自在に密接するシールリップを有し、
前記シールリップは、密封流体側斜面および反密封流体側斜面ならびに前記両斜面の間に設けられた中間面を有し、
前記反密封流体側斜面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を押し戻す作用を奏する正ネジ部を設け、
前記中間面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部を設け、
前記逆ネジ部は、前記中間面への流体送り力を強化するクサビ形状を有することを特徴とする密封装置。 - 軸等の相手部材の周面に摺動自在に密接するシールリップを有し、
前記シールリップは、密封流体側斜面および反密封流体側斜面ならびに前記両斜面の間に設けられた中間面を有し、
前記反密封流体側斜面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を押し戻す作用を奏する正ネジ部を設け、
前記中間面に、回転時のポンピング作用によって密封流体を吸い込む作用を奏する逆ネジ部を設け、
前記逆ネジ部は、前記中間面への流体送り力を強化するスロープ形状を有することを特徴とする密封装置。
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2008
- 2008-07-03 JP JP2008174395A patent/JP2010014192A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
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WO2018149747A1 (de) * | 2017-02-17 | 2018-08-23 | Trelleborg Sealing Solutions Germany Gmbh | Dichtungsanordnung und dichtungselement mit hochdruckseitiger spülfunktion |
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